リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの事業展開に関して、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
当社グループでは、グループ全体のリスク管理方針及び管理体制について「リスク管理規程」を定め、その方針及び体制に基づき「リスクマネジメント委員会」を定期的に開催し、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、発生の未然防止に努めております。
なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)法令・コンプライアンスに関するリスク
当社グループの事業は、国内の建設業法、建築基準法、港則法、労働安全衛生法、品質確保法、独占禁止法等の法的規制の適用を受けております。また、海外事業においては、当該国の法的規制や貿易・制裁規制の適用を受けております。
これら国内外の法令等に違反した場合やコンプライアンスに反した場合は、法令による処罰のみならずレピュテーションの悪化、社会的制裁を受ける等、受注機会の喪失及び顧客の信頼を失う可能性があります。
役員、職員一人一人が事業活動を行うに際して基準とすべき行動規範等コンプライアンス関連事項について、具体的に守らなければならないことを行動指針として定め、コンプライアンスに反した行為等の抑止に努めております。また、海外においては、現地採用職員向けにコンプライアンスガイドラインを作成し、周知を図るとともに、現地の法令や外国公務員贈収賄防止法の遵守を徹底しております。
制度面では職制を通じた報告体制に加え社内・社外の通報窓口を有する内部通報制度を整備し、運用しております。
(2)工事施工中の事故・災害発生のリスク
働く人及びその他の関係者全員で労働安全衛生マネジメントシステムを運用し、職場の労働災害や健康障害を防止して、安全で健康的な労働環境の形成に万全を期しておりますが、工事での死亡・重篤災害等の発生や突発的な重大事故の発生による工事中断、工事遅延、また第三者への損害賠償責任等、予定外の費用が発生することにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
事故・災害防止の取り組みとして、工事着手前のリスクアセスメントによるリスク低減措置を実施し、施工中の実施状況の確認とその評価、改善を実施していくPDCAサイクルでの管理と共に作業者の危険感受性の向上教育等も取り入れ、安全衛生管理を徹底しております。
(3)製品・サービスの欠陥リスク
品質マネジメントシステムを運用し品質確保に万全を期していますが、万一品質基準への未達や安全性の問題等の欠陥が発生した場合には、顧客からの信頼を失うとともに契約不適合責任及び製造物責任による損害賠償や対策費用により業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対しては品質マネジメントシステムの継続的改善を図ることで、常に最適品質の建設生産物及びサービスの提供ができるよう努めております。
(4)自然災害・感染症リスク
巨大地震、津波、台風、大雨による風水害等の自然災害の発生による施工中工事への被害や船舶・機械・建物等の所有資産への被害、工事中断、工事遅延等が発生することにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、大規模な感染症拡大による建設投資の縮小・延期や資材調達遅延等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
自然災害リスクに対しては、気象・海象予報の確実な把握と早め、早めの作業中止と退避措置で被害を最小限に抑える対応と共に、災害時の事業継続計画(BCP)を策定し、現場及び顧客施設の被害状況の確認と復旧、国・自治体等関係機関と連携したインフラ・地域社会の迅速な復旧・復興が取れる体制を構築しております。また、感染症リスクに対しては、感染防止対策を徹底し、従来からお取引のある顧客を始めとした案件の着実な受注、優良なサプライヤーによる調達ルートの安定化に努めております。
(5)生産体制と人財確保に関するリスク
職員の教育訓練による社内人財育成をはじめ、協力会社への技術教育・指導を継続的に実施しておりますが、生産年齢人口の減少、建設技能者の高齢化等により、将来的に建設業従事者が更に減少した場合、経営計画の実行及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、過重労働やハラスメントにより、職員の健康被害等の不利益が生じる他、労働基準法違反等によって行政処分等の対象となることにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの課題への対応として、生産性の向上を図るためにICT施工の高度化やBIM/CIM(*)の適用を進展させるほか、業務のデジタル化やデータ一元化などDXの取り組みを進めております。また、生産体制を維持するために協力会社を対象とした資格取得支援、研修のほか、建設産業の魅力向上を目標としたアクションプランを策定し、協力会社の担い手確保への取り組みを実施しております。
労働基準法の改正により2024年4月から建設業に適用される「時間外労働の上限規制」については、働き方改革の推進、DXの活用による業務効率化、適正な工期の確保等により時間外労働の削減に努め、適正な労働時間の管理を実施しております。
人財確保については、定期新卒採用及び中途キャリア採用を積極的に実施し、将来に向けた人財を育成しております。働き方改革における人事制度の諸施策により、職員一人一人の特有なスキル、経験、価値観を活用し、能力や経験が認められて仕事に参画できる組織づくりを進めており、海外事業においても、それぞれの進出国において現地職員の育成を行い、現地化を図っております。
(*)Building/Construction Information Modeling Management:
IT技術を駆使した3次元モデルにより、計画、設計、施工、維持管理に至る関係者すべてが情報共有し、
業務の効率化と高度化を図る生産システム。
(6)建設資材価格及び労務単価の変動
建設資材価格、労務費などが高騰、あるいは資機材の納期遅延が生じた場合には、工事採算が悪化し業績に影響を及ぼす可能性があります。
市場の最新動向を入手し早期調達や調達先の多様化に取組み、また、発注者との請負契約において物価スライド条項を含める等の対策を実施しております。
(7)同意なき買収のリスク
2023年度を初年度とする新たな5ヶ年の中期経営計画を策定し、更なる「レジリエント企業」への進化に向けて、①“守りから攻め”への転換、②“高収益モデル”への転換、③“資本効率経営”への転換を3つの柱とする、大きな経営の転換の実行を進めております。この中期経営計画に掲げる目標の確実な達成とガバナンスの強化に継続的に取り組むことが、当社グループの持続的な成長や中長期的な企業価値の向上につながると考えております。このような中、仮に第三者からの買収提案を受けた場合、経済産業省が公表した「企業買収における行動指針」に基づき、当社の企業価値の向上に資する提案であるか否か等の観点に立ち、真摯かつ慎重に検討し、その買収提案に賛同するか否かを判断いたします。
こうした過程を経たうえで、同意なき買収者による当社株式の大量買付けが行われ経営権を支配された場合、その買収者の経営方針により人財の流失や業績に重大な影響を与える可能性があります。また、大量買付け者の登場で将来の経営体制や財務構成への重大な影響が予想されるなか、先行きが不透明なため格付機関による信用格付けへの制約が生じ、市場からの資金調達に影響を与える可能性があります。
(8)情報セキュリティに関するリスク
外部からの攻撃や職員の過失等により、営業・技術機密情報、個人情報が漏洩または消失した場合やシステム障害が発生した場合は、社会的信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。
情報資産の重要度、脆弱性及び脅威の重大性を勘案して適宜リスク評価を行うとともに、技術的な対策及び職員へのセキュリティ教育を実施しております。
(9)海外事業におけるリスク
主にアジアを中心に建設事業を展開している他、ヨーロッパでケーブル敷設船の建造を進めておりますが、それら進出国における、テロ、紛争等の政情不安、経済情勢の変動、法制度の変更、為替レートの急激な変動等、事業環境に著しい変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
海外プロジェクトの取り組みにあたっては、当該国の政治・経済情勢、治安、及びグローバルなサプライチェーンも含めた資機材の調達リスク等を十分調査した上で、取締役会、経営方針会議で審議しております。
(10)気候変動のリスク
近年、気候変動の影響により大型台風やゲリラ豪雨等が発生しており、これらによる災害の激甚化により、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、温室効果ガス排出量の上限規制や炭素税の導入等がなされた場合、建設コストが増加する等、業績に影響を及ぼす可能性があります。
カーボンニュートラル社会の実現に向けて事業活動から排出されるCO2排出量の削減率をKPIに設定し、建設機械・船舶からのCO2排出量削減、建設副産物の再資源化に取り組んでおります。
また洋上風力発電施設建設関連事業への参画や、ZEB(Zero Energy Building)、ZEH(Zero Energy House)の建築技術の確立に取り組んでおります。
(11)人権リスク
人権尊重のもと事業活動を行っていますが、取り組むべき人権課題は広範囲にわたっており、当社グループやサプライチェーンにおいて人権問題が発生した場合、レピュテーションの悪化等により顧客の信頼を失い、受注機会を喪失する可能性があります。当社グループは「東洋建設グループ人権方針」を策定し、人権尊重の責任を果たすとともに人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、人権問題の抑止に努めております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様への利益還元を経営の最重要課題と位置付けており、“資本効率経営”への転換を基本戦略の一つに掲げ、積極的な株主還元を実施することとしております。また、2023年度を初年度とする中期経営計画では、2023年度から2025年度の配当性向を100%(下限50円/株)、2026年度から2027年度は配当性向を40~60%以上(下限50円/株)とし、成長性、健全性、効率性のバランスを考慮して配当額を決定いたします。
上記に基づき、当期(2024年3月期)の期末配当につきましては、1株につき74円といたしました。
内部留保資金につきましては、当社を取り巻く環境変化に対応すべく、“守りから攻めへ”の方針に則り、洋上風力事業を中心とする積極的な成長投資に向けて有効活用してまいりたいと考えております。
なお、当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回としておりましたが、2024年6月26日開催の第102回定時株主総会において、株主の皆様への利益還元の機会を充実させるため、中間配当制度の導入を決議いたしました。剰余金の配当の決定機関は、中間配当については取締役会、期末配当については株主総会であります。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
株式の種類 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
2024年6月26日 |
普通株式 |
6,980 |
74.00 |
定時株主総会決議 |