リスク
3 【事業等のリスク】
本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。なお、これらの記載は、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された項目以外のリスクも存在します。
また、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 市場変動
半導体市場は、IoT、AI、5G等の情報通信技術の用途の拡がりやDXの進展、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)への対応を背景としたデータ社会への移行が加速するなか、技術革新が続くことで中長期的にはさらなる成長が見込まれております。しかしながら、世界経済の動向や最終製品の需要、貿易・関税政策、地政学的要因等により、短期的には需給バランスが崩れ市場規模が変動することがあります。当社グループの売上高は、最先端の大手半導体メーカー等を中心とした投資動向の影響を受けやすい傾向にあり、半導体市場が急激に縮小した場合には、過剰生産及び在庫の増加、顧客の財務状況悪化による貸倒損失など、一方、急激な需要の増加に対応できなかった場合には、顧客に製品をタイムリーに供給できず、機会損失が生じるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、こうした市場変動に対応するため、市場環境や受注状況を取締役会等の重要会議において定期的にレビューするなど、常に最新の市場動向を把握した上で、設備投資や人員・在庫計画等の適正化を図っております。
また、当社グループは、世界中の幅広い顧客と緊密な連携を図る専門組織を設置し、顧客ニーズや投資動向をいち早く把握し、半導体需要の拡大に対応するために、販売体制及び顧客対応力の強化を図るとともに、新規顧客を開拓するなど顧客基盤の拡大に努めております。
(2) 研究開発
当社グループは、最先端技術について継続的な研究開発投資を実施し、当該技術を搭載した新製品を早期に市場投入することによって、各製品分野における高い市場シェアの獲得と高利益率の実現に成功してきました。しかしながら、顧客の技術要求に応える新製品をタイムリーに投入できない場合、また、開発した新製品が顧客要求に合致しなかった場合や競合他社による新技術・製品が先行投入された場合には、製品競争力を失い、開発コストの回収が困難となるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、コーポレートイノベーション本部を設置し、革新的な技術開発と各事業部門が持つ製品・技術を融合した独創的な技術提案を行うための全社的な開発体制を構築するとともに、グローバルに展開している研究機関との共同研究や最先端顧客との間で複数世代にわたる技術ロードマップを共有するなど、将来のニーズに対応した強いネクストジェネレーションプロダクトを常に競合に先立ち提供する体制を整えております。
(3) 地政学
当社グループは、売上高に占める海外売上高の比率が高く、様々な国・地域において事業を展開しております。国際秩序やグローバルなマクロ経済情勢に影響を与える地政学的な対立や地域紛争は、各国・地域の安全保障、外交政策、産業政策及び環境政策に影響を与え、その結果、サプライチェーンへの影響、マクロ経済環境の悪化等が発生することにより、当社の事業活動を制約し、グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、国際情勢や各国・地域の外交・安全保障上の措置、産業政策の動向を注視して、製品の輸出入や技術開発に関する規制、マクロ経済の変動による事業への影響を分析しております。これらへの対応策を事前に検討するとともに、政策当局や業界団体、有識者等との対話を行いながら、リスクの早期発見やリスク発現時の迅速かつ適切な対応にあたっております。
(4) 調達・生産・供給
当社グループは、主要な生産拠点を日本国内に有し、国内外の顧客に製品を供給しております。そのため、国内における地震や風水害の自然災害等の不可抗力による被害や事故等の発生を受け、生産が停止し、復旧に時間を要する場合には、顧客に製品をタイムリーに供給できない可能性があります。また、安定した製品の製造にはサプライヤーによる部品等の安定供給が欠かせません。災害や事故等のリスクに加え、サプライヤーの経営状態悪化、半導体市場の拡大に伴う供給能力を上回る需要、法改正や労働人口減少等により、部品の調達が滞った場合や国内外の物流網が逼迫した場合には、顧客に製品をタイムリーに供給できなくなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コーポレート生産本部を設置し、サプライチェーンに関する事業継続計画(BCP)などの策定と定期的なレビューを行うとともに、リスク低減に向けた対策を推進しております。例として、代替生産体制の確立、生産棟の耐震強化、生産の平準化、情報システムのバックアップ体制整備や重要部品のマルチソース化、適正在庫の確保等を進めております。また、半導体の需要予測をベースとしたフォーキャストをサプライヤーに共有する等の取り組みを進め、安定供給体制の確立に取り組んでおります。
(5) 安全
当社グループの製品の安全性に関する問題が発生した場合、受注取消や損害賠償責任が発生します。また、重大な人身事故が発生した場合には、当社グループの安全に対する意識や取り組み方が疑問視され、当社グループの社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、開発・製造・販売・装置据付・サービス・管理等の各業務の遂行における安全や健康に対する配慮を常に念頭において事業を進めております。この「Safety First」という方針のもと、製品開発段階でリスク低減を意識した本質的な安全設計を実践するとともに、現場作業においても危険予知ミーティングなどのリスクアセスメントを行うことで潜在的なリスクを特定して未然防止策を講じています。また、各従業員及び協力会社社員の業務に合わせた社内の資格認定と安全教育、顧客への装置トレーニング、事故報告システムの整備など、安全への取り組みを全従業員で継続的に推進しております。
(6) 品質
当社グループの製品は、多くの最先端技術が統合された製品であり、不具合が発生した場合には、リコール等の製品の回収、品質責任に基づく損害賠償責任や不具合対策費用の発生、また、当社グループのブランドイメージ及び信頼の低下につながるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、全社統一の品質方針のもと、ISO9001の認証取得、継続的改善活動の実践、従業員、協力会社社員及びサプライヤーに対する品質教育など、品質保証体制や最高水準のサービスの確立に向けて取り組んでおります。開発においては、設計の初期段階から営業、サービス部門と連携し、顧客のニーズに対応すべく技術的な課題解決を図り、さらにシミュレーション技術を使用した検証を徹底するなど、リスク軽減、解消に取り組んでおります。また、不具合発生時においては、根本原因を究明し、再発防止策・類似不具合の未然防止策の実施・徹底を進めております。調達部品の品質管理においても同様に、常にサプライヤーの品質状態を把握し、監査、改善支援等を実施しております。
(7) 環境対応
当社グループを取り巻くステークホルダーをはじめ、世界全体でサステナビリティに関する社会的要請が高まっており、特に喫緊の課題である気候変動に対する取り組みは急務です。このような状況のもと、脱炭素社会への移行に伴う各国の気候変動政策、環境法令や業界行動規範、技術革新や顧客ニーズ等に適切に対応できなかった場合には、新規製品の開発、仕様変更、改造等の追加対応の費用発生、製品競争力の低下、社会的信用の低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、E-COMPASSプログラムを展開し、あらゆるお客さま、お取引先さまとのパートナーシップによりサプライチェーン全体での地球環境保全に取り組んでおります。環境法令や業界行動規範の遵守はもとより半導体デバイスの高性能化や低消費電力化に寄与する技術の提供、また業界をリードする環境目標の達成に向けて製品使用時の温室効果ガス排出量削減や事業所における再生可能エネルギーの使用比率の向上及びエネルギー使用量低減に努めております。そのほか、梱包材の見直し、モーダルシフトの推進など、事業活動を通じて地球の環境保全に取り組んでおります。
(8) 法令・規制
当社グループは、グローバルに事業を展開する上で、各国・地域において、輸出入規制、環境法、競争法、労働法、汚職・贈賄を含む様々な分野の法令、規制による制約を受けており、その遵守に努めております。しかしながら、各国・地域の法令・規制に抵触した場合には、社会的信用の低下、課徴金・損害賠償、事業の制限などが発生する可能性があります。また、各国・地域における安全保障上の政策や予期せぬ法令・規制の改正が生じた際に適切に対応できなかった場合には、その対応に要する費用負担や事業の制限等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、チーフ・コンプライアンス・オフィサーのもと、国内外主要拠点においてコンプライアンスに関する活動状況を把握する体制を構築するとともに、法令や企業倫理上疑義のある事項を早期発見し、すみやかに対策を講じるため、当社グループ統一の内部通報制度を運用しております。また、各国・地域の法令・規制を踏まえて当社製品が遵守すべき規格や仕様等を網羅的に整理し、適切なオペレーションを支える製品コンプライアンス活動をリスク管理の一環として実施しています。
(9) 知的財産
当社グループの製品は、多くの最先端技術が統合された製品であり、知的財産の権利化と第三者による権利侵害の防止は、製品の差別化と競争力強化の上で重要な要素となります。第三者が保有する知的財産権を侵害した場合には、当社グループ製品の生産・販売が制約され、損害賠償金の支払が発生すること等が考えられ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、知的財産戦略を事業戦略及び研究開発戦略と三位一体で推進することにより、適切な知的財産権ポートフォリオを構築しております。また、他社特許を継続的にモニタリングし、事業及び研究開発部門と連携して適切な対策を講じることで他社特許の侵害を回避する体制を構築しております。
このような取り組みを通じ、製品競争力の向上及び他社特許の侵害リスクの低減を図り、各製品分野における高い市場シェア獲得と利益率向上に努めております。
(10) 情報セキュリティ
社会全体のデジタル化が進む中、第三者による不正アクセスやコンピュータウイルス等によるサイバー攻撃は世界的に増加傾向にあります。このような環境下において、当社グループ及びサプライヤーに対するサイバー攻撃、内部不正等による情報漏洩やサービス停止等が発生した場合には、競争力・技術的優位性の棄損、製品生産活動を含めた業務の停止、社会的信用の低下や損害賠償の発生等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、サイバーセキュリティに関するソリューション導入やセキュリティ監視、内部不正対策といった技術面・運用面の対策に加えて、グローバルセキュリティポリシーの全社的な展開、教育・啓発・訓練を通じて、情報資産の適切な管理・保護に努めております。
また、情報セキュリティ委員会を設置することでグループ各社を含めた組織的強化を図るとともに、情報セキュリティに関する内部監査と外部機関によるアセスメントなどの活動を通じて、情報セキュリティ対策の実効性強化に努めております。
(11) 人材
当社グループがグローバルな事業展開を進めるなか、イノベーションを創出し成長を続けるためには、国内外で多様な人材を確保し育成することやダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを実践することが重要となります。しかしながら、必要な人材を継続的に採用・維持することができない場合、また、多様な価値観・専門性を持った人材が個性を発揮して活躍できる環境が整備できない場合には、製品開発力の低下や顧客サポートの質の低下を招き、競争優位性のある組織が実現できないなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、従業員は持続的な価値創出の源泉であり、従業員のエンゲージメントを高めることは企業価値向上において最も重要な要素と考えております。具体的には、当社CEOによる定期的な社員集会を通じた方向性の共有、今後を担う人材を継続的に輩出するための育成計画の構築、従業員のキャリアパスの見える化、魅力的な報酬・福利厚生の提供、長時間労働・ハラスメントの防止を含めた労働環境の継続的な改善や健康経営の推進等に取り組んでおります。加えて、産官学連携の半導体人材育成やグローバルでの大学とのパートナーシップの強化を進めております。
(12) 感染症・自然災害等
当社グループがグローバルな事業展開を進めるなか、世界各国または一部の地域で大規模な感染症の流行や自然災害、テロ等が発生し、当社グループの役員・従業員等やその家族の安全への影響、拠点運営の停止や各国間の移動が制限されるような事態となった場合、本社機能を含むグループ全体の事業活動等に影響を与える可能性があります。
当社グループはこれらのリスクに対して、万が一の事態であっても被害を最小限にし、すみやかに事業継続のための体制を整えられるようにするため、事業継続計画(BCP)を土台として、役員・従業員やその家族の安否を確認するための安否確認システムの導入や防災訓練、役員・従業員等の防災意識向上の取り組み等に努めています。
(13) ファイナンス
当社グループは移転価格税制等、各国・地域における税法及びその他の関連諸規定等に適切に対応できるよう努めていますが、当局との適用税法等の解釈に相違が生じた場合、当局からの指摘を受け追加の税負担が生じる可能性があります。
各国・地域における経済環境、国際情勢、金利変動等の要因により、急激な為替変動があった場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当社製品の取引を原則円建てで行っていることに加えて、一部の外貨建売上等についても為替予約などによるリスクヘッジを行っております。
当社グループはこれらのリスクに対して、ファイナンス担当役員のもとファイナンス本部が経営戦略本部や各グループ会社のファイナンス部門責任者と連携することでグローバルにリスク管理する体制を整えています。
(14) M&A
当社グループは、既存市場や新規市場における企業や技術等の買収または投資を行う場合があります。買収対象の企業や事業のデューデリジェンス、または買収した企業や事業のPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)が十分でないことによって、企図した成果やグループ企業間の相乗効果を実現できない可能性があります。また、潜在的なターゲットを競合他社等に買収される等により、当社グループの競争力に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはこれらのリスクに対して、経営戦略本部を中心に議論を行い、当社CEOを含む幹部会議で定期的に対応方針をレビューするなど、当社グループとのシナジー効果とリスクを考慮した投資判断を行うとともに、買収や出資後にも戦略とリスクを踏まえた計画を策定・実行するよう努めています。
(15) IT&オペレーション
当社グループは、販売活動、サプライチェーン、研究開発、財務報告等を統合的に管理するため、大規模な基幹システムを活用しています。これらのシステムに重大なシステム障害が発生した場合、全社的な業務の中断や適切な財務報告が阻害されることなどにより、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
また、デジタル化や業務プロセス改革等の遅延によって、今後増加するビジネスや新たな規制等に対応したオペレーションが効果的・効率的に実行されない可能性があります。
当社グループはこのようなリスクに対して、ITシステムに関する事業継続計画(BCP)を策定するとともにDR(ディザスターリカバリー)データセンターを活用して、バックアップシステムによる運用訓練を実施しています。また、業務改革DX推進プロジェクトを立ち上げ、社内全般の業務プロセス及びシステムについて、生産性向上、規制等の遵守、強靭化などの様々な観点から見直しを行い、リスク管理に努めています。
(16) 拠点展開
当社グループはグローバルな事業展開を進めており、今後もさらなる拠点展開や運営の強化を推進します。新規ビジネスの増加に対する拠点戦略の検討が不十分もしくは投資計画の実行遅延、不十分な人員配置等によって、新規拠点の展開や既存拠点の強化・統制が効果的・効率的に実行されない可能性があります。
当社グループはこれらのリスクに対し、事業戦略と整合する拠点戦略を策定し、実行しています。また、各拠点の運用に関しては、各国・地域を統括するグループ会社によって、各事業や各国・地域の特性に応じた円滑な運営及びリスク管理に努めています。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、利益成長を通じて企業価値向上を図るべく、内部留保資金を有効活用し、成長分野に重点的に投資するとともに、業績連動型配当により、株主各位に対して直接還元してまいります。
株主還元策
当社の配当政策は業績連動型を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%を目処とします。ただし、1株当たりの年間配当金は50円を下回らないこととします。なお、2期連続で当期利益を生まなかった場合は、配当金の見直しを検討します。
また、自己株式の取得については、機動的に実施を検討します。
当事業年度の配当につきましては、連結業績に上記方針を適用し、中間配当として1株当たり265円、期末配当として1株当たり327円といたしました。これにより、年間配当金は、1株当たり592円となりました。
なお、当社は剰余金の配当の回数については、中間配当と期末配当の年2回を基本としており、また、その決議機関については、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議によって配当をおこなうことができる旨を定款に定めております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
|
2024年11月12日 |
取締役会決議 |
122,508 |
265 |
2025年 5月 9日 |
取締役会決議 |
150,254 |
327 |