2023年9月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項及びそのリスクへの当社グループの対応方針は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 官公庁への依存

当社グループの当連結会計年度の売上高のうち、本邦の官公庁(国及び地方公共団体)に対する割合は国土交通省25.0%、その他官公庁36.0%、合計で61.0%を占めております。このため、公共事業投資額縮減や、受注単価の下落等が継続した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、公共事業投資額については、近年、8~9兆円の水準で安定的に推移しているほか、15兆円程度の予算規模を目途とした「防災・減災、国土強靭化の5か年加速化対策」が閣議決定されており、今後においても堅調に推移すると見込んでおります。

また、当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、「持続成長プラン2025(2022年10月~2025年9月)」において民間市場の開拓、海外事業の拡大を方針として事業展開を行っており、国内公共事業に限らない多様な市場からの収益力の強化に取組んでおります。

 

(2) 法的規制

当社グループは独占禁止法、下請法、建築基準法、建設業法等、様々な法規制の適用を受けており、仮にこれらの法に抵触するような行為が発生した場合、社会的信用を失墜し、当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。

当社におきましては、当該リスクへの対応策として、これらの国内外の法的・制度的リスクを管理するために、法の要請に止まらず、内部統制システムを整備し、担当部門である内部統制センターは、取締役会(当連結会計年度18回開催)と、グループ連携推進会議(同12回開催)に陪席し、情報収集を行い、内部監査を行っております。特に官公庁からの受注に多くを依存している株式会社長大では独占禁止法遵守を強化するため、独占禁止法遵守マニュアルを策定し、談合行為が発生しない管理体制を整えております。また、下請法の遵守のため適正な発注プロセスの管理に注力しております。

さらに、従業員に対しては、新入社員研修、キャリア採用研修、階層別研修、拠点別研修等においてコンプライアンス教育を実施、啓蒙活動を行っております。

 

(3) 成果品に関する契約不適合責任

当社グループの成果品のミスが原因で重大な不具合が生じるなど契約不適合責任が発生した場合や指名停止措置などの行政処分を受けるような事態が生じた場合には、業績に影響する可能性があります。

主要子会社である株式会社長大、基礎地盤コンサルタンツ株式会社におきましては、当該リスクへの対応策として、品質保証システムISO9001を導入し、マネジメントシステムに基づく業務レビューを行っております。また、行政経験者による理事レビューを開催しております。さらに、内部監査の一環として、当連結会計年度は、国内においては全国の36拠点・133部門、海外においては8ヶ国15拠点(オンライン実施含む)を対象に行った実地監査にてチェックすることで、徹底した成果品の品質確保及び向上に力を注いでおります。また、万一、成果品に契約不適合が発生した場合に備えて損害賠償責任保険に加入しております。

 

(4) 為替変動に関するリスク

当社グループは、海外マーケットへの積極的な進出に伴い、外貨建取引が経常的に発生しております。今後、為替相場の変動によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、現段階では日本円建の契約が多いため影響は限定的と考えておりますが、今後海外業務の増加によりリスクが増加する場合には、為替予約によるヘッジ等の対応を検討してまいります。

他方、当連結会計年度における当社グループの連結売上高に占める海外比率は8.8%(35.0億円)に留まります。また、かかる海外売上高のうち、外貨建の契約額は一部であるため、現段階で為替変動に関するリスクが当社グループの業績に与える影響は極めて限定的であると判断しております。

 

(5) 業績の季節的変動

当社グループの売上高は、主要顧客である中央省庁及び地方自治体への納期が年度末に集中することなどから、第2および第4四半期連結会計期間に偏重しております。

当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、「持続成長プラン2025(2022年10月~2025年9月)」において民間市場の開拓、海外事業の拡大を方針として事業展開を行うとともに、発注者である官公庁に協力を仰ぐ等、業績の平準化に向けた対応を行っております。

 

(6) 災害による事業活動への影響

自然災害等が発生した場合、その規模によっては事業活動が低下あるいは制約される等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、事業継続体制の構築、BCP(事業継続計画)を策定するなど防災管理体制を強化しております。また、当社グループは全国に広く拠点を有しており、災害時にも他の拠点が業務遂行を補完し、事業の継続性を確保できる体制を構築しております。

 

(7) 海外での事業活動

当社グループが海外事業を行う国や拠点事業所を置く国で、経済情勢の変化や、国際紛争・テロ行為等が発生した場合は、事業の停止・中止や事業所の閉鎖・廃止など当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、外務省ホームページ等からの情報収集、グループ連携推進会議等において月次での情報収集・共有を行い、現地駐在員への情報提供を行うことにより、社員の安全維持と事業継続を行えるよう努めております。また、感染症への対策においては、適切な情報収集と共有から、迅速な初動対応につなげて、事業の継続と社員の安全確保を図っております。

 

(8) 情報セキュリティ

サイバー攻撃によるコンピュータウイルス感染や悪意のある第三者からの不正侵入等によって、情報システムの停止が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおきましては、「情報セキュリティ管理規程」に基づくセキュリティ管理をグループ各社へ展開しており、当該リスクへの対応策として、ウイルス対策やハッキング対策等のセキュリティ強化を計画的に図っております。また、社員への教育として、グループ間でのセキュリティに関する情報共有のほか、情報セキュリティハンドブックを作成し、グループ各社の社員一人ひとりへの配布、年6回の情報セキュリティ研修やウイルスメール模擬訓練の実施等を継続的に行い、セキュリティ意識の向上に努めております。

さらに、グループ各社のセキュリティ担当者で構成したITガバナンスワーキングを設け、年5回のワーキングや勉強会の活動も行っております。

この一連の情報セキュリティ対策や対応は、IT戦略推進センターが担当し、PDCAサイクルにより継続的な取組みを実施しております。

 

(9) 業務提携・企業買収等のリスク

当社グループは、今後他社との業務提携及び企業買収等を行う可能性があります。何らかの理由により提携・買収が想定した効果を生まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、業務提携及び企業買収等の実行判断に際しては、取締役会、グループ連携推進会議等において効果及びリスクについての評価を行い、意思決定を行っております。

また、企業買収等の場合、買収が完了した後も、「関係会社管理規程」に基づき四半期ごとに取締役会で報告を行い、モニタリングを徹底して状況の変化に応じて迅速な経営判断を行うことのできる体制を構築しています。今後も、グループ連携推進会議や取締役会等を通じたリスクの評価や管理を行うことでリスクの最小化に努めてまいります。

 

(10) 新規事業の取組みに伴うリスク

当社グループでは経営基盤の安定化を目指して、事業エリア・分野・顧客の拡大を推進しておりますが、新領域事業が既存事業のような安定した収益を創造するまでには一定の時間を要することが予想されます。また、新たな事業への投資に対する回収の遅れが発生、海外事業の場合には当地の政情や為替差損など様々なリスクが存在しており、これらのリスクが表面化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

株式会社長大におきましては、当該リスクへの対応策として、「事業評価会議規程」に基づき、経営会議の諮問を受けて、構成メンバーに取締役や行政経験者である理事も名を連ねる事業評価会議を開催して、新規事業の実施可否について評価を行い、これに基づき、取締役会で最終的な機関決定を行っております。さらに、新規事業が開始した後も、所管部門は四半期ごとに進捗状況を経営会議へ報告することになっており、状況・環境変化への迅速な対応を可能とする体制を構築しています。

なお、当連結会計年度は新たに1件の新規事業が実施されており、過去に開始し、事業が継続しているものを含めると17件になりますが、いずれも上記のプロセスに基づき、適切に事業の進捗確認を行うことでリスクの最小化に努めております。

 

(11) 感染症拡大に伴うリスク

感染症の拡大による当社グループ従業員、協業者への感染等による事業の中断及び遅延等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、特に海外での感染拡大によるロックダウン等の影響が発生した場合には、業務の中断による業務完了の遅延が発生する可能性があります。

当社グループにおきましては、当該リスクへの対応策として、テレワーク、短時間勤務、サテライトオフィスの活用等の感染対策を推進し感染拡大の防止、社員の安全確保及び事業活動の継続に努めております。

引き続き、上記の取組みを継続・推進することで、事業活動や収益性の維持を図ってまいります。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、収益力向上により財務体質を強化し強固な経営基盤を確立するとともに、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つと位置付け、1株当たり配当額60円と配当性向35%に基づく配当額の高い方を目安として、「長期経営ビジョン2030」の最終年となる2031年までの間、より安定的な配当を行うことを基本方針としております。この方針に基づき、利益配当額を決定するとともに、事業展開に備えた投資、研究開発のための内部留保を決定しております。

当社における剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

上記の考え方に基づき、当期の期末配当金につきましては、1株当たり70円といたします。また、取締役会の決議により、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めておりますが、決算期末において年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

 

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年12月22日

定時株主総会決議

645

70