2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    71,515名(単体) 383,853名(連結)
  • 平均年齢
    40.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    15.6年(単体)
  • 平均年収
    9,825,635円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

2025年3月31日現在

事業別セグメントの名称

従業員数(人)

自動車事業

339,062

[  82,852]

金融事業

15,321

[   1,624]

その他の事業

23,093

[   9,633]

全社(共通)

6,377

[   1,421]

合計

383,853

[  95,530]

 

(注)1

従業員数は就業人員数(当社および連結子会社(以下、トヨタという。)からトヨタ外への出向者を除き、トヨタ外からトヨタへの出向者を含む)であり、臨時従業員数は[  ]内に年間の平均人員を外数で記載しています。

臨時従業員には、期間従業員、パートタイマーおよび派遣社員が含まれています。

 

 

(2)提出会社の状況

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

71,515

 [ 14,956]

40.7

15.6

9,825,635

 

 

事業別セグメントの名称

従業員数(人)

自動車事業

64,999

[  13,490]

その他の事業

149

[      53]

全社(共通)

6,367

[   1,413]

合計

71,515

[  14,956]

 

 

(注)1

従業員数は就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む)であり、臨時従業員数は[  ]内に年間の平均人員を外数で記載しています。

臨時従業員には、期間従業員、パートタイマーおよび派遣社員が含まれています。

平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

 

 

 

(3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 ① 提出会社

当事業年度

管理職に占める

女性労働者の割合(%)

(注2)

男性労働者の育児休業取得率(%)(注3)(注4)

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注2)(注5)(注6)(注7)

全労働者

正社員

パート・

有期契約社員等

4.0

67.0

66.2

65.9

58.7

 

 

(注)1

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出した指標については小数点以下第2位を四捨五入して、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき算出した指標については小数点以下第1位を切り捨てて、それぞれ小数点以下第1位まで表示しています。

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しています。

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出しています。

男性労働者の育児休業取得率は、過年度に配偶者が出産した男性労働者が、当事業年度に育児休業を取得することがあるため、取得率が100%を超えることがあります。

男女の賃金差異は、女性労働者の平均年間賃金÷男性労働者の平均年間賃金×100%として算出しています。また、平均年間賃金は、総賃金(賞与および基準外賃金を含む)÷人員数として算出しています。

パート・有期契約社員等は、期間従業員、準社員、パートタイマー、定年後再雇用者、嘱託社員を対象に算出しています。なお、パートタイマーの人員数については、労働時間をもとに換算し算出していません。

当社の賃金制度では男女による差を設けていません。正社員の男女の賃金差異は、「平均年齢」と「職種別の在籍人員」に起因しています。同一年齢かつ同職種であれば男女の賃金差異は縮小します。

 

年齢:30歳の正社員を対象に、男女の賃金差異を職種別に抽出した結果は以下のとおりです。

事技職:94.7%、業務職:データなし(男性0名のため)、技能職:79.9% 、医務職:94.5%

 

パート・有期契約社員等の男女の賃金差異は、「就業形態の違い」に起因しています。特に、定年後再雇用者は、職務内容や定年前の資格等を踏まえて処遇を決定しており、差異が出る要因となっています。

 

 

 

 

 

② 主要な連結子会社

当事業年度

名称

管理職に

占める

女性労働者の割合(%)(注3)

男性労働者の

育児休業取得率(%)(注6)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注3)(注7)

雇用管理区分

 

全労働者

正社員

パート・有期契約社員等

 

日野自動車㈱

2.8

全労働者

68.0

(注4)

77.8

77.3

90.3

 

プライムプラネット
エナジー&
ソリューションズ㈱

全労働者

58.0

(注4)

72.3

71.2

74.5

(注8)

ダイハツ工業㈱

3.3

全労働者

64.0

(注4)

79.9

78.7

88.8

 

トヨタ車体㈱

2.7

全労働者

75.0

(注4)

74.1

73.0

86.9

 

トヨタ自動車九州㈱

3.2

全労働者

40.0

(注4)

64.0

68.3

70.2

(注8)

トヨタ自動車東日本㈱

2.4

全労働者

50.0

(注4)

77.5

76.2

75.2

(注8)

ウーブン・バイ・
トヨタ㈱

19.5

全労働者

82.0

(注5)

77.4

82.0

71.8

 

トヨタファイナンシャル
サービス㈱

15.6

専門職

150.0

(注3)

 

トヨタファイナンス㈱

7.4

全労働者

77.0

(注5)

50.3

52.2

45.3

 

 

 

(注)1

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出した指標については小数点以下第2位を四捨五入して、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき算出した指標については小数点以下第1位を切り捨てて、それぞれ小数点以下第1位まで表示しています。

「―」は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)において、公表義務がない場合、選択公表をしていない場合、「労働者の男女の賃金の差異」について男女いずれかの該当者がいない場合、または「男性労働者の育児休業取得率」について分母がゼロとなる場合を示しています。

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しています。

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出しています。

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出しています。

男性労働者の育児休業取得率は、過年度に配偶者が出産した男性労働者が、当事業年度に育児休業を取得することがあるため、取得率が100%を超えることがあります。

男女の賃金差異は、女性労働者の平均年間賃金÷男性労働者の平均年間賃金×100%として算出しています

労働者の人員数について労働時間をもとに換算し算出しています。

連結子会社のうち主要な連結子会社以外のものについては、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報(2)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)ガバナンス

当社は、創業以来、「豊田綱領」の精神を受け継ぎ、「トヨタ基本理念」に基づいて事業活動を通じた豊かな社会づくりを目指してまいりました。2020年には、その思いを礎に「トヨタフィロソフィー」を取り纏め、「幸せの量産」をミッションに掲げて、地域の皆様から愛され頼りにされる、その町いちばんの会社を目指しています。そのトヨタフィロソフィーのもと、サステナビリティ推進に努めています。

当社では、外部環境変化・社会からの要請などを把握し、より重要性・緊急性が高い課題に優先的に取り組むために、取締役会の監督・意思決定のもと、次のような推進体制にて関係部署と密に連携しながら、環境・社会・ガバナンスなどのサステナビリティ活動を継続的に推進・改善しています。

経営に関わる横断的なサステナビリティの重要課題を審議するため、社長が議長を務め、主に環境、社会課題に関するテーマを扱うサステナビリティ会議と、Chief Risk Officerが議長を務め、ガバナンスに関するテーマを扱う「ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議」を設置しています。その他、より実務に近い個別の課題・テーマは機能軸で分科会を設け、審議する体制を構築しています。

また、サステナビリティ活動に関して外部ステークホルダーとのエンゲージメントや情報発信をリードする責任者としてChief Sustainability Officerを任命しています。

<サステナビリティ推進体制>


 

サステナビリティ会議

ガバナンス・

リスク・

コンプライアンス会議

サステナビリティ分科会

CN戦略分科会

ガバナンス・

リスク・

コンプライアンス

分科会

議長

社長

CRO兼CHRO

サステナビリティ統括部長兼CCO

CN開発センター長

サステナビリティ統括部長兼CCO

メンバー

副社長2名、

社外取締役1名、

社外監査等委員2名、

CPO、CSO、CRO兼CHRO、CCO、

執行役員1名、

他5名

副社長2名、

社外取締役1名、

社外監査等委員3名、

監査等委員1名、CPO、CCO、CSO、

他3名

社外取締役1名、

社外監査等委員1名

CRO兼CHRO、CSO、CISO、他5名

 

副社長2名、

執行役員3名、

CPO、CSO、CISO、

 

他10名

社外取締役1名、

社外監査等委員1名、

執行役員1名、

CRO兼CHRO、CSO、CISO、GCQO、

他9名

2024年度

開催実績

5回

3回

 

3回

2回

5回

取締役会への

報告頻度

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

内容

サステナビリティに関連する重要案件について、審議・決定・活動を推進することで企業価値向上に貢献

ガバナンス・リスク・コンプライアンスに関連する重要事項、特に経営レベルで方向付けが必要な案件を提案・審議

内外の変化を総覧しつつ、環境、社会、ガバナンス、およびSDGsに関わる中長期的な競争力強化とリスク対応に関する経営の重要事項について報告・審議

カーボンニュートラルおよび環境課題に係る、グローバルの需要動向への共通認識を醸成

上記に関する目標・KPI などの経営上の重要施策を報告・審議

ガバナンス・内部統制、企業倫理、コンプライアンスおよびインシデントならびに事業・商品戦略におけるリスクマネジメント全般に関する重要課題および対応について審議・決定・活動を推進

 

CPO:Chief Production Officer   CHRO:Chief Human Resources Officer CCO:Chief Compliance Officer              GCQO:Global Chief Quality Officer 

CSO:Chief Sustainability Officer CRO :Chief Risk Officer       CISO:Chief Information & Security Officer 

 

(2)リスク管理

当社は、カーボンニュートラル、CASE※など自動車産業を取り巻く状況や価値観の大変革時代において、常に新たな挑戦が求められるなか、不確実性への対応としてリスクマネジメントをより一層強化してまいります。

各地域、機能、カンパニーが相互に連携・サポートし、グローバル視点で事業活動において発生するリスクを予防・緩和・軽減し、適切に管理するために、リスクマネジメントの責任者としてChief Risk Officer(CRO)、Deputy CRO(DCRO)および、各地域にリスクマネジメント統括を配し、以下の推進体制を構築しています。また、全社横断的な観点でリスクを特定し、対応・モニタリングを行うためにCCOのもと「ガバナンス・リスク・コンプライアンス分科会」を設置しています。重要案件についてはCROを議長とした「ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議」にて審議し、取締役会へ適切に付議し、事業の推進を図っています。

なお、リスクマネジメントシステムの仕組みとして、ISOやCOSO(Committee for Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)を基盤とする全社的リスク管理フレームワーク、Toyota Global Risk Management Standard(TGRS)に基づき、定期的なリスクの識別・評価および対策の推進を実施しています。

 

※ CASEとは、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった略称

 

 


 

 

 

(3)人的資本に関する考え方及び取り組み

当社グループにおいては、「モノづくりは人づくり」との理念の下で、創業当初より人材育成に注力してまいりました。

自動車産業が、100年に1度の大変革期のなか、当社グループでは、「継承と進化」をテーマに掲げ、「もっといいクルマをつくろう」、「世界一ではなく、町いちばんへ」、「自分以外の誰かのために」といったトヨタらしさを引き継ぐとともに、未来にむけて、「モビリティカンパニーへの変革」を実現するために、全力で取り組みを進めつつあります。

こうした正解のない時代のなかで、豊田綱領に象徴される創業期の理念・トヨタらしさを守り、トヨタフィロソフィーを道標にクルマの未来を切り開いていくためには、トヨタで働く一人ひとり、まさにグローバル38万人の仲間が、同じ思いを共有し、「チームで、同時に、有機的に動いていくこと」、そして、そのための人づくりが求められていきます。

グローバル全体としては、全地域へのフィロソフィーの浸透に加え、グローバル幹部候補向けの研修をはじめとする様々な機会を通して、本社と地域事業体が一体となり、トヨタの「思想・技・所作(トヨタフィロソフィー・トヨタ生産方式(TPS)等)」を軸とした人材育成の共通基盤づくりを強化しています。また、地域事業体においても、地域特性や多様なお客様ニーズに応じ、地域に根差した人材戦略の策定と実行を、機動力よく推進するための体制整備を促進しています。

当社においては、育成を含む人への投資について、労使の間でも継続的な対話を続けてきています。「会社は従業員の幸せを願い、従業員は会社の発展を願う」という労使共通の価値観の下、これまでの労使による話し合いにおいて、当社の最大の財産は「人」であるという共通認識に立ち、未来に向けた諸施策について、労使間での議論を実施するとともに、スピーディな変革に繋がるよう、具体的な取り組みまで確認し、労使ともになって取り組みを推進してまいりました

 

2023年以降は、「誰もが、いつでも、何度でも、失敗を恐れず挑戦できる」会社であるため、「多様性」「成長」「貢献」を3つの柱とした諸施策の実現、および、その柱を支えるための土台の強化を進めてきました。加えて2024年は、「10年後の働き方を今つくる」という、 将来を見据えた中での対応を進めるため、一人ひとりが、会社で働くことのやりがいを見つけ、自ら成長する機会を求める・見つける・取りに行くこと、またそのような行動を会社としても応援する環境を整備することを目指し、以下の取り組みを推進しました。

 

<2024年の主な取り組み>

 1.より働きやすいモノづくり環境の整備

   ●多様な人材が安心して働ける職場環境の整備

     ・工場の環境整備の推進/寮のリニューアルの着手

   ●創造性を育むリソーセス確保

     ・女性活躍や高齢者活用を推進する基盤の整備

 2.自らやりがいや成長をつかみ取る仕組みづくり

   ●強みを活かす働き方

     ・全職種を対象とした職種変更制度の一部職種でのトライアル実施

     ・自律的な働き方を促進する基盤の整備

   ●マネジメントの強化

     ・マネジメントの役割定義と育成・評価の見直し、環境整備

   ●自ら学べる機会

     ・自律型人材の輩出に向けた支援策の整備・展開(選択型研修の強化等)

   ●自社製品の知識/愛着

     ・研修等を通じた試乗体験機会の提供

 

上記を通じ、当社の中で顕在化していた課題の解消が進み、「働きやすさ」と「やりがい」の向上につながる環境整備を一歩ずつ前進させられていると考えています。

 

当社は、引き続き「全員活躍」に向けた取り組みを推進してまいりますが、競争力を維持しつづけ、将来に引き継いでいくためには、全員が健全な危機感と当事者意識を持ち、未来に向けた行動を積み重ねていくことが重要と考えております。

そのため、2025年は全社に加え本部別でも労使の話し合いを行い、以下の取り組みを推進していくことといたしました。

 

<総合的な「人への投資」の方向>

「人も職場も一律ではない」という想いのもと、各職場固有の課題や、未来に向けた行動を具体的に話し合い、全員が実行に移していける環境を整備

1.各本部・カンパニーでの年間を通じた全員参加の話し合い

2.“挑戦・行動する人”を後押しする仕組み・制度

 

 <2025年の主な取り組み>

 1.各本部・カンパニーでの年間を通じた全員参加の話し合い

   ●職場で解決できる課題・困りごとを、職場で一つひとつ解決

     ・本部長・プレジデントが現地現物で判断、実行

     ・7月・11月に全社で進捗を確認

 

 2.“挑戦・行動する人”を後押しする仕組み・制度

   ●個の力を引き出す仕組み・制度

     ・全職種・資格での役割に応じたメリハリのつく評価

     ・技能職の人事制度見直し

     ・新たに加わるメンバーの立ち上がりサポート施策の充実

 

   ●個と職場に本気で向き合うマネジメントの育成

     ・配置前の研修新設・職場実践で改善につなげるサイクル導入

     ・対話力や評価・フィードバックスキルの改善支援

 

上記取り組みを推進していくことに加え、自動車産業の未来に向けて、仕入先・販売店が取り組まれる「人への投資」においても、当社として可能な支援を継続的に行ってまいります。また、2025年からは、物流業界の課題や困りごとについても、トヨタができることについて労使で議論を始めています。

 

 

4)気候変動対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)

トヨタは気候変動対応において、2050年カーボンニュートラル実現に向け、地球規模でチャレンジすることを宣言しています。グローバルでチャレンジするために、地域によって異なるエネルギー事情を考慮し、世界各国・地域の状況に対応した多様な選択肢を提供することで、需要動向にすばやく対応していきます。

またトヨタは、金融安定理事会「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に2019年4月に賛同・署名しており、気候変動のリスク・機会とその分析について、適切な情報開示を進めています。

 

①ガバナンス

a.気候関連のリスクと機会についての、取締役会による監視体制

トヨタは、取締役会において気候関連課題を扱うことにより、社会動向に応じた戦略の立案・実行が、効果的に行われると考えています。取締役会は、戦略/主要な行動計画/事業計画の審議と監督を行う場であり、気候関連の重要な事案が生じた時に、議題として上程されます。

取締役会の監督の下、CN戦略分科会にて、気候関連課題に対応するための定性的あるいは定量的な目標の進捗モニタリングも行います。モニタリングは、気候関連課題になりうる、例えば、燃費・排出ガス規制など製品関連のリスクや機会、低炭素技術開発に関するリスクや機会、それらによる財務的影響などを考慮して行われます。また、このガバナンスメカニズムを「トヨタ環境チャレンジ2050」を含む長期戦略の策定、中長期目標およびアクションプランの立案・見直しに活かしています。

2024年における取締役会での意思決定の事例としては、カーボンニュートラルの実現に向け、電気自動車(BEV)の普及に不可欠な充電インフラを拡充すべく、北米でのBEV急速充電ネットワークIONNAへの投資の承認を得られたことや、上海市との包括的提携契約の締結や、BEVや電池の開発・生産会社の設立の承認を得られたことがあげられます。新会社ではレクサスブランドのBEVを開発し、2027年以降に生産開始を予定しています。

 

b.気候関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営の役割

気候関連課題に対応する最終的な意思決定・監督機関は取締役会となります。また、主に以下の会議体が、気候関連のリスクと機会について評価し、管理を行っています。

 

サステナビリティ会議

ガバナンス・

リスク・

コンプライアンス会議

サステナビリティ分科会

CN戦略分科会

ガバナンス・

リスク・

コンプライアンス

分科会

議長

社長

CRO兼CHRO

サステナビリティ統括部長兼CCO

CN開発センター長

サステナビリティ統括部長兼CCO

メンバー

副社長2名、

社外取締役1名、

社外監査等委員2名、

CPO、CSO、CRO兼CHRO、CCO、

執行役員1名、

他5名

副社長2名、

社外取締役1名、

社外監査等委員3名、

監査等委員1名、CPO、CCO、CSO、

他3名

社外取締役1名、

社外監査等委員1名

CRO兼CHRO、CSO、CISO、他5名

 

副社長2名、

執行役員3名、

CPO、CSO、CISO、

 

他10名

社外取締役1名、

社外監査等委員1名、

執行役員1名、

CRO兼CHRO、CSO、CISO、GCQO、

他9名

2024年度

開催実績

5回

3回

 

3回

2回

5回

取締役会への

報告頻度

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

重要な事案が生じたとき

内容

サステナビリティに関連する重要案件について、審議・決定・活動を推進することで企業価値向上に貢献

ガバナンス・リスク・コンプライアンスに関連する重要事項、特に経営レベルで方向付けが必要な案件を提案・審議

内外の変化を総覧しつつ、環境、社会、ガバナンス、およびSDGsに関わる中長期的な競争力強化とリスク対応に関する経営の重要事項について報告・審議

カーボンニュートラルおよび環境課題に係る、グローバルの需要動向への共通認識を醸成

上記に関する目標・KPI などの経営上の重要施策を報告・審議

ガバナンス・内部統制、企業倫理、コンプライアンスおよびインシデントならびに事業・商品戦略におけるリスクマネジメント全般に関する重要課題および対応について審議・決定・活動を推進

 

CPO:Chief Production Officer   CHRO:Chief Human Resources Officer CCO:Chief Compliance Officer              GCQO:Global Chief Quality Officer 

CSO:Chief Sustainability Officer CRO :Chief Risk Officer       CISO:Chief Information & Security Officer

 

c.気候関連のリスクを管理するプロセスと全社的なリスク管理との連携

トヨタは2019年4月、TCFD提言に賛同・署名し、国内企業や金融機関などが一体となって取り組みを推進するTCFDコンソーシアムに加盟しました。気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識し、TCFD提言を踏まえ、リスクと機会を特定し、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。ISO規格やCOSO枠組みを基盤とする全社的なリスク管理フレームワークであるToyota Global Risk Management Standard(TGRS)などを活用して、グローバルな事業活動に関わるすべてのリスクを特定、必要に応じて全社横断でタスクフォース化し、「ガバナンス・リスク・コンプライアンス分科会」などで対策の進捗を確認しながらリスクマネジメントを推進しています。また、重要案件については「ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議」にて審議の上、取締役会へ適切に付議して、事業の推進を図っています。

リスクは影響度と脆弱性の2つの観点で評価し、想定される発生時期を把握することで、事業に対する実質的な財務・戦略的影響を明確化しています。

影響度の観点では、財務/評判/法規制違反/事業継続の各要素について5段階で評価(「財務」は売上高に対する割合を指標化)しています。また、脆弱性の観点では、対策の現状と発生可能性の二つの指標で評価しています。上記の観点で評価された地域別、機能別(生産/販売など)、製品別の重要リスクは、リスクオーナーが設定され、各部門の本部長や社内カンパニープレジデントが活動を統括し、その下位では部長が部署の活動を統括、対応策の実行およびモニタリングを実施しています。

気候関連のリスクと機会は、上記のTGRSに加え、サステナビリティ分科会やCN戦略分科会においても評価され、担当部署や関係役員による審議を行い、対応状況のモニタリングや見直しを実施しており、環境問題から生じる様々なリスクと機会の把握に努め、トヨタ環境チャレンジ2050などの戦略の妥当性を常に確認し、取り組みを推進、競争力強化を図っています。

サステナビリティ分科会では、サステナビリティ推進に関する課題や社外ステークホルダーの視点を考慮した取り組みの妥当性を評価・議論し、CN戦略分科会では、燃費規制、工場/物流/その他非生産拠点のCO2排出量規制、調達関連、水リスクなどの直接操業における取り組みの妥当性を評価・議論しています。これらの会議体には、技術/環境/財務/調達/生産/営業といった関連部署の役員・部長級が参加しています。評価に関しては、車両・生産販売事業・サプライチェーンにおける現在と将来の温室効果ガス(GHG)排出量を算定し、関連する科学的根拠に基づいた排出削減経路に照らし合わせて評価しています。また、迅速な対応が必要となる重要なリスクと機会については、取締役会へ適切に付議し、対応を決定しています。

 

②戦略

トヨタの戦略(マルチパスウェイ戦略の基本的な考え方)

クルマが社会で必要な存在であり続けるための喫緊の課題がカーボンニュートラルです。「マルチパスウェイ戦略」の根幹にある考え方は、モノづくりやサプライチェーンの脱炭素化を進めながらエネルギーの未来と地域・お客様の期待に寄り添った多様なモビリティを提供することです。大前提として、地球環境やサステナビリティの観点から、化石燃料から脱却していく必要があります。そのうえで、中長期的には、再生可能エネルギーの普及が進み、「電気」と「水素」が社会を支える有力なエネルギーになっていくと考えられます。一方で、短期的には、世界各地の現実に向き合い、エネルギーセキュリティを担保しながら、プラクティカルに変化を進めていくことが重要です。だからこそ私たちは、電気と水素の未来を見据えながら、再生可能エネルギー由来の電力、その電力を基にした水素や合成燃料、バイオ燃料など、多様なエネルギーに対応するモビリティの選択肢でカーボンニュートラルに貢献していきます。

GHG排出量を現実的に減らしていくには、既存のインフラやアセットを活用しながら確実に減らしていくことが重要です。また、自動車産業におけるカーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーや充電インフラなどのエネルギー政策と、購入補助金、サプライヤー支援、電池リサイクルシステムの整備などの産業政策が不可欠であり、各国のエネルギー政策や産業政策、お客様の選択など、不確実性への対応が必要です。多様なモビリティの選択肢を提供するマルチパスウェイ戦略は、不確実性に対し、どのような社会が実現してもいずれかの選択肢で対応することができる戦略です。様々な産業が関わっているため、パートナーづくりに積極的に取り組み、電気と水素が地球環境を守っていく環境づくりを少しでも早く実現できるよう取り組みを推進しています

 

 


 トヨタは、シナリオ分析によりマルチパスウェイ戦略のレジリエンスを検証しています。

 

気候関連のリスクと機会の特定および評価するプロセス

気候変動に関する社内専門チームと社外専門家により、将来の社会像を想定したシナリオ分析を行うことにより、気候関連のリスク・機会を特定・評価するとともに、戦略のレジリエンスを評価しています。

 

シナリオ分析の概要

シナリオ分析は、TCFDや環境省のガイダンスにおいて示されるプロセスに基づき、実施しています。


(ⅰ)分析対象

・移行リスク:トヨタ自動車および連結会社における自動車事業とサプライチェーン

・物理的リスク:トヨタ自動車および連結会社、非財務連結会社のトヨタ車生産拠点

(ⅱ)時間軸の定義

・リスクが発現する期間は、以下のように設定しています。


(ⅲ)影響評価の対象期間

・移行リスク:2030~2035年

・物理的リスク:2050、2090年

 

 

リスクと機会の特定および評価

将来の社会像を想定した気候変動関連のリスクと機会の主要な変動要因(リスクドライバー)を、移行リスク(政策・法規制、市場、技術、評判)、物理的リスク(急性・慢性)のそれぞれの観点で特定します。特定したリスクドライバーを起点とし、リスクと機会に至るまでの要因解析を実施することにより、リスクと機会を網羅的に洗い出します。要因解析により特定したリスクと機会に、TGRSで特定されたリスクを取り込み、リスクドライバーをカバーする各シナリオにおいて、リスクと機会の発現と影響度がどのように変化するかを検証・評価(4℃シナリオでは、トヨタのグローバル生産拠点の地理情報に基づいた物理的リスクの影響を評価)しています。

 

シナリオの選定

参照シナリオとして、以下の公表シナリオを選択しています。

・1.5℃シナリオ(IEA*1 IPCC*2 AR6 WG 3など複数の公表シナリオ)

・4℃シナリオ(IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5)

*1 International Energy Agency:国際エネルギー機関

*2 Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル

 

シナリオ選定における考え方

トヨタはエネルギーの未来について、将来的には再生可能エネルギーの普及を通じて、社会を支えるエネルギーは電気と水素に収れんしていくと考察していますが、その一方で、足元では国・地域ごとに様々なエネルギー事情があり、トランジションのペースが異なることを認識しています。近年の世界情勢からも、環境問題と経済安全保障との両立が議論され始めるなか、国際的なインフレによる再生可能エネルギー投資の鈍化や、欧米などでのBEVの販売低迷といった事象も見受けられます。

こうした背景認識のもと、中長期的には電気と水素の未来を見据えながら、短期的にはエネルギーの実情と多様なお客様ニーズに応える選択肢を提供し、現実に即したトランジションを進めていくことがトヨタのマルチパスウェイ戦略の考え方です。

気候変動枠組条約締約国会議(COP)をはじめとする国際的な対応議論の場においても、将来に至るまでの過渡期の対応、各国・各地域の事情に応じた緩和策や多様な脱炭素手段の導入について議論が進行しています。

上記を踏まえ、1.5℃シナリオにおける分析では、乗用車について、BEV・PHEVの導入を主要な施策として脱炭素策を論じたIEAのNZEシナリオに加え、地域性や緩和策の多様化(炭素吸収技術(CDR)/炭素回収・貯留技術(CCS)/カーボンニュートラル燃料など)を反映したその他の1.5℃シナリオも考慮し、戦略のレジリエンスを検証しています。

また、各シナリオの前提・世界観を整理し、各シナリオの実現に向けた課題を以下のとおり考察しています。

IEA NZEシナリオに関しては、グローバル全体で再生可能エネルギー利用が促進され、自動車分野ではBEVが推進し、急速にGHGが削減する前提だが、実際には地域のエネルギー事情と政策展開により、これらの施策は取り組みの進度が異なることが想定されます。

その他の1.5℃シナリオに関しては、バイオ燃料では食料競合や土地利用制約による供給量の差異などで、地域による燃料種や導入量の差が生じ得ることや、脱炭素技術の市場導入では初期段階に多大な投資が必要で、投資状況により進展に差が生じ得る(将来的には市場に広く浸透することによりコストが適正化されると考察)ことが想定されます。

 

財務影響評価

特定したリスクと機会の財務指標との紐づきについて、因果関係の検証を実施しています。特定したリスクと機会におけるモビリティコンセプトなどの経営上のテーマやサステナビリティの重点取り組みテーマとの関連性を評価し重要性を確認し、それぞれのシナリオにおける前提を考慮し、特定したリスクと機会の潜在的な財務影響を評価しています。


 

レジリエンス分析の概要

カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、エネルギーの未来を見据えて、燃料やインフラなど地域ごとに異なるニーズに応える多様な選択肢を提供することにより、プラクティカルにトランジションを進めていくことがトヨタのマルチパスウェイ戦略の考え方です。シナリオ分析では、TCFDフレームワークを参考に、移行リスクは1.5℃シナリオ、物理的リスクは4℃シナリオを用いて、リスクと機会を特定し、財務影響評価を実施しています。近年の世界情勢や国際的な気候変動対応議論の状況を踏まえ、IEAのNZEシナリオに加え、その他の1.5℃シナリオについても比較検討しています。いずれのシナリオの前提条件にも制約がともなう場合があるため、それらの状況についても考慮しつつ、特定したリスクの最小化および機会の獲得に向けたトヨタの取り組みを整理するとともに、シナリオの実現に向けた社会的課題に貢献しうるトヨタの取り組みを整理することにより、トヨタの事業活動におけるレジリエンスを検証しています。

 

1.5℃シナリオ分析

IEAのNZEシナリオの検討

IEAはNZEシナリオ実現に向け、以下課題への対応が必要と報告しています。

再生可能エネルギーの積極的な導入により電力の脱炭素化が進むなか、運輸部門中の乗用車はBEV化が進み、2030年以降、急速にGHG排出が削減され、2050年にネットゼロを達成すること、また、その実現に向けて、各国政府が、カーボンプライシング/燃費規制の厳格化/内燃機関車の販売禁止など、野心的な気候政策を実施すると同時に、BEVを普及するためのインセンティブ策を拡大すること、そして、政策と消費者の環境意識の向上により、市場はBEVを受容する一方、技術面では、車両電動化/革新的な電池開発/再生可能エネルギー電力を活用したエネルギーマネジメントシステムなどが進展し、社会全体で電化と再生可能エネルギーへの転換が進み、エネルギー効率の改善によりエネルギー消費量が削減することがあげられています。

本シナリオにおける移行リスクには、以下があります。

・燃費/GHG/ZEV規制不適合による罰金など

・規制対応にともなう急な商品変更による減産や販売台数の低下

・パワートレーン技術開発にともなう研究開発費用の増加

・車両の電動化が急速に進むことにより、BEV関連の原材料需要増加にともなう供給不足と調達コストの増加

・再生可能エネルギー拡大にともなう再生可能エネルギー価格(IREC含む)の高止まりによる製造コスト増加

 


 

IEAのNZEシナリオ実現に向けては、以下のような社会的課題があります。

・再生可能エネルギー導入を促進する政策

・投資の実行、電池材料確保のための社会システム構築とリサイクル技術開発

・電気や水素利用の脱炭素技術革新と低コスト化

・電動車普及にともなう充電インフラの整備など

これらの社会的課題に対し、トヨタは以下の取り組みに貢献するとともに、自社のリスクも最小化しています。


 

その他の1.5℃シナリオの比較検討

2024年、IEAのNZEシナリオに加え、地域ごとの値や差異をより詳細に分析するため、IPCCや各研究機関が公表している複数の1.5℃シナリオ群を比較検討しました。パリ協定1.5℃実現に向けた道筋として、エネルギー部門では、再生可能エネルギー利用のほか、炭素回収貯留技術(CCS)などの多様な技術導入など比較検討し、運輸セクターでは、車両の電動化のほか、省燃費車の活用やバイオ燃料や合成燃料などの低炭素燃料・カーボンニュートラル(CN)燃料の普及などを比較検討しました。また、新興国では、各地域のバイオマスなどの低炭素エネルギー源を活用し、過渡期にはCCUSと組み合わせた化石燃料利用の検討も行い、経済発展とCNの両立を目指ことや、低炭素燃料・CN燃料などの多様なエネルギーインフラ整備が進むことで消費者は生活利便性に基づき、多様なエネルギーとパワートレーンを選択することが想定されます。

シナリオ群実現に向けた社会的課題は、IEAのNZEシナリオに比べより多様化しています。例えば、水素/バイオ/合成燃料など各国・地域に適合した低炭素燃料・CN燃料の技術開発、ならびに普及初期段階での導入支援や、バイオ燃料に関わる食料競合などの問題解決や低コスト化があります。その他には、CN燃料の他セクターとの配分や、安定したエネルギー供給に向けた技術開発や政策支援などがあります。

本シナリオ群における移行リスクとして、BEV推進に係る移行リスクはIEAのNZEシナリオと同様ですが、現時点での各国・各地域のBEV導入の実績、施策の見直しを踏まえると、トヨタの戦略・財務への影響は比較的小さいこと、自動車燃料多様化にともなう研究開発費用が増加すること、そして、電力以外にも、ガス燃料や液体燃料などエネルギーの低炭素化にともなうエネルギー調達コストが増加することがあげられます。

 


 


シナリオ分析を通じて、パリ協定に整合する1.5℃実現に向けた経路は様々に存在し、それぞれに実現のための条件と社会的な課題が存在することが判明しました。また、世界にマーケットを持つトヨタは、単一の施策・技術に特化し限定されることなく、各国・各地域で異なる市場とステークホルダーの要請に応えるため、様々な経路や、不確実性に対応可能な多様な施策・技術(マルチパスウェイ戦略)が有効と再認識しました。

 


 

4℃シナリオ分析

IPCC SSP5-8.5は、化石燃料依存型の経済発展を続けて気候政策が導入されない場合の最大排出量シナリオであり、物理的リスクを評価しています。

本シナリオ下における主な物理的リスクには、自然災害の頻発化や激甚化の結果、サプライチェーンが分断することによる生産・販売の停止や水不足や水コスト増加による、工場操業への影響があります。また、昨今の自然災害の実態を踏まえたリスクの高い拠点のスクリーニングとして、洪水による河川氾濫/内水氾濫/高潮による浸水ハザードについて、国内外の事業拠点(国内137拠点・海外73拠点)の地理的座標を用いて、リスクの高い拠点のスクリーニングを実施しました。スクリーニングの結果、気候変動による将来変化が見られ、リスクに留意すべき(グレードB以上)と評価された国内外の拠点についてリスク評価を実施しました。

 


 


 

シナリオ分析を通じて、国内外の事業拠点の一部において河川氾濫リスク・内水氾濫リスク・高潮リスクが特定されましたが、地域の事業体への影響は軽微であることが判明しました。また、災害訓練などによりPDCAを回して改善を行うことでBCPの実効性が高まり、災害発生時の復旧速度は上がっていることを確認しました。この活動を「事業継続マネジメント(BCP*1)」と位置づけ、従業員・家族・トヨタグループ・サプライヤー・販売・トヨタが三位一体となった活動として推進し、今後も継続していきます。

 

*1 Business Continuity Management:BCPで定めた各対策計画が実行可能なものとして機能するよう定める運用管理の仕組み

 

レジリエンス分析結果として、トヨタは町いちばんの会社を目指すとの理念に基づいて各国・各地域発展の助成につながるべく、さまざまな経済・エネルギー事情に即しつつ、お客様に受け入れていただけるラインアップを計画しています。このマルチパスウェイ戦略は、あらゆるシナリオが描く世界観においてレジリエンスが高いことが判明しました。IPCC報告書でも記載されているとおり、パリ協定で掲げられている1.5℃実現には様々な経路があり、地域のエネルギー事情や政策によっても変動する可能性がありますが、その実現には様々な産業が関わっているため、カーボンニュートラル(CN)燃料普及も含んだパートナー連携が不可欠です。トヨタはパリ協定を支持し、それに沿って行動しています。パリ協定との整合は重要であり、パートナーと共に、モビリティコンセプトに基づく車両開発や社会インフラ作りを推進し、2050年CN達成に向けて全力でチャレンジしていきます。今後もシナリオ分析を継続することで、内外の状況の変化に応じてリスクと機会を見直し、その対応を戦略に織り込むことでさらなるレジリエンス向上に注力していきます。

 

移行計画

前述したリスクと機会へ対応するために、トヨタでは移行計画として温室効果ガス(GHG)削減目標を設定しています。移行計画の妥当性確認には、複数のシナリオを参照しています。

マルチパスウェイ戦略の下、プロジェクト関連の財務計画に落とし込み、移行計画を具体化してまいります。なお、一定額以上のプロジェクト投資にあたっては、取締役会で承認します。

 



 


 

③指標と目標

組織が自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスクと機会を評価するために用いる指標

トヨタは常に世の中の動きやお客様の声を把握し、何に注力すべきかを考察することで将来の課題をいち早く察知し、新たな発想と技術で課題解決を推進しています。一方で、気候変動/水不足/資源枯渇/生物多様性などの地球環境問題は日々拡大、深刻化しています。トヨタでは、複数の指標を設定し、複合的に気候関連のリスクと機会を管理することが、気候変動への適応とその緩和に向けた対策として重要であると認識しています。このため指標には、GHG排出量のほか、気候変動と深く関係する、エネルギー、水、資源循環、生物多様性なども含めて目標を定め、

「6つのチャレンジ」という6分野の取組みにより体系的に推進しています。

・長期(2050年目標):「トヨタ環境チャレンジ2050」

・中期(2030年目標):「2030マイルストーン」、SBTi認定・承認

・短期(2025年目標):「第7次トヨタ環境取組プラン」

「6つのチャレンジ」のうち、以下の取り組みを推進することで、2050年のScope1,2,3カーボンニュートラルをめざします。

 


 

2022年9月、SBTiからScope1,2とScope3カテゴリー11の削減目標について認定・承認を取得し、これに準じて中期目標を更新しています。炭素価格を考慮することは排出の多い事業の見直しが進むため、社内では一定の炭素価格を指標とし設備投資などの検討に活用しています。

 


2023年4月には、全世界で販売する新車の走行における平均GHG排出量を、2019年比で2030年に33%、2035年に50%以上の削減を目指すことを公表しました。

企業価値を向上させる役員報酬の設定について、トヨタでは気候変動をはじめとした環境対応や、トヨタ自動車およびバリューチェーンに関わる社会課題の解決に貢献できることが取締役には必要と考え、必要スキルの一つとして定め取締役を選任しています。企業価値の向上という目標を達成するため、財務指標および非財務指標に連動した役員報酬制度により環境取り組みの向上を目指しています。