2025年6月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが重要と判断したものであります。

 

当社グループは、物理的、経済的もしくは信用上の損失又は不利益を生じさせる可能性のある事象をリスクと認識し、組織全体として適切に管理する仕組み・プロセスを構築しています。

当社のリスクマネジメント体制については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

(1)信用上の損失又は不利益を生じさせる可能性のある事象

① 大型プロジェクトの不良化リスク

当社グループの売上の約60%を占めるエンジニアリングコンサルティング事業は多くが請負契約での受注であり、主にシステム開発、構造設計業務とコンサルティング業務から構成されています。そのため、契約内容やプロジェクト管理の不備によって作業工数の増大や納品物の品質低下が発生した場合、大幅な採算悪化や顧客への損害賠償、及び機会損失等が発生し、当社グループの業績及び事業展開に著しく大きな影響を及ぼす可能性があります。特に影響が大きいシステム開発分野と構造設計業務分野に対しては専門的な品質保証部門であるPM品質保証センターと構造品質保証センターを設置し、各組織に統括責任者を配置することで、業務品質のチェック体制を確保しております。PM品質保証センターはシステム開発関連分野の品質・生産性向上に注力し、構造品質保証センターは構造物や建築物のような長期的視点での品質確保が問われる構造設計業務について品質のチェックを行っております。これらを含め、当社グループでは各事業においてそれぞれの最終成果品のみならず、提案営業段階から最終工程までのプロセスごとの品質確保及び向上に取り組み、全社的な品質マネジメントサイクルを推進しております。特に近年ではプロジェクト受注前における品質リスク管理にも注力しており、更なる品質強化に努めております。更に、プロジェクト管理技術の向上や技術者教育、個人情報を含む機密情報保護の重要性を十分に認識し、社内管理体制を維持強化するとともに、当社グループ所員への教育を繰り返し徹底しております。

 

② 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは知的活動を行う企業として業務遂行にあたり必要な資源としてお客様の機密情報等の情報資産を保有しております。コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の外部からの不正侵入、自然災害の発生等による情報資産の多大な情報漏洩、紛失、破壊及び改ざん等が発生した場合には、当社グループの信用喪失につながり経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループ管理下の全ての活動に係る情報資産を保護の対象とし、技術的・教育的・物理的な側面から対策を講じ、情報管理及び情報セキュリティの強化・徹底を図っております。

 

(2)経済的損失の可能性のある事象

① 経営成績の季節的変動による資金繰りのリスク

当社グループは、多くの顧客が決算期を迎える3月末から6月末に成果品の引渡しが集中する傾向があり、またこの時期は比較的規模の大きなプロジェクトの完了時期に相当するため、当社グループの売上高及び請求は、上半期に比較して下半期の割合が高くなる傾向にあります。従って、経済状況の悪化等により銀行から借入れが困難になった場合、上半期において資金繰りが悪化するリスクがあります。

当社グループでは、季節的な売上変動による資金繰りのリスクを低減するため、エンジニアリングコンサルティング事業で大型・長期プロジェクトの契約内容を詳細に検討し売上高・利益計上のタイミング(収益認識の単位)をより適切に明確化するほか、プロダクツサービス事業でサブスクリプション型のビジネスモデル導入を拡大するなど、売上時期の分散を進めております。

 

② 為替変動リスク

日本と欧米との金融政策の方向性の違いから生じる金利差等による円安傾向が継続した場合、当社グループが出資している海外パートナーやプロダクツサービス事業で取り扱っている海外プロダクツの仕入及びロイヤリティ支払いが増加する等、各種事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、販売価格の改訂、仕入及びロイヤリティの一括前払いによる為替レート固定をはじめとして、為替変動リスクの低減に取り組んでまいりました。今後も状況に応じて柔軟に施策を講じるとともに、大口の投資案件や仕入及びロイヤリティの一括支払い等については機関決定後速やかに外貨に変換することで、為替変動リスクの低減に努めてまいります。

 

③ 人才に関するリスク

当社グループの企業成長の原動力は人才であると考えております。近年の労働市場全体の流動性の高まりや当社グループの就業環境の悪化等により優秀な人才の流出が発生した場合、及び所員が心身の健康を害し働けなくなった場合に、当社グループの中長期的な成長や経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、採用や人才育成の質が低下し人才の質が確保できなくなった場合には、提供するサービスの質の低下をもたらし、競争力の低下や社会的信用、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、報酬面の改善、社会貢献度の高い業務を通じた活躍の機会や主体的な学びの場の提供、人才育成制度及び福利厚生の充実により、個々人の自己実現の場として働きがいのある環境の整備を進めております。また、参画したばかりの所員が組織に慣れ早期に活躍できるようオンボーディング施策を実施しており、特にキャリア入社所員や外国籍所員に対しては力を入れて取り組んでおります。採用活動においては、良質な母集団形成に資する施策及び所員や役員とのコミュニケーションにより当社グループとのマッチングを見極める面談・面接を実施し、当社グループに参画する人才の質の確保を図っております。健康面においては、産業医に健康相談できる体制や身体のコンディションを整えるマッサージが気軽に受けられる体制の整備、当社グループ専用のトレーニングジムの設置・運営、セクシャルハラスメントやパワーハラスメント等労務相談窓口の設置等心身ともに健康的に働くための支援を行っております。また、オフィス内に学びの場としてライブラリや所員の交流の場としてカフェの設置等の物理的な就業環境の改善にも取り組んでおります。このような取り組みにより人才の定着・質の確保及び人才が健康的で持続的に働ける環境作りに努めております。

なお、当社グループの人才育成方針及び具体的な施策については「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。

 経営基盤の強化及び将来の事業展開に備えて内部留保を勘案しつつ、継続的かつ安定的に配当を行うとともに、連結配当性向を50%程度、連結DOE(Dividend on Equity ratio)を8%程度とすることを基本方針としておりました。

 2025年8月12日開催の取締役会において、2025年6月30日を基準日とした当期末配当を決議いたしました。当事業年度における当社グループの経営指標である総付加価値が当初の予想値を上回ったことに加え、当社子会社である株式会社構造計画研究所における過去事業年度の利益水準及び配当支給額とのバランスを勘案し、1株当たり普通配当35円に、特別配当10円を加えた合計45円といたしました。その結果、年間配当金としては、2025年3月1日付で行った株式分割後の水準で第1四半期末配当金15円、第2四半期末配当金15円、第3四半期末配当金15円と合わせた合計90円となり、事前公表いたしました配当予想80円から10円増配となりました。

 

 なお、今般、安定的な配当の実施が株主価値向上の観点から極めて重要であるとの認識のもと、長期的に当社株式を保有する株主への還元姿勢をより一層明確にし、短期的な業績変動に左右されることなく、より充実した安定的な株主還元の実現を図ることといたしました。

 この方針転換に伴い、第2期においては従来の「連結配当性向及び連結DOE」を基本とする方針から、「連結DOE」を重視する方針へと変更するとともに、その目標水準を従来の8%程度から10%程度へ引き上げることといたしました。

 

 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2024年11月11日

164,197

30.00

取締役会決議

2025年2月10日

164,740

30.00

取締役会決議

2025年5月12日

164,207

15.00

取締役会決議

2025年8月12日

490,598

45.00

取締役会決議

(注)当社は2025年3月1日付で、普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。2024年11月11日及び2025年2月10日取締役会決議にかかる1株当たり配当額については、当該株式分割前の実際の配当金の額を記載しております。また、2025年5月12日及び2025年8月12日取締役会決議にかかる1株当たり配当額については、株式分割後の内容を記載しております。