2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況等に関する事項のうち、経営者が投資者の判断に影響を及ぼすと考えるリスク要因となる可能性及び認識している主な事項を記載しております。当社グループはこれらのリスクの発生顕在化の可能性を認識した上で、発生の予防・回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。本項に記載した将来に関する事項については、提出日現在において判断したものであり、将来実現する結果とは異なる可能性もあります。

 

〔当社グループリスク管理体制〕

 当社グループでは、「事業リスクマネジメント規程」に基づき、経理部が、グループ経営上のリスクを当社各部門及び子会社にヒアリングし、リスクの顕在化の状況を監視しつつリスク軽減を図っております。経理部はその内容を「年度リスク対応方針」として取りまとめ、年に一度取締役会に報告し、顕在化したリスクやインシデント発生時に、担当部門より適宜適切に取締役会に報告する体制を整備しております。

 

〔事業戦略上のリスク〕

(1) 経済情勢・市場環境の変動

① 全体経済情勢

経済環境の不確実性、特に米国の関税政策に伴う市場環境の悪化については、米国政府による輸入品への追加関税措置が継続・拡大する可能性があり、これにより、当社クライアントの米国向け輸出製品のコスト競争力が低下し、販売数量の減少や価格転嫁の困難化が懸念され、当社グループの主たる事業である広告制作関連事業におけるクライアントの成長の鈍化に伴い、広告・宣伝費等の支出が減少した場合は、当社グループの業績に影響を与えることが考えられます。

 

② 国内業界市場の変動

広告業界の構造変化に伴う収益悪化リスクを以下のとおり認識しております。

若年層のテレビ離れが顕著化し、動画プラットフォーム(YouTube、TikTok等)やサブスクリプションサービスがテレビ広告市場を侵食しています。また、昨今の不祥事によるテレビ業界の信頼低下により、広告主のテレビCM依存度が低下するとともに、デジタル広告やデータドリブン広告への移行が促進される可能性があります。既存顧客の予算分散化が進めば、既存のテレビ広告収入が減少する可能性があります。加えて、既存のテレビ広告全体の縮小が進むと、テレビCM事業収益が低下する可能性があります。またデジタル広告分野での競争激化とともに、従来の放送コンテンツ制作ノウハウが、短尺動画やインタラクティブ広告の需要に対応できない場合は、広告制作や映像コンテンツ制作事業に影響が発生し、収益が低下するリスクがあります。

 

(2) 事業戦略に関するリスク

① 中期経営計画遂行に関するリスク

市場環境が当社グループの事業全般に与えるリスクを鑑み、当社グループでは、2024年2月に2029年3月までの中期経営計画を公表しており、2025年5月に「中期経営計画の進捗に関するお知らせ」にて、当該計画の進捗状況を開示しております。構造改革による既存事業の収益基盤強化を推進するとともに、手元現預金及び遊休資産の売却等で獲得する資金を活かし、新たな収益基盤の確保に取り組んでおります。従来のメディアにとらわれず、映像・クリエイティブシーンの生活全般への拡大に対応すべく、積極的な事業開発・投資(M&Aを含む)を行い、適切な事業ポートフォリオを模索し、事業リスクを軽減分散させるとともに成長への転換を目指してまいります。また、投資に際しては、対象となる事業や企業に対して、専門家を起用しながら、事業価値・法務・財務税務面等について調査を実施し、確実な投資回収計画と監視体制を整備し意思決定をしてまいります。しかしながら、M&A先の探索や交渉が想定どおり進まない、予想できない投資先の経営環境の悪化や経営運営上の問題等により、当該計画が想定どおりに推進されなかった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 広告プロダクションに関する固有リスク

広告関連における事業環境は、昨今のインターネット、ソーシャルメディア等の発展に伴い、宣伝広告の手法が変化してきており、広告制作における市場での競合状況、制作手法等の変化に当社グループが適応できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、クリエイティブな人財を積極的に育成し、既存のTVCM等広告制作におけるクオリティを維持して、各クライアントとの安定的な取引ができるよう努めるとともに、AI生成等新たなテクノロジーを起用しながら、クライアントに対して総合的なソリューションを提供することによって当社グループの優位性を維持してまいります。

 

③ コンテンツプロダクションに関する固有リスク

映像コンテンツ関連における事業環境は、配信・サイネージ等プラットフォームが多様化してきており、従来の番組・CM等の既存の映像制作業だけに依存し市場の変化に適切に対応できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、この市場変化を踏まえ、新しいプラットフォームに対応できるように従業員がAIテクノロジーを含めたスキルを獲得し、最先端の映像制作が可能な取引先を確保することで、クライアントへのサービス提供をベースとした業態への転換を図るとともに、業務効率化やコスト削減等を通じ、競争力の強化に努めてまいります。

音響字幕関連の事業環境においては、AI技術の進歩により音響字幕市場が縮小した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がありますが、新たな領域として、ゲームやアニメ市場のグローバル転換を進めるとともに、外画市場ではAIを活用した日本語版制作の実績を積み上げながら、制作品質向上のための検証を引き続き実施し、AI活用のビジネスモデルを確立することに努めて、業界内における当社グループの優位性を保持してまいります。

 

④ メディアに関する固有リスク

当社グループが各種専門チャンネルを運営する有料放送市場においては、衛星放送、CATV等の従来の有料多チャンネル放送プラットフォームと異なる配信サービスが台頭し、視聴デバイスや視聴ニーズの多様化がますます加速しております。有料放送市場の縮小等に伴う市場変化に適切に対応できなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、独自性の高いIPの活用による配信事業の強化、IP強化のためのオリジナル制作番組の検討等を実施することで、存続可能なチャンネルの選択と集中を行い、放送配信関連事業及び間接業務の固定費の削減等の効率化を推進し、事業の適正規模化を早期に実現してまいります。

 

⑤ プロパティに関する固有リスク

当社グループでは、映像使用権を国内外の権利元から買い付けており、これら版元との関係維持・強化を図っております。しかしながら、国内外の権利元において映像使用権の独占使用等販売方針の転換が生じた場合には、映像使用権の買付の営業に支障が出ることが考えられ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、引き続き権利元と、関係維持・強化を図るとともに、独立系作品を発掘し新たな商流を図るとともに、買付行為への影響を低減してまいります。

 

〔オペレーション上のリスク〕

(1) 減損損失に関するリスク

当社グループにおける新たな事業価値を生み出すことを目途とした新規事業・買収・新会社設立・資本業務提携等が、計画どおりの収益増加に繋がらない事業展開に伴い、当初の事業計画を下回る場合、減損処理を計上する必要性が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。こうした既存の投資や事業活動については、役員を派遣するとともに、毎期の予算会議で利益計画を精査し、事業の進捗状況の継続的なモニタリングを実施し、適宜適切に対応措置を講じて、当該リスクの軽減に努めてまいります。

 

(2) 情報セキュリティ・サイバーセキュリティに関するリスク

当社グループの業務遂行やサービス提供においては様々な情報システム及びネットワークを活用しております。自然災害や大規模なシステム障害、あるいは第三者による故意のサイバー攻撃が発生した場合は、当社業務が停止するとともに、重要データの改竄や不正利用によって当社グループの社会的信用及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、リモートワークやクラウドサービス利用拡大に対応したセキュリティシステムを構築し、適切な監視と防御強化を図っております。加えてインシデント発生時の経済的損失に備えるため、サイバーリスク保険に加入しております。

 

(3) 個人情報保護に関するリスク

当社グループでは、プロモーション事業や映像配信事業において顧客情報や購買活動履歴等の個人情報を取得・利用しており、仮に個人情報の漏洩等が発生した場合、社会的信用の低下及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは個人情報保護法の法令等を遵守するとともに、社員教育及び主要な当社グループ会社におけるプライバシーマークの取得運用を通じて、適切な個人情報の管理に努めております。

 

(4) サステナビリティに関するリスク

当社グループでは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを重要な経営課題と認識し、事業活動を行っております。しかしながら当社のサステナビリティの取り組みが、法規制及び当社クライアントや社会の期待に対し、大きく不足・遅延した場合、法令等違反の発生、市場環境変化への対応の遅延、ステークホルダーからの信用失墜あるいは新たな事業機会を喪失する可能性があります。

当社グループでは、サステナビリティを推進する体制を整備し、事業活動における環境、社会、経済への影響を総合的に勘案しつつ、マテリアリティ(重要課題)を特定したうえで、サステナビリティへの取り組みを進めてまいります。

 

(5) 知的財産権に関するリスク

当社グループでは、広告プロダクション・コンテンツプロダクション・メディア・プロパティ事業等に関する著作権、映像技術に関する特許や商標権等の知的財産権の取得や知的財産権のライセンスを受け、当社グループの事業を展開しており、第三者の知的財産権等を侵害し、また、当社グループが保有する知的財産権が侵害される可能性があります。当社グループは、かかる事態を防止し、あるいは回復が図れるように専門家や弁護士と適切な対応をしておりますが、その過程や結果次第では、当社グループの財政状況や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) その他法規制に関するリスク

当社グループでは、当社グループが営む多様な事業において、事業領域毎に適用される、いわゆる業法の適用も受けます。当社グループでは、法務・財務・会計・税務並びにコンプライアンス事項につき、適切な専門家と相談しながら、適用される法的規制についてのコンプライアンス研修を実施し、法令遵守の徹底や社会的倫理行動規範の意識の醸成に努めてまいります。しかしながら、当社グループにおいて、役職員による不正・不祥事等の法令違反や、社会的な期待に反した言動等に起因する処罰、訴訟の提起や風評リスクにより、当社グループに対するクライアントや取引先からの信頼を失う可能性があり、このような場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。

 

(7) 労務管理に関するリスク

従業員に対する適切な労務管理を怠ると、心身の不調につながる恐れがあり円滑な業務の遂行に支障をきたす可能性があるだけでなく、労働災害等重篤な事故が発生すると、損害賠償請求や未払いと見做される各種手当の遡及的な支払いの発生や行政からの指導や罰則処分、社会的信用の失墜を招く可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、長時間労働是正推進や従業員が安心して勤務できる施策の一環として、2024年4月より「フレックスタイム制」を採用しており、運用管理については、当社グループの部門や子会社ごとに責任者を配置し勤務状況の確認を行い、当社グループの労働状況に関しては、人事部が継続してモニタリングを行い、労務管理に関する事項への遵守を徹底しております。さらに従業員が毎月遵守すべき労働時間をリアルタイムで日々確認できるように既存勤怠システムの変更を行うとともに、深夜残業及び休日出勤の事前申請・承認の徹底等を行い、人事部のモニタリングを強化して、その他の従業員の職場環境と合わせながら、適正な労務管理に取り組んでまいります。

 

(8) 災害・事故・紛争・地政学に関するリスク

当社グループが事業活動を実施する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病の爆発的流行、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合、当社の業務遂行・サービス提供を停止せざるを得なくなる可能性があります。当社グループの危機管理マニュアルや事業継続計画(BCP)を策定し、リスクの軽減に努めてまいります。

 

(9) 人財確保に関するリスク

当社グループでは、総合映像プロダクションとして、想像力と実行力に長けた多様な人財こそが企業価値向上の源泉と考えておりますが、必要な人財を十分に獲得・維持できない場合、クライアントへの高度なサービスが提供できずに、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。人財獲得については、人材流動性が高い業界であることから、採用業務の高度化と精度向上に努め、また、中期経営計画の実行性を高めるべく、必要な人財の採用にも注力してまいります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は「中期経営計画」のもと、健全な収益を継続的に生み出すことのできる事業形態に向けて大胆な変革を行っており、重点課題「構造改革」「M&A」「株主還元」に、キャッシュをバランスよく活用していくことを基本方針としております。今後は、2025年5月16日開示「中期経営計画の進捗に関するお知らせ」に記載のとおり、「収益基盤確保のための成長投資」に大きく注力していく見通しです。

 また、株主の皆様に安定的かつ継続的な利益還元を行うことを経営課題の一つと認識しており、株主還元を強化することを方針としております。この方針のもと、より早く安定的に株主還元を行っていくために、当社は、2024年6月27日開催の定時株主総会において定款の一部変更を決議し、取締役会の決議により、毎年3月31日、6月30日、9月30日及び12月31日を基準日として、四半期ごとに剰余金の配当ができる旨を定款で定め、2025年3月期第1四半期末より四半期ごとの配当を実施しております。

 

 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年8月9日

854

19.00

取締役会決議

2024年11月8日

900

6.67

取締役会決議

2025年2月14日

854

6.33

取締役会決議

2025年5月16日

989

7.19

取締役会決議

 (注)当社は、2024年7月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。当事業年度第1四半期(2024年8月9日取締役会決議)の1株当たり配当額につきましては、当該株式分割前の実際の配当金の額を記載しております。