2025年4月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 6,934 100.0 -1,156 - -16.7

事業内容

 

3【事業の内容】

当社グループは、当社及び連結子会社7社で構成され、MITより自己組織化ペプチド技術に係る特許の独占的実施権の許諾を受けて、同技術を基盤技術とした製品の研究開発・製造・販売を実施することを目的とした医療製品事業を行っております。

当社グループは、医療製品事業の単一セグメントであり、医療製品開発・販売で構成されております。その内容は以下のとおりです。

 

(医療製品事業の構成)

区分

内容

医療製品開発・販売

自己組織化ペプチド技術を基盤技術として外科領域・組織再生領域・DDS領域において医療機器及び医薬品の研究開発を行う事業です。

主要な開発パイプラインとしては、外科領域では吸収性局所止血材、粘膜隆起材、後出血予防材、癒着防止材を有しており、組織再生領域では創傷治癒材、歯槽骨再建材、DDS領域では核酸医薬等のためのDDSを有しています。

 

 

(1)自己組織化ペプチド技術の特徴

当社グループの基盤技術となっている自己組織化ペプチド(*)のうち最も開発が先行し複数の製品を上市しているペプチドRADA16は、体を構成するアミノ酸(*)であるアルギニン(R)(*)、アラニン(A)(*)、アスパラギン酸(D)(*)からなる(RADA)の繰り返し配列である16残基のペプチド(*)であり、このペプチドを溶解した水溶液はpH(*)が酸性から中性になると速やかにゲル化(*)する性質を有しています。具体的には、分子同士が繊維状に結合(自己組織化)してナノファイバーを形成し、そのナノファイバーが絡み合うことでゲル化します。形成されたゲルは生体内で細胞が培養される環境に近く、コラーゲン等の細胞外マトリックス(*)に似た網目構造をしています。

自己組織化ペプチドは、生物由来の原材料を含まず化学合成により生産されることから、生物由来の原材料から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入の可能性がないため安全性が高く、ほぼ均一の品質で大量生産が可能な点が特長として挙げられます。自己組織化ペプチドは、これまでに実施したADME試験(*)において、特定の臓器に蓄積されることなく、生体内のタンパク質と同様にタンパク質分解酵素(*)により分解され、30日程度で体外に排出されることが確認されています。

 

(2)医療製品開発

医療製品開発は、自己組織化ペプチド技術を基盤技術として外科領域、組織再生領域、DDS(*)領域において医療機器及び医薬品の開発を行う事業です。

主要な開発パイプラインのうち、外科領域では吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、組織再生領域では歯槽骨再建材・創傷治癒材についてはそのいずれについても、医療機器として自ら開発し製造販売承認を取得する方針ですが、地域によっては薬事規制、市場動向、当社グループのリソース等を勘案して現地企業等と提携することでの製品化も実施していく方針です。販売についても製品、地域に応じて、代理店を通じての直接販売及び販売パートナーに対する販売権許諾の双方の戦略を適切に選択しあるいは組み合わせていく方針です。DDS領域では、自己組織化ペプチドを薬剤の担体(*)とし、各薬剤と組み合わせた製品化に向け取組んでおりますが、医薬品として開発することとなる可能性が高く当社独自で薬剤や治療物質について技術を取得するには時間を要することからも、製薬会社等に技術供与(ライセンス)を行うことによりロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指してまいります。

その他当社グループでは、大学等の研究機関とのMTA契約(*)及び共同研究契約に基づく共同研究によって、自己組織化ペプチドを基盤とした応用技術の獲得に取組んでいます。

 

A 各領域及び各パイプラインの概要

(A) 外科領域

当社は、外科領域において、吸収性局所止血材、粘膜隆起材、癒着防止材の開発パイプラインを有しています。

a)吸収性局所止血材

当社は、自己組織化ペプチドであるRADA16を基に、出血部に塗布して用いる外科手術用の吸収性局所止血材(開発コード:TDM-621)(以下「TDM-621」という。)の開発を進めています。RADA16の水溶液は、血液等の体液と接触するとpHが中性化され、自己組織化してナノファイバーを形成しゲル化します。ゲルは体組織との接触面を隙間なく被覆し、被膜が形成されて表面皮膜及び血管浅部を物理的に閉鎖し、血管深部では血液凝固が生じることで止血されます。

 

<自己組織化ペプチドのゲル化形成>

 

  自己組織化前のペプチド分子


 

 

<止血方法 概略図>


 

TDM-621は、RADA16の水溶液をシリンジに無菌充填したプレフィルドシリンジ(*)形態で、ブリスター包装(*)された製品であるため、手術現場では、パックを開封してすぐに使用することが可能であること、使用前の調製の必要がない等、適用量が調整しやすく操作性に優れていることといった特長を有しています。また、澄明な液体形状であることから術野を妨げることがなく、カテーテルや組織の狭部への適用も容易です。

既存の止血剤製品群(*)は、糊状・シート状・粉末状等の形状がありますが、主として糊のように機能して接着することにより止血効果を得るものであるのに対し、TDM-621は物理的に表面皮膜及び血管浅部を閉鎖して止血するものであるため、既存製品と異なり接着による待ち時間、圧迫による圧着時間を短縮することが可能です。また、既存製品は、一度組織に接着すると除去が困難であるのに対し、TDM-621は、余剰部分を生理食塩水により洗い流すことで容易に除去することができます。既存製品の多くは、フィブリノゲン(*)等の人や動物の血液から生成又は動物の皮膚から生成したコラーゲン等を原材料としており、これらの原材料から生じるウイルス感染等のリスクは完全には否定できないことから、生物由来製品又は特定生物由来製品として指定されており、医療現場においては、① 患者(又はその家族)への適切な説明、② 使用記録の作成と保管、③ 感染症等情報の報告等における管理体制の厳格化が要請されます。これに対してTDM-621は、生体内に存在するアミノ酸を化学的に合成したもので生物由来の細胞、組織等を原材料として含まないため、これらの原材料から生じるウイルス等の感染や未知の成分の混入によるリスクがありません。また、生物由来製品又は特定生物由来製品に求められるプロセスが不要なため、TDM-621は患者と医療従事者の負担の軽減にも貢献できるものと考えられます。

 

b)粘膜隆起材

当社は、自己組織化ペプチドを基に、消化器内視鏡治療による胃癌や食道癌等の粘膜切除術や粘膜下層剥離術(*)において、腫瘍部位の粘膜隆起を形成する内視鏡用粘膜下注入材(*)(開発コード: TDM-644)(以下「TDM-644」という。)の開発を進めています。胃や食道等の早期癌治療において行われる内視鏡による粘膜切除術や粘膜下層剥離術では、粘膜下層に生理食塩水や内視鏡用粘膜下注入材を病変部の粘膜下層に注入し、病変部を隆起させ、隆起させた根元部分に細いワイヤーをかけて締めた上で高周波を流して焼き切り(内視鏡的粘膜切除術)又は隆起させた病変部を粘膜下層の深さで電気メスにより引き剥がし(内視鏡的粘膜下層剥離術)、病変部を取り除きます。この病変部を隆起させるために用いられる内視鏡用粘膜下注入材として開発しているのがTDM-644であり、血液等の体液と接触することで中性化しゲル化する特徴から、必要な隆起を形成するとともに、副次的には止血効果も有することが動物実験により確認されています。

 

<粘膜隆起方法 概略図>

 


 

 

c)後出血予防材

当社グループにおいては、TDM-621について治療後に起こる後出血について医療機器としての承認を得るべく開発を進めています。治療時に後出血が生じると、再手術が必要となることから患者及び医療機関双方の負担が大きく、強いニーズがあります。消化器内視鏡治療における出血はおおよそ5%程度であるのに対し、治療後に後出血が懸念されるリスクの高い患者・手技はおおよそ30%あるとされており、本適応の追加により当社製品が獲得可能な市場は数倍に拡大する可能性があります。

 

d)次世代止血材

RADA16とは異なる、当社が独自に開発した新規ペプチド配列を用いた開発品です。現在の止血材より止血効果に優れ、原価を大幅に削減できる等の優位性があることから、将来的に主力製品として市場に供給すべく開発を進めてまいります。

 

e )癒着防止材

RADA16について、止血材だけではなく、癒着防止材、創傷治癒材としての開発も進めております。米国においては、耳鼻咽喉科領域において既に販売を開始しておりますが、今後、はるかに大きな市場が存在する産婦人科等の領域に適応拡大をすべく、日本と欧州双方で医師主導治験の準備を進めております

 

(B) 組織再生領域

自己組織化ペプチドは、細胞の増殖を支える細胞外マトリックスに似た物理構造を有することから、当社グループでは、組織再生領域において創傷治癒材、歯槽骨再建材を開発パイプラインとして有しております。また、当社グループは、当該パイプライン以外に、歯槽骨以外の骨の再建、軟骨・腱の再生、心筋の再生等に関する研究を行っております。

 

a)消化管の創傷治癒

当社グループは、直腸における粘膜炎により損傷した粘膜組織に塗布することで粘膜組織上に保護膜を形成し、二次炎症の防止や痛みの軽減に加え創傷治癒に最適な湿潤環境を維持する創傷治癒材を開発しております。

 

b)皮膚における創傷治癒材

当社グループは、皮膚(表皮、表皮・真皮)からの出血を迅速に止血する局所止血材、皮膚の創傷部の創傷治癒に適切な湿潤環境を維持する、創傷治癒材(開発コード:TDM-511)(以下「TDM-511」という。)を開発しております。

 

c)歯槽骨再建材

当社グループは、歯周病による歯槽骨の退行で歯が脱落した場合等に、インプラント術前にインプラント固定に充分な骨量を確保するために行う歯槽骨再建術において、骨再生のための足場材(*)となる製品(開発コード:TDM-711)(以下「TDM-711」という。)の開発を行っています。

ゲル化された自己組織化ペプチドは、ナノファイバーによる3次元構造が維持され、生体内で細胞が増殖する環境に近く、生体組織の再生をサポートする特性を有しています。TDM-711は、骨量不足箇所に充填されると、かかる特性により足場材として骨再生を促進します。米国でのインプラント治療における歯槽骨再建術では、代替骨を用いる施術も少なくなく、自家骨(*)や他家骨(*)、人工骨を用いた再建術が行われていますが、当社グループは、他家骨や人工骨を用いた再建術において、その生着を高めるためにTDM-711を用いることの開発を進めております。

 

(C) DDS領域

当社は、DDS領域において、自己組織化ペプチドをDDSにおける薬剤や治療物質のキャリア担体として活用するための研究開発を行っており、bFGF(*)・PDGF(*)等のタンパク質の徐放においても複数の有効性試験を実施しております。中でも、ハイドロゲルを形成する自己組織化ペプチドとは異なり界面活性(*)作用を持つペプチド(A6K(*))については、溶液中でナノチューブを形成する性質を有するため、当社は、癌細胞へのsiRNA(*)の導入試験において、かかる性質を活かし、ナノチューブに内包された形で癌細胞膜透過性をもたらし、導入効率を高めていく研究を行っております。

 

 

B 医療製品の開発プロセス

当社グループが自社による開発や製造販売承認取得を目指している医療製品の多くは、医療機器に分類されます。

新たに医療機器や医薬品を開発する場合、その開発プロセスは、基礎研究、前臨床試験、臨床試験、製造販売承認申請という基本的な流れは共通ですが、医薬品の場合には臨床試験が多段階に設定されており、一般に試験を行うことが要求される対象例や症例数が多く、医薬品の開発プロセスは長期にわたります。

医薬品の開発プロセスでは、臨床試験の試験相が第Ⅲ相まで(第Ⅰ相・第Ⅱ相で少数の健常人や患者に対して投与し安全性や有効性の評価を行い、第Ⅲ相で多数の患者に投与し、安全性や有効性の確認・実証を行う)に分かれるのに対し、当社グループが開発している医療機器では1つの相で比較的短期間に臨床試験が実施されます。

当社グループでは、現在、外科領域における吸収性局所止血材・粘膜隆起材・癒着防止材、組織再生領域における創傷治癒材・歯槽骨再建材を医療機器として開発し、当社グループ自ら製造販売承認を取得しています。なお、DDS領域における自己組織化ペプチド薬剤の担体については、医薬品としての開発となる可能性が高いこと、また、当社独自で薬剤や治療物質についての技術を取得するには時間を要すること等から、主に大手製薬企業への技術供与(ライセンス)を行うことでロイヤリティー等のライセンス収入の獲得を目指します。

 

当社の医療機器の研究開発プロセスの概要は以下のとおりです。


 

 

各プロセス

内容

基礎研究

当社技術が適用可能で医療機器として開発可能なアプリケーションの探索及び製品スペックの最適化を行う。

前臨床試験

医療機器としての条件を満たす安全性、有効性を動物実験により検証を行う。

臨床試験

患者に対する医療機器の安全性、有効性について検証を行う。

製造販売承認申請

厚生労働省/PMDA、米国のFDA等の各国の許認可審査機関へ製造販売承認の申請を行う。

製造販売承認取得

厚生労働省/PMDAや各国の許認可審査機関から製造販売承認を得る。

保険収載

各健康保険の適用が可能な償還価格(*)を得る。

上市

医療機器製品として製造及び販売を行う。

 

 

C 医療製品開発の事業体制

当社グループでは、小規模・少人数の組織体制で医療製品開発を効率的に進めるため、外部機関を有効に活用して事業を遂行しています。研究開発においては、当社グループがMITから独占的実施権を得ている自己組織化ペプチド技術を基盤技術として、大学・研究機関等とMTA契約又は共同研究契約を締結し共同研究等によって応用技術の獲得に取組んでいます。

 

 

         当社グループにおける基本的な医療製品事業の流れは以下のとおりです。

 


 

(注)1 契約一時金は提携契約締結時に収益となるものであり、マイルストーンペイメントは開発過程において提携契約に定める一定の段階を達成した場合に収益となるものです。

2 業務委託先とは受託臨床試験機関(以下「CRO」という。)や薬事アドバイザー等です。

3 連結子会社である3-D Matrix,Inc.であります。

 

D MITとのライセンス契約について

当社が開発・販売している製品の基盤となる自己組織化ペプチド技術は、MITの研究者の発明によるものであり、MITは、かかる技術に関連する技術を多数有しています。当社子会社は2003年4月にMITとの間でExclusive Patent License Agreementを締結し、MITから、全世界における医療・生命科学・美容の分野にかかる同特許の独占的実施権(再許諾権付)の許諾を受け、また、当社は2004年10月に当社子会社との間でLicense and Supply Agreementを締結し、当社子会社からアジア地域における同分野にかかる同特許の実施権の再許諾を受けています(なお、2007年10月の米国3-D Matrix,Inc.の当社子会社化に伴い、当社及び当社子会社は2009年4月に同契約について必要な改訂を行っております。)。なお、MITからライセンスを受けている特許以外にも、当社は、次世代の自己組織化ペプチドを独自に開発して、また、当社グループ独自に又は共同研究パートナーと共同で開発した自己組織化ペプチド技術を基盤とした応用技術に関し、当社グループ単独又は共同研究パートナーと共同で特許出願を行い、その中のいくつかについて特許登録を受けております。

 

(3) 製造

吸収性局所止血材の製造に関して、扶桑薬品工業株式会社との間での従前の製造受委託契約は一旦解消されましたが、改めて製造受委託契約を締結して継続して製造を委託しており、さらにドイツのPharmpure社との間で製造委受託契約を締結し、同社における製造も開始しております

 

(4) 販売

欧州においては、2019年にFUJIFILM Europe B.V.(以下「FUJIFILM」という。)と止血材の消化器内視鏡領域にかかる独占販売契約を締結し、同社において販売を開始しております。その他の領域については主に直販体制による販売を行っております。

米国、日本、オーストラリアにおいては、直販体制による販売を行っております。

 

 

(用語解説)

用語

意味・内容

自己組織化ペプチド

生理的条件下(中性pH、塩の存在)に置くと、ペプチド分子同士が規則的に集合し、ナノファイバーを形成するペプチド群。

510(k)

既存の医療機器と同等の機能を有する医療機器の登録制度。

アミノ酸

同一分子内にカルボキシル基(-COOH)とアミノ基(NH2)を有する化合物。

アルギニン(R)

タンパク質を構成する塩基性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。
略号はR又はArgで表記される。

アラニン(A)

タンパク質を構成する中性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。
略号はA又はAlaで表記される。

アスパラギン酸(D)

タンパク質を構成する酸性アミノ酸の一種。ヒトの非必須アミノ酸であり、天然に存在し食物では肉類・大豆・牛乳に多く含まれる。
略号はD又はAspで表記される。

ペプチド

アミノ酸が2個以上結合した化学物質(結合するアミノ酸の数によってジペプチド、ポリペプチド等とも呼ばれる)。

pH

酸性、アルカリ性を表す指標(水素イオン濃度)。

ゲル化

液体的な柔軟性を持ちつつ、個体のような弾力性を有する吸収性高分子素材であるゲルを生成すること。

細胞外マトリックス

細胞の外側にあるコラーゲン等の構造タンパク質、細胞の生着・増殖等を支える足場(Scaffold)材。

ADME試験

ADMEとはAbsorption(吸収)・Distribution(分布)・Metabolism(代謝)・Excretion(排泄)の頭文字をとった名称で、医薬品等が体内に服用されてから体外に排泄されるまでの経過のこと。ADME試験とは、体内にある薬又は同等物の体内での存在期間、排出過程を時間単位で追跡していく薬物の動態試験。

タンパク質分解酵素

タンパク質又はペプチドのペプチド結合を加水分解して、複数個のアミノ酸又はペプチドを生成する酵素であり、プロテアーゼ・ぺプチダーゼともいう。

DDS

必要な薬物を必要な部位で必要な長さの時間、作用させるための薬物送達システム(工夫や技術)。Drug Delivery Systemの略称。

担体

吸着や触媒活性を示す物質を固定する土台となる物質。

MTA契約

研究試料供給契約をいう。研究試料(試薬、遺伝子や細胞、実験動物等)の提供を行うための契約で、その試料の取扱や権利、免責等について規定する。

プレフィルドシリンジ

治療等に必要である医薬品が注射器(シリンジ)にあらかじめ充填され、すぐに使用できる状態のもの。

ブリスター包装

片面に比較的堅い材質の板状のものを使う薬の包装や厚紙を台紙とし商品名等を印刷し、板状のプラスチックをバキュームフォーム等で成型し商品を囲み込み台紙に接着した又はスライド式着脱可能な包装のこと。

止血剤製品群

外科手術等で生じた比較的狭い範囲での出血を止めるために使用されるもので、外科手術等において止血用途で使用される止血剤や組織接着剤等を含めた広義の製品群。

フィブリノゲン

血液凝固因子の一つで、線維素性の血漿蛋白原。

粘膜下層剥離術

癌の周囲にヒアルロン酸等の薬液を注射し、十分な粘膜下膨隆を作った上で、さまざまな電気メスを用いて癌を少しずつ切りはがしていく早期胃癌や早期食道癌に対する比較的新しい手術方法。電気メスを用いて切り取るため、内視鏡的粘膜切除術とは異なり、切除する組織の大きさに制限がなく大きい病変を一括して切除することが可能。

 

 

用語

意味・内容

内視鏡用粘膜下注入材

内視鏡的粘膜切除術や内視鏡的粘膜下層剥離術を実施する際に、病巣部を取りやすくするために、病巣部を隆起させるために使用する生理食塩液やヒアルロン酸等のもの。

足場材

体内にあるコラーゲン等の細胞間マトリックスであり、細胞増殖のための足場となるもの。

自家骨

自分自身の骨。

他家骨

他人の骨。

bFGF

塩基性線維芽細胞成長因子。創傷時における線維芽細胞増殖や血管新生に関与する。

PDGF

血小板由来成長因子。主に間葉系細胞(線維芽細胞、平滑筋細胞、グリア細胞等)の遊走及び増殖等の調節に関与する。

界面活性

少量で液体の表面張力を低下させる物質。

A6K

自己組織化ペプチドの一種で、アミノ酸配列AAAAAAKであるもの。水溶液中で粒子径が約50-100nmのナノチューブを形成する。

siRNA

21-23塩基対から成る低分子二本鎖RNA。siRNAはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、伝令RNA(mRNA)を分解することによって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。

償還価格

健康保険の給付対象となる医療機器等について、厚生労働省が定めた価格。

 

 

業績

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

①経営成績の分析

 [表1]事業収益及び営業損益

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年5月1日

  至 2024年4月30日

当連結会計年度

(自 2024年5月1日

  至 2025年4月30日

前期比

事業収益

4,588

6,934

+51.1%

売上総利益

3,086

4,424

+43.4%

営業損失(△)

△2,117

△1,156

 

 

当社グループは、米国Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)の研究者の発明による自己組織化ペプチド技術を基にした医療製品の開発・製造・販売を行っております。

現時点では日米欧3極においてそれぞれ複数の製造販売承認を取得しており、主に吸収性局所止血剤を中心にグローバルに販売活動を行っております。

 

[販売進捗の状況]

 [表2]エリア別製品販売状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年5月1日

  至 2024年4月30日

当連結会計年度

(自 2024年5月1日

  至 2025年4月30日

前期比

米国

1,527

3,152

+106.4%

欧州

1,699

2,052

+20.7%

日本

901

1,234

+36.9%

オーストラリア

435

478

+9.9%

その他

24

15

-36.0%

事業収益合計

4,588

6,934

+51.1%

 

 

米国における製品販売は、3,152百万円となり前期比106.4%増となりました。消化器内視鏡領域においては、高い成長を維持しており四半期ごとに過去最高額を達成し計画を大幅に超えるトレンドが継続しております。既存顧客における製品販売額の伸びが進捗することに加え、新規顧客獲得数が想定以上のスピードで増加しており、市場からの大きな需要がうかがえる状況です。また、販売活動強化のため営業人員を拡大する施策も功を奏し、コストの増加分以上に事業収益の成長が進捗し、貢献利益(※)も継続的に拡大しております。耳鼻咽喉科領域においては、アピールポイントを止血から創傷治癒や癒着防止へ転換する戦略が引き続き効果を発揮し、貢献利益の黒字を継続化している状況です。これらの結果、米国子会社は当連結会計年度において、財務会計上の黒字化を達成しております。

欧州における製品販売は、2,052百万円となり前期比20.7%増となりました。主要製品である消化器内視鏡領域の止血材においては、一部代理店販売において営業力確保に想定よりも時間を要していることから、計画未達となっております。心臓血管外科領域に関しては、直販体制を見直し代理店による販売体制に回帰することで営業コストを削減し、貢献利益の拡大を図っております。耳鼻咽喉科領域及び泌尿器科領域においては、小規模の体制で販売を行っております。販売額は小さいものの、高い成長を記録しており計画を達成しております。

日本における製品販売は、1,234百万円となり前期比36.9%増となりました。新規顧客獲得に加え、既存顧客の製品使用量を増やす施策が奏功しており、引き続き高い成長と貢献利益の黒字拡大を達成しております。

オーストラリアにおける製品販売は、478百万円となり前期比9.9%増となりました。政府による民間保険価格の見直しによる製品販売価格の低下の影響を受けておりましたが、2024年7月時点で見直しも終結したとされております。主に価格低下の影響で販売額は計画を下回ったものの、販売本数は計画を上回っており成長を維持しております。

 

このような結果、当連結会計年度については、止血材の製品販売は米国で3,152百万円、欧州で2,052百万円、日本で1,234百万円、オーストラリアで478百万円を計上し、その他事業収益15百万円を含めると、事業収益6,934百万円(前期比2,345百万円の増加)と前期比51.1%増となり、計画を上回る結果となりました。

 

※ 貢献利益:売上総利益から営業費用を控除した数値

 

費用面に関しては、製品と原材料の評価損を計上したことにより、原価が一時的に増加しております。

製品の評価損としては、401百万円を原価に計上しております。主に欧州における消化器内視鏡以外の心臓血管/耳鼻咽喉科分野への拡販用製品が対象となっております。製品製造後、拡販活動に動いたものの市場立ち上げにはまだ時間を要すると判断し、消化器内視鏡分野への営業リソースの集中を実行したことから、製品の消費期限までの販売可能性を検討し評価損として計上いたしました。

原材料の評価損としては、218百万円を原価に計上しております。主に製品の原材料となるペプチドパウダーであり、ペプチド原材料のセカンドサプライヤーから仕入れたものが対象となっております。ペプチドパウダーに有効期限はないものの、仕入からの経過年数、当該サプライヤーからの品質保証の担保に時間を要すること等を検討し評価損として計上いたしました。

この結果、営業損失は1,156百万円と前連結会計年度より960百万円改善し、営業赤字の縮小を実現しております。

また、見込んでいた為替レートからさらに円高に進み(期首1ドル=156.92円→期末1ドル=142.57円)、為替差損が増加した影響から、経常利益以下は赤字が拡大しました。為替換算により大きく変動する可能性のある「子会社貸付金(24百万ユーロ+28百万米ドル)の評価」等の為替差損益の集計を進めた結果、1,128百万円の差損となったため、経常損失は2,483百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は2,501百万円となりました。

 

②財政状態の分析

当連結会計年度末における総資産は6,513百万円(前連結会計年度末比626百万円の増加)、総負債は4,296百万円(同1,236百万円の減少)及び純資産は2,216百万円(同1,862百万円の増加)となりました。

当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の状況に関する分析は以下のとおりです。

(流動資産)

当連結会計年度末における残高は6,418百万円(同627百万円の増加)となりました。これは主に、現金及び預金の増加216百万円、売掛金の増加745百万円及びその他流動資産の増加75百万円がある一方で、棚卸資産の減少369百万円及び前渡金の減少50百万円があることによるものです。

(固定資産)

当連結会計年度末における残高は94百万円(同0百万円の減少)となりました。これは、投資その他の資産の減少によるものです。

(流動負債)

当連結会計年度末における残高は1,578百万円(同42百万円の増加)となりました。これは主に、未払金の増加248百万円、未払費用の増加16百万円及びその他流動負債の増加23百万円がある一方で、未払法人税等の減少246百万円があることによるものです。

(固定負債)

当連結会計年度末における残高は2,718百万円(同1,278百万円の減少)となりました。これは主に、転換社債型新株予約権付社債の減少1,233百万円があることによるものです。

(純資産)

当連結会計年度末における残高は2,216百万円(同1,862百万円の増加)となりました。これは主に、資本金及び資本剰余金のそれぞれ1,671百万円の増加及び為替換算調整勘定の増加1,039百万円がある一方で、親会社株主に帰属する当期純損失による利益剰余金の減少2,501百万円があることによるものです。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ216百万円増加し、1,580百万円となりました。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果、減少した資金は1,714百万円(前連結会計年度は1,899百万円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が2,479百万円であり、増加原因として為替差損1,187百万円、棚卸資産の減少294百万円や前渡金の減少49百万円、未払金の増加270百万円及び未払費用の増加48百万円等があるものの、減少要因として売上債権の増加815百万円及び法人税等の支払額250百万円があることによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果、減少した資金は33百万円(同29百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出11百万円及び長期前払費用の取得による支出17百万円等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果、得られた資金は2,013百万円(同2,062百万円の増加)となりました。これは主に、株式の発行による収入2,616百万円があるものの、減少要因として転換社債型新株予約権付社債の償還による支出599百万円があることによるものです。

 

(2) 生産、受注及び販売の状況

 当社グループは、医療製品事業の単一セグメントであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前期増減比(%)

医療製品事業

1,756,471

+56.3

合計

1,756,471

+56.3

 

(注) 上記の金額は、製造原価によっております。

 

② 受注実績

当社グループは、販売計画に基づいた生産計画を基礎として見込生産を行っており、かつ、受注から納品までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前期増減比(%)

医療製品事業

6,934,144

+51.1

合計

6,934,144

+51.1

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

Fujifilm Europe B.V.

1,163,576

25.4

1,269,375

18.3

 

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りを用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択、適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては第5経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)及び2.財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績の分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①経営成績の分析」に記載のとおりです。

 

③ 当連結会計年度の財政状態の分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②財政状態の分析」に記載のとおりです。

 

④ 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性について

  (資金の需要)

当社グループは、自己組織化ペプチド技術を基盤技術とした医療製品の開発・製造・販売を行っております。当社グループの資金需要のうち主なものは、研究開発費用、販売費及び一般管理費等の事業運営費用であります。

  (資金の調達及び流動性)

当社グループは医療製品事業においてグローバルに展開している止血材の製品販売による売上収入を計上してまいります。また親子会社間での研究開発成果の共有・事業運営上の効率化も進んでいることから、諸経費の節減等にも注力し販売費及び一般管理費の圧縮にも取り組んでまいります。

当社グループの事業運営及び研究開発を進めるための十分な資金確保に向けて、米国においてバイオ業界への投資に多くの実績を有する投資ファンドのハイツ・キャピタル・マネジメント・インクに対し、2024年4月に第39回新株予約権を発行いたしました。これにより、当連結会計年度において、第39回新株予約権の権利行使により2,628,560千円を調達することができました。一方で、既発行の社債について早期償還条項の適用による一部償還により、2024年9月に第7回無担保転換社債型新株予約権付社債のうち62,500千円を、2024年10月に第6回無担保転換社債型新株予約権付社債のうち256,250千円を、2024年11月に第5回無担保転換社債型新株予約権付社債のうち220,636千円を償還しております。

また、株式会社りそな銀行とコミットメントライン契約を締結しており、安定的な事業資金の確保に取り組んでおります。今後も引き続き、金融機関からの借入を含む様々な資金調達を検討し、継続的な財務基盤の強化に努めてまいります。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等及び(3)目標とする経営指標」に記載のとおりとなっております。当期の経営成績並びに研究開発活動の詳細につきましては「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」及び「第2 事業の状況 5研究開発活動 (2)研究開発活動」をご覧ください。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

前連結会計年度(自  2023年5月1日  至  2024年4月30日)

当社グループは、医療製品事業の単一セグメントのため、記載を省略しております。

 

当連結会計年度(自  2024年5月1日  至  2025年4月30日)

当社グループは、医療製品事業の単一セグメントのため、記載を省略しております。

 

 

【関連情報】

前連結会計年度(自  2023年5月1日  至  2024年4月30日)

1  製品及びサービスごとの情報

単一の製品の外部顧客への事業収益が連結損益計算書の事業収益の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

2  地域ごとの情報

(1)事業収益

(単位:千円)

日本

オランダ

オーストラリア

米国

その他

外部顧客への

売上高合計

901,540

1,163,590

435,601

1,532,135

555,951

4,588,818

 

(注1) 事業収益は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

(2)有形固定資産

(単位:千円)

日本

オランダ

オーストラリア

米国

その他

合計

 

 

3  主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

顧客の名称

事業収益

関連するセグメント名

FUJIFILM Europe B.V.

1,163,576

医療製品事業

 

 

当連結会計年度(自  2024年5月1日  至  2025年4月30日)

1  製品及びサービスごとの情報

単一の製品の外部顧客への事業収益が連結損益計算書の事業収益の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

2  地域ごとの情報

(1)事業収益

(単位:千円)

日本

オランダ

オーストラリア

米国

その他

外部顧客への

売上高合計

1,234,401

1,269,375

457,888

3,152,932

819,545

6,934,144

 

(注1) 事業収益は顧客の所在地を基礎とし、国又は地域に分類しております。

 

(2)有形固定資産

(単位:千円)

日本

オランダ

オーストラリア

米国

その他

合計

 

 

3  主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

顧客の名称

事業収益

関連するセグメント名

FUJIFILM Europe B.V.

1,269,375

医療製品事業

 

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する事項】

前連結会計年度(自  2023年5月1日  至  2024年4月30日)

事業用固定資産における収益性の低下により、投資額の回収が見込めなくなったため、医療製品事業において24,716千円を減損損失として計上しております。

 

当連結会計年度(自  2024年5月1日  至  2025年4月30日)

事業用固定資産における収益性の低下により、投資額の回収が見込めなくなったため、医療製品事業において22,449千円を減損損失として計上しております。

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

 該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

 該当事項はありません。