2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 当社グループの事業全体に係るリスク

① 社会情勢や景気の変動の社会環境の変化

国内外における経済、金融、社会情勢の変化や景気変動、大規模な感染症の流行等により、売上高の減少や取引先の倒産などの事象が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性がある。当社グループは、環境変化に迅速かつ適切に対応するため、来るべき社会におけるありたい姿を描き、その実現に向けた戦略を「西部ガスグループビジョン2030」として策定している。また、ビジョンの実現に向けて注力する取り組みをグループ中期経営計画「Next2024」にまとめ、ガスエネルギー事業を中核としながら、ガスエネルギー事業以外の構成比を拡大する事業構造の変革を推進し、グループの競争力を高めていく。

 

② 事業戦略達成の遅れ

当社グループは、事業構造の変革を推進し、グループの競争力を高めるためグループ中期経営計画「Next2024」を策定し、複数の事業戦略に取り組んでいる。事業戦略策定にあたっては様々なリスク事象を考慮しているが、想定外の経済環境、社会環境の変化等により、当初想定した成果をもたらさない可能性がある。また事業戦略達成にあたってはグループ会社への経営支援や経営基盤の強化が重要な役割を果たすが、その実行の遅れは事業計画の達成に大きな影響を与える可能性がある。

経営支援や経営基盤強化については、経営戦略部がグループ会社に対する管理・統制の中心となって、グループ内における人事交流やグループ事業発展のための専門的な知識・経験を有する人財の積極的な採用等、グループ事業の連携及び統制の強化を図っている。

 

③ 企業の社会的責任の変化や、法令・制度等の変更リスク

企業を取り巻く環境の変化により、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題への取り組み不足や取り組み内容の開示不足は、ステークホルダーからの不信を招き当社グループの持続的成長を阻害する恐れがある。また、エネルギー関連の政策や国内外の法令等の変更に対して、当社の対応が遅れたり、不足することによって、当社グループの事業運営や業績に多大な影響が生じる可能性がある。

当社グループの中核であるエネルギー事業は、地域の脱炭素に大きく影響する事業であり、当社グループのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは最優先課題である。この課題解決に向け「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」に掲げた「天然ガスシフト」「ガスの脱炭素化」「電源の脱炭素化」を着実に実行するために、具体的な取り組み内容や数値目標を「カーボンニュートラルアクションプラン」に掲げ、目標達成を目指して取り組んでいる。

 

④ 大規模な災害、テロ、感染症等の発生

地震、台風等の大規模な自然災害やテロが発生した場合、LNG基地等のガス製造設備や導管等の供給設備に損害が生じ、当社グループの事業運営に支障をきたす恐れがある。さらに、復旧に時間がかかる場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があるほか、社会活動に影響を及ぼす可能性がある。そのため、設備の一元的な管理及び計画的な改善による耐震性の向上、災害保険等の各種保険への加入、大規模災害や事故発生時の事業継続計画(BCP)の策定や見直し等の取り組みを進めている。

また、感染症の蔓延により、都市ガスを含む当社グループ事業の継続が困難になることで、重大な損害が発生するリスクがある。そのため、新型インフルエンザ等対策に関する業務計画に基づき、感染症が国内外に蔓延した場合においても、都市ガスの供給や当社グループ事業を維持するよう対策を講じている。

 

⑤ 金利上昇リスク

市場金利の上昇により、資金調達コストが上昇することによって、当社グループの業績が影響を受ける可能性がある。金利上昇リスクについては、固定金利のウエイトを高くする等により、リスクを抑制している。

 

 

⑥ 投資未回収もしくは損失の計上

当社グループは、事業構造の多様化・強靭化に向けたグループ変革に継続的に取り組んでおり、国内外の不動産事業や国際エネルギー事業等へ成長投資を行っている。大規模な投資を行った後の国内外の経済情勢の変化等により、適切な回収がされず投資時に見込んだ将来の収支予測を達成できない場合、減損損失や評価損の計上等により、当社グループの業績が影響を受ける可能性がある。

当社グループは、このようなリスクを低減するため、投資を行うにあたっては、投資評価委員会において採算性及びリスク評価を行い、その結果を踏まえて経営会議・取締役会に諮る等、慎重な経営判断の下に投資を決定している。また、投資後は、定期的に検証を実施し、必要に応じて事業等の見直しや協業及び支援等の対策を実施している。

 

⑦ 基幹ITシステムの停止、誤作動、情報漏洩

当社グループは、社会経済活動を支える重要なインフラを担っており、基幹システムの機能維持や情報セキュリティの確保は、当社グループの社会的責任として真摯に取り組むべき重要なテーマと考えている。

ガス製造・供給システムやお客さま情報システム等の基幹システムの機能に重大な障害が発生した場合、ガスの製造と供給やガス料金計算及びお客さま受付をはじめとした各種業務が滞ることになり、お客さまや社会に多大なご迷惑をおかけし、当社にとって有形無形の損害が発生する可能性がある。そのため、不測の事態でも業務への影響を最小限にとどめるよう、情報関連子会社と緊密な連携を図っている。

また、当社グループは、様々な経営及び事業に関する重要情報や多数の顧客情報等の個人情報を保有している。万一これらの情報がサイバー攻撃やITシステムの不備及び情報の持ち出し等で外部に漏洩した場合は、当社の事業に重大な影響を与え、あるいは社会的信用を低下させる可能性がある。そのため、個人情報保護規程、情報セキュリティガイド等を制定し、全従業員に対して情報セキュリティ教育を実施する等、情報漏洩の対策を推進している。

さらに、サイバー攻撃に対する各種セキュリティ対策を行うとともに、関係機関等との情報共有・分析、事案発生時の対応訓練等を継続的に実施している。

 

⑧ コンプライアンスリスク

法令・定款及び企業倫理・社会規範に反する行為が発生した場合には、その対応に直接的に要する費用のみならず、社会的信用の失墜等の有形無形の損害が発生する可能性がある。そのため、グループガバナンス委員会で策定されたコンプライアンス基本方針に基づき、様々な意識啓発・教育を行い、当社グループ全体のコンプライアンスの統制を強化し、社内監査を定期的に実施している。

 

(2) 主要事業に係るリスク

(a)エネルギー事業

⑨ 気候や経済環境の変動によるエネルギー需要への影響

猛暑や暖冬等の気候変動により、給湯・暖房用を中心にガス需要量が減少し、ガスエネルギー事業の売上に影響を及ぼす可能性がある。また、中長期的には「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」のため、化石燃料の中でCO排出量が少ない天然ガスやLPGであっても、競争力低下により既存のガス需要が減少する可能性がある。

そのため、気候変動の影響が少ない産業用やコージェネレーション向けのガス販売を強化するとともに、業務用や産業用のお客さまへのカーボンニュートラル都市ガス(LPG含む)の販売強化を図っている。また、「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」に則り、トランジション(移行期)においては、石油・石炭からの天然ガスシフトによる低炭素化の推進、メタネーション技術の導入等によるガス自体の脱炭素化及び再生可能エネルギーの普及拡大等による電源の脱炭素化を推進していく。

 

⑩ 競争激化

ガスエネルギー事業は、2017年度のガス小売全面自由化以降、他エネルギー事業者や新規参入事業者等との競争が厳しさを増している。今後もさらに競争が激化した場合、当社グループの経営成績や財務状況に影響を与える可能性がある。

そのため、当社グループは、小売電気事業に参入してガスと電気のセット販売を推進するとともに、お客さまのニーズを汲み取った魅力ある付加価値サービスの充実や、最適エネルギーシステムの導入及び運転・保守管理等のエネルギーソリューションサービスを提供することで、トータルエネルギーシェアの拡大を図っている。

 

 

⑪ 原料価格高騰リスク

LNGは海外より調達しているので為替や原油価格の変動によってはコストの増加に繋がる可能性があるため、LNGの調達元との契約更改や価格見直しにより、調達コストの低減に努めている。

 

⑫ 原燃料調達に関するトラブル

ロシアのウクライナ侵攻による調達不能、調達元のLNG基地トラブル、LNG船の運航途上の事故発生等によりLNG調達が滞る場合には、都市ガスの供給に支障をきたす恐れがあるため、国内外を含めた緊急融通調達の体制構築、迅速なスポット調達の体制構築、及びLNG調達先の多様化を進めている。

 

⑬ ガスの製造及び供給に関するトラブル

当社グループは、「お客さまの安全・安心の確保と安定供給は、エネルギー事業者にとっての最大の責務」と考え、保安対策や防災機能の充実・強化に取り組んでいる。しかし、製造・供給・消費の各段階において、ガス漏えいや爆発等のガス事故やトラブルが発生した場合、直接的な損害に止まらず、社会的責任の発生等、重大な影響を及ぼし、当社グループの事業運営に支障をきたす可能性がある。そのため、重大な事故やトラブルを想定した実践的な訓練等による対応力の強化や、ガス導管網の整備、安全性の高いガス機器の普及等、保安の確保と安定供給に向けた対策を行っている。

 

⑭ 海外事業展開

当社グループでは、電力その他エネルギー分野における成長拡大の一手法として、海外事業展開は有効な手段と考えている。そこで、海外エネルギー事業への投資のほか、アジアの玄関口に位置するひびきLNG基地を活用したLNG出荷事業の拡大を推進している。

海外事業においては、当該国における政治的又は経済的要因、社会情勢の悪化等により当社グループの業績が影響を受ける可能性がある。そのため、専門コンサルタントやアドバイザーの活用等、早期に情報収集をすることで様々なリスクの低減を図っている。

 

⑮ 電力調達価格変動リスク

電力調達は発電事業者や卸電力取引市場からの調達であるが、日本卸電力取引所からの電力調達価格は、寒波到来等による電力需要の逼迫及び自然災害や発電所トラブル等による供給減少等により、需給バランスが悪化し高騰する可能性がある。このような事態が生じると当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

そのため、当社グループは、発電事業者との相対契約の追加や常時バックアップの増量により発電事業者からの調達割合を増やすことで調達コストの低減と固定化を図っている。また、電力先物取引市場利用による価格ヘッジを行うことも視野に入れている。なお、中長期的には、再生エネルギー事業の拡大や「ひびき天然ガス発電所」の事業化等により、自社電源のウエイト拡大を図る。

 

(b)不動産事業

⑯ 事業環境の変化等による採算の悪化

当社グループは、不動産事業をガスエネルギー事業に次ぐ収益の柱として成長分野と位置付け事業の拡大に取り組んでいる。

不動産事業は、戸建分譲事業、マンション分譲事業ともに順調に推移しており、2019年度からは海外不動産事業を開始し、順調に成長している。引き続き分譲事業の拡大を進めるとともに賃貸事業を強化し、不動産事業全体の収益拡大と事業の安定性向上を図っている。

しかし、不動産業界は、景気動向、金利動向、不動産市況、新規供給物件動向、不動産販売価格動向、不動産税制等の影響を受けやすい。景気見通しの悪化や、大幅な金利の上昇、供給過剰による販売価格の下落発生等、諸情勢に変化があった場合には、消費者購買心理の悪化、地価の下落、賃貸価格の下落が生じ、業績等に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、その場合には、当社グループが保有する不動産の評価額の引き下げが必要となる可能性がある。

 

⑰ 海外事業展開

不動産事業においては、2019年に現地デベロッパーとの合弁により開始したタイ国における戸建分譲販売事業を皮切りに、海外における事業展開を進めている。海外事業は、当該国の社会や経済環境の変動、法規制及び税制の変更、人権問題や内乱または紛争等のカントリーリスク等の影響を受ける恐れがあり、その結果、プロジェクトの中止、遅延、採算の悪化が生じる可能性がある。

このようなリスクを低減するため、プロジェクト開始にあたっては、外部コンサルタントやファイナンシャルアドバイザーの活用、早期の情報収集のほか、現地の市場や法規制等に精通した現地企業を提携先として選定することを実施している。提携先の選定に当たっても、当該提携先の財務状態や提携関係等により、現地での事業展開に影響を受ける恐れがあることから、調査の徹底を図っている。

さらに、プロジェクトの進行過程においても、当社グループは、提携先からを含め随時必要な情報収集に努め、リスクの変化等を把握し、必要に応じて事業計画の見直しを行っている。

 

⑱ 住宅の品質管理及び保証

物件の品質管理には万全を期しているが、販売した物件に重大な瑕疵があるとされた場合には、直接的な原因が当社以外の責任によるものであったとしても、売主として契約不適合責任を負う可能性がある。その結果、保証工事費の増加や、当社の信用の毀損等により、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、西部ガスグループの安定的な経営基盤の確保と安定配当の継続を基本とした利益配分を実施するなかで、

業績及びファイナンスの実施状況等を勘案した上で、株式の分割を行う等、株主への利益還元に努めてきた。

当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としている。配当の決定機関は、期末配当

は株主総会、中間配当は取締役会である。

当事業年度の剰余金の配当については、業績等を総合的に考慮し、1株当たり70円とし、この結果、当期は配当

性向100.6%(前期30.3%)、自己資本利益率4.2%(前期15.7%)、純資産配当率4.0%(前期4.5%)となった。

また、当期の内部留保資金については、今後の設備投資の一部に充当し、製造供給基盤の整備を推進する。

なお、当社は、会社法第454条第5項の規定に基づき、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中

間配当を行うことができる旨を定款に定めており、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりである。

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年10月30日

1,298

35.00

取締役会決議

2024年6月26日

1,298

35.00

定時株主総会決議