リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスク要因については以下のものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 主要事業拠点に関するリスク
① 鳥形山鉱業所(高知県)
当社グループの売上高の17.6%(当連結会計年度実績)を占める石灰石の約半量は、鳥形山鉱業所で生産されております。
鳥形山鉱業所からの出荷の大部分は海上輸送によっているため、台風の襲来等に伴う荷役作業の滞留により、生産・販売に支障を来すことがあります。また、鳥形山鉱山は、直近10年間の年間平均降水量が約4,000mmと多雨地域に位置することから、集中豪雨による生産設備への浸水等により、生産・販売に支障を来す可能性があります。
また、南海トラフ巨大地震が発生した場合、大きな揺れや津波の影響により、甚大な被害が生じることが予測されており、その被害規模によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
これらのリスクが顕在化することにより、当社グループの経営方針に掲げる「社会のニーズに応じた良質な資源の安定供給を図る」ことが困難になるため、最も重大なリスクの一つであると認識しております。
このようなリスクに対し、当社グループではBCM推進室主導のもと、年間複数回、関係部署を交えた定期的な会議を実施、主要設備の見直しを含むリスク対策に係る意見交換を行い、情報の共有化を図るとともに、適宜BCPを改正するなどの対策を講じております。
鳥形山鉱山から海岸選鉱場へ石灰石を輸送する長距離ベルトコンベア(全長23.3㎞)などの主要設備において重大な事故が発生した場合、事故の規模によっては長期間にわたり石灰石の生産・輸送・出荷が停止することから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは設備点検や監視体制の強化などのインシデント対策を図るとともに、難燃性コンベアベルトへの変更といった事故発生による被害軽減対策などを進めております。さらに、石灰石出荷基地である袖ヶ浦物流センター(千葉県)をはじめ、各事業拠点からの応援出荷などの安定供給体制の強化・見直しに努めております。
② 操業及び開発中の銅鉱山(チリ共和国)
当社グループの主要品目の一つである銅精鉱(生産品)は、アタカマ鉱山で生産・販売されております。
アタカマ鉱山は、チリ共和国北部のアタカマ州に位置しておりますが、当該地域は乾燥帯であり、年間平均降水量が10mm未満と極めて少ないことから降雨対策用のインフラ整備が遅れております。そのため、まとまった降雨が発生すると大規模な洪水となりやすく、洪水被害により生産・販売に支障を来す可能性があります。
このようなリスクに対し、アタカマ鉱山では土盛設置による溢水の浸入防止、バリケード設置によるプラント敷地周辺への流入水防止、変電所用地の嵩上げ、作業員区域事務所等の高台化などの対策を講じております。
チリ共和国において銅のロイヤルティ課税を引き上げる新鉱業ロイヤルティ法は2023年8月に施行され、2024年1月から適用が開始されておりますが、アタカマ鉱山及び開発中のアルケロス鉱山は主な増税対象から外れていることから、現時点での影響は軽微であります。しかしながら、法改正の内容によっては、チリ共和国での銅鉱山の操業・開発計画等に変更が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは最新情報を把握するよう努めるとともに、同業社団体を通じて本邦の関係省庁と緊密に連携し対応を協議することや連絡体制を構築するなどの対策を講じております。
一般的に、金属鉱山では採掘及び開発対象の奥地化、深部化、鉱石品位の低下、不純物の増加などの問題が生じ、生産コストや初期開発費用が上昇しています。チリ共和国における銅鉱山においても同様に生産コストや初期開発費用が上昇傾向にあることから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、操業体制の最適化、銅精鉱の実収率改善や選鉱プロセスの最適化を進めることで、生産コストを抑制し収益性の向上を目指しております。さらに、戦略的パートナーシップにより、資金調達コストを削減しリスクを分散するなどの対策を講じております。
(2) 災害等に関するリスク
① 休廃止鉱山の管理に関するリスク
当社グループは、長年の事業活動の結果、全国各地に多数の休廃止鉱山を所有しております。集中豪雨や地震等の自然災害の影響等により、当社グループの休廃止鉱山において鉱害が発生した場合、鉱業法により最終鉱業権者が賠償義務を負うことから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは鉱山保安法に基づく定期的な巡視や点検を実施し、また、堆積場の保全や坑廃水による水質汚濁を防止するため、必要に応じて鉱山施設の維持保全工事を実施しております。
② 労働災害・事故に関するリスク
当社グループにおいて重篤な労働災害や設備トラブルなどの不測の事態が発生し、生産活動が停止した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは当社保安環境部による当社及び関係会社の事業所や工場施設等の保安巡視に加え、全国各地で保安研修会を開催するなど、全社的な労働安全衛生管理活動の展開により、労働災害・事故の発生防止に努めるなどの対策を講じております。
(3) 銅価・為替・金利水準等の変動に関するリスク
① 銅価の変動に関するリスク
当社グループでは、国内において電気銅を生産しているほか、チリ共和国のアタカマ鉱山において銅精鉱を生産しており、銅の国際市況により業績が大きく変動します。今後の銅価の状況によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
銅価の変動が当社グループの経営成績に与える影響額は、翌連結会計年度において1ポンドあたりの価格が10セント変動(上昇)すると、連結売上高で年間19億円、連結営業利益で年間3億円の変動(増加)をもたらすと試算しております。
当社金属部門の事業に係る銅価等の価格変動リスクに対しては、商品先渡取引によるリスクヘッジを実施するなどの対策を講じております。
② 為替の変動に関するリスク
当社グループは、電気銅の生産にあたり外貨建の銅鉱石の仕入取引があるほか、連結財務諸表を作成するにあたり海外連結子会社の財務諸表を円換算していることなどから、為替相場の変動により業績が大きく変動します。今後の為替相場の推移によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
為替の変動が当社グループの経営成績に与える影響額は、翌連結会計年度において1米ドルあたりの価格が5円変動(円安方向へ推移)すると、連結売上高で年間27億円、連結営業利益で年間1億円の変動(増加)をもたらすと試算しております。
当社金属部門の事業に係る為替変動リスクに対しては、通貨オプション取引によるリスクヘッジを実施するなどの対策を講じております。
③ 金利水準等の変動に関するリスク
当社グループの当連結会計年度末における有利子負債残高は243億円であり、今後の市中金利の動向次第では収益を圧迫する可能性があります。また、チリ共和国でのアルケロス鉱山開発のための資金調達により、開発期間においては有利子負債残高が大幅に増加することから、金利水準の変動によるリスクは従来以上に大きくなります。
このようなリスクに対し、当社グループでは金利動向を注視し、柔軟に資金調達手段を検討するとともに、長期借入金において、固定金利又は金利スワップ契約の締結により金利変動リスクを回避するなどの対策を講じております。
(4) 経営環境に関するリスク
① 鉄鋼・セメント需要への依存に関するリスク
当社グループの主力生産品である石灰石は、主に国内の鉄鋼メーカーやセメントメーカーに向けて販売しており、今後、公共投資や民間設備投資の減少、自動車などの工業製品の減産、得意先の生産設備におけるトラブル、製鉄所の組織再編や製造方法における技術革新により、主要取引先の鉄鋼・セメント等の生産量が減少した場合や製鉄の原材料が変更された場合などは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは随時業界全体や個別の取引先などの動向について情報収集に努めるとともに、国内外において新規顧客の開拓を検討するなどの対策を講じております。
② 資源開発に関するリスク
当社グループが取り組んでいる銅などの非鉄金属の探鉱や鉱山開発並びに地熱資源の調査・開発には、多額の調査費や開発費(坑道掘削、坑井掘削、生産設備建設等)を要します。鉱物の価格水準や資源量が想定を下回った場合をはじめ、政府及び行政機関からの許認可取得や金融機関からの資金調達などが難航した場合における計画の大幅な見直しにより、投資回収が困難となったときには、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは定期的に鉱物の価格水準や資源量を確認のうえ適宜計画を見直し、政府及び行政機関と適切な関係を維持し許認可取得手続を円滑に進めるほか、政府系金融機関及び主要な借入先であるメガバンクへの緊密な情報提供を通じてコミュニケーションを強化し、柔軟な資金調達を図るなどの対策を講じております。
③ 事業の国際展開に関するリスク
当社グループは、チリ共和国で銅鉱山を運営しているほか、世界の国・地域においても事業活動を展開しており、現地において、テロや紛争などの政情悪化、感染症の流行、災害やストライキなどの事象が発生し、事業活動に波及した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは事業活動を行っている国・地域について最新情報を把握するよう努めるとともに、同業社団体を通じて本邦の関係省庁と緊密に連携し対応を協議することや緊急連絡体制を構築するなどの対策を講じております。
なお、ウクライナ情勢につきましては、経済制裁、各国規制等の影響や物流の混乱及びエネルギー価格の高騰等に伴い、世界経済が不安定となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 環境規制に関するリスク
今後の関連法令の改正によっては、当社グループにおいて新たな環境対策費用や設備投資等の負担が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、国内外における環境規制の強化やSDGsなどの社会的要請の高まりにより、当社グループの本業である鉱山業の稼行や鉱山開発が制限された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは環境に関わる規制や社会の動向を注視するとともに、国際環境管理規格ISO14001の認証取得、社有林の森林認証取得、鉱山跡地や堆積場の緑化等を行い、国内外の各拠点で環境保全に努めております。
他方、環境規制の強化等は、当社グループの機械・環境事業における主力商品である集じん機や水処理剤の需要拡大に繋がる機会であり、規制強化が見込まれる国・地域や産業において、新規顧客の開拓に注力してまいります。
⑤ 原材料調達に関するリスク
原材料等の調達が長期化することで、設備投資プロジェクトや設備修繕計画に遅延が生じる場合、また、調達価格の高騰や原料供給先の事業縮小・撤退に伴う代替原料調達などにより生産コストが上昇する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、原材料の調達先の多様化や在庫管理の強化、代替原料の研究・開発などの対策を講じております。
(5) 企業統治に関するリスク
① コンプライアンス・内部統制に関するリスク
役員又は従業員が、事業に関連する法令や規制、様々な利害関係者との関係において、社会的な要請や期待に応えられなかった場合、事業活動の制限や信用の低下などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは業務執行部門から独立した当社内部監査部が中心となり、国内の当社本社・事業所・支店及び関係会社並びに海外の関係会社の内部監査を実施しております。また、継続的に開催している階層別コンプライアンス研修の実施、財務報告に係る内部統制の整備・運用などにより、コンプライアンス・内部統制の強化・拡充に努めております。
② 品質保証・管理に関するリスク
契約不適合や欠陥等のある製商品・サービスを顧客に提供した結果、顧客の生命や身体に危害を与えることやクレーム等が発生することにより、製商品の回収費用をはじめ、顧客に対する補償や訴訟関連費用等が発生した場合、また、当社グループに対する信用が低下した場合において、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは契約不適合や欠陥等のある製商品・サービスを顧客に提供することのないよう品質保証・管理に努めております。
当社では、品質保証委員会を定期的に開催し、当社グループにおいて顧客へ提供する製商品・サービスの品質に関するリスクを把握・評価し、当該リスクに対応した取り組みの検討を行っております。
当連結会計年度における具体的な取り組みとして、品質保証委員会を2回開催し、各事業所における品質管理状況の調査報告及び品質リスク管理小委員会の活動報告などを行っております。
③ 情報セキュリティに関するリスク
インターネットを利用する業務などの情報セキュリティには、悪質なメールの受信や不正なアクセス、また、パソコンや電子記憶媒体の盗難等により、重要な企業情報が漏洩、改ざんされることやパソコン等を踏み台にマルウェアを拡散される脅威が存在します。
当社グループは、基幹システムの運用や電子データの管理・伝達において、IT機器やそれらを含む社内外のネットワークを利用して業務を行っているため、前述の脅威によりセキュリティリスクが顕在化する可能性があります。また、テレワーク勤務制度の導入に伴い、マルウェアの感染リスクや端末の紛失・盗難リスク等の情報セキュリティに関するリスクが増大しております。
仮に重大インシデントが発生した場合に当社グループだけでなく、ネットワークやシステム等で通信・接続されるサプライチェーンを含むステークホルダーの業務に支障が生じ、復旧費用の発生や当社グループの信用低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社情報システム部が中心となり、当社グループで利用しているソフトウエア等の更新管理やマルウェア対策ソフトウエアの導入、ネットワーク内の多層防御の構築、社外で使用するパソコンに保存するデータや通信データの暗号化設定に加え、情報セキュリティリテラシーを高め、標的型サイバー攻撃のリスク低減を目的に、eラーニング等によるセキュリティアウェアネストレーニングを実施しております。また、内部監査において監査対象部署に対し、情報セキュリティの重要性やIT管理に関する規程の周知徹底を行うなどの対策を講じております。
(6) 感染症に関するリスク
未知なる病原体による感染症の拡大は、国内外の政治経済や企業活動に多大な影響を与える事象であり、感染の広がり方や収束時期を予想することは困難であります。
当社グループは、全国各地に鉱山をはじめとする事業拠点や関係会社を有しており、海外には営業拠点を置くほか、チリ共和国においては銅鉱山を操業・開発しております。これら国内外の各拠点において集団感染が発生した場合、営業活動や操業の中断による生産・販売、製商品・サービスの提供に支障を来すことになります。また、新型コロナウイルス感染症の世界的流行時のように、緊急事態宣言の発出や各国政府による都市封鎖や国境封鎖、外出禁止令等の措置がなされた場合には、各拠点の活動そのものが制限され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループではテレワーク勤務や時差出勤等の柔軟な勤務体制の導入や各拠点において最良と思われる防疫環境を整備しながら、国・地域の感染状況や防疫措置等の最新情報を把握するなど、事業活動への影響を最小限に留める対策に努めてまいります。
(7) 訴訟に関するリスク
当社の連結子会社である日鉄鉱コンサルタント㈱(以下、「コンサル社」という。)は、2023年6月、北海道磯谷郡蘭越町において発生した蒸気噴出事故(以下、「本件事故」という。)に関し、工事発注者である三井石油開発㈱(現・三井エネルギー資源開発㈱、以下、「MOECO社」という。)に対し、本件事故発生までコンサル社が実施した工事の出来高、本件事故発生に伴いコンサル社が実施した現場作業費及びコンサル社が被った損害等21億2千9百万円の支払いを求めて、2024年9月に訴訟を提起いたしました。一方、MOECO社においても本件事故発生はコンサル社の安全施工義務違反に起因するものとして、コンサル社に対し、本件事故発生に伴いMOECO社が被ったとされる損害等34億6千4百万円の支払いを求める訴訟を2024年10月に提起し、2024年11月に訴状を受領しました。
両訴訟は、東京地方裁判所において併合審理されることとなり、現在も係争中であります。
これらの訴訟等において、当社グループに不利な結果が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
配当につきましては、自己資本の充実と株主還元の最適なバランスを図りながら、長期安定的な配当を実施するという基本方針のもと、海外での鉱山開発投資の実行フェーズにおける財務の安全性と株主の皆様への利益還元のバランスを踏まえて、連結配当性向40%を目途に配当を実施する方針としております。そのうえで、銅などの商品市況や為替の変動といった当社グループを取り巻く事業環境の不確実性を勘案し、単年度の業績による影響を受けないよう、配当下限値を1株当たり170円とし、連結配当性向と配当下限値のいずれか高い方を採用することで、長期安定的な配当を明確化しております。なお、剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。
また、当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めておりますが、中間配当は取締役会の決議、期末配当は原則として株主総会の決議にて決定いたします。
上記方針に基づき、当事業年度の剰余金の配当につきましては、中間配当を1株当たり90円とし、期末配当は2025年6月27日開催予定の定時株主総会にて、1株当たり134円として決議する予定であります。
内部留保につきましては、中長期的な視野に立った設備投資や競争力強化のための合理化投資などに充当していくこととしております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。