3 【事業等のリスク】
■リスク管理体制
当社グループは、リスクマネジメント委員会を設置し、事業活動に関わるリスクを定期的に洗い出すとともに、原則として毎年重要リスクの評価・選定を行い、次年度の経営課題等の検討対象としています。また、各部門におけるリスクへの取り組みの検討及びその実施を積極的に推進しております。
なお、様々なリスクに起因するインシデントや緊急事態に対しては、リスク管理規程に基づき、必要に応じてワーキンググループや対策本部を設置することによって、迅速かつ適切に対応する体制を整備しています。
■リスクアセスメント活動
当社グループは、主に以下の手順にしたがってリスクアセスメント活動を実施しています。リスクアセスメント活動では、各部門向けのリスクアンケートと経営層向けのリスクヒアリングを組み合わせることで、部門視点でのリスクのみならず経営視点でのリスクを把握し、当社グループとしてのリスクを網羅的に特定できるよう配慮しています。リスクマネジメント委員会にて重要リスクを評価・選定し、その対応策を検討するとともにその後のモニタリング等も実施しています。
■事業等のリスク
当社グループは、経営理念として「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける」を掲げており、お客様にご満足いただき続けることこそが当社のビジネスの根幹であると考えています。
これらのことから、時代と共に変化する社会環境やお客様のニーズに対応し続けられない、すなわち「時代対応できない」ことを究極的なリスクと考えており、具体的には以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの判断または仮定に基づく予測等であり、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下に記載する事項は、当社グループの事業に関する全てのリスクを網羅的に記述するものではございませんのでご留意下さい。
①国内アパレル市場に関するリスク
リスク
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当社グループの事業は国内アパレル事業が中心となっております。 国内アパレル市場は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後、復調傾向ではございますが、長期的には少子高齢化や人口減少の影響を受けて緩やかに縮小していくことが想定されています。 また、近時においてはお客様のライフスタイルやビジネススタイルの多様化に伴い、国内アパレル市場の中でもファッションの多様化や顧客ニーズの変化が見られております。 当社グループは、時代変化に対応すべく国内外マーケットからの情報収集に努め、お客様の嗜好(ニーズ)に沿った商品企画並びに商品開発に注力しておりますが、当社グループが上記をはじめとした時代潮流の変化等に十分に対応できなかった場合には、競合他社に対する優位性やブランド価値が低下し、当社グループの中長期的な業績に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、マクロ経済環境に関する情報収集に取り組んでいる他、台湾・中国事業における新規出店の拡大やアセアン市場の開拓、自社ECサイトの多言語化対応、越境EC強化等のグローバル拡大を進めております。 また、韓国発ライフスタイルセレクトショップの国内独占販売権とライセンス権の取得を通じた身の回り品・雑貨事業の強化や、靴磨き、靴修理店の運営、靴磨き用品の製造・販売などを手掛ける事業会社を子会社化するなど、関連事業の展開にも取り組んでおります。 さらには、企業ブランドのリブランディングを実施することで、従来からの信頼感や安心感があるというポジティブなイメージを保ちつつ、アクティブで幅広い世代に訴求できる企業ブランドの構築を目指してまいります。
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経営戦略との 関連性
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UA CREATIVITY戦略(既存事業の成長拡大) UA MULTI戦略(業容拡大に向けた事業開発)
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②投資判断に関するリスク
リスク
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今後当社グループが業容拡大によって価値提供の幅を広げていくためには、M&Aやアライアンスを活用していくことが有効な手段の1つと考えております。 今後のM&Aやアライアンスにおいて、期待したシナジーや収益を生み出すことができない場合には、当社グループの企業価値や業績に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、適切な投資判断基準・プロセスの策定、M&Aやアライアンスを推進する部門の設定や外部パートナーの活用、M&A並びにPMIの実施によるノウハウの蓄積等に取り組んでおります。
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経営戦略との 関連性
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UA MULTI戦略(業容拡大に向けた事業開発)
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③人的資源に関するリスク
リスク
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当社グループの事業においては、今後とも時代対応のための変革に応じて、顧客属性や顧客の嗜好と適合した社内人材の配置や、適材適所での人材の確保と人材の育成が必要と考えております。 昨今では、新しいライフスタイルやファッションのカジュアル化、購買行動のオンライン化が、企業に新しいモノの売り方(ECサイト売上比率の向上やデジタルマーケティングの強化等)や最新の時代感覚を伴った品揃えと見せ方を迫っております。そのため、これらに対応するための新規事業開発、マーケティングIT・デジタルなど新たな時代に求められる優秀な人材を惹きつけることが重要課題となっています。 また、就労人口は加速度的に減少し、転職が当たり前の社会となった今、店舗人材を確保することもハードルの高い重要課題となっています。 当社が顧客の求める時代感覚と適合した人材配置や当社戦略に適合した人材採用、育成を適切に遂行できない場合、想定外の人材流出が発生した場合等には、戦略の遂行と長期ビジョンの達成に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、上記のような時代対応に適した人材を惹きつけるための適切な賃上げ、評価制度・ポジション等の整備や教育の充実化に取り組んでいます。 人事・評価制度については、従業員一人ひとりの評価・異動歴・経験・スキル・将来のキャリア志向などを可視化・一元管理するタレントマネジメントシステムを積極活用し、今後の様々な取り組みに対して適材適所の人員配置を進め、モチベーション高く業務を行える環境を整えることで従業員エンゲージメントの向上に努めています。 教育の充実化については、従業員が自発的に学習し、能力を高めていけるように、ビジネススクール受講支援、資格取得支援などの教育体制を拡充しています。 また、働き方の多様化に対応するため、各種休暇や短時間勤務制度を整備し、ライフイベントと仕事、それぞれの充実と両立に取り組んでいます。
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経営戦略との 関連性
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UA CREATIVITY戦略(ブランド力の強化)
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④物流・ロジスティクスに関するリスク
リスク
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当社グループは、日本国内及びアジアを中心に広く世界各国で生産された商品を仕入れております。そのような中、当社の主力である日本国内販売の流通について、「物流の2024年問題」に起因した物流の停滞やコストの上昇が懸念されており、今後物流需要に対する輸送可能量が想定以上に減少した場合や当社グループが十分な商品供給力を確保することができなかった場合には、店舗配送におけるリードタイムの増加や輸送コストの増加、商品納入の遅延または不能が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、将来的な業容拡大にあわせた物流センターの体制整備に取り組んでおります。 さらに、適切な調達・物流の確保に向けて委託先との連携を強化し、懸念事項の特定と解決に向けた協議を実施しております。 合わせて、商品調達のデジタル化を進め、発注から納品、在庫までのステイタスを可視化することで、商品流通の効率化を図ってまいります。
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経営戦略との 関連性
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UA DIGITAL戦略(サプライチェーンの最適化)
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⑤カントリーリスク
リスク
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当社グループは、今後さらにお客様層を拡大させ、提供価値の幅を広げていくためにグローバル展開を強化しています。特に、台湾・中国につきましては中長期的に高い成長ポテンシャルを有する市場と認識しており、台湾事業での新規出店拡大に加え、中国市場の開拓に向けた取り組みも進めております。 また、中国やアセアン地域は当社グループが提供する商品の生産地としても重要な役割を担っております。 こうした中、中台関係の懸念が更に高まっており、アセアン地域を含めた関係国においても政治的な混乱や紛争等が生じた場合には、当社グループの戦略やサプライチェーン、業績に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、中台関係に関する各種情報収集の強化、生産地の分散化(調達バランス)に継続して取り組んでまいります。 また、店舗展開国については事業継続計画(BCP)の策定・浸透を進めるとともに、海外における従業員の安全を確保するための「海外有事対応マニュアル」の整備を行い、現地子会社側との確認を行っております。
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経営戦略との 関連性
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UA MULTI戦略(グローバル拡大) UA DIGITAL戦略(サプライチェーンの最適化)
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⑥自然災害に関するリスク
リスク
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当社グループの店舗は日本国内の大都市圏を中心に多数の店舗を展開しており、本部機能や物流拠点も首都圏に集中しています。 これらの地域において大規模地震などの甚大な自然災害が発生した場合、店舗設備の損壊や営業の停止、本部機能の麻痺やサプライチェーンの寸断が生じるおそれがあります。 それらに対して、迅速かつ適切な対応が出来なかった場合、当社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、早期復旧に向けた措置を実行するために「リスク管理規程」に基づき「BCP(事業継続計画)」および「有事対応マニュアル」を策定し、危機管理体制を整備・構築するとともに、関係部門での訓練を行うなど、対応力の向上に努めています。
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経営戦略との 関連性
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UA DIGITAL戦略(サプライチェーンの最適化)
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⑦情報インフラに関するリスク
リスク
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当社グループは、お客様一人ひとりに最適化させた精度の高いサービスの提供とお客様の体験価値向上を目指し、実店舗とECサイトを融合させたOMO(Online Merges with Offline)を推進しております。当社グループとお客様との関係性を強化するための当社グループの会員プログラム「UAクラブ」は150万名のアクティブ会員を有しており、多くの個人情報を取り扱っております。「UAクラブ」をより有効に機能させるために自社ECアプリや自社ECサイトも有しており、多くのお客様に実店舗と自社ECを併用頂いております。 個人情報を含む多くの機密情報の取扱いには十分に留意しておりますが、万が一、コンピュータウィルスやサイバー攻撃、従業員や委託先の管理ミス等の要因により機密情報の漏洩等が起きた場合には、当社グループのブランドイメージの低下や法的な責任の追及によるコストの発生等、当社グループの戦略や業績に影響を及ぼす可能性があります。 また、上記のような要因により当社グループの事業活動を支える物流ネットワークや情報システム、ECサイト運営等の継続が困難となる事象が発生した場合、商品の供給が滞ることにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、「情報セキュリティ規程」に則り、セキュリティ専門企業と連携しながら不正アクセス対策、ウィルス対策、データ保護対策、ユーザー認証等、安全性が高いシステムの構築とリスク管理を実施しています。 また、内部からの情報流出等を防止するため、「情報セキュリティポリシー」を定め、適切な情報管理の徹底に努めるとともに、すべての従業員(契約社員含む)に対して「情報セキュリティ研修」や標的型攻撃メール訓練等を実施しています。 さらには、代表取締役社長執行役員が委員長、業務執行取締役が委員、社外取締役がオブザーバーを務めるリスクマネジメント委員会内に「情報セキュリティ部会」を設置し、本リスクに関する経営層を含めた討議を行うことで早期に対策立案や実行を行うことができる体制を整備しております。 個人情報については、「個人情報の保護に関する法律」に準拠した「個人情報保護規程」を経営会議にて定め、個人情報の管理体制の構築、評価や見直しを実施しています。 情報インフラにつきましては、情報システムとECサイトをクラウド環境で冗長構成する等、BCPの整備・見直しや複数拠点への分散を推進してまいります。
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経営戦略との 関連性
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UA DIGITAL戦略(サプライチェーンの最適化)
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⑧サステナビリティに関するリスク
リスク
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アパレル業界においては、特にサプライチェーン全体における環境や人権に配慮した事業運営が求められておりますが、サステナビリティに関する社会的な要請が高まる中で当社グループが長期的に継続して取り組むべき最優先事項は大量生産、大量消費を前提とした売上拡大志向から脱却することであると考えています。これは業容拡大を目指しながら「限られた資源で最大限の企業価値を創出すること」であり、適正量の商品をサプライチェーンに配慮して適切に調達し、無駄なく販売していくこと、つまり定価販売比率を改善させていくことでもあります。 これらのサステナビリティの取り組みに関する情報開示の法制化も進んでいる中で、今後サステナビリティ関連法令の厳格化が進み、それに対応することができない場合、サプライチェーンにおいて環境や人権に関する予期せぬ問題が発生した場合には、当社グループの企業活動がお客様や投資家からご支持いただけなくなる等、当社グループの企業価値に影響を及ぼす可能性があります。
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対応策
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こうしたリスクへの対応として、「経営会議」の下部組織として、代表取締役社長執行役員が委員長、業務執行取締役が委員、社外取締役がオブザーバーを務める「サステナビリティ委員会」を設置して、戦略方針や具体施策の審議等を行っています。 重要課題として「サプライチェーン」、「資源」、「コミュニティ」、「人材」「ガバナンス」の5つのテーマを設定し、2022年から、重要訴求分野として「サーキュラリティ」「カーボンニュートラル」「ヒューマニティ」の3つのカテゴリーと、それぞれに紐づく9つの定量目標を策定しております。 「サプライチェーン」に関しては、安全・安心に配慮したトレーサビリティ構築による原料から製造までサプライチェーンの透明性を高めております。人権侵害の防止や環境への配慮等を目的とした「商品調達取引先様向け行動規範」と、2023年4月にグループ人権方針を新たに策定しました。人権デューデリジェンスの一環として人権リスクの評価を開始しており、国内海外の生産工場を対象とした「強制労働」、「児童労働」、「労働安全」などのリスクの高い項目については優先的な対応を実施することで責任あるサプライチェーンの構築に取り組んでまいります。 「資源」に関しては、環境負荷低減型や資源循環型の素材など、国際基準に準じた環境配慮素材を積極的に取り入れています。 なお、当社は2022年にTCFD提言に賛同し、2023年にはSBT認定を取得しました。温室効果ガス排出量の削減に向けた具体的な取り組みとして、一部の店舗においては既に再生エネルギーの利用を開始しております。今後も国内外の関係機関と連携し、情報開示を行ってまいります。
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経営戦略との 関連性
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UA DIGITAL戦略(サプライチェーンの最適化)
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