人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数70,224名(単体) 380,793名(連結)
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平均年齢40.6歳(単体)
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平均勤続年数16.0年(単体)
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平均年収8,998,575円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1)連結会社の状況
2024年3月31日現在
(2)提出会社の状況
2024年3月31日現在
(3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
② 主要な連結子会社
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は、創業以来、「豊田綱領」の精神を受け継ぎ、「トヨタ基本理念」に基づいて事業活動を通じた豊かな社会づくりを目指してまいりました。2020年には、その思いを礎に「トヨタフィロソフィー」を取り纏め、「幸せの量産」をミッションに掲げて、地域の皆様から愛され頼りにされる、その町いちばんの会社を目指しています。そのトヨタフィロソフィーのもと、サステナビリティ推進に努めています。
当社では、外部環境変化・社会からの要請などを把握し、より重要性・緊急性が高い課題に優先的に取り組むために、取締役会の監督・意思決定のもと、次のような推進体制にて関係部署と密に連携しながら、環境・社会・ガバナンスなどのサステナビリティ活動を継続的に推進・改善しています。
経営に関わる横断的なサステナビリティの重要課題を審議するため、社長が議長を務め、主に環境、社会課題に関するテーマを扱うサステナビリティ会議と、Chief Risk Officer兼Chief Compliance Officerが議長を務め、ガバナンスに関するテーマを扱う「ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議」を設置しています。その他、より実務に近い個別の課題・テーマは機能軸で分科会を設け、審議する体制を構築しています。
また、サステナビリティ活動に関して外部ステークホルダーとのエンゲージメントや情報発信をリードする責任者としてChief Sustainability Officerを任命しています。
<サステナビリティ推進体制>
CPO:Chief Production Officer CHRO:Chief Human Resources Officer CCO:Chief Compliance Officer DCRO:Deputy Chief Risk Officer
CSO:Chief Sustainability Officer CRO :Chief Risk Officer CISO:Chief Information & Security Officer DCCO:Deputy Chief Compliance Officer
(2)リスク管理
当社は、カーボンニュートラル、CASE※など自動車産業を取り巻く状況や価値観の大変革時代において、常に新たな挑戦が求められるなか、不確実性への対応としてリスクマネジメントをより一層強化してまいります。
各地域、機能、カンパニーが相互に連携・サポートし、グローバル視点で事業活動において発生するリスクを予防・緩和・軽減し、適切に管理するために、リスクマネジメントの責任者としてChief Risk Officer(CRO)、Deputy CRO(DCRO)および、各地域にリスクマネジメント統括を配し、以下の推進体制を構築しています。また、全社横断的な観点でリスクを特定し、対応・モニタリングを行うためにCROのもと「ガバナンス・リスク分科会」を設置しています。重要案件については「ガバナンス・リスク・コンプライアンス会議」にて審議し、取締役会へ適切に付議し、事業の推進を図っています。
なお、リスクマネジメントシステムの仕組みとして、ISOやCOSO(Committee for Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)を基盤とする全社的リスク管理フレームワーク、Toyota Global Risk Management Standard(TGRS)に基づき、定期的なリスクの識別・評価および対策の推進を実施しています。
※ CASEとは、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった略称
(3)人的資本に関する考え方及び取り組み
当社グループにおいては、「モノづくりは人づくり」との理念の下で、創業当初より人材育成に注力してまいりました。
自動車産業が、100年に1度の大変革期のなか、当社グループでは、「継承と進化」をテーマに掲げ、「もっといいクルマをつくろう」、「世界一ではなく、町いちばんへ」、「自分以外の誰かのために」といったトヨタらしさを引き継ぐとともに、未来にむけて、「モビリティカンパニーへの変革」を実現するために、全力で取り組みを進めつつあります。
こうした正解のない時代のなかで、豊田綱領に象徴される創業期の理念・トヨタらしさを守り、トヨタフィロソフィーを道標にクルマの未来を切り開いていくためには、トヨタで働く一人ひとり、まさにグローバル38万人の仲間が、同じ思いを共有し、「チームで、同時に、有機的に動いていくこと」、そして、そのための人づくりが求められていきます。
グローバル全体としては、全地域へのフィロソフィーの浸透に加え、グローバル幹部候補向けの研修をはじめとする様々な機会を通して、本社と地域事業体が一体となり、トヨタの「思想・技・所作(トヨタフィロソフィー・トヨタ生産方式(TPS)等)」を軸とした人材育成の共通基盤づくりを強化しています。また、地域事業体においても、地域特性や多様なお客様ニーズに応じ、地域に根差した人材戦略の策定と実行を、機動力よく推進するための体制整備を促進しています。
当社においては、育成を含む人への投資について、労使の間でも継続的な対話を続けてきています。「会社は従業員の幸せを願い、従業員は会社の発展を願う」という労使共通の価値観の下、これまでの労使による話し合いにおいて、当社の最大の財産は「人」であるという共通認識に立ち、未来に向けた諸施策について、労使間での議論を実施するとともに、スピーディな変革に繋がるよう、具体的な取り組みまで確認し、労使ともになって取り組みを推進してまいりました。
2023年3月の労使の話し合いにおいては、「誰もが、いつでも、何度でも、失敗を恐れず挑戦できる」会社であるため、「多様性」「成長」「貢献」を3つの柱とした諸施策の実現、および、その柱を支えるための土台の強化へ取り組むことを確認し、それらの取り組みを推進しました。
<2023年の主な取り組み>
①多様性
●性別を問わず仕事と生活、育児、介護を両立できる環境の整備
・両立支援制度の拡充
・パートナー育休の取得促進に向けた取り組み展開
●本人のキャリア希望を尊重する施策の実施
・自律的キャリア形成に資する施策・取り組みの実施
②成長
●挑戦・失敗を価値とみるプロセスや評価
・考課者訓練等、マネジメント向けの施策展開
●「脱機能・脱個社」で現場感・相場観習得
・現地現物を重視したOJT/Off-JT
・自ら学べる機会の拡充 (選択型研修の拡充)
●職種を超えるチャレンジのサポート
・職種変更制度の導入
③貢献
●グループ・仕入先との人材交流・マッチングの活性化
・グループ・仕入先各社の人材ニーズに応える施策の展開
●働く人を支えるアセットのグループ活用促進
・アセット共同活用/グループ横断取り組みの展開
④3つの柱の土台
●多様性/チャレンジの余力のためのリソーセス増強
・新卒/キャリア採用の強化
●個に向き合うマネジメントのサポート
・余力創出/部下のキャリア支援に向けた施策実施
上記のような取り組みを推進することを通じ、当社の中で顕在化していた課題を中心に解消が進み、一定の基盤構築はできてきているものと考えています。
引き続き3つの柱を踏まえた取り組みを推進していく一方で、当社としては環境変化のスピードが速く、先の見えない時代において、未来に向けた変革を実現するために、「10年先の働き方を今つくる」という、“将来”を見据えた中での対応を図っていくことも必要不可欠と考えており、具体的には、以下の取り組みを推進していくことを2024年3月の労使間での議論を通じて整理しています。
<将来を見据えて取り組むべき事項の方向>
一人ひとりが、会社で働くことのやりがいを見つけ、自ら成長する機会を求める・見つける・取りに行く
そのような行動を会社としても応援する環境を整備することを目指し、総合的な「人への投資」を実施
1.より働きやすいモノづくり環境の整備
2.自らやりがいや成長をつかみ取る仕組みづくり
<2024年の主な取り組み>
1.より働きやすいモノづくり環境の整備
●多様な人材が安心して働ける職場環境の整備
・工場の環境整備の推進/寮のリニューアルの検討・着手
●創造性を育むリソーセス確保
・女性活躍や高齢者活用を推進する基盤の整備
2.自らやりがいや成長をつかみ取る仕組みづくり
●強みを活かす働き方
・全職種を対象とした職種変更制度の検討・実施
・自律的な働き方を促進する基盤の整備
●マネジメントの強化
・マネジメントの役割定義、育成・評価の見直し検討・実施
●自ら学べる機会
・自律型人材の輩出に向けた支援策の整備・展開 (選択型研修の強化等)
●自社製品の知識/愛着
・研修等を通じた試乗体験機会の提供
上記取り組みを推進していくことに加え、自動車産業の未来に向けて、仕入先・販売店が取り組む「人への投資」においても、当社として可能な支援を継続的に行っていきます。
(4)気候変動対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)
トヨタは気候変動対応において、2050年カーボンニュートラル実現に向け、地球規模でチャレンジすることを宣言しています。グローバルでチャレンジするために、地域によって異なるエネルギー事情を考慮し、世界各国・地域の状況に対応した多様な選択肢を提供することで、需要動向にすばやく対応していきます。
またトヨタは、金融安定理事会「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に2019年4月に賛同・署名しており、気候変動のリスク・機会とその分析について、適切な情報開示を進めています。
①ガバナンス
a.気候関連のリスクと機会についての、取締役会による監視体制
トヨタは、取締役会において気候関連課題を扱うことにより、社会動向に応じた戦略の立案・実行が、効果的に行われると考えています。取締役会は、戦略/主要な行動計画/事業計画の審議と監督を行う場であり、気候関連の重要な事案が生じた時に、議題として上程されます。
取締役会では、気候関連課題に対応するための定性的あるいは定量的な目標の進捗モニタリングも行います。モニタリングは、気候関連課題になりうる、例えば、燃費・排出ガス規制など製品関連のリスクや機会、低炭素技術開発に関するリスクや機会、それらによる財務的影響などを考慮して行われます。また、このガバナンスメカニズムを「トヨタ環境チャレンジ2050」を含む長期戦略の策定、中長期目標およびアクションプランの立案・見直しに活かしています。
2023年における取締役会での意思決定の事例として、以下があげられます。
カーボンニュートラル社会の実現に向け、電動車については2030年を見据えた電池の必要量を確保していくための投資の承認を得ました。また、マルチパスウェイとしてのパワートレーン(燃焼技術の進化)への研究開発の承認を得ました。
b.気候関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営の役割
気候関連課題に対応する最終的な意思決定・監督機関は取締役会となります。また、主に以下の会議体が、気候関連のリスクと機会について評価し、管理を行っています。
②戦略
トヨタの戦略(マルチパスウェイ戦略の基本的な考え方)
「マルチパスウェイ戦略」の根幹にある考え方は、「エネルギーの未来」と地域・お客様の期待に寄り添った多様なモビリティを提供することです。大前提として、地球環境やサステナビリティの観点から、化石燃料から脱却していく必要があります。そのうえで、中長期的には、再生可能エネルギーの普及が進み、「電気」と「水素」が社会を支える有力なエネルギーになっていくと考えられます。一方で、短期的には、世界各地の現実に向き合い、エネルギーセキュリティを担保しながら、プラクティカルに変化を進めていくことが重要です。だからこそ私たちは、電気と水素の未来を見据えながら、再生可能エネルギー由来の電力、その電力を基にした水素や合成燃料、バイオ燃料など、多様なエネルギーに対応するモビリティの選択肢でカーボンニュートラルに貢献していきます。
現実的にCO2を減らしていくには、既存のインフラやアセットを活用しながら確実に減らしていくことが重要です。また、自動車産業におけるカーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーや充電インフラなどのエネルギー政策と、購入補助金、サプライヤー支援、電池リサイクルシステムの整備などの産業政策が不可欠であり、各国のエネルギー政策や産業政策、お客様の選択など、不確実性への対応が必要です。多様なモビリティの選択肢を提供するマルチパスウェイ戦略は、不確実性に対し、どのような社会が実現してもいずれかの選択肢で対応することができる戦略です。様々な産業が関わっているため、パートナーづくりに積極的に取り組み、電気と水素が地球環境を守っていく環境づくりを少しでも早く実現できるよう取り組んでいきます。
トヨタは、シナリオ分析によりマルチパスウェイ戦略のレジリエンスを検証しています。
シナリオ分析の概要
トヨタは2019年4月、TCFD提言に賛同・署名し、国内企業や金融機関などが一体となって取り組みを推進するTCFDコンソーシアムに加盟しました。気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識し、TCFD提言を踏まえ、リスクと機会を特定し、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。2022年には、関連組織により構成されるプロジェクトを立ち上げ、TCFDフレームワークを参考に、1.5℃と4℃の2つの温度帯を用いたシナリオ分析を実施し、気候変動リスク・機会の評価・特定、財務影響の評価、トヨタの対応の確認などを実施しました。
設定シナリオは以下のとおりです。
・1.5℃シナリオ(IEA※1 NZE※2、APS※3シナリオなど)
・4℃シナリオ(SSP5-8.5)
※1 International Energy Agency:国際エネルギー機関
※2 Net Zero Emissions by 2050 Scenario:国際エネルギー機関(IEA)が発表した脱炭素シナリオ
※3 Announced Pledges Scenario:IEAが公表しているシナリオのひとつ
分析対象事業は、トヨタ自動車および連結会社における自動車事業およびサプライチェーン、日本および海外のトヨタグループの生産拠点です。
リスクが発現する期間は、以下のように設定しました。
各戦略の説明
・HEV、PHEV
トヨタは、累計2,350万台の電動車を販売し、1.76億トンのCO2排出削減を実現しています(2023年3月時点)。 お客様の多様なニーズにお応えしていくため、新興国を中心にHEVの販売拡充を進めながら、PHEVはEV航続距離を200km以上に延ばすことでプラクティカルなBEVと再定義し、選択肢を増やすための開発を強化しています。また、燃焼技術を進化させ、CO2排出量を抑制できるエンジン開発を推進しています。
・BEV戦略
2023年5月に、次世代BEV開発のため、すべての機能と権限を持つ専任組織(BEVファクトリー)を設置しました。また、2030年までにBEV(電池を含む)に約5兆円の投資を行うことも公表しました。BEVの販売台数は2026年までに年間150万台、2030年にはグローバルで年間350万台を基準台数としてペースを定めています(次世代BEVは2030年時点で170万台)。新モジュール構造、自走生産、デジタルツインなどにより、工程・工場投資・生産準備リードタイムを1/2に短縮します。小型軽量ユニットの開発や空力・熱マネジメントなどの技術を進化させることで、クルマの新しいアーキテクチャに挑戦し、今後はPHEVなどの開発にも応用していきます。
多様な次世代電池技術の開発にも取り組んでいます。
(液系リチウムイオン電池の開発)
(全固体電池の開発)
全固体電池は、高出力化、長い航続距離、充電時間の短縮など、液体電池以上の性能が期待され、2027~2028年の実用化を目指しています。2023年10月には、出光興産株式会社との量産実現に向けた協業を発表しました。
・水素事業戦略
2023年7月に、燃料電池・水素関連商品で商品開発と生産を加速するため、専任組織 (水素ファクトリー) を設置し、三つの軸で事業化の基盤づくりを推進しています。
①マーケットのある国 (欧州・中国) での開発・生産 (量産化・現地化)
②有力パートナーとの連携強化 (標準規格化)
③次世代FC技術の革新的進化
商用領域での水素モビリティの開発・実装に加え、電車・船舶・発電機など多様なアプリケーションに対し、次世代FCシステムを提供します。水素の価格低減・需要拡大のため、水素を「つくる」「ためる」領域に取り組み、大型商用タンクの規格化 (原単位づくり) にも挑戦しています。今後は、水素消費量の大きい欧州、中国、北米を中心に、鉄鋼業界・電力業界のパートナーと連携し、インフラも含めて水素モビリティの社会実装を加速していきます。
・カーボンニュートラル燃料の取り組み
電気と水素がエネルギーの中心となる未来においても、e-fuelやバイオ燃料など、液体燃料の活用を視野に入れた次世代エンジンの開発を進め、業界の垣根を超えたパートナーとの取り組みを進めていきます。水素が高価な地域では、水素が安い地域で製造したe-fuelを輸送し、活用します。また、バイオ燃料の活用が拡大する新興国では、バイオ燃料対応車両を投入しています。2022年7月には、民間7社で「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」を設立し、第2世代バイオ燃料の製造技術向上を目指しています。
・今後の取り組み
多様なエネルギー事情やお客様ニーズに寄り添い、既存インフラの有効活用、カーボンニュートラル燃料、既販車への取り組みなど、プラクティカルなトランジションを軸に、あらゆる手段でカーボンニュートラルの実現を目指します。
a.組織が特定した短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会
トヨタは環境問題から生じる様々なリスクと機会の把握に努めており、「トヨタ環境チャレンジ2050」などの戦略が妥当かどうかを常に確認しながら取り組みを進め、競争力の強化を図っています。トヨタの事業領域に影響を及ぼす可能性のある気候変動に伴う変化への対策が必要です。そのような認識の下、リスク管理フレームワーク、Toyota Global Risk Management Standard(TGRS)に沿って特定したものから、影響度やステークホルダーからの関心も踏まえ、特に重要度の高い気候変動リスクを抽出しました。気候変動の進行は、事業上のリスクになりますが、適切に対応できれば競争力の強化や新たな事業機会の獲得にもつながると認識しています。
b.ビジネス、戦略および財務計画に対する1.5℃シナリオ、4℃シナリオなどの様々なシナリオ下の影響
<STEP1>気候変動影響を踏まえた社会像の設定
1.5℃シナリオにおける移行リスクと機会について、2030年の外部環境を、IEAのNZE、APSなど複数シナリオを用いて想定し、TGRSにて抽出した気候変動リスクの中で影響が大きいと懸念されるものに対し、詳細な影響度評価を実施しました。4℃シナリオにおける物理リスクについて、IPCC※4シナリオ(SSP5-8.5)を用い、2050年・2090年の将来予測をもとにリスク分析を実施しました。また、気候変動に伴う気象災害の増加がトヨタグループの事業に与える影響を把握するため、国内外の事業拠点(国内137拠点、海外73拠点)について、気候変動による影響を簡易評価し、優先的に調査すべき拠点のスクリーニングを実施しました。
※4 Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
<STEP2>Step1で描いた社会像におけるトヨタへの影響
1.5℃シナリオにおいては、グローバル全体で再生可能エネルギー(電気・カーボンニュートラル燃料※5)の導入が進み、電動車(特にZEV)の役割も増大します。一方で、国・地域により再生可能エネルギーの導入速度や、導入するエネルギー種(太陽光・風力・バイオなど)は異なります。新車販売に占めるZEV比率が大幅に増加する国・地域がある一方で、カーボンニュートラル燃料利用を進める国・地域もあるため、それぞれの市場に適合した商品(車両)を提供する必要があります。カーボンニュートラル燃料の導入は、既販車から排出されるCO2削減にも有効で、新車だけに頼らずCO2を削減していくことが可能です。生産や調達への影響としては、炭素税などの導入や税率引き上げによるコスト上昇の懸念により、省エネルギー技術、再生可能エネルギーや水素などの利用拡大がリスク低減につながります。
4℃シナリオにおいては、内水氾濫と高潮について将来変化が認められた拠点が存在します。社会全体の気候変動対策が十分ではない場合、洪水などの自然災害の頻発や激甚化による生産停止やサプライチェーン寸断による減産や生産停止の可能性が高まる懸念があります。
※5 バイオ燃料、合成燃料など
<STEP3>トヨタの戦略
シナリオ分析を用いることで、トヨタはマルチパスウェイ戦略によって、中長期的にレジリエンスを高めるべく事業運営に取り組んでいることが確認できました。
移行リスクにおいては、IEA NZEを含む複数のシナリオとの比較を通じて、カーボンニュートラル燃料の組み合わせも含めたトヨタの戦略は、パリ協定で掲げられている1.5 ℃目標を満たす可能性があることを確認しました。
トヨタは、各地域のエネルギー事情を考慮した上で、BEV、PHEV、HEV、水素エンジンなど、お客様へ様々な選択肢を用意し、かつ、電気や水素のほか、既存インフラの有効活用も可能な新しい燃料(カーボンニュートラル燃料)による既販車のCO2削減への取組みなど、あらゆる手段で2050年カーボンニュートラルを目指します。
一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)のCNFシナリオの報告によると、自動車燃料の低炭素化も重要であり、BEV化を急速に進めるシナリオだけでなく、HEV・PHEVとカーボンニュートラル燃料を有効活用するシナリオでも、IPCCの2050年1.5℃シナリオに整合的になり得ます。
物理リスクにおいては気象災害ハザードスクリーニングの結果、気候変動による将来変化が見られ、リスクに留意すべき(グレードB 以上)と評価された国内外の拠点について、リスク評価の実施を検討し、その結果に応じて水災対策や事業継続計画(BCP)の見直しを進めます。
今後もシナリオ分析を継続的に行い、気候変動の影響が大きいリスクと機会の特定・整理、インパクト評価を進めていきます。
c.気候関連のリスクと機会が組織のビジネス、戦略および財務計画に及ぼす影響
前述したリスクと機会へ対応するために、トヨタでは移行計画として温室効果ガス(GHG)削減目標を設定しています。移行計画の妥当性確認には、複数のシナリオを参照しています。
マルチパスウェイ戦略のもと、プロジェクト関連の財務計画に落とし込み、移行計画を具体化していきます。
なお、一定額以上のプロジェクト投資にあたっては、取締役会で承認します。
③リスク管理
a.組織が気候関連のリスクを特定および評価するプロセス
グローバルな事業活動に関わるすべてのリスクを対象とした全社横断的リスク管理の仕組みであるTGRSに基づき、気候変動を含むすべてのリスクを抽出し、評価、対応を実施しています。
リスクは、「影響度」と「脆弱性」の2つの観点で評価し、想定される発生時期を記載することで、事業に対する実質的な財務・戦略的影響を明確化しています。
「影響度」は、「財務」「評判」「法規制違反」「事業継続」の各要素について5段階で評価しています。「財務」は売上高に対する割合を指標化しています。「脆弱性」は、「対策の現状」と「発生可能性」の2つの指標で評価しています。
b.組織が気候関連のリスクを管理するプロセス
各部署にて抽出され、影響度や脆弱性の観点から評価された地域別、機能別 (生産・販売など) 、製品別のリスクに対し、各地域や各部門が相互に連携・サポートしながら迅速に対応しています。各部門の本部長や社内カンパニープレジデントがカンパニーの活動を統括し、その下位では部長が部署の活動を統括して、対応策の実行およびモニタリングを実施します。
さらに気候関連のリスクおよび機会については、「CN戦略分科会」「サステナビリティ分科会」においても特定、評価され、担当部署や関係役員による審議を行います。「CN戦略分科会」では燃費規制や調達、工場・物流・その他非生産拠点のCO2排出規制や水リスクなどの直接操業について、「サステナビリティ分科会」ではサステナビリティ推進に関する課題や社外ステークホルダーを考慮した取り組みの妥当性などについて、対応状況のモニタリングや見直しを実施しています。
上記会議体は、年4回程度の頻度で開催され、技術・環境・財務・調達・営業といった関連部署の役員・部長級が参加します。これらの会議体での検討により、リスク評価を年に複数回実施しています。なお、迅速な対応が必要となる重要なリスクおよび機会については、逐次取締役会へ報告され、対応を決定します。
c.組織が気候関連のリスクを特定・評価および管理するプロセスが、組織の総合的なリスク管理にどのように統合されているか
前述のように、TGRSを用いたプロセスは、気候変動をはじめ、グローバルな事業活動に関わるすべてのリスクおよび機会を対象とした全社横断的なリスク管理の仕組みです。
また、関係部署が集まる「CN戦略分科会」「サステナビリティ分科会」では、気候関連のリスクおよび機会について特定・評価を実施し、対応策を検討しています。
④指標と目標
a.組織が自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスクと機会を評価するために用いる指標
トヨタでは、複数の指標を設定し、複合的に気候関連のリスクと機会を管理することが、気候変動への適応とその緩和に向けた対策として重要であると認識しています。このため指標には、GHG排出量のほか、気候変動と深く関係する、エネルギー、水、資源循環、生物多様性なども含まれています。
これらの指標を考慮して以下の目標を定め、「6つのチャレンジ」という6分野の取組みにより体系的に推進しています。
・長期(2050年目標):「トヨタ環境チャレンジ2050」
・中期(2030年目標):「2030マイルストーン」、SBTi認定・承認
・短期(2025年目標):「第7次トヨタ環境取組プラン」
「6つのチャレンジ」のうち、以下の取り組みを推進することで、2050年のScope1,2,3カーボンニュートラルをめざします。
社内では一定の炭素価格を指標として設備投資などの検討に活用しています。
b.気候関連のリスクと機会を管理するために用いる目標、および目標に対する実績
環境戦略の体系
トヨタは常に世の中の動きやお客様の声を把握し、何に注力すべきかを考え、将来の課題をいち早く察知し、新たな発想と技術で課題解決を推進してきました。しかし、気候変動、水不足、資源枯渇、生物多様性低下などの地球環境問題は日々拡大、深刻化しています。
これらの問題に私たち一人ひとりが向き合い、20年、30年先の世界を見据えて挑戦を続けていくため、2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を、2018年に「2030マイルストーン」を策定しました。そして、上記目標を実現するための5カ年計画である「環境取組プラン」の最新目標として、「2025年目標」を2020年に設定しました。
2022年9月には、SBTiからScope1,2とScope3カテゴリー11の削減目標について認定・承認を取得し、これに準じて中期目標を更新しました。
また2023年4月には、全世界で販売する新車の走行における平均GHG排出量を、2019年比で、2030年に33%、2035年に50%以上の削減を目指すことを公表しました。