2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

当社グループは、経営目標の達成を阻害するあらゆる不確実性をリスクととらえ、そのリスク管理を行う組織としてリスク管理委員会及び傘下の実行委員会(安全管理委員会・防災管理委員会・交通安全管理委員会・衛生委員会)を設置し、グループ横断的なリスクマネジメントサイクルを構築しています。

リスク管理委員会は、内部監査室と連携し、グループ全体を対象にリスクを洗い出し、経営への影響度と発生可能性等で評価を行い、優先的に対処すべき重要リスクを特定するとともに所管部門を定めます。重要リスクの所管部門は、リスクを低減する対策を検討・実行し、その進捗状況をリスク管理委員会に報告します。また、内部監査室は、このリスク低減活動についてモニタリング、助言を行っています。

当連結会計年度末現在において、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している特に重要なリスクは「(8) 人材の安定的確保について」「(9) 情報セキュリティについて」「(3) 国際情勢の不安定化について」の3項目であり、それ以外の重要なリスクと合わせ、計13項目を主要なリスクと捉えています。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 災害・感染症等の発生について

地震、津波、台風等の自然災害、火災、停電、感染症(パンデミック)等が発生した場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し、当社グループは、災害・事故等の発生を防ぎ、また、万が一発生した場合の被害を最小限に抑えるため、リスク管理委員会を設置し、傘下の実行委員会(安全管理委員会・防災管理委員会・交通安全管理委員会・衛生委員会)における活動を通じて各種対策を検討しています。具体的には、事業継続計画(BCP)の策定、大規模地震及び新型インフルエンザ発生時におけるマニュアルの整備、安否確認システムの導入、定期的な防災訓練、テレワークの推進等の対策を実施しています。

 

(2) 景気変動について

当社グループの一部の事業は、日本国内の景気変動の影響を受けやすい傾向があります。企業の販売促進活動やその他のイベントは、景況に応じて広告宣伝費支出を増減させる企業が多いことから、開催数や規模が変動しやすい傾向にあります。また、景況感の悪化により企業の設備投資の抑制が進んだ場合や、政府及び地方自治体の方針により公共投資が削減された場合、計画されていたプロジェクトが中止や延期となる可能性があります。

これらの影響により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、「ハニカム型経営」によって事業の多角化を図るとともに、特定の顧客に依存することなく広範囲の業種にわたる顧客基盤を構築しています。また、海外売上高比率を30%にまで引き上げることを目標に、世界4極(日本、アジア、北米、欧州)での展開を進めることで、日本国内の景気変動リスクを最小限に抑えるよう努めてまいります。

 

(3) 国際情勢の不安定化について

当社グループは、商品販売及び役務提供を行うため、音響・映像機器等の多くを海外メーカーから仕入れています。大国間の競争やロシアによるウクライナへの軍事侵略等によって国際情勢は不安定化しており、国内外の経済社会活動に大きな影響を及ぼしています。当社グループにおいても、サプライチェーンの混乱、メーカーからの仕入れ価格の上昇、輸送費の高騰といったリスクが顕在化しており、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、情報収集及び事業に与える影響の分析を行い、対策として、適正在庫の維持、機動的な販売価格の改定等に取り組んでいます。

 

(4) 為替変動について

当社グループは、事業のグローバル化を推進しており、為替相場の変動は、外国通貨建ての売上高や仕入コストに影響を及ぼします。また、連結決算における海外連結子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。為替変動が想定以上となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、取引先企業との間で円建て等特定通貨による取引の交渉を進めるとともに、外貨通貨建て取引については、為替予約等のヘッジ取引により為替変動リスクの軽減に努めています。また、主要通貨の変動と事業への影響をモニタリングし、適時、経営会議に報告しています。そして、吸収できない為替変動に関しては、競合他社の動きも見つつ適切に売価反映を行うなど、関係部門は事業への影響を軽減する対策を講じています。

 

 

(5) 海外ブランド商品の輸入販売店契約について

当社グループは、海外メーカーと輸入販売店契約を締結して国内における輸入販売権を取得しています。これらの契約内容はメーカーごとに異なりますが、メーカーとの間で最低仕入額を設けるケースが多くなっており、輸入実績がメーカーの希望する金額を下回った場合は次回の契約に影響が及ぶ可能性があります。また、商品の開発・生産等に関しては、メーカーの事情に影響されるため、新商品の発表や商品供給に対する大幅な遅延や、メーカーの商品戦略に当社グループが考えているものと大きな乖離が発生する可能性があります。また、買収・統合等によりメーカー側の経営方針等が転換した場合、販売店が変更される可能性があります。これらの要因により、仕入先の海外メーカーとの取引関係が継続困難となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、多数の優秀なブランドの輸入販売権を確保することで、特定仕入先への依存によるリスクを軽減しています。著名なブランドだけではなく、まだ国内での知名度は高くなくても優秀であると当社グループが見極めたブランドの輸入販売店契約締結を推進し、優れた商品を直輸入販売することで業績拡大に努めています。

なお、現在、当社グループと仕入先の海外メーカーとの取引関係は安定しており、今後も良好な関係を継続する方針であります。

 

(6) 安全について

当社グループは、多数の施工現場、コンサート・イベント現場で業務を遂行しております。現場の安全確保に万全を期しておりますが、万が一、人身・施工物等に関わる重大な事故が発生した場合には、当社グループの信用、経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、災害・事故等の発生を防ぎ、また、万が一発生した場合の被害を最小限に抑えるため、リスク管理委員会を設置し、傘下の実行委員会(安全管理委員会・防災管理委員会・交通安全管理委員会・衛生委員会)における活動を通じて各種対策を検討しています。具体的には、現場におけるヒヤリハット事例の原因究明と共有、安全教育の実施、工事を担当する指定工事業者への教育や指導を通じて安全の確保に努めています。

 

(7) M&Aについて

当社グループは、音響、映像、音楽、ライブの分野でナンバーワン、オンリーワンの企業が集まり連携する仕組みをつくる「ハニカム型経営」の推進を目的として積極的なM&Aを進めており、これを成長戦略の要と位置づけています。しかしながら、M&A後の事業環境の変化等により業績計画との乖離が生じる場合や、事業や人材等の統合が進まず期待するシナジー効果が得られない場合には、投下資本の回収に一定の期間を要する、または回収ができない可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、M&Aの実施に際して、対象企業の財務、法務、事業等について詳細なデューデリジェンスを行い、リスクを検討し正常収益力を分析したうえで機関決定しています。当社グループの経営戦略との整合性や将来における成長性、シナジー効果等についても、事前に十分に議論し進めるように努めています。

M&A後においては、シナジー実現に向けたフォローアップを行うとともに、業績が当初計画から大きく乖離していないかを月次で確認するとともに、経営会議で報告しています。必要に応じて、関係部門は、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。

当社は、2024年3月31日現在において、国内13社、海外8社の連結子会社があり、うち、国内13社、海外4社はM&Aによる子会社であります。子会社化した後に、過去最高売上高、過去最高益を更新した子会社も多く、連結業績に大きく貢献しています。

 

(8) 人材の安定的確保について

当社グループが提供する音響・映像機器のオペレートや、システム設計、メンテナンス等においては、専門的な知識や技術、ノウハウが要求されます。当社グループの持続的成長を可能とするためには、従業員一人ひとりの成長と活躍が欠かせません。今後、人材獲得競争の激化や人材の流動化が加速することが見込まれる中、従業員エンゲージメントの低下等により必要な人材の確保・育成が計画どおりに進まない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、新卒社員の採用を強化するともに、高度な専門性を持つ人材の中途採用を進めています。また、教育研修の実施や自己啓発支援制度の導入により成長に資する機会を提供し、変化を先導するリーダーの育成に取り組んでいます。さらに、評価制度の充実、社内表彰制度の運用、ワークライフバランスを支える各種制度の整備、健康増進支援等の施策により、従業員がいきいきと働き、最大限の能力を発揮できるよう、環境整備に努めています。

 

(9) 情報セキュリティについて

当社グループは、業務の多くを情報システムに依存しています。コンピューターウイルスの侵入や不正アクセス等のサイバー攻撃によって情報システムに何らかの障害が生じた場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。また、当社グループが保有する顧客や取引先、あるいは当社グループの機密情報や個人情報が、取扱いの不備や不正アクセス等により漏えいした場合には、当社グループの信用は低下し、損害賠償等を行う必要が生じることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、防御システムの多層化や情報システムの定期的なリプレイスなど、安定的に稼働できるよう対策を講じています。また、当社は、個人情報保護方針及び情報セキュリティ基本方針を定めるとともに、情報セキュリティに関する規程を整備し、情報管理の強化に努めています。具体的には、プライバシーマークを取得し、適切な個人情報の取扱いを実践することに加え、役員・従業員に対し情報セキュリティに関する研修やサイバー攻撃対応訓練を定期的に実施するなど、リテラシー向上に向けた取り組みを推進しています。

 

(10) コンプライアンスについて

当社グループは、事業活動を営むうえで、建設業法、製造物責任法、電気用品安全法、独占禁止法、下請法、労働基準法(その他 労務管理に関わる法令等を含む)等さまざまな法規制の適用を受けています。それらの法令の改廃、法的規制の新設・強化等が行われた場合、何らかの事情により法律に抵触する事態が生じた場合、当社グループの信用、経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、「ヒビノグループ行動規範」において法令を遵守することを定め、役員・従業員に対し研修等を通じて徹底を図っています。社内体制としては、代表取締役社長を委員長、全取締役を委員、全監査役をオブザーバーとする内部統制委員会を設置し、その機能を補完する下部組織であるコンプライアンス委員会に対して指示を行い、報告を求める仕組みとなっています。さらに、代表取締役社長直轄の内部監査室が子会社を含め内部監査を実施するとともに、内部通報制度を設置し、違法行為等の未然防止や早期発見に努めています。

 

(11) 資金調達について

当社グループは、事業活動に必要な資金調達を、金融機関からの借入等により行っています。金融市況及び景気動向の急激な変動があった場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、調達時の金利情勢、外部マクロ環境、当社グループの状況等を総合的に勘案し、資金調達を実施することとしています。また、金融機関との良好な関係を維持し、コミットメントライン等の活用により十分な流動性を確保するとともに、資金調達先及び期間の適度な分散等に努めています。

 

(12) 競合について

当社グループは音響と映像を中心とした製品、商品、サービスを多様な市場に提供しており、他の業務用音響・映像機器メーカーや、コンサート・イベントの音響サービス、大型映像サービス会社をはじめ、さまざまな企業と競合しております。今後、さらなる価格競争の激化や、当社グループよりも顧客のニーズに合った製品、商品及びサービスを提供できる企業が新たに台頭してくることも否定はできません。また、経済のグローバル化に伴い、欧米等先進国の企業だけでなく新興成長国の企業との競争も激化しつつあります。これらの場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの販売施工事業においては、競合他社との間で品質や機能・性能を含むさまざまな要素で競争しており、特に近年は、低価格化競争が激化しています。これらに対し、当社グループは、音と映像をコアとしたトータル・ソリューションの提供、顧客サービスの向上等によって競合他社との差別化を図り、競争力を維持・強化しています。

また、コンサート・イベントサービス事業においては、最新鋭かつ大量の機材を保有して競合他社との差別化を図るべく積極的な設備投資を実施していますが、今後、急速な技術革新により保有機材が陳腐化する可能性や、機材のコモディティ化、低価格化が進行した結果、機材での差別化が困難になる可能性があります。これらに対し、当社グループは、技術力やノウハウといった強みを生かすことはもとより、付加価値を生み出す源泉を機材等の有形資産から人的資産へとシフトするビジネスモデル変革を進めています。

 

 

(13) 技術革新について

当社グループの属する業務用音響・映像業界においては、技術の進化及び変化が著しく、当社グループが競争力を維持するためには、急速な技術革新に適時に対応していく必要があります。しかしながら、技術や市場ニーズの変化の読みと対応が遅れた場合、重点技術領域を強化するために必要な人材確保を含め適切な資源投下ができなかった場合などにおいては、当社グループの製品、商品、サービスの陳腐化、競争力低下等が生じる可能性があります。また、対応が可能な場合であったとしても、研究開発等に多額の費用が発生する可能性があります。かかる場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループでは、常に最新のソリューションを顧客に提供するため、最新の技術情報を把握し、将来における顧客ニーズや業界トレンドを予測して、新しい技術への投資と事業化を継続的に行っています。

また、2018年より、代表取締役社長を責任者とする「ヒビノ・イノベーション活動」(アイデア提案制度)を開始しております。アイデアから事業化までのプロセスの構築と体制整備を行うことで、新規事業のスピーディーな開発を可能としています。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つと認識し、経営体質を強化するために必要な内部留保と成果配分とのバランスを勘案しながら、安定配当を継続していくことを基本方針としております。

内部留保資金の使途としては、当社成長の根源である研究開発や設備投資に振り向けていく所存であります。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

また、定款の定めにより期末配当・中間配当以外にも取締役会の決議によって基準日を定め、機動的な剰余金の配当が可能となっておりますが、実際の運用に関しましては、適宜検討してまいります。

当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる旨及び期末配当の基準日を毎年3月31日、中間配当の基準日を毎年9月30日とする旨を定款に定めております。

当期の配当(1株当たり)につきましては、期末配当を普通配当30円とし、すでに実施しました中間配当15円と合わせ年間配当金45円となります。

 

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月6日

148,841

15.00

取締役会決議

2024年5月22日

297,682

30.00

取締役会決議