2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    467名(単体) 54,106名(連結)
  • 平均年齢
    43.8歳(単体)
  • 平均勤続年数
    13.5年(単体)
  • 平均年収
    12,183,576円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2025年3月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(人)

国内損害保険事業

23,458

(2,333)

海外保険事業

7,675

(78)

国内生命保険事業

2,697

(0)

介護事業

14,078

(12,047)

その他(保険持株会社等)

6,198

(1,470)

合計

54,106

(15,928)

 

(注)1 従業員数は、当社グループ会社との兼務者を含んでおります。また、当社グループから社外への出向者を除き、社外から当社グループへの出向者を含んでおります。

2 従業員数の( )内には、臨時従業員の年間の平均雇用人員数を外数で記載しております。

3 臨時従業員には、パートタイマーを含み、派遣社員を除いております。

 

(2) 提出会社の状況

2025年3月31日現在)

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

467

(0)

43.8

13.5

12,183,576

 

(注)1 従業員数は、当社グループ会社との兼務者を含んでおります。また、当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含んでおります。

2 従業員数の( )内には、臨時従業員の年間の平均雇用人員数を外数で記載しております。

3 臨時従業員には、パートタイマーを含み、派遣社員を除いております。

4 提出会社の従業員は、すべて「その他(保険持株会社等)」に属しております。

5 平均年間給与には、賞与および基準外賃金を含んでおります。

 

(3) 労働組合の状況

当社には労働組合はありません。

なお、労使関係については円滑な関係にあり、特記すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異

 ① 提出会社

管理職に占める

女性労働者の割合(%)

男性労働者の

育児休業取得率(%)

労働者の男女の賃金の差異(%)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

8.4

90

71.6

74.8

100.0

 

(注)1 管理職に占める女性労働者の割合および労働者の男女の賃金の差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2 男性労働者の育児休業取得率については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3 管理職に占める女性労働者の割合は2025年4月1日現在の実績、その他の指標は当事業年度の実績を記載しております。

4 正規雇用労働者において男女の賃金の差異が生じている主要因は、相対的に賃金水準が高い管理職の男性比率が高いためであり、職務等が同じである場合は、性別による賃金の差異は発生しない給与制度となっております。

 

 

 ② 連結子会社

名称

管理職に占める

女性労働者の割合

(%)

男性労働者の

育児休業取得率

(%)

労働者の男女の

賃金の差異(%)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

損害保険ジャパン株式会社

11.5

83

48.2

47.2

54.0

SOMPOダイレクト損害保険
株式会社

24.4

100

74.8

74.5

63.9

SOMPOコミュニケーションズ
株式会社

16.2

71

89.8

77.4

96.0

SOMPOひまわり生命保険
株式会社

30.4

100

55.6

59.7

49.2

SOMPOケア株式会社

32.3

40

67.3

84.9

87.8

エヌ・デーソフトウェア株式会社

12.1

92

68.2

78.2

63.0

SOMPOケアフーズ株式会社

41.0

対象者なし

64.0

85.7

96.7

日本コンピュータシステム株式会社

8.9

100

75.5

75.9

65.9

SOMPOアセットマネジメント
株式会社

12.0

SOMPOリスクマネジメント
株式会社

12.0

100

73.2

74.4

68.6

株式会社プライムアシスタンス

26.1

76

82.2

78.5

68.0

SOMPOシステムズ株式会社

10.3

44

74.3

76.7

58.5

損保ジャパンパートナーズ
株式会社

25

60.1

67.6

50.4

SOMPOコーポレートサービス
株式会社

23.7

100

62.6

61.2

73.1

SOMPOチャレンジド株式会社

63.6

SOMPOビジネスサービス
株式会社

83.1

対象者なし

62.2

72.3

57.3

 

(注)1 管理職に占める女性労働者の割合および労働者の男女の賃金の差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、同法に基づき公表を行う会社のみ数値を記載しております。

2 男性労働者の育児休業取得率については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであり、同法に基づき公表を行う会社のみ数値を記載しております。

3 管理職に占める女性労働者の割合は2025年4月1日現在の実績、その他の指標は当事業年度の実績を記載しております。

4 労働者の男女の賃金の差異が生じている主要因は、各社によって異なりますが、男女間における全国転勤型であるか否か、職種、管理職人数または短時間勤務者等の人数の差異等によるものであり、従業員区分、職種、職務、役職および勤務時間等が同じである場合は、いずれの会社においても性別による賃金の差異は発生しない給与制度となっております。

 

当社のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに関する取組みについては「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)戦略 ②グループの重点課題における取組み イ.原動力となる人的資本(グループ共通)」に記載のとおりであります。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。また、文中の非財務KPIの各数値については、本有価証券報告書提出日現在において、予測できる事情などを基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

当社グループでは、パーパスとして「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」を掲げております。このパーパスの実現を通じて、持続可能な社会への貢献および当社グループの持続的な成長を目指してまいります。

 

(1)ガバナンス

グループCSuO(Chief Sustainability Officer)は、サステナビリティ領域の最高責任者として、パーパス浸透とサステナブル経営戦略の策定・実行を担っております。グループCSuOの役割のうち気候変動・生物多様性およびビジネスと人権といったグループのサステナブル経営戦略については、グループCSuOを議長とする「グループサステナブル経営推進協議会」において、関連するリスク・機会を踏まえた対応について協議することで、グループCSuOの意思決定を支援するなど、グループ全体のサステナビリティ推進体制を構築しております。また、グループCSuOの業務執行のサポート機能としてサステナブル経営推進部を設置しております。

パーパス実現の原動力である人的資本については、グループCHRO(Chief Human Resource Officer)が、人事領域の最高責任者として、人的資本の価値を最大化する役割を担っております。

リスク管理については、取締役会が定める「SOMPOグループERM基本方針」に基づいてリスクコントロールシステムを構築しております。グループCRO(Chief Risk Officer)は、各事業の抱えるリスクを網羅的に把握・評価し、そのうち当社グループに重大な影響を及ぼす可能性がある重大リスクについては、グループCEOの諮問機関であるグループ執行会議の下部組織であるグループERM委員会においてコントロールの状況を確認・議論したうえで、定期的に取締役会およびグループ執行会議等に報告しております。

取締役会は、グループ全体の戦略や方針を定めるとともに、パーパス実現に向けた執行状況を監督しております。

 

※個別課題の検討や、グループサステナブル経営推進協議会での議論内容を踏まえた情報共有・施策実行を進めるため、2025年5月よりグループサステナブル経営推進協議会の下部組織として「資産運用」、「保険引受」、「ビジネスと人権」、「環境マネジメント」の4つのワーキンググループを設置しております。

 

(2)戦略

① パーパス実現に向けた重点課題

当社グループが創りたい未来はどのようなものか、その未来の実現に向けてどのような社会課題に向き合い長期的視点でどのような姿を目指していくのか、そのために各事業はどのような戦略を持ちどのような価値を提供していくのかを「パーパスに込めた想い」として策定しております。

 

パーパスに込めた想い

“安心・安全・健康”であふれる未来へ

それは、個人も企業もリスクにおびやかされることなく、

いつどんな時でも、ありたい姿に向かって歩んでいける、豊かで笑顔あふれる未来。

人生100 年時代、そして世界が日々著しく変化する時代に、

挑戦を恐れることなく、しなやかに前向きに、成長をし続けられるように。

SOMPOグループは、事業、国、そして企業間の垣根を越えてつながり合い、

幸せで豊かな社会・人生の実現に向けた一番頼れるパートナーとして、

さまざまなリスクや身体・生活の不安に、共に向き合い、共に歩み、支え続けます。

“安心・安全・健康”であふれる未来へ

それが私たちSOMPOグループです。

 

 

「パーパスに込めた想い」の導出においては、国際的なガイドラインやSDGsなどをもとに網羅的に洗い出した課題に対して、当社グループが受ける影響・社会に与えるインパクトを定量・定性で評価を行い、その結果をお客さま、投資家、NGO、専門家、パートナーなどのステークホルダーとの対話(社外)と、経営議論(社内)の双方を経て、優先順位づけを行いました。

それらを経たうえで以下のマッピングを作成し、非常に重要度の高い16課題と重要度の高い13課題を特定しました。これらの課題や、課題解決に向けた戦略・提供価値について明文化したものが「パ―パスに込めた想い」であり、当社グループにとっての「マテリアリティ(重要課題)」に該当するものと捉えております。

 

課題のマッピング(2025年3月時点)※                                                             


※ 課題やその優先順位づけについては、外部環境や当社グループの事業戦略の変化、ステークホルダーからの
 要請などを踏まえて、定期的に分析を行い見直し要否の確認を行っております。

 

② グループの重点課題における取組み

ア.サステナビリティに関連する重要テーマへの取組み(グループ共通)

a.気候変動・生物多様性

気候変動については、リスク・機会に対する複合的なアプローチを実践する「SOMPO気候アクション」(2021年度策定・公表)を引き続き実践し、気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」の3つのアクションを遂行してまいります。SOMPO気候アクションの取組みの詳細、生物多様性の喪失に対する自然関連の取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動・自然関連情報開示(TCFD・TNFD提言に基づく情報開示)」に記載のとおりであります。

 

※TCFD提言:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が2017年6月に公表した情報開示のフレームワーク。

※TNFD提言:自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)が2023年9月に公表した情報開示のフレームワーク

 

b.ビジネスと人権

当社グループは、企業の人権尊重責任を果たすために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、1.人権方針の策定・公表、2.人権デュー・ディリジェンスの実施、3.救済の仕組みの構築に向けて取組みを進めております。

1.人権方針の策定・公表については、「グループ人間尊重ポリシー」において、グループおよびバリューチェーンを含めたグローバル市場で、すべてのステークホルダーの基本的人権を尊重すること、国際的な行動規範を尊重しつつ、持続可能な社会の創造に向けて、高い倫理観をもって行動していくことを宣言しております。本方針は、グループ全社員へ適用するとともに、取引先、協業先、委託先などのパートナー企業においても、適用するように働きかけを行っております。

また、特に、2.人権デュー・ディリジェンスの実施については、①人権リスクの洗い出し・特定・評価(リスクアセスメント)、②優先課題の特定および負の影響の防止・軽減措置、③実施状況と結果の追跡調査(モニタリング)、④情報開示の4つのステップからなる仕組みを構築し、これらを定期的に実施することにより事業活動が与える人権への負の影響を認識し、防止、軽減、適切な措置を検討・実施する体制を構築しております。3.救済の仕組みについては、内部通報窓口を設置し社内での周知徹底を行っております。併せて、内部通報窓口の担当者へのビジネスと人権における知見向上に継続的に取り組んでまいります。

2024年度はビジネスと人権の潮流と当社グループの現状、ステークホルダーとの対話を通じて確認した課題を踏まえ、2025年度からグループ全体で知見の向上や体制のさらなる強化に取り組んでいく方針を策定しました。今後もステークホルダーとの対話を継続的に行い、改善を進めてまいります。

 

イ.原動力となる人的資本(グループ共通)
a.SOMPOのパーパス浸透のアプローチ

当社グループでは、SOMPOのパーパス実現に向けた原動力は社員一人ひとりであるという考えのもと、社員一人ひとりが自らの人生の目的である「MYパーパス」に突き動かされ、内発的動機に基づくチャレンジを繰り返すことで、イノベーションを創出できるよう取り組んでまいりました。その取組みにおいては、価値観の多様性を積極的に受け入れ、社員一人ひとりが働くうえでまずは自分自身の「MYパーパス」に向き合うことが重要であるというアプローチを採用しております。2024年度には、グループの企業理念体系を見直し、SOMPOのパーパスをより分かりやすい表現に改めました。今後もさらなる浸透に向け、継続して取り組んでまいります。

 

b.人材戦略方針

SOMPOのパーパス実現に向けて、中期経営計画では「すべての社員にとって誇りと幸せを実感できる」、「自律的なキャリアや成長が実感できる」、「MYパーパスを追求できる」をキーワードに、人事制度を整備するとともに、取組みを拡充しております。その過程においては「コーポレートカルチャー変革」、「グループ人材強化」、「人事制度の進化と人材基盤の拡充」を重点戦略として位置づけました。今後もこれらの重点戦略を基軸に、社員と会社がともに成長できる環境をつくるとともに、さらなる経営基盤の強化を目指してまいります。

 


 

 

「コーポレートカルチャー変革」

再言語化したパーパスをはじめとするグループの企業理念体系を核とし、「社員が声をあげられる、多様な意見が受け入れられる」コーポレートカルチャーへ変革しております。

新たな企業理念体系においては、グループすべての役員・社員が大切にしたいものの根幹を成す「誠実」「自律」「多様性」を、「SOMPOの価値観」として定め、パーパス実現に向けてグループ全体で取り組んでいくうえでの判断・行動の拠り所としました。

 


 

この「SOMPOの価値観」を起点に、日々の期待行動を導きだし、「グループ共通コンピテンシー」をこれと整合的なものに見直しました。このグループ共通コンピテンシーをグループ全体で、役員選任、マネジメント登用、社員の評価や採用の基準に反映し、浸透を図るとともに実効性を高めております。これらの価値観を根底に、グループの持続的成長を後押しするコーポレートカルチャーへの変革を目指してまいります。

その1つの観点が、ジェンダー・障害の有無・国籍・年齢・職歴など、多様なバックグラウンドや価値観が共存したインクルーシブなカルチャー醸成であります。企業経営における健全なジェンダーバランスや多様なバックグランドを持つ人員構成とすることは、ガバナンス強化やイノベーションを通じた持続的成長にも寄与すると考え、各種の取組みを行っております。

当社グループでは、経営上の意思決定層における多様性向上を目指し、女性役員比率、女性部店長比率、女性管理職比率を2030年までに一律30以上とする数値目標を設定しました。また、グループCEOを含む役員など、グループ主要キーポスト(計93ポスト)におけるサクセッション・プランを策定し、そのうち女性候補者比率を50とすることを目標としております。

加えて、これらの数値目標達成に向けた取組みのみならず、グループとしての多様性・一体感のさらなる醸成に向け、グループ横断での多様な事業の人と人をつなぎ、多様な想いをつなぐイベントウィークである「SOMPO Week 2024」を開催しました。さらに、障害者雇用促進やLGBTQ+理解浸透等の取組みを通じ、今後もあらゆる人が活躍できる環境の整備やそれらを支えるコーポレートカルチャーの醸成に努めてまいります。

※「障害の社会モデル」の考えに準拠し、当社では「障害者」と表記しております。

 

「グループ人材強化」

当社グループの経営戦略の遂行に必要な人材ポートフォリオを明確にし、グループの人材強化を進めております。

2024年度には、当社グループおよび各事業の経営戦略の遂行に必要なグループ人材ポートフォリオ構築に向け、300億円規模の「SOMPO人材ファンド」を設立し、育成・採用等のグループ人材投資を拡大しております。また、各事業のCHROや人事部門のほか、グループCEOをはじめとした関連部門の役員等が参加し、各専門領域別のサクセッション・プランにもとづく人材の育成、登用、アサインメント等について協議する「人材ラウンドテーブル」を2024年度から開催し、あるべき人材ポートフォリオの構築やそれに向けた人材への投資につなげております。

各事業においても専門性向上に向けた育成・採用等を強化しております。例えば、国内損害保険事業では、コマーシャル営業の変革・進化に向け、目指す姿を明らかにし、アンダーライティング等の専門性向上に向けた人材強化施策を大幅に拡大しました。

そして、これらの人材強化をグループ横断で下支えする基盤として、社員の自発的な学びを支援するグループ共通の学習管理システム「SOMPO Learning Hub」を導入しました。

こうした人材強化の取組みを通じて、今後もグループの持続的な企業価値向上を実現してまいります。

 

「人事制度の進化と人材基盤の拡充」

コーポレートカルチャー変革やグループ人材強化を支える、グループベースでの人事制度・体制の整備に向け、人材戦略の土台である「MYパーパスの追求」と連動する、自己選択型のキャリア形成を支援する制度をグループで拡充しております。例えば、「グループジョブチャレンジ制度」を通じて全グループ社員がグループ各社の公募ポストに応募可能とすることで、グループ内の事業を跨ぐチャレンジや幅広い経験の機会提供を図り、一人ひとりの「MYパーパス」に基づく自律的なキャリア形成を支援しております。

2025年度からは、当社と損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」といいます。)のジョブ型人事制度に互換性を持たせ、進化させました。加えて現在、グループベースでの人材ポートフォリオの可視化や自己選択型のキャリア形成のさらなる支援を意図した、グループ横断の人材戦略プラットフォーム(タレントマネジメントシステム)の構築を進めております。

また、国内グループ社員を対象に、現物株式を用いた株式報酬制度の2026年の導入に向けて検討・準備を進めております。グループ社員の会社業績や株価上昇に関する意識およびオーナーシップを一層高め、企業価値向上への貢献意欲を高めることを目的とするとともに、これにより、グループ全体の一体感を醸成し、ひいては中長期的なグループの企業価値向上につなげてまいります。また、グループ社員が自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることによって、現在および将来にわたって、経済的な観点から多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態、“ファイナンシャルウェルビーイング”の向上にも寄与するものと考えております。

 

これらの重点戦略を基軸に、2025年度からはビジネス領域(「SOMPO P&C」および「SOMPOウェルビーイング」)ごとの人材戦略の策定・実行に注力してまいります。経営戦略と人材戦略のさらなる連動を進めることで、中期経営計画の達成および持続的な企業価値の向上を追求するとともに、グループ一丸となってSOMPOのパーパス実現を目指してまいります。

 

ウ.グループの各事業における取組み

グループの各事業においても、重点課題に対する財務・非財務のKPIを設定し、取組みを進めております。具体的な取組みは、サステナビリティレポート2024をご参照ください。

 

(3)リスク管理

サステナビリティ関連のリスクについても他のリスクと同様に、当社グループの戦略的リスク経営(ERM)を支えるリスクコントロールシステムを通じて管理を行っております。

当社グループのリスクコントロールシステムはリスクアセスメントを起点とし、当社グループを取り巻くリスクを、網羅的に特定、分析、評価しております。サステナビリティ関連のリスクは、それ自体が当社グループに重大な影響を及ぼすリスク(重大リスク)または他の重大リスクを顕在化させる要因と捉えており、重大リスク管理の枠組みにおいて当社グループに影響を及ぼす具体的なシナリオを想定・評価し、グループベースでのリスク抑制に努めております。重大リスク管理の詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

サステナビリティ関連のリスクのうちグローバルな社会課題である気候変動、生物多様性の喪失、ビジネスと人権については、特に個別のリスク管理フレームワークを設計し、その軽減に取り組んでおります。

気候変動リスクについては、当社グループの事業の様々な面に影響を及ぼし、その影響が長期かつ不確実性を伴うことを踏まえ、「気候変動リスクフレームワーク」を構築しております。

生物多様性の喪失リスクについては、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が提言するLEAPアプローチ(自然関連のリスクと機会の管理のための統合評価プロセス)に基づき、特定および評価を行っております。気候変動および自然関連リスクの詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動・自然関連情報開示(TCFD・TNFD提言に基づく情報開示)」に記載のとおりであります。

ビジネスと人権にかかわるリスクについては、各事業の事業プロセス(バリューチェーン全体)を対象に発生する可能性のある「潜在的な影響とリスク」を特定し、評価を行っております。評価にあたっては、「発生可能性」と「深刻度」を評価軸とした定量的な分析を行い、発生の抑止とリスクの軽減に取り組んでおります。

 

(4)指標と目標

当社グループでは、パーパス実現に向けた中期経営計画において、財務領域と非財務領域(人的資本関連を含みます。)を連動させたKPI体系としております。

短期での財務成果に加え、中長期的な視点で持続的に社会への価値を提供し続ける、すなわち企業価値を向上し続けるために、財務成果につながる非財務領域の取組みに関するKPIを設定し、戦略の実効性を高めてまいります。非財務領域におけるグループ共通の主な指標は下表のとおりであります。

 

サステナビリティに関するリスクと機会を評価するための重要な指標・目標(2024年度~)

項目

区分

KPI

目標値

実績値

ネットゼロ社会の実現・生物多様性保全

サステナビリティ

GHGスコープ1~3(スコープ3カテゴリー15除く)排出量

2030年60%削減

(2017年比)

2050年ネットゼロ

2023年度:

25.6%削減

投融資先GHG・スコープ3カテゴリー15排出量

2025年25%削減

(2019年比)*1

2030年50~60%削減(2019年比・インテンシティ*2ベース)*3

2050年ネットゼロ*1

2023年度:

16.5%削減

2023年度:

35.3%削減

(インテンシティベース)*4

トランジション保険目標

2026年度元受収入保険料250億円

2024年度より取組みを開始

社員エンゲージ

メント向上

人的資本

エンゲージメントスコア(国内・海外)

対前年比改善

(参考)

2023年度:

国内3.52pt、海外4.18pt

2024年度:

国内3.56pt、海外4.16pt

多様な人材の活躍

女性役員・部店長・管理職比率

2027年4月:

役員16% 部店長23%

管理職28%

2030年:

いずれも30%

2025年4月時点:

役員14.3%

部店長20.7%

管理職26.6%

男性育児休業取得率(国内グループ全体)

100

2024年度:

72.9

サクセッション・プラン女性候補者比率(グループ主要キーポスト)

50

2024年10月時点:

40.0

 

*1 対象資産は、上場株式と社債

*2 インテンシティ:投融資額1単位あたりのGHG排出量

*3 対象資産は、上場株式、社債、上場企業向け融資、上場株式・社債ファンド

*4 2023年度実績の対象資産は、上場株式、社債

 

 

●気候変動・自然関連情報開示(TCFD・TNFD提言に基づく情報開示)

(1)ガバナンス

気候変動・自然関連対応に関するガバナンスについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)ガバナンス」に記載のとおりであります。なお、体制図は以下のとおりであります。

 

<気候変動等に対するリスク・機会への対応体制(2025年3月時点)>


 

 

(2)戦略

(2)-1 気候関連の戦略

当社グループでは、気候変動リスク・機会に対し複合的なアプローチを実践するため、2021年度から「SOMPO気候アクション」(気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」)を掲げ、取組みを進めております。

 

① 気候関連のリスクと機会

気候変動による自然災害の激甚化や発生頻度の上昇、干ばつや慢性的な海面水位の上昇などの「物理的リスク」のみならず、脱炭素社会への転換に向けた法規制の強化や新技術の進展が産業構造や市場の変化をもたらし、企業の財務やレピュテーションに様々な影響を与える「移行リスク」が顕在化する可能性があります。また、これらのリスクに付随して、企業の事業活動に起因する気候変動影響や炭素集約度の高い事業への投融資、不適切な開示などによる法的責任を追及する気候変動訴訟が発生しており、当社グループの損害保険事業における賠償責任保険の支払保険金を増大させる可能性があります。一方で、自然災害リスクの認識の強まりや社会構造の変革は、新たなサービス需要の創出や技術革新などのビジネス機会をもたらします。

 

当社グループは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)など外部機関の研究成果を踏まえて、気候変動が事業に与えるリスクと機会を整理し、短期(2~3年以内)、中期(3~10年後)および長期(10~30年後)の時間軸、保険事業のバリューチェーン全体(上流:商品・サービス開発、中流:販売・営業、資産運用、下流:事故対応・保険金支払)を対象範囲として評価・分析・対応を進めております。気候変動による物理的リスク、移行リスクに伴う主な変化と、当社グループにとって重大な影響を及ぼすと想定されるリスクと機会は下表のとおりであり、内外環境の変化を踏まえて継続的に見直しを行っております。

 


 

 

② シナリオ分析

ア.保険引受における物理的リスク

当社グループの損害保険事業は、台風や洪水、高潮などを含む自然災害の激甚化や発生頻度の上昇に伴う想定以上の保険金の支払いによる財務的影響を受ける可能性があります。リスクの定量的な把握に向けては、2018年以降、大学等の研究機関と連携することで科学的知見を踏まえた取組みを進めており、「アンサンブル気候予測データベース:d4PDF※1(database for Policy Decision making for Future climate change)」などの気象・気候ビッグデータを用いた大規模分析によって、台風や洪水、海面水位の変化の影響を受ける高潮の平均的な傾向変化や極端災害の発生傾向について、平均気温が上昇した気候下での長期的な影響を把握するための取組みを行っております。また、5~10年後の中期的な影響を分析・評価し事業戦略に活用しております。

当社グループは、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)のTCFD保険ワーキンググループが2021年1月に公表したガイダンスに基づく簡易な定量分析ツール※2を用いた台風に関する影響度の試算を行っております。試算結果は下表のとおりであります。

 

<試算結果>

台風の発生頻度     約△30%~+30%

1台風あたりの損害額  約+10%~+50%

 

 

今後も、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するNGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)が検討を行っているシナリオ分析の枠組み等も活用して、引き続き分析を進めてまいります。

 

※1 文部科学省の気候変動リスク情報創生プログラムにて開発されたアンサンブル気候予測データベース。多数の実験例(アンサンブル)を活用することで、台風や集中豪雨などの極端現象の将来変化を確率的にかつ高精度に評価し、気候変化による自然災害がもたらす未来社会への影響についても確度の高い結論を導くことを可能とするもの

※2 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書のRCP8.5シナリオに基づき、2050年と現在との間の台風の発生頻度や風速の変化を捉え、頻度や損害額の変化を算出するモデル

 

イ.資産運用における移行リスク・物理的リスク

脱炭素社会への移行が短期・中期・長期それぞれにおいて、当社グループに及ぼすインパクトを把握するため、下表のNGFSシナリオ※3を前提に、脱炭素社会への転換に向けた法規制の強化や世界経済の変化が企業に及ぼす「政策リスク」と気候変動の緩和に向けた取組みによる「技術機会」、慢性的な猛暑、極寒、大雪、大雨、暴風、急性的な台風、洪水、自然火災など、気候変動がもたらす気象災害が企業に及ぼす「物理的リスク」について、MSCI社が提供するClimate Value-at-Risk(CVaR)※4を用いて、当社グループの保有資産に及ぼす影響を分析しております。詳細は、以下「a. Climate Value-at-Risk(CVaR)」をご参照ください。

加えて、移行リスク削減に向け、脱炭素化への取組みが進んでいない企業への働きかけを促進することが重要であることから、同社が提供するImplied Temperature Rise(ITR)※5を用いて、当社グループの投資先企業が2100年度までに1.5℃の温暖化に抑える目標と整合的なGHG排出量削減目標を設定しているのかを定量的に分析しております。詳細は、以下「b. Implied Temperature Rise(ITR)」をご参照ください。

 

※3 NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)シナリオ

・NGFSがフェーズ4として2023年11月に公表している気候変動シナリオであり、Delayed transition、Net Zero 2050、NDCsの3シナリオを分析

カテゴリー

シナリオ

概要

  Disorderly

(無秩序)

Delayed transition

(遅延移行)

2030年まで年間排出量が減少しない。温暖化を2℃に抑えるには強力な政策が必要。CO2除去は限定的

  Orderly

(秩序的)

Net Zero 2050

(2050ネットゼロ)

厳格な排出削減政策とイノベーションにより、地球温暖化を1.5℃に抑制し、2050年頃に世界のCO2排出量を正味ゼロにすることを目指す。米国、EU、日本等の一部の国では、すべてGHGについてネットゼロを達成

  Hot House World

(温暖化進行)

Nationally Determined Contributions(NDCs)

(国別目標)

各国が約束したすべての政策が実施されるシナリオ(まだ実施されていない場合でも、すべての誓約された政策が含まれるが、地球温暖化を食い止めるには不十分なシナリオ)

 

※4 Climate Value-at-Risk (CVaR)

・気候変動に伴う政策の変化や災害による企業価値への影響を測定する手法の一つ

・気候変動関連のリスクと機会から生じるコストと利益の将来価値を現在価値に割り引いたものであり、当社グループの資産運用ポートフォリオにおける各銘柄の保有時価ウェイトを考慮し、2024年3月末時点における影響度を算出

※5 Implied Temperature Rise(ITR)

・2100年までに2℃、1.5℃の温暖化をもたらす可能性の程度を、度数(℃)で評価するフォワードルッキングな評価手法の一つ

・投資先企業のGHG予測排出量(足元の排出量および企業が設定した削減目標をもとに算出)とカーボンバジェットの差分をもとに温度上昇への寄与度を表したものであり、当社グループの資産運用ポートフォリオにおける各銘柄の保有時価ウェイトを考慮し、2024年3月末時点における影響度を算出

 

a.Climate Value-at-Risk(CVaR)
(NGFSシナリオ‐保有資産別比較)

政策リスク、技術機会の影響は、すべての資産において、影響度はNet Zero 2050(1.5℃)シナリオが最大となり、1.5℃目標を達成するには、秩序だった移行であっても、政策リスクが大きいことが分かります。一方、物理的リスクの影響は、外国株式(下記グラフ:左下)を除きNDCs(3℃)シナリオが最大となり、気温上昇がもたらす物理的リスクが大きいことが分かります。

また、保有資産別の比較では、政策リスク、技術機会の影響はいずれも国内株式(下記グラフ:左上)が最大となり、Net Zero 2050(1.5℃)シナリオ下においてそれぞれ△32.6、6.1となります。また、物理的リスクにおいても国内株式が最大となり、NDCs(3℃)シナリオ下において△10.7となります。なお、融資は当社グループのエクスポージャーの3程度であり、影響が限定的であることを確認しております。

 

<当社グループ 資産別・NGFSシナリオ別 政策・物理的リスクと技術機会のCVaR分析結果>

 


   債券は額面以上で償還されることがないため影響が限定的

 

・政策リスク :GHG削減目標を達成するために必要となる費用をスコープ1、2、3と段階ごとに算出した数値

・技術機会  :低炭素経済への移行を背景に、企業が保有する環境関連技術が生み出す事業機会のポテンシャル

                を算出した数値

・物理的リスク:慢性的または急性的な異常気象が企業の資産や売上にもたらす影響を算出した数値

 

 

(NGFSシナリオ‐短期・中期・長期のTime Horizon別比較)

短期・中期・長期のTime Horizon別の比較では、当社グループのポートフォリオにおいて、リスクの大部分は2034年以降に顕在化することが分かります。特に、Delayed transition(2℃)(Disorderly:脱炭素への急激な移行)シナリオでは2030年以降に急激な政策移行が想定されていることから、長期影響が顕著に現れます。また、政策リスクはNet Zero 2050(1.5℃)シナリオが△14.96と最大となり、1.5℃目標を達成するには、秩序だった移行であっても、政策リスクが長期的にも大きいことが分かります。また、物理的リスクは気温上昇を伴うDelayed transition(2℃)シナリオとNDCs(3℃)シナリオで相対的に長期的な影響が大きくなりますが、全体的な影響は限定的であります。

 

  <当社グループ Time Horizon別 政策・物理的リスクと技術機会のCVaR分析結果>


 

 

b.Implied Temperature Rise(ITR)

ITRが2℃未満の企業の割合は、国内株式、外国株式、国内社債、外国社債ポートフォリオの時価ベースでそれぞれ55、100、68、85、ITRが1.5℃未満の企業の割合は、37、100、50、72となっており、国内株式以外はパリ協定で掲げる「1.5℃目標」と整合的な企業が過半数を占めております。一方で、ポートフォリオ全体では、国内株式、外国株式、国内社債、外国社債のITRはそれぞれ2.16℃、1.77℃、2.07℃、2.36℃と、一部資産は改善しているものの、1.5℃を超えております。

 

当社グループではこれらの分析結果を活用し、移行リスクや物理的リスクの高い企業やGHG排出量目標設定がない投資先企業へのエンゲージメント等の働きかけを通じて気候変動に係るリスクの削減を進めてまいります。

 

<当社グループ 資産別 ITR分析結果>


 

出所:MSCI Climate Value-at-Risk、Implied Temperature Riseを用いて当社作成

 

(補足)本レポートには、MSCI Inc.、その関連会社、情報提供者(以下「MSCI関係者」)から提供された情報(以下「情報」)が含まれており、スコアの算出、格付け、内部使用にのみ使用されている場合があり、いかなる形態でも複製/再販したり、金融商品や指数の基礎または構成要素として使用することはできません。MSCI関係者は、本レポートに掲載されているデータまたは情報の正確性および完全性を保証するものではなく、商品性および特定目的への適合性を含め、すべての明示または黙示の保証を明示的に否認します。MSCI関係者は、本レポートのデータまたは本情報に関連する誤りや脱落、あるいは直接的、間接的、仕様的(利益損失を含む)な損害について、たとえその可能性を通知されていたとしても、いかなる責任も負うものではありません。

 

 

③ レジリエンス向上の取組み
ア.リスクへの対応
<物理的リスク>

損害保険契約や再保険契約は短期契約が中心であり、激甚化する気象災害の発生傾向を踏まえた保険引受条件や再保険方針の見直しによって、保険金支払が想定以上となるリスクの抑制が可能であります。また、グローバルな地理的分散や短期・中期の気候予測に基づく定量化、長期的なシナリオ分析による重大リスクの特定・評価などの多角的なアプローチにより、物理的リスクに対するレジリエンスの確保を図っております。

 

<移行リスク>

自社のGHG排出量削減については、スコープ1、2、3(スコープ3カテゴリー15 保険引受・投融資を除く)で2030年60削減(2017年比)※1、2050年実質排出ゼロにする目標を掲げております。その実現に向け、GHG排出において特に占める割合の大きい使用電力について、LED化等の省エネルギーへの取組みに加え、「2030年までに再生可能エネルギー導入率70※2」の目標を掲げ、所有ビルの電力を再生可能エネルギー由来に切り替えるなど、目標達成に向けたロードマップに沿って着実に取組みを進めております。

 

※1 パリ協定の1.5℃目標水準(毎年4.2以上削減)に整合する科学的根拠に基づく目標

※2 再生可能エネルギーの証書による利用を含む

 

投融資については、投融資ポートフォリオのGHG排出量(スコープ3カテゴリー15)実質ゼロに向け、排出量を2025年25削減(2019年比)する中間目標に加え、新たな中間目標として「インテンシティを2030年50~60削減(2019年比)」を2024年度に設定しました。目標達成に向け、株式保有先のうちGHG高排出の上位20社を中心とするエンゲージメントや、グループが保有する運用資産を入れ替える際のGHG低排出セクターへのシフトなどの取組みを進めております。

 

イ.機会への対応

当社グループは、気候リスクコンサルティングサービスの開発・提供、保険商品・サービスを通じた自然災害レジリエンスの向上に取り組むほか、再生可能エネルギーの普及や取引先との協業によるカーボンニュートラルに貢献する保険商品・サービスの開発・提供に取り組んでおります。

保険引受については、ソリューションプロバイダーとして社会のグリーン移行へ貢献することを目的に2024年度に脱炭素に資する保険商品を対象としたトランジション保険目標を新たに掲げました。また、2022年11月にPCAF(金融向け炭素会計パートナーシップ)が開発した企業保険分野のGHG排出量を計測する手法を用いて、保険引受先でGHG排出量(スコープ1、2)を開示している企業のデータを活用し、保険引受におけるGHG排出量の算定を行っております。

また、日本版スチュワードシップ・コードの趣旨に則り、株式を保有する企業の企業価値向上および持続的成長に関する取組方針および状況を確認するために、損保ジャパンでは毎年ESGアンケート(「ESG/サステナビリティへの取組みに関する調査」)を実施しております。2024年度は株式を保有する1,329社にアンケートを送付し、226社から回答が得られ、議決権行使のほか、各企業側のニーズの把握・協業の機会につなげ、脱炭素を含めたサステナビリティへの取組みを支援しております。

さらに、ネットゼロ社会の実現に向けて、世界の様々なイニシアティブや団体等において、規制やガイダンス策定等の議論が活発に行われております。当社グループでは、これらのルールメイキングに対して積極的に関与しリードすることにより、社会のトランスフォーメーションに貢献するとともに、これらの取組みを通じた知見の蓄積、さらにはこれらの取組みを通じたレピュテーションの向上によって協業パートナーを呼び込むなどグループのビジネス機会の創出・拡大を図ってまいります。

 

(2)-2 自然関連の戦略

気候変動に加え、生物多様性の喪失と生態系の崩壊、天然資源不足といった自然に関連する環境問題がグローバルリスクとして認識されるようになってきております。当社グループの保険引受先や投融資先の企業の中には、自然への依存・影響に伴い、将来的に原材料調達や操業の不安定化、法規制などの対応コストの増加、売上減少といったリスクを抱える企業があります。これらのリスクが顕在化した場合、収入保険料の減少や支払保険金の増加など、当社グループの損害保険事業に影響を及ぼす可能性があります。

一方で、昆明・モントリオール生物多様性枠組で提唱されたネイチャーポジティブへの移行にあたっては、日本では2030年時点で約47兆円の事業機会が創出されると見込まれております(環境省推計)。この新たな事業機会が保険引受先や投融資先の企業の業績改善や、当社グループが自然に貢献する商品・サービスの提供といった機会をもたらす可能性があります。

これらの自然関連のリスク・機会は、当社グループの主要事業である国内損害保険事業および海外保険事業を対象として、TNFDが提言するLEAPアプローチに基づき、評価・分析・対応を行っております。

 

※LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare の頭文字)と呼ばれる自然関連のリスクと機会の管理のための統合評価プロセス

 

 

 

LEAPアプローチに基づく分析結果
① 優先地域の特定

損保ジャパン、SOMPOリスクマネジメント株式会社、海外保険事業における子会社の直接操業拠点について、WWF Biodiversity Risk Filterなどのツールを用いて、TNFDの定義する「優先地域」に該当する拠点の確認を行い、事業活動(損害保険事業、コンサルティング事業)における自然への依存・影響が小さく、優先地域に該当する拠点はないと評価しております。

※世界自然保護基金が開発した、企業が自社のビジネスやサプライチェーン等において生物多様性に影響を及ぼすリスクを評価・対応するためのツール

 

② 依存・影響の特定・評価

当社グループの保険引受先や投融資先の各セクターについて、ENCOREを用いて自然への依存・影響を特定・評価しました。

さらに、「③リスク・機会の特定・評価」の参考情報として、当社グループにとって自然の観点でリスクが高い可能性があるセクター(高リスクセクター)を以下の手順で特定しました。

 

<高リスクセクターの特定手順>

1)ENCOREを用いて各セクターの自然への依存・影響の項目、大きさをヒートマップ化

2)1)の各セクターに対する損保ジャパンおよび海外保険事業における子会社の保険引受、投融資の金額をヒートマップに反映

3)2)の結果を踏まえ、保険引受および投融資ごとに、当社グループにおける高リスクセクターを特定

 

その結果、自然への依存・影響の評価が高く、損保ジャパンおよび海外保険事業における子会社との取引金額が大きい4つのセクター(建設、輸送(旅客含む)・倉庫、自動車・自動車部品、化学)を高リスクセクターとして特定しました。

 

※自然資本金融同盟 (Natural Capital Finance Alliance (NCFA)) や国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター (UNEP-WCMC) などが共同開発した自然関連リスク評価ツール

 

高リスクセクターの特定結果

種別

セクター

依存/影響が大きい項目

保険引受

建設

(依存)土壌の安定化、洪水の緩和、暴風・砂嵐の緩和、降雨の調節

(影響)騒音・光害、淡水域の利用、GHG排出、水・土壌への有害物質の排出

輸送(旅客含む)・倉庫

(依存)土壌の安定化、洪水の緩和、暴風・砂嵐の緩和、降雨の調節、レクリエーション価値の提供、自然景観がもたらす視覚的な快適性

(影響)騒音・光害、GHG排出、非GHG大気汚染物質の排出、外来種の持ち込み

投融資

化学

(影響)騒音・光害、水・土壌への有害物質の排出、水・土壌への富栄養化物質の排出

自動車・自動車部品

(影響)騒音・光害

輸送(旅客含む)・倉庫

(依存)降雨の調節、レクリエーション価値の提供、自然景観がもたらす視覚的な快適性

(影響)騒音・光害、非GHG大気汚染物質の排出、外来種の持ち込み

 

 

 

③  リスク・機会の特定・評価

生態系サービスの劣化に伴う物理的リスクと機会、ネイチャーポジティブに向けた政策・法規制の強化、技術の進展、市場選好の変化に伴う移行リスクと機会について、当社グループでは、損害保険事業を中心にバリューチェーン全体(上流:商品・サービス開発、中流:販売・営業・資産運用、下流:事故対応・保険金支払)を対象範囲として、評価・分析・対応を進めております。評価の時間軸としては短期(2~3年以内)、中期(3~10年後)および長期(10~30年後)を設定しております。自然関連の主な環境変化と、当社グループにとって重大な影響を及ぼすと想定されるリスクと機会は下表のとおりであります。

今後、内外環境の変化を踏まえて継続的に見直しを行ってまいります。


 

 

(3)リスク管理

当社は、グループのパーパスおよび経営計画における目指す姿の実現に向けて、その達成確度を高めるためにリスクアペタイトフレームワークを構築し、「取るリスク」、「回避するリスク」を明確にしております。

自然災害リスクについても、リスクアペタイトを明確化するとともに、自然災害が発生した場合に想定される保険金支払を気象学等の科学的知見や当社グループの商品特性を踏まえて定量的に把握したうえで、財務健全性や収益性、利益安定性への影響、再保険マーケットの動向等を踏まえて、再保険方針およびグループ全体のリスク保有戦略を策定し、管理しております。

気候変動リスクは、戦略的リスク経営(ERM)のリスクコントロールシステムの重大リスク管理、自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理の枠組みにおいて、多角的なアプローチでコントロールしております。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)主要なリスク」をご参照ください。

当社グループは、「SOMPO気候アクション」の実践として、気候変動リスクフレームワークを通じた短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会の評価、これらに基づくシナリオ分析(物理的リスク・移行リスク)を実施するとともに、これらのリスク・機会へのレジリエンス向上を高めるための各種の取組みを行っております。

① 気候変動リスクフレームワーク(気候変動リスクの特定、評価および管理)

自然災害リスクを含む気候変動リスクについては、気候変動が保険事業以外を含めた当社グループの事業の様々な面に影響を及ぼすこと、その影響が長期にわたり、不確実性が高いことを踏まえて、既存のリスクコントロールシステムを補完し、長期的な気候変動が様々な波及経路を通じて当社グループに影響を及ぼすシナリオを深く考察してリスクを特定・評価および管理するための気候変動リスクフレームワークを構築しております。

気候変動リスクフレームワークでは、気候変動の複雑な影響を捕捉するために、以下の3ステップで評価を行い、「(2)戦略 ① 気候関連のリスクと機会」で述べたリスクと機会を整理しております。

 


 

リスク評価にあたり、平均気温の変化を示すIPCCのシナリオと政策移行を示すNGFSのシナリオを組み合わせた「低位」「中位」「高位」の3つの環境変化のパターン(下表「環境変化のパターン」)を選定しました。また、当社グループに及ぼす影響の波及経路・内容をシナリオで想定したうえで(下図「リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)」)、パターンごとにリスクを評価しております。

 

<環境変化のパターン>

 

IPCC

NGFS

低位

SSP1-1.9

Orderly / Net Zero 2050

中位

SSP2-4.5

Disorderly/Delayed Transition

高位

SSP5-8.5

Hot House World/ Current Policy、

Nationally Determined Contributions(NDCs)

 

 

<リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)>


アセスメント結果を踏まえて継続的なモニタリングが必要なリスクについては、保険引受および資産運用に与える影響度、可能性、発現時期、傾向などを「気候変動リスクマップ」で可視化し、グループERM委員会において議論したうえで、定期的に取締役会およびグループ執行会議等に報告しております。

 

<気候変動リスクマップ(中位SSP2-4.5/Disorderly)>



 

上記以外にも、保険引受・資産運用以外の当社グループの事業活動には、その他のリスクとして、「訴訟等の法的な影響」が及ぼされる可能性があると考えております。リスク評価における影響度・可能性はそれぞれ中程度相当と想定しており、引き続き情報収集および分析を行い、リスクの把握に努めてまいります。

 

発生の原因

当社グループへの影響

訴訟等の法的な影響

気候変動に対する取組みの遅れや不適切な情報開示

当社やグループ会社自身に対して賠償請求訴訟が起こされる、など

 

表:保険引受・資産運用以外の当社グループ事業へのリスク。なお、保険引受や資産運用への影響についてはアセスメントを実施。

 

② 既存のリスク管理フレームワークとの統合

気候変動リスクフレームワークで捉えたリスクの認識は、重大リスクの「主な想定シナリオ」に反映して管理しております。(下表)

 

気候変動に関連する重大リスク等と主な想定シナリオ

重大リスク

気候変動に関連する主な想定シナリオ

気候変動リスク

風水災の激甚化または頻度増加による火災保険等の保険金支払、再保険コストの増大

サステナビリティリスク

脱炭素に向けた政策・法規制の強化、技術革新の進展による株式・債券の価格変動など

事業中断リスク

想定シナリオを超える大規模自然災害等の発生に伴う重要業務停止の長期化、人命被害など

パンデミック

森林減少や永久凍土の融解による重大な新興感染症パンデミックの発生増加

 

また、気候変動リスクフレームワークを通じて得られた知見を、既存のリスクコントロールシステムの枠組みである自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理に反映させていくことで、リスク管理全体の高度化を図ってまいります。

 

(4)指標と目標

① 気候関連・自然関連リスクと機会を評価するための指標

項目*1

単位

2023年度実績

GHG排出量

(スコープ1、2、3 ※除くカテゴリー15保険引受・投融資)

t-CO2e

306,876

GHG排出量(スコープ3カテゴリー15 投融資)*2*3

株式

t-CO2e

925,692

社債

t-CO2e

804,126

合計

t-CO2e

1,729,817

インテンシティ*4

株式

t-CO2e/億円

60.27

社債

t-CO2e/億円

67.70

合計

t-CO2e/億円

63.51

加重平均炭素強度(WACI)

(スコープ3カテゴリー15 投融資)*5

株式

t-CO2e/百万米ドル

137.51

社債

t-CO2e/百万米ドル

142.77

再生可能エネルギーの導入率

9.0

電力使用量

kWh

315,184,001

紙使用料

t

10,863

生物多様性保全活動・環境教育への参加人数

9,617

 

*1 指標の対象範囲は、国内連結子会社および海外連結会社であります。

*2 算定にあたっては、MSCI ESG Research社が提供するデータ( (カバー率)2023年度:上場株式84、社債79、いずれも時価ベース)を使用しております。対象資産は国内外の上場株式と社債の投融資先におけるスコープ1、2であります。

*3 GHG排出量は、投融資先のEVIC(Enterprise Value Including Cash:現金を含む企業価値)ベースに対する当社グループ持分であります。

*4 インテンシティは、投融資額1単位あたりのGHG排出量であります。なお、海外保険事業における投融資額は、2019年(基準年)の為替レートを用いて円貨計算しております。

*5 WACIは、Weighted Average Carbon Intensityの略称であり、各投融資先企業の売上高あたりのGHG排出量をポートフォリオの保有割合に応じて加重平均した値であります。なお、2021年度の数値からWACIの算出方法が変更となっております。

 

 

② 気候関連リスクと機会を管理するための目標

項目

目標値

自社のGHG削減率

・2030年60%削減(2017年比)

・2050年実質排出ゼロ

 ※スコープ1、2、3(除くスコープ3カテゴリー15保険引受・投融資)が対象

投融資のGHG削減率

・2025年25%削減(2019年比)、2050年実質排出ゼロ

 ※スコープ3カテゴリー15が対象(対象資産は上場株式と社債)

 

・2030年50~60%削減(2019年比・インテンシティ(投融資額1単位あた

  りのGHG排出量)ベース)

※対象資産は、上場株式、社債、上場企業向け融資、上場株式・社債ファンド

再生可能エネルギーの導入率

・2030年導入率 70%

・2050年導入率 100%

 ※再生可能エネルギーの証書による利用を含む

トランジション保険目標

・2026年度 250億円

 ※脱炭素に資する保険商品の元受保険料を目標値とする