人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数73,133名(単体) 390,927名(連結)
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平均年齢40.5歳(単体)
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平均勤続年数15.1年(単体)
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平均年収10,060,464円(単体)
従業員の状況
(2)【従業員の状況】
①連結会社の状況
2026年3月31日現在
②提出会社の状況
2026年3月31日現在
③使用人その他の従業員のみを対象とした役員・従業員株式所有制度の内容
当社は一定の要件を満たす幹部職を対象とした従業員に対する株式交付制度を導入しています。当該従業員に対する株式交付制度の内容について「1 株式等の状況(8)役員・従業員株式所有制度の内容」に記載しています。
④管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
(ⅰ)提出会社
(ⅱ)主要な連結子会社
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティの考え方
トヨタグループの原点である「豊田綱領」に「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし」とあるように、「世のため人のためになる仕事をすること」「クルマづくりを通じて人々の幸せや社会の発展に貢献すること」こそ、当社が大切にすべき価値観や行動規範であると考えています。
その原点に立ち返って、2020年に取りまとめた「トヨタフィロソフィー」において、当社は、トヨタの使命を「幸せの量産」と定めました。お客様をはじめとする世界中のステークホルダーの幸せに貢献するために、社会と企業の持続的な発展をめざす。これは言い換えれば、「サステナビリティ経営」を実践していくことに他なりません。
「豊田綱領」と「トヨタフィロソフィー」を軸にした経営を通して、「もっといいクルマをつくろうよ」「町いちばんの会社を目指そう」「自分以外の誰かのために行動しよう」という価値観、「トヨタらしさ」が浸透し、商品・事業の土台が築かれてきました。
これから当社がやるべきことは、この土台の上で、「幸せの量産」という使命を果たすために、さらなる成長戦略・サステナビリティ経営のあり方を描き、その道筋を具体化していくことであると考えています。
トヨタがめざしているのは、誰ひとり取り残さず、すべての人に「移動の自由」をお届けするモビリティカンパニーへの変革です。このビジョンを具現化する上での重要課題(マテリアリティ)を、お客様、地域社会・取引先、従業員というステークホルダーの視点を踏まえて、「移動価値の拡張」「安全・安心」「人類と地球の共生」「くらしと雇用を守る」「全員活躍」「強固な経営基盤」という6つにまとめています。
そして、その中心にあるクルマづくりに対する想いを「クルマの未来を変えていこう」という言葉に込めました。
将来にわたって、クルマが世の中の役に立ち、お客様を笑顔にするモビリティであり続けるためには、交通事故や環境負荷の増大、渋滞など、クルマが生み出すネガティブなインパクトを最小化し、同時に、利便性や快適性、運転の楽しさなど、クルマの感性価値を高め、ポジティブなインパクトを最大化していくことが必要であると考えています。
当社にとって、「モビリティカンパニーに変革する」ということの意味は、クルマの進化を通じて、「モビリティ社会」をつくるお役に立ち、新しい産業構造をつくっていくことであると考えています。そのリード役を務める使命感をもって、多くの仲間とともに行動してまいります。
正解が分からない今のような時代こそ、「意志ある行動」を積み重ねていくことが重要であると思います。豊田佐吉翁が大切にしていた「百折不撓」の精神を胸に、信念をもって、クルマの未来を変えていくために挑戦し続けてまいります。
<トヨタのマテリアリティ(重要課題)>
(2)ガバナンス
当社では、外部環境変化・社会からの要請などを把握し、より重要性・緊急性が高い課題に優先的に取り組むために、取締役会の監督・意思決定のもと、次のような推進体制にて関係部署と密に連携しながら、環境・社会・ガバナンスなどのサステナビリティ活動を継続的に推進・改善しています。
経営に関わる横断的なサステナビリティの重要課題を審議するため、社長が議長を務め、主に環境、社会課題に関するテーマを扱うサステナビリティ会議と、Chief Risk Officerが議長を務め、ガバナンスに関するテーマを扱うガバナンス・リスク・コンプライアンス会議を設置しています。その他、より実務に近い個別の課題・テーマは、関係部門の責任者が出席するミーティング・CN戦略分科会で審議する体制を構築しています。
<サステナビリティ推進体制>
CCO:Chief Compliance Officer, CRO:Chief Risk Officer
(3)リスク管理
当社は、カーボンニュートラル、移動価値の拡張(電動化・知能化・多様化など)をはじめとする自動車産業を取り巻く状況や価値観の大変革時代において、常に新たな挑戦が求められるなか、不確実性への対応としてリスクマネジメントをより一層強化してまいります。
各地域、機能、カンパニーが相互に連携・サポートし、グローバル視点で事業活動において発生するリスクを予防・緩和・軽減し、適切に管理するために、リスクマネジメントの責任者としてChief Risk Officer(CRO)、Deputy CRO(DCRO)および、各地域にリスクマネジメント統括を配し、以下の推進体制を構築しています。
なお、リスクマネジメントシステムの仕組みとして、ISOやCOSO(Committee for Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)等を参考にして構築される全社的リスク管理フレームワーク、Toyota Global Risk Management Standard(TGRS)に基づき、定期的なリスクの識別・評価・集約・対策導入・モニタリングを実施しています。
また、識別されたリスクのうち、当社にとって重大と判断されたリスクについては、CROを議長とした「ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議」にて審議し、取締役会等へ適切に付議し、事業の推進を図っています。
<推進体制>
(4)人的資本に関する考え方
当社は、「モノづくりは人づくり」の理念のもと、最大の財産は「人」であるとして、創業当初より人材育成に取り組んできました。人材育成の共通基盤は、トヨタの「思想(トヨタフィロソフィー)」「技(トヨタ生産方式:TPS)」「所作(トヨタウェイ2020)」です。「自分以外の誰かのために」という「思想」のもと、徹底的にムダを無くし、リードタイムを短くするTPSという「技」を身につけ、自らの行動、すなわち「所作」によって、「思想」を実現する人材を育成します。こうした人材が、現場で自律的に考え、行動することは、環境変化への対応力を高めるものと考えています。
①ガバナンス
当社は、人的資本に関する課題を的確に捉えるため、従業員との対話を重視しています。特に、労使協議会・労使懇談会には、サステナビリティ会議の出席メンバーでもある社長・副社長らが参加し、従業員の声や人的資本に関する課題の把握と解決の方向性を見出す機会としています。
把握された課題のうち、特に重要なものや、機能横断的に対応するテーマは、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)ガバナンス」に記載のサステナビリティ会議に上程し、重要事項の審議・決定および人的資本に関する「サステナビリティ重点取り組みテーマ」の推進につなげています。
<参考> 2025年度 開催実績
・サステナビリティ会議:4回
・労使協議会:4回
・労使懇談会:2回
②戦略
当社は、モビリティカンパニーへの変革を進める上で、お客様、地域社会・取引先、従業員というステークホルダーの視点を踏まえ、マテリアリティ(重要課題)を6つにまとめました。そのうち、「全員活躍」、「くらしと雇用を守る」において、人的資本に関わる6つの重点実施項目を特定しました。
これらの重点実施項目に対する取り組みを進めることが、未来を担う人材の育成において重要と考えています。
③リスク管理
当社では、従業員との対話、エンゲージメントサーベイ、相談窓口などの複数のコミュニケーション手段を通じて、逐次職場の現状把握を進めることに加え、各種法改正や外部環境の変化を踏まえた情報収集やベンチマークを通じて、人的資本に関するリスクの把握を行っています。
これらを通じて識別されたリスクのうち、全社的な観点から重要と判断されるものについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)リスク管理」に記載のプロセスに基づき、経営層での意思決定や取り組みの検討につなげています。
④指標と目標
重点取り組みテーマの「ダイバーシティ人材の活躍推進」に関連し、当社単体における代表的な指標と、その目標・当事業年度実績は下表のとおりです。
また現在、人的資本におけるマテリアリティに関する指標を連結子会社から収集し、実態把握を進めています。
(5)気候変動関連課題への対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)
トヨタは、カーボンニュートラル(CN)実現に貢献することを通じて、人と自然が共生する持続的な社会の構築を目指しています。「トヨタ地球環境憲章」、「トヨタ環境チャレンジ2050」の理念の下、気候変動関連のインパクト・リスク・機会の対応に取り組むとともに、クルマのライフサイクル全体で2050年CNを実現するため、全力で取り組んでいます。「誰ひとり取り残さない」「すべての人に移動の自由をお届けしたい」との思いから、マルチパスウェイ戦略を軸に、多様な選択肢で温室効果ガス排出量を着実に削減していきます。
①ガバナンス
気候変動関連課題の取締役会による監督
トヨタは、取締役会を気候変動関連課題(リスク・機会を含む)に対応する監督・意思決定機関と位置付けています。社会動向に応じた戦略を効果的に立案・実行するため、気候変動関連の重要な事案が生じた場合、取締役会に上程しています。
気候変動関連課題への対応(年一回以上のリスク・機会の評価・管理を含む)はCN戦略分科会などを中心に実施し、取締役会が監督しています。また、サステナビリティおよび気候変動関連課題間でのトレードオフも含め、各会議体で審議された結果を踏まえて、取締役会が意思決定を行なっています。気候変動関連の目標の策定・進捗確認・見直しについては、取締役会の監督の下、製品環境委員会・連結環境委員会での審議を経て、CN戦略分科会にて審議・承認しています。会議体の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)ガバナンス」を参照ください。
2025年における取締役会での意思決定の事例としては、中国のカーボンニュートラル実現への貢献に向け、上海市との包括的提携契約の締結や、BEVや電池の開発・生産会社であるレクサス(上海)新エネルギー有限会社の設立の承認が挙げられます。当該会社ではレクサスブランドのBEVを開発し、2027年以降に生産開始を予定しています。
②戦略
a.トヨタの戦略(マルチパスウェイ戦略の基本的な考え方)
クルマが社会で必要な存在であり続けるための喫緊の課題がカーボンニュートラル(CN)です。トヨタの活動の軸は、モノづくりやサプライチェーンの脱炭素化を進めながら、モビリティにおいて 「マルチパスウェイ」戦略の下、世界中のお客様に選択肢を提供していくことです。エネルギーの未来に寄り添ったモビリティのあり方を考えていくことを大切にしています。その為には、地球環境やサステナビリティの観点で、化石燃料への依存を減らしていく必要があります。その上で、中長期的には、再生可能エネルギー等の普及が進み、「電気」と「水素」が社会を支える有力なエネルギーになっていくと考えられます。一方で、短期的には、世界各地の現実に向き合い、エネルギーセキュリティを担保しながら、プラクティカルに変化を進めていくことが重要です。だからこそ私たちは、電気と水素の未来を見据えながら、多様なエネルギー事情やお客様ニーズに寄り添ったモビリティの選択肢を提供していきます。プラクティカルなトランジションを軸に、CNの実現をめざしていくことが、マルチパスウェイ戦略の根底にある考え方です。
b.気候変動関連のインパクト・リスク・機会の特定および評価
インパクト・リスク・機会の概要
トヨタは特定されたインパクト、リスク、機会(IRO)を起点として、将来に影響を与える可能性のある要因を把握し、トヨタの戦略、移行計画のもとで適切に対応しています。気候変動関連のIROの概要は以下のとおりです。
・インパクト:企業の活動または取引関係の結果として、企業が環境および社会に与える影響
・リスク
移行リスク:気候変動政策の導入・強化や低炭素技術の進展など、低炭素社会への移行が企業に与えるネガティブな影響
物理的リスク:気候変動により生じる物理的気候事象が企業に与えるネガティブな影響
・機会:低炭素社会への移行や気候変動の進展により生じる、市場変化への対応や技術革新などが、企業に与えるポジティブな影響
気候変動関連のリスク・機会については、シナリオ分析を用いた特定・評価プロセスを構築しています。IROの重要性の解像度を上げるため、財務影響評価もプロセスに含めて実施しています。IROを評価する際の時間軸は以下のとおりに分類しています。
気候変動関連のインパクトの特定および評価するプロセス
トヨタは、トヨタおよびバリューチェーンにおける活動を分析し、環境および社会に与えうるインパクトを特定し、それらのインパクトについて、深刻度(影響の規模および範囲)と発生可能性の二つの軸で評価を実施しています。トヨタの温室効果ガス(GHG)排出量は、Scope3(Scope1および2以外の間接排出)、特にカテゴリー11(製品の使用による排出)が多くの割合を占めており、気候変動への影響が大きく、バリューチェーン全体での削減の取り組みが重要と考えています。一方、Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)および2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)は排出量割合こそ小さいものの、自社での直接管理が可能な範囲であり、ライフサイクルCO2ゼロチャレンジを掲げるトヨタにとって重要だと考えています。
気候変動関連のリスクと機会の特定および評価するプロセス
気候変動に関する社内専門チームと社外専門家により、多様な将来の社会像を想定したシナリオ分析を行い、気候変動関連のリスクと機会を特定・評価するとともに、戦略のレジリエンスを評価しています。
リスクと機会の特定・評価
将来の社会像を想定した気候変動関連のリスクと機会の主要な変動要因(リスクドライバー)を、移行リスク(政策・法規制/市場/技術/評判)、物理的リスク(急性/慢性)のそれぞれの観点で特定しています。リスクと機会に至るまでの要因解析を実施することによる、リスクと機会の洗い出しを行い、要因解析により特定したリスクと機会に、ISSB*が公表する「産業別ガイダンス」において定義されている開示トピックのほか、外部情報を参照し特定した気候変動関連のリスク・機会項目、および全社横断的リスク管理の仕組みである、TGRSで特定された気候変動関連のリスクを取り込んでいます。また、特定したリスクドライバーを前提とした各シナリオにおいて、リスクと機会の発生可能性と影響度がどのように変化するかを検証し、各リスク・機会の重要性については、発生可能性・影響度の定量的評価に加え、企業の社会的責任やトヨタの重要課題との関連等を考慮した定性的評価をもとに総合的に判断しています。
* International Sustainability Standards Board:国際サステナビリティ基準審議会
シナリオ分析の概要
シナリオ分析は、TCFDや環境省のガイダンスにおいて示されるプロセスに基づき実施し、移行リスク・機会を評価する1.5℃シナリオ分析、および気候ハザードに基づく物理的リスクを評価する4℃シナリオ分析を実施しています。
・分析対象
移行リスク・機会:トヨタおよび連結会社における自動車事業とサプライチェーン
物理的リスク:トヨタおよび連結子会社、連結子会社以外の車両生産会社
・影響評価の対象期間
移行リスク・機会:~2035年
物理的リスク:~21世紀後半
1.5℃シナリオ分析
シナリオ選定
トヨタは、参照シナリオとして、IEA*1、IPCC*2、AR6*3WG3報告書などの複数の公表シナリオを選択しています。社会を支えるエネルギーは再生可能エネルギーの普及に伴い、電気と水素に収れんしていくと考察する一方、足元では各国・各地域でさまざまなエネルギー事情に応じて、トランジションの進度が異なることを認識しています。
近年の世界情勢からも、環境問題と経済安全保障との両立が議論され始め、国際的なインフレによる再生可能エネルギー投資の鈍化や、欧米などでのBEVの販売増加傾向の停滞といった事象も見受けられます。また、気候変動枠組条約締約国会議(COP)をはじめとする国際的な議論の場においても、将来に至るまでの過渡期の対応について議論が進んでおり、各国・各地域の事情に応じ、多様な脱炭素手段導入の重要性について認識が広がっています。
上記の背景認識の下、中長期的には電気と水素が社会を支える有力なエネルギーになっていく未来を見据えながら、短期的には各国・各地域のエネルギー事情と、多様なお客様のニーズに寄り添ったモビリティの選択肢を提供し、プラクティカルにトランジションを進めていくことが、トヨタのマルチパスウェイ戦略の考え方です。
1.5℃シナリオにおける分析では、乗用車について、BEV・PHEVの導入を主要な施策として脱炭素策を論じたIEA のNZEシナリオ*4に加え、地域性や緩和策の多様化(炭素除去(CDR*5)、炭素回収・貯留技術(CCS*6)、カーボンニュートラル(CN)燃料など)を反映したその他の1.5℃シナリオも考慮し、戦略のレジリエンスを評価しています。
各シナリオの前提・世界観については、以下のように整理しています。
IEA NZEシナリオ(IEA『World Energy Outlook 2025』)では、グローバルに電化と再生可能エネルギーが拡大し、発電部門からのGHG排出量削減により、他部門からの排出量も削減されます。運輸部門では、比較的電化が容易な道路輸送分野においてBEVが普及することにより、GHG排出量が削減されますが、実際には、各国・各地域のエネルギー事情と政策展開により、これら施策の取り組み進度、時間軸には遅れが生じることもあり、その場合はCDR技術が必要としています。
その他の1.5℃シナリオでは、エネルギー・経済安全保障や産業力低下の懸念などにより、各国・各地域のエネルギー事情と政策展開による緩和策進展の遅れが世界全体に及び、脱炭素技術の市場導入には初期段階に多大な投資が必要であり、投資状況により進展に差が生じ得るとしています。また、低排出電力による電化以外の脱炭素化技術も活用しつつ、道路輸送分野のバイオ燃料利用については、食料競合や自然環境保護のための土地利用制約による供給量の差異など、導入量拡大には制約も生じ得ると同時に、燃料価格の上昇を伴うとしています。より遅いGHG排出削減から、気温上昇のオーバーシュートが生じざるを得ず、NZEシナリオより大規模・大量のCDR技術を、後々導入することが前提となります。
*1 International Energy Agency:国際エネルギー機関
*2 Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
*3 6th Assessment Report:第6次評価報告書
*4 Net Zero Emissions by 2050 Scenario
*5 Carbon Dioxide Removal
*6 Carbon Capture and Storage
IEA NZEシナリオの検討
IEAは、NZEシナリオ実現には、再生可能エネルギーの積極的な導入による電力の脱炭素化と乗用車のBEV化の進行などにより、2030年以降に急速にGHG排出量を削減し、2050年には保有車も含めてネットゼロを達成することが必要だと報告しています。その実現においては、各国政府が、カーボンプライシング/燃費規制の厳格化/内燃機関車の販売禁止など、野心的な気候政策を実施すると同時に、BEVを普及させるためのインセンティブ策を拡大することが前提となります。政策と消費者の環境意識の向上による市場のBEV受容とともに、技術面で、車両電動化、革新的な電池開発、再生可能エネルギー電力を活用したエネルギーマネジメントシステムなどの進展、社会全体で電化と再生可能エネルギーへの転換、エネルギー効率の改善によるエネルギー消費量の抑制が必要としています。また、電化が困難な分野で残る化石燃料、電化と再生可能エネルギーへの転換遅れには、CDR技術による大気からの炭素除去が必須としています。2023年版以前のIEA World Energy Outlookでは、NZEシナリオにおいて、CDR技術の活用は想定されていませんでしたが、2024年版では活用が必須となり、2025年版ではより多くの活用が必須と報告しています。本シナリオにおける移行リスクや実現に向けた社会的課題は以下だと考えています。
本シナリオにおける移行リスク
・燃費・GHG・ZEV規制不適合による罰金など
・規制対応に伴う急な商品変更による減産や販売台数の低下
・パワートレーン技術開発にともなう研究開発費用の増加
・BEV関連の原材料需要増加にともなう供給不足と調達コストの増加
・再生可能エネルギー電力価格の高騰による製造コストの増加
本シナリオの実現に向けた社会的課題
・再生可能エネルギー導入を促進する政策と投資の実行
・電池材料確保のための社会システム構築とリサイクル技術開発
・電気や水素利用の脱炭素技術革新と低コスト化
・電動車普及にともなう充電インフラの整備
・脱炭素技術やCDR技術導入にともなう費用負担増加
その他の1.5℃シナリオの検討
IEAのNZEシナリオに加え、各国・各地域のエネルギー事情と政策展開の差異を詳細に分析するため、IPCCや各研究機関が公表している複数の1.5 ℃シナリオ群を比較検討しています。パリ協定1.5℃実現に向けた道筋は以下の通りです。
・エネルギー部門:
再生可能エネルギー利用のほか、CCSなどの多様な技術を導入。バイオ燃料や合成燃料などの低炭素燃料・CN燃料を導入
・運輸部門:
車両の電動化のほか、省燃費車の活用やバイオ燃料・合成燃料などの低炭素燃料・CN燃料に対応
・各国・各地域の差異:
各国・各地域の事情に応じて、バイオマスなどの再生可能エネルギーをそれぞれ最大限に活用、過渡期には炭素回収・利用・貯留技術(CCUS*)と組み合わせた化石燃料利用も行うことで、経済発展とCNの両立を目指す。低炭素燃料・CN燃料などの多様なエネルギーインフラ整備が進むことにより、それぞれの利便性にも基づいて、多様なエネルギーとパワートレーンを選択
*Carbon Capture, Utilization and Storage
本シナリオ群における移行リスク
・BEV推進に関わる移行リスクはIEAのNZEシナリオと同様だが、現時点での各国・各地域のBEV導入の実績、施策の見直しを踏まえると、トヨタの戦略・財務への影響は比較的小さい
・バイオ燃料や合成燃料などの低炭素燃料・CN燃料の普及遅れ
・自動車燃料多様化にともなう研究開発費用の増加
・電力以外にも、ガス燃料や液体燃料などエネルギーの低炭素化にともなうエネルギー調達コストの増加
本シナリオ群の実現に向けた社会的課題(IEAのNZEシナリオより多様化)
・水素/バイオ/合成燃料など各国・各地域に適合した低炭素燃料・CN燃料の技術開発と普及初期段階での導入支援
・バイオ燃料に関わる食料競合などの問題解決と燃料価格の上昇抑制
・他部門との連携による低炭素燃料・CN燃料の供給確保
・安定したエネルギー供給に向けたインフラ整備や政策支援など
1.5℃シナリオにおけるリスクと機会のトレードオフ
電動化による売り上げ変動にかかる機会が考えられる一方で、研究開発費用の増加や原材料調達コストの増加などのリスクがトレードオフとして発生します。
4℃シナリオ分析
シナリオ選定
4℃シナリオ分析における参照シナリオとして、IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5を選択しています。IPCC SSP5-8.5は、化石燃料依存型の経済発展の下、気候政策が導入されない最大排出量シナリオであり、物理的気候事象が極端に頻発化・激甚化するシナリオです。本シナリオの下で分析を行うことで、事業活動のレジリエンスを評価しています。
4℃シナリオの検討
本シナリオ下における主な物理的リスクは、以下だと考えています。
・自然災害の頻発化や激甚化の結果、サプライチェーンが分断することによる生産・販売の停止
・水不足や水コスト増加による工場操業への影響
リスクの高い拠点のスクリーニングは、以下のとおり実施しました。
・洪水による河川氾濫/内水氾濫/高潮による浸水ハザードについて、国内外の事業拠点(日本国内137拠点・海外73拠点)の地理的座標を用いて、リスクの高い拠点を特定
・気候変動による将来変化が見られ、リスクに留意すべき(ハザードグレードがB以上)と評価された国内外の拠点を特定
リスク分析の結果として、国内外の事業拠点の一部において河川氾濫リスク/内水氾濫リスク/高潮リスクが特定されましたが、影響は軽微であることを確認しました。
トヨタは、物理的リスクの最小化に向けて、工場新設時のサイト選定における水リスクの考慮、リスク評価の結果に基づいた対策の推進、災害経験を踏まえた事業継続計画(BCP*1)の継続的な見直しを行っているほか、サプライチェーンを含めた事業継続マネジメント(BCM*2)にかかる取り組みを行っています。
*1 Business Continuity Plan:災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画
*2 Business Continuity Management:BCPで定めた各対策計画が実行可能なものとして機能するよう定める運用管理の仕組み
財務影響評価
特定したリスクと機会から、財務影響が発生する因果関係を解析しています。また、特定したリスクと機会におけるモビリティコンセプトなどの経営上のテーマやサステナビリティの重点取り組みテーマとの関連性を評価したうえで重要性を確認するとともに、それぞれのシナリオにおける前提を考慮し、特に重要性の高いリスクと機会の財務影響を評価しています。
掲載の画像については、2026年6月に以下ウェブサイトに掲載予定の当社「サステナビリティデータブック」をご参照ください。https://global.toyota/jp/sustainability/report/sdb/
c.レジリエンス分析
重要なIROに対応するための戦略とビジネスモデル
前述の評価プロセスにより、特定した重要なIROはトヨタにとって重要な影響を与えると認識しました。マルチパスウェイ戦略の下、移行計画などに当該IROへの対応を織り込み、対応を実施するための経営資源を確保しています。
移行計画
トヨタはパリ協定に先立つ2015年10月にトヨタ環境チャレンジ2050を公表しています。気候変動に関する長期目標として、ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ、新車CO2ゼロチャレンジ、工場CO2ゼロチャレンジを掲げました。また、中期目標として、第8次トヨタ環境取組プラン(2030年目標)の中で、排出スコープ個別の削減目標を設定。Scope1,2 およびScope3カテゴリー11の削減目標は、SBTi*1 認定を取得しています。
トヨタは、パリ協定を支持し、これらのGHG削減目標の下、マルチパスウェイ戦略を推進することにより、2050年カーボンニュートラル(CN)に全力でチャレンジしています。また、目標に向けた削減取り組みなどをまとめた移行計画を策定しています。これは、トヨタが気候変動関連のリスクと機会に対応するためにも重要な計画として位置付けられており、販売計画や中期経営計画などの経営計画にも組み込まれています。
移行計画は、主要な排出スコープを中心に、トヨタが重要と考えている社会のCNに貢献する取り組みも含めて構成されています。排出スコープごとに、主要な削減取り組みを削減レバーとして設定しており、これらのレバーの下で具体的な削減施策を実施するとともに、取り組み進捗を管理しています。移行計画の策定においては、シナリオ分析で参照した1.5℃シナリオの前提条件を考慮しています。
移行計画の詳細については、2026年6月に以下ウェブサイトに掲載予定の当社「サステナビリティデータブック」をご参照ください。
https://global.toyota/jp/sustainability/report/sdb/
*1 Science Based Targets initiative:CDP、国連グローバル・コンパクト、World Resources Institute(WRI)、世界自然保護基金(WWF)によって設立されたイニシアチブ
レジリエンス分析
シナリオ分析によりマルチパスウェイ戦略のレジリエンスを評価しています。
1.5 ℃シナリオ分析結果
シナリオ分析を通じて、パリ協定に整合する1.5℃実現に向けた経路はさまざまに存在し、それぞれに実現のための条件や社会的な課題が存在することを確認しました。世界に市場を持つトヨタは、各国・各地域で異なる市場とステークホルダーの要請に応えることが必要です。よって、単一の施策や技術に特化および限定することなく、さまざまな経路や不確実性に対応可能な、多様な施策や技術の提供、すなわちマルチパスウェイ戦略が有効と再認識しました。
4℃シナリオ分析結果
シナリオ分析を通じて、国内外の事業拠点の一部において河川氾濫リスク/内水氾濫リスク/高潮リスクが特定されましたが、影響は軽微であることを確認しました。また、災害訓練などにより、PDCAを回して改善を行うことで事業継続計画(BCP)の実効性が高まり、災害発生時の復旧速度が上がっていることを確認しました。この活動を事業継続マネジメント(BCM)と位置付け、従業員・家族、トヨタグループ・サプライヤー、トヨタが三位一体となった活動として推進しています。
レジリエンスの考察
トヨタは「町いちばんの会社を目指そう」との理念に基づいて各国・各地域発展の助成につなげるべく、さまざまな経済・エネルギー事情に即しつつ、お客様に受け入れていただけるモビリティの選択肢の提供を進めています。また、GHG排出量の削減に向けては、既存のインフラやアセットも活用しつつ取り組んでいます。こうしたマルチパスウェイ戦略は、あらゆるシナリオが描く世界観においてレジリエンスが高いことが判明しました。
IPCCの評価報告書などでも記載されているとおり、パリ協定で掲げられている1.5℃実現にはさまざまな経路があり、地域のエネルギー事情や政策によっても変動する可能性があります。その実現にはさまざまな産業が関与するため、CN燃料の普及を含むパートナー連携が不可欠と考えています。トヨタはパリ協定を支持し、それに沿って行動しています。パリ協定との整合は重要であり、パートナーと共に、モビリティコンセプトに基づく車両開発や社会インフラづくりを推進し、2050年CN実現に向けて全力でチャレンジしています。
今後もシナリオ分析に基づき、内外の状況の変化に応じてリスクと機会を見直し、その対応を戦略に織り込むことで、さらなるレジリエンス向上を目指します。
③リスク管理
全社的なリスク管理と気候変動関連のリスク管理プロセスとの連携
トヨタは、気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識し、TCFD提言を踏まえ、シナリオ分析によりリスクと機会を特定し、事業活動のレジリエンスを評価しています。ISO規格やCOSO枠組みを基盤とする全社的なリスク管理フレームワークであるToyota Global Risk Management Standard(TGRS)なども活用して、グローバルな事業活動に関わるすべてのリスクを特定、必要に応じて全社横断でタスクフォースを設置し、対策の進捗を確認しながらリスクマネジメントを推進しています。
リスクは影響度と脆弱性の2つの観点で評価し、時間軸を具体的に想定することで、事業に対する実質的な財務・戦略的影響を明確化しています。
影響度の観点では、財務/評判/法規制違反/事業継続の各要素について5段階で評価しています。また、脆弱性の観点では、対策の現状と発生可能性の2つの指標で評価しています。上記の観点で評価された地域別、機能別(生産/販売など)、製品別の重要リスクは、リスクオーナーが設定され、各部門の本部長や社内カンパニープレジデントが活動を統括し、その下位では部長が部署の活動を統括、対応策の実行およびモニタリングを実施しています。
気候変動関連のリスクと機会は、上記のTGRSに加え、関係役員や担当部署による審議を行い、対応状況のモニタリングや見直しを実施しています。環境問題から生じる様々なリスクと機会の把握に努めるほか、トヨタ環境チャレンジ2050などの戦略の妥当性を常に確認し、取り組みを推進と競争力強化を図っています。
リスクへの対策として、車両・生産販売事業・サプライチェーンにおける現在と将来のGHG排出量を算定し、関連する科学的根拠に基づいた排出削減経路に照らし合わせて評価しています。また、迅速な対応が必要となる重要なリスクと機会については、ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議にて審議の上、取締役会へ適切に付議し、対応を決定しています。
④指標と目標
中長期目標の体系
トヨタは企業ミッションである人類と地球の共生、「幸せの量産」を実現するために、環境分野のビジョン・目標を体系的に策定しています。カーボンニュートラル(CN)、サーキュラーエコノミー(CE)、ネイチャーポジティブ(NP)の3分野を柱として、長期ビジョンであるトヨタ環境チャレンジ2050、中期目標としては、第8次トヨタ環境取組プラン(2030 年目標)などを社内外に共有し、連携して取り組みを推進しています。
中長期の目標を含む、移行計画については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(5)気候変動関連課題への対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)②戦略 c.レジリエンス分析」を参照ください。
第7次トヨタ環境取組プラン(2025年目標)レビュー
トヨタ環境チャレンジ2050の実現に向けて、5カ年実行計画である第7次トヨタ環境取組プラン(2025年目標)の全項目で取り組みを推進しました。
掲載の画像については、2026年6月に以下ウェブサイトに掲載予定の当社「サステナビリティデータブック」をご参照ください。https://global.toyota/jp/sustainability/report/sdb/
第8次トヨタ環境取組プラン(2030年目標)
環境チャレンジ2050の実現に向けて、新たな5カ年実行計画である第8次トヨタ環境取組プラン(2030年目標)を策定し、2026年4月より取り組みを開始しています。従前からトヨタが重視する、カーボンニュートラル(CN)、サーキュラーエコノミー(CE)、ネイチャーポジティブ(NP)の3分野を柱に、17項目で目標を設定しました。10の国・地域(北米、欧州、中国、アジア、インド、南米、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国)においても、これに沿った国・地域別の2030年目標を設定しています。
掲載の画像については、2026年6月に以下ウェブサイトに掲載予定の当社「サステナビリティデータブック」をご参照ください。https://global.toyota/jp/sustainability/report/sdb/