2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    1,504名(単体) 10,104名(連結)
  • 平均年齢
    43.1歳(単体)
  • 平均勤続年数
    16.4年(単体)
  • 平均年収
    7,660,106円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

(2024年3月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(人)

水産事業

3,679

〔2,568〕

食品事業

4,511

〔6,164〕

ファイン事業

268

〔38〕

物流事業

681

〔95〕

その他

680

〔77〕

全社(共通)

285

〔50〕

合計

10,104

〔8,992〕

 

(注) 従業員数は就業人員であり、臨時従業員は〔  〕内に年間の平均人員を外数で記載しております。

 

(2) 提出会社の状況

(2024年3月31日現在)

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

1,504

〔1,095〕

43.10

16.39

7,660,106

 

 

セグメントの名称

従業員数(人)

水産事業

240

〔80〕

食品事業

778

〔932〕

ファイン事業

201

〔33〕

物流事業

0

〔0〕

その他

0

〔0〕

全社(共通)

285

〔50〕

合計

1,504

〔1,095〕

 

(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時従業員は〔 〕内に年間の平均人員を外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

(3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 ① 提出会社

当事業年度

 

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注1)

男性労働者の

育児休職

取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異

(男性の賃金に対する女性の賃金割合)

(%)(注1)

全労働者

正規雇用労働者

パート・

有期雇用労働者

 全体

6.6

110.0

58.18

73.90

75.28

 生産部門以外

-

-

64.44

68.66

70.43

 生産部門

-

-

55.01

76.75

76.11

 

(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.管理職に占める女性労働者の割合については、他社への出向者を除いております。

4.当社は組織の中で担う役割と行動で等級を区分し、それぞれの役割に応じた成果によって等級を定める役割等級制度を運用しており、同一役割等級内における性別の違いによる賃金の差はありません。賃金は、時間外勤務などの変動要因によるものは除き、基本給及び賞与、基準外賃金を含めたものであります。

 

    <職位別人員構成比(Pコース)>

役割等級制度のコースの一つに将来のマネジメントの担うPコースがあります。Pコースにおける人員構成は上位等級行くにつれ徐々に女性職員比率が下がっており、特に女性管理職(課長級や部長級)及び係長級の母集団形成が充分でなく、男女の賃金差異の要因となっています。2030年に執行役員・管理職に占める女性の比率を20%とすることを目標に掲げ、新卒及び経験者採用における女性職員の計画的な採用や育成に加え、仕事と育児の両立環境の整備を進めています。これらの取り組みにより、次期管理職候補となり得る係長級の女性比率は向上してきていることから、今後男女の賃金の差異は縮小していくと考えています。

 

   <職位別 人員構成比>


 

  <職位別 年間平均賃金>


 

 

        <係長級の女性比率の推移(過去5年間)>


 

5.生産部門においては、女性のパート・有期雇用労働者数が多く全労働者平均に与える影響が大きくなっています。

 

    <生産部門、生産部門以外における雇用管理区分の構成比>


 

 ② 開示対象となる連結子会社

当事業年度

 

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注1)

男性労働者の

育児休職

取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異

(男性の賃金に対する女性の賃金割合)

(%)(注1)

全労働者

正規雇用労働者

パート・

有期労働者

 日本クッカリー株式会社

9.9

45.5

67.8

74.5

88.8

 日水物流株式会社

6.3

66.7

66.7

66.7

-

 日本海洋事業株式会社

-

87.5

66.5

67.4

14.5

 株式会社グルメデリカ

18.0

20.0

82.7

80.0

89.3

 

(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.日本海洋事業株式会社において、パート・有期雇用労働者の男女の賃金の差異が大きい要因は、男性の嘱託船員と女性のパート労働者との賃金・人数の差によるものであります。

 

 

(4)労働組合の状況

当社グループには、2024年3月31日現在日本食品関連産業労働組合総連合会に所属するニッスイアドベンチャークラブ(組合員数1,197人)等があります。

なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ全般

<ニッスイグループのサステナビリティ>

ニッスイグループは創業以来、様々な自然の恵みを活用して事業を行ってきました。創業の理念、ミッションに掲げるサステナブルな事業活動は私たちの重要な使命です。私たちはニッスイの5つの遺伝子(お客様を大切にする、現場主義、グローバル、イノベーション、使命感)、サステナビリティ行動宣言に基づき、ステークホルダーの皆さまとの連携・協働のもと、事業を通じて重要課題(マテリアリティ)に取り組み、社会課題の解決を目指します。

 


 

<ガバナンス>

当社グループでは、持続的な成長と企業価値向上の実現に向けてサステナビリティ経営を進めており、その推進組織として、全執行役員と社外取締役で構成し、CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティを巡る各課題については、サステナビリティ委員会傘下のテーマ別の8つの部会において、委員長が指名した部会長(執行役員)と、部会長により任命されたメンバーで部門横断的に対応を行っています。また、年6回開催するサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しており、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。

また2030年の長期ビジョン、経営計画達成に向けて役員報酬体系を2022年度より改定し、業務執行取締役の変動報酬部分の評価指標に、水産物の持続可能性や自社グループ拠点のCO2排出量削減等のサステナビリティ目標の達成度を加えています。

 


 

<戦略>

長期ビジョンでは、環境価値、社会価値、人財価値、経済価値の4つの価値創出を目指しており、サステナビリティ経営をビジョン達成のための柱の一つとして位置付けています。サステナビリティ課題をリスクと機会の両面から捉え、環境価値、社会価値、人財価値の創出に取り組むことで非財務資本を強化し、経済価値の創出につなげます。

 

<リスク管理>

当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント方針」を制定しています。全執行役員で構成され、社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会がリスクマネジメントシステムの構築と運用と定期的な取締役会への報告を行っております。サステナビリティ課題を含む重要リスクについては、サステナビリティ委員会を中心に対応しています。リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。

 

<指標と目標>

2022年4月に策定した長期ビジョン、中期経営計画では、環境価値、社会価値、人財価値および経済価値の創出に向け、サステナビリティ目標として7つのKPIを定めました。サステナビリティ委員会により各指標の進捗状況がモニタリングされ、結果に基づき取り組みに反映しています。

 

提供価値

重点テーマ

目標

基準年度

単位

2030年度

目標

2024年度

目標

2023年度

実績

気候変動と海洋環境への貢献

CO2排出量削減

CO2排出量削減

(Scope 1、2)

2018年度
総量

30%

10%

6.8%

プラスチック削減

プラスチック使用量削減

2015年度
原単位

30%(注)

10%(注)

統合報告書にて

開示予定

資源の持続可能性への貢献

水産資源の持続可能性

持続可能な調達比率

-

100%

80%

2024年度上期

開示予定

責任ある調達(人権)

1次サプライヤーアセスメント比率

-

100%

(主要な1次サプライヤー)

100%

(ニッスイ個別)

92%

(ニッスイ個別)

健康課題の解決

健康領域商品の拡大

当社指定の健康領域商品売上

2021年度

3倍

1.3倍

1.0倍

多様な人財の活躍

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントスコア向上

2021年度

基準年度比

20%UP

基準年度比

10%UP

基準年度比

11.6%UP

女性活躍

女性幹部職比率

-

20%(注)

10%(注)

6.6%

 

(注)対象範囲はニッスイ個別

 

(2)テーマ別課題

≪人的資本への対応≫

 ① 人的資本の考え方

2022年、ミッション・長期ビジョンを再定義するとともに、社名を日本水産株式会社から株式会社ニッスイに変更、「健やかな生活とサステナブルな未来を実現する新しい“食”の創造」をミッションとして掲げ、2030年の長期ビジョンを“人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー”としました。

長期ビジョンでは、社会・人財・環境価値を生み出し経済価値に繋げる事を目指しており、最もキーとなる要素を人財価値と位置づけ、「新たな挑戦を通して食のイノベーション・価値創造を実現できる人財」こそビジョンを実現できると考えています。


 

 ② 推進体制

これまで取締役会、執行役員会の議案は、事業の成長戦略やサステナビリティ、ガバナンスを中心としたものでしたが、2023年より経営戦略と連動した「人財戦略」を個別の議題として掲げ議論をスタートしました。さらに2024年度には、社長を委員長とした「人財育成委員会」を設置、指名委員会と連動しながら、体系的にCEOまでのサクセッションについても議論することとしました。


 

 ③ 経営戦略と人財戦略

ニッスイグループは長期ビジョン「Good Foods 2030」において「サステナビリティ経営の推進」と「事業ポートフォリオマネジメント強化」を両軸に企業価値向上を目指しています。事業ポートフォリオマネジメント強化では、持続的に成長が見込まれる領域に経営資源を集中する事としており、「海外事業」「ファインケミカル事業」「国内外養殖事業」を成長事業領域と定めています。

成長事業には人的資本を含む経営資源を投入していく必要がありますが、中長期視点でそれぞれの事業領域に必要となる人財の素養・能力の深い議論までには至らず、足下の不足感の共有と対策の議論に留まっております。2024年度は次期中期経営計画に向けマテリアリティをベースに改めて経営戦略・事業ポートフォリオを検討していることから、この議論と合わせメリハリの効いた人財戦略に移行してまいります。

 

 ④ 人財戦略の基本的な考え方

ニッスイグループでは全世界で多くの社員が働いており、様々な価値観を持った社員同士の知・経験がイノベーションの創出、「新しい食」の創造へ繋がっていくと考え、ニッスイでは性別・国籍・学歴など属性によらない「バックキャスティング力、自立・自律業務遂行力、多様な価値観を受け入れられる力」を持つ人財の確保に努めています。

働き方や価値観の多様化の中においても、社員一人ひとりがありたい姿を描き、そこに向けて自らの意志で自律的に仕事に取り組み、自己成長を続けることが、継続的な成長・強い組織づくりに繋がると考えているからです。自立した人財とは、独力で問題解決し意思決定し実行できる人財であり、自律した人財とは環境や状況に合わせ自分をコントロールでき、それに向けて自分を高めていく人財で、これらには「変革の意志を持って、誠実真摯に仕事に取り組み、自己の成長とチームの成長を同時に成し遂げていくこと」に情熱を持ち続けられる事を求めております。人財育成に当たっては、この「求める人財像」を社員一人ひとりが念頭に置き、仕事を通じて成長することができる様に育成を進めています。

 

<コース別概要>

「バックキャスティング力、自立・自律業務遂行力、多様な価値観を受け入れられる力」を育てるための、ニッスイのコース制度は下図のとおりの体系で構成しています。


 

人財戦略として重視しているポイントは、次の通りです。

(イ)多様な人財の確保と育成

知・経験のダイバーシティを大切な資産と考え、属性によらない多様な人財の確保に努めています。個性や強みを発揮できる様、ダイバーシティ部会を設置、その中で女性活躍と障害者雇用について具体的な施策を実行しています。また、同質性の高い組織の改革、専門性の高い業務の拡大に対応するため経験者の採用を増やすとともに、新卒・経験者を問わず一人ひとりが活躍できるコース別人事制度の運用と組織風土醸成に努めています。

 

(ロ)サクセッション

ニッスイのみならず、グループ各社の役員まで含めた経営人財の一貫したサクセッションの議論が不足しておりこれを早急に進めます。長期視点で経営に必要な素養を見極め、人財を確保・育成する具体的な施策とモニタリングを行う仕組みを構築します。これまでは、課長以上の組織責任者に求める人財要件の定義、対象者の人財プールづくりと育成プラン作成、子会社等での経営経験や外部研修派遣等の施策にとどまっていました。グループ会社の役員まで含めた経営人財の一貫したサクセッションの議論が不足しておりこれを早急に進めます。長期視点で経営に必要な素養を見極め、人財を確保・育成する具体的な施策とモニタリングを行う仕組みを構築します。これまでは、課長以上の組織責任者に求める人財要件の定義、対象者の人財プールづくりと育成プラン作成、子会社等での経営経験や外部研修派遣等の施策にとどまっていました。

 

(ハ)グローバル人財

ニッスイグループは全世界で様々な社員が働いており、様々な価値観を持った社員同士の知・経験の多様性が「新しい食」の創造へ繋がっていくと考えております。特に世界中のいかなる複雑・不確実なビジネス環境においても、相手と良好な関係を築き、背景や環境を問わず力を発揮できる人をグローバル人財と位置付け、国籍を問わずその確保と育成に努めています。

 

(ニ)専門性の高い人財

R&D、サステナビリティ、ガバナンス、DXなどの専門性の高い人財の確保は、これまで以上に経営の重要なファクターとなっております。2024年度に導入した社外で通用する高い専門性を持つ人財を処遇する職種(ネクストエキスパート職)を弾力的に運用し、専門性の高い人財の確保と育成を急ぎます。R&D、サステナビリティ、ガバナンス、DXなどの専門性の高い人財の確保は、これまで以上に経営の重要なファクターとなっております。2024年度に導入した社外で通用する高い専門性を持つ人財を処遇する職種(ネクストエキスパート職)を弾力的に運用し、専門性の高い人財の確保と育成を急ぎます。

 

(ホ)現場マネジメント人財

成長する事業の持続性を担保するには、現場をマネジメントする人財とグループ各社にある技術・技能を適切に活用・伝承する人財の確保と育成が不可欠です。

ラインマネジメントを託す人財(プロフェッショナル職)については、高い視座と幅広い視野を身に着けるよう、OFF-JTとOJT(部門を超えた異動経験付与等)の組み合わせで人財育成を図っています。また、社内の専門家として技術・技能等を武器に業務に従事する人財(スペシャリスト職)は、その専門性を適切に評価するアセスメントの運営で優秀な人財の定着と成長を図っています。グループ各社においても事業展開に必要な人財の確保に努めており、入社後は各社によるOJTだけでなく、ニッスイ主催の階層別教育も実施しています。

 

 ⑤ 具体的な取り組み

(イ)-1 多様な人財確保

ニッスイグループは各社の経営の独自性を尊重する経営スタイルで、人財についてもこれまで各社それぞれが独自に確保・育成をしてきております。しかしながら、今後事業を成長させていくためには、ニッスイが人財の確保と育成をリードすることがポイントであると考えております。

ニッスイでは、性別や国籍、学歴など、属性によらない「バックキャスティング力、自立・自律業務遂行力、多様な価値観を受け入れられる力」を持つ人財の確保に努めています。

採用に当たっては、AI選考ツールも活用し受験者のポテンシャルを見極める多面的な評価方法を取り入れるほか、様々な経験を持つ経験者採用を増やし組織を活性化しています。現在では新卒と経験者の年間採用数は概ね同レベルで、2024年3月には正社員に占める経験者が32%を超えるだけでなく、幹部職員においても既に経験者が約25%を占めており、同質性の強かった組織から脱却しつつあります。また、退職者に対する「カムバック制度」も設けており、退職した社員が再び活躍できる門戸も整備し、他での経験を当社で生かしてもらうことを期待しています。

グループ各社における人財確保については、2024年度より合同企業説明会を開催、母集団形成に努めるとともに、採用担当者連絡会を通して採用手法や各社課題感および人財情報の共有を始めました。

 

(イ)-2 女性活躍推進

ニッスイグループで多様性の指標のひとつである女性活躍推進は優先的に取り組んでおり、ニッスイは2030年までに女性管理職比率を20%まで向上することを目指しています。2021年1月からは「30% Club Japan」に参画し、女性の採用および登用に関する数値目標を定め、社内制度の整備を進めながら女性がより一層活躍できる風土の醸成に取り組んでいます。

近年、ニッスイでは採用者に占める女性の比率を50%程度まで高めてきており、管理職の母数となる女性職員比率は向上してきているものの、女性職員比率は20%程度にとどまっており、なかなか高まらないことが課題となっています。また、育児休業や子の看護休暇の取得期間や取得率に男女差があるなど、当社においても他社と同様、依然として育児期の女性への負担が大きいことも分かりました。

一方、社内のキャリア意向調査においては、マネジメントを目指す女性職員63%が更に上位の役割を担うべく、早期に昇格試験に挑戦したいと申告しており、キャリア意欲が向上してきています。そのため、2023年度は女性職員に対するスキルアップや管理職および本人に対する無意識バイアスのコントロールに向けた取組み等に加え、多様な働き方を受け入れる組織風土作りを進めるため、男性育児休職取得推進をスタートしました。グループ各社においても、育児や介護、病気療養等様々な事情を抱える社員が増加していることを踏まえ、今後は誰もが能力を最大限発揮し、主体的にキャリアアップできる組織風土作りを推進していきます。

 

<男性育児休職取得率及び日数の推移>

 

2022年度

2023年度

取得率

78.9%

110.0%

取得日数

13.6日

14.8日

 

 

(イ)-3 障害者雇用

多様な個人が能力を発揮しやすい環境を整備し、その活躍に報いることで更なる成長を促し働く人の幸福につながる状態を目指し、障害者雇用に取り組んでいます。一人ひとりの特性や強みを活かしていくため、営業や工場を含めた各部門と協働し合理的配慮の提供をはじめ多面的なサポートを行い、安心して働き活躍できる環境づくりに取り組んできました。この結果、2024年4月現在の障害者雇用率は法定を超える2.90%に達することができました。今後は、障害者が活躍する部門の拡大に加え、ニッスイグループで障害者雇用を通した多様性の理解・受容への経験値向上を目指し、施策を展開してまいります。

 

(ロ)サクセッション

2024年度8月より社長を委員長として、取締役、指名委員会の事務局である経営企画担当執行役員、人事担当執行役員の8名で構成する「人財育成委員会」を設置します。指名委員会の議論とリンクしながら、ニッスイのみならず、グループ各社の役員まで含めた経営人財の一貫したサクセッションの議論を開始します。10年単位の長期的なビジョンをふまえた事業ごとの経営人財に求められる素養と行動を見極めるとともに、必要なスキル経験を再整備のうえ、外部からの採用も含めた人財の確保、育成する具体的な施策とモニタリングを行う仕組みを構築、実行してまいります。

 

(ハ)グローバル人財

海外展開の加速を実現するためには、世界中のいかなる複雑・不確実なビジネス環境においても、相手と良好な関係を築き、背景や環境を問わず力を発揮できる人財は必須です。国際志向があり一定以上の語学力がある人財について、スピーキグテスト等で把握するとともに、各部署における国際業務を可視化しOFF-JTとも組み合わせることで、より実務対応能力の高い人財の育成に取り組んでおります。また、国際業務のある海外持株会社への出向など配置の適正化を行うとともに、異文化理解の研修や語学研修などを実施しております。また、あわせて非日本国籍の登用も積極的に進めてまいります。


 

(ニ)専門性の高い人財

昨今、R&D、サステナビリティ、ガバナンス、DXなど高い専門性をもつ人財は経営の重要なファクターとなる一方、こうした人財の確保は年々難易度が高くなっております。この対応として、2023年に社外で認められる高い専門性を有する人財を処遇する「ネクストエキスパート職」を新設しました。新制度を活用し、R&D部門の様に中長期的スパンで成果を生み出す人財、サステナビリティやガバナンスなどの新しい社会課題の解決に取り組める人財、DX・IT といった最先端思考・技術を備えた人財を確保してまいります。また、既存の社員においても職種間の変更を柔軟にすることで、まだ見ぬ専門性を発掘するとともに、自律的なキャリア形成を支援していきます。

 

(ホ)成長事業のマネジメント人財

事業の持続性を担保するには、現場をマネジメントする人財と技術・技能を適切に活用・伝承する人財の確保と育成が不可欠で、具体的には、養殖事業においては、養殖の高度化を進めることで差別化を図り成長を目指していますが、実現のためには、養殖基盤研究、親魚管理や種苗生産、デジタルを活用した養殖生産管理、養殖成績を左右する餌料開発・魚病抑制、最終製品の製造、販売に至るまで、サプライチェーン全体で様々なスキル・経験を持った人財が必要です。また、現場でマネージする人財も必須です。ニッスイが中心となりR&Dから生産・販売に至る人財確保のため、地域行政や各漁協、教育機関とも連携し取り組んでいきます。

ファインケミカル事業については薬事・申請ノウハウに通じた人財が必要であるとともに、生産現場を支える製造技術・品質管理のノウハウを持った人財の確保が課題です。現場を支える専門性を有する人財は、採用だけでなく、R&D、生産工場、開発間での人財交流を通して製品情報・生産工程の理解を深めるなど専門性を高める取組みを進めてまいります。

 

 ⑥ 組織風土と環境整備について

多様な人財が自由闊達に意見を交わし議論できる、心理的安全性の高い組織風土はミッションに近づくための重要な要素ですが、同時に職場で得られるやりがいや達成感とともに、オフタイムも充実できることも大事だと考えています。ニッスイグループは、2017年一人ひとりが能力を十分に発揮できること、社員やその家族のQOLの向上を目指して心と体の健康をサポートする「健康経営宣言」をしています。「Good Foods 2030」においても、健康経営は人財価値向上の重要施策のひとつであるとし、以下の取組みを進めております。

 

(イ)従業員エンゲージメント

2021年からニッスイでは、従業員の思い入れや貢献意欲、愛着心等を測定するために従業員エンゲージメント調査を定期的に実施しています。職場ごとに対処すべき課題を抽出し、アクションプランを実行しています。2023年度は総合評価が11.6%アップした一方、「階層間の意思疎通」については引き続き課題となっており、更なる取組みを進めてまいります。なお、本調査は当社のみで実施しておりますが、今後はグループ各社にも展開し、自発的貢献意欲の向上と組織風土や職場状況を改善する施策を実施する計画です。

 

 <エンゲージメントスコアの推移>


 

 <課題に対する打ち手>

「階層間の意思疎通」の改善には、課長と課員を繋ぐ施策が必要と考え2023年に「360度多面診断」を実施しました。組織責任者のマネジメント行動やリーダーシップに関する取り組み姿勢を360度で評価、各自で信頼関係構築状況を確認とフォロー教育を実施しました。2024年度は課題のある「生産・品質管理」「ロジスティクス」の2部門の底上げを図る活動に注力しています。

 

(ロ)ブランドプロミス(ミッション)の社内浸透活動について

2022年度よりブランドプロミス(ミッション)の社内外浸透活動を行ってまいりました。2024年度は新たに「ミッションへの共感とブランディング」をマテリアリティと位置づけ「ブランディング部会」を立ち上げました。社内浸透活動をさらに強化してまいります。

 

社内浸透に関わる部会の活動は以下になります。

・従業員のやりがいや働きがいを高めることで、従業員エンゲージメントや企業競争力を向上させる。

・業務への主体的な取り組みや、枠にとらわれない新たな挑戦を後押しする風土を醸成し、個人と組織の成長を共に実現する

 

2023年度は「GOOD FOODS Talk」として、すべての職場でミッションへの理解、共感を深め、新しい食の創造に繋がる活動について、複数回の話し合いを行いました。2024年度は共感を自らの行動に繋げ全社の一体感を醸成してまいります。

2023年度

2024年度

ミッションの社内浸透を図るとともに全社員が「新しい食」について考え、意見交換を行う「GOOD FOODS Talk」を職場ごとに実施。

部門を超えて「GOOD FOODS Talk」を実施し、ミッションを通じた全社の一体感を醸成していく。

 

 

また、グループ各社については、経営陣の集まる会議においてミッションを説明し、国内では「新しい食」についてディスカッションする場を設けるとともに、2023年度はグループの部署長以上を対象にミッションへの理解および自社での展開を検討するワークショップを実施致しました。今後はグループ社内報や7か国語で作成したブランドブックを発行するとともに、新たにBrandStoryBook動画の配信なども行うなど、海外も含めた浸透活動も検討してまいります。

 

(ハ)働きやすい環境づくり

 <制度面>

ニッスイにおいては、目標取得率や取得推奨日を定め、休暇取得計画を作成し部署内で休暇予定を共有することで、業務の事前調整や休暇取得管理の一助としており、休暇取得率は向上しています。

また、コアタイムのないフレックスタイム、テレワーク、時間単位有給休暇などの柔軟な働き方に向けた制度改定をおこなうとともに、IT化や適正な人員配置などを通じた時間外勤務の削減を進めています。

 

2021年度

2022年度

2023年度

有給休暇取得率(%/年)(※1)

70.0

77.4

79.3

1人あたり時間外平均(時間/月)

16.1

15.9

15.1

 

(※1)従来、一定の事由により取得できる有給の特別休暇等を含めていましたが、理由を問わず自由に取得できる年次有給休暇の利用度合いを計る本来の趣旨に基づき、対象を年次有給休暇のみとし過去の実績から修正しています。

 

 <オフィス環境>

オフィスの環境面では、社員同士のコミュニケーションを円滑にするため、部署単位で利用できるエリアを設定し、その範囲で座席を使用するグループアドレス席を設置する一方、コロナ終息後の出社率増加を想定し個人ブースやファミレス席など誰でも自由に使えるフリーアドレス席も設置しました。また、自宅近くや出張先等でも仕事が出来るよう契約のサテライトオフィスも活用し、働く拠点の選択肢を広げています。また、ペーパレス化等場所の制約を受けない働き方への取り組みも進める事で、活発なコミュニケーションを実現し、よりパフォーマンスが発揮できる環境を整備しています。

 

(ニ)健康経営

ニッスイグループは、一人ひとりが能力を十分に発揮できることと、社員やその家族のQOLの向上を目指して心と体の健康をサポートする「健康経営宣言」を2017年にしています。

ニッスイは2018年に水産・農林業で初めて「健康経営優良法人」に選ばれて以降、水産物由来の機能性成分を活かした施策で社員の健康づくりに注力していること等が評価され、2019年から5年連続で「健康経営銘柄」に選定されました。2023年度は課題となっているメンタルヘルスやがんへの対策を強化し、非正規社員も含めた相談体制の整備や疾病の早期発見に向けた新たな検査に対する費用補助等など、心身ともにさらなる健康増進を図っています。

ニッスイグループの健康経営については2022年にキックオフミーティングを行い、各社で実態に沿った年度健康目標を定めるとともに、達成のために各社間の協力・連携を推進することで成長を後押ししています。2023年度は取組の結果、7社が「健康経営優良法人2024」(うち1社は「ブライト500」)に選定されました。2024年度は連携をさらに強化し、好事例を共有展開して健康経営への取組を加速します。

 

 ⑦ 指標(KPI)

ニッスイにおける主な研修プログラムの体系は以下の通りです。人財の基本的な戦略である、①多様な人財の確保と育成、②サクセッション、③グローバル人財、④専門性の高い人財、⑤現場マネジメント人財の視点から研修内容と対象者を定めております。

戦略

研修名

主な目的

対象

受講人数

(延べ人数)

平均受講

時間

(時間)

平均受講

費用

(千円)

多様な人財の確保と育成

DE&I

多様な人財が活躍するための組織風土の醸成

管理職

一般社員

100

11.6

46.7

サクセッション

経営人財

サクセッション

組織を牽引する経営人財の育成

管理職

一般社員

21

69.8

668.2

グローバル人財

グローバル人財

グローバルに

活躍できる人財

の育成

管理職

一般社員

101

4.5

34.9

専門性の高い人財

DX人財

DX推進に関する専門知識習得

管理職

一般社員

1,096

22.6

17.7

現場マネジメント人財

職掌別

職種毎に求められる専門知識

一般社員

184

10.3

232.8

キャリア

従業員のキャリア自律推進

管理職

一般社員

83

7.0

28.9

役割認識他

ビジネススキル等

各階層で求められるスキルや期待される役割理解の習得

管理職

一般社員

348

49.7

114.2

 

 

また、人財戦略で掲げた取組みの進捗については以下の通りです。

戦略

取組み

2022年度

2023年度

2024年度目標

多様な人財の確保

採用人数

新卒:44人

経験者:18人

新卒:39人

経験者:25人

新卒:43人

経験者:20人

(※1)

経験者採用比率

29%

39%

32%

(※1)

グローバル人財登録制度人数

77人

86人

90人

健康経営

EPA/AA比率

0.31

0.35

0.6

健康診断受診率

100%

100%

100%

ストレスチェック受診率

93.9%

94.1%

100%

ストレスチェック高ストレス率

10.8%

9.9%

8.0%

働きやすい
環境づくり

男性育休取得率

78.9%

110%

100%

有給休暇取得率

77.4%

79.3%

80.0%

従業員

エンゲージメント

基準年2021年

スコア向上率

1%

11.6%

10%

DE&I

障害者雇用率

2.39%

2.78%

法定雇用率+1%

女性新卒採用比率

34.1%

33.3%

50%

女性管理職比率

6.8%

6.6%

10%

労働安全衛生

重大労働災害・事故件数

63件

51件

0件

 

(※1)採用数は現時点の計画を記載していることから、特に経験者については状況に応じ変動致します。

 

 

≪自然資本の持続可能性向上に向けた対応≫

当社グループのビジネスは自然資本に依存しており、様々な生態系サービスの恵みを受けて事業を行っていることから、自然資本の持続可能性が損なわれることは、大きなリスクであると認識しています。特に気候変動は当社グループをとりまく様々なリスクと関連しており、また、生物多様性も気候変動と相互に影響しあって、原材料調達などのリスクに大きく影響します。そのためこれらの環境課題に対して、統合的なアプローチと対応が重要であり、 リスクに対応することでレジリエンスを高め、成長機会につなげていくことが重要と考えています。

①気候変動への対応(TCFD提言への取組)

<ガバナンス>

気候変動問題については、CFOがプロジェクトオーナーを務める部門横断型プロジェクト「TCFD対応プロジェクト」において、リスク・機会の分析と財務インパクト対応策の検討を行っています。検討結果はサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会に報告し、取締役会からの意見や助言を反映しています。CO2排出量削減などの気候変動緩和策については、サステナビリティ委員会傘下の環境部会がグループ全体の取り組みを推進しています。


 

<戦略>

連結売上高の95%以上を占める水産事業、食品事業、ファインケミカル事業を対象とし、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を2つのシナリオで実施しました。気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。明確化された重要なリスクと機会に対して、対応策を講じることで、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指します。

 

(イ)戦略におけるシナリオ分析の概要

TCFDの提言に従い、気候変動シナリオ分析を実施しました。分析対象は水産事業と食品事業、FC事業とし、バリューチェーン全体を幅広く分析しました。1.5℃/2℃および4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と2030年における財務インパクトの評価、および対応策を検討しました。

その結果、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税の導入による操業コストが事業成長の阻害要因となり、積極的なGHG削減とともに生産活動の効率化に取り組み、新たな顧客需要を捉えることにより、事業成長につなげることが可能であることがわかりました。また、4℃シナリオでは自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業成長の阻害要因となり、養殖事業の高度化に取り組みこれらのリスクに対応することで収益への影響を最小化することが必要であることがわかりました。

 

 

シナリオ

世界観の描写

1.5℃/2℃

シナリオ

(RCP2.6)

●社会からの脱炭素への要求により、コーポレートやバリューチェーン全体に対して、脱炭素に向けた規制や対応要請が強まる

●社会からの脱炭素への要求により、脱炭素な過程で生産された原材料の仕入れや持続可能な漁業・養殖が必要になる

●消費者や小売業者の志向変化により、低カーボンな製造・製品や持続性に配慮した調達品の取引や販売が求められる

4℃

シナリオ

(RCP8.5)

●自然災害の激甚化に伴い、養殖・製造・物流等拠点の被災リスクが高まり、被災した場合、供給・運営停止などのリスクが高まる

●自然災害の激甚化や気温上昇により、植生や海洋環境が変化することで、作物の収量や水産資源の漁獲量・生産量の減少リスクが高まる

●自然災害が頻発することで災害食に対する需要の増加や、気温変化により健康状態が悪化することで健康ニーズを満たす製品要望が高まる

 

 

1.5℃/2℃シナリオ

リスク
/機会

分類

想定される
主なリスクと機会

事業
インパクト

影響
時期

財務
インパクト

主な対応策

移行リスク

規制

環境関連規制強化による影響

カーボンプライシングの導入による対応コストの増加

中期

・事業所毎の排出量削減目標の設定

・再エネ導入拡大、省エネ設備投資

省エネ・GHG排出等の規制強化による対応コストの増加

・容器包装プラスチック削減

・モーダルシフト、輸送効率化

・フードロス削減

・ICP(注1)導入の検討

フロン規制強化による脱フロン要請の高まり

中期

・自然冷媒への切り替え

評判

気候変動対応が不十分な場合の投資家・金融機関からの評判低下

-

中期

・Scope 3まで含めたCO2削減目標の設定

・気候変動対応情報の積極開示

機会

製品

サービス

消費者の購買行動の変化

(環境意識の高まり、持続可能性への配慮)

 

持続可能性に配慮した製品に対する需要増加

短期

・取り扱い水産物の資源状態調査の継続実施

・環境配慮商品や認証品の取り扱い拡大

低カーボン需要の高まりによる代替タンパクへの需要増加

中期

・代替タンパク商品の開発、拡大

低カーボンとしての水産物の需要増加

長期

・LCA(注2)の実施と積極的な情報発信

資源の効率性

省エネ技術導入、再エネ・燃料転換による操業コスト低減

エネルギーの消費量削減、効率化に伴う操業コストの低減

中期

・エネルギー高効率な省エネ設備対応

 

影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。

(注1)ICP:インターナルカーボンプライシング

(注2)LCA:ライフサイクルアセスメント

 

 

4℃シナリオ

リスク
/機会

分類

想定される
主なリスクと機会

事業
インパクト

影響
時期

財務
インパクト

主な対応策

物理リスク

急性

風水害の激甚化による事業停止リスク/管理コスト増加

製造/物流拠点被災による被害

中期

・拠点の分散によるリスクヘッジ

・物理的被害に備える保険内容の見直し

・BCP見直し、社内訓練の実施

養殖施設の損壊による被害

短期

・浮沈式生簀の導入、施設の補強

・赤潮発生を予測し、被害を最小化

・陸上養殖への対応強化

異常気象による原材料(米・鶏肉)の調達リスク

原材料調達コストの増加

短期

・産地の分散化や調達先の多様化によるリスク低減

異常気象による原材料(水産物)の調達リスク

漁獲量減少と調達コストの増加

長期

・EPA原料魚油(カタクチイワシ)の在庫確保

・代替原料(ポストEPA)の開発

急性


慢性

渇水による操業停止リスク

養殖拠点の渇水被害

短期

・高リスク拠点の特定、移転、設備強化

製造/物流拠点の渇水被害

短期

・使用水の節約、井水の使用

・拠点の分散によるリスクヘッジ

慢性

海洋環境の変化による水産物の調達リスク

天然魚、養殖魚の漁獲量の減少

中期

・調達ネットワークの構築

陸上養殖の対応強化

・高温耐性品種の開発、養殖適地の探索

養殖飼料向け原料魚の漁獲量減少・調達コスト増加

中期

・代替飼料の開発(低魚粉配合飼料)

機会

製品と
サービス

災害や気候変動に対応する製品・サービスを通じた需要増加

天然資源減少に伴う養殖需要の増加

短期

・陸上養殖の対応強化

・高温耐性品種の開発、養殖適地の探索

スマート養殖対応によるコスト低減

短期

・AI、IoTを活用した効率化、省人化

気温上昇に伴う健康意識の高まり

健康需要を満たす製品の需要増加

短期

・健康領域商品の販売拡大

・水産物の機能性追求

 

影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。

 

(ロ)カーボンプライシングの影響

財務インパクトの中でも特に影響が大きかったカーボンプライシングについては、将来CO2排出量(Scope 1、2)を2030年売上予測に基づいて算出し、2℃シナリオ、4℃シナリオごとのIEAの予測(注1)による炭素価格を掛け合わせて運営コストの影響金額を算出しました。2030年目標であるCO2排出量を総量で30%削減することにより、グループ全体で2℃シナリオでは44.1億円、4℃シナリオでは17.6億円の削減につながることがわかりました。

 

2℃シナリオ

4℃シナリオ

対応策なし(注2)

対応策あり(注3)

対応策なし(注2)

対応策あり(注3)

▲83.8億円

▲39.7億円

▲33.5億円

▲15.9億円

 

炭素税:2℃シナリオ時 135ドル/t‐CO2、4℃シナリオ時 54ドル/t‐CO2と仮定、為替レートはいずれのシナリオも1ドル=118円と仮定

 

(注1)IEA World Energy Outlook 2022

(注2)対応策なし:Scope 1、2を対象とし、基準年度である2018年度と同様の原単位でCO2が排出されると仮定

(注3)対応策あり:Scope 1、2を対象とし、2030年目標を達成することでCO2排出量が2018年度から30%削減されると仮定

 

(ハ)天然水産資源(カタクチイワシ・スケソウダラ)の影響評価

調達量が多く重要な魚種であるカタクチイワシとスケソウダラについて、FAOのモデルを使用して2種類のシナリオで2030年、2050年の漁獲可能量の変化を評価しました。その結果、1.5℃シナリオにおいては両魚種ともに微減が予想されました。4℃シナリオにおいては、カタクチイワシは2030年、2050年ともに減少となり、スケソウダラは2030年は微増、2050年は増加が予想されました。2030年時点での漁獲可能量の変化率は大きくないため、財務への影響は軽微であることが確認されました。しかし、2050年の漁獲可能量の変化率は比較的大きいため、特に減少が予想されるカタクチイワシについては、対応策を確実に進めていく必要があります。

 

漁獲可能量の変化率 (%)


出所:FAO (国連食糧農業機関)「Impacts of climate change on fisheries and aquaculture(2018)」を参考に当社推計

 

(ニ)水リスクの評価

水リスク評価のグローバルスタンダードのうち、2021年度は世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterを用いて国内の製造・物流拠点全体の評価を行いましたが、水リスク評価の際には拠点別の影響額を試算するために浸水深のデータが必要であることから、2022年度以降は分析粒度が細かくより精緻なデータ収集が可能である世界資源研究所(WRI)のAqueduct(アキダクト)を用いて、国内・海外の生産・物流拠点別に評価を行いました。

水害による生産中断に伴う機会損失については、各拠点の所在地に示されるAqueductの浸水深により拠点別に運転停止日数・在庫毀損率を特定し、財務影響金額を算定しました。財務へ影響は中程度であることを確認しました。また、水ストレス(渇水)については、最も高いリスクレベルに該当する拠点はありませんでしたが、日本、タイ、北米、南米の生産拠点の一部が、水ストレス下にある地域に所在していることがわかりました。今後は継続的に使用水の削減に取り組むとともに、水リスク評価方法の精緻化についても検討を進めていきます。

 

■Aqueductによる洪水リスク評価結果(拠点数)

浸水幅

1.5℃/2℃

4℃

河川

沿岸

河川

沿岸

0m

51

50

51

50

0-0.5m

7

8

10

10

0.5-1m

9

7

6

5

1-2m

0

2

0

2

 

67

67

67

67

 

 

■Aqueductによる渇水リスク評価結果(拠点数)と水使用量

渇水レベル

1.5℃/2℃

2023年度

水使用量(千㎥)

4℃

2023年度

水使用量(千㎥)

低(Low)

25

1,143

26

1,190

低‐中(Low-medium)

19

2,003

18

1,956

中‐高(Medium-high)

17

6,667

16

6,469

高(High)

6

566

7

764

極めて高い(Extremely high)

0

0

0

0

 

67

10,379

67

10,379

 

 

(ホ)戦略への反映

シナリオ分析の結果を受けて、中期経営計画「Good Foods Recipe1」では、優先度の高い対応策から事業計画に反映し、戦略との整合を図っています。

 

基本戦略

項目

内容

サステナビリティ

経営への深化

温室効果ガス排出削減

●燃料転換、再生可能エネルギーの活用、省エネ推進、モーダルシフト推進

●特定フロンから自然冷媒への移行 ●代替タンパク商品の販売拡大

プラスチック削減

●養殖フロートの全量切り替え

●容器包装のプラスチック削減、バイオマス切り替え等

●物流資材のプラスチック削減、リサイクル推進

●事業活動に伴う廃プラスチックの排出抑制

水産資源の持続的な利用

●水産資源の持続可能性調査

●各種水産エコラベル認証取得率向上と認証原料の取り扱い拡大

健康訴求の強化

●健康領域商品の拡大 ●素材の機能性強化

グローバル展開加速

欧米を中心とした事業成長

●資源アクセス力の強化

新規事業・事業境界領域の開拓

新規事業

●健康領域商品の拡大 ●代替タンパク商品の拡大

既存事業の強化

●陸上養殖の事業化

生産性の革新

重点成長領域での差別化

●養殖事業モデルの先鋭化 ●スマートファクトリー化

 

 

<リスク管理>

当社グループでは、中長期的な経営戦略を見据えた重要リスクを特定するため、マテリアリティをリスクマネジメントの起点としています。2023年度に実施したマテリアリティの見直しに伴い、重要リスクについても見直しを行いました。特定した気候関連の重要リスクは以下の通りです。なお、マテリアリティの見直しに際しては、TCFDやTNFDの取り組みにおける「気候関連・自然関連のリスクと機会」の検討結果を反映させています。リスクの詳細は「第2  事業の状況  3  事業等のリスク」をご覧ください。

 

重要リスク

重要リスク管理組織

気候変動への対応に関するリスク

環境部会

サステナビリティ委員会

 

 

気候変動に関連するリスク・機会の分析と対応策については、常務執行役員(CFO)がオーナーを務める部門横断型の「TCFD対応プロジェクト」が環境部会と連動して検討しています。

 

 

 

<指標と目標>

長期ビジョン「Good Foods 2030」において、2018年度比で、2030年にCO2排出量を総量で30%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを掲げています。グループグローバルでの目標達成に向け、各事業所における省エネ施策の実施やエネルギー使用量の少ない高効率設備への更新、再生可能エネルギーの使用など、CO2削減計画を策定し、積極的に取り組んでいきます。

Scope 3についてはGHGプロトコルに整合した環境省のガイドラインに従い、15のカテゴリーに分け算定しました。今後はデータの精度向上を図り、排出量の多いカテゴリー1の削減方法の検討などを行い、当社グループにおけるCO2排出量の削減をさらに推進します。また、調達する天然水産物、プラスチック、フードロス、水などについても、持続可能な利用を実現するための目標と施策をそれぞれ掲げ、取り組みを推進していきます。

 

(イ)CO2排出量の推移


 

(ロ)目標

指標

目標

測定・判定方法

CO2排出量

2030年度

30%削減

CO2排出実績

(対象:Scope 1,2 基準年度:2018年度、単位:総量)

2050年度

カーボンニュートラル

冷媒の特定フロン

2030年度

使用ゼロ

特定フロン冷媒を使用した設備の使用率

(対象:ニッスイグループ)

水の使用量

2030年度

20%削減

水の使用量(対象:ニッスイ国内グループ、基準年度:2015年度、単位:原単位)

廃棄物

2030年度

100%

ゼロエミッション率99%以上の事業所割合

フードロス量

2030年度

30%削減

事業所における動植物性残渣の廃棄量(対象:ニッスイ国内グループ、基準年度:2017年度、単位:原単位)

2030年度

50%削減

製品廃棄量(対象:ニッスイ個別、基準年度2020年度、単位:総量)

プラスチック

2030年度

30%削減

容器包装におけるプラスチック使用量 (対象:ニッスイ個別、基準年度:2015年度、単位:原単位)

2030年度

30%削減

事業所におけるプラスチック排出量

(対象:ニッスイ国内グループ、基準年度:2017年度、単位:原単位)

持続可能な調達比率

2030年度

水産物の持続可能な調達比率100%

ODP(注1)による評価手法(FishSourceスコア1~5による判定)で、「Well Managed(優れた管理)すべてのスコアが8以上」「Managed(管理)同6以上」を持続可能と位置づけ

 

 

(注1)ODP:Ocean Disclosure Project。SFP(Sustainable Fisheries Partnership)が2015 年に設立した、シーフードの調達を自主的に開示するためのオンライン報告プラットフォーム。

 

②生物多様性への対応(TNFD提言への取組)

 当社グループは生物多様性を守ることの重要性を考え、2014年に環境憲章を改訂し、行動方針に「生物多様性の保全」の推進をうたっています。当社グループの強みは、世界各地から水産物をはじめとした素材を調達できる資源アクセスであり、価値創造の源泉となっている一方で、事業活動を通じて自然資本に大きく依存し、また、影響を与えています。地球や海の恵みを受けて事業を営んでいることを常に心にとめ、バリューチェーンにおける生物多様性への依存と影響を把握し、その上で事業活動による負の影響の回避・低減に努めるとともに、復元・再生に取り組みます。

 また、当社グループは、2023年9月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムに加盟し、2023年12月にTNFD Adopterに登録しました。TNFD最終提言v1.0で推奨される開示推奨項目を、「ガバナンス」、「戦略」、「リスクと影響の管理」、「指標と目標」の4つの柱に沿って開示しています。

(注):TNFD提言への取り組みの詳細は、TNFDレポートをご参照ください。

 https://nissui.disclosure.site/assets/pdf/89/2023_tnfd_ja.pdf

 

<ガバナンス>

自然資本・生物多様性に関連する取り組みは、「水産資源持続部会」、「サステナブル調達部会」、「海洋環境部会」、「プラスチック部会」、「環境部会」、「人権部会」の6部会を中心に対応しており、各部会では方針や戦略の立案・実行を行い、サステナビリティ委員会に報告しています。年6回開催されるサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しています。また、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。


 

<戦略>

漁業と養殖における自然への依存と影響の関係を整理するため、LEAPアプローチ(注1)に沿って「依存と影響」の診断と「リスクと機会」の評価を行い、以下のように整理しました。なお、今回の評価では、バリューチェーン最上流における自然との接点である「漁業」および「養殖」を対象とし、外部ツール「ENCORE(注2)」を使用した一次評価を行った上で、当社グループの操業実態に合わせた二次評価(定性評価)を行いました。その結果、漁業では海域や水産資源などの海洋生態系サービスに大きく依存し、漁獲によって水産資源量や生物種に影響を与えていることが分かりました。養殖では、陸域・水域・海域の利用に加え、水温や水質などの生態系調整サービスに大きく依存している一方で、給餌による水質悪化など、養殖場水域の汚染により自然へ影響を与えていることが分かっています。

(注1)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。

(注2)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。

 


 

 

■リスクと機会の評価

<漁業>

自社にとってのリスクと機会

 

リスク

/機会

分類

想定される主なリスクと機会

事業インパクト

主な対応策

漁業

物理

リスク

慢性

水産資源の枯渇化

・調達量の減少(サプライチェーンの不安定化)
・調達コストの上昇

・資源アクセスのさらなる強化
・調達ネットワークの構築
・養殖事業の強化
・水産物代替原料の開発 

急性・慢性

海水温の変化に伴う資源状態・漁場・種の変化

移行
リスク

規制

漁業規制の強化

・調達量の減少(サプライチェーンの不安定化) 

温室効果ガス排出規制の強化

・対応コストの発生

・漁場探索の効率化(ドローン活用等)

市場

消費者の購買行動の変化

・対応遅れによる売上機会の損失
・対応コストの発生(例:認証取得費用)

・MSC・MEL等の認証取得
・資源状態調査の継続と情報発信

小売・外食業からの要請拡大(トレーサビリティ・認証など)

評判

絶滅危惧種の調達による評判低下

・売上の減少、ブランド価値の毀損

・絶滅危惧種調達方針に基づいた調達
・ステークホルダーとの対話

海鳥や哺乳類の偶発的捕獲による評判の低下

・各漁業会社における混獲防止策の継続
・ステークホルダーとの対話

海洋資源や環境への負の影響発生に伴う評判低下

・海洋環境への負荷低減とモニタリング
・地域社会との共生

対応が不十分な場合の投資家・金融機関からの評判低下

・投資金融資産の引き揚げ

・持続可能な各種取り組みと積極的な情報発信、対話

技術

漁船の温室効果ガス排出低減対応の遅れ

・事業競争力の低下
・対応コストの発生

・漁船の脱炭素化に向けた積極的な情報
収集

機会

製品・サービス/天然資源の持続可能な利用

水産物の持続的調達によるサプライチェーン安定化

・収益の安定化、販路の拡大

・調達における資源状態の確認
・漁業認証取得や認証品の取り扱い増

評判/生態系の保全

海鳥や哺乳類の偶発的捕獲防止による悪評の防止、生態系の保全

・レピュテーションリスクの回避
・漁場の生態系保全→漁業継続性の確保

・各漁業会社における偶発的捕獲防止策の継続

資本の流れおよび資金

投資家・金融機関からの評判向上、資金調達の多様化

・資本コストの低減

・持続可能な水産資源の調達と情報発信

評判資本

消費者の購買行動の変化(持続可能性に配慮した製品に対する需要の増加)

・売上の拡大

 

 

 

<養殖>

自社にとってのリスクと機会

 

リスク

/機会

分類

想定される主なリスクと機会

事業インパクト

主な対応策

養殖

物理

リスク

急性

風水害の激甚化による事業停止・管理コスト増加

・養殖施設の損壊による被害

・浮沈式生け簀の導入、施設の補強
・赤潮発生を予測し、被害を最小化
・陸上養殖への対応強化

魚病の蔓延

・魚の斃死による資産の喪失

・独自の養殖魚健康管理システム(N-AHMS)による予防管理

急性・

慢性

養殖場周辺の水質の悪化

・操業停止、魚病の発生、魚の斃死

・養殖漁場の環境モニタリング

渇水による操業停止

・養殖拠点の渇水被害

・高リスク拠点の特定、移転、設備強化、水源涵養

慢性

海洋環境の変化による水産物の調達リスク

・養殖飼料向け原料魚の漁獲量減少による調達量への影響や調達コストの増加

・代替飼料の開発(低魚粉配合飼料)

気候変動による海水温の上昇

・赤潮の発生
・養殖適地の変化

・新規養殖エリアの開拓(高緯度地域へのシフト)

移行
リスク

規制

養殖における環境規制の強化

・事業規模縮小や養殖場の閉鎖
・罰金や課税による財務影響

・養殖漁場の環境モニタリング
・飼料・給餌における海洋環境への負荷低減(EP飼料、自動給餌システム)
・沖合養殖への移行

温室効果ガス排出規制の強化

・対応コストの発生

・船による給餌から遠隔給餌システムへの転換
・水素燃料電池給餌船の開発・実証事業への参画

天然水産資源管理の強化に伴う飼料への影響

・調達量の減少
・飼料価格上昇による養殖コストの増加

・代替飼料の開発(低魚粉配合飼料)

市場

消費者の購買行動の変化

・対応遅れによる売上機会の損失
・対応コストの発生(例:認証取得費用)

・ASC・MEL等の認証取得

小売・外食業からの要請拡大(トレーサビリティ・認証など)

・対応遅れによる売上機会の損失
・対応コストの発生

・飼料のトレーサビリティ確保
・ASC・MEL等の認証取得

評判

環境への負の影響発生に伴うステークホルダーからの評判低下

・ブランド価値毀損、抗議行動、不買運動

・海洋環境への負荷低減とモニタリング
・地域社会との共生

持続性対応が不十分な場合の投資家・金融機関からの評判低下

・投資金融資産の引き揚げ

・持続可能な各種取り組みと積極的な情報発信、対話

技術

低環境負荷型養殖技術の開発の遅れ

・優位性喪失、事業競争力の低下

・経営資源の集中による対応強化

 

 

 

 

 

リスク

/機会

分類

想定される主なリスクと機会

事業インパクト

主な対応策

養殖

機会

製品・サービス/生態系の保全

完全養殖技術の確立による天然資源への依存低減

・ビジネスのレジリエンス強化、競争優位性の確立

・ブリ以外の魚種への展開(100%人口種苗化)

健康管理による養殖魚の健康増進、周辺海域への魚病拡大防止

・養殖成績の向上、収益の安定化
・競争優位性の確立

・独自の養殖魚健康管理システム(N-AHMS)による予防管理

抗菌剤に頼らない養殖方法の研究開発による海洋環境負荷の低減

・輸出機会の拡大
・競争優位性の確立

・SeaBOSを通じたステークホルダーとの協働

陸上養殖技術の開発による海洋環境への負荷の低減

・競争優位性の確立、販路の拡大
・レピュテーションリスクの回避

・現状の取り組みの深化(エビ、サーモン、マサバ)

製品・サービス

陸上養殖技術開発による気候変動耐性の確保

・物理リスク(風水害、海水温上昇等)回避によるビジネスのレジリエンスの強化

製品・サービス/生態系の保全

スマート養殖による環境負荷低減、動物福祉向上

・養殖コストの低減、養殖成績の向上
・労働環境の改善

・AI・IoTを活用した生産管理
・遠隔給餌システムの開発

マーケット
/生態系の保全

作業船の脱炭素化による環境負荷低減

・将来のカーボンプライシングによる影響回避
・ステークホルダーからの評判の向上

・水素燃料電池給餌船の開発

・実証事業への参画

資本の流れおよび資金

投資家・金融機関からの評判の向上、資金調達の多様化

・資本コストの低減

・持続可能な養殖事業構築と情報発信

評判資本

消費者の購買行動変化(持続可能性に配慮した製品に対する需要増加)

・売上の拡大

 

 

<リスクと影響の管理>

 当社グループでは、中長期的な経営戦略を見据えた重要リスクを特定するため、マテリアリティをリスクマネジメントの起点としています。2023年度に実施したマテリアリティの見直しに伴い、重要リスクについても見直しを行いました。特定した自然資本・生物多様性に関わる重要リスクは以下の通りです。なお、マテリアリティの見直しに際しては、TCFDやTNFDの取り組みにおける「気候関連・自然関連のリスクと機会」の検討結果を反映させています。リスクの詳細は「第2  事業の状況  3  事業等のリスク」をご覧ください。

 

重要リスク

重要リスク管理組織

気候変動への対応に関するリスク

環境部会

サステナビリティ委員会

生物多様性への対応に関するリスク

水産資源持続部会

海洋環境部会

サプライチェーンの環境・人権に関するリスク

サステナブル調達部会

人権部会

 

 

気候変動に関連するリスク・機会の分析と対応策については、常務執行役員(CFO)がオーナーを務める部門横断型の「TCFD対応プロジェクト」が環境部会と連動して検討しています。また、バリューチェーン上の自然資本関連のリスク・機会の分析と対応策については、水産資源持続部会、海洋環境部会、サステナブル調達部会、人権部会、において検討し、サステナビリティ委員会での議論の後に取締役会に報告され、取締役会から受けた意見や助言を施策に反映しています。

 

 

<指標と目標>

当社グループは、水産資源の持続性確保や海洋環境の保全を経営課題と位置付けて取り組んでおり、以下の指標と目標を用いて自然関連の依存・影響、リスク・機会を管理しています。

 

対象

指標

目標

測定・判定方法

漁業

養殖

持続可能な調達比率

2030年度:水産物の持続可能な調達比率100%

ODP(注1)による評価手法(FishSourceスコア1~5による判定)で、「Well Managed(優れた管理)すべてのスコアが8以上」、「Managed(管理)同6以上」を持続可能と位置づけ

漁業

養殖

絶滅危惧種(水産物)の調達

特に絶滅の危険度の高い水産物に関しては、2030年までに資源回復への科学的かつ具体的な対策(右記)が取られない場合には、調達を停止

資源回復への科学的かつ具体的な対策

1. MSC等の認証漁業品(GSSI(注2)認証相当)または、FIP漁業品

2. RFMO(注3)等の国際的な資源管理団体による科学的な漁業管理

3.ODP(注1)が定める基準で「Managed」以上の評価

4. その他、上記1-3の実現に向けて、具体的な施策を実施している場合

漁業

養殖

CO2排出量

2030年度:CO2排出量30%削減

CO2排出実績(対象:Scope 1,2 基準年度:2018年度)

養殖

ナイロンカバー発泡スチロール製養殖フロートの切り替え実績

2024年度: 100%切り替え完了

海洋へのプラスチック流出リスクの低い養殖用フロートへの切り替え実績

養殖

養殖魚の逃亡

逃亡魚の発生ゼロ

逃亡実績(逃亡魚が発生した際は、発生規模を問わず、全て把握、記帳、集計)

 

 

(注1)ODP:Ocean Disclosure Project。SFP(Sustainable Fisheries Partnership)が2015 年に設立した、シーフードの調達を自主的に開示するためのオンライン報告プラットフォーム。

(注2)GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative。持続可能な水産物認証プログラムを検証する国際パートナーシップ。

(注3)RFMO:Regional fisheries management organizations。水産資源の保存及び持続可能な利用の実現を目指し、個別の条約に基づいて設置される国際機関。