リスク
3 【事業等のリスク】
本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める所存であります。
本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
(1) 当社の事業内容
① 商品デリバティブ取引業等の動向
当社は商品市場、証券市場及び為替市場等において多角的に商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業を展開しております。
当該市場には経済情勢、相場環境等に起因するさまざまな不確実性が存在しております。市場主義経済圏の拡大に伴い、商品(コモディティ)や金融商品は、グローバルに展開して行くなかで、取引形態の多様性と相まって価格変動と為替に晒されるリスクを内包しております。この価格変動と為替のリスクをヘッジする手法としての先物取引の重要性が経済的、社会的見地からますます高まってきております。
当社の主要な事業である商品デリバティブ取引業では、㈱大阪取引所において国際的大型商品である金(ゴールド)及び白金(プラチナ)等の貴金属市場、並びに大豆及びとうもろこし等の農産物市場、並びにゴム市場が取引されております。㈱東京商品取引所においてはガソリン、原油及び電力等のエネルギー市場が取引され、両取引所ともに底堅く推移して行くものと期待されます。
2020年7月には総合取引所の本格稼働に伴い、商品デリバティブ取引の清算機構(アウトハウス型クリアリングハウス)である㈱日本商品清算機構が㈱日本証券クリアリング機構に統合され、信用リスク(取引先リスク)に対する安全性が国際水準程度に高まったことから、今まで信用リスクの観点から取引を見送っていた向きのある、国内はもとより海外の機関投資家の信用リスクに対する不安が一掃されると思われるため、その参加が大いに期待されます。
一方において市場の自由化及び国際化の進展に伴い、異業種、あるいは外資系企業からの参入が拡大する可能性があると予測されますので、既存の商品デリバティブ取引業者間との企業競争も含めて今後の動向次第では当社の経営環境に影響を及ぼす可能性があります。
② 受託業務と自己売買業務(自己ディーリング)
当社は商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業として委託者から受託業務を行うとともに、自己の計算による自己売買業務(自己ディーリング)を行っております。
a. 受託業務
当社の商品デリバティブ取引業に係る委託者は、リスク・ヘッジを主とする商品保有者(将来保有を含む)である商社等の法人委託者と、一方でリスクをとって収益機会を得ようとするリスク・テーカーと称される一般委託者(一般法人を含むが、大半は個人委託者)で構成されております。また、金融商品取引業に係る委託者はほぼすべてが一般委託者となっております。
商品デリバティブ取引、取引所株価指数証拠金取引、取引所為替証拠金取引及び株価指数先物取引は、実際の商品の総代金ではなく、定められた額の保証金等を担保として預託することにより取引が行われることから、投資運用効率が高いと考えられます。この投資運用効率の高さは、大きな利益を得る機会をもたらす半面、ときにより大きな損失をこうむる場合があるため、一般委託者を中心とする市場参加者の動向は受託取引の多寡に関係し、業績(受入手数料)に影響を与えることとなります。
また、受託取引に伴う「預り証拠金」及び「金融商品取引保証金」、並びに「委託者未収金」及び「委託者未払金」等の債権債務、並びに㈱日本証券クリアリング機構及び取引所への預託額、並びに法人委託者との継続取引に伴う取引保証等の「差入保証金」等の増減は財政状態とキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
b. 自己売買業務(自己ディーリング)
一方、自己売買業務(自己ディーリング)は、受託業務に伴う市場流動性を確保するマーケット・メーカーとしての役割からリスクテイクする場合等がありますが、主として、収益機会を獲得するために当社独自の相場観により自己ディーリングを行っております。この自己ディーリングによる損益の状況は業績(トレーディング損益)に影響を及ぼすこととなります。当社は自己ディーリングを行うにあたり、専任部署と専任担当者を定め、社内規程に基づき、厳しい運用管理を行い、かつディーラーの育成強化に努めるなど収益の拡大に取り組んでおります。
(2) 当社の事業における法的規制
当社の主要な事業である商品デリバティブ取引業等を遂行するため、内閣総理大臣より金融商品取引業の登録並びに、農林水産大臣及び経済産業大臣(以下、「主務大臣」といいます。)より商品先物取引業者として許可を受けております。また、金融商品取引所及び商品取引所の定める取引参加資格を取得しております。
事業を遂行する上で金融商品取引法及び同法の関連法令、並びに商品先物取引法及び同法の関連法令、並びに金融商品取引所及び商品取引所の定めた受託契約準則、並びに自主規制機関による自主規制規則等の適用を受けております。また、この他に消費者契約法、個人情報保護法の適用を受けております。
当社は、これらの諸法令規則等に抵触した場合には、許可及び登録の取消し、又は業務停止等の行政処分が行われることがあり、そのような場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 訴訟について
2024年3月末現在、特段に記載すべき重要な訴訟事件はありませんが、顧客との受託取引等に起因する重要な 訴訟やその他重要な請求の対象とされる可能性があります。当社の従業員である外務員が顧客との受託業務活動に おいて、会社が外務員の権限を内部的に制限している場合であっても、外務員の行った権限外の行為により第三者に損害が発生した場合には、所属会社が当該外務員の使用者として、当該第三者に対し損害賠償責任を負う可能性があります。このような損害賠償が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 自己資本規制比率及び純資産額規制比率について
自己資本規制比率は、金融商品取引法の規定に基づき内閣府令の定めにより算出することとしたものであります。当社の自己資本規制比率は、2024年3月末現在476.2%となっており、金融商品取引業者は、自己資本規制比率が120%を下回ることがないようにしなければならないと定められております。(同法第46条の6)
また、商品先物取引法及び同施行規則に基づき、純資産額規制比率による制限が設けられています。純資産額規制比率とは、純資産額の、商品デリバティブ取引につき生ずる相場の変動その他の理由により発生し得る危険に対応する額として主務省令で定めるところにより算出した額に対する比率であります。当社の純資産額規制比率は、2024年3月末現在870.1%ですが、120%を下回る事態が生じた場合には、主務大臣は商品先物取引業者に対し商品先物取引業の方法の変更を命じ、財産の供託その他監督上必要な措置を命ずることができます。また、100%を下回る場合には3ヶ月以内の期間を定めて業務の停止を命じることができ、業務停止命令後3ヶ月を経過後も100%を下回り、かつ、回復の見込みがないと認められるときは商品先物取引業者の許可を取り消すことができるとされています。(同法第235条)
当社は、自己資本規制比率及び純資産額規制比率が要求される水準を下回った場合には、自己資本規制比率に関しては内閣総理大臣から、純資産額規制比率に関しては主務大臣から業務の停止等を含む様々な命令等を受けることとなります。これらの結果によっては、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 個人情報保護に関して
当社は、顧客の個人情報を扱う企業であることから、その社会的責任を認識し、個人情報管理に積極的に取り組み、当社における個人情報保護方針を制定し、2005年4月に施行された、いわゆる個人情報保護法に対応してきております。2006年2月には「プライバシーマーク」の認証を取得し、その後現在に至るまで2年ごとの更新審査を受け認証資格を維持しており、個人情報保護管理体制に適切に対処する旨努めております。また、「サイバーセキュリティ」を「情報セキュリティリスク」として明確化し、その対応に努めております。
しかしながら、顧客の個人情報や当社の機密情報が、不正なアクセスなど何らかの方法により外部に漏洩し、あるいは悪用された場合等には、損害賠償が発生する可能性があり、加えて当社の信頼を失うおそれがあり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) システム障害について
取引所の取引システムや当社の社内システムにおいて障害が発生した場合には、顧客等に与える影響は予測しがたいものがありますが、当社は、社内システムに関して安全性の確保を図る等、システム管理の徹底に努めております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様への長期的利益還元を重要な課題であると考え、将来の事業環境の変化に適切に対応するため財務体質の強化を図りつつ、業績に応じた配当にて株主の皆様への利益還元を実施すべく税引後当期純利益から法人税等調整額の影響を除いた当期純利益(以下、本項目において「調整後当期純利益」という。)に対する配当性向30%を基本方針としております。
なお、税効果会計はその性質上、将来事象の予測や見積りを含むものであることから、その影響を除くべく、調整後当期純利益を基に配当性向を算出することといたしました。
当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めて中間配当制度を設けておりますが、原則として年間を通しての配当とする年1回の期末配当を基本とさせていただいております。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当期の剰余金の配当につきましては、上記の方針及び当期の業績の状況、今後の経営環境等を総合的に勘案いたしました結果、1株につき69円50銭(年間)の配当としております。
(注) なお、第68期の剰余金の配当は以下のとおりであります。