リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループは、重大な経営リスクの適切な管理、法令遵守・企業倫理の徹底、公正な企業活動の実践を目的に、社長直轄のリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。グループリスク管理規定に基づき、国内外の各組織においてリスクの自己評価を実施し、リスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、社長が重大な経営リスクを特定、リスク毎に統括責任者を選定し、リスクの回避・軽減のための対策を進め、取締役会は対策の進捗を確認しています。
<リスク管理体制概要図>
上記に基づき、当社グループにおけるリスク分析結果及び近年の社会環境・情勢を踏まえ、以下を2024年度の「重点課題」とし、それぞれ対策を実施しました。
(課題1)グループ全体での情報セキュリティの更なる強化並びに機密情報管理ルールの周知徹底及び運用状況のモニタリング実施により、機密情報管理レベルの向上を図る。
(対策) 機密情報管理の継続的強化を図るため、2024年1月に機密情報管理チームを恒常的組織に改組しました。2023年度より導入を開始した安全性の高いデータ保管システムの運用の定着と利用機能の拡大を進めるとともに、大量ダウンロード検知システム、大量ダウンロード自動停止システムの運用をそれぞれ開始しました。
(課題2)保安事故の発生リスク低減のため、海外プラントにおける運転・設備管理に対する強化策を引き続き実施するとともに、グローバルPSM(プロセス・セーフティ・マネジメント)監査チームによる海外関係各社の現地監査を通じ、各社の保安管理体制上の課題も踏まえた具体的課題を客観的に抽出し、その改善を推進する。
(対策) 2019年度から開始した海外化学プラントに対する当該カンパニー・事業部によるこれまでの安全監査等に加えて、2022年度からはグローバルな社内専門家で編成したPSM監査チームの活動を立ち上げ、海外保安リスクの把握と対策を推進しています。2024年度は、PSM監査チームが3生産拠点の現地監査を行い課題把握と改善推奨を行いました。
(課題3)原燃料・副資材・機材の調達リスクに対し、サプライチェーン視点で汎用品を含む全物品を対象に実施した再点検結果に基づき、各事業のBCP(事業継続計画)上優先度の高い製品にかかる物品から、策定したリスク回避・低減対策を着実に実施し、BCPの精度・実効性の向上を図る。
(対策) 2023年度に引き続き、各事業の優先生産銘柄及び原料等供給停止リスクの分析結果を踏まえ、優先度の高い原料等から順次リスク低減策の策定・実施を進めました。原料等供給停止リスクの分析においては、サプライチェーン上流の動向に変化が生じたことから最新動向を踏まえ分析結果を修正しました。
上記の重点課題を含め、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、以下のような項目があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年12月31日)現在において当社グループが判断したものです。当社グループは、これら事業運営全体に関わるリスクに対して日々の事業活動の中でリスク低減に努めています。
① 事業環境の変化に関わるリスク
当社グループは、多様な事業ポートフォリオを有しており、グローバルかつ様々な用途分野に展開しています。さらに、当社グループの製品は特殊化学品が多く、商品市況の影響を受けにくい構成になっていますが、近年、自動車(フロントガラス用PVBフィルム、ブレーキホース補強用ビニロン等)、電気・電子(液晶パネル用ポバールフィルム、コネクタ用耐熱性ポリアミド樹脂〈ジェネスタ〉等)、環境(食品包装用EVOH樹脂〈エバール〉、水処理・空気浄化用活性炭等)、医療(歯科材料等)などの成長分野へシフトさせつつあり、業績の依存度も高まっています。また、自然環境・生活環境貢献製品等の優位性のある製品の開発や、IoT活用によるビジネスモデルの改革や業務プロセスのデジタル化等のデジタルトランスフォーメーション、社内外のリソースを結び付けることによるイノベーションの創出等に取り組んでいますが、最終製品における業界標準の転換、製品の短寿命化、グローバルな開発競争の激化等の環境変化により、重要な事業が縮小・撤退を余儀なくされたり、固定資産の減損損失等の大規模な損失を計上する可能性があります。
② 原材料に関わるリスク
当社グループの製品である化成品、合成樹脂、合成繊維の主原料は、原油、天然ガスの市況に影響を受けるエチレン等の石油化学製品です。このため、予想を超える市況変動が生じた場合、製品価格への転嫁が遅れること等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
また、長期購買契約の締結や購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めていますが、重要な原材料の提供を担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生、物流の混乱、日本や諸外国における経済制裁や各種規制等により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
③ 海外事業展開に関わるリスク
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、海外売上高比率が7割を超えています。当社グループは、米国、ドイツ、中国、香港、シンガポール、タイ、インド、ブラジルに設置している地域会社にて、各国・各地域のリスク情報収集及びビジネス動向の分析を常時行い、当該地域を越えて対応が必要となる場合は地域会社、カンパニー所管会社、本社の該当部署が連携する体制を構築しています。しかしながら、各国・各地域での大規模な伝染病の流行、戦争・暴動・テロ等、偶発的な要因や、国家や地域の対立による貿易戦争、予期せぬ現地法規制の変更等によって、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢などのグローバルな地政学リスクの高まりにより、需要の低迷やサプライチェーンの混乱、原燃料の価格高騰や調達難など、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
④ 事故・災害に関わるリスク
当社グループは、日本、欧州、北米、アジア及び豪州に生産拠点を設けており、これらの多くは大規模な化学工場です。当社グループは、安全に関する行動原則「安全は全ての礎」に従い、安全のマネジメントシステムを構築・運用し、爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故・災害の未然防止、及び災害発生時の被害の極小化に努めるとともに、重要な生産設備については拠点分散や損害保険によるリスク対応を行っている他、気候変動に起因する激甚災害に対するリスク評価を実施し、その対策を進めています。しかしながら、重大な保安事故、環境汚染、自然災害、大規模な伝染病の流行等が発生すれば、従業員や第三者への人的・物的な損害、事業資産の毀損、長期の生産停止が生じる可能性があります。
また、原燃料、設備・メンテナンス部品やサービスの提供などを担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
⑤ 製造物責任に関わるリスク
当社グループは、自動車、電気・電子材料、医療(歯科材料等)、食品包装(〈エバール〉、バイオマス由来のガスバリア材〈PLANTIC〉等)など、最終製品の品質に対して重要な役割を担う製品を数多く供給しています。当社グループでは主に製造拠点単位で品質マネジメントシステムを導入し品質の向上に努めていますが、品質の欠陥に起因する大規模な製品回収が発生すると、PL保険でカバーできない損害賠償等の損失の発生、顧客からの信頼や社会的信用の失墜等の可能性があります。
⑥ 人権に関わるリスク
近年、自社のみならずサプライチェーン等も含めた人権の尊重への取り組みが求められています。当社グループは、「私たちの信条」において、企業活動に関わる全ての人々を個人として尊重し、その人格と自律を認め合うことを理念の1つとして掲げています。2024年には、人権の尊重に対する当社グループの姿勢及び責任を明確に示すため「クラレグループ人権方針」を制定し、人権侵害リスクの特定・軽減・防止に向けた取り組みを進めていますが、当社グループの事業活動により直接または間接的に人権に負の影響が生じた場合、顧客からの信頼や社会的信用の失墜等により当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑦ 法規制・コンプライアンスに関わるリスク
当社グループは、多様な社会との接点において遵守すべき事項を「私たちの誓約」として、またこれを企業活動の中で具体的に実践するためのガイドラインを「行動規範」として定めています。そして、法令及び「私たちの誓約」を厳守することを経営トップが宣言しています。この宣言を明記し、「行動規範」をわかりやすく解説したコンプライアンス・ハンドブックを、世界中の当社グループ社員全員に配布し周知徹底を図っています。また、当社各地域拠点及びグループ各社において、コンプライアンス統括者を選任するとともに地域別にコンプライアンス委員会を設け、全社的なテーマの他、地域特有のテーマについても取り組んでいます。
独占禁止法遵守に向けた取り組みとしては、グローバルなコンプライアンスプログラムを構築しています。具体的には、独占禁止法遵守指針の定期的見直し、競合他社との接触に関するガイドラインの制定、競合他社との取引・会合の事前審査、役員・従業員向けセミナーの開催、遵守状況に関する社内聴取、入札情報の管理及び入札部署を対象とした法務部監査等の様々な施策を行っています。
以上のとおり、コンプライアンスの徹底を図っていますが、重大な法令違反を起こした場合、顧客からの信頼や社会的信用の失墜に加え、損害賠償責任や罰金が課されることなどにより、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、各国の様々な法規制の適用を受けています。将来的に法規制の大幅な変更や規制強化がなされた場合には、新たな対策コストの発生や事業活動の制約につながり、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑧ 訴訟に関わるリスク
当社グループは、国内及び海外事業に関連して、取引先や第三者との間で、訴訟その他法的手続きが発生するリスクがあります。重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑨ 環境に関わるリスク
当社グループは、「クラレグループ環境基本方針」を定め、環境に関する各種法規制を遵守するとともに、GHG排出量削減等の地球温暖化対策の推進、化学物質の排出抑制、資源の有効利用等の環境改善に継続して取り組んでいます。また、気候変動がもたらす異常気象や激甚災害へのリスク評価及び対策を強化しています。これらに加え、当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しており、情報開示の拡充に努めています。しかしながら、予期せぬ事故や自然災害等により環境汚染が生じた場合や、環境に関する規制が強化された場合は、事業活動の制限や対策費用の増加等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑩ 情報セキュリティに関わるリスク
当社グループは、事業活動の基盤である情報システム・ネットワークに様々なセキュリティ対策を実施するとともに、情報管理体制のさらなる強化を図っていますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセス等により情報システム等に障害が生じた場合や、企業情報及び個人情報等が社外に流出した場合は、事業活動の停滞や信用の低下等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑪ 知的財産に関わるリスク
当社グループは、独自技術による事業・製品を数多く有しています。当社グループの知的財産権への重大な侵害や当社の権利に対する係争が発生した場合、また当社グループが他社の知的財産権を侵害した場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑫ 人材の確保に関わるリスク
当社グループにとって、人材は当社グループの事業推進及び持続的成長・発展のために重要かつ不可欠な経営資源であると考えています。ダイバーシティとインクルージョンを推進しつつ、国内外グループ会社を対象としたエンゲージメントサーベイの定期的実施、職場環境及び人事制度・報酬の継続的な見直し、多様な教育・研修の実施等により、従業員にとっても自己成長・実現が可能で働きがいのある魅力的な会社であり続けられるよう努めていますが、少子・高齢化に伴う労働人口の減少や雇用流動化の進展等を背景として、採用難や流出、必要な人材を確保できない場合は、事業活動の停滞等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑬ 為替の変動に関わるリスク
当社グループは、日本、欧州、北米、アジア及び豪州などの海外諸地域で生産、販売を行っています。当社グループが国内で生産し、海外へ輸出する事業では製品の輸出価格が為替変動の影響を受けます。一方、海外の事業拠点で生産、販売する事業では、異なる通貨圏との間の調達・販売価格及び外貨建て資産・負債の価額が為替変動の影響を受けます。為替予約等によるリスク軽減措置を講じていますが、想定を超える為替変動により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益配分を経営の重要課題と位置付け、親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向35%以上、1株につき年間配当金40円以上、自社株買いは弾力的に実施することを基本方針としています。
当連結会計年度は、中間配当金として1株当たり27円、期末配当金として1株当たり27円、年間で1株当たり54円の配当を実施しました。また、自己株式11,020千株、19,999百万円の取得及び自己株式30,000千株(普通株式、消却前の発行済株式総数に対する割合8.45%)の消却を行いました。これらにより、2024年度の総還元性向は118.7%となりました。
なお、2025年度から株主還元方針を見直し、親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向50%以上、1株当たり配当金の維持・増額、自社株買いは継続的実施を目指すことを新たな基本方針とします。
配当の回数については、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。また、定款において「当会社は、取締役会の決議によって、毎年6月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定めています。
なお、当社は連結配当規制適用会社です。
基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりです。