2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    8,288名(単体) 50,352名(連結)
  • 平均年齢
    41.8歳(単体)
  • 平均勤続年数
    14.8年(単体)
  • 平均年収
    8,000,906円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

マテリアル

20,709

住宅

13,308

ヘルスケア

11,961

その他

1,366

全社

3,008

合計

50,352

 

(注) 従業員数は就業人員数であり、平均臨時雇用者数は重要性がないため記載していません。

 

(2) 提出会社の状況

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

8,288

41.8

14.8

8,000,906

 

 

セグメントの名称

従業員数(人)

マテリアル

5,280

全社

3,008

合計

8,288

 

(注) 1 従業員数は就業人員数であり、平均臨時雇用者数は重要性がないため記載していません。

2 平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含んでいます。

 

(3) 労働組合の状況

当社及び一部の関係会社には、旭化成グループ労働組合連合会が組織されており、UAゼンセン製造産業部門に加盟しています。

当連結会計年度中における労働組合との交渉事項は、賃金改定、労働協約改定等でありましたが、いずれも円満解決しました。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当事業年度

補足説明

名称

管理職に
占める
女性労働者の割合(%)
(注)1

男性労働者の育児休業
取得率(%)
(注)2

労働者の男女の
賃金の差異(%)(注)1、4

全労働者

正規雇用
労働者

パート・
有期労働者

旭化成及び5事業会社(注)3

6.0

92.8

71.5

76.3

66.4

 

 

旭化成

7.5

95.5

76.8

83.7

67.9

 

 

旭化成メディカル

9.5

100.0

90.7

94.3

68.6

 

 

旭化成ファーマ

9.6

71.4

70.1

73.4

56.6

 

 

旭化成ホームズ

2.7

82.8

58.5

60.9

69.8

 

 

旭化成建材

1.0

100.0

66.7

75.3

52.8

 

 

旭化成エレクトロニクス

3.1

105.9

70.6

80.8

44.5

 

旭化成メディカルMT

0.0

33.0

71.3

72.5

76.0

 

旭化成不動産レジデンス

1.7

94.1

58.2

57.8

113.5

 

旭化成ホームズコンストラクション

0.0

50.0

68.2

69.0

77.2

 

旭化成リフォーム

21.1

120.0

63.6

63.5

71.0

 

旭化成アドバンス

7.5

33.3

65.9

65.8

68.9

 

旭化成電子

0.0

83.3

80.0

82.1

97.9

 

旭化成繊維延岡

0.0

10.0

69.5

68.9

89.3

 

旭化成アミダス

44.4

60.0

88.5

90.0

73.3

除派遣スタッフ

旭化成ファインケム

3.6

62.0

75.8

80.1

62.5

 

 

(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づき算出したものです。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。男性育児休業取得率は、前年産まれた子供に対する育児休業取得等の影響で100%を超える場合があります。

3 旭化成及び5事業会社における男性の育児休業の平均取得日数は40.8日となっています。取得率100%、取得日数の長期化を目指し、管理職を含めた研修等の実施によるマインドセット及び風土改革、男性の育児休業取得促進に関する方針や関連制度等についての社内周知、男性育児休業取得者の事例収集・提供、情報発信に取り組んでいます。

4 労働条件や賃金制度における性別の差異はありません。「正規労働者」の男女賃金差異は、上位等級への登用実績の男女差による影響です。上位等級への登用において男女差が生じていることに対して課題認識をしており、登用基準運用の見直しを行うとともに、KPIを定めて各部門での取組を進め、課題の解消に取り組んでいます。「全労働者」の男女賃金差異は、人員構成の影響を受けています。正規雇用労働者とパート・有期労働者の比率が男女で異なっており、女性の方がパート・有期労働者の水準の影響を受けやすい人員構成となっている結果です。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

[サステナビリティ全般]

当社グループでは、サステナビリティの追求を経営の柱として位置づけており、「サステナビリティ基本方針」として明確にしています。すなわち、当社グループはグループミッションである「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献」するため、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環を追求すること、その実現に最適なガバナンスを追求すること、そして、持続可能な社会への貢献による価値創出/責任ある事業活動/従業員の活躍の促進の3点を実践すること、を方針としています

 

<サステナビリティマネジメント及び旭化成グループのマテリアリティ>

■ ガバナンス

当社では、サステナビリティ全般に関する課題を共有し議論する「サステナビリティ推進委員会」に加え、特に重要なテーマについては、個別の委員会である「リスク・コンプライアンス委員会」「環境安全・品質保証委員会」「DE&I委員会」を設置しています。これらの委員会では、委員長である社長の下、事業部門責任者や関係するスタッフ部門の責任者を委員として議論や方針確認などを行い、グループ全体戦略の立案・推進や事業経営の実行等につなげています。

サステナビリティ推進委員会の実施状況は議論内容とともに取締役会に報告され、取締役会は監督と助言を行っています。取締役会はスキル・マトリックスに記載のとおり、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、人権対応等をはじめとするサステナビリティの課題を経営レベルで監督した経験や専門性を有するメンバーを複数含んでおり、幅広いサステナビリティの課題について、リスクと機会を多面的に認識し、監督できる構成としています。

役員報酬においては、業績連動報酬について、グループ連結の売上高、営業利益、ROIC等の財務指標の達成度とともに、サステナビリティの推進を含む個別に設定する目標の達成度を踏まえた総合的な判断を踏まえて算出することとしています。

サステナビリティマネジメント体制


・サステナビリティ推進委員会の目的、構成メンバー、開催頻度

(目的)

サステナビリティに関する社内外の情報共有、及びこれに基づく活動方針についての審議など

(構成メンバー)

委員長:代表取締役社長

委員:グループ全体をカバーする事業部門とスタッフ部門の役員

オブザーバー:取締役会長、常勤監査役

事務局:サステナビリティ推進部

(開催頻度)

年1回

 

 

 

■ 戦略

当社グループが目指す「持続可能な社会」を実現するための取り組みの重要性は年々高まっています。「持続可能な社会」への課題とは、人と地球環境についての課題であることから、当社グループは、グループビジョンに示している「健康で快適な生活」「環境との共生」の追求が、「持続可能な社会」につながるものと考えています

創業以来の1世紀で培ってきた多様な人財・技術・事業を活用し、事業活動を支える基盤的な活動を強化しながら、2025年度からの中期経営計画に示す「取り組む課題・実現したい姿」(「カーボンニュートラル/循環型社会」「デジタル革新による新しい価値創出」「より快適・安全・安心なくらし」「人生を豊かにする住まい・街」「生き生きとした健康長寿社会」)の実現に向けて、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の各分野において、持続的にイノベーティブな製品・サービス・ビジネスモデルを創出します。

 

■ リスク管理

サステナビリティを追求する上では、多様なリスクを的確に認識して対応するとともに、事業機会を積極的に捉えていくことが必要です。その観点で、「サステナビリティ推進委員会」をはじめとした各委員会で情報共有や議論を行うとともに、中期経営計画の毎年の見直しや年度経営計画の議論の中で適宜リスクと機会の確認を行っています。

特にリスク管理については体系的な管理体制のもと、グループレベルのリスク、事業に固有のリスクの両面からリスク管理を行うこととしており、リスク項目の選定やリスク対応の推進状況などは取締役会でも定期的にモニタリングをしています。サステナビリティに関する事項を含む具体的なリスクに関する認識と管理体制は「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

■ 指標と目標

当社では、経営における重要課題(マテリアリティ)を以下のように定めています。いずれもサステナビリティを追求していく上で重要な要素であり、これらに重点を置いた経営活動を行い、定量的な管理が可能なものは、指標や目標を設定して管理しています。

旭化成グループのマテリアリティ


「中期経営計画2027 ~Trailblaze Together~」では、以下を主な目標としています。

・GHG排出量(Scope1+Scope2): 2035年度 40%以上削減(2013年度比)

・GHG削減貢献量: 2035年度 2.5倍以上(2020年度比)

・ラインポストと高度専門職における女性比率: 2030年度 10.0%

・従業員の活力指標: 従業員エンゲージメント調査における好意的な回答者割合 2027年度 60.0%

また、前提の一つである「安全」については、「休業災害件数」「休業度数率」等により管理し、徹底を図っています。

 

 

[個別重要課題]

(1)気候変動

■ ガバナンス

当社では気候変動に関する取り組みを中心とするグリーントランスフォーメーション(GX)を重要な経営課題と捉え、経営戦略の中核テーマの一つと位置づけて取り組んでいます。気候変動に関する方針や重要事項は取締役会で、また、関連する具体的事項は経営執行の意思決定機関である経営会議で、審議・決定を行っています(中期経営計画、GHG排出量の削減目標、設備投資計画などの決定と実績の進捗確認等)。なお、2025年度からの中期経営計画の策定においては、GXに関する方向性や目標の見直し等について議論を行い、取りまとめた上で、経営会議・取締役会に提案し、審議・決定をしています

当社では、取締役会・経営会議でのこれらの決定を事業レベルで推進するため、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、事業の各執行責任者が気候変動を含むサステナビリティに関する課題の共有と議論を実施しています。委員会の結果は取締役会に報告し、全社での取り組みのあり方等についての議論につなげています。さらにサステナビリティ推進委員会の下部組織である「地球環境対策推進委員会」では、GX推進担当役員を委員長として、事業、製造統括、生産技術、研究・開発の本部長等が環境全般についての課題の共有、議論を実施しています。

また、当社ではGHG削減目標達成に向けて、担当役員のもと、専任のプロジェクト体制(カーボンニュートラル推進プロジェクト)で、シナリオを検討しています。検討においては、社長・経営企画担当役員を中心に方向性を定期的に議論しながら内容の深化を進めています。

なお、当社GHG排出量の9割超を占めるマテリアル領域では、2025年4月にカーボンニュートラル、カーボンフットプリント担当部署をそれぞれ設置しました。カーボンニュートラルに向けた取り組みを事業部門、コーポレートで連携しながら、さらに推進していきます

 

■ 戦略

[分析の前提]

産業革命前からの気温上昇を「+1.5℃」に抑制するための移行リスクのシナリオは、WEO: Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)を、対策が進まずに気温上昇が「+4.0℃」になる物理的リスクのシナリオは、IPCC SSP3-7.0を適用しています。

 

マテリアル、住宅、ヘルスケア各領域における機会とリスクは以下のとおりです。

[機会]

当社はカーボンニュートラルな社会への転換をはじめとするメガトレンドを見据え、事業ポートフォリオ変革を推進しています。2025年度からの中期経営計画では、重点成長領域、戦略的育成領域と位置づけている水素、セパレータ等のエナジー&インフラ、エレクトロニクス、海外住宅、ヘルスケア等に、3年間で約6,700億円の拡大関連投資の意思決定をする計画です。その内数として、2027年度までの3年間で1,000億円規模のGHG削減関連投資を実行する構えとしています

また、気候変動対応を含む環境分野のスタートアップ企業を対象として、2023年度から2027年度の5年間に1億ドルの投資枠を設定しています

当社の事業展開の方向性は、気候変動の緩和及び適応において様々な製品・サービスを事業機会として提供しうると認識しています

具体的には、「+1.5℃シナリオ」では、水素社会到来に向けたアルカリ水電解システムの開発・事業化、将来的なEV普及拡大を踏まえたLIB用セパレータ等の事業拡大など、「+4.0℃」シナリオでは、気象災害の甚大化や気温上昇の中で、強靭かつ高断熱な住宅「ヘーベルハウス™」や高い断熱性能を発揮する断熱材「ネオマフォーム™」の需要拡大などです

 

 

[リスク]

「+1.5℃」シナリオでは、主としてカーボンニュートラル化に向けたカーボンプライシング等の政策による規制が強まるとともに、カーボンニュートラルに適した素材への需要シフトをリスクとして想定しています。さらに、循環型経済への移行加速やカーボンニュートラルな社会に向けた革新技術の登場による市場構造変化もリスクとして想定しています

「+4.0℃」シナリオでは、主として酷暑・大雨・洪水などの物理的リスクを想定しています。特に、風水害の甚大化により、当社の国内外における主要製造拠点の被災とその損害想定額をリスク認識しています

これらのリスクは濃淡がありながらも、今後の気候変動の中でいずれも発現しうるものと捉えており、当社はリスク低減の取り組みを進めていきます

具体的には、「+1.5℃」シナリオでは、エネルギー使用の効率向上、再生可能エネルギーの活用拡大、リサイクル技術の開発・社会実装等を進めていきます。「+4.0℃」シナリオでは、BCP(事業継続計画)の継続的見直しや事前対応強化(在庫水準見直し、複数購買検討等)、住宅建設現場での熱中症対策等を進めていきます。

 

■ リスク管理

当社は気候変動リスクを「グループ重大リスク」の一つとして位置づけるなど、リスクと機会について重点的な管理を行っています

GHG排出量のScope1、Scope2及びScope3(主要なカテゴリー)について、第三者保証を伴う排出量実績を毎年把握するとともに、目標への進捗状況と併せ、カーボンニュートラル推進プロジェクトで共有し、今後の取り組みを議論・確認しています。

また、中期経営計画の策定や毎年の見直しの中でも、GHG排出量削減への取り組み等を確認し、事業戦略や施策につなげています

設備投資においては、インターナルカーボンプライシングを適用して採算性を評価し、投資判断を行っています。なお、インターナルカーボンプライシングは、国際エネルギー機関(IEA)が予測する炭素価格や市場価格、当社でのカーボンニュートラルに関するコスト見通しなどを考慮し、設定しています。

 

■ 指標と目標

当社は、以下の指標を気候変動のリスク・機会に関係するものとして位置づけています。

 

目標と実績

指標の意味

GHG排出量

目標:

2030年

30%以上の削減(国内:46%削減)

Scope1,2の削減状況を示します

2035年

40%以上の削減(国内:60%削減)

 

※いずれも2013年対比

2050年

カーボンニュートラルの達成

実績:

2023年度

317万t-CO2e(38%削減)

GHG排出量/営業利益

実績:

2023年度

0.23万t-CO2e/億円

低下は炭素税リスクの低減を示します

ROIC

(投下資本利益率)

目標:

2027年

6.0%

向上は変化対応力ある高収益事業体への進化を示します

2030年

8.0%以上

実績:

2023年度

5.9%

 

 

その他関連事項

インターナルカーボンプライシング(ICP)

15,000円/t-CO2で投資判断、表彰制度等に活用

役員報酬における気候変動課題の反映

取締役報酬の30%を占める金銭業績連動報酬は、財務目標の達成度とサステナビリティの推進(GHG排出量削減等)を含む非財務目標の達成度の両面を組み合わせて構成

 

* GHG排出量はScope1,2が対象。算定対象ガスは7種類(CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6、NF3)

また、バリューチェーン全体の観点から社会のGHG排出量の削減等に貢献する製品・サービス(環境貢献製品)のGHG削減貢献量を2020年度比で2030年2倍以上、2035年2.5倍以上にするという目標を掲げています。

 

(2) 人的資本・多様性

■ 戦略、指標と目標

当社は1922年に創業し、2022年に100周年を迎えましたが、この間事業ポートフォリオを大きく変革してきました。1960年代には石油化学事業と繊維事業が売上高の大半を占めていましたが、社会課題の解決に向けた事業展開により、現在は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」からなる3領域経営を進めています。大きな変革を遂げながら成長してきましたが、今後も、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の2つのサステナビリティの好循環に向けてさらなる変革が必要です

当社では、従業員に求める心構えとして「A-Spirit」という言葉を掲げています。旭化成の「A」と、アニマルスピリットの「A」をかけたもので、具体的には、野心的な意欲、健全な危機感、迅速果断、進取の気風、という4つのことを強く意識し、チャレンジングな人間、チャレンジングな人財であってほしいと伝えています。また、そのような想いから、社員一人ひとりが挑戦・成長を自ら求めていく「終身成長」と、当社の多様性を活かしコラボレーションを推進する「共創力」を人財戦略の柱としています


A-Spiritの体現に向けて、課題と考えているのは次の3つです。

① 自律的なキャリア意識向上と組織の成長との好循環

A-Spiritや「終身成長」は、他律的、受動的な姿勢では体現できません。実現したい夢や意思、自身で思い描くキャリア、それらを原動力にして様々なテーマにチャレンジすることが重要です。今後事業ポートフォリオ転換を進め、高付加価値事業を創出するためには、自ら成長・挑戦機会を求め自律的に動く人財が従来以上に必要であり、社員と組織双方の成長につなげていくことが大切だと考えています。

② 個とチームの力を引き出すマネジメント力の向上

失敗を恐れず思い切って挑戦し、その挑戦(失敗も含め)から学び、また次の挑戦に繋げていくためには、マネージャーによる支援が不可欠です。当社には高い専門性を持った人財や挑戦心あふれる人財が数多く在籍していますが、それを最大限に活かしきりビジネス上の成果に繋げられるよう、マネジメント力の向上も課題と考えています。

③ 多様な人財の活躍

当社の強みは幅広い技術、多様な事業、多様な市場との接点を通じた無形資産であり、これらのポテンシャルを最大限に引き出し、価値創造に活かしていかなければなりません。そのためにも国籍やジェンダーなど属性における多様化をこれまで以上に推し進めながら、質的に多様な人財がつながり合い、化学反応を起こすことで企業価値向上につなげていきます。

 

 

以上の課題認識に対して、当社では従来、様々な人事施策を講じてきており、2025年4月に発表した中期経営計画では、あらためて心身の健康を重視し、当社の強みである自由闊達なコミュニケーションをベースとしながら、挑戦的風土の強化を進めることが肝要であるとの認識のもと、各種施策を一層推進していきます。

 

主要KPIとしては「従業員エンゲージメント(成長行動指標)」「ラインポスト+高度専門職における女性比率」「従業員エンゲージメント(活力指標の好意的回答者比率)」を掲げており、従来そのうちの「ラインポスト+高度専門職における女性比率」を役員報酬に連動させていましたが、2025年度より「従業員エンゲージメント(活力指標が好意的な状態の回答者の割合)」についても連動させることとしました。

 

(人財育成方針)

 高度専門職制度の拡充によるプロフェッショナル人財の育成強化

 概要:高度専門職制度とは、新事業創出、事業強化へ積極的に関与し、貢献できると期待できる人財に対しふさわしい処遇を行い、社内外に通用する専門性の高い人財を増やしていく仕組みです。各事業の拡大に必要な専門領域を特定し、各専門領域で課長待遇のエキスパートから執行役員待遇のエグゼクティブフェローまで役割定義を定め、その定義に沿って任命を行っています。高度専門職を設置する専門領域は事業方針に合わせて毎年見直しを行い、事業戦略と人財育成方針をリンクさせているほか、就任者のミッションの一つに「自身の後進の育成」を明確に位置づけることで、技術レベルをサステナブルに維持向上させる仕組みとしています。

 KPI:前中計においては高度専門職の人数をKPIとして注視しており、2024年度は目標360名に対し373名と達成することができました今後は、高度専門職の活動が新事業創出及び事業強化にこれまで以上につながるよう、各領域で活動ロードマップの策定や領域内外の連携を積極的に行う等の取り組みを強化していきます。


 

 

エンゲージメント向上 「KSA(活力と成長アセスメント)」

 狙い:個人と組織の状態を可視化しマネジメントのPDCAを回すことで、活力や挑戦・成長行動を高めること。

 概要:毎年1回、全従業員を対象にサーベイを実施し、3指標「上司部下関係・職場環境」「活力」「成長につながる行動」の組織毎の結果をラインマネージャーにフィードバックしています。各組織が当事者意識を持ち課題や目指したい状態、今後の取り組みについて話し合う「職場対話」を推進し、職場づくりを学ぶ研修も展開してきました。これまでの取り組みから、職場対話を効果的にするための環境整備も必要なケースがあることが分かってきており、今後は、個々の職場の状態に応じて対話にとどまらないアプローチも検討していきます

 KPI:モニタリング指標に定める「成長につながる行動」は2024年度3.73まで向上しました(2023年度3.72、2022年度3.71、2021年度3.69)。上司向け研修の拡大(延べ832名受講)により、2020年の導入時から推奨してきた「職場対話実施率」は2024年度73%と順調に推移しています。今後は、「活力」指標が好意的な状態の回答者(5段階中3.5以上)の割合を高めていくことをKPIに加え、2025年度以降、役員報酬にも連動させます

 


 


 

DE&I、ジェンダーバランスの実現

 狙い:急速に変化する事業環境に対応し継続的に新たな価値を生み出していくためには、人財の多様性を活かし共にビジネスを創り出していく「共創力」を高めることが不可欠であると考え、当社ではDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を経営課題の1つとして位置づけています。「共創力」を発揮していくためには、多様性を“拡げる”“つなげる”という2つの視点が重要であり、多様な技術・事業・人財を有機的につなげることで、当社ならではの価値が発揮できると考えています。

 概要・KPI:ジェンダーバランスの実現に向けて、2022年度からKPIとして、管理職の中でも真に指導的役割を果たすポジション(ラインポスト及び高度専門職)の女性比率を2030年度までに10%以上にするという目標を掲げ、その比率を役員報酬にも連動させています(2024年度目標:5.0%以上、実績:4.9%)。

上記を達成するとともに、女性リーダーを継続的に輩出できる仕組みとして、候補者母集団を形成するための様々な取り組みを実施しています。2013年より継続的に実施しているメンタープログラムでは累計165名の新任女性管理職が参加し、直属の上司ではない斜めの関係の上位職が、各自のキャリア形成や課題解決に向けて主体的に考える機会を提供し成長を促すとともに、その後の自己成長に対する意欲を高めています

また、ラインポストに就く女性管理職のさらなる成長意欲の喚起や視座向上を目的に、2023年度に女性の社外取締役(2名)、2024年度には女性の執行役員(2名)と女性管理職とのラウンドテーブルを実施しました。女性役員が自らのキャリアや経験談、女性管理職への期待を語るとともに、女性管理職同士が意見交換を行うことで経営に必要な視点を養い、参加者の挑戦意欲を高め、意識と行動変革を促す機会となっています。

ジェンダーバランスの実現を目指し、多様な働き方やキャリア形成を支援する施策としては、女性の管理職や高度専門職、育児休業を取得し家事・育児にも積極的に携わる男性社員など、社内で活躍する多様な人財を紹介する「ロールパーツモデルチャンネル」をイントラネットで展開しています。「自身の周囲にロールモデルが少ない」という社員の意見に対応して、様々なロールモデルとなる社員を紹介することで女性社員のキャリアアップへの挑戦意欲を高め、仕事と家庭を両立させるなど中長期的なキャリア形成のイメージを持ってもらうことを狙いとしています。

また、一人ひとりの多様性を活かし組織力に繋げていくためには、各自に内在するアンコンシャスバイアスを知り、コントロールする方法を習得することが重要であるとの考えから、2023年度に役員及び部長職全員に対してアンコンシャスバイアス研修を実施しました。2024年度には課長職全員にも展開し、職場の心理的安全性を高め、多様な社員の活躍を支援できる管理職の育成を図っています。

指導的立場に就く女性社員を増やしていくための上記の全社施策と並行して、各領域・事業会社においてバイネームでの女性人事計画を立て、実際の登用に繋がる取り組みを実施しています。また、2023年度に社長を委員長とするDE&I委員会を設置し、グループ全体における進捗状況の確認や課題改善に向けて、定期的にモニタリング及び意見交換を行っています。これらの様々な取り組みにより、1994年に3名だった女性管理職は2024年度335名に増加しています。また女性の執行役員は2名、取締役は2名、監査役は1名となっています(2025年6月現在)。

 


 

 

障がい者については特例子会社「旭化成アビリティ」での雇用を中心に、継続的に法定雇用率の達成を維持しています。2024年度の障がい者の法定雇用率2.5%のところ、グループ全体での年間雇用率は2.66%でした。直近の2025年3月末時点では2.61%(720名)となっており、2026年7月法定雇用率2.7%への引き上げに対しても備えを進めています。


 

キャリア採用に関しては、グループの強みである人財の多様性をさらに強化するために、多様な経験やバックグラウンドを有する人財の中途採用を積極的に行ってきました。また、管理職への登用についても同様の考え方で、2024年度はグループ国内正社員における管理職の16.0%をキャリア採用者が占めています。

当社グループにおける海外従業員比率は現在4割強を占めています。海外拠点の主要なポジションへの外国籍及び現地採用の人財登用を拡大し、優秀な人財は各事業に留めることなくグループ全体に貢献する人財として育成を行っています。その結果、グループ経営への参画も進み、現在4名の外国人が旭化成株式会社の執行役員に就任しています

女性・外国人・キャリア入社者の中核人材登用に関してはコーポレート・ガバナンスに関する報告書にも記載しているほか、障がい者雇用に関する取り組みや各種データ類はサステナビリティレポートを参照ください。

https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/

 

終身成長とシニア人財の活躍

 狙い:「終身成長」というコンセプトのもと、シニア人財がさらに専門性を磨き、環境に合わせて挑戦し変化し続けることができるよう支援し、シニア人財の持てる力をより一層引き出すこと

 概要:シニア人財のさらなる活躍の支援の施策として、2023年度から定年を65歳に引き上げました。60歳到達前の社員が自分のwill/can/mustを考えて、それに沿って職務をマッチングする、という仕組みで運用しています。50歳、55歳到達前の社員(2024年度300名程度)は、社内キャリアコンサルタント及び上司との面談を組み入れた節目研修を通じて、キャリアについて深耕する機会を持つことで、マッチングの質を高めていきます。さらに、60歳超の社員及びその上司への実態ヒアリングを行っており、施策の充実に反映していく予定です。

 

マネジメント力強化並びに次世代経営人財の育成

 狙い:マネジメント層の成長、経営層候補の充実を旭化成グループ全体の成長につなげること

 概要:組織マネジメントで重要度の高い新任部長向けのプログラムを継続的に充実させています。新任部長一人ひとりに半年間のコーチングと集合研修で受講者間でのグループコーチングの機会を設けています。当プログラムでは、KSAを用いた自組織の課題分析と自己課題の整理を通じて、改善に向けたアクションプランの実行を支援しています。本プログラム受講者の上司の93%が部下である部長の行動や意識の変化を感じており、柔軟性、他者理解といったヒューマンスキル、組織を牽引しようという意識が向上したと回答しています。

また、次世代経営人財育成プログラムとして、各事業領域や事業会社のリーダー層からアセスメントや経営層との対話により選抜されたメンバーをグループ役員*1)候補として毎年プールし、エグゼクティブコーチングや異業種交流研修により個々の強みの発揮を支援しています。2024年度の活動ではプール人財の候補者拡大を目的に40歳前後を対象とした新たなプログラムを導入し、より若い層の育成を通じて人財プールの活性化に向けた取り組みを強化しています。

 KPI:次世代経営人財育成の取り組みの結果、2024年度はグループ役員35ポジションに対して98名(事業部長41名・部長層57名)をプール人財としており、「グループ役員の後継準備率」は280%に達しています。また、2018年度以降、当プール人財から継続的にグループ役員が任命されており、現在のグループ役員35名の過半数が本プログラムから選出されています

*1) 執行役員の中から旭化成グループ全体の企業価値向上に責任と権限を有する者として、旭化成の取締役会決議に基づきグループ役員を任命しており、具体的には旭化成株式会社の上席執行役員以上及びそれに相応する事業会社の執行役員がこれにあたります

 

(社内環境整備方針)

経営戦略と人財戦略を連動させる仕組み

人事部門トップが経営会議メンバーであるほか、社長と人事担当役員・人事部長によるミーティングを定期的に実施し、経営戦略と人財戦略が常に連動する仕組みにしています。また各事業部門トップと人事担当役員・人事部長の定期ミーティングも実施し、事業ポートフォリオ転換を含めた事業課題を人事課題に落とし込み、施策に反映させています。さらには、人事施策が各事業現場にてうまく活用されていくため、HRBP(Human Resource Business Partner)が各事業部門のトップと日常的に議論を行い、人事施策の目的を共有し、企画段階から具体的な活用場面を想定した検討を行うようにしています

また、経営戦略と人財戦略の連動をさらに進めるため、人事処遇制度を見直すこととし、制度改定に向けた準備を進めています。従来以上に挑戦・成長を評価し、力のある人を早期に登用する、また多様な人財の活躍を促進する仕組みとすることで、「A-Spirit」の体現に繋げていく考えです

 

自律的なキャリア形成、「CLAP」の活用、みんなで学ぶ「新卒学部」

 狙い:従業員一人ひとりの自律的なキャリア形成と成長の実現を通し、組織活性化や成果につなげること

 概要:1万超の社内外コンテンツを提供する学習プラットフォームCLAP(Co-Learning Adventure Place)を活用し、全従業員がいつでも学べるような環境を整備し、一人ひとりのキャリア自律を支援しています。その一例として、若手人財が主体的に学び続けるための取り組みとして、「みんなで学ぶ」環境を作るラーニングコミュニティを展開しています。2023年度からは新入社員を対象とした「新卒学部」という同期とともに学び合う9か月のコミュニティ活動を導入したことで、一人当たりのeラーニング学習時間は前年度新入社員の3.5倍に増え、キャリア不安の解消に繋がる結果となりました。この取り組みは、『日本の人事部』が主催する「HRアワード2024(後援:厚生労働省)」の企業人事部門最優秀賞を受賞しました。今後も継続的に学び続ける従業員の増加に向けて、ラーニングコミュニティを取り入れた学び方の変革に継続的に着手していきます。

 KPI:2024年度は、CLAPアカウント所有者の約9割(20,800名程度)がCLAPにアクセスし、約8割(19,500名程度)が一つ以上の学習コンテンツを終了しています。外部コンテンツの提供に加えて、2024年度は200超の社内カリキュラムも提供し、キャリアの可能性を広げる学びや専門能力を習得できる環境を整えています。今後も社員の自律的キャリア形成の実現に向けて、社内知見を活かしたカリキュラム提供に向けた活動を推進していきます

 

人財の可視化、事業領域を超えた人事異動、公募人事制度

 狙い:多様な人財を活かしきること

 概要:幅広い技術、多様な事業、多様な市場との接点といった当社グループの強みを活かすべく、以前より事業領域を越えた人事異動を積極的に行っています。一例としては、当社の住宅事業は近年海外に進出しましたが、この事業展開にあたっては、グループ全体の人財・ノウハウなどの経営基盤を活用することで、スピーディに展開することができました。海外事業の拡大によって業績も伸び、キャッシュ創出力も高めています。2022年度からはタレントマネジメントシステムも導入し、人財の可視化を進め、グループ全体での人財の活用力を一層高めていきます。

また、公募人事制度については2003年度から運用しており、累計で約600名の人財が自らの意思で部署を異動し、新たな環境に挑戦しています

 

人事部門の組織ケーパビリティの向上

 狙い:人的資本経営を実践するための実働部隊である人事部門の組織能力を強化すること。

 概要:人事部門に今後必要となる能力について改めて定義づけを行い、その中でもデータ利活用スキルとキャリアコンサルティング能力については特に力を入れて向上に努めています。データ利活用スキルについては、人事部門全体でデータドリブンな働きができることを目指し、大阪大学開本教授監修のもと独自のプログラムを内製しました。組織行動論等の人・組織に関する諸理論、データ収集や統計分析に関するノウハウを人事部門の社員の多くが習得しています。また、国家資格キャリアコンサルタントの資格取得も奨励しており、2025年4月時点で40名程度が資格を取得しています

 

人財戦略及び具体策については、統合報告書にも記載がありますので、あわせて参照ください。

また、人事関連の諸データに関しては当社サステナビリティレポートにも掲載しています。

https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/esg_data/

 

(3) その他

① サーキュラーエコノミー

社会がカーボンニュートラルを実現していく上でも重要な課題がサーキュラーエコノミーの実現です。当社グループでは、限りある資源を持続可能なものとして活用していくための取り組みを様々な切り口から進めています。

例えば、当社グループの住宅事業では、サーキュラーエコノミーの実現に資する長寿命な住宅(商品・サービス)を提供しています。LONGLIFEを体現するために、住宅のライフサイクルを考えた仕様開発、邸別設計・施工、60年無料点検に代表されるアフターサービス、ストックの高付加価値化、改修や相続時のコンサルティング等で全体システムを構築しており、当システムをお客様及びパートナー企業とともに機能させることで、世代を超えた住宅の循環利用を可能としています。本件がサーキュラーエコノミーへの移行に大きく寄与するものとして、旭化成ホームズ㈱は、2024年10月に一般社団法人産業環境管理協会主催の「令和6年度 資源循環技術・システム表彰」において、経済産業大臣賞を受賞しました。

また、基礎化学品である苛性ソーダと塩素を製造するプロセスを販売するイオン交換膜法食塩電解事業においては、プロセスの部材である電解セルについて、顧客での予備品保有を不要とする電解セルレンタルサービスの提供に取り組んでいます。これは資源利用効率の向上と貴金属などの有効活用に繋がる取り組みです。当事業では、顧客の電解プロセス運転状況のモニタリングも進めており、従来のモノ売りからソリューション型事業への転換を進めるなど、サーキュラーエコノミーに適合した事業への展開を図っています。

外部との協業の点では、当社は2025年1月に国立研究開発法人産業技術総合研究所、AIST Solutions株式会社と「旭化成-産総研 サステナブルポリマー連携研究ラボ」を設立しました。同ラボは、「サステナブルポリマーの提供を可能にする社会システムの実現」を目標に、リサイクルシステムの社会実装及びリサイクルしやすい設計を実現する技術・システムの提供を目指します。また、当社は消費者も含めた社会全体での資源循環の取り組みの視点で、プラスチックの循環を可視化するプラットフォーム「BLUE Plastics(Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy、ブルー・プラスチックス)」に取り組んでおり、幅広い業種の企業や団体と議論しながら、サーキュラーエコノミーに関する活動を進めています。

当社グループでは複数の製品について、持続可能な製品の国際的な認証制度の一つであるISCC PLUS認証を取得しています。当認証は、製品がバイオマス原料や再生原料等を使用して製造されていることを、サプライチェーンでのマスバランス方式管理の観点も含め、第三者機関が確認・認証します。今後、当社グループは、顧客や社会からの期待に応じ、当認証取得製品を提供していきます。なお、プラスチックや循環経済に関する諸課題への対応は、同業他社を含むバリューチェーンの各社での共通的なテーマでもあることから、当社グループはCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、循環経済パートナーシップ(J4CE)、サーキュラーパートナーズ(CPs)、一般社団法人日本化学工業協会、日本プラスチック工業連盟等のアライアンスや業界団体の活動にも参画し、課題への取り組みを他社と共に推進しています。

 

② 責任ある事業活動

■ 環境安全・品質保証活動

当社グループは、あらゆる事業活動において健康、保安防災、労働安全衛生、品質保証及び環境保全を経営の最重要課題と認識し、開発から廃棄に至る製品ライフサイクルのすべてにわたり配慮する環境安全・品質保証活動を実施しています。ここ数年では、当社のベンベルグ工場での火災など重大な事故が発生していますが、経営層・従業員一同、危機感を持って環境安全活動に取り組んでいます。また、全員参加の品質経営を実現するため、品質担当役員による経営層向け品質経営セミナーの実施、品質担当役員が各事業所を訪問し、現場最前線で働くメンバーと双方向でコミュニケーションをするタウンホールミーティング、及び国内海外各拠点における品質教育(グループ全員が品質リスクを理解し、日々の業務を行うために必要な教育)の実施など、様々な施策を行っています。環境安全・品質保証に関するリスクマネジメントの詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (3) 当社グループ全体に係るリスク」もご参照ください。

 

 

■ コンプライアンス

当社グループは、事業・業務に関する法令・諸規則や社内ルールの遵守を徹底し、グループミッションに基づくグループバリュー(共通の価値観)である「誠実な行動」を実践するため、「グループ行動規範」を定め、浸透を図っています。具体的な施策として、日常の業務で発生するような事例をもとに職場で討議するとともに、グループ行動規範と照らし合わせ、従業員がとるべき行動に関する理解を深める活動(Cs Talk)を継続しています。また、必要に応じてeラーニングを活用し、従業員教育を実施しています。さらに、従業員のコンプライアンスに関する意識調査を隔年で実施しており、全体の状況把握に加え、職場ごとに結果を報告し職場における活動に反映しています。経営層においては、社長を委員長としたリスク・コンプライアンス委員会を通じ、当社グループで発生した事案の共有、対応策の水平展開を行い、注意喚起や再発防止の徹底を図っています。

 

■ 人権の尊重

当社グループは持続可能な社会の実現に向け、自社だけではなくバリューチェーン全体における様々な人権課題に対して主体的に責任を果たすことが、事業に係る人びとの人権を守るのみならず、当社グループが社会からの信頼を向上させ、ひいては企業価値の向上につながると考え、人権尊重を重要課題として捉えています。

当社グループは国際人権章典(世界人権宣言並びに国際人権規約)、ILO(国際労働機関)の「労働における基本的原則および権利に関する宣言」、国連グローバル・コンパクトの10原則等の人権に関する国際規範を支持するとともに、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権尊重の取り組みを推進します。

当社グループでは、従来、人権に関するグループの考え方を「旭化成グループ行動規範」にて明示し、従業員研修等を通じてグループ内浸透を図っておりましたが、人権尊重の重要性を踏まえ、考え方や実践事項等を整理した「旭化成グループ人権方針」を2022年に取締役会決定により制定しました。また、同方針に基づく取り組みを推進するため、人権尊重に関する情報共有や、取り組みに関する議論・方向付けを行う場として、社長を委員長とする人権専門委員会を設置し、運営しています。2024年度には第3回委員会を開催し、世の中の動向、当社グループにおける人権尊重の取り組み状況や計画等について、共有と議論を行いました。

当社グループは「旭化成グループ人権方針」のグループ内での普及啓発を継続するとともに、当社の事業活動に関する人権への負の影響を排除するため、「人権リスク発現の予防」と「発現したリスクへの対処」の両面において取り組みを進めています。リスク管理については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (3) 当社グループ全体に係るリスク」もご参照ください。

 

■ ステークホルダーとの対話

当社グループは、お客様、株主・投資家の皆様、お取引先、地域の方々、国内外の一般市民、従業員など、多様なステークホルダーとの信頼関係の上に成り立っています。それぞれのご意見や期待をしっかりと受け止めて事業活動に反映していけるよう、様々なコミュニケーションの機会を設けています。

特に、国内外の株主・投資家の皆様に、当社の目指す姿や経営戦略、ガバナンス等の持続的な企業価値向上に向けた道筋をご理解いただくため、事業説明会での情報開示や、工場・事業所の見学機会を積極的に設けています。2024年度は、経営説明会、決算説明会(年4回)に加え、セパレータ事業のカナダ工場建設投資やCalliditas買収など、成長投資に関する説明会の他、人財・R&D・知財戦略など、当社グループの無形資産戦略に関する説明会も開催しました。また、トップマネジメントは説明会への登壇や面談、スモールミーティング等を通じ、中長期的な企業価値向上に向けたコミュニケーションを積極的に推進しています。資本効率の更なる向上など、対話を通じて示された株式市場の要望も踏まえながら、事業ポートフォリオ変革の加速や各種KPIの向上を図っています。