2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    14,431名(単体) 38,433名(連結)
  • 平均年齢
    39.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    15.2年(単体)
  • 平均年収
    9,494,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

フルサービスキャリア事業

29,013

(1,621)

LCC事業

1,742

(82)

マイル/金融・コマース事業

1,657

(355)

その他

6,021

(737)

合計

38,433

(2,795)

(注)1.従業員数は、休職者および当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの

     出向者を含みます。

2.従業員数欄の( )内には、臨時雇用者数の年間の平均人員数を外数で記載しております。

臨時雇用者数には、人材会社からの派遣社員及びパートタイム社員を含めております。

3.特定のセグメントに分類できない会社の従業員は、主に従事している業務および業務に従事した時間に基づく按分計算により、適切なセグメントに帰属させています。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2025年3月31日現在

 

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

常勤社員

14,431

39.7

15.2

9,494

 

 

 

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

フルサービスキャリア事業

14,153

(113)

LCC事業

11

(0)

マイル/金融・コマース事業

83

(0)

その他

183

(7)

合計

14,431

(120)

(注)1.従業員数は、海外現地雇用社員を含みますが、平均年齢、平均勤続年数は、海外現地雇用社員を母数に含んでおりません。

2.従業員数欄の( )内には、臨時雇用者数の年間の平均人員数を外数で記載しております。

臨時雇用者数には、人材会社からの派遣社員及びパートタイム社員を含めております。

3.他社への出向者および派遣社員(2,743名)、休職者(1,304名)は含んでおりません。

4.平均年間給与は、各種手当等の基準外賃金および各種手当を含んでおります。また海外雇用社員の給与は含んでおり、他社への出向者の給与は除いて算出しております。

5.平均年間給与は、国内雇用社員と海外雇用社員の平均であり、年間の人件費に含まれる現金給与相当額を当事業年度中の平均在籍人数で除して算出しております。

 

(参考情報)

 

平均年間給与(千円)

地上社員

6,436

運航乗務員

20,051

客室乗務員

5,924

合計

7,517

(注)グループ連結平均年間給与は、当社グループの連結人件費に含まれる現金給与相当額を当事業年度中の平均在籍人数で除して算出しております。

 

(3)労働組合の状況

2025年3月31日現在

 

会社名

名称

組合員数

(名)

構成

上部団体

提出会社

JAL労働組合

9,403

地上社員・客室乗務員

航空連合

日本航空乗員組合

2,358

地上社員・運航乗務員

航空労組連絡会(航空連)

日本航空キャビンクルーユニオン

168

客室乗務員

航空労組連絡会(航空連)

日本航空ユニオン

315

地上社員

航空労組連絡会(航空連)

(注)連結子会社には、株式会社JALグランドサービスのJALグランドサービス労働組等、日本トランスオーシャン航空株式会社の日本トランスオーシャン航空労働組合等があります。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 ①提出会社

当事業年度

補足説明

管理職に占める女性労働者の割合(%)

 (注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)

 (注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注3)

全労働者

うち正社員

うちパート・有期労働者

33.9

87.5

50.3

48.9

50.2

(注4、5)

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含みます。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等および育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。男女の賃金差異に記載した数値は、男性の平均年間賃金を100%とした場合の女性の平均年間賃金の割合です。

4.男女の賃金差異は、職種別の単価の差や勤続年数の差、男女構成比の偏りの影響を受けております。

なお職種別の詳細は以下のとおりです。

・地上社員正社員の男女賃金差異76.9%(平均勤続年数:男性22.7年、女性10.2年、人数比:男性77.4%、女性22.6%)

・運航乗務員正社員の男女賃金差異46.1%(平均勤続年数:男性19.4年、女性6.3年、人数比:男性97.8%、女性2.2%)

・客室乗務員正社員の男女賃金差異134.2%(平均勤続年数:男性3.5年、女性12.0年、人数比:男性1.6%、女性98.4%)

5.部分就労の労働者については、フルタイム労働者の所定労働時間で換算した人員数を基に平均年間賃金を算出しております。

 

 ②連結子会社

 

当事業年度

補足説明

会社名

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注3)

全労働者

うち正社員

うちパート・有期労働者

株式会社ジェイ

エア

36.0

100.0

32.4

30.6

30.9

(注4)

日本エアコミュ

ーター株式会社

18.3

57.1

50.2

50.6

28.8

(注4)

株式会社北海道

エアシステム

8.3

100.0

50.4

49.6

(注4)

日本トランスオ

ーシャン航空株

式会社

28.4

57.1

50.6

49.4

46.4

(注4)

琉球エアコミュ

ーター株式会社

12.5

100.0

51.4

53.6

33.5

(注4)

株式会社ZIP

AIR Tok

yo

0.0

40.0

24.0

22.7

46.0

(注4)

スプリング・ジ

ャパン株式会社

18.8

60.0

35.9

47.1

11.8

(注4)

株式会社JAL

スカイ

76.6

75.0

101.8

87.4

129.1

(注5)

JALスカイエ

アポート沖縄株

式会社

36.7

85.0

87.3

83.7

88.6

(注5、7)

株式会社JAL

スカイ大阪

90.3

100.0

92.9

61.5

96.6

 

株式会社JAL

スカイ九州

95.0

138.5

124.1

79.6

(注7)

株式会社JAL

スカイ札幌

93.3

123.9

123.1

51.9

(注5)

株式会社JAL

スカイ金沢

75.0

50.0

85.6

87.2

57.1

 

株式会社JAL

スカイ仙台

28.6

81.5

78.3

119.4

(注5)

株式会社JAL

グランドサービ

6.3

100.0

66.5

72.4

73.9

(注7)

株式会社JAL

グランドサービ

ス大阪

12.5

100.0

64.3

85.7

75.7

(注5)

株式会社JAL

グランドサービ

ス九州

0.0

100.0

65.7

76.5

76.9

(注5)

株式会社JAL

グランドサービ

ス札幌

0.0

100.0

66.9

78.8

85.1

(注5)

株式会社JAL

エンジニアリン

3.7

98.7

75.0

73.7

68.1

(注5)

 

当事業年度

補足説明

会社名

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注3)

全労働者

うち正社員

うちパート・有期労働者

株式会社JAL

メンテナンスサ

ービス

0.0

61.2

87.3

41.9

(注6、7)

日航関西エアカ

ーゴ・システム

株式会社

0.0

100.0

83.1

82.8

84.0

 

株式会社JAL

カーゴサービス

9.7

60.0

77.2

76.3

66.8

 

株式会社JAL

カーゴハンドリ

ング

0.0

100.0

75.8

77.9

84.1

 

株式会社JAL

カーゴサービス

九州

0.0

69.5

69.3

103.9

(注5)

株式会社JAL

ナビア

94.3

123.1

106.5

100.9

(注5、7)

株式会社JAL

マイレージバン

66.7

100.3

97.2

59.5

(注7)

ジャルロイヤル

ケータリング株

式会社

15.0

87.5

72.0

81.5

79.9

 

株式会社JAL

エアテック

2.8

100.0

75.0

82.5

87.0

(注5)

株式会社ジャル

パック

32.6

100.0

89.0

84.8

98.1

 

株式会社JAL

JTAセールス

38.5

0.0

69.7

82.2

102.5

(注5)

株式会社JAL

エービーシー

11.8

72.1

76.4

71.2

(注5、7)

株式会社JAL

UX

14.3

75.0

68.3

68.4

49.8

(注5)

株式会社JALインフォテック

13.6

100.0

87.4

85.4

90.3

(注5、7)

JALペイメン

ト・ポート株式

会社

50.0

 

株式会社ジャル

カード

44.4

100.0

86.7

85.8

93.6

 

株式会社JAL

-DFS

75.0

113.6

115.7

114.7

(注7)

株式会社JAL

ファシリティー

0.0

66.7

68.8

67.9

129.5

 

SJフューチャーホールディングス株式会社

 

 

当事業年度

補足説明

会社名

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注3)

全労働者

うち正社員

うちパート・有期労働者

JAL Agr

iport株式

会社

0.0

 

JALビジネス

アビエーション

株式会社

50.0

 

株式会社JAL

ブランドコミュ

ニケーション

29.4

100.0

98.2

102.4

20.7

 

JTAインフォ

コム株式会社

0.0

87.9

97.9

109.1

 

JAL SBIフィンテック株式会社

 

株式会社JAL

サンライト

38.1

105.8

114.5

87.5

(注7)

株式会社JAL

UXエアポート

44.0

100.0

73.3

75.6

91.4

(注7)

株式会社オーエ

フシー

0.0

83.6

76.6

52.8

(注5)

株式会社JAL航空みらいラボ

14.3

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。対象となる社員がいない場合は「-」を記載しております。各社から他社への出向者を除き、他社から各社への出向者を含みます。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等および育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。対象となる男性社員がいない場合は「-」を記載しております。

3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。対象となる社員がいない場合は「-」を記載しております。男女の賃金差異に記載した数値は、男性の平均年間賃金を100%とした場合の女性の平均年間賃金の割合です。

4.男女の賃金差異は、職種別の単価の差や男女構成比の偏りの影響を受けております。また、正社員の男女の賃金差異は、職種別に異なり、それぞれ勤続年数の影響を受けております。

主なものは以下のとおりです。

<株式会社ジェイエア>

・地上社員正社員の男女賃金差異93.6%(平均勤続年数:男性8.6年、女性8.0年、人数比:男性32.5%、女性67.5%)

・運航乗務員正社員の男女賃金差異74.5%(平均勤続年数:男性10.4年、女性10.4年、人数比:男性96.5%、女性3.5%)

・客室乗務員正社員の男女賃金差異114.6%(平均勤続年数:男性1.6年、女性5.2年、人数比:男性1.4%、女性98.6%)

<株式会社ZIPAIR Tokyo>

・地上社員正社員の男女賃金差異121.6%(平均勤続年数:男性3.4年、女性3.6年、人数比:男性32.4%、女性72.6%)

・運航乗務員正社員の男女賃金差異60.0%(平均勤続年数:男性2.4年、女性2.7年、人数比:男性99.4%、女性0.6%)

・客室乗務員正社員の男女賃金差異120.0%(平均勤続年数:男性2.2年、女性2.0年、人数比:男性4.2%、女性95.8%)

また、株式会社ZIPAIR Tokyoについては、男性は機長と副操縦士、女性は副操縦士のみの人員構成であることも影響しております。

5.男女の賃金差異は、男女別の平均勤続年数の差の影響を受けております。

6.男女の賃金差異は、非正規雇用労働者において、夜勤を含むシフト勤務が男性に偏っていることの影響を受けております。

7.部分就労の労働者については、フルタイム労働者の所定労働時間で換算した人員数を基に平均年間賃金を算出しております。

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

  当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を取締役会で審議・決定しています。取締役会への付議にあたり、社長を議長とするサステナビリティ推進会議において、以下の事項を主な議題とし、マネジメントレビューを行っています。

 ● サステナビリティの実現に向けた取組の重要課題・年度目標の決定、進捗のモニタリング・評価

 ● 気候変動のリスクと機会に関する対応の決定

 ● 環境マネジメントシステム(EMS)のモニタリング・評価

 ● 人権デューデリジェンスのモニタリング・評価

  サステナビリティ推進会議の下部会議体であるサステナビリティ推進委員会(委員長:ESG推進部担当役員)を月次で開催しています。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)/TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に関する情報開示、Dow Jones Best-in-Class Indices評価結果とレビュー、ESG評価の総括、重要課題(マテリアリティ)の再整理、目標の追加・見直しなどについて議論を行っており、取締役会に計3回報告しました。

  また、2023年4月に立ち上げたGX戦略の専門部署が事務局を務めるGX関係役員会と、2024年7月に立ち上げた関係・つながり創造の専門部署が事務局を務める関係・つながり創造役員会をサステナビリティ推進委員会の派生会議として活用しており、それぞれの分野に特化したプロジェクトや施策・事業の進捗管理ができる体制を構築しています。

 

②戦略

  当社グループは、2021年5月に、「安心・安全」「サステナビリティ」をキーワードとした「JAL Vision 2030」、および、その実現に向けた「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」を策定、発表しました。また、「中期経営計画ローリングプラン2023」においてESG戦略を価値創造・成長を実現する最上位の戦略と位置づけ、環境負荷の低減を前提に、サステナブルな人流・商流・物流と関係人口を創出し、コロナ禍を経て見直されつつある「移動・つながり」の力で、地域社会の衰退や幸福度の低下といった社会課題の解決を目指す価値創造ストーリーを示しました。

  当社グループは重要課題(マテリアリティ)を継続的に見直しており、2023年度には8つのマテリアリティに整理しました。これは、航空に限らず当社グループの全事業領域における経済的価値の創出との連動性が高まることを意図して整理されたものです。

  また、2025年度の経営目標・利益目標の達成により中期経営計画を完遂し、2026年度以降のさらなる成長へつなげていくために、2025年3月19日に「中期経営計画ローリングプラン2025」を策定しました。中期経営計画の完遂に向けた具体的な取り組みに加え、既存領域での事業構造改革の深化や社会課題起点での新たな事業の創出に取り組むことをお示ししています。当社グループは、社会課題解決を通じてグループ全体の事業を成長させ、中長期的な企業価値の向上を実現していきます。

 

 

 

③リスク管理

 当社グループでは、リスクを組織の使命・目的・目標の達成を阻害する事象または行為と定義し、リスク管理部が半期ごとにリスク調査と評価を行っています。環境を含むサステナビリティ全般のガバナンスに関わるリスクはサステナビリティ推進会議において、リスクの管理方針と必要な対応策を審議し、その内容は取締役会に報告しています。

 

④指標と目標

 8つのマテリアリティに基づく主な取り組み項目として、「選択肢を増やす」「制約をなくす」「目的を創る」という視点で事業活動を行い、「移動を通じた関係・つながり」を創出していくための取り組み、GX戦略をはじめ豊かな地球を次世代へ引き継ぐための地球環境保全の取り組み、人財戦略が目指す人的資本経営、人権デューデリジェンスにかかわる対応、そして価値創造の基盤となるガバナンスそれぞれに指標と目標を設定し、ESG経営を推進しています。いずれも定量的な数値目標を設定することが可能で、意思を持って推進していく項目を設定し、当社Webサイトで開示しています。

https://www.jal.com/ja/sustainability/initiatives/

 

 

 (2)気候変動への対応

①ガバナンス

 当社グループでは、取締役会が、気候変動・生物多様性に関する執行の取り組みに関し、定期的な報告(2024年度実績:3回)を通じて強い監督機能を発揮しています。執行においては、社長が議長を務めるサステナビリティ推進会議で、基本方針の策定、重要な目標の設定と進捗管理を実施するとともに、課題に対する対応方針を審議・決定します。ESG推進部担当役員が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会で、EMSを通じて把握した個別課題を審議の上、サステナビリティ推進会議に報告します。

 なお、中期経営計画には気候変動への対応を経営戦略に織り込んだ上で、事業を通じた社会課題の解決に向けたサステナビリティ全般における8つの重要課題(マテリアリティ)を定め、これらの課題に対する着実な取り組みを通じ、持続可能な事業運営および企業価値の向上を実現するという強い意志の下、外部ESG評価やCO2排出削減目標などを指標として役員報酬に反映しています。

 

[2024年度に取締役会およびサステナビリティ推進会議体で上程・報告された事案]

・気候変動への対応(移行計画)に関する取り組みの進捗(目標の策定、年度実績)

・TCFD・TNFDに関する情報開示、EMSレビュー

・2050年までのCO2排出量実質ゼロに向けたロードマップの改定

 

 

②戦略

 気候変動への対応は社会の持続可能性にとって重要な課題であるとの認識のもと、当社グループは、2018年に環境省が主管する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」へ参画し、国際エネルギー機関(IEA)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による今世紀末までの平均気温上昇が「4℃未満」と「2℃未満」の2つのシナリオ(RCP8.5(注1)、RCP2.6(注2))に基づき、2030年の社会を考察しました。

 また、航空運送事業者の責務として、CO2排出量の削減をはじめとするさまざまな取組を着実に推進すべく、2050年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)を目指すことを2020年6月に宣言しました。その後、IEA SDSシナリオ(注3)などを踏まえてリスクと機会を考慮して具体的なロードマップを作成し、2021年の「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」および2022年の同ローリングプランに反映しました。さらに2023年の同ローリングプランでは、2050年までのCO2排出量実質ゼロに向け、1.5℃シナリオの世界の実現を目指すことを前提に、GX戦略を策定しました。

 上記に加え、2021年2月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明し、SBTi(Science Based Targets Initiative)と同レベルである2050年までにCO2排出量実質ゼロとする目標を掲げ、グローバルな枠組みでの情報開示に努めています。

 なお、2022年のICAO(国際民間航空機関)の総会にて、国際航空分野における「2050年までのカーボンニュートラル」を目指す長期目標、および、CO2排出削減の枠組みであるCORSIA(注4)の見直しが採択され、国際航空に課せられるCO2排出規制は今後さらに進む可能性があります。

 このような環境下、当社が掲げる削減目標達成を確実なものにするため、2050年までのCO2排出量実質ゼロに向けたロードマップの改定を実施し、「中期経営計画ローリングプラン2025」に反映させました。当ロードマップにおいて、短・中期の実績・計画状況を反映させるとともに、長期の視点(2050年までのCO2排出量実質ゼロ)からバックキャストした各施策におけるCO2排出量の削減効果を反映させています。2030年度までに省燃費機材比率を75%まで拡大させていくとともに、日々の運航の工夫(JAL Green Operations)をグループ会社も含めて推進していきます。また、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)については「2030年度に全燃料搭載量の10%をSAFに置き換える」という目標達成に向け、国内外でSAFの調達を進めるとともに、国産SAF製造事業者との連携深化ならびに調達の拡大に取り組んでいます。廃食油や木質バイオマス等をSAFへ活用することによる資源循環の取り組みを促進させるために、国内の自治体や企業など様々なステークホルダーの皆さまとの協働を進めています。そのほか、カーボンクレジットの活用や除去新技術を持つ企業への出資による次世代新技術の導入促進にも取り組むことで、2050年までのCO2排出量実質ゼロ達成を目指します。

 

[JALグループのネット・ゼロエミッション実現に向けたロードマップ]

 

[JALグループのネット・ゼロエミッション実現に向けたシナリオ作成の前提]

 当社グループは1.5℃シナリオを前提に、2020年6月の株主総会において2050年のネット・ゼロエミッションの目標を掲げました。その後、IEA SDSシナリオなどを踏まえてリスクと機会を考慮して具体的なロードマップを作成しました。

 当社グループの航空機が排出するCO2の削減については、1.5℃シナリオを前提としてICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)での最新の検討資料やATAG(注5)などのシナリオを参照しつつ、2050年までのCO2削減のシナリオを検討し、今後の課題と打ち手について議論を進めています。

 シナリオ作成にあたっては、総需要に基づくRTK(有償輸送トンキロ)の伸びを国際線・国内線それぞれに設定の上、2050年までのCO2総排出量を算出し、各取組による効果を反映しました。

 

(注)1.RCP8.5 シナリオ:IPCC第五次報告書における高位参照シナリオ(2100年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当するシナリオ)

2.RCP2.6 シナリオ:IPCC第五次報告書における低位安定化シナリオ(将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに開発された排出量の最も低いシナリオ)

3.IEA SDSシナリオ:IEA(国際エネルギー機関)による持続可能な開発目標を完全に達成するための道筋である、持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)

4.Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:航空会社全体の国際線のCO2排出量において、基準値を超える排出分を参加国の航空会社で分担してオフセット義務を課す制度。

5.Air Transport Action Group:航空業界のサステナビリティを推進するグローバル連合

 

 気候変動は「安全・安心な社会」における事業運営を前提とした航空運送事業に対して負の影響を及ぼし、結果として、事業の継続を考える上で甚大なリスクとなる可能性があります。

 また、航空会社によるCO2削減をはじめとする気候変動への対応は、省燃費機材への更新やカーボンプライシングへの対応など、さまざまな財務上のインパクトを与える可能性があります。

 当社グループでは、事業に影響を与えるこれらの要素をTCFDにおける気候変動に関するリスク・機会の分類に沿って整理・検討し、下表に記載しています。なお、ここでいう「時期」および「発生時の影響」の区分とは、次に定めた通りです。以下は2024年7月17日の取締役会で見直しをしています。

 

 

リスク

 

 

③リスク管理

 当社グループでは、半期ごとに実施するリスク調査において、特に重要と評価されたものを優先リスクと位置づけ、社長を議長とするグループリスクマネジメント会議でリスク管理の状況を確認し、対応策を審議・決定します。

 経営戦略上の重点課題である、気候変動や生物多様性などの環境課題については、関連する国際社会の法・規制や政策動向などを踏まえつつ、EMSに基づくPDCAサイクルを通じてリスク管理を実施しています。

 

④指標と目標

 当社グループでは、航空運送という事業の特性上、CO2排出量の内訳は航空機からの直接排出が約99%を占めています。この事実を踏まえ、まずは航空機からのCO2排出量削減を最優先課題として対応していきますが、地上施設からの間接排出によるCO2削減についても同様に高い目標を掲げ、真摯に取り組んでいます。国内外のさまざまなステークホルダーとの連携・協働を強化しつつ、CO2削減の国際的な枠組みに則り、日本政府の「クリーンエネルギー戦略」とも整合しながら、最先端の取組で業界をリードしていきます。

 当社グループは、2021年5月に本邦航空会社として初めて2030年度の具体的な目標(2019年度対比で総排出量を10%削減)を掲げ、アライアンスでのSAF共同調達や機材更新時のESGファイナンス活用などに率先して取組み、世界の航空業界の脱炭素化を推進してきました。安定した財務基盤に基づく省燃費機材への着実な更新、日々の運航の工夫の着実な実施、またSAFの具体的な搭載目標を定めた上での戦略的な調達、カーボンクレジットの活用、そして除去新技術を持つ企業への投資といった取組により、目標の達成に向けて果敢に挑戦します。

 

 

 

 なお、SAFについては海外における製造・サプライチェーン構築の動きが加速していますが、日本国内でも政府の「経済財政運営と改革の基本方針2023」「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」「クリーンエネルギー戦略」「GX実現に向けた基本方針」の中で、SAFの製造・流通を推進していくことが明記されました。当社グループは、2030年度に全搭載燃料の10%をSAFに置き換えるという目標を実現するため、国内外でSAFの調達を進めるとともに、国産SAF製造事業者との連携深化ならびに調達の拡大に取り組んでいます。

 

 

 (3)自然資本(生物多様性)への対応

①ガバナンス

 当社グループでは、生物多様性に関する取り組みに対しても、気候変動への対応と同様のガバナンス体制を構築しており、TNFDの提言に基づく情報開示は取締役会で報告・承認されます。

 

②戦略

 当社グループは、TNFDが提唱する、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのLEAPアプローチ(注6)に則り、自然への依存と影響および優先地域の特定をした上で、リスクと機会の評価を行っています。

 当社グループの航空運送事業における自然への依存と影響を洗い出し、依存は「自然遺産・ビーチリゾート等自然が豊かな観光地への運航」、「現地食材商品の販売」、「洪水や暴風雨などの自然災害からの植生による保護」、「水利用」、影響は「空港周辺への環境汚染の可能性」、「GHG排出」、「SAFの製造過程における生態系への影響の懸念」などが挙げられました。

 水リスクに関しては、世界資源研究所が提供する水リスク分析ツールAqueductを活用して当社グループの取水地域を分析した結果、水ストレスレベルが低いとされる日本国内が主であり、リスクは低いと認識していますが、総取水量の8割を占める首都圏(羽田・成田)を中心に、航空機部品洗浄のための水のリサイクルなどを通じて水資源の保全に努めていきます。また、海外についても分析を行った結果、取水量が少ないため優先地域としていないものの、今後当該地域での取り組みも拡大していきます。

 生物多様性リスクに関しては、WWFが提供する生物多様性リスクフィルターにおける重要な生物多様性が存在する地域と当社グループの就航地を照合したところ、日本国内の多くが生物多様性リスクの高い地域であることがわかりました。このうち、特にリスクが高いとされたエリアをSensitive Locationsとしました。また、自然観光需要の高いエリアを「事業が自然に依存している地域」、主要空港である東京を「事業が自然に影響を与えている地域」としてMaterial Locationsとしました。これらを総合的に掛け合わせ、北海道・鹿児島・沖縄・東京を優先して生物多様性の保全に取り組むべき地域と特定しました。今後海外における優先地域も特定していきます。

 生物多様性の損失は航空運送事業の継続を考える上で重大なリスクとなる可能性がある一方、それを管理することは機会にもつながります。特定した依存と影響をもとに自然に関連するリスクと機会の評価を行い、下表のとおり整理しています。今後、財務上のインパクトも分析の上、リスクと機会の評価を深めていきます。

 

(注)6.「LEAP」とは、Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェー

     ズの頭文字をとったもの。サプライチェーン全体を対象に自然との接点を発見し、優先すべき地域を特

     定する(Locate)、自社の企業活動と自然との依存関係や影響を診断する(Evaluate)、診断結果を基

     に、重要なリスクと機会を評価する(Assess)、自然関連リスクと機会に対応する準備を行い、投資家

     に報告する(Prepare)情報ガイダンス。

 

 

 

 

③リスクと影響の管理

 当社グループでは、半期ごとに実施するリスク調査において、特に重要と評価されたものを優先リスクと位置づけ、社長を議長とするグループリスクマネジメント会議でリスク管理の状況を確認し、対応策を審議・決定します。経営戦略上の重点課題である、気候変動や生物多様性などの環境課題については、関連する国際社会の法・規制や政策動向などを踏まえつつ、EMSに基づくPDCAサイクルを通じてリスク管理を実施しています。

 

④指標と目標

 当社グループは、生物多様性には気候変動や資源、環境汚染などさまざまな環境課題が影響していると認識し、包括的な解決を目指しています。また、CO2排出量や廃棄物、水使用量などの環境データについてもTNFDで求められている、「コア・グローバル指標」にもとづき、開示しています。

https://www.jal.com/ja/sustainability/initiatives/

 

 

 

 (4)人財への取組

①戦略

■全体像

 2024年度は、当社グループが「JAL Vision 2030」の実現に向けて、人的資本経営を本格的に推進する重要な節目の年となりました。変化の激しい経営環境や多様化する社会課題に対応するため、「人財の成長こそが企業価値の源泉である」との考えのもと、社員一人ひとりの自律的な成長と多様な挑戦を後押しする制度や仕組みを強化しています。

 JALフィロソフィと健康経営を基盤とし、継続的な人財投資を通じて、多様な人財が多様なフィールドで活躍できる環境を整え、社員が高いスキルや専門性を発揮することで、人的資本の層を厚くしていくことを目指しています。人財戦略においては、人財投資の中長期の目的と定義した「能力を伸ばす」「多様性を高める」「活躍領域を広げる」「知見を得る」と「基盤の取り組み」の枠組みに沿って施策を整理し、推進しました。

 人財戦略の核となるのは、人的投資を通じて、多様な人財が活躍できる多様なフィールドを整えることで、「エンゲージメント」向上と「価値創造力」の強化を実現し、その成果を次の人財投資という形で「還元」するという、好循環を生み出すことです。これにより、社員の意欲と能力を最大限に引き出し、企業の競争力を高め、持続可能な成長を目指していきます。

 

■人財育成方針

 社会や事業環境の変化が加速する中、社員一人ひとりが主体的に学び、挑戦し、成長することを通じて、組織としての変革力を高めることを重視しています。その中核に据えているのが、「自律的キャリア形成」の支援です。社員が自らの意思でキャリアを描き、幅広い経験を積むことができるよう、公募による社内外異動、立候補型人事制度など、自発的な挑戦を後押しする仕組みを整備・拡充しています。

 また、急速に進むデジタル化への対応として、DX人財育成プログラムを展開しています。DXを文化として根付かせることを目的とした全社員対象のプログラムから、職種・役割に応じた専門教育までを整備し、計画的なDX人財の育成を図っています。

 これらの育成施策は、単なる知識習得にとどまらず、変化を前向きにとらえ、行動を起こすマインドの醸成も重視しています。社員一人ひとりが変革の担い手となることを目指し、スキルとマインドの両面から成長支援を今後も継続していきます。

 

■社内環境整備方針

 人的資本を価値創造の源泉と位置づけ、その可能性を最大限に引き出すための環境づくりに取り組んでいます。

 

[多様な知見と専門性を活かした人財ポートフォリオの構築]

事業環境の変化が加速する中、事業構造改革を推進するには、多様な知見と専門性を持つ人財の活躍が、持続的な企業の成長の中核になると考えています。

2024年度は、社員の能力を最大化するための教育や挑戦の場の提供に加え、キャリア採用を積極的に進めました。その結果、さまざまな業界や環境で磨かれたスキルや経験を持つ人財が集まり、価値創造に取り組んでいます。また、高度な専門性を有する人財が専門性を軸にキャリアアップを図ることを可能とする高度専門人財制度を導入し、キャリアパスの多様化を図りました。これにより、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる環境を整備し、事業構造改革を加速させていきます。

 

[DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の推進]

 中長期的に企業価値を向上させ、事業の持続可能性を高めるため、従来の同質性の高い人財のいる企業から、経験や感性、価値観、専門性といった多様な知と経験を持つ人財がいる、多様性の高い企業へと転換を図っています。2024年度は女性管理職の登用、日本における外国籍社員の採用、海外社員の日本派遣、障がいのある社員の活躍の幅の拡大などを推進しました。これにより、多様な人財が働く組織をつくり、さまざまな視点や経験・知識を取り入れることで、固定観念にとらわれることのない活躍機会の創出と、誰もが自分らしくキャリア形成ができる企業を目指します。

 

[エンゲージメントの向上]

 当社グループ最大の強みである多様な人財の力を最大限に引き出すために、社員一人ひとりが自身の仕事に使命感とやりがいを持ち、自律的に挑戦し続けられる状態こそが、企業の持続的成長を支える原動力であると考えています。こうした考えのもと、エンゲージメントの向上を人財戦略の成果目標として据え、人財戦略の各種施策や、JALフィロソフィを通じた組織活性化、健康経営を推進していくことにより、社員のエンゲージメントの向上に取り組んでいます。これにより、社員の生産性を上げ、得られた成果を適切に人的資本投資に回すことで、さらにエンゲージメントを高める好循環をつくることを目指しています。

 

②指標と目標

■2024年度実績(当社グループ)

 

カテゴリー

KPI

目標(2025年度)

実績(2024年度)

人財育成方針

自律的キャリア形成への転換とリスキルの支援

一人当たり売上高の拡大

+38%

(2019年度対比)

(注7)

+20%

(2019年度対比)

社内環境整備方針

新たな人財ポートフォリオの形成

成長領域への人財配置

+3,500名

(2019年度対比)

+3,250名

(2019年度対比)

DEIの推進

女性管理職比率

30%

31.5%

エンゲージメントの向上

エンゲージメントの高い社員割合(注8)

+10pt

(2019年度対比)

+3.7pt

(2019年度対比)

(注)7.本数値は、2024年4月時点で設定した目標値に基づくものです。なお、2025年度以降については、多様な働き方の推進を踏まえ、生産性指標として「一人当たり」ではなく「時間当たり付加価値」の概念を取り入れる方針です。

   8.社員意識調査でポジティブな回答をした社員の割合です。

 

■今後に向けて

 2025年3月に発表した「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2025」では、人財戦略の中長期的な方向性を「個」と「組織」の観点から再評価し、整理しました。複雑で多様化する事業環境の中で、事業戦略との連動を図りながら、多様な人財の成長を積極的に支援し、一人ひとりの成長に柔軟に対応するとともに、それぞれの個性と能力を最大限に活かせる組織づくりを進め、多様な人財が共通の目的に向けて協働できる強固な基盤を築くことで、個人と組織の成長の両立を図ります。

 また、生産性の向上にも全社横断で取り組み、より効率的に、より高い価値を生み出す体制を追求します。これにより、価値創造力の向上、適正な社員還元、エンゲージメントの向上を図ります。そして、エンゲージメントの高い社員が創造する新たな価値を通じて、継続的な社員還元を行う好循環を生み出す、という中長期的な理想の姿を追求していきます。