リスク
3【事業等のリスク】
当社グループは、事業活動に関するリスク管理を所管するリスク管理委員会(委員長CEO、副委員長COO)を設置し、経営上重要なリスクの抽出・評価および執行におけるリスク管理状況の確認を行い、常務会および取締役会に定期的に報告しております。また、特に品質、貿易管理、法令違反、安全・衛生・環境、経済安全保障、情報セキュリティのリスクについては、執行役員を中心に構成された各専門委員会でそれぞれ管理しており、リスク管理委員会はこれらの委員会の活動状況の報告を受け、最終的に全社リスクとして評価し、管理しております。
これらの管理を通じて、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、リスクの顕在化の不測の事態に備え、主要取引銀行との間で合計30億円のコミットメントラインを設定しており、急な資金需要にも柔軟に対応できる体制を整えております。
(1) 地政学的リスク
① 海外事業展開に関するリスク
<リスクの内容>
当社グループは、製品の輸出入や海外における現地生産など、幅広く海外で事業を展開しております。こうしたグローバルな事業展開に関するリスクとして、国や地域における政治経済情勢の悪化、各国の法規制の変更、テロ、紛争などの要因による社会的混乱等の地政学的リスクが考えられ、当社グループとしては、適切な対策を講じる努力を継続しております。しかしながら、これらの事象の発生により、当社グループの事業活動に支障をきたし、業績および財務状況に影響を及ぼすおそれがあります。
<リスクへの対応>
当社グループは引き続き、戦略的にグローバル展開をはかりながら同時にカントリーリスクの分散化を図ってまいります。また、特に注意すべき国・地域については、有事リスクへの対応を見据えた体制の再構築をすすめ、政治的・社会的状況を定期的にモニタリングいたします。なお、これらの国や地域でリスクが顕在化した際の、当社グループが連携を強化し迅速かつ的確に対応してまいります。
② 原材料価格変動と調達に伴うリスク
<リスクの内容>
当社グループは、国内外から部品や原材料を購入して製品の製造を行っており、一部の部品や原材料については、市場ニーズに応えるための高い品質・性能を追求する結果、供給が滞った際の代替調達先や十分な物量を確保できない可能性があります。また、テロ、紛争、関税政策などの要因によるグローバルレベルでのエネルギー価格上昇や供給制約などのリスクが考えられます。これらによる需給の逼迫や為替変動などにより調達コストに変化が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、調達のマルチソース化や適時適量の在庫確保などをすすめております。また、重要な調達先については定期的に評価を行い、調達リスクの低減に努めております。
(2) 品質に関するリスク
<リスクの内容>
想定外の事情による製品の欠陥の発生およびそれに起因する事故の発生、ならびにこれらによるブランドイメージの低下が売上高の減少、収益の悪化原因となり、当社グループの業績および財政状態に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、社名の由来である「Value & Quality」(価値の創造と品質の向上)を基本理念として、厳格な品質管理基準に従い製品の製造を行っております。また、部門横断的な品質保証委員会を中心とした品質保証体制を構築し、顧客満足を高める品質の向上活動を継続しており、定期的に常務会にその活動が報告されております。なお、万が一事故が発生し多額の賠償費用が必要となる可能性に備え、製造物責任保険(PL保険)に加入しております。
(3) コンプライアンスに関するリスク
<リスクの内容>
当社グループはグローバルに事業を展開しており、各国の法令や規則の適用を受けております。法規制の強化やその解釈・運用の変更、政策転換などが起きた場合、対応コストの増加や事業制約を招き、業績や財政に影響を及ぼす可能性があります。また、2024年9月25日に公表したとおり、当社元執行役員と元従業員による複数年度にわたる不適切取引が判明しました。現在、特別調査委員会の提言を受け、再発防止策の策定と実行に努めております。ただし、内部管理体制の強化が不十分で、当社グループや委託先が重大な法令違反を起こした場合、社会的信用やブランドイメージが損なわれ、業績や財政状態に影響する可能性があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、各国の法令や規則の変化に対し、外部専門家の助言を受けながら対応しております。不正の排除に向けては、「正正堂堂と」の理念のもと、「コンプライアンス遵守と誠実な行動」を行動指針とし、コンプライアンス委員会を中心に監査・執行の両面から取り組んでおります。定期的なコンプライアンス意識調査により課題を把握し、改善を進めるとともに、報告・相談・通報ルートの活用を促し、早期発見と適切な対応ができる風通しのよい職場づくりに注力しております。
また、社会的課題である人権問題について、バルカーを含む主要な連結グループ会社において人権方針を策定しており、生産・調達に関係した主要取引先に対して人権に関する取り組み状況を把握するためのアンケートを実施し、グループ全体の人権基本方針の周知を図ると共に理解度の確認および人権に関する取り組み状況を確認しております。引き続き、グループ全体で人権に配慮した事業運営の推進に努めてまいります。
(4) 為替相場の変動に伴うリスク
<リスクの内容>
各国の関税や金利政策は為替相場にも影響を与え、外国通貨建ての売上高や原材料の調達コストなどに影響を及ぼし、当社グループの業績および財政状態に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、取引に伴う為替の変動リスクについては、先物為替等によるヘッジ策を行うなど、そのリスクを極小にすべく細心の注意を払っております。
(5) 他社との業務提携等に伴うリスク
<リスクの内容>
当社グループでは、新中期経営計画(NF2026)のもと、新素材・新市場・新事業への展開を加速・推進するため、他社との業務提携やM&Aを積極的に実施しております。しかし、外部環境の変化や戦略の不一致により、計画通りの成果が得られない可能性があり、その場合は当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす場合があります。
<リスクへの対応>
他社との業務提携やM&Aに際して、投資先や提携先の事業状況や財務状況をデューデリジェンスなどを通じて慎重に評価し、リスクを最小限に抑えるための対策を講じております。また、当初の計画と実際の成果との乖離を随時確認し、必要に応じて改善策の実施や方針の見直しを進めます。
(6) 人材に関するリスク
<リスクの内容>
当社グループの新中期経営計画(NF2026)の戦略を担う人材や当社の技術優位性を支える高度な専門性を持つ人材、変化を先導するリーダー人材を確保・育成開育教育できない場合や、人材の流出を防止できない場合、当社グループの業績および成長計画に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、「人」を成長の源泉と考え、性別・年齢・経歴・国籍等にとらわれない多様な人材を登用し、人材投資や労働環境・体制の継続的な見直しを実施しております。積極的に中途採用を行っており、デジタル人材やグローバル経験豊富な人材など様々なバックグラウンドをもつ人材が活躍できる環境を整えております。上位職を早いうちから目指せる飛び級制度や、次世代の執行役員、拠点トップ候補などの育成プログラムなどを通じ、挑戦を促す環境づくりを進めており、生産性向上や定着率向上を図っております。
また、CWO(チーフウェルビーイングオフィサー)を代表取締役が担い、エンゲージメントサーベイの定期的な実施と、その結果を踏まえた改善やウェルビーイングな職場環境づくりにも積極的に取り組んでおります。
(7) 情報セキュリティに関わるリスク
<リスクの内容>
当社グループは、事業を展開するなかで重要な技術情報や取引先・顧客情報、その他様々な情報を保有しております。サイバー攻撃による不正アクセス等の脅威は日々高まっております。また、人為的なミスによる紛失、盗難などのリスクを完全に排除できるものではなく、これらの情報が流出した場合には、当社グループの信用低下やグループの業績および財政状態に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループでは、情報セキュリティ委員会が中心となって最新のテクノロジーを使用したセキュリティシステムの導入など、グループ全体とサプライチェーンも巻き込んだセキュリティ管理体制を強化しております。また、情報の外部流出を防止するために、社内ルールの整備、教育、セキュリティシステムの強化等に努めております。サイバー攻撃対策では、すでに導入済みのエンドポイントセキュリティに加え、2024年度は通信監視システムを導入し24時間365日監視運用体制を継続しております。紛失や盗難のリスクに対しては、端末を紛失した際に遠隔で通信機能を停止できる仕組みを導入しています。また、端末が発見された場合には、資産管理システムを活用して該当端末の利用状況を把握できる運用体制を確立しています。
(8) 大規模災害等に関するリスク
<リスクの内容>
大規模災害やパンデミック等事業の継続を脅かす事象に対して、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、結果的に生産活動の停止・サプライチェーンの混乱を招く可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、大規模災害などによる事業継続を脅かす事象が発生した場合に備えて、従業員の安全確保や事業中断に伴う影響の極小化ならびに迅速な事業継続を実現するためのBCP(事業継続計画)を策定しております。定期的な防災訓練や必要物資の備蓄等を実施、安否確認システムを導入する等リスクの分散、極小化に取り組んでおります
(9) 環境規制・気候変動等の社会課題への対応
<リスクの内容>
気候変動がもたらす異常気象がサプライチェーンに与える影響や不安定な国際情勢による気候変動対策の後退がエネルギー価格の不透明さを招き、事業に影響を与える場合があります。また、各国の環境法規制強化、または予期せぬ事故や自然災害等により非意図的な環境汚染等が発生した場合、事業活動への制限や多額の対策費用が必要となり、当社グループの業績および財政状態に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同するとともに、事業活動への影響の分析を行っております。TCFDの詳細は、前述の「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載をご参照ください。また、部門横断的な取組みである、SHE(安全・衛生・環境)委員会を設置し、安全や衛生と一体となって課題への取組みをすすめており、その活動を定期的に常務会に報告しております。
(10) 石綿問題に関するリスク
<リスクの内容>
石綿による健康被害について、当社規程に基づく補償金や見舞金の支払いによる費用負担は、限定的なものでありますが、今後も継続する可能性があります。また、健康被害に関して損害賠償請求の訴訟を受けており、当社グループの業績および財政状態に影響を与える場合があります。
<リスクへの対応>
当社グループは、2006年9月1日施行の労働安全衛生法施行令による「アスベスト全面禁止」に先立ち、2006年7月31日をもって一切の石綿製品の供給を停止いたしました。石綿代替品(ノンアスベスト製品)の品揃えは他社に先駆け完了しておりますので、今後ともノンアスベスト製品の強力な販売活動を展開していく所存であります。2006年3月27日施行の「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づく被害者救済策が講じられておりますが、当社といたしましては、以下の措置を継続して講じております。
・石綿関連の質問や相談に応じるための「相談窓口」の開設
・従業員および元従業員のうち、希望された方への健康診断の実施
・当社ホームページでのアスベストに関する情報の開示
配当政策
3【配当政策】
当社は、持続的な経営成績の拡大を図るとともに強固な経営基盤の確立に努め、株主に対する利益還元の実施を経営の重要課題としております。
株主還元の具体的な実施策としては、長期的な連結業績を考慮した配当を実施するとともに、資本効率の向上を目的とした自己株式の取得も適宜実施していくこととしております。
還元の基準につきましては、配当と自己株式取得をあわせた金額を「株主還元」と設定し、還元総額の親会社株主に帰属する当期純利益に対する比率、すなわち「株主還元性向」の50%を目標としつつ以下の事項を勘案し、株主還元を行う方針であります。
・将来の企業価値の最大化に向けた設備投資および研究開発投資ならびに戦略的投資の必要性
・リスク管理体制の強化や人材開発の拡充などの企業基盤整備ならびに事業環境の変動に対する備えの重要性
当社は、中間配当と期末配当の年2回の配当を行うことを基本方針としております。
これらの配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当期の配当につきましては、中間配当金を1株につき75円、期末配当金を1株につき75円(予定)とし、年間の配当金額は150円を予定しております。この結果、当期の連結配当性向は56.4%となる予定です。
当社は、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
なお、当期に係る配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年11月14日 |
1,320 |
75.0 |
取締役会決議 |
||
2025年6月25日 |
1,320 |
75.0 |
定時株主総会決議(予定) |