2026年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)安全

①航空機事故について

 当社は安全を全ての基盤とし、高品質な航空サービスを提供するべく、高い定時運航率・顧客満足を維持しています。当社の運航便において航空機事故または重大インシデントが発生した場合、人的・物的損害の発生に加え、社会的評価の著しい低下や損害賠償請求、行政処分による運航停止等により、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります 。特に人的損害が生じた場合には、社会的な信用・信頼を根本から揺るがす可能性があります 。また、発生した損害が加入している航空保険の填補範囲を超えるリスクや、他社における事故であっても、業界全体の信頼低下により航空需要が減退し、当社の業績に波及するリスクも内在しています。

 

②人材の確保について

 当社における人材の中でも、操縦士、運航管理者、整備士等の航空法に基づく国家資格を有する専門人材について、雇用環境の変化により必要数を確保できない場合、路線の維持や事業拡大に制約を受ける可能性があります。また、自社養成には長期の教育期間を要するため機動的な増員が困難であるほか、ストライキ等の労働争議が発生した場合には、運航に支障をきたし業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③災害等について

 当社の全ての運航管理は羽田空港で行われており、また、国内路線の多くは羽田空港、新千歳空港、神戸空港、福岡空港、那覇空港等の国内主要空港を利用しております。このため、当該地域において地震、洪水、台風、大雪等の大規模な自然災害や火災、またはこれらに起因する労働争議や施設障害が発生した場合、運航管理機能の停止や空港施設の損壊により、発着便の欠航や運航ダイヤの大幅な乱れが生じる可能性があります。これにより、減収や復旧費用の発生が生じ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)経済・社会環境の変化

①景気動向の影響について

 航空業界は、旅客需要等について景気動向等の変動による影響を受けております。当社の事業はレジャー(非ビジネス)目的の旅客需要への依存度が高く、景気後退や物価上昇に伴う個人消費の冷え込みは、旅客数減少に直結する可能性があります。また、地上交通機関やLCCとの競合、ビデオ会議普及によるビジネス慣習の変化、少子高齢化による人口減少等により、旅客需要が構造的に減少した場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②原油価格の上昇に伴う燃料費への影響について

 燃料費は、当社の営業費用の相当部分を占めているため、地政学的要因や需給バランスの変化等による航空燃料価格の高騰は、当社の営業損益に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社は、燃料費に係る原油価格については商品スワップ取引を行い、変動リスク低減に努めておりますが、これらの取り組みが、燃料費の変動による影響を完全に吸収できるとは限りません。また、当社は燃油サーチャージ制度を導入していないため、コスト増を運賃へ転嫁する際には需要減少を招くリスクを伴います。また、想定外の急激な減便が発生した場合、燃料ヘッジが実需要を上回る(オーバーヘッジ)ことによる損失発生のリスクも内在しています。

 

③為替変動の影響について

 当社の主な費用のうち、航空機リース料、航空機整備費の大部分、機体購入代金等の主要な支出の多くは外貨建で取引されています。このため、為替相場が円安に振れた場合には、円換算での費用負担が増大し、当社の業績を圧迫します。為替予約等により一定の影響緩和を図っていますが、急激かつ大幅な変動が生じた場合には、費用の増減や外貨建債権債務の評価損益が発生する可能性があります。

 

④戦争・テロ等の影響について

 国際的な武力衝突やテロ事件が発生した場合、日本国内においても保安対策の強化に伴う航空会社のコスト負担増や航空保険料の上昇を招きます。また、地政学的リスクに起因する燃料価格のさらなる高騰や、社会不安に伴う旅行マインドの冷え込みが生じた場合、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤感染症による影響について

 感染症の蔓延は、渡航制限や外出自粛による旅客需要の劇的な減退を招きます。国内線主体であっても、水際対策によるインバウンド消失や、デジタル化に伴うビジネス需要の構造的減少が、業績に長期的な影を落とす可能性があります。また、自社従業員の大量感染により運航機能が維持できなくなるリスクも抱えています。

 

(3)航空事業等

①発着枠について

 羽田空港等の混雑空港における発着枠は、当社の事業基盤の根幹です。政策的な見直しや再配分により当社の発着枠が減少、あるいは計画通りに獲得できない場合、事業計画の遂行が困難となります。また、保有する発着枠を有効活用できない場合も、収益性および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

②競争環境について

 国内線における大手航空会社やLCC(格安航空会社)との価格・サービス競争に加え、新幹線や高速バス等の地上交通機関との競合が収益を圧迫するリスクがあります。競合他社の運賃戦略や新規路線の開設等により市場シェアが低下した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③航空機材の導入について

 機材調達をボーイング社および特定のリース会社に依存しており、ボーイング737型機の単一機種による効率的な運営を基本としています。そのため、メーカー側の納入遅延や品質問題、あるいは特定機種に対する安全性への疑義が生じた場合、運航計画の大幅な変更や社会的信用の失墜を招き、経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④使用機材等の整備費の変動について

 航空機やエンジンの点検に伴う整備範囲の拡大や、リース機材返還時の整備費用(リデリバリーコスト)が見込みを上回る場合、費用の急増が業績を圧迫します。これらは航空機の使用状況や状態に左右されるため、将来の支出額を正確に予測できない不確実性があります。

 

⑤第三者のサービスへの依存について

 一部運航乗務員の派遣を受けているほか、航空機の整備、機器の修理、地上ハンドリング、予約センター等の業務において、第三者に一部の業務を委託しています。委託先における人手不足、ストライキ、システム障害等により業務遂行に支障が生じた場合、当社の運航や顧客サービスが停止し、社会的信用や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥資産減損について

 航空機等の固定資産について、収益性の低下等により将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合、減損損失の計上が必要となります。航空需要の大幅な減退や機材の早期退役、資産価値の下落が生じた場合、当社の純資産が減少し、自己資本比率の低下を招く恐れがあります。

 

(4)システム関連

①システム障害等について

 当社の予約販売、搭乗手続き、運航管理等の基幹業務は高度にデジタル化されており、自然災害や通信障害、サイバー攻撃等によってこれらが停止した場合、大規模な欠航や運航ダイヤの混乱を招き、社会的信用の失墜や多額の減収、損害賠償が生じる恐れがあります。また、競争力維持のための新システム導入や更新において、開発の遅延、コストの膨張、あるいは想定した機能の未達が生じた場合、事業運営に支障をきたすだけでなく、ソフトウエア資産の減損処理が必要となり、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

②顧客情報漏洩について

 当社は多くのお客様の氏名、クレジットカード情報等の個人情報、および飛行計画等の重要機密を保有しています。これらが外部からの不正アクセスやランサムウェア攻撃、あるいは役職員の過失や内部不正、委託先の不備等によって漏洩した場合、法的制裁(制裁金等)や損害賠償の発生、ブランド価値の致命的な毀損により、当社の財政状態及び経営成績に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)財務関連

①損益構造について

 当社の費用構成は、人件費、機材リース料、整備費、施設使用料等の固定費比率が高く、これらは旅客数や座席利用率の変動に応じて即座に削減することが困難です。そのため、景気後退や競争激化により旅客単価や利用率がわずかに減少しただけで、営業損益が大きく悪化するリスクがあります。また、長年のコスト削減施策により、さらなる削減余地が限定的となっている点も収益の下押し要因となります。

 

②有利子負債及びリース債務について

 当社は機材の多くをオペレーティング・リースにより導入しており、今後も新型機導入に伴いリース債務が増加する見込みです。多額の債務返済やリース料支払いは手元流動性を圧迫し、事業環境の変化に応じた投資能力を制限する可能性があります。また、リース会計基準等の改正によりリース資産・負債がオンバランス化された場合、自己資本比率等の経営指標が低下し、財務評価に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 

③配当施策について

 当社を取り巻く事業環境は、各種の物価高騰などに加え、足元では中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰や急激な為替変動により、極めて先行きが不透明な状況にあります。こうした外部環境のリスクを考慮した上で、株主還元の継続を基本としつつも、不測の事態に備えた内部留保の充実と、将来成長に向けた投資資金を確保すべき局面であると判断いたしました。

 2026年3月期の業績におきましては、急激な円安進行に伴い多額の為替差益を計上したことにより、配当原資は非資金性の要因を多く含むこととなりました。前述した事業環境の急激な変化や新機材導入が本格化する資金需要等を総合的に勘案し、株主還元とのバランスを慎重に検討した結果、2026年3月期の期末配当を7円といたしました。また、従来公表しておりました配当方針につきましては、外部環境の変動が激しい中でも、安定的かつ継続した配当の実現に向けて、株主還元方針を変更することといたしました。新たな方針は2027年3月期の配当より適用すべく検討を進めており、決定次第速やかにお知らせいたします。

 

④欠損金の繰越控除について

 当社は現時点で税務上の繰越欠損金を有しており、法人税等の負担が軽減されています。しかし、利益計上によりこれらが解消された後は納税額が増加し、キャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。また、十分な課税所得を計上できない場合、控除を受けられないまま繰越欠損金が期限切れとなるリスクも内在しています。

 

⑤繰延税金資産について

 当社は将来の課税所得の予測に基づき繰延税金資産を計上しています。しかし、事業環境の悪化等により将来の課税所得見込額が低下した場合、資産の取り崩しが必要となり、当社の純資産および業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥資金調達について

 金融情勢の変化や当社の信用力の低下等により、計画通りの資金調達が困難になった場合、事業展開や機材導入に支障をきたす可能性があります。また、借入金等に付された財務制限条項(財務コベナンツ)に抵触した場合、期限の利益を喪失し、一括弁済を求められることで資金繰りに重大な悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

(6)その他

①法的規制について

 航空輸送事業は、航空法を始めとする多岐にわたる法令・規制の適用を受けています。これらに抵触し、事業認可の取消しや業務改善命令等の行政処分を受けた場合、事業運営が著しく制限される可能性があります。また、規制遵守のための組織整備や専門人材(航空従事者等)の確保・育成には多額の費用を要し、今後の法改正によってはさらなる追加的負担が生じるリスクがあります。

 

(航空運送事業許可の状況)

(注) 航空法改正に伴い、2000年2月1日より従来の路線免許制から事業許可制へと変更されております。

取得年月

2000年2月(注)

許認可等の名称

事業許可

所管官庁等

国土交通省

有効期限

事業許可証の書換え又は再交付がなされるまでの間、有効とする。

※書換え又は再交付の発生事由は、事業許可の内容、若しくは運航者情報の変更による場合であります。

※最新の許可内容となった日は2019年12月2日であります。

法令違反の要件及び主な許認可取消事由

航空法第119条(事業の停止及び許可の取消し)

・事業許可等に付した条件に違反したとき。

・正当な理由が無く、事業許可等の実施すべき事項を実施しないとき。

航空法第120条(許可の失効)

・航空法第4条第1項各号に掲げる者に該当するに至ったとき。

 

※当社の事業許可等に付された条件及び未実施事項はありません。

 

②環境規制について

 地球温暖化防止に向けた国際的な枠組み(CORSIA等)や国内法に基づき、航空機からの温室効果ガス排出削減が強く求められています。環境規制のさらなる強化や炭素税等の導入、騒音・廃棄物規制の厳格化が生じた場合、新型機材への更新投資やSAF(持続可能な航空燃料)の調達、汚染浄化費用などの多額の支出が発生し、当社の業績を圧迫する可能性があります。

 

③公租公課について

 航空機燃料税、着陸料、航行援助施設利用料等の公租公課は、当社の営業費用の大きな割合を占めています。現在、航空機燃料税については国の時限的な軽減措置を受けていますが、軽減措置のさらなる縮小・廃止や、空港使用料の引き上げが行われた場合、当社の収益性及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

④訴訟・トラブル等について

 当社の事業活動において、航空機事故、労働問題、知的財産権の侵害、契約違反等に関連して、重要な訴訟が提起される可能性があります。係争の内容や結果によっては、多額の賠償金の支払い、社会的信用の失墜、あるいは特定の業務の制限を受けることとなり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主に対する安定的な配当を実施することは重要な経営課題の一つであると考えています。一方、当社は、成長局面にあるため将来の事業展開に備えた財務基盤の強化、成長投資の実行及び利益成長の速度を上げて企業価値の最大化を図ることが、より適切な株主還元になり得るとも考えています。かかる2つの観点の最適バランスを適宜判断し、株主還元の充実に努めて参ります。

当事業年度につきましては、1株当たり7円の配当を実施することを決定しました。

また、従来公表しておりました配当方針につきましては、外部環境の変動が激しい中でも、安定的かつ継続した配当の実現に向けて、株主還元方針を変更することといたしました。

新たな方針は2027年3月期の配当より適用すべく検討を進めており、決定次第速やかにお知らせいたします。

なお、当社は、会社法第459条第1項に基づき、剰余金の配当(中間配当を含む。)を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2026年5月27日

421

7

取締役会決議