リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関するすべてのリスクを網羅しているものではありません。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営環境の変化について
当社の属するeラーニング教育事業分野は、教育とIT(情報技術)を組み合わせた、いわゆる「EdTech(エドテック)」市場に属しており、従来の通学型・集合型の教育研修からの構造改革が起きており、今後も成長が見込まれております。一方で、今後、新たな事業者の新規参入等により競争が激化する可能性があります。
当社では、eラーニング教育事業分野での持続的な競争優位性を築くためには、学習システムの開発力、コンテンツの開発力、Webマーケティング力、ローコストオペレーション、AI・データ活用の5つの組織能力が重要と考えており、これらの組織能力を築くための投資・改善に力を入れております。しかしながら、巨大資本等による新規参入により、これらの5つの組織能力を短期的に構築される脅威が発生し、当社が適時かつ適切に対応できなかった場合には、市場での競争力低下や、対応のための支出の増加により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)インターネット利用の普及について
当社は、インターネットを通じて各種サービスを展開しております。スマートフォンやタブレット端末等、情報機器端末の普及により、インターネット利用環境が引き続き整備されていくとともに、当社の属する市場が今後も拡大していくことが事業展開の基本条件であると認識しております。
インターネットの普及に伴う障害・新たな規制・その他の要因によって、インターネット利用の発展が阻害された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)技術革新について
当社が事業展開しているインターネット関連市場では、技術革新や環境変化のスピードが非常に速く、関連事業の関係者はその変化に柔軟に対応する必要があります。
当社においても、最新の技術動向等を常に把握し、技術を自社サービスに活用できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や環境変化に柔軟に対応できるよう努めております。しかしながら、当社が、優秀な人材の確保を適時適切に行う事ができない場合、また、技術変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)システム障害について
当社のサービスは、インターネットを介して提供されております。安定的なサービスの運営を行うために、サーバー設備の増強、セキュリティ強化及び監視体制の構築等により、システム障害に対し備えております。
しかしながら、自然災害やサイバー攻撃、その他何らかの要因等によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、社会的信用失墜等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)前受金について
当社の行うスタディング事業では、有料講座の購入の際に、受講料をクレジットカード決済、コンビニ支払い、銀行振込等により全額前払いで受領し(現金ベース売上)、この金額を前受金として貸借対照表の流動負債の部に計上します。コースの申込時に全額受講料をお支払いいただき(現金ベース売上)、この金額を前受金として貸借対照表の流動負債の部に計上します。その後、サービス提供期間(講座の受講期間)に対応して月次で会計上の売上として按分しております(発生ベース売上)。そのため、現金ベース売上の拡大に伴い前受金残高が増加し、翌月以降の発生ベース売上の増加に寄与します。したがって、当社は現金ベース売上についても重要な経営指標として認識しておりますが、当初の想定どおり現金ベース売上が推移しない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、過年度及び2023年12月期における当社の現金ベース売上高の四半期ごとの推移は下記のとおりです。
(単位:千円)
|
2018年12月期 |
2019年12月期 |
2020年12月期 |
2021年12月期 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
第1四半期 |
148,616 |
197,297 |
359,511 |
632,541 |
814,047 |
1,061,015 |
第2四半期 |
133,664 |
193,275 |
411,547 |
465,029 |
537,275 |
682,967 |
第3四半期 |
174,770 |
293,309 |
550,662 |
712,436 |
834,511 |
1,054,630 |
第4四半期 |
182,712 |
278,068 |
479,432 |
634,448 |
834,533 |
962,865 |
(6)業績の季節的変動について
e-learning・教育事業における個人向け資格取得支援サービス「スタディング」は、原則として申込時に全額受講料をお支払いいただいております(現金ベース売上)。受領した受講料は、一旦前受金として計上され、その後、会計上の売上高がサービス提供期間(コースの受講期間)に対応して期間按分されます(発生ベース売上)。
当社の主力の資格講座については、試験の終了後にコースの受講期限を設定しておりますが、主力の資格講座の試験日は下期に集中しているため、コースの受講期限についても同様に下期に集中しております。
受講者が購入したタイミングが年度のどの時期であっても、受講期限は同じタイミングとなるため、主力講座の受講期限の直前にあたる下期の発生ベース売上が最も積み上がる傾向にあります。
一方、当社では現金ベース売上を獲得するために広告宣伝費を積極的に投下しており、当該費用は当月に計上されます。このことから、上期については発生ベース売上の積み上げが不足がちである一方、主力講座の受講期限が集中する下期については、発生ベース売上が十分に積み上がっているため収益は改善する傾向にあります。
したがって、広告宣伝費を投下したにも関わらず、十分な現金ベース売上が獲得できなかった場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2022年12月期及び2023年12月期の業績は、下記のとおりです。
(単位:千円)
項目 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
||
上期 |
下期 |
上期 |
下期 |
|
売上高(発生ベース) |
1,252,904 |
1,595,603 |
1,703,683 |
2,095,057 |
経常損益 |
△405,182 |
221,983 |
△131,021 |
271,269 |
当期純損益 |
△440,413 |
219,481 |
△132,168 |
244,421 |
(7)大規模な自然災害等について
当社は、個人向け資格取得の支援サービスを目的として「スタディング」や法人向けの社員教育研修の支援を目的とした「エアコース」を運営・提供しております。これらのサービスは、Webで提供されるため、自然災害や感染症の発生・流行時もサービスの提供が可能であり、在宅勤務体制も整っているため事業継続が可能です。また、大規模な自然災害等を原因とする消費マインドの低下や企業の人材育成投資の低下に対応するために、新規顧客の集客力を向上させるとともに、既存顧客へのリピート販売、継続販売を強化しております。中長期的には、スタディング事業、法人教育事業に加えて、キャリア事業、生成AI事業等を成長させ、事業ポートフォリオを分散させることで、特定の事業へのリスクを軽減してまいります。
しかしながら、今後、大規模な自然災害や事故、戦争、テロ、社会不安、金融不安等が発生した場合、当社の事業領域において消費者マインドの低下や市場の冷え込みが発生する可能性があります。また、長期間にわたって、当社が取り扱っている資格講座の試験が延期又は中止となったり、企業における人材育成投資などが大幅に制限される状態となった場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)集客方法について
当社は、個人向け資格取得事業において、顧客となる会員の獲得方法としてWebマーケティング(検索連動型広告)によるユーザーの獲得を主な集客手段として活用しております。検索連動型広告は、ユーザーが検索したキーワードに連動して表示され、広告主は当該キーワードを入札によって購入することになります。現在、検索連動型広告に加え、当社のWebページが検索結果の上位に表示されるようなSEO(Search Engine Optimization)対策や、FacebookなどのSNS(Social Networking Service(ソーシャル・ネットワーキング・サービス))を使った集客方法確立にも力を入れておりますが、仮に検索連動型広告以外での集客手段が構築できず、また検索連動型広告での入札コストが急激に上昇した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)組織規模について
当社は、従業員83名(2023年12月31日現在、他パートタイム9名)であり、従業員1人当たりの業務領域が広範囲にわたるため、人材育成等の観点では好ましい環境である一方で、事業拡大に伴い急速に業務量が増加していく局面においては、従業員1人当たりの業務負荷が増大し、運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、今後、事業拡大に応じた人員増強、内部管理体制の充実を図ってまいりますが、前述した事業拡大に応じた人員増強が計画通り進まなかった場合や内部管理体制の充実がなされなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)人材の確保及び育成について
当社は、継続的な事業拡大のためには、優秀な人材の確保や育成が重要であると認識しております。しかしながら、今後の事業計画において策定される人員採用計画に沿った人材採用が順調に進まなかった場合や、労働力市場の変化、及び経営環境等の変化による人材流出が進んだ場合には、当該影響による業務運営及び事業拡大に支障が生じる可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)知的財産管理について
当社は、特許権や商標権等の知的財産権に関して、外部の弁理士等を通じて調査する等、その権利を侵害しないように留意するとともに、必要に応じて知的財産権を登録することにより、当社権利の保護にも留意しております。また当社自身も積極的に特許の取得や商標の取得に注力し、他社との差異化に努めております。
しかしながら、当社の認識していない第三者の知的財産権が既に成立している又は今後成立する可能性があり、仮に当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者により損害賠償請求、使用差止請求又はロイヤリティ支払要求等が発生する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)情報セキュリティ体制について
当社は、受講者の個人情報に加え、資格講座の動画コンテンツなど重要な情報を保有しております。当社では、代表取締役社長を筆頭に、管理担当取締役を情報セキュリティ管理責任者、システム本部長を情報セキュリティ委員長とした情報セキュリティ体制を構築しております。また、ISMS認証(ISO/IEC27001)及びプライバシーマークを取得し情報セキュリティ体制の強化を図っております。しかしながら、万一、個人情報や動画コンテンツへの不正アクセス等により情報漏洩が起きた場合、受講者及び取引先の信頼が失墜し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)経営管理体制の確立について
当社は、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る予定です。しかしながら適切な人的・組織的な対応ができずに、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)特定の人物への依存について
当社代表取締役社長である綾部貴淑は、当社の設立者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。このため、当社は、特定の人物に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化を図っております。しかし、現状において、何らかの理由により当人が当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)配当政策について
当社は、利益配分について、将来の財務体質の強化と事業拡大のために必要な内部留保を確保しつつ、当社を取り巻く事業環境を勘案して、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としております。しかしながら、当社は現在成長過程にありますので、更なる成長に向けた事業基盤の整備や事業の拡充、サービスの充実やシステム環境の整備等への投資に有効活用することが、株主に対する利益貢献につながると考え、創業以来無配としてまいりました。
将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら配当を実施していく方針でありますが、現時点において配当の実施時期等については未定であります。
(16)税務上の繰越欠損金について
当社には、税務上の繰越欠損金が存在しております。これは法人税負担の軽減効果があり、今後も当該欠損金の繰越期間の使用制限範囲内においては納税額の減少により、キャッシュ・フロー改善に貢献することになりますが、当社の業績が順調に推移するなどして繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税等が計上されることとなるため、当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主への利益還元を重要な課題として認識しており、事業基盤の整備状況や事業展開の状況、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。
しかしながら、当社は現在成長過程にありますので、更なる成長に向けた事業基盤の整備や事業の拡充、サービスの充実やシステム環境の整備等への投資に有効活用することが、株主に対する利益貢献につながると考え、創業以来無配としてまいりました。
将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら配当を実施していく方針でありますが、現時点において配当の実施時期等については未定であります。
当社は、会社法第454条第5項に基づき、取締役会の決議によって、毎年6月30日を基準日として中間配当を実施することができる旨を定款に定めており、また、会社法第459条の規定に基づき、剰余金の配当を株主総会の決議によらず、取締役会の決議で行うことができる旨を定款に定めております。なお、当社が剰余金の配当を行う場合は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針と考えております。期末配当については株主総会、中間配当については取締役会を配当の決定機関としております。