2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)執行役への依存

 当社グループは、経営の効率化、意思決定の迅速化を図るため、全執行役で、グループ全体の経営方針や経営戦略・事業戦略の策定・決定をはじめ、事業化及び事業推進に至るまで、当社グループの事業活動上重要な役割を果たしております。このため、当社グループでは過度に執行役に依存しないよう、経営体制を整備し、経営リスクの軽減を図ることに努めるとともに、後継者計画の作成を行っておりますが、執行役が何らかの理由により業務を遂行できなくなった場合、当社グループの経営成績及び今後の意思決定に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)国際情勢の影響

 今後、為替の大幅な変動、ある地域でヒト・モノ・カネの動きが異常に抑制された場合、また、当社グループが事業を行っている国々で、政治・経済又は法環境の変化、労働力の不足、ストライキ、事故、天災地変、感染症の流行など予期せぬ事象が起きた場合、事業の遂行に問題が生じる可能性があります。

 

 為替変動については、USドル、ユーロ、タイバーツなど主要な販売国および生産国の為替レートの変動により円ベースでの売上高と利益の減少をもたらす可能性があります。

 このため、高付加価値製品の販売促進や生産性の向上、生産地の多様化に努めるとともに、継続的な営業活動から生じる債権債務の決済を、USドル、ユーロ、円の主要3通貨において、可能な限り同一通貨で行うことで為替変動リスクを抑えています。しかしながら大幅な為替影響が発生した場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 2025年3月期においてそれぞれの通貨が1パーセント円高になった場合の当期利益に与える影響は次の通りでした。

 USドル 907百万円減少、ユーロ 10百万円減少、タイバーツ 71百万円減少

 

 当社は事業ポートフォリオ経営の考えに基づき、多様な事業を様々な国、地域で行うことでグループ全体業績の安定を図っており、2025年3月期の地域別の売上高はおおよそ日本21%、アジア太平洋39%、米州18%、欧州20%と分散しております。

 

 しかしながら、外部環境の変化が当社グループの想定よりも早く進み、対応が遅れた場合、当社グループの業績悪化により財務状況が悪化する可能性があります。

(3)小売の規模拡大による価格低下

 ライフケア事業において、量販店の規模拡大や共同購買組織の組成、オンライン事業者の台頭が散見され、これらを背景とした製品に対する価格圧力が強まっています。価格低下による影響をコスト削減や高付加価値戦略の推進により吸収を図っていますが、価格低下の進行速度によっては、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)生産能力

 当社グループでは、各製品について、 顧客の受注に応える十分な生産能力の確保に努めておりますが、なんらかの要因により、生産上の問題が発生したり、新規設備の立ち上げが遅れたりするようなことがあれば、当社グループの業績への影響のみならず、得意先の生産・販売計画に影響を与え、競合他社のシェア拡大等の恐れがあり、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)新規事業の獲得

 永続的な成長のために新規事業は重要であり、M&Aもしくは内部開発による獲得を図っています。

 M&Aに関しては担当執行役、専任チーム及び事業部門の担当者などで構成される投資委員会において、内部開発については四半期毎の予算会議などにおいて適宜検討しております。

 しかしながら、新規事業の獲得が進まない場合、長期的な当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)情報管理に関するリスク

 当社グループでは、事業の遂行において多くの個人情報や顧客情報など様々な機密情報を保有しており、これらの管理については、適切なIT資産の管理や取扱者のトレーニングなど様々な対策を講じております。

 しかしながら、万一、情報の流出が発生した場合には、当社グループの社会的信用の低下と損害賠償責任が発生する可能性があります。

 

(7)製品の品質に関するリスク

 当社グループでは各事業部門の品質基準に基づき、多様な製品を製造しております。メディカル製品を取り扱うライフケア事業においては、各事業部門を統括する規制・品質・政府関連統括部を設置することで社内外の品質基準を厳格に順守しております。また、国際的な品質管理マネジメントシステムであるISO9001(主に情報・通信事業)もしくはISO13485(主にライフケア事業)の認証を各事業主要な生産拠点を中心に取得し、製品安全品質の向上に努めています。

 しかしながら、万一、品質問題が発生し、リコールや製造物責任が問われる場合には、回収費用が発生するだけでなく、顧客の信頼を著しく損ない、製品によっては、損害賠償責任が発生する可能性があります。

 

(8)資材等の調達に関するリスク

 当社グループの生産活動において、原材料・部品等の一部に、その特殊性から調達先が限定されているものや調達先の代替が困難なものがあります。契約や代替品への切り替えなどで安定調達を常に検討しておりますが、調達先の災害や事故、仕入価格の高騰等で、原材料・部品等の安定的調達が確保できない可能性があります。その場合は、製品の出荷遅延による機会損失等が発生し、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)固定資産及びのれんの減損損失のリスク

 当社グループは、生産能力や品質、生産性向上などのために設備投資を継続的に行っております。また成長加速のためにM&Aを継続的に行っております。

 これらに伴い取得した有形固定資産、のれん及び無形資産を計上しており、当連結会計年度末において、有形固定資産、のれん及び無形資産をそれぞれ、2,109億円、522億円及び246億円計上しております。

 当社グループは、設備投資やM&A検討過程において執行役と事業部門マネジメントによる、客観的な数値に基づく、かつ早期の投資回収を目指した議論を徹底して行っています。また、重要な案件については社外取締役の承認を必要としているため、内輪の論理ではなく、一般的な観点からも合理的な案件だけが承認、実行される仕組みとなっています。

 

 しかしながら各連結会計年度末もしくは減損の兆候がある場合に実施する減損テストの結果、想定を超えた市場環境の変化などで、有形固定資産、のれん及び無形資産の帳簿価額が回収可能価額よりも低下した場合は減損損失を認識する可能性があります。

 

(10)税務に関するリスク

 当社グループを構成する事業法人は、各国の税法に準拠して税額計算し、適正な形で納税を行っております。なお、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについて細心の注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は時代や環境など外部環境の変化に応じて事業ポートフォリオの構成を柔軟に変えていくことで、企業価値の最大化を目指しております。

 事業活動を通じて得た利益を成長投資に充てることで、持続的な企業価値の向上を図っております。また、成長戦略に備えた内部留保の充実と株主還元の最適なバランスを図り、資本効率の向上および財務の健全性を実現してまいります。

 株主還元については、長期的な企業価値の向上に資する投資を充実させつつ、余剰資金を活用した配当ならびに自己株式の取得を通じて、株主の皆様への利益還元をおこなっておりますが、資本の拡大を抑えることで更なる資本効率の改善を図るため、配当については、配当性向40%を目安とする累進配当を基本方針として設定いたしました。

 当社の剰余金の配当の基準日は、毎年3月31日及び9月30日としており、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。これらの剰余金の配当は、株主総会の決議によらず取締役会の決議により定めることとしております。また、当社は前述の基準日のほか取締役会の決議により、「基準日を定めて剰余金の配当をすることができる」旨を定款に定めております。

 そのような考えのもと、既に実施済みの中間配当金1株当たり45円と合わせまして、年間配当金は1株当たり160円とさせていただきました。当連結会計年度の配当性向は、連結ベースで27.5%となりました。

 上記の方針により当社の株主総利回り(TSR)は188.7となりました。比較指標である配当込み東証株価指数のTSRは213.4でした。

 これは2020年3月末の投資額を100として指数化し、株価変動と配当を考慮した投資パフォーマンスを示しています。

 

 当連結会計年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年10月31日

15,657

45

取締役会決議

2025年5月22日

39,417

115

取締役会決議