リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの経営成績および財政状態のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) リスク管理の仕組み
① 「リスク管理委員会」について
当社グループでは、経営目的の達成および事業の運営を阻害する可能性のある事象をリスクと定義し、リスク管理に取り組んでおります。また、全社的リスク低減のため、「リスク管理委員会」を取締役会の下部組織として設置しております。リスク管理委員会において、全社的に対策を講じる必要のある重点リスクと責任部署を決定し、各責任部署がリスク管理活動を行っており、大規模災害等のBCPについても同様に活動しています。また、事業リスクに関しては当該リスクを抱える事業部が責任をもって取り扱う一方、リスク管理委員会はモニタリングを行います。
体制については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しておりますコーポレート・ガバナンス体制図をご参照ください。
また、リスク管理委員会の構成は、以下のとおりです。
② リスク管理の流れ
1年単位でリスク低減活動を行なっております。
11月:リスク抽出
12月~2月:重点リスク選定、委員会審議、取締役会決議
3月:計画策定
4月~:活動
活動状況は、四半期毎に委員会報告および定期的に取締役会、執行役員会へ報告を実施しております。
③ リスク評価方法
リスクを、財務、人的被害、操業停止、法令違反、評判などの視点から事業の運営に及ぼす影響度と、発生する可能性から、リスクの大きさを評価しております。
(2) リスク管理の現状
① 全社リスクの内容と対応状況
2025年度のリスク管理活動では、子会社を含む全拠点から抽出したリスクから、リスクが大きいと評価した以下9件を重点リスクとして選定しております。これらについては、それぞれの責任部署が、年度活動計画を策定し、それに基づいてリスク低減活動を行なっており、活動の進捗や、リスクの状況については、定期的に取締役会、執行役員会へ報告しております。
なお、2025年度に下請代金支払遅延等防止法に基づく公正取引委員会から勧告を受け、手続きを進めておりますが、再発防止に向けた具体的な全社的取組みを強化するため「サプライヤーとの適正取引」を新たに追加しております。
また、2024年度の重点リスクであった「紛争等有事の安全措置」は、目標としていたマニュアル整備の確認を完了したため全社的な活動から各事業や拠点の日常管理活動へ移行しております。
各全社リスクの詳細は以下のとおりです。
1.品質不正
品質不正による法令違反やお客様との契約違反は、お客様からの損害賠償請求や是正対応費用などにより、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、品質不正に直結する品質記録の改ざんなどを防止する活動を行っております。具体的には、拠点が自主監査で使用するマニュアルの見直し/改定を行い、拠点自身での発見力強化を行います。また拠点自主監査後の品質管理部による現地又はWeb監査により、品質不正の懸念事項の発見漏れを防ぎ、是正を行うことで品質不正リスクを低減してまいります。
2.大規模災害
当社グループでは、地震、火災、風水害での自社生産設備の損傷やサプライヤーチェーンの寸断、サイバーインシデントなどによる操業停止の可能性があるため、災害発生時の被害を最小化する活動や災害発生時の復旧訓練の実施など、生産能力早期復旧のための対策をとっております。特に発生の可能性が高いと推測される国内地震とサイバーインシデントを中心に、BCP訓練の実施に取り組み、大規模災害時の操業停止リスクを低減してまいります。なお、2024年度まで実施してきた海外拠点での火災訓練などは各拠点の日常管理活動へ移行しております。
3.人権問題
職場でハラスメントが発生した場合、職場環境悪化による生産性低下や人財流出によって事業活動が鈍化し、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、労務訴訟などで賠償請求を受けるリスクもあります。
当社グループでは、いきいきと働くことのできる職場環境の土台づくりの一環として、従業員へのハラスメント防止教育の実施、ハラスメント防止への仕組み・体制を整備し、多様な価値観を尊重する職場づくりをすすめ、ハラスメントによる事業活動の鈍化や労務訴訟リスクを低減してまいります。
4.サイバー攻撃
近年の情報システム環境の進化・複雑化に加え、テレワークの普及による従業員の外部からのアクセス機会が増える一方、サイバー攻撃は急増し、複雑・高度化しており、情報セキュリティに係るリスクが高まっています。これらにより、情報漏えいやシステム障害等が発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、グループ共通のサイバーセキュリティ教育・訓練、サプライチェーンセキュリティ強化、サイバーインシデント対応マニュアルの整備、セキュリティレベル共通ガイドライン設定等を実施することで、グループ全体の防衛力を強化し、サイバー攻撃による操業停止リスクを低減してまいります。
5.労働災害
労働災害の発生は、従業員の生命を脅かすだけでなく、是正対応などのために操業停止又は、生産能力が著しく低下する可能性があります。過去に発生した重点災害の再発防止策をグループ内へ水平展開し点検、対策を実施することで、労働災害の人的被害リスクを低減してまいります。なお、重点災害発生拠点に対する特別管理は責任部署の日常管理活動として継続してまいります。
6.火災
当社グループの多くの工場では、油の特性を利用した油圧製品の生産を行っており、有機溶剤を使用する塗装設備、作動油・化学薬品等を貯蔵するタンク等が設置されていることから、火災の発生や有害物質が流出する可能性があり、万が一、事故が発生した場合には生産活動が一時的に停止する可能性があります。過去事例を反映した防火体制チェックリストによる点検の実施、防火フォローパトロール、設備仕様・購入品の火災リスク確認にて、火災による操業停止リスクを低減してまいります。
7.人財不足
転職が一般化してきている現状から、当社グループでも人財流出により、事業活動が鈍化し、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。定期採用戦略、中途採用戦略を推進するとともに、退職理由の分析から職場環境の改善を実施し、人財不足リスクを低減してまいります。
8.サプライチェーン寸断
当社グループのサプライチェーンには、後継者不足、設備老朽化などによる廃業、事業撤退が懸念される仕入先があります。予期せず仕入先からの部品供給が停止した場合、一時的に生産活動が停滞し、事業継続に影響する可能性があります。仕入先の状況を注視し、コミュニケーションを深めるとともに、懸念仕入先とは丁寧な協議を行うも、供給継続が困難な際は仕入先変更等の代替手段により供給停止リスクを低減してまいります。
9.サプライヤーとの適正取引
当社グループは、調達部門に限らず、下請代金支払遅延等防止法で定義される下請事業者との取引があります。適正な取引が行われない場合は法令違反企業として社会的信用が大きく損なわれる可能性があります。下請法全般に対する総点検に基づく再発防止策を実施することで、サプライヤーとの適正取引を維持してまいります。
② 各事業の個別リスクの内容と対応状況
全拠点から抽出したリスクのうち、各事業や各拠点で個別に対応するリスクについてはリスク管理委員会の活動に依らず、各事業等で対応しており、以下のものがあります。これらは、2023中期および2025年度方針に掲げ、各事業等の日常の管理活動の中でリスク低減活動を実施しております。その進捗については経営報告会等の会議体を通じて定期的に報告されております。
上記のリスクに関する詳細は以下のとおりです。
1.需要動向・生産活動停止
当社グループのAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業・HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の主要製品は自動車、建設機械および産業車両メーカー等(以下、お客様といいます)へ供給する組付用部品であり、世界的な自動車生産台数や建設機械生産台数に大きく左右されます。当社は海外売上高比率が60%を超え、世界的な供給体制を構築しておりますが、各市場における景気悪化による自動車ならびに建設機械需要の減退等により、この部門の収益性に大きな影響を与えます。また、米国の関税措置に起因する自動車を中心とした生産体制の見直しや世界経済の停滞、更には他国の報復措置などに起因する通商リスクに伴い、収益性や生産活動へ影響を与える可能性があります。
また、ロシアのウクライナ侵攻や緊迫する中東情勢など、国際情勢の変化が増しており、世界各地で地政学リスクが増大し、そこから派生し経済安全保障政策による規制が拡大しております。戦争・紛争が発生した地域での生産・販売活動停止や事業撤退により当社の事業継続が困難となることだけでなく、輸出管理規制や経済制裁に伴う製品や主要部材の供給遅延や制限により、お客様の生産調整や生産稼働停止が発生し、収益性や生産活動に大きな影響を与える可能性があります。
2022年に撤退を表明した航空機器事業については、お客様等との調整を進め、ご迷惑をおかけすることの無いよう管理に努めておりますが、その中でも予見しきれない費用や損失が発生した場合、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。特装車両事業の製品については、特にコンクリートミキサ車を主力とする特装車両は、景気の先行きと相関の深い建設工事の増減により需要が変動する可能性があります。
当社グループでは、グローバルで情報収集・分析を行い、状況に応じた対応をしております。
2.品質不良の発生
品質に関しては、自動車では操縦安定性を支えるショックアブソーバや操舵力を補助するパワーステアリング等の重要な部品を供給しており、建設機械・産業車両等では母機を駆動させるコントロールバルブ、ポンプ、シリンダ、モータ等の主要な機能部品を供給しております。また、特装車両事業部ではコンクリートミキサ車などの特装車両をお客様へ納入しております。仮に当社グループが供給した製品に品質不良が発生した場合、その損害賠償をお客様から求められる等で多額の費用が発生する可能性があります。当社グループでは、品質経営を基盤に品質管理体制強化など品質向上を継続して追求し、品質不良発生の未然防止に努めております。また、グループ全体での不正防止活動への取組やコンプライアンス教育を通じ、問題が発生した際には対応が迅速且つ確実に行われるよう体制を整備しています。
3.製品販売価格
価格に関しては、国内・海外市場共に熾烈な価格競争にさらされており、お客様からのコスト低減、価格引下げ要請が常に存在します。当社グループでは、高品質・高付加価値製品を提供することによる競合優位を目指すと共に、生産性向上などを通じた継続的な原価低減によるコスト競争力向上に努めております。
4.原材料・部品等の調達価格
当社グループは、原材料、構成部品等を多数の仕入先から購入しておりますが、調達する原材料等は国際商品市況や為替等の影響を大きく受けます。複数購買の実施や購買機能の集約等による原価低減を図っておりますが、原材料等の価格上昇を当社の販売価格に十分に反映出来ない場合、あるいは、販売価格引下げを原材料および構成部品価格に十分に反映出来ない場合、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
5.資金調達
当社グループは、主に国内外の金融機関等より設備資金ならびに運転資金の調達を実施しております。金融市場の動向には十分留意しておりますが、全般的な市況および景気の後退、金融収縮、当社グループの信用力の低下等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達できない可能性もあります。その結果、当社グループの財政状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
6.為替相場変動・金利上昇
当社グループは、海外売上高が62.6%と海外市場に大きく依存しているため日本からの輸出はもとより在外関係会社の経営成績等も為替の影響を大きく受けます。このような為替変動リスクに対してはグローバルな生産拠点の配置や為替予約等によりリスクの軽減を図っておりますが、想定を超えた為替相場の変動は、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは有利子負債を有しており、固定金利での調達により金利変動リスクの軽減に努めておりますが、日本および海外における将来の金利上昇は、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
7.得意先の信用リスク
当社グループは、自動車、トラック並びに建設機械メーカー各社様や系列販売会社様をはじめ多くのお客様と取引を行っております。取引先の予期せぬ信用リスクにより、経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、取引先の信用リスクについては細心の注意を払い、与信管理や取引先との関係強化等を通じてリスク管理を行っています。
8.重要な訴訟等の発生
当社グループを相手とした訴訟が起こされ、当社の主張と相違する結果となった場合には、その請求内容等によっては、当社グループの経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。国内外の弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応しております。
③ 建築物用免振・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について
当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)は、建築物用の免震・制振部材としてオイルダンパーを製造・販売してまいりましたが、その一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実(以下、「本件」といいます。)が判明し、国土交通省に報告を行うとともに、対応状況について、2018年10月16日に公表いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。
本問題に関する再発防止策および対応については、以下の当社ホームページ上で公表しておりますのでご参照ください。
なお、2022年3月末時点で、再発防止策の具体策全67項目の内、全項目を「完了」しており、引き続きその維持・定着の取り組みを継続しております。
再発防止策の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/prevent.html
対応の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/exchange_progress.html
本件に関し、現時点において収集可能な情報、及びその情報が合理的な事実に基づくものであると判断された免震・制振用オイルダンパーの交換工事に要する費用及び営業補償等について、製品保証引当金を計上しております。
なお、本件に関連して訴訟を提起されている案件もありますが、一部案件においては追加費用の発生なく終了し、またその他案件の訴訟手続きも進んでおり、現時点においては経済的便益の流出の可能性は低下していると判断しております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様への適切な利益還元を経営上の最重要課題の一つとして認識しており、連結配当性向30%以上を目指しております。
当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めており、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本としております。
剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当期の期末配当につきましては、配当方針ならびに当期の業績を勘案し、1株当たり55円に創立90周年の記念配当5円を含めた60円を予定しております。これにより、年間の配当金は1株当たり110円(株式分割考慮後)となります。
また、次期の配当金につきましては、中間配当を1株当たり60円、期末配当を1株当たり60円とし、年間の配当金は1株当たり120円を予定しております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
(注)1.当社は、2024年12月3日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。2024年11月11日開催の取締役会決議による1株当たり中間配当額は、当該株式分割前の金額を記載しております。
(注)2.当期の期末配当につきましては2025年6月24日開催予定の第103期定時株主総会に付議する予定です。