リスク
3 【事業等のリスク】
(1) 当社グループのリスク管理
① リスク管理の考え方
当社グループは、総合商社としてグローバルかつ多角的に事業を行っており、展開する事業の性質上、様々なリスクに晒されております。
このため、リスクを「事業戦略およびビジネス目標の達成に影響を与える不確実性」と定義し、経営環境の多面的な分析とリスクの把握、戦略的対応を通じて企業価値向上に資するよう、全社的リスク管理の高度化に取り組んでおります。また、リスクの重要性を評価のうえ、適切かつ合理的な方法でリスク管理を推進しています。
② 全社的リスク管理体制
当社グループが取り組む全社的リスク管理においては、CFOを委員長とする「内部統制委員会」(事務局:内部統制統括部)が、各種社内委員会(4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④業務執行機関 4)社内委員会)とも連携しながら、方針の協議と策定、業務執行組織(第1線および第2線)が実行するリスク管理の状況の全体俯瞰とモニタリング、ならびに関係先への指示など、その枠組みを有効に機能させる主体となります。
また、監査部は第3線として独立した立場で、第1線・第2線が運用しているリスク管理についての客観的な検証を行います。
これらを踏まえ、内部統制委員会は、経営会議・取締役会・監査等委員会に対して、全社的リスク管理の状況について定期的に報告を行います。
全社的リスク管理体制の概要は下図のとおりです。
全社的リスク管理のプロセス
当社グループにおける全社的リスク管理のプロセスは以下となっております。
当社グループでは、第1線(営業本部など)・第2線(コーポレート)の各部署において、外部環境、経営戦略、業務プロセスなど、将来予想されるものも含めて網羅的にリスクを検討、識別しています。識別されたリスクについては、影響度と発生可能性による2軸評価によって重要度を測定し、内部統制委員会における協議と取締役会への報告を経て、リスク対応方針を決定しています。
このリスク対応方針に沿って、第1線(営業本部など)では、業務執行におけるリスクについての自律的コントロールを行う一方、第2線(コーポレート)では、担当するリスクに関連して経常的に実施する管理業務のほか、第1線への支援やモニタリング、PDCA管理も含めた継続的レビューを行います。第1線および第2線が行うリスク管理活動については、内部統制委員会がモニタリングし有効性を評価したうえで、経営会議・取締役会・監査等委員会に報告を行います。
昨今の世界情勢の変化や地政学リスクの高まりを踏まえ、突発的なリスク発現時の影響度合いを把握できる体制の整備を進めております。また、営業本部・コーポレートとの継続的な対話・連携を通じ、リスク発現時の機動的対応力の向上と、事業継続性の確保およびレジリエンス(回復力)の一層の強化にも取り組んでおります。
さらに、リスク・リターンを踏まえた事業投資マネジメントを行うことで、当社グループのバランスシートの劣化を防ぎ、企業価値の維持・向上につなげております。
(2) 個別のリスクについて
当社グループの事業に関しては、以下①から⑱のリスクがあります。
これらのリスクのほか、当社グループ資産が晒されるリスクを「リスクアセット」として計測管理し、この結果をリスクに対する収益性や、財務の健全性を維持するための指標として活用し、リスクをコントロールしています。リスクアセットは自己資本の1倍以内に収めることを目標としており、2026年3月末のリスクアセットは自己資本の0.6倍であります。
なお、以下①から⑱の各リスクにおける将来事項に関する記述につきましては、当期末現在において入手可能な情報に基づく当社の判断、一定の前提または仮定のもとでの予測などが含まれます。
① マクロ経済環境の変化によるリスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開し、事業活動は多岐にわたっており、当社グループの業績は、日本および関係各国の政治経済状況や世界経済全体の影響を受けます。そのため、世界的あるいは特定地域における経済動向は、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② カントリーリスク
当社グループは、カントリーリスク発現時の損失の発生を最小化するためには、特定の国・地域に対するエクスポージャーの集中を避ける必要があると考えております。また、カントリーリスクが大きい国との取り組みでは、貿易保険などを活用し案件ごとにカントリーリスクヘッジ策を講じることを原則としております。
カントリーリスクの管理にあたっては、各国・地域ごとにカントリーリスクの大きさに応じて客観的な手法に基づく9段階の国格付けを付与すると共に、国格付けと国の経済規模に応じてネットエクスポージャー(エクスポージャーの総額から貿易保険などのカントリーリスクヘッジを差し引いたもの)の上限枠を設定し、各々の国のネットエクスポージャーを上限枠内に抑制しております。
しかしながら、これらのリスク管理やヘッジを行っていても、当社グループの取引先所在国や当社グループが事業活動を行う国の政治・経済・法制度・社会情勢の変化によって計画どおりの事業活動を行えない可能性や損失発生の可能性を完全に排除することはできません。このような場合には、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 地政学リスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開しており、特定国・地域における社会的、政治的、軍事的な緊張の高まりにより、従業員、物資、資本、情報などの経営資源が危険に晒されたり、貿易・投資、その他の自由な経済活動が阻害される可能性があります。
こうした地政学リスクの高まりによる不確実な情勢に対応するため、特定国・地域における取引内容やビジネスへの影響を確認するとともに、調査・分析および研修を通じて、有事の際に適切な対応がとれるよう努めております。また、安全保障貿易管理委員会を中心に各国の外交政策、制裁措置、武力紛争などの外部環境変化へ柔軟に対応しております。
しかしながら、全ての地政学リスクを回避することは困難であり、当社の事業に影響を与える事象が発生した場合には当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 市場リスク
当社グループは、貿易業や事業投資を通じた外貨建の取引などに伴う為替変動リスク、資金の調達や運用などに伴う金利変動リスク、営業活動における売買契約・在庫商品などに伴う商品価格変動リスク、ならびに、上場有価証券の保有などに伴う価格変動リスクなどの市場リスクに晒されております。当社グループは、これらの市場リスクを商品の売買残高などの資産・負債のマッチングや先物為替予約取引、商品先物・先渡取引、金利スワップ取引などのヘッジ取引によって極小化することを基本方針としております。
1) 為替リスク
当社グループは、外貨建の輸出入取引・外国間取引を主要な事業活動として行っており、海外の事業会社からの受取配当金等も含め、外国通貨に対する為替変動リスクに晒されております。この為替変動リスクに伴う損失の発生または拡大を未然に防ぐために、先物為替予約などのヘッジ策を講じておりますが、これらの対応を行っても為替変動リスクを完全に回避できる保証はありません。
また、海外連結子会社・持分法適用関連会社の損益の多くが外貨建であり、当社グループの連結決算上の報告通貨が日本円であることから、損益および財務諸表を日本円に換算する際の為替変動リスクを負っています。これらは予期せぬ市場の変動により当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、為替の収益感応度(米ドルのみ)は、1円/米ドル変動すると、売上総利益で年間8億円程度、当期純利益(当社株主帰属)で年間3億円程度、自己資本で20億円程度の影響があります。
2) 金利リスク
当社グループは、営業債権などによる信用供与・有価証券投資・固定資産取得などのため金融機関からの借入または社債発行などを通じて資金調達を行っております。資産・負債を金利感応度の有無により分類し、金利感応度のある資産と負債との差額を金利ミスマッチ金額と捉え、固定・変動調達比率を調整することで金利変動リスクを管理しておりますが、金利変動リスクを完全に回避できるものではなく、金利水準の急上昇による調達コスト増大が当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、2026年3月末の当社グループの有利子負債残高は1兆2,956億17百万円であり、平均利率につきましては、短期借入金は3.72%、1年内返済予定の長期借入金は1.69%、長期借入金(1年内返済予定のものを除く)は2.05%となっております。
3) 商品価格リスク
当社グループは、総合商社として様々な事業分野において多岐にわたる商品を取り扱っており、相場変動などによる商品価格変動リスクに晒されております。取扱い商品については、社内組織単位ごとにポジション(ロング・ショート)限度額と最大損失額を設定の上、ポジション・損失管理を行うと共に、損切りルール(評価額を含む損失額が最大損失額の90%に抵触した場合、最大損失額の範囲内に収めるべく速やかにポジションを解消するルール)を設定し運用しておりますが、これらの対応を行ってもリスクを完全に回避できる保証はなく、予期せぬ市場の変動などにより当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、各商品ポジションに関しては、モニタリングの上、本部別に増減内容の分析を行うなど、適正水準にコントロールするための施策を行っております。
4) 上場有価証券の価格リスク
当社グループは、市場性のある有価証券を保有しております。保有する上場株式については、受取配当金や関連する収益が資本コスト(WACC)を上回っているかを定量的に検証するとともに、当社企業価値の向上に寄与しているかといった定性面についても精査し、個別銘柄ごとの保有意義見直しを継続していく方針です。
保有上場株式の株価が大幅に下落した場合、有価証券の公正価値の変動によって、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 信用リスク
当社グループは、多様な商取引を行う中で国内外の取引先に対し信用供与を行っております。これらの商取引においては、販売先の業績不振や経営破綻などにより、当社の債権が回収できないリスクが存在します。
これらのリスクについて、取引先に対し11段階の信用格付けを付与し、当該格付や当社が負うリスクの類型により取引先ごとに取引限度を設定し、債権残ならびに契約残を設定された限度の範囲内でコントロールしております。また、定期的に取引先信用状況やサプライチェーン全体を俯瞰し取引条件を見直し、かつ取引先の信用状況やその変化に応じ、担保・保証の取得や保険の付保など保全措置を講じ、信用リスクが顕在化した場合に、予想される損失の軽減にも努めております。さらに、債権査定制度を導入し、回収に懸念のある債権については、当該取引先の信用状況、債権回収実績、保全内容などを基に回収可能性について査定を行い、回収が難しいと判断する債権額を算定し適時に貸倒引当金を計上しております。
また仕入先において、経営不振などにより仕入契約どおりに当社商品供給がなされない場合、当社グループが主契約者として販売先に販売契約の義務を果たせず、契約履行責任を問われるなどのリスクも存在します。
しかしながら、こうした信用リスクの管理を行った場合でもリスクを完全に回避できる保証はなく、取引先の破綻などにより債権の回収不能などの事象が発生した場合には当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 事業投資リスク
当社グループは、様々な事業領域において事業投資を行っております。事業投資は、事業計画どおりに収益獲得ができないリスク、投下資本回収リスク、事業撤退時に損失が発生するリスクが存在します。事業投資から発生する損失の予防と抑制を目的として、当社グループは事業投資案件の実行の判断時、また投資実行後の管理や撤退に関して事業投資基準を設けて、管理しております。
新規事業投資案件の実行時においては、取り組み意義やキャッシュ・フロー計画を含めた事業計画を厳格に評価しております。特に収益性の評価に関しては内部収益率(IRR)を指標とし、これに対しハードルレートを設定した上で、これを上回る案件を取り上げることとしており、事業投資実行の判断において、当社グループの株主価値を向上させ、かつリスクに見合う収益が得られる案件を選別する仕組みを構築しております。
実行済の事業投資案件については、毎年、モニタリング・撤退該否判定として、ROIC(Return on Invested Capital)や、キャッシュリターンベースでのROICであるCROIC(Cash-Return on Invested Capital)が資本コストを超えているかを測定し、定期的に事業性を評価しながらそれぞれの事業の問題点を早期に把握し、適時適切に改善策の実行、あるいは撤退を進めることで当社グループのバランスシートの劣化を防ぎ、企業価値の維持・向上につなげております。モニタリング・撤退該否判定に関する概要は下図のとおりです。
このように、事業投資の実行時、実行後の仕組みを整備しておりますが、期待どおりの収益が上がらないリスクや事業計画を達成できないリスクを完全に回避することは困難であり、想定どおりに事業が進まない場合、当社グループが保有するのれんや固定資産などの価値が毀損し、減損損失が発生する、または当該事業からの撤退などに伴い損失が発生する可能性があります。こうした場合において、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 資金調達リスク
当社グループは、事業資金を金融機関からの借入金または社債発行などにより調達しております。金融機関との取引関係の維持、一定の長期調達比率の確保などによる安定的な資金調達を行っておりますが、金融市場の混乱や格付会社による当社グループの信用格付けの大幅な引下げなどの事態が生じた場合には、資金調達が制約されると共に、調達コストが増加するなどにより、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 環境・気候変動リスク
当社グループの事業活動およびサプライチェーンにおいて、環境・気候変動などにかかわる問題が発生した場合などに、当社グループの社会的評価の低下、事業活動の停止・中止、訴訟や損害賠償などの負担、サプライチェーンからの除外などが生じるリスクがあります。
また、気候変動を抑制できずに温暖化が進行した場合に、当社事業の収益や資産価値に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして、気候変動抑止のために法規制が強化されるなどの移行リスクと、気温上昇により洪水などの災害が発生し、被害が生じる物理的リスクがあります。
当社グループは、6つのマテリアリティのうち環境・人権を優先的に取り組むテーマとして長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」を策定し、環境・気候変動への対応の一環として脱炭素社会実現に貢献できるように取り組んでおります。
(詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)サステナビリティに関するリスク管理」をご参照ください。)
⑨ 人権リスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、事業活動とそのサプライチェーンは多岐・広範にわたっております。当社グループの事業活動およびサプライチェーンにおいて、労働安全衛生や人権(強制労働、児童労働、差別、ハラスメントなど)にかかわる問題が発生した場合などに、事業活動の停止・中止、被害・損害の補償、訴訟や損害賠償などの負担が発生するリスクに加え、当社グループがサプライチェーンから外される、または当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼすリスクがあります。
当社グループは、6つのマテリアリティのうち環境・人権を優先的に取り組むテーマとして長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」を策定し、人権方針や人権にかかわる個別方針を策定・実行するなどサプライチェーンを含む人権尊重に取り組んでおります。
(詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)サステナビリティに関するリスク管理」をご参照ください。)
⑩ コンプライアンスリスク
当社グループは、様々な事業領域で活動を行っており、事業活動に関連する法令・規制は、会社法、税法、汚職など腐敗行為防止のための諸法令、ハラスメント防止のための諸法令、独占禁止法、関税法、外為法を含む貿易関連諸法令や化学品規制などを含む各種業界法など広範囲にわたっております。これらの国内外の法令・規制を遵守するため、当社グループではコンプライアンスプログラムを制定し、コンプライアンス委員会を設け、グループ全役職員にコンプライアンスマインドを浸透・定着させるための取り組みを行っております。また、安全保障貿易管理委員会を中心とした安全保障貿易に関する実行体制の整備・運用にも取り組んでおります。しかしながら、このような取り組みによっても事業活動におけるコンプライアンスリスクを完全に排除することはできるものではなく、関係する法律や規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 法務リスク
事業活動に関連して、当社グループが国内または海外において訴訟、仲裁などの法的手続きの被告または当事者となることがあります。訴訟などには不確実性が伴い、その可能性の程度や時期、結果を現時点で予測することはできませんが、手続きの結果によっては、損害賠償金、和解金等の負担が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ システムリスク
コンピュータシステムの品質不良や運用トラブルによるビジネス遂行の支障や損失、ならびにITリソースやシステムの統合管理の不十分さなどによるシステムリスクが存在します。
当社グループは、システムを適切に保守・運用するため、CIOを中心とした管理体制を構築しております。重要な情報システムやネットワーク設備について、これらの機器設備を二重化するなど障害対策を施すと共に、グループ全体のIT資産・脆弱性の一元的な管理を行い、システムの安定運用を図っております。
このように総合的なシステムの強化と事故防止に努めておりますが、予期できない自然災害や障害を原因として情報通信システムが不稼働の状態に陥る可能性は排除できません。
なお、本社含めグループ連結会社でシステムリスクが顕在化した際には、予想される損失については、保険の付保による軽減に努めております。しかしながら、被害の規模によっては当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 情報セキュリティリスク
不正なアクセスやサイバー攻撃、情報資産(紙媒体を含む)の管理ミスなどによる情報の漏洩、改ざん、破壊、紛失などにより、損失を被り、社会的評価が悪影響を受ける情報セキュリティリスクが存在します。
当社グループは、情報資産を適切に保護・管理するため、各種規程を整備し、CISOを議長とする情報・ITシステムセキュリティ委員会を中心とした管理体制を構築し、情報セキュリティに係る体制を強化しております。
ファイアウォールによる外部からの不正アクセスの防止、システムの脆弱性を悪用するウイルス対策、暗号化技術の採用などによる情報漏洩対策の強化にも努めております。
その他、グループ全体のセキュリティガバナンス強化に重点的に取り組んでおり、サイバー攻撃を早期に検知し影響を抑え込むソフトウエアの導入、不審メールに対する訓練など、セキュリティ対策をグループ全体に展開しております。
また、定期的なセキュリティ遵守状況評価を通じて当社グループが抱えるセキュリティ上の課題・リスクを可視化し、優先度をつけた中長期的なセキュリティ対策を実施しております。
このように総合的な情報セキュリティの強化と事故防止に努めておりますが、近年急増しているサイバー攻撃やコンピュータへの不正アクセスなどにより、個人情報を含めた重要な情報資産が漏洩または毀損する可能性は排除できません。なお、本社含めグループ連結会社でセキュリティリスクが顕在化した際には、対応にかかる費用や取引先・顧客への補償費用といった予想される損失については、保険の付保による軽減に努めております。しかしながら、被害の規模によっては当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑭ イノベーションリスク
AIの高度活用を含むDX、その他の技術革新およびビジネスモデルの変革が進展する環境下で、当社グループがこれらに適切に対応できず、取引先に提供する機能や付加価値が低下し、成長機会を逸失するリスクおよびAIガバナンスの不備に起因する情報漏洩、権利侵害等が発生するリスクがあります。
これらのリスクに対して、当社グループでは、デジタル人材の育成・拡充、データ・AI活用のためのデジタル基盤の整備・構築等の推進と社会ニーズに合わせたビジネス変革の取組みを連動させる “Digital-in-All” を推進しています。さらに、社内委員会としてDX推進委員会および同委員会下にAIガバナンス分科会を設置し、DXに関する全社方針や目標に向けた体制の整備や各種施策・取組みの推進、AI特有のリスクポイントに対する統制、これらの状況のモニタリング等を行っています。
しかしながら、このような取組みによっても急速なAIの進化・ビジネス構造の変革や法規制等への対応の遅延や不十分さにより、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑮ 災害等リスク
地震、風水害などの自然災害や感染症の大規模な流行により事務所・設備・従業員とその家族などに被害が発生し、当社グループに直接的または間接的な影響を与える可能性があります。災害対策マニュアルならびに感染症マニュアルの作成、防災訓練、従業員の安否確認システムの整備、事業継続計画(BCP)の策定などの対策を講じております。
大規模な災害時における取引上のサプライチェーン維持の取り組みとして、代替取引先・代替商品の検討を行い取引継続の強靭化に取り組むと共に、保険の付保を行うなどして被災した場合の損害の低減を講じております。
しかしながら、被害を完全に回避できるものではなく、サプライチェーン寸断により当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑯ 人的資本リスク
当社グループは、人材を会社の資本、価値の源泉と捉え、価値創造できる人材を輩出し続ける人的資本経営を推進しており、経営戦略・事業戦略の実現に向けた人材の確保・育成に努めております。人材確保に関しては、多様性の推進、イノベーションの創出、機能強化を目指し、M&A・デジタル・法務など専門性の高い人材の獲得に注力するなど、人材ポートフォリオを意識した採用を推進しています。また、キャリア採用を通じて、当社社員の年齢構成の適正化を図るほか、新卒採用では女性比率の目標を設定し、ジェンダーにかかわらず活躍できる環境の整備に取り組んでいます。
人材育成に関しては、「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」、「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」、「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」を重点テーマとし、事業戦略の実現に必要となる人材の育成を強化しています。重要テーマについては人材KPIを設定し、進捗や効果を定量的にモニタリングする体制を整備しています。
このように人材戦略に基づいた様々な取り組みを行っていても、高齢化に伴う労働人口の減少や、人材の流動化により必要な資質・能力を有した人材の確保・育成が十分にできない場合、事業計画の進捗に遅れが生じる可能性があります。
人的資本リスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (8) 人材戦略に関する基本方針 ③リスク管理」をご参照ください。
⑰ 品質に関するリスク
当社グループは、総合商社として様々な事業を展開しています。近時、事業領域が拡大・多様化するなか、製造業やサービス業への進出も増加しています。それに伴い、品質管理体制強化の目的で、全社共通の品質管理基本方針である「双日グループ・品質管理ポリシー」を制定し、現場での自律的、主体的な品質管理を推進しております。また、全社横断組織として品質管理委員会を設置し、事業現場で提供するモノ・サービスの品質管理状況を網羅的にモニタリングする体制を整えております。体制の概要は下図のとおりです。
また、個々の事業においては、品質に起因したリスク発現に対して、事業特性も考慮しながら、顧客対応を実践しており、品質管理委員会では、その実践状況を議論・研究し、成果や気付きを全社に共有の上、他事業への応用・品質改善につなげる取り組みを進めております。とりわけトレード事業においては、個々の商流のサプライチェーン全体を見据えた品質起因のリスクの洗い出しとリスク対応の点検を行っております。
しかしながら、品質問題の発生を完全に抑制することは困難であり、当該問題により生じた損害について、当社グループが責任を負う可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑱ レピュテーションリスク
当社グループにおいて、製品やサービスの品質問題、コンプライアンス違反、情報漏洩、不正なアクセスやサイバー攻撃などの事象が発生した場合に、対象の事実はもとより、情報開示の適時性や開示内容の客観性などの不備・不足により、ステークホルダーからの当社グループへの信用やブランド価値が毀損する可能性があります。
対外発信においては、開示における透明性・適時性・公平性などを確認し、一貫性のある適切な発信が行われるよう努めていますが、報道やSNSなどの情報により、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループのウェブサイト・SNSは、システムの脆弱性に起因する掲載情報の改ざんリスクや収集した個人情報の流出リスクにも晒されております。システムの脆弱性に関しては、上記⑬の「情報セキュリティリスク」に記載のとおり、可能な限りの安全対策に努め、運用に関しては、グループ共通のSNS運用ポリシーや運用規程を定めて、当社グループからの適切な情報発信を行う体制を整えております。しかしながら、このような対策を講じても、運用に起因する批判・非難が集中するリスク、意図しない著作権・商標権・肖像権の侵害、取引先や顧客に限らない第三者による外部サイトやSNSに当社グループを特定しての投稿が為されるリスクがあります。情報の真偽にかかわらず、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、安定的かつ継続的に配当を行うと共に、内部留保の拡充と有効活用によって企業競争力と株主価値を向上させることを基本方針とし、経営の最重要課題の1つと位置づけております。
この基本方針のもと、「中期経営計画2026」においては、中計期間3ヶ年累計の基礎的営業キャッシュ・フロー(注1)の3割程度を株主還元に充当します。また、株主資本DOE(注2)4.5%を基本とする累進的な配当方針としております。
(注) 1 基礎的営業キャッシュ・フロー:会計上の営業キャッシュ・フローから運転資金増減等を控除したもの
2 株主資本DOE:支払配当 ÷ 株主資本
3 株主資本:その他の資本の構成要素を除外した前期末自己資本
なお、当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当等を取締役会の決議によって行うことを可能とする旨、定款に定めております。
(1) 当期末の配当
上記基本方針及び当期の決算を踏まえた自己資本の状況などを総合的に勘案し、以下のとおりとします。
①配当財産の種類
金銭
②株主に対する配当財産の割当てに関する事項及びその総額
当社普通株式1株につき82.5円、総額172億71百万円
なお、2025年12月1日に1株当たり82.5円の中間配当金をお支払いしておりますので、1株当たりの年間配当は165円、年間配当総額は345億42百万円となります。
③剰余金の配当の効力が生じる日
2026年6月10日
(注)基準日が当事業年度に属する取締役会決議による剰余金の配当は、以下のとおりであります。
(2) 次期の配当
2027年3月期の中間配当は、配当基準日である2026年9月30日時点の発行済普通株式に対し、1株当たり90円00銭とすることを、2026年5月1日開催の取締役会にて決議しております。当該中間配当の配当総額は、188億41百万円(効力発生日:2026年12月1日)の見込みです。詳細については、同日に公表しました「剰余金の配当(2026年3月期期末配当及び2027年3月期中間配当)に関するお知らせ」をご参照ください。