2023年9月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。但し、全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループは、以下(1)(2)に記載のリスクマネジメント体制・方法により、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループ全体のリスクマネジメントのため、リスクマネジメントの最終責任者である社長がリスクマネジメント担当役員を任命するとともに、リスクマネジメント統括部署としてリスク管理部を設置しています。

リスクマネジメント統括部署は、グループ企業のリスク管理部署と連携して、リスク予兆の把握及び緊急時のリスクマネジメントを実施しています。下記のリスクマネジメント方法により、月次でリスク予兆を全社から把握した上で経営会議に報告していることに加え、内部統制・リスク管理委員会(委員長:社長)を 年4回開催し、総括と年度方針・計画を年1回以上、経営会議に付議した上で取締役会に報告しています。

 

(2)当社グループのリスクマネジメント方法

① リスク把握とアセスメント

リスクマネジメント統括部署は、当社グループの事業に係るリスクを継続的に調査・把握しています。把握したリスクは発生確率及び影響規模に応じて評価のうえ、当該評価により優先度が高いとされたリスクについては重点的に事前対策を講じています。

 

② リスクモニタリングと対策

リスクマネジメント統括部署は、リスク顕在化の早期把握及び未然防止のために、月次でリスクの状況及び予兆を全社から収集した上で、適切なリスク対応をしています。また、リスクマネジメントの進捗管理のために、リスクモニタリングの結果をとりまとめ、経営会議に月次報告を行っています。

 

③ 顕在化したリスクへの対応

リスクが顕在化した場合、リスクマネジメント統括部署は、影響の最小化のため適切な対応を検討し実施します。規則に定めた危機警戒時又は危機発生時に該当するときは、速やかにリスクマネジメント担当役員又は社長を筆頭とする危機管理の体制に移行し、迅速なリスクへの対応を行います。

 

 

(3)特に重要なリスク

① 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、個人情報やお客様の機密情報等を多く取扱っており、情報管理やセキュリティ管理は、企業の信頼に直結する重要な事項であります。そのため、コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の外部からの不正アクセス、自然災害の発生、リモートワークの増加、海外拠点の整備に伴う情報管理の不徹底等により、情報漏洩、紛失、破壊等の事態が発生した場合には、お客様等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜等につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、居室への入退室管理、情報・ネットワーク機器のセキュリティ対策、メール送信時の運用ルール整備、社員等を対象とした定期的な教育、情報漏洩を想定した事故対応訓練、海外営業所での現地個別対策等の情報管理の強化・徹底を図っております。また、リモートワークの増加に伴い、これに対応した情報取り扱い方法の規則化を行っています。

 

② プロジェクトに関するリスク

当社グループのシンクタンク・コンサルティングサービスの主な業務、ITサービスにおけるシステム開発は、仕様や業務内容がお客様の要求に基づき定められ、プロジェクト単位で遂行されております。契約ごとの個別性が高く、お客様要望の高度化、案件の複雑化や完成までの事業環境の変化等によって、受注時に採算性が見込まれる案件であっても、作業工数の増加により採算が確保できない可能性があります。特に、新技術を活用した案件や新規のお客様・業務分野の受注においては、受注時の想定以上に作業が発生することがあります。また、管理が不十分で品質が低下した場合あるいは予想外の事態の発生により採算が悪化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、入口管理においてプロジェクトに対する全社共通の基準に基づくリスクチェックを実施しています。遂行管理においては、注視すべきプロジェクトに対するモニタリング、採算性等に係る自動アラートの仕組みやプロジェクトリーダーによる日々の管理に加えて、ラインマネージャーによるチェックを実施しています。

 

③ 官公庁との取引に関するリスク

当連結会計年度の官公庁向け売上高は、連結売上高の30.9%を占めております。

官公庁においては、DX推進を見据えた成長戦略に基づく積極的な財政出動や、より複雑で高度な事業推進が予想されます。

当社グループにとって、実績が豊富で強みが発揮できる領域に政策の重点がシフトすることは追い風になりますが、複雑・高度化する事業内容への対応遅れや、競合他社との受注競争激化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、官公庁との取引においては、競争阻害行為の禁止や会計手続の透明性がより一層求められるようになっております。この点において不適切な対応等があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、各種情報の収集と結果の要因分析による提案段階での改善活動、より一層のお客様価値を提供できるよう遂行段階並びに成果品質の改善活動を継続的に取り組んでいます。

 

④ 新事業に関するリスク

当社グループは、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、VCP(価値創造プロセス)経営を積極的に進め、研究・提言から社会実装までを視野に入れた展開を行っております。こうした展開に伴い、当社グループでは新事業や、業務や資本の提携を必要とする事業も増えてくると見込んでおります。しかしながら、予想以上の事業環境の変化、事業パートナーの状況変化、サービス利用者の不評やクレームの増大、システム障害等によるサービスの停止等が生じた場合には、当該事業の中断や利用者等からの損害賠償請求、当社グループの信用失墜が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、AI等を活用した事業では、AI等の活用で求められる公平性や透明性、安全性及びそれらの説明責任への対応が不十分だった場合、同様に業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、現場作業を行う新事業では、労働安全衛生に十分注意して業務を行っておりますが、管理不十分により事故が発生する可能性があります。

当該リスクに対応するため、このような事業においては、事業予測、投資の収益性、総合的なリスク等を社内審査プロセスに則り確認したうえで、実施の判断を行っております。

また、「新事業創造プロセス基準」及び「AI事業推進の指針」等の関連規則を定め、これに基づく事業開発とサービス運用を行っております。

 

⑤ 人材に関するリスク

当社グループが、社会やお客様の多様なニーズに応え、持続的な成長を遂げるには、高度な専門性、独自性、 創造性を持つ人材を確保・育成し、活躍の機会を提供することが極めて重要であります。

しかしながら、採用難や労働市場全体の流動性の高まり、あるいは当社グループの就業環境の悪化等により、高い専門性を持つ人材を十分に確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは、採用・育成の充実、ダイバーシティの推進、育児支援制度をはじめとする福利厚生の充実、勤務時間を含む就業環境の整備、ハラスメント防止等の多面的な人材施策により、ゆとりと活力を創造する働きやすくかつ働きがいのある環境の確保に努めております。

また、海外へ滞在して業務を行う場合は、安全対策の強化、情報収集の複線化、渡航者・駐在者への注意喚起等の対策に取り組んでおります。

 

(4)重要なリスク

① グループガバナンスに関するリスク

当社は、三菱総研DCS株式会社(DCS)をはじめ子会社、関連会社を有しております。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備しておりますが、子会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり、グループ内部統制を整備するとともに、中期経営計画における重要課題として、人材育成も含めた連結経営高度化・組織風土改革などのガバナンス向上を位置づけ、人事交流やコンプライアンス意識啓発策の相互連携など、当社グループ間の連携を意識した組織・風土改革を推進してまいります。

 

(子会社DCSと同社非支配株主(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG))との関係)

当社グループのITサービスセグメントの中核を担うDCSの株主構成は、当連結会計年度末において、当社80.0%、MUFG 20.0%となっております。MUFGの子会社である株式会社三菱UFJ銀行は、DCSにとって主要かつ重要な取引先であります。

当連結会計年度におけるDCSと同行(同行の情報システム子会社である三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社を含む)との取引は、DCS売上高の約2割を占めております。DCSは同行の基幹系システムの開発・運用・保守関連業務を長年にわたって受託してきた実績を有し、今後とも良好な業務取引関係が維持されると見込んでおります。

当連結会計年度末において、DCSの取締役及び監査役11名のうち、当社の役職員を兼ねる者は3名、当社出身者は1名、株式会社三菱UFJ銀行の役職員を兼ねる者は1名、同行出身者は2名であります。

当社の役職員を兼ねる者を派遣することにより一層のグループガバナンスの向上に努めております。あわせて、今後とも社内外から事業の専門知識や経営経験を有する有能かつ適切な人材を登用すべく取り組んでまいります。

 

② 知的財産権に関するリスク

当社グループは、事業競争力確保の観点から、知的財産を重要な経営資源と捉え、その保護に積極的に取り組むとともに、第三者の知的財産権を尊重し侵害することがないよう努めております。しかしながら、他人の知的財産権その他の権利を侵害する結果となった場合には、損害賠償請求や当社グループの信用失墜等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、著作権に係る社内規則を整備しているほか、毎年、各種教育研修を実施しています。また、納入前の成果品チェック等を実施しています。

 

③ 生成AIの利活用に関するリスク

生成AIは、AI によりWEB 検索結果の要約や文書作成等ができる自然言語処理ツールであり、その特性を見極めつつ、適切に活用することで当社の価値を高めることが期待されます。しかしながら、現段階では間違った結果となることも多く、また秘密情報の入力による情報漏洩、出力結果の著作権侵害等、利用方法を誤ると当社の調査結果の信頼性を毀損する可能性があります。一方で、生成AIが普及することにより、当社グループが受託して行っている調査業務や分析業務をお客様ご自身で行えるようになると、当社の事業機会や競争力が喪失する可能性もあります。

当該リスクに対応するため、「生成AIガイドライン」を定め、これに基づく生成AIの効果的な利用を推進しております。また、最新の生成AIの普及状況や技術の進展を注視し、生成AIを最大限に活用するプロジェクトをお客様にご提案・ご提供することで、競争優位を維持するよう努めております。

 

④ 外注に関するリスク

当社グループは、外部専門家の知識・ノウハウの活用あるいは生産性向上のため、業務の一部を外部委託しております。

ITサービスセグメントのシステム開発でプログラム作成業務を委託しているほか、シンクタンク・コンサルティングサービスセグメントでは、各種調査・データ入力業務等を委託しております。

しかしながら、委託先において予想外の事態が発生した場合には、品質保持のためのコスト増、納期遅れに伴うお客様への損害賠償等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは、委託先に対して品質水準及び管理体制に関して定期的な審査を実施し、必要に応じて改善指導を行う等、優良な委託先の安定的確保に努めております。

 

⑤ 情報サービス産業に関するリスク

a. 情報サービス産業における事業環境

当社グループが属する情報サービス産業は、事業競争力の強化へ向けたIT投資等の拡大が期待される領域への異業種参入や、ITリソースの調達の低コスト化が一段と進んでおり、業界内の価格競争や熾烈な技術開発競争が一層加速しております。このため、価格競争の激化、品質の低下や技術革新への対応の遅れ等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用、BPOまで一貫したサービスを提供できる体制を整え、企画提案力並びに品質・生産性のさらなる向上にも取り組んでおります。

 

b. 情報処理サービス

当社グループが提供する情報処理サービスは、データセンターに係る運用機器及びシステム等への更新投資及び新規投資が必要であり、投資額は情報処理サービス契約により複数年にわたって回収することになります。このため、予想以上の経済環境の変化、お客様の経営状況の変化等が生じた場合には投資額の回収ができず、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、投資実施にあたってはお客様ニーズ、事業予測、投資の収益性等を総合的に検討したうえで決定しております。

 

⑥ 金融業界との取引に関するリスク

当社グループの当連結会計年度の金融業向け売上高は、連結売上高の45.6%を占めております。

金融業向け業務は、法規制・制度対応に関連した情報化投資、情報セキュリティ投資が活発化していることに加え、内部データの解析による商品開発やリスクマネジメント等に関連するコンサルティング業務を継続的に受注しており、今後とも金融業界との取引は順調に推移するものと見込んでおります。しかしながら、事業環境の急変、お客様の経営状況の変化や情報システム投資方針の変更が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、グループの強みを活かした領域への事業展開を強化し、提供価値の向上とともに、成長性・収益性を高めるべく、中期経営計画に沿った事業の持続的な成長を目指してまいります。

 

⑦ 大規模な災害等に関するリスク

新型コロナウイルスをはじめとする大規模な感染症や地震等の大規模な災害によって、従業員の出社が制限されるなど、企業活動に影響を及ぼす可能性があります。

また、情報処理サービスは、システムの安定稼動が重要な要素であり、天災、事故、人的ミス等何らかの要因によるシステムの不具合・故障等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、前掲のリスクマネジメント体制及び手順によりリスクへの対応を迅速に行うことにより、影響の最小化のため適切な対応を検討し実施します。

 

 

⑧ その他想定されるリスク

a. 退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上設定した前提条件に基づいて算出されており、年金資産の時価の下落、金利環境の変動等により、退職給付費用が増加した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

b. 業績の季節変動

当社グループでは、主要な取引先である官公庁の会計年度の関係により、例年第3四半期に受注し翌第2四半期に納期を迎えるプロジェクトが多いことから、第1、第2四半期の業績が他の四半期と比較して良く、特に第2四半期は完了を前に業務遂行のピークを迎えることもあり、会計年度を通して最も営業利益が大きくなる傾向があります。また、売上高の小さい第3、第4四半期においては、人件費や販売費及び一般管理費等の経費は毎四半期ほぼ均等に発生するため、営業赤字となることがあります。

なお、最近2年間の当社グループの四半期毎の業績の概要は以下のとおりであります。

 

 

2022年9月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

年度計

売上高

(百万円)

25,358

42,907

23,407

24,947

116,620

営業利益又は営業損失(△)

(百万円)

1,834

7,480

21

△170

9,165

 

 

2023年9月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

年度計

売上高

(百万円)

27,459

45,865

23,553

25,247

122,126

営業利益又は営業損失(△)

(百万円)

2,358

6,933

△905

302

8,688

 

 

配当政策

3【配当政策】

(1)剰余金の配当等の決定に関する方針

 当社は、お客様と社会の発展への貢献、価値創造を通じて持続的に成長し、企業価値の向上を図ることを目指しております。株主の皆様への利益還元に当たりましては、継続的な安定配当を基本に、業績や将来の資金需要、財務健全性のバランス等も総合的に勘案しつつ決定しています。連結配当性向は40%を目安にしてまいります。内部留保資金につきましては、持続的な成長を実現するために、人材投資、研究・提言投資、将来の事業展開に必要な事業投資や設備投資、M&A等の戦略的投資に活用してまいります。

 自己株式の取得については、追加的株主還元として資本構成や市場環境、成長投資の機会等を考慮し、実施の是非を判断していきます。

 当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めており、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。また、剰余金の配当決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 

(2)剰余金の配当の状況

 上記の方針に基づき、当事業年度の配当につきましては、1株当たり150円(うち中間配当75円)といたしました。

 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は次のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

1株当たり配当額

2023年4月27日

1,203百万円

75円

取締役会決議

2023年12月19日

1,203百万円

75円

定時株主総会決議