2026年3月期有価証券報告書より

沿革

2【沿革】

 当社グループの創業者である袴田武史は、米大学院で航空宇宙工学修士号を取得後、経営コンサルティング会社を経て、民間による月面探査車(以下、「ローバー」という。)開発及び、世界初の民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」への参加を目指し、2010年9月に合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現当社)を設立いたしました。その後、ローバー開発及び資金調達面で提携していた欧州のホワイトレーベルスペース財団が「Google Lunar XPRIZE」から脱退したことを受け、2013年5月に組織変更を行い、現在の株式会社ispaceに社名を変更した後、2013年7月に「Google Lunar XPRIZE」に日本唯一のチーム「HAKUTO」として独自に参加いたしました。

 当社グループは、将来の米国進出に向けて2015年1月に米国デラウェア州にispace technologies, inc.を設立し、当社を子会社化する組織変更を実施しましたが、2016年10月には、日本での事業化加速を優先するために親会社であるispace technologies, inc.を解散の上、当社を親会社とした上で改めて子会社ispace technologies U.S., inc.を米国デラウェア州に設立し、NASA Ames Research Park(米国カリフォルニア州)内にオフィスを設置しました。なお、2020年12月には米国子会社において月着陸船(以下、「ランダー」という。)の開発を実施するための体制を構築するため、子会社ispace technologies U.S., inc.のオフィスをコロラド州デンバーに移転しております。また2017年3月には、ルクセンブルク大公国政府との間で月の資源開発に関する覚書を締結し、子会社ispace EUROPE S.A.をルクセンブルク市に設立しております。また2021年7月には、当社事業運営上必要となる電波法に係る無線免許の取得及び電波利用を実施するための子会社として、株式会社ispace Japan(現ispace Ops Japan)を設立しました。直近では、サウジアラビア王国内の商業および政府、研究機関とのパートナーシップ連携を一層強化することを目的とし、子会社 ispace S Aを設立予定です。

 

 

 当社は、2023年に民間企業として世界で初めて月面着陸に挑戦するミッション1を実施し、続く2025年にはミッション2を実施いたしました。ミッション1及びミッション2のいずれにおいても月面軟着陸を成功させることはできませんでしたが、月周回までの確かな輸送能力や、安定的なランダーの姿勢制御、誘導制御機能を実証し、当社として月面軟着陸の成功に向けた貴重なデータ及び経験値を着実に積み重ねることが出来ました。その一方で、当社は2度の月面軟着陸の失敗を重く受け止め、社内の視点だけによらず外部の視点を入れ、失敗の原因をシステム的に捉える必要性から、ミッション2の失敗直後に、外部専門家による「改善タスクフォース」を立ち上げました。2026年3月には「改善タスクフォース」による成果報告「7つの提言」を受領し、今後のミッションに向けた改善策の対応方針を決定しております。

 

 また同月には、事業戦略のアップデートおよびミッションスケジュールの再設定を発表いたしました。これまで当社は、米国におけるAPEX 1.0 ランダー、日本におけるシリーズ3ランダー(仮称)の2種類のモデルの開発をそれぞれ並行して進めるとともに、エンジン調達やソフトウェア開発等の共通化を進めてきましたが、足許で各国の宇宙機関および民間企業を中心とする当社顧客からミッションクオリティおよび効率性に対する期待が一層高まっており、これらの期待に確実に応えるためにも、両モデルの統合によるさらなる品質向上を図ることが必要であると判断いたしました。この結果、共通プラットフォームである新モデル「ULTRA」ランダー(注1)を導入すると共に、これまで日米で個別に進めてきたランダー開発体制を統合し、グローバルで統一された開発組織をCTO直下に集約すると共に、本組織の効果を最大化させるため、グローバルなプロジェクトマネジメント機能を新設し、開発予算およびスケジュールの統制強化を進める体制といたしました。

 当社の将来ミッションとしては、高まる地球と月を繋ぐ通信サービスの需要に対処すべく、最速2027年にもミッション2.5として月周回衛星1基を月周回軌道へ投入することを予定しております。また2028年には、経産省のSBIR補助金を活用し、ULTRAによるミッション3(旧ミッション4)の打ち上げを予定しており、続く2029年には南極近傍への高精度着陸を目指すミッション4(旧ミッション6)の打ち上げを予定しております(注2)。さらに、米国拠点が主導するミッション5(旧ミッション3)(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)の打ち上げは2030年を予定しております(注3)。

 資金調達面では、2017年12月から2018年2月にかけてシリーズAとして国内過去最高額、また、宇宙分野のシリーズAとしては世界過去最高額(いずれも2018年2月当時)となる103.5億円の新株発行による資金調達を行いました。その後、2020年のシリーズB、2021年のシリーズCの資金調達を経て、2023年4月には、東京証券取引所グロース市場に上場しております。上場後も、2024年3月には海外募集、2024年10月から2025年3月にかけては第三者割当増資、また2025年10月から11月にかけては公募増資並びに第三者割当増資182億円、累計で598億円の新株発行による資金調達を実施しております。また、銀行からの借入についても2024年3月期においては複数行と融資契約を締結し総額75億円の借入を実行、2025年3月期には総額100億円のシンジケートローン契約を含め、借換も含めて総額193億円の融資契約を締結し実行、2026年3月期には株式会社三井住友銀行と100億円、株式会社みずほ銀行と50億円の融資契約をそれぞれ締結し総額150億円の借入を実行しております。進行期である2027年3月期には、4月に朝日信用金庫との10億円の融資契約を締結・実行し、本書提出日時点までに創業以来の累計値で506億円の融資契約を締結し実行しております。これらの資金を原資としたランダー及びローバーの開発並びに当社ミッションの実行を進めると同時に、事業化のための市場と顧客の開拓を行っております。

 

(注1)ULTRAという名称は、ラテン語で「超越」を意味し、当社がこれまでのミッションで得た技術的な学びを最大限活用し、加速する月面開発に貢献していく想いから命名いたしました。ラテン語で「超越」を意味し、当社がこれまでのミッションで得た技術的な学びを最大限活用し、加速する月面開発に貢献していく想いから命名いたしました。

(注2)当該打上時期については本書提出日時点の予定であり、今後変更する可能性があります。なお、当社が補助対象事業として採択されたSBIR(Small Business Innovation Research)制度の公募テーマ「月面ランダーの開発・運用実証」の事業実施期間が原則として2027年度とされており、SBIR制度に基づく補助金の対象となるミッション3は、当初2027年中の打上げとして経済産業省及びSBIR事務局と合意しておりましたが、本書提出日時点では当社内の開発計画上、2028年内の打上げとなることを見込んでおります。本変更については今後、関係省庁及びSBIR事務局と調整中の段階であり、最終的には経済産業省により正式に計画変更が認可されることとなります。

(注3)本米国ミッションは当社がTeam Draperの一員としてNASAのCLPSタスクオーダーCP-12に採択されているミッションであり、新スケジュールの下でのCP-12実行に関してはNASAからの正式な承認待ちとなります。

 

 

年月

事項

2010年1月

当社代表取締役CEOの袴田武史が東北大学吉田和哉教授とともに日本からGoogle Lunar XPRIZE(注1)参加の検討を開始

2010年9月

合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現 当社)を埼玉県入間市に設立

2013年5月

合同会社を株式会社に組織変更し、社名を株式会社ispaceに変更

2013年7月

Google Lunar XPRIZEに日本唯一の参加チーム「HAKUTO」(注2)として始動

2015年1月

「HAKUTO」で開発するローバーが宇宙空間でも機能する性能を持つことが評価され、Google Lunar XPRIZEの中間賞を受賞

2015年1月

米国デラウェア州にispace technologies, inc.を設立し、株式会社ispaceを子会社化する組織変更を実施

2015年8月

業容拡大に伴い、本社を東京都港区麻布台に移転

2016年4月

月面開発事業への本格進出に向け、ランダーの開発に着手

2016年10月

インキュベイトファンド株式会社及び株式会社日ノ樹よりコンバーティブル・エクイティで2億円を調達

2016年10月

日本での事業化加速のため、米国本社ispace technologies, inc.を解散の上、株式会社ispaceを本社に変更

2016年10月

新規に子会社ispace technologies U.S., inc.(連結子会社)を米国デラウェア州に設立し、NASA Ames Research Park(米国カリフォルニア州)内にオフィスを設置

2017年3月

ルクセンブルク大公国政府と月の資源開発に関する覚書を締結し、子会社ispace EUROPE S.A.(連結子会社)を設立

2017年12月

ランダー開発のために101.5億円の資金調達(シリーズA)を実施

2018年2月

シリーズAの追加ラウンドとして2億円(累計103.5億円)の資金調達を実施

2018年3月

Google Lunar XPRIZEの終了に伴い、HAKUTOプログラムを終了

2018年7月

業容拡大に伴い、本社を東京都港区芝に移転

2018年9月

月面探査の技術検証ミッション「HAKUTO-R」(注3)プログラムの立上げ及びSpace Exploration Technologies Corp.(以下、「SpaceX社」という。)のファルコン9ロケットで相乗りでの打上げを公表

2020年7月

ランダー開発のために追加で30億円の資金調達(シリーズB)を実施

2020年12月

ispace technologies U.S., inc.のオフィスをカリフォルニア州からコロラド州デンバーへ移転

2020年12月

ミッション・コントロール・センター(ランダー及びローバーを地球から操縦するための管制室)を東京都中央区日本橋に開設

2020年12月

NASAによる月面で採取した月のレゴリス(砂)の販売に関する商取引プログラムに、当社とispace EUROPE S.A.が採択される

2020年12月

シリーズBの追加ラウンドとして5億円(累計35億円)の資金調達を実施

2021年2月

業容拡大に伴い、本社を東京都中央区日本橋浜町に移転

2021年5月

国内大手銀行4行から、総額19.5億円の借入を実行

2021年7月

東京都中央区に株式会社ispace Japan (現 株式会社ispace Ops Japan) (連結子会社)を設立

2021年7~8月

ランダー開発のために追加で53.1億円の資金調達(シリーズC)を実施

2021年10月

シリーズCの追加ラウンドとして2.5億円(累計55.6億円)の資金調達を実施

2022年7月

ispace technologies U.S., inc.がチャールズ・スターク・ドレイパー研究所(以下、「ドレイパー研究所」という。)を中心とするチームの一員としてNASAの商業的物資輸送プログラム(Commercial Lunar Payload Services、以下、「CLPS」という。)のタスクオーダーCP-12のサービスプロバイダーに採択される

2022年7月

金融機関各行より総額50億円の借入を実行

2022年12月

民間月面探査プログラムミッション1の打上げをフロリダ州ケープカナベラル宇宙基地より実施

2023年4月

東京証券取引所グロース市場に株式を上場し、65.1億円の資金調達を実施

2023年4月

ミッション1マイルストーンのSuccess8までを完了、Success9の完了が困難と判断

2023年12月

SBIR制度の公募テーマ「月面ランダーの開発・運用実証」において、補助対象事業として採択され、補助金120億円の交付決定通知書を受領

2024年1月

金融機関各行より、2024年3月期の総額として75億円の借入を実行

2024年3月

海外募集により83.6億円の資金調達を実施

2024年4月

株式会社三井住友銀行より借換も含めた総額70億円の融資契約を締結

2024年7月

金融機関各行より総額100億円の借入を実行

2024年9月

ルナ・アドバイザリー・ボードの創設を発表

2024年10月

Heights Capital Management, Inc.に対する第三者割当により70億円の資金調達を実施すると共に新株予約権を発行(注4)

2024年11月

株式会社三井住友銀行がHAKUTO-Rオフィシャルパートナーとして参画

2025年1月

ミッション2“SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”の打上げを実施

2025年4月

宇宙戦略基金(第1期)として公募された「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」に、当社が連携機関として参画する研究開発課題「テラヘルツ波リモートセンシング衛星による月地下浅部の資源探索」が採択

2025年5月

株式会社三井住友銀行から100億円、株式会社みずほ銀行から50億円の借入を実行

2025年6月

ミッション2“SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”のSuccess9である月面着陸の完了が困難と判断

2025年10~11月

公募増資及び第三者割当により最大182億円の資金調達を実施(注5)

2025年12月

 全22社のパートナー企業との契約満了を以て、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」の終了を発表

2026年1月

宇宙戦略基金(第2期)として公募された「月極域における高精度着陸技術」に、当社が実施機関として技術開発課題「南極近傍への高精度着陸と通信中継衛星を用いた極域でのペイロード活動支援」が採択

2026年1月

サウジアラビア王国における事業機会の創出を目的に、子会社ispace S Aを設立手続きを開始

2026年3月

事業規模拡大に伴い、オフィス機能を集約し、本社を東京都中央区日本橋本町に移転

2026年3月

日米ランダーモデルを「ULTRA」に統合及び開発体制の構造改革を発表

2026年3月

通信・測位のサービスを提供する「ルナ・コネクトサービス」の立ち上げ検討を開始

 (注)1.Googleがスポンサーとなり、Xプライズ財団によって開催、運営された世界初の民間月面探査レースです。当社は日本から唯一のチーム「HAKUTO」として参加しておりましたが、当該レースは最終的に参加全チームが期日内の打上げを達成できず、勝者のないまま期限切れにより終了いたしました。チーム「HAKUTO」は、2015年1月に、開発するローバーが宇宙空間でも機能する性能を持つとして高い評価を受け、モビリティ部門における中間賞(賞金50万米ドル)を受賞した他、最終選考の5チームにも選ばれました。

2.当社運営のGoogle Lunar XPRIZEに向けた月面探査チームであり、名称は日本古来の「月にはウサギがいる」という伝承や、古事記に記された「因幡の白兎」の神話に由来しております。

3.「HAKUTO-R」プログラムは、「Google Lunar XPRIZE」のレース終了後、日本初の民間月面探査実現への挑戦を「R」eboot(再起動)するという想いから、当社ミッション1及びミッション2からなる技術実証ミッションとして開始されたものです。ミッション2の終了後、全22社のパートナー企業との契約満了を以て、2025年12月に終了いたしました。

4.当社がHeights Capital Management, Inc.との間で2024年10月11日付で締結したエクイティ・プログラム契約に基づき、総計11,000,000 株の当社普通株式及び総計110,000 個の当社新株予約権を、Heights Capital Management, Inc.に対する第三者割当 により発行することを可能とするものです。新株予約権による増資については、2029年3月までに行使される予定であり、今後行使された場合に記載の金額で調達が行われます。

5. 公募・第三者割当・オーバーアロットメントに伴う第三者割当の調達上限の総額になります。小数第一位以下切り捨てで記載しております。

 

 

関係会社

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金

主要な事業の内容

議決権の所有割合(又は被所有割合)(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

ispace EUROPE S.A.

(注)2.3.4

ルクセンブルク大公国

ルクセンブルク市

40,000ユーロ

月面開発事業

100

役員の兼任 2名

資金の援助

ispace technologies U.S., inc.

(注)5.6.7

米国

コロラド州デンバー

500,000.01米ドル

月面開発事業

100

役員の兼任 2名

資金の援助

その他1社

 

 

 

 

 

(注)1.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

2.ispace EUROPE S.A.は特定子会社に該当しております。

3.ispace EUROPE S.A.については、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等 (1)売上高      975,492千円

(2)経常損失    △654,279千円

(3)当期純損失   △654,279千円

(4)純資産額    △1,437,578千円

(5)総資産額    1,072,201千円

4.ispace EUROPE S.A.は、債務超過の状況にあり、債務超過の額は2025年12月31日時点で1,437,587千円であります。

 

5.ispace technologies U.S., inc.は特定子会社に該当しております。

6.ispace technologies U.S., inc.については、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く。)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

主要な損益情報等 (1)売上高     1,756,467千円

(2)経常損失   △6,200,571千円

(3)当期純損失  △6,200,571千円

(4)純資産額    △10,920,588千円

(5)総資産額    19,101,337千円

7.ispace technologies U.S., inc.は、債務超過の状況にあり、債務超過の額は2025年12月31日時点で10,920,588千円であります。