2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び対策に努めてまいります。ただし、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経済状況

・背景事情およびリスク

 当社グループは主に当社グループが管理運営するファンドの資金を使って、日本・アジア・米国で未上場株式等への投資を行っております。当社グループはファンドからの管理報酬及び成功報酬に加え、ファンドに自己資金を出資することにより、投資成果であるキャピタルゲインをファンドの他の出資者とともに享受します。

 なお、当社は2025年4月に、国内投資に集中し、アジア・米国で当社グループが運用するファンドに今後は出資しないことと合わせて、海外子会社の譲渡 (予定を含む)を決定しています。JAFCO アジア及び ICON Ventures が運用する既存ファンドの当社出資持分は継続保有し、今後は大口出資者として関与することとなります。

 ファンドのパフォーマンスは、日本、アジア地域及び米国の政治・経済・社会情勢や株式市場の動向に影響を受けます。不況に陥った場合には、投資先企業の業績不振につながる可能性があり、また起業環境が悪化することで、当社グループの投資対象となりうるスタートアップの数が減少する可能性があります。未上場株式等への投資は、投資からEXITまで数年程度の期間を要するため、EXIT時点での株式市場やIPO市場が低調な場合には、ファンドが保有する株式等の流動化機会が限られる可能性があり、またファンドが得るキャピタルゲイン及び成功報酬も大きく変動する可能性があります。さらに、地政学的なリスク、感染症の世界的流行その他の要因により、世界の広範囲において経済や株式市況が悪化する場合は、当社グループにおける地域的なリスク分散の効果を発揮できない可能性があります。こうした場合は、ファンドのパフォーマンスに影響し、ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社グループでは、ベンチャー投資とバイアウト投資という異なる性質のアセットクラスを有することにより、市況の影響を抑え、経営の安定化を進めています。ベンチャー投資は、創業期から成長期のスタートアップを投資対象とすることで高い成長期待が持てる一方、保有期間も長く、変動性が高いという特性があります。バイアウト投資は、一定の収益力を持つ中小・中堅企業を中心に 投資を行うことで、3倍程度の投資倍率を安定的に狙うという特性があります。また、当社グループが運用する未上場企業投資ファンドは、通常3年半前後の期間をかけて投資先企業の組入れを行うため、時間的にも一定期間に渡る分散が行われることになります。さらに、IPOに限らずM&A等によるEXIT(売却)の機会も絶えず追求しており、株式市場やIPO市場の動向が当社グループの収益基盤へ与える影響を低減できるように努めています。合わせて、現状のポートフォリオにおいては、日本・アジア・米国とグローバルに投資を行うことにより地域的なリスクの分散を図っています。

 

(2)未上場株式等への投資

・背景事情およびリスク

 当社グループ及びファンドは、未上場株式等を投資対象としており、その中でも近年では創業期のシードや事業立ち上げ時期のアーリーステージの割合が高まっています。シード・アーリーステージ段階にある企業の潜在力を見極めることは容易ではなく、高い潜在成長力を有する企業への投資機会を逸した結果、当社グループ及びファンドが大きな投資収益をあげることができない可能性があります。未上場企業は一般に収益基盤や財務基盤が不安定であるばかりでなく、売上がないまたは僅少である場合も多く、経営資源に制約があること等から、景気や市場動向、競争状況等の影響を受けやすく、事業の不確実性が高いといった特徴があります。経営体制や管理体制が未整備であることが多く、そのためコーポレート・ガバナンスが機能しなかったり、内部統制上の不備が生じてしまうことで、その事業の継続性に重大な影響をもたらすこともあります。

 また、投資先企業の事業が当初の計画通りに進捗せず、財務状況が悪化した結果、他社への事業売却、倒産等に至り、投資資金が全く回収できない場合もあります。さらに、投資先企業の株式上場や第三者との組織再編、事業売却等M&A等による出口が保証されているものではなく、株式上場やM&A等があった場合であっても、その株式等を、投資コストを上回って売却できる保証はありません。加えて、未上場株式等は、上場株式等に比べ、発行体情報の正確性が保証されておらず、流動性が著しく劣る等の性質があるため、未上場段階で売却を行う場合には、その価格が想定を大きく下回ることがあります。未上場株式等への投資にはこうしたリスクが存在することから、ファンドのパフォーマンスに影響し、ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社グループでは、有望企業を厳選し、1社あたりの投資金額と保有シェアを高め、投資先企業への経営関与を強化しています。

 当社グループにおける投資判断は、日本・アジア・米国の拠点ごとに設けた所定の委員会において行っています。投資委員会では、投資検討先が対象とする市場の成長性、製品/サービスの革新性や競争力といった事業性、マネジメントチームの評価、投資採算や投資条件、想定する投資後の企業価値向上策やEXIT戦略、さらにはリスクや事業のサステナビリティなどの観点から議論を行った上で投資の可否を決定します。

 投資後は、成長ステージなど投資先企業ごとの状況に応じて、人材採用、営業・マーケティング、大手企業との資本・業務提携、管理体制整備・上場準備、追加の資金調達といった面でのサポートを提供しています。

 未上場投資先の状況は、投資委員会・ポートフォリオ会議等の場で定期的に把握し、これらの内容を投資先企業の評価に反映するとともに、個別に価値向上のための各種支援を行い、課題に対する適切な対応を検討しリスクの最小化に努めています。その際、当社グループが培ってきた豊富なリソースとネットワークの蓄積を活用します。

 このようにして投資先の事業の成長と企業価値の向上を図り、キャピタルゲインと投資倍率の向上に努めています。

 

(3)専業であること

・背景事情およびリスク

 当社グループは、ファンドの管理運営、日本・アジア・米国での未上場株式投資に経営資源を集中し事業活動を行っており、現状では未上場株式投資以外に事業を拡大することは考えておりません。当業界は世界の政治・経済・社会の情勢変化や世界各国の株式市場・IPO市場の影響を強く受ける業態であるため、このような変化等が当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社では、2018年3月に導入したパートナーシップモデルを進化させ、これまでに蓄積してきた組織基盤との協働を図りながら、投資運用力の向上によるファンドパフォーマンスの向上やファンド募集力の強化を目指しています。2025年4月以降においては、国内の未上場株式投資に経営資源を集中させることで、より一層、投資運用力とファンド募集力の向上を図ります。

 

(4)競合

・背景事情およびリスク

 当社グループの主たる業務である未上場株式投資では、当社グループに類する専業のベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンド、事業会社によるいわゆるコーポレートベンチャーキャピタルといった競合他社との間で、有望な未上場企業への投資案件獲得競争が激しさを増しております。こうした競合状況により有望企業への投資機会を逸した場合や、必ずしも当社グループが望む条件ではない場合は、十分なキャピタルゲインをあげることができず、ファンドのパフォーマンスに影響し、ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社は、2018年3月に導入したパートナーシップモデルを進化させ、同時にこれまでに蓄積してきた組織基盤やネットワークも活用して投資先企業の成長をサポートすることで競合他社との差別化を図り、ファンドパフォーマンスの向上を目指しています。2025年4月以降においては、国内の未上場株式投資に経営資源を集中させることで、より一層、投資運用力とファンド募集力を向上させ、競合との差別化を図ります。

 当社は創業以来、様々な革新的製品やサービスを、起業家とともに生み出してきました。「新事業の創造にコミットし、ともに未来を切り開く」という、創業時からの変わらぬ想いを当社のミッションに掲げ継続的に社内に浸透を図ると共に、「起業家のいちばん近くに」というブランドスローガンと「CO-FOUNDER」というアイデンティティを掲げ、当社の投資スタンスについてスタートアップを率いる起業家に訴求しています。また、当社HPやオウンドメディア等を通じて、当社の投資活動や投資先企業の成長をサポートするビジネスディベロップメントの取り組みを実例と共に紹介することで、経営に深くコミットメントする当社のスタンスの理解を促進し差別化を行っています。

 

(5)株価下落

・背景事情およびリスク

 当社グループが保有する上場株式の株価の下落は、ファンドのパフォーマンスならびに当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、厳選集中投資により当社グループ及びファンドによるIPO時点の持株比率が比較的高い水準である場合は、株価下落による悪影響が一層大きくなり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 投資先企業のIPO後は、株式市況、取得コストや保有残高、株価、出来高の動向、当該投資先企業の事業の状況、当該株式を保有するファンドの契約期間等を総合的に勘案しながら、当社グループ及びファンドが保有する株式を売却しています。また、上場株式の複数の流動化手法を活用しており、買い手となる機関投資家との間で証券会社を介して諸条件が折り合った場合、「ブロックトレード」と呼ばれる相対取引等により一定程度まとまった株数を売却することもあります。

 

(6)為替レートの変動

・背景事情およびリスク

 当社グループでは、日本だけでなく、アジア・米国を主とする海外の未上場株式を保有しております。海外投資で保有する資産は、米ドルを中心とする外貨建であるため、為替レートの変動は、ファンドのパフォーマンスに影響します。未上場株式等への投資は、多くが投資からEXITまで数年程度の期間を要し、その間の為替レートの変動の影響を完全に払拭することは困難であり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社グループが運用する未上場企業投資ファンドは、通常3年半前後の期間をかけて投資先企業の組入れを行います。また、組入れ後の株式売却及び当該売却代金の分配は、ファンド運用期間(通常10年間)満了までの期間にわたって行われます。その結果、現在当社グループが保有している外貨建て資産は一定期間に渡る時間分散が行われており、また、当該外貨建て資産を流動化する際の為替レートについても、同様に一定期間に渡る時間分散が行われることになります。

 

(7)ファンド募集

・背景事情およびリスク

 当社グループにおける投資は、基本的にファンドの資金を使って行っております。当社ファンドの出資者は主に、運用を目的とする金融機関等の機関投資家層や、スタートアップとの接点を求める事業会社です。また、当社は当社グループが運営管理するファンドに一定の自己資金を出資することで、継続安定的にファンドを組成してリスクマネーを供給するという社会的使命を果たすとともに、キャピタルゲインの獲得機会としてきました。

 また当社は、2022年12月に公表した「企業価値向上の基本方針」において、成長戦略の推進と資本効率の向上のため、新設ファンドサイズを対象マーケットにあわせて段階的に拡大させる一方で、当社の出資比率は段階的に低減させ、中長期的には新設ファンドへの当社出資比率を20%にすることとしています。

 政治・経済・社会情勢その他ファンド募集に係る環境の悪化、ファンドパフォーマンスの低迷、ファンド条件や管理運営手法に対するファンド出資者ニーズとの乖離といった要因により、今後のファンド募集において想定通りに外部の出資者から十分な資金を集めることができない場合、投資活動に支障をきたす可能性があるほか管理報酬および成功報酬が減少し、また、想定通りに自己資金での出資ができない場合はキャピタルゲインが減少し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 ファンド出資者に対しては、ファンドの運用状況、投資先企業の事業の状況等に関する定期的なレポートを送付するほか、出資者のニーズに応じて随時面談し、コミュニケーションを図っています。こうして、運用の透明性を確保するとともに、出資者が必要としている情報を提供することで、信頼関係の醸成に努めています。

 また、当社はファンド募集と出資者対応を主な業務とするファンド運用専門の部門を有しています。投資先企業の製品・サービスの紹介や、セミナー等のイベント開催など多様な接点を通じて、ファンドの社会的意義、当社の投資活動やファンド運用に対する理解を深めてもらう機会をつくることで、潜在的なファンド出資者の開拓を継続して行っており、今後のファンドの募集に向けては、海外投資家や年金、投資信託など出資者層の拡大のための取り組みを推進しています。

 主に日本国内でのベンチャー投資及びバイアウト投資を行う直近の基幹ファンド(ジャフコSV7シリーズ)における外部出資比率は80%、当社出資比率は20%となり、当初目標に対し前倒しで進捗しています。ファンド募集は、新規投資の組入期間に合わせて、3年半前後の周期で行うこととしており、「企業価値向上の基本方針」における中長期的目標の達成を目指し、新設ファンドサイズを対象マーケットにあわせて段階的に拡大させる一方で、当社の出資比率は段階的に低減させ、新設ファンドへの当社出資比率を20%にしていきます。

 「企業価値向上の基本方針」における中長期的目標については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)会社の対処すべき課題 3)中長期的目標」をご参照ください。

 

(8)情報の管理

・背景事情およびリスク

 世界的にサイバー攻撃の脅威が高まる中、今後、外部からの不正アクセス、役職員その他の関係者の悪意または過失による流出等といった事態により当社が保有する重要な情報が漏洩した場合は、損害賠償請求や社会的信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社グループでは、外部のセキュリティ専門コンサルタントによるシステムリスク評価を実施すること等により課題の把握と対策の推進に努めています。

 サイバーセキュリティ対策としては、ファイアウォールの整備、マルウェア対策やデータ暗号化を実施・強化しております。また、当社グループが保有する取引先の重要な情報及び個人情報の管理については、情報管理規程、プライバシーポリシー及び各種社内規程等の制定、役職員への周知徹底、情報システムのセキュリティ強化等、情報管理体制の整備を行っております。加えてペーパーレス化を積極的に推進することで役職員が書類を社外に持ち出す機会を減らし、重要書類の紛失リスク低減を図っております。さらに、役職員に対し通達や研修等を通じて情報セキュリティに関する意識の涵養に努めております。

 

(9)法的規制

・背景事情およびリスク

 当社グループは、ファンドの運営管理、未上場株式投資を日本・アジア・米国を中心に行っており、その活動にあたっては日本及び各関係国の種々の法的規制(会社法・独占禁止法・租税法・金融商品取引法・投資事業有限責任組合契約に関する法律・外国為替管理法・マネロン対策関連・財務会計関連等)を受けることとなります。法的規制が及ぶことにより当社グループの活動が制限される場合及びこれら規制との関係で費用が増加する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社グループでは、管理部門を中心とする関係部署が業務に係る法的規制の導入・改廃に関する情報収集と対応を行っております。

 

(10)法令違反等

・背景事情およびリスク

 当社グループでは、当社グループ及びその役職員が、投資活動における関連法規や各種の契約等への違反、ファンドの無限責任組合員又はゼネラルパートナーとしての善管注意義務違反、又は業務上の過誤や不祥事等により、投資先企業、ファンド出資者その他の第三者に損害を与えた場合は、当該損害に対する賠償責任を当社グループが負う可能性があります。さらに、こうした法令違反等による社会的信用の低下や監督当局の行政処分等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社グループでのコンプライアンスに係る情報は、コンプライアンスへの取り組み全般を統括するコンプライアンス・オフィサーに集約されます。各部門の長が担当部門におけるコンプライアンス責任者として日常におけるコンプライアンスを推進し、統括部署としての管理部がその取り組みを支援・管理するとともに、内部監査部門がこうした状況を監査します。管理部門は法令等の制定・改廃に関する役職員への情報発信や、コンプライアンスに係る研修や勉強会を実施しています。万が一法令や社内規則等に抵触する事案や事務事故等が発生した場合は、コンプライアンス・オフィサーとコンプライアンス統括部署に情報集約した上で、当面の善後策の検討・実施と再発防止の徹底を図ります。

 また当社は、法令違反、ハラスメントを含む人権侵害等のコンプライアンスに係る事項の通報制度を設けています。コンプライアンス・オフィサー、管理部門および独立社外取締役を通報窓口とする内部窓口に加え、当事業年度には顧問関係などにない独立性の高い社外法律事務所の弁護士による外部窓口を新たに設けました。これに加え、本制度の利用対象者の拡大を行い、当社の役職員だけでなく、採用内定者、投資先・投資検討先、お客様、取引先など、当社の業務に関係するすべての方が、本制度を利用可能とし、対応を強化しています。

 

(11)役員派遣

・背景事情およびリスク

 当社グループは、投資先企業の価値向上のため、役職員を投資先企業の役員として派遣することがあります。しかし、その役職員個人に対し役員損害賠償請求等があった場合、当社グループによるその個人に生じた経済的損失の全部又は一部の負担、当社グループの使用者責任や社会的信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 投資先企業において可能な範囲で会社役員賠償責任保険(D&O保険)の付保や責任限定契約を締結するとともに、当社加入のD&O保険では役員派遣されている役職員も補償対象に加えております。

 

(12)有能な人材の確保や育成

・背景事情およびリスク

 当社グループの将来の成長と成功は、その事業の特性上有能なベンチャーキャピタリスト等の人材に大きく依存します。採用における競争環境の激化等により有能な人材を確保できなかった場合には、当社グループの将来の成長、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、有能な人材を確保・育成し定着させるためには費用が増加する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社では、多様なバックグラウンドがある優秀な人材の確保やリテンション、社員に対する処遇の適正化・モチベーションの維持向上を実現していくこと等を目的として、2024年1月に人事制度の改定を行い、当事業年度より適用を開始しました。評価グレード毎の期待役割をより明確にし、成果連動報酬の上限引上げ等により成果に報いる設計とし、また、当社の強みである組織力・カルチャーの維持・発展のため、当社のバリューを軸とした行動評価指標も新たに加えた制度となります。

 加えて、継続的に行ってきた新卒採用と、積極的な中途採用活動により人材を獲得し、若手職員についてはインストラクターやメンターとして任命した役職員がサポートするなど、OJTを中心にその育成に取り組んでいます。2018年3月よりパートナーシップモデルを導入し、実績ある個人(パートナー)が投資運用の重要な意思決定を行い、ファンドパフォーマンスにコミットするとともに、ファンドの運用成果を個人が享受できる仕組みとしました。あわせて、投資の成果に対する直接・間接の貢献に応じ、職員が成果配分を受ける制度を設けています。また、フルフレックスタイム制、オフィスのフリーアドレスやリモートワークの推進、副業を推奨するなど柔軟性が高いワークスタイルを導入するとともに、職員の健康面や人事制度面においても各種施策に取り組んでおります。さらに、当社グループの強みを継続させるためカルチャーの醸成・浸透を図り、職員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できるよう取り組んでおります。こうした制度・施策を実施することで、多様なかつ優秀な人材の確保・育成に努めております。

 

(13)感染症や自然災害の影響

・背景事情およびリスク

 新たな感染症の出現・拡大等により、売上減少や資金調達難という影響を受ける投資先企業が再び増える場合は、当社グループで投資損失引当金を繰入れるケースが増加するリスクや、投資先企業のIPO、 M&AなどのEXITが低迷するリスクがあります。

 また、感染症の流行のほか、地震・台風等の自然災害やテロ活動等により人的・物的損害やシステム障害といった事象が発生し、当社や投資先企業等の事業活動に制約が生じる可能性があります。当社では事業の継続のため情報システムのクラウド化などの措置を図っていますが、こうした事態がファンドのパフォーマンスに影響し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 当社グループでは、新型コロナウイルス感染症の拡大に対し、役職員や顧客等の健康と安全を最優先して感染拡大防止を図るとともに、投資先企業の資金調達、コスト削減、収益計画の抜本的見直し等に、投資先の経営陣らとともに取り組みました。当該知見を活かし、今後の新たな感染症の出現・拡大等が発生した場合も同様に対応を行うことでリスク低減を図ります。

 

(14)ESG関連

・背景事情およびリスク

 企業経営や投資活動においてESGやサステナビリティの観点が重要視され、当社においても継続的に取り組んでいくことが求められています。

 当社におけるサステナビリティ実現への取り組み、ひいては当社のESG関連リスクへの対応が脆弱であると認識された場合、また、こうした取り組みへの開示が十分でないとみなされた場合は、当社のステークホルダーからの支持が得られずに、ファンド募集や投資活動、人的資本の確保に悪影響を及ぼし、当社グループの企業価値の毀損、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

 「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

配当政策

3【配当政策】

 当社は、2022年12月に公表した「企業価値向上の基本方針」において、配当の基本方針や必要資金に対する考え方を明確にしました。

 当社の株主還元についての方針は、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載した「株主還元についての方針」をご参照ください。

 また、当社は、当事業年度より中間配当を開始し、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としておりますが、株主への機動的な利益還元を行うことを目的に、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨定款に定めております。

 

(当事業年度の配当)

 上記方針に基づき、当事業年度の年間配当金額は、DOE(当期首期末平均株主資本に対する年間配当金額の割合)3%と配当性向50%のいずれか大きい金額としております。加えて、当社は当事業年度よりDOE(前期末株主資本に対する年間配当金額の割合)1.5%を基準とした中間配当を開始しております。

 そのため、当事業年度の期末配当額は、上記配当方針に基づき算定した年間配当金額から中間配当額を控除し、1株当たり56円(※)の配当を実施することにいたしました。

 

(※)当事業年度の年間配当金額は、配当性向50%(1株当たり88円)がDOE(当期首期末平均株主資本に対する年間配当金額の割合)3%(1株当たり65円)を上回るため、1株当たり88円とすることにいたしました。そのため、当事業年度の期末配当額は、本年間配当金額から中間配当額(1株当たり32円)を控除して、1株当たり56円といたしました。

 

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年10月25日

1,746

32

取締役会決議

2025年5月12日

3,055

56

取締役会決議

 

(翌事業年度以降の配当)

 翌事業年度以降の年間配当金額につきましては、上記配当方針を見直し、DOEに用いる株主資本の算定基準を「期首期末平均」から「前期末」に変更した上で、DOE(前期末株主資本に対する年間配当金額の割合)6%と配当性向50%のいずれか大きい金額とする方針といたしました。中間配当につきましても、DOE(前期末株主資本に対する年間配当金額の割合)3%を基準といたします。