2024年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本項では、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性があると特定した主要なリスクを記載しております。

なお、本項に記載した将来の事象や想定に関する事項は当期現在において当社グループが判断したものです。

(1)当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループでは、収益性の高い成長を実現するため、リスクと機会の管理、社員と資産の保護、危機対応能力の強化および特定のリスクに対するリスク移転メカニズムとしての保険を含む、包括的なビジネスレジリエンスプログラムを導入しています。リスクマネジメント責任者(HRM)は、エンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)、危機対応、事業継続、セキュリティおよび保険を担当するリスクマネジメントシニアグループ(RMSG)を率いています。HRMは、新たなリスクや機会に対して、すべての事業部門に関わる広い視点を持ち、経営陣および取締役会に対して、定期的な報告を通じてリスクを可視化させています。RMSGは、各事業部門のリスクオーナーと緊密に連携し、事業等のリスクの評価と管理に取り組んでいます。

取締役会は、リスクマネジメントと内部統制に関わる説明責任を有し、当社グループのリスク選好を定め、監査等委員会を通じてその有効性を見直しています。当期においても、取締役会に対して、当社グループの戦略目標達成に関わる能力に影響を及ぼし得るリスクについての情報を提供し、重要なリスクについて積極的に検討しました。

当社グループのリスクマネジメントプログラムには、毎月実施している経営陣とのリスクに関わる議論のほか、各事業部門のシニアリーダーと四半期ごとにリスクマネジメントフォーラムを開催して行う事業環境とリスクの状況の検討が含まれます。また、毎年行うディープダイブセッションにおいて、各事業部門のシニアリーダーに対してリスクについてのインタビューを行っています。さらに、コカ・コーラシステム全体に影響を及ぼすリスクを考慮し、リスクマネジメントプロセスを強化する体制を構築するために、コカ・コーラシステムの関係者とも協力しています。また、経営陣との議論と評価を通じて特定した事業に対する主要なリスクと機会について、これらへの対策が確実に行われるよう、各事業部門のリスクオーナーを割り当てています。堅牢なプロセスを通じて、自然災害への対応ならびに商品コスト、人材確保および消費者嗜好の変化など、事業環境の変化を細かく監視しています。

当社グループが行うERMプログラムには、事業戦略、目標、原則との整合、戦略的方向性、倫理および価値に関するグループ方針への統合、事業計画サイクルへの統合、リスクプロファイルの変化や機会の創出につながる要因を特定するための社内外の環境の継続的なモニタリング、リスクマネジメントに関する知識を高め、適切なリスクテイクを実践するリーダーを育成するための研修の実施、ならびに適切な財務的保証を確保するための保険の種類と金額の年次評価など、さまざまなプロセスを組み込んでいます 。

これらの活動、つまり定期的なリスクに関する協議とPDCAサイクルを通じて、当社グループに関わる最新のリスク動向を把握し、主要なリスクを検討する機会を設けています。当社グループの成長戦略を実現するため、主要なリスクへの対策は各部門の年度事業計画に組み込まれています。また、ERMのプロセスは、グローバルなベストプラクティスに照らした内部監査の対象であり、監査部門長は必要に応じて改善提案を行います。

 

 

(2)主要なリスク

当社グループの財政状態、業績およびキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、優先順位に従って下表に記載のとおりです。下表に記載されているリスクは、事業に関するすべてのリスクを網羅しているわけではなく、今後、現在想定されていない新たなリスクや、現在重要度が低いまたは優先順位が低いと考えられるリスクの影響を受ける可能性があります。

リスク

説明と潜在的な影響

主な緩和策

サイバーセキュリティとシステム

業務停止、システム障害やサイバーインシデントによる情報漏洩の発生

・消費者や顧客からの信頼失墜

・財務状況の悪化

・システム障害による損傷を軽減するための対策

・サイバー攻撃の積極的な脅威の特定とシミュレーションテストによるシステムセキュリティの向上と強化

・情報およびデータプライバシーの管理に関する法令の遵守

・社員トレーニングプログラムによる情報セキュリティに関わる社内規程の確立

人材(確保と維持)

業績不振、人口の高齢化、競争の激しい雇用環境により、十分な人材の確保、維持および育成、ならびに労働組合との建設的な関係を構築することが困難

・事業活動の停滞または停止

・サプライチェーン業務の停滞または停止

・成長計画の未達

・戦略的な人材育成計画と給与体系の管理

・多様な人材基盤の採用と育成への取り組みの確保

・無人オペレーション、オンライン取引、出荷業務のアウトソーシング化

・職場環境の改善による社員満足度の向上

・経営陣と社員とのコミュニケーション強化

健康と安全

安全システムに関わるコンプライアンス、オーナーシップ、責任感または意識の欠如、メンタルヘルス問題、老朽化した機器の使用などによる深刻な健康または安全上の労働問題の発生

・死亡または重傷

・評判の低下

・起訴および/または罰金

・ISO45001認証/内部監査戦略の継続

・メンタルヘルス調査の継続実施

・さまざまな安全対策の実施

・安全意識向上のための教育と研修

・コカ・コーラシステムのベストプラクティスを活用するためのプログラムの改良

成長戦略

人材能力に起因する、競争優位性の向上と変革を通じた事業成長のための施策(事業統合、合弁事業、資本投資、プロジェクト管理など)の失敗

・減損損失による財務状況の悪化

・株主からの信頼喪失

・さまざまな状況に柔軟かつ機動的に対応できる強固な体制の構築

・複数のシナリオを考慮した事業統合戦略の策定

・プロジェクト管理や技術変革の実現に必要なスキルセットを確保する人材開発戦略

・取締役会および執行役員による監督

消費者マインドセットの変化

砂糖消費への懸念と健康意識の高まり、または価格設定による消費者の嗜好の変化

・消費者基盤の獲得または喪失

・消費者からの信頼獲得または喪失

・当社グループに不利益を及ぼす課税

・製品イノベーションとポートフォリオ拡充に注力

・低カロリー・ノンカロリー製品の強化

・パッケージサイズの多様化

・消費者参加型プログラムによる健康的なライフスタイルの推進

営業および競争環境の変化

市場環境の変化への効果的、効率的かつ機敏な対応が困難

・消費者基盤の獲得または喪失

・消費者からの信頼の獲得または喪失

・販売利益の減少

・販売可能なポートフォリオの減少

・小売業者のニーズを満たす製品を提供するため、製品ポートフォリオを強化し、生産性をさらに加速

・業務効率を向上させるために、Right Execution Daily (RED) を強化

・インターネット通信販売の急増に対応するために、オンラインチャネルを拡大

・テクノロジーの利点を活用するための人材開発戦略

製造、物流、インフラ

製造・物流業務の問題や天候・消費行動の変化などにより安定供給が阻害

・販売量と収益の減少

・顧客からの信頼喪失

・市場環境の変化に対応する柔軟な供給体制の構築

・繁忙期の需要増加に、より容易に対応できるようにするインフラ(製造ライン等)への投資

・タイムリーな在庫状況の共有ができるシステムに強化

 

 

リスク

説明と潜在的な影響

主な緩和策

自然災害

地震や洪水などによる社員の死亡・負傷、生産・物流・販売業務のための施設の損傷

・事業活動の停滞または停止

・サプライチェーン業務の停滞または停止

・販売機会の減少

・復元コストの発生

・継続性計画(BCP)と体系的かつ合理的な対応を可能とする危機対応能力の強化

・定期的な危機・災害対応訓練とシミュレーションによる対応能力の強化

・物流拠点の被災に備えた代替拠点の整備と輸送能力の確保

・地震保険の付保

持続可能性

気候変動リスクを含むステークホルダーの持続可能性に対する意識の変化に対応できない、またはステークホルダーや規制当局の要件に沿った持続可能性やESGトピックの報告が不十分

・ステークホルダーの信頼と評判の低下

・気候変動分野における投資家活動の活発化

・財務への影響、気候変動に対する顧客の期待に応えられず、競合他社に顧客が流れた場合の売上減

・サステナビリティ委員会におけるサステナビリティ計画と目標の検討、調整

・CSV目標を達成し、持続可能な社会の発展に貢献

・再生PET樹脂の利用率向上、より軽量なパッケージの開発、使用済みPETボトルのより効果的な回収など、コカ・コーラシステムのイニシアティブの推進

・ESG、TCFD、TNFDの報告要件に沿った積極的な対応

気候変動

気候変動による水や農産物などの原材料不足

・商品入手可能性と製品供給の減少

・生産コストの増加

・製品ポートフォリオの制限

・差別的な課税

・持続可能な調達への注力

・ステークホルダーとの関与

・代替サプライヤーの確保と、パフォーマンスデータの活用によるサプライヤーの選定と管理の強化

・調達困難な原材料の購入量の調整、必要に応じて他の原材料への切替

品質と食品の安全性

製品関連の品質および食品安全に関する事故

・消費者からの信頼喪失

・製品回収や不良品の大量処理に伴う収益悪化

・ペナルティによる販売機会の損失

 

・サプライヤーの品質監査と品質認証

・製造から販売までの全工程における品質管理の意識

・消費者/顧客からのご指摘にタイムリーに対応をするための品質管理・報告態勢の強化

・品質/食品安全問題への迅速かつ効率的な対応を可能とする原因特定および対応策策定プログラムの強化

法令へのコンプライアンスと倫理

法令、社内規則、倫理行動規範に対する違反

・消費者・顧客からの信頼喪失

・ブランドと評判の悪化

・罰則・罰金

・不正による経済的損失

・経営陣の強い姿勢、企業のふるまいに関する継続的なコミュニケーション

・倫理・コンプライアンス委員会の定期的な開催

・業務プロセスや組織構造、ITシステムの再構築による不正機会の低減

フランチャイズ関係

契約/関係の条件および更新、価格の集中、製品プロモーションのサポートに関して、商標所有者としてのザ コカ・コーラ カンパニー(TCCC)および日本コカ・コーラ(CCJC)への依存度が高いこと、または関係の変化

・商標権の使用停止、製品開発力およびブランド力の低下による売上の減少

・原液価格上昇によるコスト増加

・販売サポートが減少した場合の販売促進費用の増加

・TCCCおよびCCJCとの協力関係の維持・向上

コモディティコストの増加

為替レートの変動、原材料不足、商品価格の変動による調達コストの著しい増加による収益性への影響

・コストベース増加

・製品供給量の低下

・製品ポートフォリオの制限

・デリバティブ取引やヘッジの利用により、為替レートや商品価格の変動による影響を軽減

・コカ・コーラシステム内での共同調達により低コストで原材料を調達

 

配当政策

 

3【配当政策】

当社は株主還元を最大化すべく、成長機会に向けた財務戦略の柔軟性を維持しつつ、資本構成や配当性向を定期的に見直し、内部留保金は持続的な成長に向けた投資にも活用し、事業の成長とさらなる企業価値の向上を追求してまいります。

配当につきましては、積極的かつ安定的に利益還元することを基本方針とし、業績や成長投資、内部留保を総合的に勘案のうえ、中間配当および期末配当を実施してまいります。中期経営計画「Vision 2028」においては、連結配当性向40%以上および2028年の連結株主資本配当率(DOE)2.5%以上を目指し、当該期間において累進配当を導入することで、1株当たり年間配当額を毎年、前期比で維持または増額する方針です。2024年12月期の1株当たり配当金は、中間配当25円および期末配当28円、年間で53円になります。また、2025年12月期の1株当たり配当金は、中間配当28円、期末配当金29円、年間で57円を予定しております。

今後の株主還元につきましては、業績動向や財務状況を総合的に勘案のうえ、自己株式取得等を含めて検討してまいります。

なお、当事業年度に係る配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
  (百万円)

1株当たり配当額
  (円)

2024年8月2日

取締役会決議

4,562

25

2025年3月26日

定時株主総会決議

5,057

28