2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループはこれらのリスクに対処するため、リスクマネジメント規程に則り、リスクマネジメントを推進しています。
 なお、文中の将来に関する事項は、特段の記載のない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

(1)リスクマネジメント体制、活動
 2024年4月に設置したサステナビリティ推進委員会の下部組織として、全社よりメンバーを選出したリスクマネジメントチームを設置し、リスクの洗い出しと対応策の策定を行いました。
 
①リスクの検出・評価
 リスクの網羅性を確保した上で、リスクを約30のカテゴリーに分類し、リスクの具体的内容とリスク評価についてアンケート調査を実施。アンケート調査で得られた情報を集約・分析。

 


 

 

②現状認識、対応策の洗い出し

 アンケートを元に、リスクの見える化(マッピング)を実施。それぞれのリスクについて、現行の対応状況、必要な対応策について検討。

 

③審議・決定

 当社グループのリスクの見える化(リスクマップ)、リスクマネジメントプロセス(PDCAサイクル)をサステナビリティ推進委員会で協議・確認し、取締役会に報告・決議。

 


 

2025年度以降については、上記プロセスに基づき、リスクの低減に向けて活動します。

 

 

(2) リスク項目

約30にカテゴライズしたリスクについて、アンケート結果に基づき評価・再分類を行い、23のリスク項目を発生可能性と深刻度をキーファクターとしてリスクマップに配置し、発生可能性・深刻度が高いと判断された項目(赤枠の12項目)を重要リスクとしました。

 


 

<リスク項目とリスクの概要>

リスク項目

リスクの概要

1. 中国地域・市場への集中に関するリスク

新規参入の脅威、売り手/買い手の交渉力、代替品の脅威、同業者間の競争環境の変化

2. 為替レート及び金利の変動に関するリスク

為替/金利の想定外の変動

3. 原材料価格変動に関するリスク

商品市況の変動、サプライチェーンの多様化

4. 在庫に関するリスク

販売価格の下落等に伴う在庫回転期間の長期化

5. 保有有価証券の減損に関するリスク

株式市場における保有有価証券の株価下落

6. 人材確保に関するリスク

自社戦略・事業計画を遂行する上で必要となる人材の不足

7. ITリスク(情報セキュリティ)

サイバー攻撃等に起因する情報・データセキュリティの侵害、事業活動における情報・データセキュリティ事故の発生等

8. 事業投資に関するリスク

過分なリスクテイク、事業経営・商取引に起因する事象(債務不履行、クレーム、争訟等)の発生

9. カントリーリスク(債権回収)

特定国の財政状況の悪化等による、銀行等の外貨送金・兌換停止

10. 事業環境の変化(法制・税制)に関するリスク

特定国の政策転換や政権交代による、当社事業における権利侵害の発生

11. 差別・ハラスメントに関するリスク

差別・ハラスメントの発生

12. 労働安全衛生に関するリスク

長時間労働・強制労働等の発生、労働災害(身体、メンタル不調)の発生

13. 気候変動に関するリスク(移行リスク)

脱炭素社会への移行に伴って生じる政策・法規制/技術/市場/レピュテーションの変化

14. コンプライアンスに関するリスク

  (法規制・コンプライアンス違反)

独禁法(カルテル・入札談合)違反事案、贈収賄違反事案、輸出管理・制裁違反事案の発生/役職員のコンプライアンス違反(会計不正・横領・窃取・その他刑事・不祥事等)の発生

15. 気候変動に関するリスク(物理的リスク)

気候変動により生じるハザード事象(洪水、冠水、森林火災、サイクロン、渇水等)の頻発/激甚化

16. カントリーリスク(事業基盤の棄損)

事業投資先/取引先所在国における、事業基盤を大きく毀損する戦争・内乱・テロ等の発生

17. カントリーリスク(人的安全)

事業投資先/取引先所在国における、人的被害等を及ぼすような戦争・内乱・テロ等の発生

18. 自然災害に関するリスク

本社・国内外拠点・事業投資先所在国・地域、原料調達・製品販売等を行っている地域での地震や自然災害の発生

19. ITリスク(システムダウン)

サーバー・ネットワーク停止に起因するITシステムダウンの発生等

20. メディア関連リスク

当社グループに関するネガティブ・過小評価/誤った情報のステークホルダーへの拡散(報道、メディア・SNS、機関投資家説明会等)

21. 新興感染症等に関するリスク

本社・国内外拠点・事業投資先所在国・地域における新興感染症の発生・感染拡大

22. 人権問題に関するリスク

トレーディングや投融資事業における人権侵害事例(児童労働、強制労働、劣悪な労働環境等)の発生

23. 環境汚染に関するリスク

操業、土地・建物購入等の事業活動を通じた水質汚染・大気汚染・土地汚染・地下水汚染の発生

 

 

(3) 重要リスク

1. 中国地域・市場への集中に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、中国を消費市場・製造拠点として重要な事業対象地域と位置づけ経営資源を投入しています(2024年度売上高 483億円)。そのため、人民元の変動、金融システム・税制・法制の変更、日中関係の悪化や米中貿易摩擦の動向等により、中国における事業環境が悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、中国地域を統括する中国総代表を設置し、中国の法制・税制等に知見のある社外の専門家とも連携しながら政治・経済情勢や法規制の動向を適時に把握できる体制を整えています。また、連結事業軸運営を基盤として、事業環境整備、事業運営の統一を図り、適時に中国地域に関する情報を共有し、必要に応じリスク回避に努めています。加えて、グローバルな代替サプライチェーンを構築しリスク分散を行っています。

 

 

2. 為替レート及び金利の変動に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、グローバルに事業活動を展開し様々な通貨で取引を行っています。そのため、予測を超えた為替レート変動の影響により、当社グループの取扱う商材の仕入れコスト、製品の製造コスト、荷造費・運賃等の販売費が変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、国内外の金融政策の変動に伴う金利の上昇により、金利負担の増加や資金調達が困難になる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、為替変動等の市場状況の動向を注視し、為替予約の締結等により為替レート変動の影響を軽減しています。また、金利については、定期的に金利動向を把握するとともに、当社グループのキャッシュマネジメントシステムを活用し、グループ全体の資金を効率的に管理・運用しております。

 

 

3. 原材料価格変動に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、繊維素材、テキスタイル・資材、アパレル製品、化学品、輸送機器等の商品の取扱いを行っており、各商品は需給バランス等の要因から固有の市況を形成しております。そのため、原材料価格の変動により、当社グループの取扱う商材の仕入れコストが変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、原材料価格の変動については、販売価格へ適時・適切な転嫁を実施することでリスク回避に努めています。

 

 

4. 在庫に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、繊維素材、テキスタイル・資材、アパレル製品、化学品、輸送機器等の商品を取扱っており、市況の悪化等により、販売価格の下落や在庫回転期間の長期化が生じ、評価損の計上を余儀なくされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、過去の傾向等からの需要予測や取引先からの受注に基づいた仕入及び顧客の引取り保証の確保等によって在庫水準の適正化に努めています。

 

 

5. 保有有価証券の減損に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、事業上必要と判断した会社の株式の保有や出資を行っています(2025年3月末時点の帳簿価額104億円)。そのため、上場株式については、株式市場における時価下落、非上場株式等については対象会社の財政状態の悪化により、保有有価証券の評価損の計上を余儀なくされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、事業上必要と判断した会社の株式の保有や出資について、定期的に取締役会で保有意義及び保有効果等を検証し、保有の継続性の是非を判断しています。その結果、保有意義がないものに関しては売却を検討し縮減を図っています。

 

 

 

6. 人材確保に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、専門的な商材をグローバルに扱う専門商社であり、「人」を最重要経営資源と位置づけ、事業を推し進めるために必要不可欠な優秀な人材を確保・育成すべく、人事ポリシーを定め人材確保に努めています。しかしながら、労働市場の逼迫や少子高齢化等を背景に優秀な人材の確保が困難となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

  また、グローバルに事業を展開し、更なる成長を目指していますが、地域によっては現地での人材の採用と確保ができず、当初計画していた事業展開ができない可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、会社の持続的な成長を目指し、グローバルに活躍できる人材獲得(新卒採用、キャリア採用)及び女性活躍をはじめとしたダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進による人的資本の強化を図っています。新卒採用においては、オンラインイベントを定期的に開催し、幅広い地域からの応募に対応できる体制を整えています。キャリア採用も積極的に行い、2024年度は新卒採用と同程度の人数を採用しています。また、外部機関によるエンゲージメントサーベイを実施し、組織ごとのエンゲージメントの状態を可視化し、課題の認識・改善活動を実施しています。

 

 

7. ITリスク(情報セキュリティ)

リスクの概要

 当社グループは、セキュリティ対応に万全を期し、ネットワークを構築・運用した上で情報システムを活用し、グローバルに事業活動を展開しています。

 しかしながら、予期せぬ外部からの不正アクセス・サイバー攻撃等により、機密情報の漏洩や、業務が停止する事態に陥った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、情報システムの安全性、情報セキュリティ対策を強化し、役員・従業員に対する研修やアタックテスト等のトレーニングを実施しています。加えて、「蝶理グループ情報セキュリティ基本方針」に従い、関連規程を整備し、役員・従業員への周知を図り、情報システムの保全や情報管理の徹底に取り組んでいます。

 

 

8. 事業投資に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、国内外の販売先に対して多様な商取引や投融資を通じて信用供与を行っています。そのため、取引先の業績悪化や投資先における事業計画の大幅遅延等により債権の回収遅延や回収不能が生じたり、投融資計画の見直しが必要になったりした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、信用リスクに関しては与信管理規程を制定し、取引先の内容を評価・判断した上で取引先別の与信限度額を設定し、必要に応じて担保・保証の取得及び取引信用保険による保全を図ることで、貸倒れリスクのミニマイズ化を図っています。

 また、投融資に関しては、既存事業との関連性やシナジーの発現の有無、投資採算、EXITのための諸条件、投融資事業の進捗等につき、十分な評価・検討を行った上で新規投資を行い、定期的に継続するか否かの判断を行っています。

 

 

9. カントリーリスク(債権回収)

リスクの概要

 当社グループは、海外に多くの拠点・取引先を有しており、これらの拠点・取引先に対し販売活動や投融資を行っています。そのため、各国における政治・経済・社会情勢・外貨規制の変化や国際的な貿易障壁・貿易紛争、国家間における自由貿易協定・多国間協定の変更、並びに地域紛争等に代表される国際情勢の変化により、債権の回収遅延や回収不能が生じた場合に、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、各国の専門家と連携しながら政治・経済情勢や法規制の動向の把握、貿易保険の活用や海外現地法人からの配当を通じた日本国内への資金の還流等によるリスク軽減策を構築しています。また、カントリーリスク枠を設けて特定国の債権残高を管理し、適切な取引条件を設定する等してリスク回避に努めています。

 

 

10. 事業環境の変化(法制・税制)に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、日本国内のみならず海外においても事業を行っており、海外にも多くの拠点・取引先が所在しています。そのため、日本及び各国の政治・経済・社会情勢や国際的な貿易障壁・貿易紛争及び国家間における自由貿易協定・多国間協定等により、外部経営環境が悪化した場合、特に各国の税制等の変更や税務当局との見解の相違等により追加の税負担が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、「企業行動指針」をはじめとするコンプライアンス体制に関する規程を制定し、法令及び社会倫理の遵守を企業活動の行動規範としております。その上で、各国の政治経済状況や制度・政策等の変更について各国の専門家と連携しながら情報を収集・分析して適切な対応を取っています。

 また、当社グループは、グループ会社間の国際的な取引価格に関しては、適用される各国の移転価格税制や関税法の観点からも適切な取引価格となるよう細心の注意を払っており、各国の税制に則り、適正な納税額となるよう努めています。

 

 

 

11. 差別・ハラスメントに関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、「蝶理グループ人権方針」、「蝶理グループ人事運営方針」に定めている通り、あらゆる差別・ハラスメントを許しておりません。しかしながら、万が一、違反が生じた場合には、罰則・損害賠償・訴訟問題・信用の低下・風評による損失・人材の流出等の悪影響が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

当社グループは、ハラスメントを含めたコンプライアンスアンケートを毎年実施し、内部通報制度(KIITE、KOTAETE)の運用や、上司・部下の1on1ミーティングを定期的に実施する等して実態把握に努めるとともに、社内研修を実施して社員への徹底を図っています。

 

 

12. 労働安全衛生に関するリスク

リスクの概要

 当社グループは、国内外の法令・規則に則って労働環境を整備して業務を行っています。しかしながら、万が一、重大な違反が生じた場合には、罰則・損害賠償・訴訟問題・信用の低下・風評による損失・人材の流出等の悪影響が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策

 当社グループは、各種マニュアル整備による業務効率化、人員の確保・適正配置による業務量の分散で長時間労働にならないよう対応しています。また、上司・部下の1on1ミーティングを定期的に実施する等してコミュニケーションを取り、過重労働解消のため労働時間や業務負荷に対するチェックをしています。

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つと位置づけており、継続的・安定的な利益還元と経営・財務の安定性確保の観点から、親会社株主に帰属する当期純利益の水準に応じた業績連動型配当を実施し、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

当社の配当の決定機関につきましては、会社法第459条第1項の規定に基づき、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によることとしております。また、配当額につきましては、事業発展のための投資資金の確保に留意しつつ、経営環境等を総合的に勘案し、親会社株主に帰属する当期純利益に対する連結配当性向30%(年間)かつ株主資本配当率(DOE)3.5%以上を満たす額としております。

この方針のもと、2025年3月期通期連結業績を踏まえ検討した結果、当期の期末配当金は、2025年4月28日に公表しましたとおり、従来予想の1株当たり61円から20円増配し、1株当たり81円としました。これにより、中間配当金1株当たり61円と合わせ、当期の年間配当金は1株当たり142円となりました。

次期の配当金につきましては、株主への利益還元重視の観点から増配を維持することとし、当期の年間配当金より2円増配の1株当たり年間配当金144円(中間配当金72円、期末配当金72円)の配当予想としております。

 

(注)当事業年度に係る剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年10月29日

取締役会決議

1,511

61.00

2025年4月28日

取締役会決議

2,007

81.00

 

(注)1.2024年10月29日開催の取締役会の決議による普通株式の配当金の総額1,511百万円については、株式給付信託(BBT-RS)に関して信託が保有する当社株式に係る配当金百万円が含まれております。

2.2025年4月28日開催の取締役会の決議による普通株式の配当金の総額2,007百万円については、株式給付信託(BBT-RS)に関して信託が保有する当社株式に係る配当金10百万円が含まれております。