2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済状況等

当社グループの連結売上高は、今日までの積極的な海外展開と得意先の海外生産のシフトにより、その海外売上比率は72.6%と高い水準にあります。したがって、当社グループの自動車関連製品の需要は、進出先の国及び地域の経済状況の影響を受けます。特に北米地域の売上高は49.3%と連結売上高に占める割合が高く、同地域の自動車市場の景気動向と需要変動が、当社グループの経営成績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、北米地域のほか、欧州、アジア地域、を含めたバランスの取れた経営体制を目指してまいります。

 

(2)グローバル展開

当社グループは、前述のとおり海外売上比率は72.6%と高い水準にあります。そのため、海外生産拠点に予期しない政治・経済の不安定化、法律又は税制の変更、或いはテロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等により事業の遂行に問題が生じる可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)特定の取引先への依存

当社グループの現在の主な販売先は、日産自動車㈱グループと本田技研工業㈱グループであり、当連結会計年度における連結売上高に占める割合は72.4%となっております。当社グループは、両社の自動車販売動向が、当社グループの経営成績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、両グループとの取引関係を維持発展させつつ、販売先の多様化を推進し、安定した事業運営を目指してまいります。

 

(4)為替レートの変動

当社グループの連結売上高に占める海外売上高比率は、当連結会計年度で72.6%(前連結会計年度74.1%)となっており、為替相場の影響を受けやすい状況になっております。当社グループの想定を超えた為替レートの変動が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

当社グループの想定を超えた為替レートの変動に備え、各地域において現地通貨による取引・決済等を進めてまいります。

 

(5)製品の欠陥・品質

当社グループは、予期せぬ製品の欠陥や品質面の不備が発生した場合、その欠陥や不備の内容によっては多額のコストが発生したり、当社グループの評価が低下したりすることにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格(IATF16949)を国内・海外拠点において取得し、グローバルで品質保証体制の強化に努めております。このシステムを継続的に実践し、製品品質の安定と向上を図るために、マネジメントシステムの定期的な監査と経営層による診断を実施しております。

 

(6)原材料等の供給不足・供給価格の高騰

当社グループの事業にとっては、十分な品質の原材料、部品、サービス等を調達することが不可欠であります。しかし、供給業者での不慮の事故、震災などにより供給が中断した場合や不安定となった場合、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループと供給業者は、契約によりその供給価格を決定しておりますが、原油価格上昇等により原材料・部品価格が高騰する可能性があり、この場合には当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。

当社グループにおきましては、不測の事態に備え、複数の供給網を構築し、原材料等の供給不足への対策を講じております。

 

(7)自然災害、新型コロナウイルス感染症等による異常事態

日本各地で発生している大規模地震や台風、米国で発生した大寒波などの自然災害、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミック等は、経済活動に大きな影響を及ぼしております。これら異常事態が発生した場合、一時的な操業停止や減産対応、サプライチェーンへの影響による製品部材等の調達遅延や価格高騰、経済活動の停滞による製品やサービスの受注・売上の減少など、当社グループの経営成績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報セキュリティ

当社グループは、製品の開発、生産、販売など、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しております。これらの情報技術やネットワーク、システムには安全な対策が施されておりますが、サイバーテロ、不正アクセス、コンピューターウイルスへの感染等により、情報システム障害による業務の停止、重要なデータの喪失、機密情報や個人情報の漏洩などが発生する可能性があります。この結果、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、一般的なセキュリティ対策とされる外部からの不正アクセスを防ぐファイヤーウォールの設置、リアルタイムでのウイルスチェックによる検疫、サーバーやネットワーク回線の冗長化に加えクラウドサービスの利用促進、サイバー攻撃を考慮したバックアップシステムの確立、生産系とOA系のネットワークの論理的分離の対策により不測の事態による業務停止リスク軽減など取引先への影響極小化に向けた各種の対策を講じております。

 

(9)価格競争

自動車業界の価格競争の激化を受け、自動車メーカーから部品メーカーに対する価格引下げ要請は強まってきております。当社グループの製品は、価格的、品質的、技術的に十分競争力を有していると考えておりますが、価格競争の激化による競合先の低販売価格に対して、販売を維持、拡大し、収益性を保つことができなくなる可能性があります。この場合には、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、ユーザー及び自動車メーカー各社のニーズに積極的に応える新製品・新工法を提供するため、強力に研究開発を進め、競争力確保に努めてまいります。

 

(10)有利子負債依存度、支払利息の増加

当社グループは、設備投資、システム投資及び研究開発投資等のための資金調達を主に金融機関からの借入金に依存しており、当連結会計年度末現在における有利子負債依存度(有利子負債額/総資産額比率)は52.3%であります。適切な設備投資計画の策定や資産の効率化を図ることで、これ以上有利子負債依存度を高めないように取り組んでおります。また、各取引金融機関と資金調達の方法・金額・条件・時期について協議を継続しております。

今後借入金利の上昇により支払利息が増加した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは、新型コロナウイルス感染症や半導体供給不足、原材料の高騰等、先行きが不透明な状況を鑑みて、2022年5月26日にシンジケートローン契約及びコミットメントライン契約を締結し、また、2022年9月30日にコミットメントライン契約を締結いたしました。

 

第89期

2020年3月

第90期

2021年3月

第91期

2022年3月

第92期

2023年3月

第93期

2024年3月

総資産額 (百万円)

150,692

145,327

141,461

148,315

142,045

有利子負債額 (百万円)

47,136

60,393

71,124

79,835

74,319

有利子負債依存度 (%)

31.3

41.6

50.3

53.8

52.3

売上高 (百万円)

204,632

152,755

146,375

175,440

214,315

支払利息 (百万円)

515

550

582

1,191

1,921

支払利息/売上高 (%)

0.3

0.4

0.4

0.7

0.9

 

 

 

(11)希薄化及び流動性に関するリスク

2024年5月9日開催の当社取締役会において、日産自動車に対して第三者割当の方法によりA種優先株式の発行を行うことを決議いたしました(以下「本第三者割当増資」といいます。)。当該A種優先株式には当社普通株式と同等の議決権が付されており、2024年3月31日現在の当社発行済株式総数に係る議決権の数を分母とする希薄化率は15.01%となります。また、A種優先株式には、発行後原則として1年経過後に行使可能な普通株式を対価とする取得請求権が付されており、A種優先株式の累積未払配当金相当額及び日割未払優先配当金額がいずれも存在しない前提でA種優先株式全てについて当初取得価額をもって当社普通株式に転換された場合、2024年3月31日現在の当社発行済株式総数に係る議決権の数を分母とする希薄化率は300.13%となります。したがって、A種優先株式の発行に伴い、当社普通株式の1株当たりの株式価値及び持分割合が希薄化する可能性があり、当社株価に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、全てのA種優先株式が一括して普通株式に転換された場合には、株式会社東京証券取引所がスタンダード市場の上場維持基準として定める流通株式比率25%以上の水準に抵触する可能性があります。また、この場合には、当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)大株主との関係に関するリスク

A種優先株式には当社普通株式と同等の議決権が付されており、発行後の総議決権数に占める割合は13.05%となります。また、A種優先株式には普通株式を対価とする取得請求権が付されており、全てのA種優先株式が一括して普通株式に転換された場合には、当社の議決権の3分の2を超える議決権を有する支配株主となります。さらに、日産自動車との投資契約においては、当社の重要事項について日産自動車の事前の承諾を要することとされており、当社の意思決定に対し影響力を持つことになります。
 また、日産自動車は、A種優先株式発行後2028年3月31日までは、原則としてA種優先株式(A種優先株式の取得請求権の行使により当社普通株式を取得した場合には、当該普通株式)を譲渡することができませんが、かかる譲渡制限期間経過後、日産自動車が当社株式の一部又は全部を売却する可能性があり、市場で売却した場合には、売却の規模等によっては、当社株式の需給関係及び市場価格に影響を与える可能性があります。
 さらに、本第三者割当増資の実施を条件として、日産自動車から2名の取締役が派遣される見込みとなっております。当社は、日産自動車との人的関係を維持する方針ではありますが、何らかの要因により日産自動車の方針等の変更が生じ、人的関係が見直された場合には、当社の経営・事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。
 

(13)金銭を対価とする取得請求権に関するリスク

当種優先株式においては年率7.0%の優先配当条項(複利、累積型)が定められており、当該配当が行われなかった場合には翌期に複利で累積することとなります。また、A種優先株式には、2028年4月1日以降行使可能な金銭を対価とする取得請求権が付されており、その対価の金額はA種優先株式の払込金額相当額並びにA種累積未払配当金相当額及びA種日割未払優先配当金額の合計額となります。したがって、A種優先株主が金銭を対価とする取得請求権を行使した場合、一括して上記の金銭の支払いを行う必要があり、当社グループの財政状態及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、前連結会計年度において3期連続で営業損失を計上しており、財務制限条項に抵触し、また、取引金融機関からの支援継続に関する具体的な方法・条件等については未確定であったこと等から「継続企業の前提に関する注記」を記載しておりました。

当連結会計年度においては、当社グループは、4期ぶりに営業利益の黒字化を達成したものの、①財務制限条項への抵触が続いており、金融機関から期限の利益喪失請求等の権利行使の猶予を受けている状況にあること、②前連結会計年度まで3期連続で営業損失を計上した結果、自己資本が毀損しており、収益力向上、財務体質の改善・強化、安定した経営基盤の構築及び安定的な資金繰りの確保を求められていること、③北米事業の再建に取組んだ結果、赤字幅が大幅に縮小したものの、未だ改善途上にあること、④当連結会計年度の黒字化には販売先OEMによる一定の支援が含まれていることから、現時点では依然として継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識しております。

これに対して、当社グループでは当該事象又は状況を改善、解消すべく、2023年1月以降、全社を挙げて以下の様々な経営改革に取組んできた結果、その改善効果が着実に実績に現れてきております。

 

(1) グループの収益力向上

① 当連結会計年度を通じて、取引先への販売価格の改定交渉、材料の市況変動による高騰や労務費高騰の販売価格への転嫁、生産現場における生産ロスの圧縮、人員体制の最適化等による人件費抑制の継続などの経営改革を断行し、グループ収益力の向上を図って参りました。

特に課題である北米拠点においては、上記取組みに加えて、主要販売先OEMのご協力による生産現場改善や、間接部門における事務のメキシコへの集約によるコストダウンなどの経営改革を着実に実行しております。

また欧州拠点においても、拠点再編・不採算事業の撤退・間接部門の共有化等も含めた収益改善施策の具体化を進めております。

 

(2) 財務体質の改善・強化と安定した経営基盤の構築

当社グループの安定的な事業運営の継続、自己資本の充実による財務体質の改善・強化及び経営再建を確実とするための抜本的な構造改革施策の実施に必要な資金を確保することを目的として、2024年5月9日開催の当社取締役会において本第三者割当増資による総額60億円の資金調達を決定し、同日に日産自動車株式会社との間で投資契約を締結しております。また、2024年6月27日開催の当社第93回定時株主総会において本第三者割当増資に係る議案の承認を得ております。

 

(3) 安定的な資金繰りの確保

① 株式会社りそな銀行は、日産自動車株式会社による出資の条件とされているデットデットスワップ(以下、「本DDS」といいます。)を実施いたします。本DDSは、当社の既存借入金(総額約176億円)の一部(総額60億円)について2033年3月31日を返済期限とする資本性劣後ローンへ転換するものであり、当社の資金繰りの安定化に大きく寄与するものです。本DDSに関して、2024年5月9日に当社は株式会社りそな銀行との間で劣後特約付準金銭消費貸借契約書を締結しております。

  全取引金融機関とは、引続き、定期的に協議を行う等の緊密な連携を図っており、財務制限条項への抵触を理由とする期限の利益喪失請求等の権利行使の猶予にご同意頂いております。更に全取引金融機関とは新たなコベナンツ条件ならびに返済スケジュール下において2028年3月までの安定的な資金供給を約束頂く「債権者間協定書」につき、既に同意を頂いております。上記(2)①の日産自動車株式会社の出資手続の完了後に、効力発生することとなります。

コミットメントライン契約を継続いただくと共に、投資案件の厳選及び抑制等により、事業及び運転資金については、安定的な確保を維持できております。

 

以上の通り、経営改革への取組みが奏功し、グループの収益力向上、財務体質の改善・強化と安定した経営基盤の構築ならびに安定的な資金繰りの確保のすべての面において、確実に成果が表れております。また将来の想定外の外部環境変化に対しても、本第三者割当増資及び本DDSの実施、並びに両社が指名する取締役の派遣等により、当社に対する万全な支援体制が構築されております。

以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められなくなったものと判断し、当連結会計年度において、「継続企業の前提に関する注記」の記載を解消いたしました。

 

なお、2024年5月9日発表の本第三者割当増資及び本DDSについては、原則として9月2日(*)までに手続きを完了することを合意しております。また債権者間協定書に基づき既存借入金の条件変更につきましても、同日に効力発生することとなっております。

 

(*)本第三者割当増資は関連する競争当局(中国、ドイツ、メキシコ)の企業結合規制に基づき株式取得が可能となった後に払込みがなされる予定であることを踏まえ、競争法上の届出又は認可の取得に要すると想定される時間を考慮して設定しております。既に中国及びドイツにおける許可は取得済みであり、メキシコについても、当社といたしましては競争当局の認可の障害となるような実質的な問題は存在しないと認識しております。

 

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題のひとつとして位置付けております。

利益配分につきましては、安定的な配当の継続を基本としながら、今後の業績及び配当性向等を総合的に勘案し、株主の皆様への利益還元に努めてまいります。

内部保留資金につきましては、取引先ニーズに応えるための商品開発や生産性向上、拡販のための設備投資等に有効活用し、併せて財務体質の強化を図っていく所存であります。

当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当、期末配当ともに取締役会であります。なお、当社は会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。

当期の配当につきましては、当期の業績や来期の業績予想を勘案し、誠に遺憾ではございますが無配とさせていただきました。