リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、後述のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 業績の変動要因について
① 新設住宅着工戸数の減少や職人不足による工期遅れの影響について
当社グループは、住宅建材及び住宅設備機器の製造販売を主たる事業としており、国内販売に関しては新設住宅着工戸数の減少や職人不足による工期遅れがもたらす販売減が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、新築戸建市場に加えてリフォーム市場や非住宅市場の開拓、ならびに海外での販路拡大など新しい顧客開拓に注力するとともに、職人不足に対応した省施工を可能にする商品開発等でその影響の軽減を図っています。
② 原材料の調達リスク及び価格変動リスクによる影響について
当社グループは、床材を主体とした木材の二次加工品の製造および造作材等木質建材商品の加工販売を主要な事業としており、原材料である木材について、調達が困難となった場合や価格が高騰した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、ニュージーランド子会社であるJuken New Zealand Ltd.において、30年サイクルの循環型の持続可能な山林経営を行い、当社グループの原材料の主要な供給元とすることで木材の調達リスクや価格変動リスクを軽減しています。あわせて、国内産の木材など、ニュージーランド子会社以外からの木材調達についても、調達先の多様化などで安定的な調達に努めています。
③ 木質バイオマス燃料の安定確保の影響について
木質バイオマス発電の運営においては、安定的に燃料を確保することが重要です。当社では、森林から直接産出する「間伐材等由来の木質バイオマス」、当社グループ内も含め製材所や木材加工所から生じる端材・木屑などの「工場残材由来の一般木質バイオマス」、建築解体現場から排出される「建設資材廃棄物由来のバイオマス」に加えて、フィリピン子会社で加工した木質燃料を輸入するなど、安定的に燃料調達を行っています。しかしながら、近隣での新たな大規模バイオマス発電所の稼働や自然災害などの不測の事態が発生した場合、社内外からの木質バイオマス燃料の供給が中断または減少する可能性があります。加えて、品薄により燃料価格が高騰した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、発電所が重大な故障などによる長期停止が発生した場合には、電力売上が減少する可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、フィリピン子会社で加工した木質燃料の輸入を増やすことで自社調達比率を高め、外部調達の影響を縮小しています。このほか、「間伐材等由来の木質バイオマス」の供給業者を増やし、自然災害リスクの分散を図っています。
また、発電所の重大な故障等による長期停止に備えて、粗悪な燃料を排除するためのふるい機や選別機の活用、メーカーによる定期点検、および所員による日常点検などを徹底して行っています。あわせて、予兆診断等の所員のレベルアップにも注力しています。
④ 為替変動による影響について
当社グループは、ニュージーランド子会社Juken New Zealand Ltd.からの木材の仕入れに関しては決済条件を円建てとしており、当社は為替の変動による影響は受けないものの、Juken New Zealand Ltd.ではニュージーランドドルの為替相場の変動によって、為替差損益が発生する可能性があります。加えて、海外子会社の借入金についても、現地通貨以外の通貨建てによる借入金において為替差損益が発生する可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、為替変動が当社グループに与える影響度合いを勘案し、必要に応じて為替予約等によるリスクヘッジを行っています。
⑤ 温室効果ガス削減(脱炭素)への世界的な取組みの進展について
気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(GHG)の削減を目的とした取組みが世界的に進められています。今後、地球温暖化対策として規制の強化等により、これらに関連する対策費用が増加する場合や、特定地域における法令又は規制を遵守することが困難になった場合、当該地域における当社グループの事業運営が影響を受ける可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、ニュージーランド子会社において30年サイクルの循環型の持続可能な山林経営を行い、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(GHG)の削減に努めています。同社が経営する約40,000haの森林におけるラジアータパインによる二酸化炭素の吸収量は年間約68.9万トンに達します。温室効果ガスである二酸化炭素は森林で樹木に吸収された後も炭素として木材中に固定されます。したがって、木材製品を生産することは、植林で吸収した二酸化炭素を炭素として固定する貯蔵庫を生産しているといえます。また、2022年4月より当社では、事業活動における環境負荷低減のため、関西電力株式会社が提供する「再エネECOプラントラッキング付帯」を活用し、自社のバイオマス発電所由来の再生可能エネルギーで、実質CO₂排出ゼロの電気を自社工場で使用しています。今後、当社グループは、温室効果ガスの削減(脱炭素)に継続的に取組み、様々な媒体を使って適時に情報開示に努めていきます。
⑥ 固定資産の減損会計による影響について
当社グループは、有形固定資産や美術品等の固定資産を所有しています。これらの資産については、減損会計を適用しています。有形固定資産については、将来のキャッシュ・フローが資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証し、美術品については、美術専門家等の第三者から入手した価格に基づいて回収可能な価額を算定し、減損が必要な資産については適切な会計処理を行っています。しかしながら、将来の環境変化により固定資産の将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合や美術品の回収可能価額が大きく下落した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、これらの資産価値を定期的に確認し、可能な限り価値低下を招かない方策を継続的に検討・実施しています。
⑦ 情報システムに関するリスクについて
当社グループは、生産・販売・管理などの業務を情報システムにより管理しており、業務遂行上の重要な基盤となっています。
このため、自然災害、システム障害、サイバー攻撃(マルウェア感染、ランサムウェア、ハッキング等)などにより情報システムの機能が停止した場合や、顧客情報・機密情報の漏洩が発生した場合には、事業活動の中断、社会的信用の失墜などを通じて、当社グループの財務状況や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、当社グループでは情報セキュリティ推進委員会を中心に、情報セキュリティポリシーおよび関連規程の整備・周知を進め、組織的なセキュリティ態勢を構築しています。
技術的対策としては、エンドポイント保護ソフトの導入、ソフトウェアの適時更新、ファイアウォールの導入、不正アクセスの監視などを実施しています。
これらに加え、全従業員に対する機密情報の取り扱いおよびサイバーセキュリティ教育を継続的に行い、セキュリティ意識の向上に努めています。
⑧ 地震・津波・台風等の大規模な自然災害による影響について
地震・津波・台風等の大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの生産・物流・販売活動に影響を与え、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、大規模な自然災害による被害を完全に回避できるものではありませんが、当社グループで策定した規程・ルールに基づき、非常時を想定した全社的なリスク管理体制を構築、運営しています。
具体的には、安否確認システムの導入や定期的な防災訓練、地震保険への加入などを実施しています。
⑨ 海外展開にともなうリスクについて
当社グループは、ニュージーランド、フィリピン、インドネシアなど海外での投資や事業展開を進めています。これら海外への事業進出には、例えば米国の通商政策における関税措置の動向等、予期しない法律又は規制の変更、政治又は社会・治安の混乱、雇用環境の変化、テロ・戦争等といったリスクに加え、主要な海外拠点であるニュージーランド子会社においては、近年の為替変動、市況の変動、あるいは事業再編に伴う一時的な費用の発生などにより、後述するとおり2022年3月期から4期連続で経常損失を計上しております。当該子会社の業績が改善しない場合、または悪化する場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、海外の政治・経済情勢の情報収集に努め、必要に応じて外部専門家の助言等も得ながら、的確かつ迅速に対応しています。ニュージーランド子会社に関しては、不採算事業の見直し、コスト構造の改革、高付加価値製品へのシフト、新たな市場開拓等の収益改善策を推進しております。
⑩ 財務制限条項の抵触による影響について
当社グループの借入金の一部には財務制限条項が付されており、これに抵触した場合、期限の利益を喪失する等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。財務制限条項の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)※5 財務制限条項」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(貸借対照表関係)※5 財務制限条項」に記載のとおりです。
なお、当連結会計年度末日において、当社は当該財務制限条項に抵触しておりません。
(2) ニュージーランドにおける事業内容及び業績・総資産の推移について
当社グループは、ニュージーランドにおいてJuken New Zealand Ltd.を通じてラジアータパイン等の植林を含む山林経営を行っています。
山林経営は木材市況変化への対応力を高めると同時に原材料調達の安定化や部材調達コストの低減に役立っています。山林経営につきましては、立木の伐採可能量の増加に対応して設備投資が必要となっています。そのため、連結キャッシュ・フローにおきましては、投資活動により使用する資金の多くはニュージーランドにおける投資に充当しています。
ニュージーランドに関する内部取引を含む売上高、経常利益、総資産の推移は次のとおりです。
(ニュージーランドの売上高、経常利益、総資産の推移)
|
|
2021年3月期 (百万円) |
2022年3月期 (百万円) |
2023年3月期 (百万円) |
2024年3月期 (百万円) |
2025年3月期 (百万円) |
ニュージーランド |
売上高 (注) |
15,882 (6,711) |
18,270 (6,209) |
18,742 (6,850) |
18,840 (5,268) |
15,769 (4,768) |
経常利益又は 経常損失(△) |
491 |
△287 |
△917 |
△2,588 |
△1,992 |
|
総資産 |
33,465 |
37,936 |
38,886 |
41,951 |
41,644 |
(注) 売上高下段の括弧内数値は、所在地間の内部売上高又は振替高です。
(3) 有利子負債依存度について
当社グループにおける有利子負債依存度は、2025年3月期末39.1%となっています。当社グループにおきましては、今後も経営資源の効率化等により、有利子負債を適正水準に保つ方針ですが、今後の金利動向等金融情勢の変化によっては当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(有利子負債残高、有利子負債依存度の推移)
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
総資産(百万円) |
91,142 |
95,062 |
97,018 |
101,754 |
102,106 |
純資産額(百万円) |
41,129 |
44,188 |
44,404 |
44,717 |
45,614 |
有利子負債残高(百万円) |
35,622 |
33,639 |
36,604 |
39,717 |
39,929 |
自己資本比率(%) |
44.0 |
45.2 |
44.6 |
43.0 |
43.7 |
有利子負債依存度(%) |
39.1 |
35.4 |
37.7 |
39.0 |
39.1 |
(注) 期末有利子負債残高は、社債及び借入金の合計額です。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主への利益還元を経営の最重点施策のひとつと認識し、企業の経営基盤の強化をはかりつつ安定配当を維持する中で、業績の動向を勘案し、自社株の取得なども含め、利益還元の一層の充実を図る方針です。
当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としており、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会です。
当事業年度の剰余金の配当については、継続的な安定配当の基本方針のもと、期末配当金は1株当たり12円とし、中間配当金と合わせて年間配当金24円とすることを2025年6月25日開催予定の第73回定時株主総会で決議する予定です。
内部留保金の使途については、安定した経営体質の改善強化と今後の新規事業への投資資金等に活用する予定です。
なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めています。
また、2024年9月26日付で締結しているシンジケートローン方式によるタームローン契約及び2024年9月26日付で締結しているシンジケートローン方式によるコミットメントライン契約において、次のとおり配当制限条項が付されています。
「借入人の本契約に基づく債務の支払に著しい影響を及ぼすおそれのある出資、または株主に対する配当を行わないこと。」
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、次のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
2024年11月8日 |
111 |
12.00 |
取締役会決議 |
||
2025年6月25日 |
111 |
12.00 |
定時株主総会決議(予定) |