リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。当社は、グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」において定め、その基本方針及び管理体制に基づき、上席執行役員を委員長とするリスク管理委員会において、リスクの発生防止、発生した場合の適切な対応に努めております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 有利子負債について
当社グループは、設備及び運転資金について、主に金融機関からの借入金に依存しております。財務体質の改善を図るため、キャッシュ・マネジメントシステムの導入などにより、資金効率の向上と手元流動性の確保に努めておりますが、総資産額に占める有利子負債の割合は当連結会計年度末において52.6%(前連結会計年度末は53.9%)となっており、今後の金融環境の変化や金利動向などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、リファイナンスによる金融取引の正常化及び返済負担の軽減を図るため、令和7年2月25日付で、株式会社三菱UFJ銀行をアレンジャーとする金融機関8行からなるシンジケート団とシンジケートローン契約を締結いたしましたが、本契約には財務制限条項が付されており、将来において業績の悪化等により財務制限条項に抵触した場合も含めて、当該借入金の期限の利益を喪失する可能性が生じるとともに、新たな資金調達に障害が生じた場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、シンジケートローン契約及び財務制限条項の詳細につきましては、「5 重要な契約等」に記載のとおりです。
当社グループの財政状態は、財務制限条項に照らして問題のない水準にありますが、随時モニタリングを行い、財務制限条項に抵触する可能性がある場合には、財務状況の改善を図るとともに、当該借入金について金融機関と即座に協議を行うことができるよう、良好な関係を維持しております。
有利子負債等の推移
有利子負債依存度:有利子負債/総資産
(2) 外国為替変動のリスク
当社グループは、ベトナム、カンボジア、中国(委託生産)に生産拠点が、中国(香港)に営業拠点が存在しております。営業債務の一部につきましては、恒常的に同じ外貨建ての売掛金の範囲内にあります。一部の外貨建て取引については、為替予約などによりリスクの軽減に努めております。なお、在外子会社向けの外貨建債権につきましては、NISSEY CAMBODIA CO.,LTD.に対するデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)などの準備を進めておりますが、また、外貨建ての金融負債につきましては、主に外貨により返済しておりますが、外国為替レートの変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 大口取引先の戦略変更等のリスク
当社グループの売上高のうち時計関連は、当連結会計年度末において73.3%(前連結会計年度末は73.2%)となっており、大きな割合を占めております。定期的にバランスのチェックを行い、新規取引先の拡大や他社のシェア拡大など営業力の強化に努めており、また大口取引先との定期的な会議の開催など絶えず情報交換も行っておりますが、大口取引先の戦略変更、製品仕様の変更もしくは、大口注文の解約やスケジュール変更などは、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 取引先の変化
当社グループは、与信管理規定に従い取引先の管理を行うとともに、主な取引先の信用状況を定期的に把握する体制を整えておりますが、取引先の業績不振や倒産などにより、不良債権の発生や商品の調達に支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、取引先とは定期的に価格交渉は行っておりますが、人手不足等による人件費の高騰や原材料価格の高騰などにより外注加工費が増加した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 人件費の高騰・人員不足のリスク
当社グループは、ベトナム及びカンボジアに生産拠点が存在しております。生産性の向上、賃金のベースアップ、賞与の支給などにより、安定雇用に努めておりますが、人件費の高騰や人員不足などにより稼働率が低下した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 人的資本
当社グループの市場競争力の核は、技術開発力にあるため、国内だけでなく海外においても専門性の高い技術者の確保が不可欠であります。また、当社グループは、働き方改革やダイバーシティの実現に向けて、優秀な人材の採用、社内人材の育成と確保、外国人の雇用及び待遇の改善や勤務体制の多様化などに努めておりますが、計画通りに進まない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 減損会計に関するリスク
当社グループの保有資産につきましては、減損リスクを意識することにより、資産収益性を高める取り組みを行っておりますが、実質的価値の低下等による減損処理が必要となった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 繰延税金資産に関するリスク
当社グループは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を慎重に検討して計上しておりますが、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合には、繰延税金資産の取崩が必要となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) システムトラブル発生のリスク
当社グループは、通信ネットワークやコンピューターシステムにより、開発、生産、販売及び管理などの多岐にわたる業務を管理しております。システムのクラウド化や定期的なバックアップなどにより、コンピューターウィルスの感染やサイバー攻撃などに備えておりますが、何らかの障害によりシステムトラブルなどが発生し、業務に支障を来した場合は、当社グループの業績や事業の運営などに影響を及ぼす可能性があります。
(10) 災害等予測困難な事象によるリスク
当社グループは、日本(委託生産)、中国(委託生産)、ベトナム及びカンボジアに生産拠点が、日本及び中国(香港)に営業拠点が存在しております。定期的なリスク管理委員会や各拠点とのテレビ会議の開催など、様々な情報の収集に努めておりますが、当該国における政情の悪化、自然災害、戦争やテロ、経済状況の変動、法律や税制の変更、労働力不足やストライキの発生、感染症の拡大などの予期せぬ事象により、当社グループの事業戦略や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 環境・気候変動によるリスク
当社グループは、ベトナム及びカンボジアの生産拠点において、工場排水の保全や金属等の産業廃棄物のリサイクルによる廃棄物の削減などに取り組んでおりますが、環境汚染による損害や廃棄物の増加による処理費用の増加などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、サステナビリティ経営を推進しておりますが、気候変動や脱炭素社会への移行にともなう新たな費用の発生などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 継続企業の前提に関する重要事象等
連結損益等の推移 (単位:千円)
当社グループは、平成29年3月期から令和3年3月期まで、継続的な売上高の減少傾向にあり、業績だけでなく資金繰りの状況も悪化しておりました。また、設備及び運転資金につきましては、主に金融機関からの借入金に依存しておりますが、令和1年8月より借入金元本の一定期間の返済猶予を受けており、総資産額に占める有利子負債の割合も、前連結会計年度末において53.9%(前々連結会計年度末は59.9%)と高い水準が続いておりました。
これらの状況から、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象が継続して存在しておりました。
こうしたなか、当社グループは、事業構造改革等を実施することで、収益体質の改善を継続してまいりました。
令和2年度においては、ASEAN地域における製造部門であるNISSEY VIETNAM CO.,LTD.及びNISSEY CAMBODIA CO.,LTD.(以下、「製造部門」という。)におきまして、主要な設備投資の凍結及びそれにともなう減価償却費の削減、人員の適正化及び残業の抑制などによる労務費単価の圧縮、消耗品や電気料などの経費削減、当社及び当社の香港支店、㈱村井の販売管理部門におきましては、役員報酬の減額、人員の適正化や再配置などによる労務費の削減、予算統制の厳格化による諸経費の削減などを、一部の施策につきましては平成31年度より継続して推進してまいりました。令和3年度においては、一部を除き労務費経費の削減の施策はほぼ一巡しましたが、製造部門を中心に、グループ各社が相互協力のもと、連携を密にしながら製造活動を行い、在庫管理の徹底、生産性の向上及び製造原価の改善を図り、受注増加への対応を進めるとともに、サプライチェーンの基盤強化を行いました。令和4年度においても、製造部門を中心に、サプライチェーンの基盤強化を引き続き推進するとともに、採算性の向上を目指してまいりました。令和5年度においては、引き続き製造部門の採算性の向上を目指しながら、工場の生産ラインの半自動化または自動化の段階的な推進による生産性の向上及び製造原価の低減を進めるとともに、既存の事業領域にとどまらず、当社が有する精密加工技術を生かし、将来性のある販路拡大を目指してまいりました。また、これらの施策とは異なりますが、一次的な受注減少に対応するため、製造部門の2交代制勤務の廃止(現在も継続中です。)などの諸施策を実施いたしました。当年度は、「既存事業の維持拡大と事業領域の拡大」、「ASEAN生産拠点の効率化」及び「盤石な財務基盤の確立」の3項目を優先的に取り組み、これまでの施策を継続実施してまいりました。
その結果、令和5年3月期及び令和6年3月期と2期連続して黒字計上することができました。当連結会計年度におきましても、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況及び(3)財政状態及びキャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、業績は順調に回復しております。
財務面におきましては、当社は令和2年6月において、第三者割当増資200,003千円を実施しております。また、当社グループは、取引金融機関より借入金元本の一定期間の返済猶予を受けておりましたが、令和4年12月から令和6年7月にかけて、返済猶予の対象となっていた借入金のうち287,068千円の返済を実行いたしました。
そしてこの度、取引金融機関との協議を続けてまいりました結果、当社は、令和7年2月25日には主力行の㈱三菱UFJ銀行及び他の参加行の合意を得てシンジケートローン契約を締結いたしました。本契約に基づき、令和7年2月28日付けで2,000,000千円を新規に実行、同日、借入金元本の返済猶予を受けていた対象の借入金を全額返済し、リファイナンスによる金融取引の正常化及び返済負担の軽減(令和7年度の借換を除く全ての借入金の年間返済予定額は84,904千円)を図ることができました。詳細につきましては、「5 重要な契約等」に記載のとおりです。
このように業績の回復や財務面での安定化が順調に進捗している状況から、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は解消したものと判断し、これまで記載しておりました「3 事業等のリスク (12)継続企業の前提に関する重要事象等」は消滅しております。
今後におきましても、中長期的な企業価値向上を目的とし、親会社株主に帰属する当期純利益の継続的拡大を実現するために、売上高及び営業利益、並びに売上高営業利益率を重視しつつ、収益体質の改善を継続してまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要政策の一つとして認識しており、常に株主の立場を最優先として、配当原資確保のための収益力を強化し、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。
当社の剰余金配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会です。
なお、「当会社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日の最終の株主名簿に記載または記録された株主または登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当をすることができる。」及び「当会社は、株主総会の決議によって、毎年3月31日の最終の株主名簿に記載または記録された株主または登録株式質権者に対し、金銭による剰余金の配当を支払う。」旨を定款に定めております。
当期につきましては、親会社株主に帰属する当期純損失20,016千円の計上となり、依然として多額の繰越損失を抱えている状況にあります。従いまして、株主の皆様には誠に遺憾ながら年間配当は見送らさせていただくことといたしました。