人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数1,489名(単体) 11,526名(連結)
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平均年齢42.8歳(単体)
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平均勤続年数15.8年(単体)
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平均年収8,506,166円(単体)
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平均年収の
対前年増減率1.8%(単体)
従業員の状況
人材戦略に関する基本方針等
(1)【人材戦略に関する基本方針等】
当社グループは、2030年長期ビジョン「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」の実現に向け、「人財こそが欠かせない価値であり、競争優位の源泉である」との認識のもと、人的資本経営を推進しております。中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」においてはバリューチェーンの強靭化を目指しており、その基本戦略の一つとしてサステナビリティの進化を掲げ、競争力の源泉となる人的資本とブランディングの強化を重要テーマとして位置付け、事業構造の変革と企業価値の持続的向上を図っております。
<ガバナンス>
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた重要課題としてマテリアリティを設定しており、人的資本経営についてもこれに基づき推進しております。人的資本に関する施策は、執行役員が責任者を務める推進組織が主体となり立案・実行するとともに、取締役会・執行役員会等において取り組みの進捗を定期的にモニタリングし、人財価値向上の取り組みを後押ししています。
(イ)経営戦略と人財戦略の連動
当社グループでは、以下のとおりの考えに基づき、人財戦略に関する具体的な取り組みを推進しています。
なお、記載内容の内、一部の施策、制度、目標、実績等については、グループ各社での実施がない、あるいは今後展開を予定しているものが含まれており、当社において先行的又は独自に推進しているものです。これらについては、本文中において「当社」の表記を用いております。
当社グループは、水産資源及び食品を通じた価値創造を基盤に国内外で事業を展開してきましたが、近年、気候変動の進行、地政学リスクの高まり、消費者ニーズの多様化、並びに技術革新の進展等により、事業環境は大きく変化しています。特に温暖化による異常気象や自然災害は、当社グループの原材料調達、生産、販売、物流などあらゆる事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があり、今後は従来の延長線上では対応が困難になり得ることから事業運営及び技術対応が求められています。
また、国内における少子高齢化の進展により労働力の確保が一層困難となる中、グローバルでの事業展開の加速、サステナビリティ経営の高度化、新規事業の創出を同時に実現する必要があります。このような環境下において、当社グループの経営戦略上の重要課題は、不確実性の高い環境下でも持続的に価値を創出できるバリューチェーンの強靭化です。その実現には人財力の強化が重要な戦略となりますが、現在の人財ポートフォリオや能力構成では十分とは言えません。
現在、人財ポートフォリオの最適化のために、以下の人財育成に取り組んでいます。
・ESGを推進し、ガバナンスの強化を担う専門人財の育成
・グローバル事業を推進するマネジメント人財の育成
・DXにより業務や製品、サービス、働き方などを革新できる人財の育成
・多様な価値創造を実現するためのイノベーション人財の育成
・バリューチェーン全体を俯瞰し意思決定を担う経営人財の育成
当社グループは、以上の人財育成を通じて、価値創造力・持続可能性・リスク対応力を高め、バリューチェーンの強靭化を図っていきます。
なお、従業員給与等の決定にあたっては、これらの人財戦略との整合性を重視し、各人の役割・成果及び能力に加え、当社が求める人財像に基づく行動特性の発揮状況を踏まえて決定しています。
当社事業年度においては、人財基盤強化の観点から定期昇給及びベースアップを実施し、平均改定率は約5.5%となりました。
一方で、従業員構成の変動並びに業績連動賞与の支給水準の変化等の影響により、従業員の平均年間給与の対前事業年度増減率は1.8%の増加となっております。なお、参考値として個人単位での年間給与増減率の中央値は約6%となっております。
(ロ)人財戦略の基本的な考え方
当社グループは、前述の経営戦略上の課題を踏まえ、不確実性の高い事業環境においても持続的に価値を創出し続けるためには、事業戦略と人財戦略の高度な連動が不可欠であると認識しております。このような認識のもと、当社グループは2024年度に「人財マネジメントポリシー」を策定し、「主体性」「変革」「挑戦」「共創」「完遂」を当社グループが求める人財像として明確化しました。これらは、当社グループがこれまでの歴史の中で大きな環境変化や困難に直面した際に発揮してきた行動特性を言語化したものであり、これらを体現する人財が主体的に価値創造を担うことで、事業変革と企業成長の実現を目指しています。
こうした考えのもと、当社の人財戦略は、「バリューチェーンの強靭化を支える人財基盤の構築」を基本的な方向性とし、以下の5つの観点に基づき推進しています。
a)成長事業領域への人財シフト準備
事業ポートフォリオの変革を着実に実行するため、成長事業領域への人財の戦略的シフトを推進しています。長期ビジョン「GOOD FOODS 2030」においては、「事業ポートフォリオマネジメント強化」と「サステナビリティ経営の推進」を両軸に企業価値向上を目指しており、持続的な成長が見込まれる「海外事業」「ファインケミカル事業」「国内外養殖事業」を成長事業領域と位置付けています。
これらの戦略を踏まえ、2030年に向けた事業戦略の実現に必要な組織構造及び人員構成を起点とし、「あるべき人財構成」を定義した上で、現状とのギャップを可視化し、対応策を検討・実行する枠組みとして事業執行をメンバーとして人財確保部会を運営しています。同部会では、事業戦略に基づく必要人財の質・量の定義、組織構造の再設計、人財需給ギャップの分析を行うとともに、経営戦略と連動した前述の重点人財領域について、確保計画及び育成計画の策定・推進を行っています。また、経営人財については、人財育成委員会のもと、10年単位の長期的視点で後継者の確保と育成を進めており、候補者の選定から必要な経験・スキルの明確化、育成計画の策定・モニタリングに至るまで一貫したプロセスを整備しています。さらに、グローバル人財及び専門性の高い人財については、海外経験や異文化対応力の強化、R&D・DX・サステナビリティ・ガバナンス等の専門領域における育成・採用を推進するとともに、専門人財制度の活用や学習支援を通じて人財基盤の強化を図っています。
これらの取り組みを採用・育成・配置の各施策へと反映することで、戦略と整合した人財ポートフォリオの最適化を図るとともに、成長領域への人財シフトを加速し、事業環境の変化に柔軟に対応できる人財基盤の構築を推進してまいります。
b)ミッションの体現
当社は、ミッションの体現を通じて企業価値を創出するためには、社員一人ひとりがミッションを自らの言葉で理解・共感し、日々の業務において主体的に行動へと結び付けていくことと、これらの行動が組織としての行動に結びつくことが重要であると考えています。
このため、当社ではインナーブランディング施策として「GOOD FOODS Talk」を中心とした活動を継続的に展開しています。本活動は、社員同士がミッションについて対話し、自身の志との重なりを見出し、それを具体的な行動へとつなげることを目的とした取り組みです。具体的には、各職場単位での対話に加え、部門横断でのディスカッションや、国内外の出向者を含めた交流の機会を設けることで、組織や立場を超えた共創と一体感の醸成を図っています。また、社員が実践したミッション体現行動を共有・表彰する仕組みを導入し、挑戦や行動を称賛する文化の醸成にも取り組んでいます。これらの活動を通じて、ミッション浸透は「理解」から「共感」、さらに「行動」へと段階的に進展しており、社員一人ひとりが自身の志と会社のミッションを結び付け、具体的なアクションを起こす状態に広がっています。
当社グループについては、国内経営陣の集まるグループ経営会議においてミッションを共有することはもちろん、グループ会社の役員・部署長を対象にミッションへの理解及び自社での展開を検討するワークショップを2023年度より3年間で7回(計341人)実施するとともに、グループ会社の全従業員を対象に、ミッション・ビジョンの理解度を上げるためのオンライン説明会を1回(同時接続者数1800人アカウント)実施しています。2025年からは「GOOD FOODS Talk+」と称し、各社の職場において、ミッションの理解・共感を深め、自らの行動に繋げるため語り合う活動をスタートとしています。
さらに、当社グループはこれらの個々の行動を組織としての実行につなげることを重要な課題と認識しており、部門横断での対話や事例共有を通じて、ミッションに基づく行動を業務へ組み込み、組織単位での実践へと展開を進めています。
一方で、ミッションと具体的行動との接続や、組織としての行動基準の明確化については課題が残ることから、今後はミッション体現行動の基準の明確化や評価制度との連動を進めるとともに、優良事例の全社共有を通じて、個人の行動を組織的な実践へと昇華させていきます。当社は、これらのインナーブランディング活動を通じて、ミッションを軸とした組織の一体感を高めるとともに、個人と組織が一体となって価値創造を担う体制を構築し、持続的な企業価値の向上につなげてまいります。
c)エンゲージメントの向上
当社は、ミッションを実践し、人財が主体的に価値創造を担う状態を実現するためには、エンゲージメントの向上が重要であると認識しています。
この考えのもと、2021年よりエンゲージメント調査を実施し、組織状態の可視化と改善に取り組んできました。企業成長を直接的に示す単一指標の設定が難しい中で、当社は「個人の業績結果」と「残業時間」を組み合わせ、高い成果を効率的に創出している状態を高パフォーマンスと設定し過去5年分の全部署データを対象にエンゲージメントとの関係について統計分析を行いました。その結果、高パフォーマンスを実現している組織においては、一貫してエンゲージメントスコアが高い傾向が確認されました。
当社は人財戦略に基づく各施策の進捗及び成果については、それぞれの目的に応じた指標も採用していますが、これらの分析を踏まえ、エンゲージメントは当社が目指す人財の状態及び企業成長に資する重要な統合的指標であると位置付け、継続的なモニタリングを実施しています。
一方で、従来の調査は企業や職場に対する認識を中心とした設計であり、社員一人ひとりの主体的な実感や期待との関係性を十分に把握しきれていないという課題がありました。このため、2024年度より調査設計を見直し、主語を個人に置いた形で、ポリシーに掲げる行動特性に対する実感及び期待を直接把握する仕組みへと高度化しています。
今後は、グループ会社への展開も含め、会社が提供する制度・環境と個人の実感・期待とのギャップを可視化し、その要因分析を通じて重点課題を特定するとともに、人財戦略の各施策の高度化及び優先順位付けに反映していきます。
d)多様な人財の能力及び個性の発揮
当社は、多様な人財がそれぞれの能力を最大限に発揮し、価値創造につなげることが持続的成長の基盤であるとの認識のもと、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進に取り組んでいます。
女性活躍の推進については、女性管理職比率が継続的に向上し、足元では過去最高となる9.1%に達しています。また、若手女性社員の増加に伴い、組織責任者の意識改革や、生産部門を中心とした多様な人財配置も進んでおり、工場における女性社員の活躍や管理職登用事例も増加しています。今後も、キャリア形成支援及び適切な配置・登用を一層推進することで、意思決定層における多様性のさらなる向上に取り組んでまいります。
障害者雇用については、「障害に関係なく『成長と活躍』を実現する会社づくり」を基本方針とし、社員一人ひとりが働きやすく活躍できる環境の整備を進めています。具体的には、対話を重視したマネジメントのもと、個々の特性に応じた業務設計やキャリアパスの整備を推進しており、ビジネスパーソンとしての主体性や成長意欲を尊重した人財活用を行っています。その結果、障害のある社員の正社員登用も着実に増加し、活躍の場の拡大につながっています。また、雇用率は安定的に推移していることに加え、これらの取り組みが外部機関からも評価されています。
今後も、雇用の量的拡大にとどまらず、一人ひとりが能力を発揮できる環境整備を進めるとともに、多様な人財の活躍を通じた価値創造力の向上に取り組んでまいります。
e)健康経営の推進
多様な人財一人ひとりが能力を最大限に発揮するための基盤として、心身の健康を積極的に支援することを、2017年に「健康経営宣言」として公表しております。
そして当該宣言の達成度を測る指標として、アブセンティーイズム(健康上の理由による欠勤)及びプレゼンティーイズム(健康上の理由による生産性低下)の改善に取り組み、これにより人財戦略の基盤を一層強化してまいります。
<指標と目標>
当社は人財戦略の実効性を管理するため、以下の指標を設定しています。
(2)【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
(2026年3月31日現在)
(注) 従業員数は就業人員であり、臨時従業員は〔 〕内に年間の平均人員を外数で記載しております。
(2) 提出会社の状況
(2026年3月31日現在)
(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時従業員は〔 〕内に年間の平均人員を外数で記載しております。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
(3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.管理職に占める女性労働者の割合については、他社への出向者を除いております。
4.当社は組織の中で担う役割と行動で等級を区分し、それぞれの役割に応じた成果によって等級を定める役割等級制度を運用しており、同一役割等級内における性別の違いによる賃金の差はありません。賃金は基本給及び賞与、基準外賃金を含んでおります。但し、時間外勤務などの変動要因によるものは除いています。
<職位別人員構成比(Pコース)>
役割等級制度のコースの一つに将来のマネジメントを担うPコースがあります。Pコースにおける人員構成は初任級から徐々に女性職員比率が下がっており、特に女性管理職(課長級や部長級)及び係長級の母集団形成が充分でなく、男女の賃金差異の要因となっています。長期ビジョンとして2030年に執行役員・管理職に占める女性の比率を20%とすることを目標に掲げており、管理職に占める女性比率向上に向けて、新卒、及び経験者採用における女性職員の計画的な採用や育成を進めています。なお、これらの取り組みにより、近年次期管理職候補となり得る係長級においては、女性比率が向上してきており、男女の賃金の差異は縮小していくと考えています。
<職位別 人員構成比>
(%)
<職位別 年間平均賃金>
(万円)
<係長級の女性比率の推移(過去5年間)>
(%)
<男性育児休業取得率>
2030年度に「育児期の社員が取得期間の長短にかかわらず安心して育児休業を取得できる状態」を目標に掲げ、育児休業制度の利用環境の整備や復職後の仕事と育児の両立支援施策の拡充に取り組んでいます。これらの取り組みにより、2023年度以降、男性の育児休業取得率は概ね高水準で推移しており、取得の定着が進んでいます。
④ 男性労働者の育児休業取得率の推移(過去5年間)
5.生産部門においては、女性のパート・有期雇用労働者数が多く全労働者平均に与える影響が大きくなっています。
<生産部門、生産部門以外における雇用管理区分の構成比>
(%)
② 開示対象となる連結子会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.共和水産株式会社において、パート・有期雇用労働者の男女の賃金の差異が大きい要因は、男性の定年再雇用者と、女性のパート労働者との賃金・人数の差によるものであります。
4.日本海洋事業株式会社において、パート・有期雇用労働者の男女の賃金の差異が大きい要因は、男性の嘱託船員と、女性のパート労働者との賃金・人数の差によるものであります。
5.上記表における「-」につきましては、対象者がいないことを示しております。
(4)労働組合の状況
当社グループには、2026年3月31日現在日本食品関連産業労働組合総連合会に所属するニッスイアドベンチャークラブ(組合員数1,414人)等があります。
なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
(1)サステナビリティ全般
<ニッスイグループのサステナビリティ>
ニッスイグループは創業以来、さまざまな自然の恵みを活用して事業を行ってきました。創業の理念、ミッションに掲げるサステナブルな事業活動は私たちの重要な使命です。私たちはニッスイの5つの遺伝子(お客様を大切にする、現場主義、グローバル、イノベーション、使命感)、サステナビリティ行動宣言に基づき、ステークホルダーの皆さまとの連携・協働のもと、事業を通じてマテリアリティ(重要課題)に取り組み、社会課題の解決を目指します。
<ガバナンス>
(イ)取締役会
当社グループの取締役会は、社会課題への取り組みを進めながら持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促すため、ミッション・ビジョン、中長期の経営戦略など大きな方向性を示すとともに、執行上の重要な意思決定と適切な監督を行うことを役割と考えています。また、マテリアリティやサステナビリティ中長期目標などのサステナビリティ経営に関わる重要事項の決議を行います。サステナビリティ課題への対応や目標進捗については、サステナビリティ委員会における検討内容の定期的な報告を受け、監督しています。また、長期ビジョンの実現及び中期経営計画の達成に向け、取締役(社外取締役を除く)の報酬体系について、基本報酬に加え、業績連動報酬及び株式報酬を組み合わせた構成としています。2025年度からの中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」の開始にあわせ、業績に連動する変動報酬の比率を高めるとともに、株式報酬の会社業績評価指標に、水産資源の持続可能性目標達成度、自社グループ拠点のCO2排出量削減、従業員エンゲージメントのミッション浸透度のスコア向上、重点リスク対応目標達成度などの非財務(サステナビリティ)目標を設定しています。
(ロ)サステナビリティ委員会
当社グループでは、持続的な成長と企業価値向上の実現に向けてサステナビリティ経営を進めており、その推進組織として、全執行役員と社外取締役で構成し、CEOを委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。年6回開催するサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しており、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。なお、サステナビリティを巡る各課題については、サステナビリティ委員会傘下のテーマ別の7つの部会及び執行役員会・品質保証委員会・経営基盤リスク委員会傘下の部会において、委員長が指名した部会長(執行役員)と、部会長により任命されたメンバーで部門横断的に対応を行っています。
<戦略>
当社グループでは、サステナビリティ経営を長期ビジョン達成のための柱の一つとして位置付け、環境価値、社会価値、人財価値、経済価値の4つの価値創出を目指しています。サステナビリティ課題をリスクと機会の両面から捉え、環境価値、社会価値、人財価値の創出に取り組むことで非財務資本を強化し、経済価値の創出につなげます。
2025年度を初年度とする中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」においては、サステナビリティ経営の深化を基本戦略の一つとし、競争力の源泉となる人的資本とブランディングの取り組みを強化するとともに、マテリアリティ基点でビジネスモデルを構築することで競争優位を獲得し、企業価値の向上を目指しています。
<リスク管理>
当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクの未然防止に努め、緊急時には人命尊重を第一に損失の発生を最小限に抑え、被災者支援など社会への配慮を行うとともに経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすことで、企業価値を維持・向上していくことをリスクマネジメントの基本方針としています。サステナビリティ課題を含む重要リスクについては、執行役員会、サステナビリティ委員会、品質保証委員会、経営基盤リスク委員会が中心に対応し、社長直轄の組織であるリスクマネジメント委員会が、全社重要リスクを一元的に把握・管理する統合リスク管理機能として審議・承認し、取締役会へ報告することで、全社的リスクマネジメントシステムの構築とその維持・向上に努めています。リスク対応に優先順位を付け、全社的重要リスクを経営戦略や事業活動に反映することで、将来の成長機会とリスクの適切なマネジメントに取り組んでいます。リスクの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
<指標と目標>
中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」において、経済価値、環境価値、社会価値及び人財価値の創出に向け、10のKPIを定めました。関連するマテリアリティの推進組織により、各指標の進捗をモニタリングし、結果に基づき取り組みに反映していきます。
(注1):対象範囲はニッスイ個別
(注2):調査は3年ごとに実施しており、上記数値は、2022年を対象として2024年に公表した第3回調査結果に基づくもの。
(注3):グループ会社の経営統合等によって生じた構造的変化を反映し、目標の基準年度である2018年度の数値を再計算した。
(2)テーマ別課題
≪人権の尊重に関する取り組み≫
企業活動のグローバル化と多様化が進む中、国内外のバリューチェーン全体で人権尊重の取り組みが求められています。当社グループは、事業に関わる全てのバリューチェーンにおいて、人権を最優先に尊重すべきとの認識のもと、「国際人権章典」及び「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に記された人権を支持し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた取り組みを進めています。
<ガバナンス>
人権の尊重に関する取り組みは、サステナビリティ委員会傘下の「人権部会」、「サステナブル調達部会」の2部会を中心に対応しており、リスクに応じて関連するその他の部会と連携しながら対応を行っています(注)。各部会では方針や戦略の立案・実行を行い、サステナビリティ委員会に報告しています。年6回開催されるサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しています。また、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。
(注):上記以外に経営基盤リスク委員会傘下の「労務安全衛生部会」、「倫理部会」とも連携しています。
<戦略>
ニッスイグループは、「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー(GOOD FOODS 2030)」という長期ビジョンを掲げ、持続可能な社会の実現に向けて人権の尊重を企業価値向上の重要な要素と位置付けています。
人権への負の影響を防止・軽減するための取り組み
(イ)方針によるコミットメント(人権方針の策定)
当社グループでは、2020年9月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「ニッスイグループ人権方針」を策定し、人権の尊重を経営課題として位置付けました。本方針は企業活動のグローバル化・多様化に伴い、国内外のバリューチェーンにおける人権尊重の取り組みが求められる中、当社グループの事業に関わる全てのバリューチェーンにおいて、人権を最優先に尊重すべきであるとの認識のもと、この責任を果たしていくことを改めて表明したものです。また、本方針は当社グループの役員及び従業員に適用するとともに、サプライヤーを含むビジネスパートナーの皆さまにも本方針を支持し人権の尊重に努めていただくことをお願いしています。本方針の周知方法は以下のとおりです。
人権方針の周知
(ロ)人権デューデリジェンスの実施
重要人権リスクの特定
当社グループのバリューチェーンにおける実際の又は潜在的な人権への負の影響の把握のため、2024年7月に部門横断型のワークショップ形式による人権リスクアセスメントを実施し、3つの重要人権リスクを特定しました。これらのリスクについては、実態の把握及び低減に向け、重点的な対応を進めています。
人権リスクアセスメントのプロセスは「リスク管理」の項に記載しています。
(注)SAQ:Self-Assessment Questionnaire。自己評価調査票。
(ハ)救済措置(苦情処理メカニズムの整備)
当社グループでは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、自社だけでなく専門の第三者機関と連携してグリーバンスメカニズムを構築し、救済へのアクセスを確保しています。社内及び社外の窓口で通報を受け付ける内部通報制度に加え、2023年度から国内の生産事業所や漁業における外国人労働者を対象として、責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)が提供する企業協働プログラムに参画し、23言語に対応した相談窓口を設置しています。また、サプライヤーをはじめとする幅広いステークホルダーを対象として、ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に参加し、ビジネスと人権に関する苦情・通報窓口を設置しています。
また、上記以外に、お客様と直接対話する仕組みとして、お客様サービスセンターを設置しています。「消費者の安全や知る権利」も企業活動の中で尊重すべき人権と考え、お客様の声をタイムリーに受け止め、正確な情報をお伝えすることを心がけています。
<リスク管理>
(イ)人権リスクを識別・評価・管理するプロセス
当社グループのバリューチェーンにおける実際の又は潜在的な人権への負の影響を把握するため、人権部会において人権リスクアセスメントを実施しています。外部環境の変化に対応し、国や専門機関、NGOの報告書や苦情・通報窓口への通報・相談内容、ステークホルダーとの対話を通じて収集した情報をもとに、新たなリスクの特定や優先順位の決定を行っています。直近では2024年7月にアセスメントを実施し、サステナビリティ委員会での議論を経て、同年10月に重要リスクを特定しました。2025年度以降は、人権部会において年1回リスクの見直しを行うとともに、人権リスクアセスメント(重要リスクの特定)は、中期経営計画の策定タイミング(3年に一度)を目安に実施する計画です。直近では2026年2月に当該見直しを実施しました。
リスクアセスメントの手法
バリューチェーンの各プロセスにおいて、「一般的・業界横断的な人権リスク」と「水産業・ニッスイグループ特有の人権リスク」の2つの視点からリスクの洗い出しを行っています(下図参照)。特に後者の分析では、国別リスクや魚種別リスクといった視点も取り入れ、より詳細な評価を行っています。抽出されたリスクに対しては、発生頻度や可能性、発生時の影響の大きさを基準とした「インパクトアセスメント」を実施し、重要なリスクを特定・絞り込んでいます。
2024年度の人権リスクアセスメントで特定した重要人権リスクとその対応については、「戦略」の項に記載しています。
人権リスクアセスメントワークショップにより抽出された人権リスク
(ロ)総合的リスク管理への統合状況
人権部会やサステナブル調達部会で特定された人権リスクは、全社重要リスクを一元的に把握・管理する統合リスク管理機能であるリスクマネジメント委員会に共有され、全社グループ視点で経営戦略への反映や優先度に応じた対応策の実行が図られています。
リスクマネジメント委員会で特定した人権に関連する重要リスクは以下のとおりです。
リスクマネジメント体制と重要リスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
<指標と目標>
当社グループは、人権の尊重に関する指標を設定し、その進捗をモニタリングしています。主要な指標と目標、及び実績は以下のとおりです。
(イ)1次サプライヤーアセスメント比率
ニッスイ個別の1次サプライヤー(直接の取引関係がある国内外のサプライヤー)に対し、SAQによる確認を進めています。特に優先度の高い項目において基準を満たさない場合には、書面による改善依頼を送付、又はサプライヤーを訪問して改善に向けたアドバイスを行うとともに、その取り組み状況を継続的にモニタリングしています。
SAQへの回答率は2023年度から2025年度までの累計で98.4%となりました。2030年までに海外も含めたグループの主要サプライヤーにも対象を広げ、100%実施を目標に取り組みを進めています。
(ロ)外国人労働者の労働環境モニタリング
国内のグループ会社で外国人を雇用する全生産事業所を対象に年1回の労働環境調査(全80項目のセルフチェック)を実施しています。調査では深刻な人権侵害リスクの兆候は認められていませんが、一部の事業所において言語面の課題が確認されており、人権部会より国内のグループ各社に対して多言語化対応の周知を図っています。グループ全体で統一した対応を進め、その対応状況を人権部会で確認しています。また、国内グループ会社の生産拠点47事業所に在籍する外国人労働者を対象に、23言語に対応した第三者相談窓口(JP-MIRAIアシスト)を導入し、労働問題から生活まわりの相談まで、外国人労働者がワンストップで相談できるハードルの低い仕組みを導入しています。
(ハ)従業員に対する人権研修実施状況
従業員(注)を対象とした人権研修を継続的に実施しており、2025年度には6,689名がeラーニング研修を受講しました。今後も毎年研修を実施し、従業員一人ひとりへの人権方針の浸透と意識向上を図ります。
(注):2025年度はニッスイ個別の全従業員と国内グループ会社の役員・幹部職・一般社員が対象
これらのKPIは人権部会・サステナブル調達部会を中心にPDCAサイクルで取り組みを改善しており、サステナビリティ委員会や取締役会に定期報告され、目標達成度合いや課題が議論されています。また、目標と指標は外部環境の変化やステークホルダーの声を踏まえてアップデートしています。
≪気候変動及び自然資本・生物多様性への対応≫
当社グループのビジネスは自然資本に依存しており、さまざまな生態系サービスの恵みを受けて事業を行っていることから、自然資本の持続可能性が損なわれることは、大きなリスクであると認識しています。また、気候変動は当社グループを取り巻くさまざまなリスクと関連しており、生物多様性や生態系の変化とも相互に影響し合い、原材料調達などのリスクにも大きく影響します。こうした認識のもと、当社グループでは、気候変動と自然資本・生物多様性を相互に関連する重要な環境課題として捉え、TCFD及びTNFD提言のそれぞれの考え方に基づき、リスク・機会及び対応策を整理しています。なお、気候変動と自然資本・生物多様性は相互に関連することから、各提言に基づく整理において、一部のリスク・機会及び対応策は相互に関連又は重複しています。
①気候変動への対応(TCFD提言への取組)
<ガバナンス>
気候変動問題については、CFOがプロジェクトオーナーを務める部門横断型プロジェクト「TCFD対応プロジェクト」においてリスク・機会の分析と財務インパクトに応じた対応策の検討を行い、検討結果をサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会に報告し、取締役会からの意見や助言を反映しています。CO2排出量削減などの気候変動緩和策については、サステナビリティ委員会傘下の環境部会がグループ全体の取り組みを推進しています。
<戦略>
連結売上高の95%以上を占める水産事業、食品事業、ファインケミカル事業を対象とし、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を2つのシナリオで実施しました。気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。明確化された重要なリスクと機会に対して、対応策を講じることで、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指します。
(イ)戦略におけるシナリオ分析の概要
TCFDの提言に従い、気候変動シナリオ分析を実施しました。分析対象は水産事業と食品事業、ファインケミカル事業とし、バリューチェーン全体を幅広く分析しました。1.5℃/2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と2030年における財務インパクトの評価、及び対応策を検討しました。
その結果、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税の導入による操業コストが事業成長の阻害要因となり、積極的な温室効果ガス削減とともに生産活動の効率化に取り組み、新たな顧客需要を捉えることにより、事業成長につなげることが可能であることがわかりました。また、4℃シナリオでは自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業成長の阻害要因となり、養殖事業の高度化に取り組みこれらのリスクに対応することで収益への影響を最小化することが必要であることがわかりました。
1.5℃/2℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(注1)ICP:インターナルカーボンプライシング
(注2)LCA:ライフサイクルアセスメント
4℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(ロ)カーボンプライシングの影響
財務インパクトの中でも特に影響が大きかったカーボンプライシングについては、将来CO2排出量(Scope1、2)を2030年売上予測に基づいて算出し、2℃シナリオ、4℃シナリオごとのIEAの予測(注1)による炭素価格を掛け合わせて運営コストの影響金額を算出しました。2030年目標であるCO2排出量を総量で30%削減することにより、グループ全体で2℃シナリオでは56.0億円、4℃シナリオでは17.4億円の削減につながることがわかりました。
炭素税:2℃シナリオ時 135ドル/t‐CO2、4℃シナリオ時 42ドル/t‐CO2と仮定、為替レートはいずれのシナリオも1ドル=150円と仮定
(注1)IEA World Energy Outlook 2023
(注2)対応策なし:Scope1、2を対象とし、基準年度(2018年度)と同様の原単位でCO2が排出されると仮定
(注3)対応策あり:Scope1、2を対象とし、2030年目標を達成することでCO2排出量が2018年度から30%削減されると仮定
(ハ)天然水産資源(カタクチイワシ・スケソウダラ)の影響評価
調達量が多く重要な魚種であるカタクチイワシとスケソウダラについて、FAOのモデルを使用して2種類のシナリオで2030年、2050年の漁獲可能量の変化を評価しました。その結果、1.5℃シナリオにおいては両魚種ともに微減が予想されました。4℃シナリオにおいては、カタクチイワシは2030年、2050年ともに減少となり、スケソウダラは2030年は微増、2050年は増加が予想されました。2030年時点での漁獲可能量の変化率は大きくないため、財務への影響は軽微であることが確認されました。しかし、2050年の漁獲可能量の変化率は比較的大きいため、特に減少が予想されるカタクチイワシについては、対応策を確実に進めていく必要があります。
漁獲可能量の変化率 (%)
出所:FAO (国連食糧農業機関)「Impacts of climate change on fisheries and aquaculture(2018)」を参考に当社推計
(ニ)水リスクの評価
水リスク評価のグローバルスタンダードのうち、2021年度は世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterを用いて国内の製造・物流拠点全体の評価を行いましたが、水リスク評価の際には拠点別の影響額を試算するために浸水深のデータが必要であることから、2022年度以降は分析粒度が細かくより精緻なデータ収集が可能である世界資源研究所(WRI)のAqueduct(アキダクト)を用いて、国内・海外の生産・物流拠点別に評価を行いました。
水害による生産中断に伴う機会損失については、各拠点の所在地に示されるAqueductの浸水深により拠点別に運転停止日数・在庫毀損率を特定し、財務影響金額を算定しました。財務への影響は中程度であることを確認しました。また、水ストレス(渇水)については、最も高いリスクレベルに該当する拠点が1拠点あることを確認しました。加えて、南米の生産拠点の一部が、水ストレスの高い地域に所在していることがわかりました。最も高いリスクレベルに該当する拠点においては、使用水の削減や水使用効率の向上に向けた設備改善に加え、使用水の循環利用などの取り組みを進めています。今後は継続的に使用水の削減に取り組むとともに、水リスク評価方法の精緻化についても検討を進めていきます。
■Aqueductによる洪水リスク評価結果(拠点数)
■Aqueductによる渇水リスク評価結果(拠点数)と水使用量
(ホ)戦略への反映
シナリオ分析の結果を受けて、中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」でも引き続き、優先度の高い対応策から事業計画に反映し、戦略との整合を図っています。
<リスク管理>
(イ)リスクを識別・評価・管理するプロセス
当社グループは、気候変動を中長期的な事業活動に影響を及ぼす重要な経営課題の一つと認識しています。そのため、CFOがプロジェクトオーナーを務める部門横断型プロジェクト「TCFD対応プロジェクト」において、連結売上高の大部分を占める水産事業、食品事業、ファインケミカル事業を対象に、バリューチェーン全体を踏まえた気候変動リスクと機会の識別・評価を行っています。
リスクと機会の識別・評価にあたっては、1.5℃/2℃シナリオ及び4℃シナリオを用いたシナリオ分析を実施し、移行リスク、物理リスク及び機会について、想定される事業インパクト、影響時期、財務インパクトを整理しています。特に財務影響が大きいと考えられるカーボンプライシング、水産資源への影響、水リスクなどについては、外部機関のシナリオや評価ツールも活用しながら、影響額やリスク水準の把握に努めています。
これらの分析結果をもとに、優先的に対応すべきリスクと機会を特定したうえで、対応策を検討しています。検討された対応方針や対応策は、サステナビリティ委員会での協議・審議を経て、事業戦略や中期経営計画に反映し、リスクの低減と機会の獲得につなげています。
(ロ)総合的リスク管理への統合状況
サステナビリティ委員会傘下の環境部会やTCFD対応プロジェクトで特定された気候変動に関連するリスクは、全社重要リスクを一元的に把握・管理する統合リスク管理機能であるリスクマネジメント委員会に共有され、全社グループ視点で経営戦略への反映や優先度に応じた対応策の実行が図られています。
リスクマネジメント体制と重要リスクについては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
<指標と目標>
長期ビジョン「GOOD FOODS 2030」において、2018年度比で、2030年にCO2排出量を総量で30%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを掲げています。グループグローバルでの目標達成に向け、各事業所における省エネルギー施策の実施やエネルギー使用量の少ない高効率設備への更新、再生可能エネルギーの使用など、CO2削減計画を策定し、積極的に取り組んでいきます。
Scope3についてはGHGプロトコルに整合した環境省のガイドラインに従い、15のカテゴリーに分け算定しました。今後はデータの精度向上を図り、排出量の多いカテゴリー1の削減方法の検討などを行い、当社グループにおけるCO2排出量の削減をさらに推進します。また、調達する天然水産物、プラスチック、フードロス、水などについても、持続可能な利用を実現するための目標と施策をそれぞれ掲げ、取り組みを推進していきます。
(イ)CO2排出量の推移(Scope1、2)
(ロ)CO2排出量の推移(Scope3)
(ハ)第三者保証について
2021年度から2024年度のScope1、2、3(カテゴリー1~7、12計)の実績については、任意の第三者保証((株)サステナビリティ会計事務所(所在:東京都千代田区)によるISAE3000、ISAE3410に基づく限定的保証)を取得しています。
(ニ)目標と実績
(注1)グループ会社の経営統合等によって生じた構造的変化を反映し、目標の基準年度である2018年度の数値を再計算した。
(注2)調査は3年ごとに実施しており、上記数値は、2022年を対象として2024年に公表した第3回調査結果に基づくもの
(注3)ODP:Ocean Disclosure Project。SFP(Sustainable Fisheries Partnership)が2015 年に設立した、シーフードの調達を自主的に開示するためのオンライン報告プラットフォーム。
②自然資本・生物多様性への対応(TNFD提言への取組)
当社グループは、自然資本及び生物多様性の保全が、持続可能な事業活動の基盤であると認識しています。この認識のもと、環境憲章の行動方針において「自然環境及び生物多様性の保全と、資源の持続的利用に配慮した活動の推進」を掲げています。当社グループの強みは、世界各地から水産物をはじめとした素材を調達できる資源アクセスにあり、価値創造の源泉となっています。一方で、当社グループの事業活動は、自然資本に大きく依存するとともに、これらに影響も与えています。地球や海の恵みの上に事業が成り立っていることを常に認識し、バリューチェーンにおける自然への依存と影響を把握したうえで、事業活動による負の影響の回避・軽減に努めるとともに、自然の復元・再生につながる取り組みを進めています。
また、当社グループは、2023年9月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムに加盟し、2023年12月にTNFD Adopterに登録しました。TNFD提言に基づく情報開示としてTNFDレポートを発行しており、初回となる「TNFDレポート2023」では、TNFDの4つの柱(ガバナンス、戦略、リスクと影響の管理、指標と目標)に沿って、自然への依存と影響、リスクと機会を網羅的に整理し、情報開示の基盤を構築しました。2026年1月には、2回目の発行となるTNFDレポート2025を発行し、これまでの取り組みを踏まえ、当社グループの重点成長分野である養殖事業を対象に、評価設計・分析範囲・検証性を高めることで、2023年度版から開示の範囲と深度を拡充しました。
(注):TNFD提言への取り組みの詳細は、TNFDレポートをご参照ください。
https://nissui.disclosure.site/assets/pdf/254/2025_tnfd_ja.pdf
<ガバナンス>
自然資本・生物多様性に関連する取り組みは、「水産資源持続部会」、「サステナブル調達部会」、「海洋環境部会」、「プラスチック部会」、「環境部会」、「人権部会」の6部会を中心に対応しており、各部会では方針や戦略の立案・実行を行い、サステナビリティ委員会に報告しています。年6回開催されるサステナビリティ委員会では、各部会からの報告や提案を受けてサステナビリティを巡る課題に係る具体的な目標や方針、施策を検討しています。また、取締役会への定期的な報告を通じて、取締役会からの意見や助言をその取り組みに反映しています。
<戦略>
(イ)LEAPアプローチ(注)に沿った「依存と影響」の診断と「リスクと機会」の評価
当社グループは、世界各地から水産物を調達し、素材の力を最大限に引き出すR&D、加工・生産、品質保証を通じて、高付加価値商品を世界のあらゆる世代のお客様に提供しています。当社グループのバリューチェーンは、漁獲・養殖から加工・販売までを自社グループ内で広く担い、外部との連携も含めて川上から川下までを一体的に運営している点が特長です。水産資源を食品・原材料・飼料・機能性素材など多様な形でお客様に提供しており、「一つの資源が多層的に価値を生み出しながら循環する姿」を体現することで、資源の有効活用と持続的な価値創出を実現しています。
(注)LEAPアプローチ:TNFDが開発した、自然関連のリスクと機会を評価するためのガイダンス。分析プロセスであるLocate、Evaluate、Assess、Prepareの頭文字をとったもの。
イ.評価のスコーピング
対象カテゴリーと範囲の選定にあたり、SBTN(Science Based Targets Network)のHigh Impact Commodity List v1.1を参照しました。当社グループのバリューチェーンの根幹をなす「天然水産物」と「養殖水産物」がHigh Impact Commodityに該当しており、SBTNによる文献レビューによると、自然への影響要因として、天然水産物は「海洋生態系の利用」「海洋生態系の変化」「その他の資源利用」「気候変動」「海洋汚染」が、養殖水産物は「海洋生態系の転換」「海洋汚染」「気候変動」が挙げられています。
また、TNFDが推奨するオンラインツールである「ENCORE(注)」の2024年更新版を使用し、バリューチェーンにおける評価対象活動の絞り込みを行いました。その結果、当社グループのバリューチェーンにおいては、漁業と養殖の事業活動が自然へ大きく依存し、また影響を与える可能性があることを確認しました。よって、自然との直接的な接点が大きい上流工程である「漁業」及び「養殖」を今回の評価対象としました。
(注)ENCORE:ビジネスセクターと生産プロセスごとの自然資本への依存と影響を評価するツール。
ロ.依存と影響の診断
当社グループの操業やバリューチェーンの実態に即し、代表的な依存と影響の経路を想定したうえで自社による評価を行い、自然への依存と影響の関係を以下のとおり整理しました。依存と影響の把握には、「ENCORE」に代表されるオンラインツールが広く用いられますが、オンラインツールによる評価は業界共通の一般的な内容にとどまりやすく、自社事業の特徴を十分に反映した分析が難しいため、自社による評価を重視しています。
自然への依存と影響(漁業) ■自社にとって特に重要と考える項目
自然への依存と影響(養殖) ■自社にとって特に重要と考える項目
ハ.リスクと機会の評価
漁業及び養殖が海洋・河川・沿岸生態系のサービスに強く依存し、同時に影響も及ぼしうるという事業特性に着目し、セクター全体の視点から自然関連のリスクと機会を整理しました。本評価はTNFDのシナリオ分析ガイダンスに基づき、物理的リスク(生態系サービスの変化)と移行リスク(政策・規制・市場の変化)という不確実性を考慮しています。当社では、自然関連の定量シナリオが十分に整備されていない現状を踏まえ、TNFDが例示する探索的シナリオを参照しつつ、TCFD対応で用いている気候シナリオ(1.5℃/2℃、4℃)の前提を組み合わせ、当社グループの実情に即した2つの検討シナリオを設計しました。本分析は簡易的であり、シナリオ分析としては発展途上にありますが、既存の枠組みも活用しながら自社の状況に合わせて工夫するという考え方に沿って、気候変動と自然関連のリスクと機会を一体として検討するものです。
シナリオ1は、政策・規制の強化や投資家・消費者の関心の高まりにより、自然の回復に向けた取り組みが広がる世界観です。シナリオ2は、移行が十分に進まず、地域ごとに対応が分かれ、自然の劣化が進行する世界観です。2つのシナリオを用いることで、将来像に関する前提に幅を持たせ、リスクと機会の検討に偏りが生じにくいよう整理しています。
シナリオの概要
(注):本シナリオは、気候変動に関する温度経路の想定と、TNFDが示す自然関連シナリオの文脈(社会・政策など)を、それぞれ独立に参照して当社で設定した検討用シナリオです。両者を掛け合わせた「公式シナリオ」が存在することを示すものではありません。
■自社にとって特に重要なリスクと機会(漁業)
■自社にとって特に重要なリスクと機会(養殖)
(ロ)具体的な取り組み(取り扱い水産物の資源状態調査)
イ.取り扱い水産物の資源状態調査の概要
当社では、3年ごとに取り扱い水産物の資源状態調査を行っています。2023年度に実施した第3回の調査では、当社及びグループ会社(国内16社、海外20社)において、2022年に取り扱った天然水産物・水産物加工品は原魚換算重量で約276万トンでした。調査データの分析はSFP(注)へ委託し、第三者性を確保しました。
(注)SFP:Sustainable Fisheries Partnership。持続可能な漁業のためのパートナーシップ、サプライチェーンで漁業改善を推進する米国NGO。
調査方法
ロ.資源管理状態の評価結果
SFPによる分析の結果、2022年に取り扱った天然水産物及び水産加工品のうち、約75%が適切に維持・管理できている資源(「優れた管理」及び「管理」)であることがわかりました。一方で、「要改善」状態の資源が8%、「プロフィール未登録(スコアが欠損しており判定できない資源)」が約17%ありました。
ハ.絶滅危惧種への対応
第3回資源状態調査の結果、取り扱った水産物の一部にIUCN(国際自然保護連合)で定められた絶滅危惧種Ⅰ類(IUCNレッドリストにおけるCR, EN)に該当する魚種が含まれていることが分かりました。2022年に「ニッスイグループ絶滅危惧種(水産物)の調達ガイドライン」を策定し、ガイドラインに基づいて魚種ごとに対応策を決定することで、持続性を確保しています。
2022年時点の分類に基づく絶滅危惧I類と、ニッスイグループの対応策
ニ.今後の対応策
・資源状態の把握が困難な魚種(特に魚粉・魚油・すり身の加工原料となる魚種)に対し、ラウンドテーブルへの参加やFIPの支援など、優先して対応します。
・漁獲情報の収集が困難な品目の資源特定や、サプライヤーとの協働によるトレーサビリティの確保に取り組みます。
・調達資源について、人権侵害リスクを把握するための評価方法を検討します。
(ハ)具体的な取り組み(チリのサーモン養殖を対象にしたLEAP分析)
養殖における優先地域を特定するにあたり、事業における重要度に加え、「生物多様性にとって重要な地域」、「生態系の十全性」及び「先住民族、地域社会とステークホルダーへの便益」に着目し、これらを評価の主な観点として評価を行いました。その結果、チリのサーモン養殖事業を優先地域として特定しました。そして同事業を対象に、TNFDの養殖セクターガイダンスで整理されている一般的な養殖バリューチェーンの上流~中流~下流(飼料製造・淡水養殖・海面養殖・加工)の各段階を対象にしたLEAP分析を実施しました。同ガイダンスに従って、チリのサーモン養殖場31拠点のバイオームを特定し、拠点周辺の自然の状態を調査・評価しています。また、同ガイダンスに加え、ASC(水産養殖管理協議会)のサーモン・飼料の各認証基準を参考に現地ヒアリングを実施し、優先拠点別の依存と影響、リスクと機会を整理しました。詳細は、TNFDレポートをご参照ください。
https://nissui.disclosure.site/assets/pdf/254/2025_tnfd_ja.pdf
<リスクと影響の管理>
(イ)リスクを識別・評価・管理するプロセス
天然水産物
世界の水産資源の枯渇化が進む中、その水産資源の状態は、当社グループにとって、中長期的な事業のリスクや機会に関わる非常に重要なものであると考えています。そのため、調達品(サプライヤーからの外部調達及び直接操業)の資源状況の把握と、対応すべき課題の特定を目的に、当社グループ全体で調達した水産物の資源状態について3年ごとに調査を行っています。
この調査結果をもとに、課題のある海域・漁業・魚種・漁法などを特定したうえで、課題別の優先順位や対応策を検討し、事業戦略や取り組みに反映しています。
養殖水産物
海洋環境部会が中心となり、養殖業と自然との関わりを整理し、依存と影響、リスクと機会の特定や評価を行っています。部会で検討された対応方針や対応策は、サステナビリティ委員会での協議・審議を経て、事業戦略や取り組みに反映しています。
ここでは天然・養殖の水産物を例に挙げましたが、他の自然関連の課題についても、サステナビリティ委員会と傘下の部会が中心となり、同様のプロセスで評価と管理を行っています。
(ロ)総合的リスク管理への統合状況
当社グループサステナビリティ委員会傘下の部会で特定された、自然資本・生物多様性に関連するリスクは、全社重要リスクを一元的に把握・管理する統合リスク管理機能であるリスクマネジメント委員会に共有され、全社グループ視点で経営戦略への反映や優先度に応じた対応策の実行が図られています。
リスクマネジメント体制と重要リスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご覧ください。
<指標と目標>
(イ)中長期目標
当社グループは、水産資源の持続性確保や海洋環境の保全を経営課題と位置付けて取り組んでおり、以下の指標と目標を用いて自然関連の依存・影響、リスク・機会を管理しています。
(注1)調査は3年ごとに実施しており、上記数値は、2022年を対象として2024年に公表した第3回調査結果に基づくもの。
(注2)GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative。持続可能な水産物認証プログラムを検証する国際パートナーシップ。
(注3)RFMO:Regional fisheries management organizations。水産資源の保存及び持続可能な利用の実現を目指し、個別の条約に基づいて設置される国際機関。
(注4)グループ会社の経営統合等によって生じた構造的変化を反映し、目標の基準年度である2018年度の数値を再計算した。
(ロ)移行計画
漁業(直接操業・外部調達)及び養殖を対象に特定した自然への影響に関する対応策として、TNFDが推奨するSBTNのAR3Tフレームワーク(注)に沿い、回避、軽減、復元・再生、変革の各アクションを整理しました。この計画は、自然関連のリスクと機会を中長期の経営戦略に統合し、ネイチャーポジティブへの移行を着実に進めるための行動指針として位置付けています。
(注)AR3Tフレームワーク:SBTN(Science Based Targets Network)が提唱する行動の枠組み。回避(Avoid)、軽減(Reduce)、復元・再生(Restore and Regenerate)、変革(Transform)の頭文字をとったもの。
漁業(直接操業・外部調達)における影響への対応
養殖における影響への対応