2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態・経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)新型コロナウイルス等の感染に関するリスクについて

 2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号)上の位置づけが「5類感染症」になりましたが、引き続き、当社グループの役職員並びにアライアンス先医療機関の全役職員及び患者様への感染リスクがあります。

 当社グループ役職員による感染予防の徹底を行っていますが、感染者が出た場合には、職場における接触者の検査、出勤停止や消毒の実施等の対応により、日常業務に支障をきたす可能性があります。また、アライアンス先医療機関において役職員や患者様が感染した場合には、当該医療機関の診療体制等に悪影響を及ぼし、経営状況が悪化する可能性があります。このような場合に、当社グループにおいても当該医療法人からの業務委託報酬等の売上が低下するなど、経営成績が不安定になり、財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループは、緊急事態対応規程およびリスクマネジメント規程等を策定して、有事の際に役職員の安全とサービスの安定提供、及びアライアンス先医療機関がクラスター対応マニュアル等の適切な整備により安全かつ安定的な診療体制を確保するための経営指導等を行っています。今後は、緊急事態対応規程およびリスクマネジメント規程等の実効性を継続的に検証・改善していくとともに、感染症等の発生・拡大時にも臨機応変に対応できるよう、フレックス勤務や在宅勤務等、柔軟な働き方に関する制度・環境整備を進めています。

 

(2)医療関連事業への集中に関するリスクについて

 当社グループは、不動産関連事業を大幅に縮小し、医療関連事業への集中を行っています。

 医療関連事業の利益率は高いものの、売上が損益分岐点を大幅に上回るまでには相応の時間がかかる可能性があります。このため、医療関連事業を順調に拡大できない場合には、当社グループの経営成績が不安定になり、財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、医療関連事業を順調に拡大できるよう、組織を見直すとともに人材の補強を行う等、鋭意努めています。

 

(3)医療関連事業に関するリスクについて

① 医療行政について

 我が国は人口動態的に少子・高齢化や地方人口の減少の問題に直面していることから、医療行政により、さらなる医療費抑制のための施策が強化されていく可能性があります。こうした中、診療報酬の引き下げや入院治療の短縮化等の医療費抑制策や地域医療の見直しが進められると、当社グループがサービスを提供するアライアンス先医療機関の経営状況が悪化する可能性があります。このような場合に、当社グループでも当該医療機関からの業務委託報酬等の売上が低下するなど、経営成績が不安定になり、財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、医療行政の定期的なモニタリングを行い、医療関連施策の変更等にアライアンス先医療機関が対応できるよう経営指導を行っています。

 

② アライアンス先医療機関における医療事故の影響について

 アライアンス先医療機関においては、医療行為におけるリスクを回避するために細心の注意を払って取り組んでいますが、病態の複雑化や治療の高度化等もあり、医療事故が発生する可能性があります。医療事故に伴う損害賠償請求や風評被害を受けるなどした場合には、当該医療機関の経営状況が悪化する可能性があります。このような場合に、当社グループでも当該医療機関からの業務委託報酬等の売上が低下するなど、経営成績が不安定になり、当社の財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、アライアンス先医療機関および当該医療機関に勤務している医師・看護師等への指導・教育等のサービス提供を積極的に行うようにしています。

 

③ 医療を取り巻く労働環境の変化について

 地域的な医師の偏在等により、医師の需給がひっ迫し、医療機関によっては医師不足が医療機関の運営に深刻な影響を与えている状況が生じています。また、医療現場における働き方改革の進展により、医師、看護師等の医療従事者の勤務体制の改善が求められ、人件費の上昇をきたす可能性があります。アライアンス先医療機関が、こうした医療現場における勤務環境の変革に対応できない場合には、当該医療機関の経営状況が悪化する可能性があります。このような場合には、当社グループでも当該医療機関からの業務委託報酬等の売上が低下するなど、経営成績が不安定になり、財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、当該医療機関の経営状況の悪化を回避するために、勤務環境等の適正化のための指導・教育等のサービス提供や医療従事者の紹介等を積極的に行っています。

④ アライアンス先医療機関に対する与信・債権管理について

 アライアンス先医療機関の一部に対して、当社グループが運転資金等の貸付を行っています。また、アライアンス先医療機関の金融機関等からの借入について、当社グループが連帯保証を行っているケースもあります。アライアンス先医療機関の経営状況の悪化等により、貸倒損失の発生、連帯保証の履行、貸倒引当金計上、債務保証損失引当金の計上等が発生する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、当該医療機関の経営状況の悪化を回避するために、経営管理指導等のサービス提供を適切に行っています。

 

⑤ アライアンス先医療機関の出資持分について

 アライアンス先医療機関の出資持分を当社グループが保有する可能性があります。アライアンス先医療機関の経営状況の悪化等により、出資持分の価値が毀損し、当社事業計画の達成が遅延する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、アライアンスを予定している医療機関の事業・財務・法務等について事前にデュー・デリジェンスを行い、十分にリスクを吟味し収益力を分析した上でアライアンスを締結するようにしています。またアライアンス締結後には、当該医療機関の経営状況の悪化を回避するために、経営管理指導等のサービス提供を適切に行っています。

 

⑥ 競合について

 医療機関とのアライアンス事業や医療機関に対する経営コンサルティング事業においては、既存の競合他社に加え、新規参入者との競争も激しくなっています。現在は、当社グループが競争優位性を確保している事業であっても、新規参入者を含めた競合他社との競争に晒されており、将来において当社グループが競争優位性を確保できなくなる可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、競合他社に対抗し得る専門性の強化と付加価値サービスの創造・展開に取り組んでいます。

 

⑦ 人材確保・労働環境について

 当社グループの成長は、人材に大きく依存するため、専門性の高いコンサルタントなど、優秀な人材を採用・育成できなかったり、その流出を防止することができなかったりした場合には、当社グループの成長や利益に悪影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、性別・年齢を問わず、多様で優秀な人材の確保に向けた採用活動と、より活躍できる環境を整備すべく、働き方改革の推進、人事・福利厚生諸制度の改善、フレックス勤務や在宅勤務等の柔軟な働き方に関する制度・環境整備を進めるなど、魅力ある職場づくりに取り組んでいます。

 

⑧ アライアンス先医療機関との業務委託契約について

 アライアンス先医療機関の意向によって、当該アライアンス先医療機関との業務委託契約が解除される可能性があり、その場合は当社グループの経営成績が不安定になり、財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、アライアンス先医療機関が持続可能に地域に密着・貢献し、地域医療を担うために必要不可欠なパートナーとなれるよう、良質なサービスを提供するべく鋭意努めています。

 

⑨ 海外在住患者に対するビジネスについて

 当社グループでは、当連結会計年度において、初めて、海外在住患者向けに国内医療機関を紹介するビジネスと、海外在住患者向けにオンライン診療を紹介するビジネスを開始しました。

 しかし、健康保険法に基づき厚生労働省が制定する保険医療機関及び保険医療養担当規則によれば、保険医療機関は、患者や事業者に対する経済上の利益の提供により、患者が診療を受けるように誘引することが禁止されています。従いまして、当社グループが保健医療機関に対し海外在住患者を紹介することで対価(経済上の利益)を取得することは、場合によっては、当該医療機関において、かかる規則違反が生じる可能性があります。また、海外在住患者の個人情報の取得や利用は、我が国及び当該国の個人情報保護に関する規制の適用の問題が生じる可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、国内及び海外の法令を研究し、コンプライアンスを徹底した上で事業を少しずつ進めるよう鋭意努めています。

 また、これらの事業は、当社グループの新規事業であり、当面は投資が先行するため、安定した事業運営ができるようになるまでの間、赤字が続くことになります。かかる赤字については、当社グループの予算に織り込み済みではありますが、仮にそのような赤字期間が想定外に長期化すれば、当社グループの経営成績が不安定になり、財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、赤字期間が想定外に長期化する場合等には、事業内容の見直し等を行い、当社グループの経営成績の安定化に努めます。

⑩ ホスピス住宅事業及び福山医療器株式会社について

 当社グループでは、当連結会計年度において、医療関連事業の強化のため、福山医療器株式会社を買収し、また、ホスピス住宅の運営事業を開始しました。

 このうち、ホスピス住宅の運営事業は、当面は投資先行となるため、安定した事業運営ができるようになるまでの間、赤字が先行することになります。かかる赤字先行については、当社グループの予算に織り込み済みではありますが、仮にそのような赤字先行期間が想定外に長期化すれば、当社グループの経営成績が不安定になり、財務体質が弱体化する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、赤字先行期間が想定外に長期化する場合等には、事業内容の見直し等を行い、当社グループの経営成績の安定化に努めます。

 福山医療器株式会社の買収は、既存の商取引を承継するものであり、当連結会計年度において既に一定の成果を出しております。もっとも、株主及び経営者の変更に伴う、中長期的な商取引に対する影響は、未知数の部分もございます。

 

(4)情報漏洩・情報システムに関するリスクについて

 当社グループでは、当社グループの秘密情報や個人情報などの重要な情報を保有しており、また、アライアンス先医療機関の秘密情報や個人情報などの重要な情報に触れる機会があり、万が一、情報漏洩が発生した場合には、多額のコスト負担や当社グループの信用に重大な影響を与え、業績や財務体質にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、社内規程の制定、役職員への教育、情報インフラ等の社内体制を整備し、情報セキュリティの強化に取り組んでいます。また、万が一、情報漏洩が発生した場合には、直ちに関係者に公表し、被害拡散防止等の対策を講じるとともに、徹底した事実調査と原因究明を実施し、再発防止策を策定することにより、信用回復を図ることができるような対応策を整備しています。

 

(5)不動産関連事業に関するリスクについて

 当社グループの財政状態・経営成績に重要な影響を与える可能性がある保有不動産が2件あります。

 今後、売却を行っていく予定ですが、不動産市場の停滞等により、減損損失や売却損等が発生する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、上記不動産の売却が完了するまで、適切な管理を行います。

 

(6)持分法適用関連会社である株式会社DAホールディングスに関するリスクについて

 当社グループは、持分法適用関連会社である株式会社DAホールディングスの株式の29.5%(議決権ベース)を保有しており、その投資有価証券残高は2024年3月末時点で794百万円となっています。

また、当社は、株式会社DAホールディングスの連結子会社である株式会社DAインベストメンツに対して貸付金を有しており、その貸付金残高は2024年3月末時点で258百万円となっています。

株式会社DAホールディングスは、その連結子会社において、

・医療関連事業

・不動産関連事業

を行っていますが、その経営状況によっては、持分法投資損失、貸倒損失、貸倒引当金計上等が発生する可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、株式会社DAホールディングスの経営および事業の健全化を図るため、同社の事業のフォローアップや不動産関連市場の定期的なモニタリングを積極的に行っています。

 

(7)偶発債務に関するリスクについて

 2022年6月24日に受領した特別調査委員会の調査報告書によれば、当社の連結子会社グローム・マネジメント株式会社の元代表取締役が、稟議及び取締役会決議を経ず、取締役会への報告も行わないまま、連結子会社グローム・マネジメント株式会社を委託者とする2件の業務委託契約(報酬総額約100百万円)を締結していたことが判明しました。当社及び連結子会社グローム・マネジメント株式会社としては、これらの業務委託契約は実体を欠くものであり、当該報酬を支払う理由はないと判断しているため、報酬の支払いを求めて提訴された場合、全面的に争う予定です。今後の係争の推移によっては当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がありますが、現時点では未確定です。

 

配当政策

3【配当政策】

 親会社株主に帰属する当期純利益の概ね15%に相当する金額を、期末配当として年1回、配当することを基本方針としています。この基本方針に基づき、当期の期末配当については行わないこととして、2024年6月27日開催の第32回定時株主総会にて決議されました。

 内部留保金については、アライアンス先の新規獲得、周辺ビジネスの拡大等、将来の医療関連事業の成長に優先して充当いたします。

 なお、配当の決定機関は株主総会ですが、当社は取締役会による決議により会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めています。