リスク
3【事業等のリスク】
当社グループは、物流の近代化、国際化の進展、取引先のニーズの多様化に伴い、経営環境は大きく変化し、国際物流事業者が抱えるリスクは多種多様化しており、リスク管理の強化・高度化の必要性はますます高まっています。適切なリスク管理が経営の健全性を確保するために極めて重要であることを認識し、取締役会を頂点としたリスク管理体制のもと、重大な影響を及ぼす可能性のある様々なリスクを洗い出し、未然に防止すると共にリスクが発生した場合は、迅速かつ適切に対処することにより被害を極小化し、再発防止の対応策を実施するなど企業価値の保全に取組んでいます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において、当社グループが判断したものであります。
a.事務リスク
役職員が正確な事務を怠る(作業上の貨物事故を含む)、あるいは、事故・不正等を起こすことにより取引先が損害を被り、当社が損害賠償責任を負うリスクを指しますが、正確かつ効率的な事務処理は取引先との信頼関係において原点との認識ではあるものの、膨大な取扱い件数及び多種多様な貨物取扱い事務作業において大小様々なビジネスクレームの発生の可能性は非常に高いものと予想されます。
コンプライアンスの徹底を図ると共に、各部署において業務マニュアル等の整備、事務手続きの見直し等を進めると共に、事務関連の事故内容等を含めた事例の詳細については執行役員会への報告義務としています。月例会議及び職制会議を通じて全従業員に周知し、事務ミス発生状況の実態把握を通じて、事務処理水準の向上や事務リスク防止の徹底を図っています。
b.法務リスク
法令や契約書等に違反すること、不適切な契約を締結すること、その他の法的原因により、損失を被るリスクとなります。法令を遵守することは、企業として不可欠であるとの認識に立ち、コンプライアンス規定、内部者取引管理規定等を定めると共に、法律、条例等業務関連法律等の整備保管を怠らず、また遵守に努めています。当社は2008年5月に特定保税承認を取得し、同年10月に認定通関業者として認定され、それぞれの制度法令に則り五大港及び各事業所において自社倉庫施設による保税業務及び通関業を含めた関連業務を行っております。過去の実例において、口頭注意から非違該当による減点等の行政処分は軽微ながら散発的に発生しており、今後重大な事故により一定期間の自社保税倉庫への搬入停止等の行政処分を受ける可能性も排除出来ず、取引先からの信頼を失うと共に社会的信用失墜にも繋がり当社業績へ重大な影響を与えることとなります。軽微な事例であっても事故対策委員会のもと再発防止策を策定し、事故内容等を含めた事例の詳細については執行役員会への報告義務とし、月例会議及び職制会議を通じて全従業員に周知徹底し再発防止、法令等の順守に努めています。
c.社会リスク
外部からの反社会的攻撃により当社が存続の危機にさらされる、または甚大な損害を被るリスクとなります。企業防衛は、企業存続のみならず、グループ会社、従業員およびその家族、株主等を守るうえで、不可欠であるとの認識に立ち、取締役会を中心に情報収集等につとめ、社外各関係先との連携を密にするとともに、必要に応じて対策委員会を設置するなど、解決にあたることとしています。
d.システムリスク
コンピューターシステムのダウンまたは誤作動等、システムの不備等に伴い、損失を被るリスク、さらに近年頻繁に発生する企業に対するサイバー攻撃により、コンピューターのシステムダウンや不正使用されることにより当社グループが損失を被るリスクとなります。コンピューターシステムの安全稼働を確保するため、セキュリティーポリシーに基づいた各種対策を実施するとともに、万一障害が発生した場合の影響の極小化と早期復旧を図るため、情報資産に関する管理体制の整備、コンピューターのバックアップ体制などの対策を講じています。
e.財務リスク
取引先の倒産等に起因して損害を被るリスクですが、債権管理に対する経理規定を遵守し、当社が定めた取引先与信基準に従い事業年度毎に取引先に対する与信限度枠を設定し、立替金については取引先との回収約定をもとに債権管理を徹底し、貸倒発生等による損害の防止等に努めています。また、海上運賃の水準や為替レートの変動の影響を受けるため、関税等の立替金を取引先銀行口座から直接納付へと切替え、また、高額立替となる運賃等については前受金を受領し最大限リスクの低減を図り、売掛金及び立替金の債権残高や取引先の動向に十分注意を払い、営業債権の確実な回収を行っています。また、国外において海外の合弁会社・提携先代理店を経由した海外法人との取引もあり、海外合弁会社等と情報共有を行い、連携を強化して貸倒防止に努めています。
f.人事・労務リスク
労務慣行の問題(役職員の人事処遇の問題、勤務管理上の問題)、ならびに職場の安全衛生環境の問題に起因して損失を被るリスク、および役職員の不法行為による使用者責任を問われるリスクがあります。就業規則を定め、労働基準関係法令の遵守に努めるとともに、労働組合とも協調し、より快適な労働環境を目指し、職場改善を行っています。
g.大規模災害リスク・世界的なウイルス感染症等による異常事態リスク
当社グループは、複数の事業拠点、五大港を中心とした物流施設を保持し事業運営をしております。大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミックが当社の想定を超える規模で発生し、労働生産力の大幅な低下や保有資産等への甚大な被害により事業運営が困難になった場合、財務状況や経営成績等に大きな影響を与える可能性があります。過去の風害や新型コロナウイルス感染症拡大の経験を踏まえ、従業員の安全確保を最優先課題とし、事業所での感染防止策の徹底、有事に備えた事業復旧の早期化及び被害の最少化のため、基幹システムのデータセンター集約や全社ネットワークの一部冗長化、事業拠点の分散化による業務運営の維持確保のための移管体制の整備強化に努め、在宅勤務及びサテライトオフィスによるテレワーク勤務体制を積極的に推進し、危機管理体制の強化を図っています。
h.主要取扱い貨物構成によるリスク
当社グループ輸出部門の取扱い主力貨物は機械機器であり、グローバルなサプライチエーンの枠組みにおいて生産状況が変化し、取引先受注状況により当社の取扱量が増減するため業績へ大きく影響します。また輸入部門の主要取扱い貨物構成は繊維製品、生活雑貨等の消費資材に偏重しており、国内消費動向が当社業績に大きく影響します。今後は取扱い貨物の開拓と多様化をより積極的に推進するとともに、高付加価値貨物の自社倉庫への取扱いを強化し、分散化によるリスクの低減を図ってまいります。
i.特定の取引先・貿易相手国への依存について
当社グループの営業収入で、輸出関連と輸入関連での上位10社の営業収入占有率をみますと下記のとおり大きなものとなっております。
(単位千円) |
営業収入 |
上位10社営業収入 |
占有率 |
輸出(約 470社) |
2,514,794 |
1,506,744 |
59.9% |
輸入(約 800社) |
4,969,239 |
1,945,241 |
39.1% |
また、中国関連の営業収入占有率を見ますと、下記のとおり大きなものとなっております。
(単位千円) |
合計 |
中国関連営業収入 |
占有率 |
輸出 |
2,514,794 |
516,884 |
20.6% |
輸入 |
4,969,239 |
2,821,428 |
56.8% |
国際 |
7,364,144 |
4,252,352 |
57.7% |
その他含む営業収入合計 |
15,007,852 |
7,590,666 |
50.6% |
当社グループの輸入部門及び国際部門輸入においては、中国からの輸入貨物の比率が非常に高く、アジアにおける当社設立海外合弁会社も中国を中心として海外展開をしております。対象国に関係する貿易摩擦や当該地域における紛争及び国内法及び外国資本に対する法制度改正により、輸入貨物の大幅な減少や当該地域での事業活動が困難となる事態も想定されるため、海外展開地域の軸足を中国偏重から脱却し世界の生産構造の変化に追従した新たな海外拠点の充実強化と新たな物流サービスの提供を目指しております。
j.特有の法的規制・取引慣行について
特有の法的規制につきまして該当事項はありませんが、取引慣行としましては港湾物流業界における立替金(海上運賃、関税等)の慣行があり、新規取引先開拓の手段にもなっております。当連結会計年度末時点での受取手形、売掛金及び契約資産の残高15億72百万円余に対し、立替金の残高9億74百万円余と一般企業と比較すると多く、運用資金面でのリスク及び貸倒債権となるリスクがあります。顧客の信用調査ならびに与信管理を徹底し、早期回収を行い貸倒債権とならないよう努めております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、長期経営基盤の確立のため、収益の拡大を図り、財務体質の強化に努めるとともに、株主に対する利益還元が経営の最重要課題の一つであると認識しております。配当につきましては、業績の状況や経営環境などを総合的に勘案し安定的な配分を継続して行うことを基本的な配当方針と考えております。
当社は、「株主総会の決議によって剰余金の配当(期末配当金年1回)を支払いすること」を定款に定めております。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、1株当たり50円の配当を実施することを決定しました。
内部留保資金の使途につきましては、今後の事業展開への備えとして投入していくこととしております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年6月27日 |
73,310 |
50 |
定時株主総会決議 |