2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

1.ジュエリー・アート・オークション事業

(ブライダルジュエリーの製造・販売等)

① 業界の状況、業界を取り巻く環境について(少子化、晩婚化など)

 当社グループの主力商品は、婚約指輪及び結婚指輪のブライダルジュエリーです。少子化、晩婚化の進行にともない、中長期的には市場の縮小が予想されます。実際に婚姻件数は1972年のピーク時の約110万組から2023年には約47万組に減少しました。ブライダルジュエリー市場は縮小傾向にあるという予測もあり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。将来的には、対応策としてブライダル以外の顧客にアプローチできる商材、サービスの開発を検討しています。

 

② 販売単価、客単価の推移について

 民間調査会社によれば、消費者のダイヤモンドエンゲージリングの購入単価は下落傾向にあります。一方で、地金(プラチナ等)の価格は原材料の需給のバランスと為替レートの変動による影響があり、更なる値上げの可能性があります。

 当社グループの主力商品であるブライダルジュエリーの販売単価については、一生に一度の記念品でもあり、低価格だけではない品質やサービスを重視する傾向も依然として存在しています。当社グループはブランドの差別化と、高い付加価値のある商品づくりを目指し、販売単価を原材料価格にあわせて調整していますが、想定以上の円安が進んだ場合や、競合他社の増加、販売チャネルの多様化により低価格競争を強いられた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループとしては、高品質な商材を導入すると同時に、新製品の開発により価格以外の魅力で顧客に訴求できる体制を進めてまいります。

 

③ ブライダルジュエリーに特化した販売戦略について

 ブライダルジュエリー市場の中では、当社グループのシェアは約8%と推定され、当社独自のビジネスモデルによる成長の余地は十分にあると考えています。市場そのものの安定性、当社グループの強みである高品質のダイヤモンドを直接仕入れることによるコスト・リーダーシップ、他社を圧倒する強力なブランド戦略、お客様のニーズを常に把握し商品へ反映する確立された仕組みと豊富な経験とノウハウ、専門知識の豊富な人材を擁することなどにより、今後も短・中期的に、ブライダルジュエリー市場に特化することに潜在するリスクは低いと考えています。

 しかし、ブライダルジュエリーの販売が当社グループの売上高の大半を占めているため、ブライダルジュエリー市場の状況変化によっては、業績に影響を受ける可能性がありますので、ブライダル以外の新商品の開発や新規分野への取り組みを進めることでリスクの低減化に努めてまいります。

 

④ 仕入方法及び購買スタッフの育成について

 当社グループは、イスラエルとベルギーからダイヤモンド・ルース(裸石)を仕入れています。

特に、イスラエルにある連結子会社Israel Shiraishi Ltd.は、イスラエルのダイヤモンド取引所において、現地のダイヤモンド業者からダイヤモンド・ルースを購入し、商品を当社グループへ直接販売しています。このようなルートでの直接仕入は、流通過程を省略することができることから、仕入コストの削減効果があります。これらの仕入体制を維持するために、㈱NEW ART(旧商号:㈱ニューアート・シーマ)及びIsrael Shiraishi Ltd.に経験を積んだ購買担当者を配置しています。

 当社グループでは、購買担当者の継続的な育成を行う計画でありますが、万一複数の購買担当者が同時に退職するような場合には、当社グループの購買活動が影響を受け、商品競争力の低下やコスト増加を招き、売上や利益を減少させ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 海外情勢について

 ブライダルジュエリーの主要仕入先の連結子会社Israel Shiraishi Ltd.は、イスラエルに所在し、イスラエルのダイヤモンド取引所においてダイヤモンド・ルース等を買い付けています。同取引所は、昨今、近隣諸国で勃発した戦争の際にも閉鎖されることはありませんでしたが、中東情勢の悪化の程度によっては、連結子会社のスタッフの安全性を最優先するため、現地での活動を停止し、他所へ避難する可能性があります。この場合、他の仕入先であるベルギーや、その他のダイヤモンド市場からダイヤモンド・ルース等を調達する予定ですが、購買活動が一時的に影響を受け、商品競争力の低下やコスト増加を招き、売上や利益を減少させ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

⑥ ダイヤモンド・ルース(裸石)の価格変動、国際相場について

 ダイヤモンド・ルースの仕入価格は、世界のダイヤモンド市場における国際的流通価格の変動や、地金と同様に為替相場の変動に影響を受けます。近年は経済成長著しい新興国の需要も増加しておりますが、婚約指輪に使用する比較的小粒な種類のダイヤモンドは、今後も相対的に安定した環境の中で仕入・販売ができるものと考えています。しかしながら、現在のロシア、ウクライナ情勢により、ロシア産のダイヤモンド流通量が低下した場合、国際的にダイヤモンドの供給量が減少し価格の高騰が懸念され、急激な価格変動があった場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 地金の価格変動について

 当社グループは、プラチナや金などの地金を原料として仕入れていますが、同地金は国際情勢により価格が大幅に上昇することがあります。現在のロシア、ウクライナ情勢により希少金属の世界的な供給量が減少し価格の高騰が懸念され、急激な価格変動があった場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 為替相場の変動による業績への影響について

当社グループは、海外からダイヤモンド・ルースを仕入れる取引等、多くの外貨建て取引が発生しますので、為替変動の影響を受けます。当社グループでは、「デリバティブ取引管理規程」を定め、投機目的等の不必要な取引を排除しつつ、先物為替予約等のデリバティブ取引により、適切にリスクヘッジしうる体制を整えておりますが、現在の大幅な円安は海外仕入にとっては大きな影響があり、値上の要因となる可能性があります。

 

⑨ 出店戦略について

 当社グループは、国内主要都市への出店については採算重視で検討を進めています。取り扱う商品の価格帯、ブランドイメージを維持する必要性から、出店計画地域の中でもメイン・ストリートのいわゆる一等地を考えていますが、このような場所では、環境の変化や家賃の高騰などにより採算ラインを確保できなくなり、その程度によっては、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。地域内における店舗の移転なども視野に入れ、賃料情報にも注視した戦略出店を進め、リスク回避に努めると同時に、採算ラインを重視した店舗管理、店舗出店、退店プランを実現できる体制を構築しています。

 

⑩ 災害について

当社グループは、店舗、本社事務所などが継続的かつ安定的に運営できるように、機械、設備などの適切なメンテナンスに注力していますが、このような当社グループのシステムや販売拠点などは地震や火災などにより損害を受ける可能性があり、その程度によっては、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 情報セキュリティについて

当社グループは、個人情報を含む重要情報の取扱いに関する規程の周知や社員教育の徹底、ネットワークセキュリティの構築を図っていますが、万一、外部からの不正アクセスによる個人情報などの重要データの漏洩、ホームページ上のコンテンツの改ざん、コンピューターウィルス感染による重要データの消失などが発生した場合、業務運営に支障をきたし、企業イメージの悪化、何らかの損害賠償の請求、訴訟その他の責任追及などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑫ 商品の保管について

当社グループの取り扱う商品については、高価かつ持ち運び容易な商品が多いため、防犯対策には十分配慮していますが、窃盗・強盗などの犯罪にあうリスクは高く、多額の損失を被ることにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。リスクを最小限に低減するために監視カメラの導入や、警備会社との連携によるリスクの低減化に努めてまいります。

 

(美術品の販売)

① 美術品の盗難について

 当社グループの取扱う美術品には、高額なものもあり、防犯対策には十分配慮していますが、窃盗・強盗などの犯罪にあうリスクが存在し、多額の損失を被ることにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。リスクを最小限に低減するために、保管倉庫や展示スペースには、監視カメラ、機械警備システムを導入し、セキュリティの強化を図り、リスクの低減化に努めています。

 

 

② 美術品の破損等について

 美術品は国内のみではなく海外でも取扱いがなされるため、運送時の破損にさらされるリスクが存在し、損害の程度によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。リスク回避のために、運送時・保管時を問わず、保険付保を必ず行い、美術品の取り扱いに習熟した専門業者による運送管理を行っています。

 

③ 為替相場の変動について

 当社グループの取扱う美術品は、仕入、販売ともに海外マーケットでの取引も多いため、為替変動リスクが存在します。これらの為替の変動リスクは、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(オークションの企画・運営)

① 出品作品の確保について

 出品作品については、主に出品募集の広告や営業活動による一般個人顧客及びギャラリー等からの出品によるものですが、オークション市場全体の流通量の減少、競合先の出現動向、及び顧客の信頼・マインド等の変化によって出品作品が十分に確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

② 美術品の査定について

 オークションに出品されるすべての作品に対し、エスティメイト(落札予想価格帯)を構成するため、美術品の鑑定が適正に行える社内体制を整えております。しかし、当社が設定したエスティメイトが市場価額と大きく乖離し、オークションで落札されないケースが連続して発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

2.ヘルス&ビューティー事業

(1)法的規制について

① 「特定商取引に関する法律」との関係

 当社グループの販売するエステティックサービスや商品は、「特定商取引に関する法律」等の規制を受けており、コンプライアンスが当社グループの大きな経営課題であります。今後、関連する法令の改正又は新たな法令が制定された場合は、その対応に相当な費用や労力の投入を要するケースも想定され、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

 

② 「消費者契約法」との関係

 当社グループは、「消費者契約法」について同法施行以前よりマニュアル等を作成し、社員教育を行い、従業員に同法の理解を進めています。しかしながら、万一、同法に違反するような行為があった場合には、行政機関による指導又は営業停止命令の対象となり、社会的信用が低下し経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 「不当景品類及び不当表示防止法」との関係

 当社グループは、反響の大きい有効な集客方法である広告について、不実の内容や誇大な表現を排除し、不当景品類及び不当表示防止法に違反しないよう十分に留意して行っています。しかしながら、仮に当社グループの広告が不当表示と判断された場合、公正取引委員会による排除命令、広告又は業務に対する停止命令等の処分が課せられる可能性があり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 「個人情報の保護に関する法律」との関係

 当社グループはカウンセラーによる「お客様カルテ」の作成により、お客様管理を行い、お客様に適した施術を継続的に実施するため、必要な個人情報を取り扱っており、個人情報取扱事業者として一定の義務を負うこととなっています。個人情報の管理については、個人情報保護に関する基本方針の策定、規程の整備、情報システムセキュリティの強化、従業員に対する教育を実施して適切な管理を行っています。しかしながら、万一、情報の流出、情報の不正使用が発生した場合、その内容により、莫大な賠償が発生すると同時に社会的な信用の失墜による営業活動に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)人材の確保について

 当社グループは、全国各地において、様々な採用媒体、採用手法により、新卒、中途の採用を積極的に行って人材確保に努めています。しかしながら、社内の人員構成は20歳代前半の女性が中心となっており、ベテラン人材が少ないことと離職率が高い業界であることで、今後、必要な人材の確保が出来ない事態が発生した場合、顧客の予約を捌けない状態が発生し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3)信販会社との契約について

 当社グループは、エステティックサービス契約時におけるお客様の代金決済手段として、現金の他にショッピングクレジットやクレジットカードを導入しています。今後、信販会社、カード会社との契約が解約され、代金決済方法の選択肢が減少した場合、お客様との契約に支障をきたすことにより、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)前受金について

 エステティック業界ではサービスの特性上、顧客は何回かの施術を受けることが多いのですが、多くのお客様には数回分のコース契約代金を一括前払いでお支払いいただいています。代金について会計処理上は「契約負債」で計上致します。その後、お客様が来店し、実際に施術を受けた内容(役務提供)に応じて売上に計上することとしています。当社グループでは、前受金を運営資金及び店舗拡大資金として活用しています。しかしながら、今後、法律の変更などで顧客資産としての分別管理等が規定され、資金としての活用が制限された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.その他事業

(クレジット事業)

① 割賦売掛金について

 割賦売掛金につきましては、景気の動向、個人破産申立の増加、その他の予期せぬ理由等により、債権回収のリスクが顕在化する可能性があります。

 

② 割賦販売法

 「その他事業」に含まれる「クレジット事業」は、割賦販売法が適用され、各種の業務規制を受けております。当社グループはその事業の継続のため、同法に基づき、関東経済産業局に「個別信用購入あっせん業者」として業者登録を行っており、同法を遵守した業務運営を行う必要があります。

 

4.海外展開

 当社グループは、中長期的な事業規模の拡大のため、既存事業の海外展開を積極的に推進しています。特に既存事業を推進する予定のアジアは新興国であるため、国際政治に係るリスク、為替変動や貿易関係等の経済に係るリスク、文化・慣習の違い等から起因する労務・社会に係るリスクなど、当社グループの想定を超える未知のリスクが存在します。これらのリスクが当社グループの想定をはるかに越えて顕在化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

5.新規事業

 当社グループは、中長期的な事業規模の拡大のため、新規事業の育成に積極的に取り組んでおります。しかしながら、新規事業においては、不確実要因が多く、事業の立ち上げに時間を要する場合や、想定通りに進まず途中で撤退等した場合、また法令の改正、規制の見直し等が行われた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主の皆様への利益還元を経営の最重要課題の一つに位置づけたうえで、利益配分については、将来の事業規模拡大に不可欠な成長投資を優先し、株主利益及び企業価値の最大化に努め、株主還元については、企業価値向上による株価上昇と剰余金の配当によって総合的に実現することを基本方針としています。

 また、株主重視の観点から1株当たり当期純利益(EPS)と自己資本当期純利益率(ROE)の向上を意識した経営を行い、剰余金の配当は、当期純利益だけではなく、内部留保も含めた資本効率を勘案すると同時に将来の事業計画を考慮して決定しています。

 当社は、期末配当の年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。この剰余金の配当の決定機関は、株主総会であります。

 当事業年度の配当につきましては、株主の皆様の利益還元について総合的に勘案した結果、1株当たり100円といたしました。この結果、当事業年度の配当性向は108.2%となりました。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年5月28日

1,536

100.0

取締役会決議