2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    3,423名(単体) 18,949名(連結)
  • 平均年齢
    43.0歳(単体)
  • 平均勤続年数
    18.0年(単体)
  • 平均年収
    7,837,409円(単体)

従業員の状況

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

(2025年3月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(名)

楽器

13,622

(4,405)

音響機器

4,286

(1,039)

その他

1,041

(260)

合計

18,949

(5,704)

 

(注) 1 従業員数は就業人員数であります。

2 従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員であります。

 

(2) 提出会社の状況

(2025年3月31日現在)

従業員数(名)

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与

3,423

(640)

 

43才     8ヵ月

18年       6ヵ月

7,837,409

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

楽器

1,986

(454)

音響機器

1,206

(160)

その他

231

(26)

合計

3,423

(640)

 

(注) 1 従業員数は就業人員数であります。

2 従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員であります。

3 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

4 前事業年度末から1,082名増加しておりますが、これは主に、2024年4月1日付で(株)ヤマハミュージックマニュファクチュアリングを吸収合併したことによるものであります。

 

(3) 労働組合の状況

特記すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

男性労働者の育児休業取得率(%)

労働者の男女の賃金の差異(%)

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・

有期労働者

9.4

87.9

72.9

75.9

68.9

 

 

② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

男性労働者の

育児休業取得率(%)

労働者の男女の賃金の差異(%)

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

(株)ヤマハミュージックジャパン

29.9

50.0

61.3

73.6

69.4

(株)ヤマハコーポレートサービス

40.0

87.4

86.9

83.5

 

(注)1 管理職に占める女性労働者の割合及び労働者の男女の賃金の差異は、「女性の職業生活における活躍の推

進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2 男性労働者の育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

3 男女の賃金の差異については、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しており、賃金は基本給、超過労働に対する報酬、賞与等を含み、退職手当、通勤手当等を除いております。パート・有期労働者については正社員の所定労働時間で換算した人員数を基に平均年間賃金を算出しております。

4 各指標における計算の対象期間は2024年4月1日から2025年3月31日までであり、出向者は出向元の従業員として集計しております。

5 労働者の男女の賃金差異について、賃金制度・体系において性別による差異は無く、主として賃金の高い高位職層における女性比率が低いことによるものであります。また、一部企業において、女性パート・有期労働者の比率が高いことにより、主として賞与等による差異が生じております。女性活躍推進への取組については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご参照ください。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) ヤマハグループサステナビリティ方針

ヤマハグループは、世界中の全ての人々が心豊かに暮らす社会を目指します。その実現のために、企業理念である「ヤマハフィロソフィー」を心のよりどころに、かけがえのない地球環境を守り、平等な社会と快適なくらし、心潤す音楽文化の発展に貢献するとともに、人権尊重はもとより、多様な人材が互いに認め合い活躍できる環境を整えることで、未来に向かって新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます。

この考え方に基づき、持続可能な社会の実現に向けた取り組みによる社会価値の創造を通じ、自らの中長期的な企業価値を高める為、マテリアリティを特定し、積極的にサステナビリティ活動を推進します。

 


 

① ガバナンス

ヤマハ(株)は、取締役会の監督に基づき、代表執行役社長の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置し、グループ全体のサステナビリティ活動の方向性の議論や、グループ内における取り組み状況のモニタリングを行い、代表執行役社長に答申しております。サステナビリティ委員会の審議内容、ヤマハグループにおける活動状況については取締役会に定期的に報告され、取締役会によるレビューを受けております。

 

また、同委員会の下部組織として「気候変動部会」「資源循環部会」「調達部会」「人権・DE&I部会」「社会・文化貢献部会」を設置しております。各部会では、全社横断的な重要テーマについて、推進体制の整備、方針や目標・施策・実行計画の策定、活動およびモニタリングを行い、サステナビリティ委員会へ報告しております。

 

2025年3月期のサステナビリティ委員会活動状況

実績:7回開催

主な議題:

先期活動レビュー、外部開示内容(含むTCFD/TNFD)確認

当期進捗/成果確認、課題についての議論

・次期中期経営計画における施策・KPI目標の審議

 

2025年3月期の各部会における活動状況

部会名

主なテーマ

責任者

実績

気候変動部会

脱炭素、TCFD対応、水リスク対応など

 執行役員

6回

資源循環部会

循環型バリューチェーン、環境配慮設計、包装梱包など

 執行役員

7回

調達部会

木材DD、持続可能な木材、おとの森活動、

サプライチェーン人権DD、紛争鉱物対応など

 執行役

7回

人権・DE&I部会

人権DD、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンなど

 執行役員

7回

社会・文化貢献部会

 音楽普及、地域共生など

 執行役

9回

 

 

 

当社の2025年6月23現在のサステナビリティ推進体制は下図のとおりであります。

 


 

2025年3月期の取締役会による監督などの状況

実績:サステナビリティ委員会の活動状況のモニタリング 2回

外部有識者との対話会 1回

主な議題:

・サステナビリティに関する方針や目標

・サステナビリティ施策の定期的なレビューなど

 

ヤマハグループのサステナビリティマネジメントの詳細についてはウェブサイトをご覧ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/overview/management/

 

② 戦略

ヤマハグループでは、社会の持続的発展と中長期的な企業価値向上につながる重要な課題を「サステナビリティに関するマテリアリティ」として特定し、これをサステナビリティ方針に組み込むとともに、経営全体のマテリアリティに統合し、活動を推進・管理しております。

 

<取り組み例>

・持続可能な木材の利用

ヤマハグループが生産しているピアノや弦打楽器、木管楽器など楽器の多くは、主に木材でつくられております。事業活動において多種多様な木材を使用していることを踏まえ、生物多様性や生態系を損ねることなく、貴重な木材資源を持続的に活用していけるよう、木材デューディリジェンスの推進や、原産地コミュニティーと連携した良質材の育成(おとの森活動)などを進めております。木管楽器の重要な材料である「アフリカン・ブラックウッド」の原産地であるタンザニア連合共和国では、同樹種の生態や森林の管理状態を調査。同樹種を楽器素材として持続的に利用できるビジネスモデルの実現に向け、森林保全と楽器生産、地域コミュニティー開発の観点から、植林技術の導入や土地利用の改善、材料利用技術の開発などを2015年から進めております。2017年に開始したアフリカン・ブラックウッドの定期的な植林活動には、2025年3月期に新たに1つのコミュニティーが加わり現在4つのコミュニティーが活動に参画。2025年3月期には新たに約9,000本の苗木を植栽、8年間で累計約27,000本(植林地総面積約13.5ha)の植栽規模となりました。

 


 


 

 

サプライヤーでの

木材デューディリジェンスの様子

 2025年3月期に導入した

コミュニティーの苗畑

 

 

 

木材資源への取り組みの詳細はウェブサイトをご覧ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/environment/biodiversity/

 

・音楽文化の普及、発展

ヤマハグループでは、国内外で、学校における音楽教育の支援活動や、音楽、楽器を通じた地域貢献や音楽普及活動に取り組み、音楽教育の発展、青少年の健全育成、コミュニティーの活性化などに寄与しております。2015年より新興国を中心に展開している「スクールプロジェクト」は、世界中の子どもたちが音楽や楽器演奏を学ぶ中で未来を生きる力を手に入れ、こころ豊かな人生を送ることができる世界を目指し、まだ音楽の授業環境が整っていない国に向けて「新しい音楽の授業」の構築支援に取り組んでおります。ヤマハの独自プログラムを展開することではなく、その国・地域に最適な音楽の授業を作りあげることを目標とし、現地教育省と協力の上、パイロット授業の展開・指導者の育成・カリキュラム構築の支援・教材や楽器の販売・提供などを段階的に実施。現在その実績はマレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピン、 インド、ブラジル、コロンビア、メキシコ、UAE、エジプト の10カ国・425万人に広がっております。

 


 


 

コロンビアでの授業

フィリピンでの授業

 

 

 

学校音楽教育への支援に関する取り組みの詳細はウェブサイトをご覧ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/social/community-support/

 

 

③ リスク管理

ヤマハグループのバリューチェーンにおけるサステナビリティ課題を、持続可能な開発目標SDGsなどに照らして抽出し、お客さま、従業員、地域社会の声や、ESG評価項目、NGOからの意見・要請や社外有識者の提言、企業理念や経営ビジョン、中長期的な経営方針を踏まえ、リスクと機会の観点で重要度を評価し、推進を強化すべき課題(サステナビリティに関するマテリアリティ)を特定しております。特定したマテリアリティについて、サステナビリティ委員会の各部会、関係部門にて施策や達成度合いを測るKPI、目標および実行計画を策定します。サステナビリティ委員会が進捗をモニタリングすることで、マテリアリティの取り組みを推進し、リスクの低減を図っております。

 

特定プロセスを含むマテリアリティの詳細についてはウェブサイトをご覧ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/overview/materiality/

 

④ 指標及び目標

特定したマテリアリティに基づき、中期経営計画において、方針、重点テーマ、指標(KPI)と目標を設定しております。サステナビリティに関する主なKPIと目標は以下のとおりであります。

 

中期経営計画Make Waves 2.0(2022/4~2025/3)の主なサステナビリティKPI・目標

分野

マテリアリティ

Make Waves 2.0のKPI・目標

環境

気候変動への対応

省エネによるCO2排出量削減 5%(CO2排出量/生産高)2017年度比

CDP気候変動 Aリスト企業継続

物流積載効率向上 5%

持続可能な木材の利用

持続可能性に配慮した木材使用率 75%

楽器材料となる希少樹種 3樹種の育成・保全

省資源、廃棄物・有害物質削減

新規小型製品 梱包材プラ廃止

社会

バリューチェーンにおける人権尊重

サプライヤー実地監査導入 60社

文化

音楽文化の普及・発展

新興国の学校教育への器楽教育普及 10カ国累計230万人

海外音楽教室 +10万人

人材

働きがいの向上

従業員サーベイ 働きがい 肯定的回答率継続的向上

人的投資額 2倍

人権尊重とDE&I

管理職女性比率 グローバル 19%

クロスボーダー配置 30名

風通しが良く、皆が挑戦する風土の醸成

従業員サーベイ 働きやすさ 肯定的回答率継続的向上

 

サステナビリティKPI・目標詳細と2025年3月期の実績についてはウェブサイトをご覧ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/overview/materiality/

 

中期経営計画Rebuild & Evolve(2025/4~2028/3)の主なサステナビリティKPI・目標

分野

マテリアリティ

Rebuild & EvolveのKPI・目標

環境

気候変動への対応

CO2排出量(スコープ1+2)30%削減(2017年度比)

省資源、廃棄物・有害物質削減

梱包材の発泡スチロール 25%削減(2022年度比)

持続可能な木材の利用

持続可能性に配慮した木材使用率 80%

おとの森活動(楽器材料となる希少樹種の育成・保全)推進

タンザニア:2万本/年 苗木植栽・保全

北海道:アカエゾマツ活用楽器の製作・公開

インド:植林パイロット事業導入

 中南米:1樹種で保全モデル構築

社会

バリューチェーンにおける人権尊重

サプライヤー実地監査 60社

平等な社会と快適なくらしへの貢献

社会課題関連取り組み数 20件

文化

音楽文化の普及・発展

Community Building with Music 1.2万回

(音楽を通じて、人と人がつながる場を創出する活動)

スクールプロジェクト累計児童数 700万人

人材

人権尊重とDE&I

管理職女性比率 24%

グローバル人材配置 40名

創造的で挑戦的な組織風土の醸成

従業員サーベイ働きがい肯定的回答率の継続的向上

人的投資金額 1.5倍

 

 

⑤ 社外からの評価

サステナビリティ活動に対する主な社外からの評価は以下のとおりであります。

 

MSCI ESG RATINGS

企業のESGに関する取り組みやリスク管理能力を分析し、最上位ランクAAAから最下位ランクCCCまでの7段階で評価するMSCI ESGレーティングにおいてAAA評価を獲得しております。

 

THE USE BY YAMAHA CORPORATION OFANY MSCI ESG RESEARCH LLC OR ITS AFFILIATES (“MSCI”) DATA, AND THE USE OF MSCI LOGOS, TRADEMARKS, SERVICE MARKS OR INDEX NAMES HEREIN, DO NOT CONSTITUTE A SPONSORSHIP, ENDORSEMENT, RECOMMENDATION, OR PROMOTION OF YAMAHA CORPORATION BY MSCI. MSCI SERVICES AND DATA ARE THE PROPERTY OF MSCI OR ITS INFORMATION PROVIDERS, AND ARE PROVIDED ‘AS-IS’ AND WITHOUT WARRANTY. MSCI NAMES AND LOGOS ARE TRADEMARKS OR SERVICE MARKS OF MSCI.

 


 

 

FTSE4Good Global Index

英国・ロンドン証券取引所グループのFTSE Russell社が、環境、社会、ガバナンスの観点から企業を評価する指標に選定されております。

 

FTSE Russell (the trading name of FTSE International Limited and Frank Russell Company) confirms that Yamaha Corporation has been independently assessed according to the FTSE4Good criteria, and has satisfied the requirements to become a constituent of the FTSE4Good Index Series. Created by the global index provider FTSE Russell, the FTSE4Good Index Series is designed to measure the performance of companies demonstrating strong Environmental, Social and Governance (ESG) practices. The FTSE4Good indices are used by a wide variety of market participants to create and assess responsible investment funds and other products.

 


 

社外からの評価の詳細についてはウェブサイトをご覧ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/related-information/evaluation/

 

(2)気候変動・生物多様性への対応とTCFD・TNFD(気候関連財務情報開示タスクフォース・自然関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示

 

 当社グループはTCFD、TNFDの提言に基づき、気候変動や生物多様性に関わるリスクや機会を分析し、経営戦略に反映させるとともに、その財務的な影響についての情報開示に努めていきます。

 

開示に関する一般要件

 TNFD提言で求められている、開示すべき一般要件は以下のとおりです。これらは「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標および目標」の4つの開示提言の柱に適用されます。また、TCFDの内容については、TNFD提言に準じた形で開示を行います。

 なお、当開示では、「マテリアリティ」という用語を以下の2つの意味で使用しています。

・TNFDの一般要件におけるマテリアリティ:自然が企業に与える影響および企業が自然に与える影響の重要性(シングル/ダブルマテリアリティ)

・当社グループの経営における重要なサステナビリティ課題としてのマテリアリティ:事業視点とステークホルダー視点の両面から評価し、当社が独自に特定した重点課題

 

一般要件

1.     マテリアリティの適用

 ファイナンシャル・マテリアリティ(環境・社会の課題が、企業活動に与える影響を重視する考え方)とインパクト・マテリアリティ(企業活動が環境・社会に与える影響を重視する考え方)の2つの観点を採用したダブルマテリアリティの定義に従い、開示情報を整理しています。

2.     開示のスコープ

・当社グループに関する気候変動と生物多様性の影響を評価するため、全事業を対象にシナリオ分析とリスク・機会の抽出を行い、特に事業・戦略・財務計画または自然環境に大きな影響を与える可能性がある事業活動を開示範囲としました。

気候変動:本社、国内外生産拠点、リゾート拠点、バリューチェーン上流・下流

生物多様性:本社、国内外生産拠点、リゾート拠点、バリューチェーン上流

     (ただし、直接的な情報収集手段やツールに限界があるため、開示情報は現時点では限定的)

・現時点で開示範囲としていない事業活動に関しても今後さらなる分析に取り組み、必要に応じて随時開示範囲を拡大していく予定です。

3.     自然関連課題がある地域

 LEAPアプローチにより特定された優先地域

4.     他のサステナビリティ関連の開示との統合

・当社グループは「気候変動への対応」「持続可能な木材の利用」「省資源、廃棄物・有害物質削減」を環境分野で重要な課題(マテリアリティ)として特定しています。これらの課題が互いに関連していることを考慮し、当開示では統合的なアプローチを採用し情報の開示を行います(開示はTCFDおよびTNFDのガイドラインに基づき、これらの相互関係を踏まえて同一開示内で行っています)。

・当社グループの気候変動関連・自然関連への対応は、当開示のほか、当社ウェブサイトをご参照ください。

5.     対象期間

 短期は現在~数年後、中期は2030年、長期は2050年に影響が強く表れると想定し、各種分析を実施しました。

6.     ステークホルダーとのエンゲージメント

・「ヤマハグループ人権方針」を定め、 バリューチェーンにおけるあらゆるステークホルダーの人権を尊重する責任を果たす努力をしていきます。

・地域社会と一体となって循環型の森林づくりを実現する「おとの森活動」を実施しています。

 

 

 

① ガバナンス

監督および執行体制

気候変動および自然関連のリスクと機会(先住民族や地域コミュニティー、影響を受けるステークホルダーに関する人権方針やエンゲージメント活動を含む)ならびに関連課題に関する評価・管理は、代表執行役社長の諮問機関であるサステナビリティ委員会(2025年3月期:7回開催)を通じて行われ、取締役会によって監督されております。これらに関する具体的な審議は、同委員会の下部組織である気候変動部会、資源循環部会、調達部会において行われ、進捗は定期的にサステナビリティ委員会に報告されます。

また、持続的かつ社会的な価値向上への取り組みをより強く動機付ける趣旨から、役員報酬の一部である譲渡制限付株式報酬を評価する指標としての経営目標に、気候変動および自然を含むサステナビリティに関する目標を加えております。

 

サステナビリティマネジメント:https://www.yamaha.com/ja/sustainability/overview/management/#02

 

2025年3月期のサステナビリティ委員会活動状況

活動実績

主な議題

7回開催

・2024年3月期サステナビリティ活動レビュー

・TCFD/TNFD報告内容の審議

・中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)におけるサステナビリティ活動の進捗確認、課題についての議論

・次期中期経営計画におけるサステナビリティ活動の計画、目標についての議論

 

 

2025年3月期の環境関連部会の活動状況

部会名

責任者

主なテーマ

実績

気候変動部会

ヤマハ(株)

執行役・執行役員

脱炭素、TCFD対応、水リスク対応など

6回

資源循環部会

循環型バリューチェーン、環境配慮設計、包装梱包など

7回

調達部会

木材デューディリジェンス、持続可能な木材の利用、おとの森活動、サプライチェーン人権デューディリジェンス、紛争鉱物対応など

7回

 

 

環境関連課題のガバナンス体制図

 


 

先住民族や地域社会とのエンゲージメント

当社グループは、ステークホルダーへの約束として、良き企業市民として社会・文化の発展に貢献することを掲げています。その基盤となる公正・公平な社会を実現するため、人権尊重を原則とする国連グローバル・コンパクトに署名するとともに、「国際人権章典」や国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、「ビジネスと人権に関する指導原則」などの人権に関する国際的な規範を尊重しています。また、サプライチェーンにおける人権課題にも配慮し、英国および豪州で制定された現代奴隷法で求められる要件に基づくステートメントを開示しています。

  このような認識のもと、当社グループは、事業活動のあらゆる側面において人権を尊重する責任を果たす努力を続けていくため、「ヤマハグループ人権方針」を策定しています。同方針は専門家からの助言や、全グループ企業からの意見聴取、ヤマハ(株)の経営会議での審議を経て、代表執行役社長が承認し、当社グループの人権尊重の考え方および責任について示し、かつ「コンプライアンス行動規準」など人権尊重への取り組みを含む文書の上位に位置づけられます。本方針はヤマハ(株)およびその連結子会社の全ての役員と従業員に適用され、当社グループの事業活動に反映されます。同方針に、自らの事業活動について人権デューディリジェンスを実施することで人権への負の影響を特定、回避、緩和するよう努めることを明記し、バリューチェーンを対象範囲として、外部専門家との連携や当社グループおよびサプライヤーなどに対するモニタリングを通じて人権課題の特定と影響評価を実施しています。また、サステナビリティ委員会の下部組織として「人権・DE&I部会」を設置し、人権リスクの防止・軽減に取り組んでいます。取締役会は、サステナビリティ全般の重要事項について定期的に報告を受け、取り組み状況を監督しています。

  加えて、「ヤマハグループ木材調達方針」に基づき、調達する木材が伐採や取引の過程において、先住民の権利を侵害するなど地域社会に悪影響を及ぼしていないことを確認することとしています。具体的には、使用木材の合法性確認やリスク評価、環境・社会に配慮した認証木材の積極的な導入を進めています。2023年には地域社会への影響も含めた木材リスク確認の実効性向上を図るため、国際的な環境団体監修のもと、非認証木材に対し、デューディリジェンスを通じて持続可能性を客観的に判断するための評価項目・判断基準を制定しました。

ステークホルダーとのかかわり:https://www.yamaha.com/ja/sustainability/overview/stakeholder/

人権:https://www.yamaha.com/ja/sustainability/social/human-rights-and-labor-practices/

生物多様性の保全:https://www.yamaha.com/ja/sustainability/environment/biodiversity/

ヤマハサプライヤーCSR行動基準:https://www.yamaha.com/ja/sustainability/related-information/policy-type/supplier-code-of-conduct/

 

 

② 戦略

 当社は、短期・中期・長期の時間軸に基づき、グループ全体に及ぶ気候変動および生物多様性の影響を評価し、事業に重要な影響を与えるリスクと機会を特定するためのシナリオ分析を実施しました(表1)。

  また、特に影響が大きいと予想される木材については、気候変動による影響の有無および大小を把握するため、潜在適域(注1)の変化を文献にて調査し、推計を行いました(表2)。

 シナリオ分析では、気候変動と生物多様性について下記のシナリオを想定し、事業および自然資本への影響を評価しました。

 

気候変動

 国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを中心に、その他複数のシナリオ(APS(Announced Pledges Scenario)、STEPS(Stated Policies Scenario)他)も活用し分析しました。

シナリオ

概要

出所

1.5~2℃シナリオ

気候変動への緩和策を取り、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5~2℃に抑えたシナリオ

NZE

RCP2.6

SSP1-2.6

4℃シナリオ

気候変動への緩和策を取らず、世界の気温が産業革命前と比べて4℃上昇したシナリオ

RCP8.5

SSP5-8.5

 

 

 

生物多様性

 TNFDが推奨する自然関連リスク分析ツール「ENCORE(注2、3)」を使用して、事業プロセスに関連する自然への依存と影響の項目を抽出し、リスク・機会が大きいものに関しては、TNFDが推奨しているシナリオを参考に「生態系サービスの劣化」と「市場原動力と非市場原動力の一致」を2軸に4つのシナリオを定義し、分析しました(図1)。

 

(注1)特定の樹種が気象条件などから理論上、生育に適していると推定される地域を指します。実際の分布を考慮し

たものではなく、将来的な生育可能性に着目した概念です

(注2)Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure:事業プロセスに関連する自然関連の依存と

影響、その大きさの評価ツール

(注3)当開示では2024年7月に更新されたバージョンで分析を実施しているため、以前の開示と内容の異なる箇所が

あります

 

(図1)TNFDが推奨する2×2フレームワークを用いて設定した自然関連シナリオ


 

 

(表1)特に重要度の高いリスク・機会一覧とシナリオ分析

分類説明

 


気候変動関連

 


生物多様性関連

 


気候変動・生物多様性双方関連

 

 


影響は現在の延長線上

 


影響は拡大

関連なし

R…リスク(Risk)

O…機会(Opportunity)

 

 

分類

項目

気候変動

自然資本

依存影響

R リスク

O 機会

リスク・機会のタイプ

1.5℃~2.0℃

シナリオ

4.0℃シナリオ

シナリオ#1

シナリオ#2

シナリオ#3

シナリオ#4

気候変動への対応

 


自然災害

 


 


R

物理(急性)

 


木材生育適域変化

 


 


R

物理(慢性)

 


カーボンプライシング

 


 


R

移行(政策・法的)

 


インドア活動化

 


 


O

製品・サービス

持続可能な木材の利用

 


木材の代替、有効活用

 


 


 


 


 


 


影響

O

効率・リソース

製品・サービス

評判

 


林産地劣化

 


 


 


 


 


 


依存

影響

R

物理(慢性)

 


林産業の撤退

 


 


 


 


 


 


依存

R

移行(政策・法的)

移行(市場)

 


木材の輸入規制

 


 


 


 


依存

R

移行(政策・法的)

 


認証材の安定調達

 


 


 


 


影響

O

生態系保全

持続可能な利用

有害物質削減

 


事業プロセスで使用する化学物質(VOC・毒劇物)や油による汚染

 


 


 


 


影響

R

物理(急性)

移行(技術)

移行(評判)

 


有害廃棄物による汚染

 


 


 


 


影響

R

物理(慢性)

移行(政策・法的)

移行(評判)

水の保全

 


事業プロセスや生活で使用する水の不足

 


 


 


 


 


 


依存

R

物理(慢性)

 

 

 

(表2)木材潜在適域の基準年に対する変化予測(%)


※本変化予測に関する補足事項

1. 調査の目的:対象樹種に対する気候変動の影響の有無およびその大小を把握すること

2. 調査方法

・2021年に、各調達樹種×対象国について将来影響を既存文献(例:Dyderski et al. (2018) How much does climate change threaten European forest tree species distributions? Glob. change biol. 24(3): 1150-1163)にて調査

・この調査結果を基に、世界平均の気温上昇に対する潜在適域の変化を推計

3. 推計の限界:予測は既存文献の手法および結果に基づいたものであり、推計手法には限界があるため、将来の気温上昇における影響量を断定するものではない

4. 樹木の生育条件:将来の気候条件が不適であると予測された地域であっても、樹木が即座に死滅するわけではない

 

 シナリオ分析の結果、気候変動に関しては自然災害による生産停止リスク、木材価格の上昇、炭素税導入に伴うコスト増加といったリスクが高まる一方で、屋内活動の増加による需要拡大が機会となる可能性があることが明らかとなりました。自然資本に関しては、各シナリオが進行するに伴い、森林の持続可能性に配慮した木材製品が市場競争力を高め、持続可能な調達が森林保護を促進する機会となる一方で、林産地の劣化により良質な木材の入手が困難になり、木材代替にかかるコストが増加するリスクが生じることが分かりました。

 また、木材潜在適域の変化予測を行ったことにより、短期的な影響は少ないものの、長期的に見ると気温上昇に伴い潜在適域が大きく減少する樹種があることが分かりました。

 当社は、気候関連課題・自然関連課題が、事業、戦略、財務計画に大きな影響を与える可能性があるとの認識のもと、リスクや機会を整理し、戦略の見直しを随時実施しています(表3)。

 当社の気候変動関連課題への取り組みについては、TCFDが開示を推奨する「緩和」と「適応」の分類に基づいて、また、自然関連課題への取り組みについては、自然資本に対する行動の枠組み「AR3Tフレームワーク(注4)」を踏まえて整理しています。

(注4)SBTN(Science Based Targets Network)が提唱する、自然関連のリスクと機会への対応策を検討するフレームワーク。回避(Avoid)、軽減(Reduce)、復元・再生(Restore & Regenerate)、変革(Transform)の4項目にて整理されています。

 

 

(表3)特に重要度の高いリスク・機会一覧と対応戦略

分類説明

 


気候変動関連

 


生物多様性関連

 


気候変動・生物多様性双方関連

 

R…リスク(Risk) O…機会(Opportunity)

…発現時期 短期 …発現時期 中期 …発現時期 長期

分類

項目

 

事業、戦略、財務計画への潜在的な影響/自然資本への影響

 

ヤマハの対応策

対応策の

分類

 


自然災害

・自然災害による施設の損傷、人的被害及びこの影響による生産の停止

・サプライチェーンの被災による生産停止及び仕入値高騰に伴うコストの増加

・損害保険料の増大

・当社グループ拠点(製造・営業・物流)を対象に洪水リスクと損害の再評価を行い、想定される自然災害に対して事前対策や保険付保内容の見直しを実施

適応

R

 


木材生育

適域変化

・木材の価格上昇、品質低下

・木材代替に要する技術的、仕様変更コスト

・気温上昇、降水・気象状況の変化に伴う木材生育状況悪化による調達コストの増加

・温暖化による潜在適域変化予測調査実施(表2)

・希少材料を代替する新素材や木材加工技術開発(木材技術、木材調達スキルの社内保持・強化)

適応

R

 


カーボンプライシング

・炭素税などの導入による生産、調達コストの増加

・2031年3月期におけるグループ内エネルギーコストは成り行きで10億円から20億円程度増加する予測

・徹底したエネルギー削減、再生可能エネルギーの利用推進による排出削減計画実施(削減目標達成によりエネルギーコスト増加分を4.5億円から9億円程度に抑制できる見込み)

・ICP(インターナルカーボンプライシング)を設定し(14,000円/t-CO2)、低炭素設備投資を促進

・サプライヤーと連携した排出削減の推進

緩和

R

 


インドア

活動化

・屋内での活動機会増加に伴う楽器需要の増加

・リモートワーク、オンラインイベント・ゲームの拡大による通信機器の需要拡大

・動画配信の拡大に伴う音響機器の需要拡大、ライブと配信のハイブリッドイベントがデファクトスタンダード化

・音響、信号処理、通信技術の融合によるリモート、オンラインイベント用ソリューションの提供

・遠隔でのライブ、レッスン、合奏の実現による新たな顧客体験の創造

適応

O

持続可能な木材の利用

 


木材の代替、有効活用

・森林の持続可能性に配慮した製品が、顧客や投資家からの評価を高め、市場での競争力を向上させる

・代替材料の確保による希少樹種の保護

・持続可能性に配慮した木材使用率増加

・既存の希少資源を代替する新素材や木材加工技術開発(木材技術、木材調達スキルの社内保持・強化)

・適正な品質基準の設定、端材の有効利用等による歩留まり向上

・楽器適材の調達を持続可能にする「おとの森」活動

 

回避

軽減

復元・再生

変革

O

 


林産地劣化

・木材の過剰伐採や林産地の水不足、水質汚染、土壌劣化により良質な楽器適材が入手困難となる

・木材の価格上昇、品質低下

・生態系の劣化を招いたと見做され、評判が低下する

R

 


林産業の撤退

・木材の入手が困難になり、木材代替に要する技術的、仕様変更コストが発生

・環境に配慮した企業の増加により森林クレジット市場が拡大し、木材の安定調達に影響

・持続可能性に配慮した木材使用率増加

・楽器適材の調達を持続可能にする「おとの森」活動

軽減

復元・再生

R

 


木材の輸入規制

・規制対象木材を使用する製品の生産停止による損失

・規制対象木材代替に要する技術的、仕様変更コストが発生

・持続可能性の低い木材使用の削減、代替

軽減

R

 


認証材の安定調達

・環境意識の高い顧客、サプライチェーンからの支持

・持続可能性の小さい木材を使用し続けることに対する評判リスクの回避

・持続可能な木材調達による森林保護

・持続可能な森林から産出される認証材の利用拡大

軽減

O

有害物質削減

 


事業プロセスで使用する化学物質(VOC、毒劇物)や油による汚染

・製造現場からの排出もしくは漏洩事故により、生態系に悪影響を与える

・評判の低下、汚染の回復費用、損害賠償費用、漏洩対策設備改善、管理強化コスト発生

・環境設備に関する構造の基準を定め、漏洩事故の防止に努める

・漏洩リスクを抽出し、想定緊急事態について対応訓練を実施

・VOC削減プロジェクトにより全社の排出量モニタリングや削減施策を推進

・排出先の水域の水質や生物への影響についての調査を実施

回避

軽減

R

 


有害廃棄物による汚染

・土壌、地下水の汚染による評判の低下、損害賠償費用、汚染の回復費用発生及び生態系劣化

・法規制が厳格化され、コスト増加

・有害廃棄物の排出削減、適正処分

・有害物質の使用制限

軽減

R

水の保全

 


事業プロセスや生活で使用する水の不足

・水不足による事業活動の停止・遅延

・水不足地域での多量の水利用による評判の低下

・水使用の削減計画に沿った水リサイクル、節水活動の実施

軽減

R

 

 

 

自然資本に対する分析

 

 ◆LEAPアプローチ

 TNFDは、企業が自然関連の課題を評価、管理、情報開示できるようなフレームワークを提供しており、その中でLEAPアプローチ(注5)を推奨しています。当社では、このLEAPアプローチに基づき、自然関連の課題について評価と分析を行いました。

 

 

 Locate

 当社グループは、楽器事業、音響機器事業、その他の事業(部品・装置事業など)の3つの事業領域でグローバルに事業を展開しています。その中でも、楽器事業は売上の6割以上を占める主要な事業であり、自然資本への依存と影響が大きい事業です。特に、木材は多くの楽器に使用されており、当社グループの事業と深く関連しています。美しい音を奏でる木材は楽器製造に不可欠な材料であり、自然資本への依存とその影響への取り組みは、当社グループの事業、さらには音楽文化を持続する上で重要な位置を占めています。このため、これまでも木材の持続可能な調達に関する目標を設定し、取り組んできました。

 

 当開示にあたり、当社は「ENCORE」を用いて自然関連の依存と影響を評価しました。この分析は、従来の自社の認識を再確認し、さらに客観的なデータに基づいた評価を行うために実施したものです。評価対象は、

・バリューチェーン上流における木材調達プロセス

・直接操業としての楽器・音響機器の製造プロセス

の2つです。

 

 この評価により、木材調達過程と自然資本との関連が特に大きいことが明らかになりました。一方で、楽器・音響機器の製造過程においては、依存・影響の大きい項目はほとんど見られませんでした。この結果は、木材と自然資本の関わりが大きいという当社の認識を裏付けるものとなりました。

 

 木材は一般的に環境への負荷が小さく持続可能な素材とされていますが、楽器用の木材には、その特性や風合いにより代替が難しいものもあり、持続性の確保が求められています。加えて、SBTN(The Science Based Targets Network)のHigh Impact Commodity List(注6)では、木材が「High Impact Commodity」として分類されており、科学的にも自然への影響が大きいとされています。これらの要素を踏まえ、木材についての評価を行うことが重要であると再認識し、今回の分析を実施しました。

 

 「木材調達」優先地域の特定

 当社グループが調達する代替困難な木材の原産エリアを世界地図にプロットし、その中でも特に重要な樹種の原産地を優先地域として特定しました(図2)。

 

(図2)


 

 Evaluate/Assess

 Locateで特定した優先地域の依存と影響に関する評価は、「ENCORE」を使用して実施しました。これに事業を通じた自社の知見を加え、「ENCORE」の分析を補完するかたちで依存度と影響度を再評価し、特に重要なリスクと機会をダブルマテリアリティの視点で整理しました(表4)。なお、「ENCORE」において依存または影響ありと分類された項目のうち、当社の事業実態に照らして影響が限定的または認められないと判断した項目については、本表では記載を省略しています。

 

(表4)

依存

分類・項目

依存度

リスク

機会

ヤマハの活動

供給

サービス

生物資源の供給

木材の枯渇・規制の強化により調達コストが増加、または調達不能となる恐れ

森林資源保全の推進

・安定した使用量の確保

・資源使用量に対する資源成長量の維持・促進

新技術の開発(代替素材・技術開発)

・過剰伐採の抑制

・環境に配慮した製品による評価向上

おとの森活動による持続的育成

・住民参加型森林経営の推進

希少木材の効率的利活用

・木材加工・再生技術の開発

・希少木材を代替する新素材の開発

遺伝資源

遺伝子多様性の損失による病虫害発生により、森林の生産性が低下し調達が困難になる

森林保全活動による生態系の維持・機能回復

遺伝子多様性の担保

おとの森活動による森林生態機能の維持回復

・希少種の天然更新動態の改善による地域個体群の保全

・林内植栽による個体保全と生物多様性維持の両立

水の枯渇により木の生育・原産地コミュニティーの住民生活に悪影響

原産地森林機能の維持・回復(水源涵養)

コミュニティーにおける生活用水インフラの整備

おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持

おとの森活動による地域開発支援

調整

サービス

気候調整

(地球規模・局所的)

木質原材料産地の気候変動により木の生育適域が変遷し、個体数が減少して調達コストが増加、または調達不能となる恐れ

重要種の特定と生育環境の把握

重要種の保全

新技術の開発(未利用資源の利活用・技術開発)

・重要種の過剰伐採の抑制

・原産地の賦存資源の有効活用

おとの森活動で森林を健全に保つことによる森林生態機能の維持

・重要な希少木材樹種の特定

・林内植栽による適地での種の保全

・希少種の天然更新動態の調査観測

希少木材の効率的利活用

希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用

水質の浄化・水流の調整

木質原材料産地の洪水・水供給不足・水質汚染により木の生育・原産地コミュニティーの住民生活に悪影響

原産地森林機能の維持・回復(水源涵養)

コミュニティーにおける生活用水インフラの整備

おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持

おとの森活動による地域開発支援

・育苗用水の貯水タンクや井戸の共用

空気のろ過・土質調整・土砂保持・固形廃棄物の分解

木質原材料産地の土壌劣化により木の更新・生育が阻害され個体数が減少し調達コストが増加、または調達不能となる恐れ

森林被覆面積の維持・回復

原産地森林の植生の維持・回復

おとの森活動による森林回復に向けた取り組み

・林内植栽による森林の更新サイクルの促進

・農業用地への現地有用種の植栽

生態系保全

(受粉・生物学的防除・生息環境維持)

木質原材料産地の生態系劣化により木の生育が阻害され、個体数減少、材質劣化により調達コストが増加、または調達不能となる恐れ

森林保全活動による生態系の維持・機能回復

遺伝子多様性の担保

おとの森活動での持続的育成・機能保全

・林内植栽による希少種の保全

・希少種の天然更新動態の改善による地域個体群の保全

自然災害緩和

(降雨パターンの調整、洪水・暴風雨の緩和)

洪水や暴風雨による生育阻害や木材輸送ラインの停止、地域コミュニティーの住民生活への悪影響

干ばつ期間の長期化による住民生活への悪影響

木質原材料産地の森林火災、延焼による個体群の減少、調達コスト増

原産地森林機能の維持・回復(水源涵養)

コミュニティーにおける生活用水インフラの整備

森林火災の抑制、森林機能回復

おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持

おとの森活動による地域開発支援

・育苗用水の貯水タンクや井戸の共用

おとの森活動での森林火災抑制への取り組み

・植林地周辺での防火帯の設置

・早期火入れによる乾季延焼の抑制、植生維持

 

※生態系への直接的な影響が限定的である「文化的サービス」については、寄与が少ないため一覧表から除外しております。

 

 

影響

分類・項目

影響度

リスク

機会

ヤマハの活動

生態系

利用

陸域

圧縮、露出、機械的損傷によった土壌劣化・浸食増加による土壌の性質悪化と植生変化

→木質原材料産地の劣化により種の個体数が減少

→地滑り・森林火災のリスク増加

→人口増加、農畜産用地への森林の転換による資源減少

森林被覆面積の維持・回復

原産地森林の植生の維持・回復

コミュニティーにおける土地利用の改善

おとの森活動による森林回復に向けた取り組み

・林内植栽による森林の更新サイクルの促進

・天然更新の改善による地域個体群の保全

・農業用地への現地有用種の植栽

・コミュニティーでの森林管理技術の導入、支援

資源利用

多種多様な木材の供給

原産国別の規制強化による調達性低下

資源減少による木材の材質低下、調達性の低下

持続可能性に配慮した木材の優先的利用

新技術の開発による利用可能な木材の最適化(集約と多様化)

持続可能性に配慮した木材利用の推進

・自社基準の設定

・木材デューディリジェンスの実施

おとの森活動による持続的資源育成

・重要な希少木材種の特定、保全

木材の効率的利活用

・木材加工・再生技術の開発

・希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用

気候変動

温室効果ガス

現場での重機の使用、製炭、木材・製品の輸送、生産活動、製材・製品・梱包材の廃棄焼却により発生

→気候変動による種の植生変化・生息地減少

→気候変動による災害の頻発

森林資源保全の推進

→森林機能による炭素固定

→資源使用量に対する資源成長量の維持・促進

新技術の開発(代替材・技術開発)

→過剰伐採の抑制

→木材利用効率の改善・向上

→原産地の賦存資源の地産地消

資源の再利用

おとの森活動による資源保全

・森林モニタリングによる炭素固定評価機能の開発

・植林、環境保全による資源の持続的育成

木材の効率的利活用

・木材加工・再生技術の開発

・希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用

外来種
その他

外来種

侵入

原産地域への外来種導入により生態系サービスが低下し、個体群が減少し調達が困難になる

原産地森林の植生の維持・回復

原産地域の生物多様性の維持・向上

おとの森活動による地域在来種資源の育成保全

・原産地域在来種の林内植栽、天然更新改善

・在来種、帰化種の農業用地や裸地への植栽

 

 

 

Prepare

LEAPアプローチのL、E、Aの分析により特定された依存、影響、リスク、機会に対応するため、これらを評価し管理するための戦略や開示指標を設定しました。(④指標及び目標をご覧ください)

その他、今回の分析で特定された優先地域における、持続的な木材調達に関する具体的な取り組みについては、おとの森活動(注7)のページをご覧ください。

 

(注5)企業の自然との接点、依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題を判定するための統

合的な評価方法。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価

する)、Prepare(準備する)のステップを踏むことで、企業は自社にとって重要な自然との接点を評

価することができる。

(注6)自然への影響が大きいとされるコモディティ(原材料)をリスト化したもの

(注7)https://www.yamaha.com/ja/stories/environment/otonomori/

 

 

③ リスクと影響の管理

当社では、取締役会の監督に基づき、代表執行役社長の諮問機関としてリスクマネジメント委員会を設置し、企業活動・行動に関わる気候変動や生態系に関連するものを含むすべてのリスクを対象とした全社横断的な評価の仕組みを採用し、リスクの抽出と評価を行っています。

サステナビリティ委員会の下部組織である気候変動部会、および環境部門では、シナリオ分析結果をもとに「影響度」と「発生頻度」を評価し、リスクと機会(上流および下流のバリューチェーンにおける自然関連の依存関係、影響を含む)をリスト化しています。特に重要なリスクと機会への対応は関連する他の部会(資源循環部会、調達部会)や部門が随時協働して行い、その進捗はモニタリングされ、サステナビリティ委員会に報告されます。また、サステナビリティ委員会や部会の担当範囲を超える対応が必要となる重要なリスクおよび機会については、逐次取締役会へ報告され、対応方針を審議検討しています。

リスクマネジメント委員会の委員長(執行役)はサステナビリティ委員会の委員も務めており、両プロセスは有機的に連動しています。これにより、気候変動や自然関連のリスクと機会に関する対応が一貫して行われ、戦略的なリスクマネジメントが推進されています。

リスクマネジメント:https://www.yamaha.com/ja/sustainability/governance/risk-management/

 

 


 ④ 指標及び目標

当社ではサプライチェーンを含めたグループ全体のCO2削減を横断的に管理するため、温室効果ガスの総排出量(スコープ1、スコープ2、スコープ3)をGHGプロトコルの基準に基づき算出し、指標としています。さらに、スコープ1およびスコープ2に加え、スコープ3の一部項目と取水量のデータについては第三者検証を実施しています。

また、TNFDが開示を求めるコアグローバル指標と当社の開示状況については以下のとおりです。

 

〇依存と影響に関する指標

No.

分類

指標

開示内容

開示規模

当社グループの現時点での開示・対応

-

気候変動

GHG排出量

GHG排出量

(スコープ1,2)

国内主要拠点および海外生産拠点

ESGデータにて開示

GHG排出量

(スコープ3)

ヤマハのサプライチェーン

ESGデータにて開示

C1.0

土地・淡水・海水の利用変化

管理している土地の総フットプリント

所有している土地面積

国内外主要拠点一部

有価証券報告書にて開示

C1.1

土地・淡水・海洋利用の変化の範囲

新たに活動を開始・廃止した拠点面積

国内主要拠点および海外生産拠点

対象無しのため開示無し

植林活動による植栽面積

おとの森活動によるアフリカン・ブラックウッドの当年度までの合計植林面積

当社ウェブサイトにて開示

C2.0

汚染・汚染除去

土壌に放出された汚染物質(種類別)

土壌への汚染物質の放出量

国内主要拠点および海外生産拠点

土壌汚染につながる物質の放出は無い

C2.1

排水

排水量

国内主要拠点および海外生産拠点

ESGデータにて開示

主要汚染物質濃度

国内主要拠点

定期的に測定し異常がないことを確認済だが開示は未実施

C2.2

廃棄物の発生と処分

廃棄物の発生量

国内主要拠点および海外生産拠点

ESGデータにて開示

再資源化率

国内主要拠点

ESGデータにて開示

C2.3

プラスチック汚染

使用したプラスチックパッケージの量

開示未対応

容器包装リサイクル法の報告数値は算出済だが開示未対応

C2.4

GHG以外の大気汚染物質

NOx,SOx排出量

国内主要拠点

ESGデータにて開示

VOCの排出量

国内主要拠点および海外生産拠点

ESGデータにて開示

C3.0

資源利用・補充

水不足地域からの水の取水と消費

水源別の取水量、消費量およびリサイクル率

国内主要拠点および海外生産拠点

ESGデータにて開示(地域別は未対応)

C3.1

陸地・海洋・淡水から調達される高リスクの天然資源の量

形態別および伐採地域別の木材調達量

ヤマハのすべての木材調達

ESGデータにて開示 

持続可能性に配慮した木材使用率

ESGデータにて開示

 

 

〇リスクと機会に関する指標

分類

指標

当社グループの開示状況

リスク

自然関連の移行リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益および費用(合計および割合)

未対応

自然関連の物理的リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益および費用(合計および割合)

自然関連の悪影響による重大な罰金や訴訟の説明と金額

2025年3月期は該当なし

機会

自然関連の機会獲得に向けた設備投資、資金調達、または投資の金額

未対応

自然に明らかなプラスの影響をもたらす製品やサービスからの収益の増加とその割合(影響の説明付き)

 

 上記のうち、現時点で分析が完了していないものについては「未対応」としておりますが、今後分析に取り組み、可能な項目から随時公開してまいります。

 これらを踏まえ、重要な気候変動および自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を評価し管理するための指標と目標を以下のとおり設定しております。

 

 前中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の目標と実績および新中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)の目標は、以下のとおりです。

 

分類

2025年3月期目標

(前中計)

2028年3月期目標

(新中計)

目標の関連性

気候変動への対応

省エネによるCO2排出量削減 (CO2排出量/生産高):
 ▲5%(2018年3月期比)

スコープ1+2 GHG排出量:
 ▲30%(2018年3月期比)

総排出量を指標とすることで、省エネ・再エネを含めた中期目標の進捗を明確化

持続可能な木材の利用

持続可能性に配慮した木材使用率:75%

持続可能性に配慮した木材使用率:80%

継続的に拡大

楽器材料となる希少樹種3樹種の育成・保全:育成・保全対象を3樹種に拡大

森林育成推進(おとの森):

①タンザニア 2万本/年 苗木植栽・保全

②北海道 アカエゾマツ活用楽器の製作・公開

③インド 植林パイロット事業導入

④中南米 1樹種で保全モデル構築

(対象を4樹種に拡大)

継続的に拡大

有害物質

削減

新規小型製品 梱包材プラスチック使用:使用廃止

梱包材プラスチック使用:発泡スチロール削減 重量比▲25%(2023年3月期比)

継続的に拡大

 

 

 当社グループは、2031年3月期をターゲットとした中期目標(SBTi 1.5℃水準)を策定し、長期的な視点で気候変動や自然関連課題への対応を進めています。

 

分類

指標

2031年3月期目標(中計目標)

気候変動への対応

スコープ1+2 GHG排出量

▲55%(2018年3月期比)

スコープ3 GHG排出量

▲30%(2018年3月期比)

有害物質削減

有害性廃棄物排出量

目標策定予定

水の保全

取水量

▲15%(2018年3月期比)

 

 

 

 当社グループは、気候変動対応と自然資本保全の両面で持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、短期・中期・長期の視点を踏まえた取り組みを推進していきます。

 

 木材を持続可能な形で利用し続けるには、森林保全や木材資源量への配慮と、サプライチェーンが経済的にも持続可能であるよう、雇用創出やインフラ整備といったコミュニティーの発展に資することが必要です。当社グループでは、木材デューディリジェンスの仕組みを構築し、購入する木材の原産地や伐採の合法性、資源の持続可能性に関する書類調査を実施し、その結果、リスクが高いと判断された木材については、現地訪問を含む追加調査および木材調達部門やサステナビリティ部門で構成する審査会での審議を通じて、より厳格な合法性などの確認を行っています。

 2024年3月期に木材デューディリジェンスに用いるリスク評価の基準を刷新しました。その中の、持続可能性の確認まで含めた「持続可能性に配慮した木材」の基準については、2023年5月に国際的な環境団体Preferred by Nature監修のもと新たに制定し、2024年7月に見直しを加えました。これまでは第三者によって持続可能と判定された認証木材の使用率を拡大することで持続可能な木材利用に取り組んできましたが、樹種によっては認証木材の流通量が少なく、認証木材以外の持続可能性を評価できないことが課題でした。本基準により、非認証木材に対し、デューディリジェンスを通じて持続可能性を客観的に判断するための評価項目・判断基準を定める一方で、書類調査に加えて、東南アジアや中国原産の植林木に対し現地調査を実施することで、持続可能性の評価と判定を進めています。今後も評価スキルの向上や調査のための要員教育を通じてデューディリジェンスの精度向上と実行体制の拡充を図りながら、サプライヤーと連携し、持続可能性に配慮した木材の利用拡大を進めていきます。

 

指標及び目標に関する最新データはESGデータ<環境>を参照ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/related-information/esg-data/pdf/environment.pdf

 

当社グループはサプライチェーンを含めたグループ全体のCO2削減を横断的に管理し、温室効果ガスの総排出量(スコープ1、スコープ2、スコープ3)を着実に削減していくことで、人間社会および地球のあらゆる生物の脅威となる急速な気候変動を緩和し、脱炭素社会への移行に貢献します(図3)。

 

(図3)低炭素社会への移行計画 

 


 

当社グループはネイチャーポジティブを目指し、事業活動や製品が生物多様性に与える影響をバリューチェーン全体で考慮し、悪影響の最小化に取り組みます(図4)。特に森林保全に注力し、サステナブルな木材活用に努めつつ、楽器適材の育成を推進します。

 

(図4)ネイチャーポジティブへの移行計画

 


 

 

参考

当社における気候変動への対応とTCFD及びTNFDに基づく情報開示の詳細につきましては、下記URLをご参照ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/environment/

木材資源への取り組みの詳細につきましては、下記URLをご参照ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/environment/biodiversity/

 

 ⑤ 社外からの評価

・CDPにおける気候変動調査で2年連続最高評価を獲得

当社は、国際的な環境非営利団体CDP(注)より、「気候変動」分野における積極的な取り組みと透明性が評価され、最高評価「Aリスト」に選定されました。当社のAリストへの選定は2年連続3回目となります。さらに、同時に評価された「水セキュリティ」および「フォレスト」分野においても、それぞれA-という高評価を得ました。これにより、「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト」の3分野すべてにおいて「リーダーシップレベル」の評価を受けたことになります。2024年は、世界の株式時価総額の66%以上に相当する24,800社以上の企業、日本ではプライム市場上場企業の70%以上を含む2,100社以上がCDPを通じて情報開示を行い、「気候変動」Aリスト企業には、評価対象企業全体の上位約2%が選出されました。当社は今後も、脱炭素・ネイチャーポジティブに向けたアクションを着実かつ継続的に進めていきます。

 

(注)CDPは、企業や自治体の環境情報開示のための世界的なシステムを有する国際的な非営利団体です。CDPによるスコアは、持続可能な社会を実現するために、投資家や企業が意思決定を行う際の重要な指標として広く活用されています。

 


 

 

 

(3) 人的資本

 当社は、人材の多様性を新たな価値創造の源泉と考え、従業員の多様な個性や自律性を尊重し、能力開発およびキャリアアップの機会を公平に提供しております。

 また、従業員一人ひとりが感性・創造性をいかんなく発揮し、自己実現を図りながらプロフェッショナルへと成長するための環境整備に努め、グローバルに人材マネジメントを推進することで、人的資本の最大化と事業の発展、企業価値の持続的向上を目指しております。

 

 ① 指標及び目標

 当社は、中期経営計画「Make Waves 2.0」の柱の一つとして掲げた「ともに働く仲間の活力最大化」を6つの領域に要素分解するとともに、3つの重点テーマと目標を定め、これらに基づく人事施策の実行と、その効果測定を行ってまいりました。その結果、DE&Iの推進や働きやすさの項目では目標達成し、社外からも高く評価されております。6つの領域と3つの重点テーマは以下の通りであります。

 なお、詳細な施策および成果は、「④ 戦略と具体的取り組み」をご参照ください。

 

6つの領域

3つの重点

テーマ

目標

達成状況

 


働きがいを

高める

従業員サーベイ「働きがい」肯定的回答率の継続的向上

横這いで65%

意識調査とそれを受けた活動は定着しつつある

人的投資額 2倍

1.6倍

2年目までは凡そ順調に推移するも、3年目は国内で減速

人権尊重と

DE&Iを推進する

管理職女性比率

グローバル 19%

19%

海外の伸びが大きく、2年目で目標達成

クロスボーダー配置 30名

32名

社内規定と運用プロセスを整備するとともに、社内ニーズとの人材マッチングを行い、目標達成

風通しが良く、皆が挑戦する組織風土を醸成する

従業員サーベイ「働きやすさ」肯定的回答率の継続的向上

pt向上し65%

意識調査とそれを受けた活動は定着しつつある

 

今後3か年は、組織力の強化と個の成長に注力するとともに事業戦略連携型人材マネジメントシステムの構築・展開を進めてまいります。

こうした取組み、および取組みを通じて得られたデータ等を活用することにより、取組みの実効性の向上と人的資本を高め、会社の成長と組織風土改革につなげてまいります。

 

② リスク管理

 人的資本に関するリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク 人材・労務」をご参照ください。

主な対策として、グループ人材マネジメント規程および関連するガイドラインを策定し、グループ各社に対して、その周知及び実施状況のモニタリングを行っております。

 

 

③ ガバナンス

人的資本に関するガバナンスについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

主な施策として、代表執行役社長の諮問機関として経営会議および人材開発委員会を設置し、経営会議では経営に関する重要な人事事項を、人材開発委員会では経営人材に関わる諸テーマを審議し、代表執行役社長に答申しています。その他、人権やダイバーシティに関する取り組みを推進するため、サステナビリティ委員会の下部組織として人権・DE&I部会を設置しております。

 

④ 戦略と具体的取り組み

当社は、「ともに働く仲間の活力最大化」を要素分解した6つの領域において、人事施策の実行と効果測定を行っております。

 6つの領域に対応する、主な施策とその目的、実績および成果は下記の通りであります。

 

 1. 方針・戦略の共有

 経営層と従業員の「想い」を密に共有する施策を打ち出すことで、従業員一人ひとりが企業理念・ヤマハフィロソフィー・ブランドプロミスを深く理解し、日々の行動実践につなげることを目指しております。

 

主な施策

目的

実績・成果

• 社内広報活動の充実(グループ報・イントラサイト上での情報発信など)

• フィロソフィーに基づいた社長表彰制度

• グループ共通教育実施(フィロソフィー・ブランドプロミス他)

• 経営理念・方針への共感

• 戦略の浸透

• 組織を超えた相互発展・一体感醸成

 

• 期初・月次の社長メッセージ発信

• 隔月のグループ報発行、イントラサイト上での年間約560本(日英中尼計)の記事発信

• ヤマハブランドに思いをはせる社内イベント「Yamaha Day」のグローバル開催(企画参加者数計約7,000名)

• 年間103件の社長表彰エントリー

•フィロソフィー・ブランドプロミス研修を新入社員、キャリア採用入社者、階層別(若年層、新規登用者)等を対象に年56回実施

 

 

 2. 貢献と成長の実感

 従業員が、自らの発意で成長や挑戦の機会を得られ、業務を通じて自らの能力をいかんなく発揮し、会社や社会への貢献と、自らの成長を実感できるような環境づくりを行っております。ヤマハ(株)では特に、従業員のキャリア自律と専門性向上を促進する施策の浸透と利活用を進めております。

 

主な施策

目的

実績・成果

• 教育投資の増強

• 自律学習の機会提供

• キャリア関連教育の充実・周知

• 人材情報基盤の整備・統一

•従業員の成長促進

•学習機会の認知向上

• 教育投資金額 前中期経営計画比1.6倍

• 社内向け教育ポータルサイトの整備公開

• 国内グループ企業へのタレントマネジメントシステム導入拡大

• 社内公募制度の再開

• スキル・キャリア情報のマッチング活用

•実践機会の提供

• キャリア採用枠公募/重点戦略業務に対する公募 計72件実施

• 人材情報の活用事例創出

 

 

 

 3. 個の尊重

 「ヤマハグループDE&I方針」に基づき、人材の多様性を新たな価値創造の源泉と考え、その前提となる公平性に配慮するとともに、多様なバックグラウンドを持った“個”が自分らしく活躍できるための体制づくりや風土の醸成を行っております。

 

主な施策

目的

実績・成果

• メンタリングプログラム(ヤマハ㈱) などの女性リーダー育成施策

• 女性の活躍機会拡大

• 活躍を後押しする風土の醸成

• 女性管理職比率の着実な上昇

ヤマハ㈱雇用者 9.4%、グローバル 19.0%

• LGBTQ+へのAllyの取り組み

• 性的マイノリティ当事者の働きやすさ向上

• アジア最大級のLGBTQ+関連イベント「東京レインボープライド2024」への出展

•ヤマハ(株)管理職を中心とした657名がD&I検定3級に合格

• クロスボーダー配置の促進

• グローバル選抜研修

• 国籍にとらわれない適所適材・人材活用

• 海外グループ拠点間の異動を含むグローバル人材配置の推進(3か年で32名)

• ヤマハ㈱管理職登用における人材多様性の確保

• 機会の平等

• 適所適材の人材活用

• 女性管理職比率 9.4%

(女性社員比率 24.8%)

• キャリア入社管理職比率 20.8%

(キャリア入社社員比率 27.0%)

 

 

 4.風通しが良い組織風土

 2021年3月期より実施している「働きがいと働きやすさに関する意識調査」の結果分析を通じ、従業員および組織の活力最大化の土台となる「風通しが良い組織風土」の醸成に努めております。なお、2025年3月期のグローバルでの調査回答率は85%(対前年-1pt)であります。

 

主な施策

目的

実績・成果

• 人事部門による、職場別組織開発活動の効果向上・自走化支援

• 働きがい、働きやすさの指標改善

• 「働きがい」肯定的回答率横這い

(65%、対前年-1pt、3か年で-1pt)

• 「働きやすさ」肯定的回答率向上

(65%、対前年±0pt、3か年で+2pt)

• 多様な対話機会の創出

• 挙手性参加型傾聴トレーニング実施と受講者コミュニティ形成

• 組織・立場を超えたコミュニケーションの量・質向上

• 社長による職場訪問企画実施(年間26回、のべ464名参加)

• 3か年でヤマハグループ従業員164名が傾聴トレーニング受講し、組織を超えた活動・学びの共有の場創出

 

 

 

5. 多様で柔軟な働き方

 さらなる事業の発展と個人の充実した生活の両立を実現するため、多様な価値観・ライフスタイルを尊重したワークライフバランス支援を積極的に推進しております。

 ヤマハ(株)では、自律的で生産性の高い働き方を目指し制度や仕組みの見直しを行い、従業員が心身の健康維持と仕事・プライベート両面の充実を図りながら能力を発揮できるよう、個別の事情に寄り添った柔軟な制度や職場環境の整備を行っております。

 

主な施策

目的

実績・成果

• 勤務柔軟化施策の拡大・定着

• 柔軟な両立支援制度の整備

• 自律的で生産性の高い働き方実現

• ライフイベントへの柔軟な対応

• テレワーク制度の運用定着

• 単身赴任者・介護事由者向けの通勤圏拡大

• 育児・介護・治療に関する法定以上の両立支援制度の整備

• 海外赴任帯同および介護事由の退職者に対する再雇用制度

• 副業実施基準の明確化

• 従業員の働き方・

自己実現の選択肢拡大

• 計114件の副業申請

(2023年制度開始以降累計)

 

 

6. いきいきと働ける職場環境

 「ヤマハグループ健康宣言」を掲げ、従業員が「心身ともに健やかに自分らしく生きる(Sound Living)」ことを実現するために、「安心して働ける環境(Sound Minds)」と「健康維持増進(Sound Bodies)」に寄与する施策を展開しております。

 

主な施策

目的

実績・成果

• 定期健康診断受診率100%の継続

• 集団健康講話と体力測定の実施

• ヘルスリテラシーの向上

• 定期健康診断受診率・産業医による就業区分判定実施率100%(7年連続)

• 運動習慣者率24.7%(前年比+0.9pt)

• ストレスチェックの継続実施

• 新)職場復職支援プログラムの導入と運用

• メンタルヘルスケアの促進と制度強化

• ストレスチェック受検率96.8%

• 高ストレス者率は低水準を維持(1.3%)

• 喫煙者への個別禁煙サポート

• 国内グループ企業敷地内全面禁煙(2022~)

• 長時間労働の対策・予防

従業員の健康維持増進

• 喫煙率は低水準を維持(ヤマハ(株)12.8%、国内グループ企業13.5%)

• 管理職を含む労働時間のモニタリング、事前注意喚起

 

 

 

⑤ 人材の採用

当社をとりまく外部環境、技術領域、社内人員構成の変化を予測し、短期および長期に必要な人材要件と人数を採用計画に落とし込んだうえで採用活動を実施しております。新卒採用計画は中長期的に必要な人員構成に基づいて策定し、キャリア採用計画は事業戦略上での優先度の高い人材獲得を目的として策定しております。また、人数の確保にとどまらず、専門性の高い人材や多様な人材(外国籍人材、女性技術者など)の採用を推進しております。

なお、当社ではキャリア採用を増やしており、2022年度以降は新規採用者のうちキャリア採用者が約4割を占めています。

採用人数実績の詳細はESGデータ<社会>のウェブページをご参照ください。

https://www.yamaha.com/ja/sustainability/related-information/esg-data/pdf/social.pdf

主な施策

目的

実績・成果

・ 採用マーケティング

- 求人媒体と広告

 - ダイレクトリクルーティング

 - 会社見学や社員との交流機会

・ 優秀人材の応募増

・ 職種理解と向上

・ 志望度の醸成

・ 新卒応募者数の継続的増加

・ 新卒採用充足率 3か年平均 100.6%

・ キャリア採用充足率 3か年平均 77.1%

・ インターンシップ受入拡大

・ コース別応募の開始

・ 優秀人材の早期発掘

・ ミスマッチ防止

・ インターンシップの受入 年間141名

(対前年 +25名、3か年で倍増)

・ 採用計画の過半数をインターンシップ参加者

・ 内定辞退率の抑制(3か年平均16%)

・ グローバル人材の採用

・ 女性技術者の採用強化

・ 多様な人材採用

・ 大学と連携した外国人留学生のインターンシップ受入開始(2024年度 1名受入ののち採用)

・ バイリンガル人材限定の会社説明会に出展

・ 新卒技術系の女性比率 3か年平均 20.9%

・ キャリア技術系の女性比率 3か年平均 23.3%

・ リファラル採用

・ アルムナイ採用

・ 海外赴任帯同退職者の再雇用

・ 即戦力人材の採用強化

・ リファラル採用(3か年で6名)

・ アルムナイ採用(3か年で4名)

・ アルムナイ専用サイトの立ち上げ

・ 海外赴任帯同退職者の再雇用(3か年で11名)

 

 

 社外からの評価

 DE&I、両立支援、健康経営に関する取り組みや成果が認められ、ヤマハ(株)およびヤマハグループ企業にて、以下の評価・表彰を得ております。

 

<活動に対する評価・表彰(一部抜粋)>

健康経営優良法人

ホワイト500

 

PRIDE指標

ゴールドマーク

経済産業省・日本健康会議主催の、従業員の健康管理を経営視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人を認定する「健康経営優良法人認定制度」。ヤマハ(株)は通算8回目のホワイト500認定。(株)ヤマハコーポレートサービスも健康経営優良法人に8年連続の認定。

 


 

任意団体「work with Pride」が策定する、企業・団体などにおけるLGBTQなどの性的マイノリティに関する取り組みの評価指標。

ヤマハ(株)は2019年から6年連続で最高位「ゴールド」を受賞。

 

 


 

 

次世代育成支援に関する

「くるみん」「プラチナくるみん」認定 

 

D&I Award 2024

「ベストワークプレイス」

厚生労働省が次世代育成支援事業主を認定する制度。ヤマハ(株)は2008年に「くるみん」、2016年に「プラチナくるみん」認定を取得。ヤマハコーポレートサービス(株)は、2018年に「くるみん」、2021年に「プラチナくるみん」認定を取得。

 


 

(株)JobRainbowが主催・運営する、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業を認定する日本最大のアワード。ヤマハ(株)は2022年以降連続して2024年も最高位の「ベストワークプレイス」に認定。