2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは「第1 企業の概況」に記載のとおり、多岐にわたる事業を営んでおり、各事業においてリスク管理計画を策定しリスク回避を行うほか、当社が資産・資金を保有・調整することで、グループ全体のリスクのコントロールに努めていますが、当社の営む事業の内容や経営方針等に照らし、当社の財政状態および経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えるリスクとしては、主として以下のようなものがあります。

なお、これらのリスク、「1 経営方針、経営環境および対処すべき課題等」および「4 経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析」のうち将来に関する記述は、有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであり、実際の業績等はこれらの見通しとは異なることがあります。

また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきまして、合理的に予見することが困難であるものについては記載していません。

 

(1)事業運営に影響を及ぼす可能性があるリスク

①自然災害・感染症拡大

地震や大雨等の自然災害が発生し、営業活動に必要な駅施設や車両、商業ビル等の施設が毀損した場合や電カ・燃料・建設資材・商品等の調達が困難となった場合、営業活動の停止に伴う減収や復旧のための多額の費用の支出、調達価格の高騰等により、当社グループの業績に深刻な影響を与える可能性があります。

また、当社グループの事業エリアにおいて、新型ウイルス感染症等の疾病が発生・流行した場合、個人消費者の出控えに伴う減収、勤務する従業員の確保が困難となることによる営業活動の縮小等のほか、感染症収束後の個人消費者の志向や消費行動の変化に伴う既存事業の不振等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは多角的な事業を展開するとともに、福岡以外の地域での事業を拡大することでグループ全体の事業継続性を確保するよう努めており、各事業においても安全性の確保を最優先とし、危機管理体制や事業継続計画の継続的な改善を行うことで、社会的使命の実現と業績への影響の最小化を図っています。

また、安定的かつ継続的な調達を行うため、調達先との良好な取引関係の維持発展に努めるとともに、日頃から調達先の分散化や計画的な発注、十分な価格交渉を行うことで、影響の最小化を図っています。

 

②海外の社会情勢

海外における政治経済情勢の大幅な変動、テロや紛争の発生、各国の法的規制の変更等によって、海外における事業活動の縮小・停止が生じた場合、各事業の営業収益の減少等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、経営会議や常務会等の会議体において、適宜、事業の状況をモニタリングし、社会情勢の変動等によるリスクを踏まえたうえで戦略等の見直しを行うとともに、各事業間の連携や専門家の活用により、法的規制等に適切に対応しています。

また、海外投資にはそのリスクの大きさを反映し制限を設け、その範囲内で実施することで、当社グループ全体の経営成績等に甚大な影響を及ぼすことがないようにしています。

 

 

③外交関係等の国際情勢

外交関係の悪化等国際情勢の変化によって、訪日旅行者が減少した場合、各事業の営業収益の減少等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

また、外交関係等の国際情勢の悪化により電力・燃料・建設資材・商品等の調達が困難となる場合や調達価格が高騰した場合等には、事業規模の縮小や費用の増加等により、業績に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、経営会議や常務会等の会議体において、適宜、事業の状況をモニタリングし、社会情勢の変動等によるリスクを踏まえたうえで戦略等の見直しを行っています。

また、燃料や建設資材等の調達については、安定的かつ継続的にこれを行うため、調達先との良好な取引関係の維持発展に努めるとともに、調達先の分散化や計画的な発注、十分な価格交渉を行うことで、影響の最小化を図っています。

 

 

④事故・法令違反・不祥事等

当社グループが大規模な事故や火災を発生させた場合、死傷した利用者等の補償等の対応だけでなく、事業の安全性に対する利用者の信頼や当社グループ全体に対する社会的評価が失墜し営業活動に支障をきたすなど、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

また、各種コンプライアンス違反(雇用問題、ハラスメント、人権侵害等)、独占禁止法等の法令違反、個人情報の漏洩等の不祥事が発生した場合、罰則金支払、損害賠償請求のほか、信用失墜による売上減少等により業績に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、安全性の確保を最優先とし、特に重要なものについて、代表取締役である執行役員が統括する部門横断組織を設置し、グループ横断的に対応する等、各事業において事故の絶滅のための取り組みを実施するとともに、保安施設や防災設備の整備・管理に努めることで、事故等の防止に取り組んでいます。

また、法令・倫理遵守等、従業員が従うべき行動準則となる「にしてつグループコンプライアンス方針」を制定し、役員が率先してこれを遵守するとともに、具体的行動指針等を示したコンプライアンスマニュアルを定め配布するなど、コンプライアンス体制の整備、充実に努めています。

なお、各種損害保険に加入し、業績に与える影響を低減していますが、すべての損害や賠償費用の支出に対応できるものではありません。

 

⑤国内の社会情勢、法的規制等

鉄道事業およびバス事業において運行本数や運賃を変更しようとする際には、原則として、国土交通大臣の認可や事前届け出が必要であるため、社会情勢が変動し当社グループの事業環境に急激な変化が生じた場合、需要との乖離をただちに修正することができず、これらの事業の利益率が低下するなど、業績に大きな影響を与える可能性があります。

また、法的規制が強化された場合や新設された場合、あるいは国や地方公共団体の各種政策が変更された場合、その対応のための費用の増加、事業戦略の見直しによる収支の変動等により、業績に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、社会情勢の変化を踏まえ、国や地方公共団体とも連携しながら、事業戦略の策定や事業運営にあたるとともに、監督官庁の指導のもと法的規制等に適切に対応するよう努めています。

また、経済情勢の変化や規制等の変更に伴う顧客需要の変化を適切に捉え、魅力ある商品・サービスを提供するよう努めています。

 

⑥金融情勢、株価・為替相場の変動

金融情勢の変動等により金利が大幅に上昇した場合の支払利息の増加や為替相場に大幅な変動が生じた場合の為替差損等の発生、また、株価の大幅な変動等により投資有価証券について時価の著しい下落等が生じた場合の評価損の計上等により、業績に影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら財務健全性の維持に努めるとともに、海外事業の展開にあたっては、投資判断基準を設け、経営会議や常務会等の会議体において為替変動等によるリスクを踏まえたうえで実施の可否を判断しています。

また、投資有価証券については、毎年、保有の適否について経営への影響を分析したうえで個別銘柄毎にその保有目的や資本コストを考慮した便益とリスク、将来の見通し等を踏まえて総合的に検証し確認を行っており、評価損の計上を最小化するよう努めています。

 


(2)中長期的な経営戦略に影響を及ぼす可能性があるリスク

①国内人口の減少、少子高齢化

当社グループの事業エリアの人口減少傾向に歯止めがかからない場合や高齢者の利便性に資する移動手段の提供等高齢者に対する新たなサービスを提供できない場合、当社グループの鉄道事業およびバス事業の輸送人員の減少による営業収益の継続的な減少や各事業の縮小、廃止を招くなど、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

また、人口減少や少子高齢化の進行により、当社グループが想定する人員体制を必要な時期に確保できない場合には、各事業の規模縮小等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、沿線各エリアの「まちづくり構想」の策定・実現への取り組みや交通ネットワークの強化・再整備等により住みたくなる沿線づくりを進めるとともに、住宅事業やホテル事業においてアジアや首都圏等の域外での事業拡大を進めています。

また、MaaS等持続可能な公共交通のあり方の研究やオンデマンドバス・自動運転の実証実験等、ICTを活用した商品・サービスの提供に取り組むとともに、シニアマンション「サンカルナ」やサービス付き高齢者向け住宅「カルナス」の事業展開等、シニアマーケットを捉えた収益力強化に取り組んでいます。

人員体制については、積極的な採用活動のほか、有資格者確保のためのバス運転士の教習所の設置等により、必要な人員の確保に努めるとともに、AIを活用した自動運転技術の実験を進めるなど、人手不足の状況下においても事業規模の維持を可能とするための対策に取り組んでいます。

 

②ICT・デジタル化、省人化技術の社会実装

当社グループの既存事業において、ICTの進展やデジタル化等への適切な対応が進まない場合や、これらに対応した新たな商品・サービスを提供できない場合、各事業の営業収益等の減少や人財のミスマッチによる利益の減少等により、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

また、情報システムや通信ネットワークに重大な障害が生じた場合、事業運営に支障を来たし、営業収益が減少するなど、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、グループ全体でDXを推進し、MaaSの研究やキャッシュレス決済システムの導入を進めるなど、デジタル技術を活用した商品・サービスの提供に取り組んでいます。

また、ICT統制を強化し、情報の適切な管理とセキュリティを確保するため、「西鉄グループICTマネジメント委員会」を設置するとともに、情報システム等については、通信ネットワーク機器にファイアウォール等の物理的対策を講じるほか、データセンターの常時有人監視やセキュリティ規則の整備とそれに基づく体制を構築するなど、システム障害等の防止に努めています。

 

③気候変動

当社グループでは、気候変動の物理的リスクとして、豪雨等による施設や車両への被害によるコストの増加や、それらに伴う鉄道やバスの運行不能等、各事業において営業停止による営業収益の減少等により、業績に影響を与える可能性があります。移行リスクとしては、炭素税の導入、再生可能エネルギー普及の進展、省エネ規制の強化等によるコストの増加や、顧客行動・消費者選好の変化に伴う営業収益の減少等により、業績に影響を与える可能性があります。

また、当社の取り組みについて投資家の理解を得られない場合、投資市場からの資金調達を困難にし、必要な時期に必要な資金を調達できなくなる可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、地球環境の保全を重要課題と認識し、環境と調和ある事業活動を通じて、循環型社会の実現と地球温暖化の抑制を目指すとともに、これらの取り組みについて適切な開示に努めています。風水害等に強い施設や車両の整備、BCPの継続的見直し等に取り組むとともに、長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」で策定した2050年カーボンニュートラルを目指すロードマップに基づき、脱炭素社会への取り組みを進め、気候変動への対応に努めています。

 

※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに基づく開示情報は、

「2 サステナビリティに関する考え方および取り組み (2) ①気候変動への対応」に記載しています。

 

④人権の尊重、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)

当社グループは、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、当社グループの持続的な成長を確保する上での強みとなるとの認識のもと、従業員一人ひとりがいきいきと働き、それぞれの個性や能力を発揮できる機会および環境の整備・拡充を進めています。また、当社グループが事業を展開する国・地域には、人種差別や政治不安に起因する人権課題が存在する地域もあり、取引先と協働した取り組みが求められています。

しかしながら、当社グループの事業拠点、協業先や顧客等を含む範囲において、これらの課題に適切に対応できなかった場合、多様な人財を持続的に確保できず各事業が縮小、廃止となる可能性に加え、地域住民、顧客・消費者、株主・投資家等のステークホルダーからの信頼を損なうことによるブランド価値の低下等、業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループでは、多様な人財の確保、サステナブルな成長を支える人財力強化を重要課題と認識し、女性活躍推進に取り組むほか、中核人財の登用においても、性別や国籍、新卒または中途等の別なく、個々の能力に応じて行うとともに、働きがいを向上させる環境の整備やワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいます。

また、2022年3月に制定した「西鉄グループ人権方針」に基づき事業活動に関わるすべての人の人権の尊重を求めるとともに、人権・同和問題、ハラスメント・障がい者・LGBTQ等に関するの職場研修等を通じて人権意識の醸成に努めています。

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への安定した利益還元を重視し、適切な内部留保の確保による財務体質および経営基盤の強化を図りながら、安定的・継続的な配当を実施することを利益配分についての方針としています。

当事業年度の配当につきましては、このような考え方のもと、業績等に鑑み、1株当たり35円(うち中間配当17円50銭)の普通配当に当社鉄道開業100周年の記念配当としての5円を加え、1株当たり年間配当40円としました。

内部留保資金につきましては、安全対策や当社グループの成長のための設備投資および借入金の返済等に充当してまいります。

剰余金の配当は中間配当と期末配当の年2回とし、中間配当については取締役会、期末配当については株主総会を配当の決定機関としています。

なお、当社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる旨、定款に定めています。

また、当社は連結配当規制適用会社となっております。

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月10日

取締役会決議

1,383

17.50

2024年6月27日

定時株主総会決議

1,779

22.50