リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)リスクマネジメント体制
当社は、当社グループの事業活動における諸種のリスク管理を所管するリスクマネジメント委員会を設置し、常勤取締役及び取締役会で任命された執行役員が、リスク管理基本規程に従い以下のリスク管理体制の構築と運用にあたっております。
当社グループの事業活動に関する事業リスク及びオペレーションリスクについては、取締役及び執行役員の職務分掌に基づき、それぞれの担当管掌ごとに管理することとしております。リスクマネジメント委員会は全社横断的視点で、経営上の重要なリスクの管理に対する全社方針の決定、個々のリスクの抽出、評価、見直し、対応策の検討、管理状況の定期的な確認を行います。また、リスクマネジメント委員会の円滑かつタイムリーな運用を推進するために、経営企画部がリスクマネジメント委員会事務局を担い、各部門のリスク管理部門長とも連携してリスクの低減にあたっております。
(2)リスクマネジメントの運用プロセス
当社は、リスクマネジメント委員会を定期的(年7回)及び必要に応じて臨時に開催しております。委員会では、企業活動に関して抽出されたリスクとその対応方針を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。各担当執行役員管掌下のリスクに対しても、それが当社全体に及ぼすシナリオや他のリスクとの関連性について横断的視点をもって過不足なく点検し、リスクの低減を図っております。
具体的には、当社グループを取巻くビジネス上の環境や、当社グループ固有のオペレーションフローなど内外様々な要因から個別のリスクを抽出・検討し、その重要度等から取組むべき優先順位をつけ、特に重要と認識するリスクを全社リスク管理重点項目とし、経営計画の中に組入れております。重点項目は、年度計画の進捗確認のため、リスク対策の実行やモニタリング状況を四半期ごとにリスクマネジメント委員会にて報告しております。委員会では、必要に応じて適宜、リスク対策についての確認や修正が行われます。
リスク管理の状況については取締役会に対して、第2四半期の終了時点で中間報告を、連結会計年度終了後に年間の総括報告を行っております。また、リスクマネジメント委員会には監査等委員も出席し、リスクの管理状況について確認を行い、必要に応じて意見を得ております。
(3)リスクの抽出・評価プロセス
当社グループが認識する各個別のリスクは、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性がありますが、反面、事業成長の機会にもなり得るため、単に脅威だけではなく好機をも含め、バランスをもった視点でとらえ抽出いたします。当連結会計年度内において抽出したリスクは144項目であり、類型ごとに整理し、リスクマップとして一覧化しております。一覧化した個々のリスクの大きさを表すために、そのリスクが発生する可能性と、発生した場合に事業に与える影響度の二軸で個々のリスク値を算出しております。また、単にリスク値の大きさだけでは判断せずに、リスクアセスメント表を用いて各リスクの特性を総合的かつ多角的に評価・プロットし、当社のリスク対策の優先度とリスク管理重点項目を決定しております。
リスクマップ(項目抜粋)
(4)主要なリスク項目
① 顧客企業の事業環境変化によるリスク
当社グループが提供するコンタクトセンター・BPO等の主力サービスは、アウトソーシングというビジネスの性質上、顧客企業の属する業界での競争激化や法規制の強化などの理由による経営方針の転換、また顧客企業の業績悪化等によるコストの低減などの事情で、当社グループの受託業務量が大幅に変動する可能性があり、その場合は少なからず当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの取引先とは継続的な長期契約が多く、短期間での大きな変動は比較的発生しにくいものの、当該リスクは常に発生する可能性があると認識しております。
顧客ポートフォリオの多様化や個々の顧客企業からの受託領域の拡大、また時流や企業のニーズにあった最新のサービスやソリューションの開発を迅速に進め、提供していくことで取引を拡大し、リスクの低減を図ってまいります。
② 特定の顧客企業への依存度によるリスク
当社グループの当連結会計年度における売上高に対して、東京電力エナジーパートナー株式会社様との取引の構成比は16.4%、株式会社パソナ様は15.4%となっております。また売上高上位5社では、総売上高の約42.0%を占めており、当該顧客企業との取引動向が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。これに対して、営業戦略を加速し、新規取引先の拡大や、既存の顧客企業に対するDXソリューション提案やクロスセルによる取引領域の拡大、またOmnia LINKをはじめとした社会の変化に適応する新たなソリューションの提供を通じ、収益の拡大を進めることで、特定顧客企業への依存度を低下させ、リスクの低減を図ってまいります。
③ 大型スポット業務受託に関するリスク
当社グループが受託する業務は、その多くが中長期の継続的な契約でありますが、社会情勢によるニーズの突発的な発生や、顧客企業からの要請により期間が限定されたスポット業務も例年発生しており、そのうち規模が大きいものを受託した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
大型スポット業務を受託した場合、一時的に売上高が拡大する他、当社グループの人員や保有するスペースの稼働率が向上することにより収益性が上がり、売上高、利益に著しいプラス要因が発生することがあります。さらに当該スポット業務が終了すると、一時的に拡大した収益が剥離することで前述の稼働率が通常レベルに回帰し、翌年度の収益性が低下する可能性をもたらします。スポット業務は毎年発生しておりますが、当社グループにおいてはビジネス拡大の機会でもあります。大型スポット業務の発生は、顧客企業からの突発的な要請や社会情勢の変化、国家レベルでの制度変更などが要因であることも多いため、予測することは非常に困難です。
当社グループでは当該リスクを認識し、スポット業務の売上高比率が高まりすぎないように基準を定めて受注案件の判断を行うとともに、中長期での契約継続が期待できる業務の新規受託の推進や、既存業務の採算性確保によって、大型スポット受託の多寡による経営成績の変動を抑制するべく努めております。
④ 契約に関するリスク
当社グループが提供するコンタクトセンター・BPOサービスは、顧客企業のビジネスプロセスの一部または全部を請負い、改善を図っていくという業務の性質上、また、顧客企業の属する業種業態内で競合する企業群との競争状態や、業界業種で関連する法規も異なることなどの理由から、その内容は一様ではなく、業務ごとに最適な業務プロセスをオーダーメイドで提供しております。その際、実際の業務構築段階において、顧客企業との事前の設計あるいは予測による見込みから業務の難易度や工数が乖離することがあります。また、運営中の受託業務においても、事業環境変化に伴う顧客企業の急な要請による業務要件の変更等が発生する可能性があります。これらの変更要因により、当社グループが顧客企業に請求する項目、単価、数量等にも変更が生じ、その結果として、請求内容の誤謬が発生する可能性があり、その内容によっては当社グループの収益に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、これらの要件変更等によりKPIの変更・追加や業務の目的自体が洗替えされることもあります。顧客企業の目的達成のために、当社グループが当初用意した経営資源の範囲を越えて、より難易度の高い業務となった場合、生産性が低下し採算性が悪化するほか、努力しても顧客企業の満足するKPI基準に到達できずに業務の遂行に支障をきたした結果、受託業務の打ち切りやケースによっては損害賠償請求を受ける可能性があります。これらは当社グループの信用の失墜や経営成績に影響を及ぼすことに繋がります。このようなリスクへの対策として、業務内容の変更が発生した場合には、顧客企業と密接な協議を行うとともに、仕様変更による条件変更に対しての条件交渉を行い、リスクの低減を図っております。
⑤ 人材の確保及び人件費高騰によるリスク
当社グループが提供する各サービスにおいて、高度な専門知識や経験を有する人材の確保は経営の重要課題と考えております。一方で、新規サービスの開発やDXに精通している人材は求人市場でも引く手あまたであり、国内企業だけでなく世界的にも人材がひっ迫しています。当社グループが必要とする知識や経験を有し、顧客企業の要望や社会の変化に応え続けることの出来る人材が、必要な時期に必要なだけ確保できる保証はなく、人員計画に基づく採用が行えなかった場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループが受託する業務を行うためには、その業務に従事する多数のオペレーターの確保が必要となります。しかしながら、労働人口の減少、少子高齢化といった日本の構造的な問題や、景気などの社会情勢によって十分な労働力を継続的に確保できない可能性があり、その結果として採用に係る費用の増加、人件費の上昇が想定されます。近時、インフレ傾向による物価上昇、人手不足による賃金改定の流れ、働き方改革関連法の施行などにより人件費上昇の圧力がかかり続けており、こうした状況が長く続いた場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを認識し、必要な人材を確保するために、様々な採用手法を駆使するとともに、働きやすい環境としての在宅勤務の推進(制度の完備、セキュリティの確保、顧客企業の承諾等)にも取り組んでおります。一人ひとりの従業員が長く働きたいと思えるように、社内資格制度や表彰制度を設けるなど定着率の改善施策にも取り組んでおります。
⑥ システム障害の発生によるリスク
当社グループは、受託しているコンタクトセンター業務において、自社開発を行っているクラウド型PBX「Omnia LINK」を多数利用しているとともに、顧客企業へのライセンス販売も行っております。当該サービスが各種の障害、故障、ならびに重大な欠陥、または外部事業者により提供される通信インフラにおけるネットワーク障害の発生等によって正常に稼働しない状態が継続した場合、コンタクトセンター業務の遂行に重大な支障をきたすだけでなく、それらを起因として顧客企業に発生した逸失利益等に係る損害賠償請求を受けるなど、当社グループの経営成績、財政状態に影響を与える可能性があります。
このため当社グループでは、各種の契約締結において損害賠償上限を定めるなど、損害の拡大の防止を行うとともに、システム開発時の品質保証レビューや稼働前後のシステム点検等によって、機密性・障害許容性・回復性・安定性といった品質特性の向上に努めリスクの低減を図っております。また、システム障害が発生した際の障害報告フローを明確化し、迅速に対応することで早期の復旧ができるように努めております。
⑦ セキュリティと情報漏洩リスク
当社グループはその事業の特性として、顧客企業の営業上及び技術上の機密に該当する情報のほか、顧客企業が保有するエンドユーザー等の個人情報を含む情報資産をお預かりし、業務を行っております。万が一、これらの情報の漏洩事故を発生させた場合、顧客企業との間における取引関係の終了、また、顧客企業やエンドユーザーから損害賠償請求等を受けることによって、当社グループの社会的信用、経営成績、財務状態に影響が発生する可能性があります。年々、サイバーリスクは高度化、巧妙化しており、これらセキュリティリスクへの対応は重要な経営課題となっております。
このような状況を踏まえて、当社グループでは「セキュリティポリシー」及び「プライバシーポリシー」を制定し、その遵守に努めております。また、2004年に情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を、2009年にはプライバシーマーク認証を取得し、情報管理体制の構築・維持に努めるとともに、人的・物理的・技術的といった様々な観点から機密情報管理対策を講じております。また、万が一の情報流出における損害賠償請求へ対応するため、一定額までのサイバーセキュリティ保険を付保しております。
⑧ 内部管理体制におけるリスク
当社グループの急激な事業成長等の変化により、内部管理体制の構築の遅滞や不備が生じた場合や、構築した内部統制システムに重大な欠陥が認められた場合、またこれを逸脱するような事態に至った場合、当社グループの適正な業務運営に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。その結果、当社グループの社会的評価が毀損する恐れがあり、欠陥の重大性や原因等の程度に応じては様々な法的責任が課せられ、金融市場における資金調達力が制限されることによって、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対して当社グループでは、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制に関する要件に則り、「財務報告に係る内部統制評価の基本規程」を制定し、基本方針の設定・展開、内部統制の整備・運用及び評価における全社的な管理体制、手順、ならびに手続きに関する人員及びその編成等を定め、内部統制やコーポレート・ガバナンスの体制を構築するとともに、当該体制が有効に機能するよう取り組んでおります。
⑨ 法規制等に係るリスク
当社グループは、自己の事業活動および顧客企業からの業務を受託する過程において、個人情報保護法や消費者保護関連法のほか、各種労働関係法令、税法、特定商取引法等の様々な法令の適用を受けております。当社グループが、これらの適用法令等に違反した場合、当社グループの事業運営、経営成績および社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、一定の事業を行う上で取得する許認可等については、行政当局の監督を受けておりますが、当社グループがこれら許認可等の維持要件に違反し、当局から業務停止命令、罰金、その他の処分を受けた場合には、対象事業を行うことができなくなる可能性があります。さらには将来、当社グループに適用される法令等の新設または改正、司法や行政の解釈に変更がある場合において、複雑化する法規制への対応の遅れにより事業機会を逸する可能性や、当社グループの事業運営や業績、社会的信用に悪影響を与える可能性があります。
このため当社グループでは、事業上遵守が必要となる法令の改定について、法務部門が中心となり常に情報収集を行い、法規制への対応の遅れが出ないよう取り組んでおります。また、法令の新設や改正等に伴い規程類の改定を行う際には、必要に応じて専門家のレビューを受け、解釈に齟齬が出ないように留意しております。
⑩ 係争・訴訟等に関するリスク
当社グループの受託業務等において、業務に必要な内外の経営資源を確保出来ないこと等により、顧客企業との受託契約に基づく当社グループとしての責務を果たせずに、顧客企業に生じる損害の一部又は全部につき請求を受ける可能性があります。この場合、法令や契約に対する違反の有無に関わらず、これらが訴訟問題となり、当社グループの責に帰すものと認められた場合には、当社グループの経営成績、社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、何らかの理由で当社グループ従業員、または元従業員から労務問題等を理由に訴訟の提起や、それによる損害賠償金の支払いを求められる可能性があります。さらには、これらが係争となり、当社グループに大きな責がある等の司法判断がなされた場合には、当社グループの経営成績、社会的信用に影響を与える可能性があります。
このリスクを認識し、当社グループでは各種の契約締結時においては、法務部門により入念に内容を精査しており、必要に応じて専門家に確認をとるなど、リスクの低減に努めております。
⑪ 労務管理に関するリスク
当社グループでは、受託業務の遂行のため、パートタイム・アルバイトを含む多様な雇用形態の有期雇用従業員を多く雇用しており、これらの従業員もしくは元従業員との間で雇用に関する紛争が発生する可能性があります。また、仮に法令への抵触、ハラスメントなどによって当社グループの責が認められる場合、監督官庁からの指導や処分を受けるほか、訴訟を提起される可能性もあり得ます。このような場合において、当社グループの社会的信用や事業運営に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、労働関係法令の遵守にとどまらず、各種のハラスメント行為の撲滅や、従業員同士が互いを尊重し働きやすい職場環境を整えることが、ダイバーシティの推進においても極めて重要であると認識しております。コンプライアンス遵守のための体制整備に努めるとともに、ハラスメント防止規程を制定し、定期的に役職員、従業員に対して発信し、教育の機会を多く持つことで労務管理におけるトラブルやハラスメント発生の防止に努めております。その他、従業員に対してトラブル等専門の本社相談窓口、社外通報窓口等を設置することで、就業上のトラブルが発生してしまった場合でも、気兼ねなく相談できる体制の確立と即座に対応が可能な体制を整えております。
⑫ 大規模自然災害等に関するリスク
当社グループでは、全国に事業拠点を分散配置するとともに在宅勤務体制の整備を行うことで、大規模な自然災害等が発生した場合においても、被災していない地域の経営資源をもって被災地域の一部業務運営を補うことを可能としております。顧客企業の事業の継続性を支援する事業者として、有事においても可能な限り事業継続できる環境を整備することは経営の重要課題であると認識しております。
しかしながら、大規模な地震をはじめとする津波、風水害、火災などの自然災害、電気・通信網の遮断などの社会インフラの混乱、また未知のウイルス等感染症の大規模流行等の発生によって、当社グループの事業運営、経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは予期せぬ事態の発生に備え、事業継続計画を制定しております。災害等の発生要因別に有事における手順書を備え、定期的な見直しや訓練を行う等、体制整備とリスクの低減に努めております。
⑬ 株式会社パソナグループとの関係について
(ア)資本関係
当社の親会社である㈱パソナグループは、当連結会計年度末現在において当社の発行済株式総数の過半数を超える55.7%を保有しており、当社の役員の選任、他社との合併等の組織再編、定款変更等の当社の株主総会決議の結果に重大な影響力を及ぼす可能性を有します。当社には親会社による事前の承認事項等は存在しておらず、また、議長を含めて独立社外取締役のみで構成される任意の指名報酬委員会を設けるなど、独立性の担保を図っておりますが、それでもなお、当社の株主総会の承認を必要とする事項に関しては、㈱パソナグループが影響を及ぼす可能性があります。
(イ)㈱パソナグループにおける当社グループの位置づけ
持株会社である㈱パソナグループを中心とする企業グループは、連結子会社の㈱パソナを中核事業会社とし、人材関連事業や、地方創生事業等を行っております。
当社は親会社グループの中では「コンタクトセンターサービス」を専門的に提供している唯一の事業会社であり、あわせて「アウトソーシングサービス(自社の経営資源にて運営)を中心としたBPOサービス」を提供しておりますが、「派遣法に基づく人材派遣業務(人材の供給)」を主軸とした事業の変遷としてBPOサービスを提供している親会社グループ各社とは事業特性が異なり、創業より「カスタマーサービス及びBPOサービスの専門家集団としての業務設計等のノウハウによるBPOサービス(業務運営)」を主軸として事業を展開しております。
事業展開の変遷は異なりますが、「コンタクトセンターサービスが含まれず、かつ業務設計等のノウハウが必要ではない定型的なBPOサービス」に関しては、親会社グループ会社(㈱パソナ)でも一部提供しているケースがあり、その点について事業競合が生じている又は生じる可能性を有しております。この事業競合が生じている又は生じる可能性を有している部分の当社の連結売上高に占める割合は、低位と呼べる水準です。当社は親会社グループ内において「コンタクトサービスを専門的に提供する唯一の事業会社」として明確な棲み分けがなされており、自社開発のクラウド型PBX「Omnia LINK」を強みとした、国内でも特徴のあるコンタクトセンターサービスを展開するとともに、これまで培ってきた「業務の運営」を主軸としたBPOサービスの経験・ノウハウ等により、親会社グループ内外に関わらず、独立性と競争優位性を持って事業を展開しており、親会社グループ内での事業競合によって当社グループの経営の独立性を損なうような状況にはありません。
今後も当社グループは経営の独立性を維持しながら、事業競合するサービスを含めて、親会社グループ各社と時には競い合い、時には連携することで当社グループの事業拡大を目指すと共に、親会社グループ全体の事業拡大にも寄与し、人材サービス業界におけるプレゼンスを高め、当社グループ及び親会社グループの双方の企業価値向上を目指してまいります。
(ウ)パソナグループ各社との人的関係
当連結会計年度末現在、当社の取締役である若本博隆氏は㈱パソナグループの取締役副社長執行役員を兼務しております。同氏については、同氏の経験豊富な経営知見を当社の経営に活用すること等を目的に当社が招聘したものであり、当社の独立性は確保されております。なお、当連結会計年度末現在、当社グループにおいて、同氏のほかに、㈱パソナグループおよび、当社グループを除く同社のグループ会社からの人材の受け入れはありません。
(エ)パソナグループ各社との取引関係
当社グループと㈱パソナグループを中心とするパソナグループ各社は、独立第三者間取引で適用される取引条件又は社会通念上合理的な見積りによる公正妥当な取引条件により、営業取引等を行っております。また、当社グループの連結売上高にはパソナグループ各社からの紹介案件によるものが一部含まれますが、当社グループの新規案件獲得の商流は、90%程度が既存取引先からの紹介や、当社グループが開催する各種ビジネスセミナー、展示会、インターネット広告、自社WEBサイト経由でのお問合せ等からによるものであり、パソナグループ各社への依存度は小さい状況にあります。また、パソナグループ各社との取引のうち最も大きいのは株式会社パソナとの取引になりますが、当連結会計年度における売上構成比として15.4%となっておりますが、その大多数はマスタークライアントが存在する受託案件となっており、同社を通じて様々な業界業種のBPO案件を受託しております。なお、パソナグループ各社からの紹介案件かどうかに関わらず、個別案件における取引開始の可否判断や取引の条件交渉は、当社グループが独立した立場で実施しております。
当連結会計年度における当社グループと当社以外のパソナグループ各社との主な取引は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 (関連当事者情報)」に記載しております。
なお、パソナグループ各社との取引を行う場合は、一般株主との間に利益相反関係が生じるリスクが存在することを認識し、取引条件の適切性を確保するために、当社グループが定める関連当事者等管理規程に基づき、取引開始前に、取引の相手方が関連当事者等に該当しないかを関連当事者等管理部門が確認しております。さらに、取引の合理性(事実上の必要性)及び取引条件の妥当性等について経営会議にて審議・検討し、監査等委員会での見解を踏まえた上で、取締役会で決議するものとしております。取引の開始後においても定期的なモニタリングを実施の上、次年度以降の更新、及び当該年度内における取引内容又は条件等が変更となる、もしくは超過等が見込まれる場合、あらためて取締役会にて決議するものとしております。
(オ)親会社が存在していることを踏まえたガバナンス強化の取組み
当社グループの独立性を継続的に確保していくための取り組みとして、常勤監査等委員と監査部による関連当事者等取引申請書類の査閲や独立性監査等の実施等を通じて、内部監査部門及び監査等委員会におけるモニタリングを強化しております。モニタリングでは、関連当事者等取引や不当な事業調整の有無をはじめとした独立性を毀損するような実態が生じていないかどうかを、定期的及び必要に応じて随時に確認を行うことで、ガバナンスの確保を行うとともに株式市場・投資家によるモニタリングも可能となるように親会社グループとの各関係内容等を丁寧に開示してまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要政策の1つとして位置付けております。
業績に応じた株主還元を実施することを基本方針として、2025年5月期以降は配当性向50%を目処とするとともに、継続的かつ安定的な配当の維持にも努めてまいります。
また、内部留保資金につきましては、財務体質の強化を図るとともに、M&Aや新規事業等の成長投資に活用し、当社サービスの拡大に対応すると同時にサービスの品質向上に努める考えであります。当社事業の拡大とサービスの付加価値を高め、利益を追求することにより、株主の皆様の期待に応えたいと考えております。
当期の期末配当金につきましては、上記の2025年5月期以降の方針および前年の配当内容を踏まえ、2023年7月13日に開示しております1株当たり50円の配当予想から、1株当たり53円(配当性向40.4%)へと変更することといたしました。これにより、前期実績からは1株当たり4円の増配となります。また、2025年5月期の期末配当金につきましては、1株当たり77円を予定しております。
なお、当社は剰余金の配当を取締役会にて行うことができる旨を定款に定めております。
(注)基準日が当連結会計年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。