リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
当社では当社及び当社が経営管理をおこなう会社(以下、関係会社)のリスク管理を適切におこなうことは経営の最重要課題の一つと認識して取締役会を頂点とする管理体制の整備とその高度化に努めています。リスク区分ごとに定めたリスク管理をおこなう部署がリスクの管理方法を策定して適切な対応をおこなうとともに、リスク管理の状況についてリスク管理委員会及び資金ALM委員会に定期的または必要に応じて報告・提言をおこないます。定期的に開催されるリスク管理委員会と資金ALM委員会では、各リスク管理所管部室からの報告・提言を評価し、全社リスクの把握と適切な対応を審議し、取締役会に報告します。これを受けて取締役会はリスク管理に関する重要事項について決議します。また、当社の関係会社についても、リスク管理の正確かつ的確な報告を求めて適切なリスク管理を実施していることを確認しています。一方、気候変動に関する事項は、所管部の報告・提言を受けサステナビリティ委員会で審議・調整のうえ、定期的に取締役会に報告するとともに、必要に応じて所管部がリスク管理委員会に報告・提言し、全社的なリスク管理の観点から適切な対応を決定し、取締役会に報告します。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)不動産賃貸事業に関するリスク
当社グループは不動産事業を主たる業務として営んでおりますが、このうちオフィスビルの賃貸が賃貸収入全体の半分程度を占めております。東京23区の駅近物件を中心に投資・保有することで競争優位性のある賃貸ポートフォリオを構築するとともに、マーケットニーズに即した用途バランスを構築しておりますが、一般的にテナント企業の不動産賃貸物件に対するニーズは景気の変動に影響を受けやすく、経済情勢が悪化した場合、賃料収入に予期せぬ影響を及ぼす可能性があります。当社グループのテナントは長期安定したテナントが多く、過去の推移からも賃料の変動は景気変動に比し小さい傾向にありますが、国内景気が冷え込み、これを受けて不動産市況が悪化した場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。また、テナントや入居者の信用力の低下による賃料の支払の延滞、賃料の減額要求による賃料の値下げ、退去による空室率の上昇などによって不動産賃貸収入が低下することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)不動産価値の低下に関するリスク
当社グループでは、賃貸用不動産を始めとして多くの事業用不動産を保有しております。商品企画やサービスの提供によって不動産の競争力強化並びに不動産価値の維持・向上をはかっておりますが、不動産市況の悪化による賃料水準の低下や空室率の上昇などにより、事業用不動産に対する減損処理が必要となった場合、評価損等の発生によって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、販売用不動産を当社グループが運用する投資法人もしくは第三者に売却しておりますが、経済情勢の悪化や不動産市況の悪化等に伴い、販売用不動産の不動産価値が低下した場合、当初想定していた通りの収益が確保できず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)開発・建替に伴うリスク
当社グループの収益力は比較的安定しているものと考えておりますが、新規開発や既存ビルの建替の際には、テナントの立ち退きに関する費用や設備の除却等により多額の特別損失が発生することとなります。当社グループにおける既存ビルの建替は、特別損失を計上しても、中長期的に当社グループの収益力を強化する戦略的なものであり、全体の収益計画を踏まえた計画的な建替をおこなってまいります。また、特別損失の発生に対しては、固定資産の売却の検討などにより、その影響を極力限定的なものにコントロールしてまいります。
しかしながら、建替の規模により、特別損失を通じて親会社株主に帰属する当期純利益段階の業績が大きく影響を受ける可能性や、建替の時期により、年度間で親会社株主に帰属する当期純利益が大きく変動する可能性があります。加えて、テナントの事情等何らかの理由により計画通り進捗しない場合、当社の利益計画に影響を及ぼす可能性があります。
また、新規開発については、開発物件の購入前に不動産デューデリジェンスをおこなうことで、予めリスクの抽出と解決策を策定しておりますが、許認可や工期の遅れ、工事費の高騰、想定通りの賃料が享受できない等によって、事業が計画通りに進捗せず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)不動産事業における投資判断に関するリスク
当社グループでは、賃貸用不動産、販売用不動産を問わず、新規不動産の取得やSPCに対する出資等にあたっては、競合物件の賃料相場や過去のマーケット推移、投資物件の優位性、リスク要因等を分析し、社内の各種会議体に諮ったうえで、投資金額に応じて取締役会等において投資判断をおこなっておりますが、顧客の需要動向、金利動向、販売価格動向等、種々の変化によって、当初想定していた通りの収益が確保できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他、不動産事業に付随するリスク
①アスベスト対策等について
当社グループが保有・管理する賃貸物件について、労働安全衛生法施行令の改正に伴い、吹き付けアスベストの調査を実施し、全て措置済であります。しかしながら、当社グループが予期しない形でアスベストの使用が発覚し、その処理のための費用負担が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、アスベスト以外にも身体に害を与えるとされる建築材料が将来新たに指定され、それらの処理義務が当社グループに課せられた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②土壌汚染等の対策について
土壌汚染対策法(平成15年2月15日施行)により、土地の所有者等は同法に規定する特定有害物質による土壌の汚染の状況についての調査・報告や、汚染の除去等の措置を、命ぜられることがあります。
当社グループが保有・管理する賃貸物件については、現時点で土壌汚染物質の問題は発生してはおりませんが、近隣地域から汚染物質が流入する等の問題が発生した場合や、新たな汚染物質が指定される等、当社グループが予期しない形で土壌汚染対策が求められた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③その他不動産事業に関連するリスク
当社グループが開発・建替をおこなう物件について、安全管理、品質管理、スケジュール管理を徹底しておりますが、設計・施工等の不備や事故等が発生した場合、また、当社グループが賃貸・管理・運営する物件について、火災・事故・食中毒等が発生した場合、信用失墜や想定外の費用等が生じる可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは、各種設備について、法定の点検のみならず定期的な保守点検を実施し、また、小規模修繕の状況を注視するなど、資産の保全と安全の確保に、日頃より万全の注意を払っております。
しかしながら、資産の劣化・毀損が予期せぬ時期に予期せぬ規模で起こった場合、その対策にあたるため、当社グループの財政状態並びに経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)有利子負債への依存に関するリスク
当社グループは、不動産投資、開発・建替等をおこなうにあたっては、自己資金に加えて借入や社債等にて資金手当てをおこなうことも予定していることから、有利子負債残高は今後の事業拡大にあたって更に増加する可能性があります。これに対しては、外部格付けを取得し、その維持・向上をはかることにより財務統制をおこなうとともに、資金調達手段を多様化し、財務指標に関する定量目標を定めることで、安全性の確保をはかっております。
しかしながら、金融環境の変化等の状況によっては、当社グループが望む条件での資金調達が十分におこなえず、今後の当社グループの事業計画等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は、大半の借入金については将来の金利変動リスクをヘッジする施策として、長期化・固定化を講じておりますが、将来において金利が急速かつ大幅に上昇した場合、また、固定金利借入の借り換え時の金利情勢によっては、資金調達コストの増加により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
《有利子負債残高の推移》
|
2019年 12月期 |
2020年 12月期 |
2021年 12月期 |
2022年 12月期 |
2023年 12月期 |
有利子負債残高(百万円) |
1,150,754 |
1,370,069 |
1,403,894 |
1,449,911 |
1,453,504 |
総資産(百万円) |
1,776,272 |
2,019,336 |
2,207,325 |
2,320,337 |
2,480,472 |
有利子負債比率(%) |
64.7 |
67.8 |
63.6 |
62.4 |
58.5 |
(7)自然災害、人災等によるリスク
地震を中心とした自然災害、テロその他の人災の発生に対しては、「事業継続基本計画」を設けておりますが、当社グループが所有する資産に毀損等があった場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼし、また、所有する資産の価値が低下する可能性があります。特に地震対策として、旧建築基準法下の物件について、旧来の保有物件に関しては耐震補強工事を完了し、新規取得物件についても順次対応をしておりますが、当社の保有・管理する物件が首都圏に集中し、オフィスを中心とした賃貸物件のうち約7割が東京23区内という立地であることから、想定を超える規模の東京直下型地震などのこの地域における甚大な災害により、当社グループの資産に予期せぬ毀損等が発生した場合、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(8)株価下落に関するリスク
当社グループは、上場及び非上場の株式を保有しております。それぞれの株式については長期的視点からの事業上の意義も含めて保有・売却の判断をしており、加えて日々株価動向を調査し、月次または臨時の資金ALM委員会を開催して相場動向の影響と対応の検討をおこなっておりますが、株価が下落し株価低迷が長期化する場合には、評価損の計上等を通じ当社グループの財政状態並びに経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
《投資有価証券残高の推移》
|
2019年 12月期 |
2020年 12月期 |
2021年 12月期 |
2022年 12月期 |
2023年 12月期 |
投資有価証券(百万円) |
133,009 |
138,043 |
225,547 |
284,706 |
328,463 |
(うち、上場株式)(百万円) |
77,658 |
68,091 |
74,799 |
79,177 |
109,259 |
(うち、その他)(百万円) |
55,351 |
69,952 |
150,748 |
205,528 |
219,204 |
その他有価証券評価差額金 (百万円) |
41,819 |
29,630 |
38,401 |
40,267 |
58,943 |
(9)サステナビリティに関するリスク
当社グループでは、当社グループ及び当社のステークホルダーのみなさまにとって重要度の高い課題をマトリクスにマッピングし、重要課題(マテリアリティ)を特定しております。特定した重要課題について、リスクに対応した取り組みをおこなうとともに、サステナビリティ委員会を設置し、長期的な競争力強化とリスク対応に関する経営の重要事項について審議・調整をおこなっております。特に、気候変動に関するリスクについては、取締役会を頂点とするリスク管理体制を整備し、管理と適応の取り組みをおこなっています。しかしながら、これらのリスクに対する対応が遅れる場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)ガバナンスに関するリスク
当社グループのガバナンスに問題が生じることによって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がありますが、当社では「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定しており、株主をはじめとする全てのステークホルダーへの責務を自覚し、透明かつ誠実な経営に留意するとともに、取締役会を中心に、「内部統制」、「リスク管理」、「コンプライアンス」、「開示統制」が十分に機能した自律的統治システムを堅持します。
(11)法的規制等変更リスク
当社グループの事業である不動産・建築及び保険等に関する法的規制あるいは税制について、今後、改廃、または新たな規制が制定されることで、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。法的規制等の制定・改廃については、所管部にて定期的に管理しており、役職員に対する教育・研修等による浸透に加えて、リスク管理委員会で定期的に報告をおこなっております。
(12)コンプライアンス・法令遵守に関するリスク
当社グループは、コンプライアンスを経営の最重要課題の一つとして、コンプライアンス委員会を設置しコンプライアンスの徹底に取り組んでおりますが、予期せぬ状況により法令等に抵触する事態が生じた場合は、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(13)人事労務に関するリスク
当社グループでは、人材が最大の資産と考えておりますが、少子高齢化による人材確保難や労働市場の変化などによって、人材の流出、人材の継続的な確保や育成ができず、当社グループの成長が減退するリスクがあります。当該リスクについては、フリンジベネフィットの充実、労働環境の定期的なモニタリング、適切な評価と処遇等、安心して働ける環境整備をおこなっております。
(14)情報セキュリティ管理に関するリスク
当社グループは保険代理店業務を中心に、多数の法人・個人のお客さまの情報を保有しているほか、当社グループ自体の様々な経営情報等の内部情報を有しております。これらの情報の管理については、コンプライアンス委員会の統制のもと、情報セキュリティポリシーを始めとする情報関連諸規程により、運用管理をおこなっております。更に役職員に対する教育・研修等により情報管理の重要性を周知徹底し、システム上のセキュリティ対策等もおこなっております。
しかしながら、これらの対策にもかかわらず、不可抗力のシステムトラブル、内部・外部の要因により、重要な情報が流出した場合には、当社グループの信用低下、補償コストの発生等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、不動産賃貸事業を主たる事業としていることもあり、長期的かつ安定的な事業基盤の強化のために必要な内部留保の充実をはかるとともに、株主への利益還元を狙いとして、安定した配当を継続することを基本方針としております。また、業績動向を踏まえた配当とすることも同様に重要と考えております。
当社は、期末配当による年1回の剰余金の配当をおこなうことを基本方針としておりますが、下記の通り、中間配当制度を採用していることから、各事業年度の業績の状況を勘案し、中間配当を実施することにより、年2回の剰余金の配当をおこなう場合もございます。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
このような利益配分の考え方に基づき、当事業年度の配当金につきましては、2024年3月26日開催予定の定時株主総会で、期末配当27.0円(中間配当23.0円実施済)を決議する予定であります。
当社は、会社法第454条第5項に基づき、中間配当制度を採用しております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当額は以下の通りであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年7月28日 |
17,633 |
23.0 |
取締役会決議 |
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2024年3月26日 |
20,699 |
27.0 |
定時株主総会決議予定 |