人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数5,028名(単体) 15,042名(連結)
-
平均年齢43.0歳(単体)
-
平均勤続年数21.0年(単体)
-
平均年収6,920,699円(単体)
-
平均年収の
対前年増減率2.1%(単体)
従業員の状況
人材戦略に関する基本方針等
(1) 【人材戦略に関する基本方針等】
① 人的資本戦略
当社グループの人的資本戦略については、前述の「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (9) 人的資本戦略」をご参照ください。
② 従業員の給与の決定に関する方針
当社の賃金制度は、社員が安定した生活基盤のもとで長期的に成長し、価値創造力を発揮できるよう設計しています。
基本給は「職級(役割や能力による区分)」と「号給(習熟度に応じた段階)」に基づいて決定し、原則として、年1回昇給する仕組みとしています。昇給に際しては、各人の職務遂行能力や情意面(仕事への取組み姿勢など)を評価し、その結果を反映しています。
また、基本給に加えて、役職、保有資格、交替勤務、生活支援などの要素に応じた各種手当を支給しています。特に当社は連続操業が必要な事業であるため、夜勤に従事する社員に対しては、法令を上回る水準の深夜勤務手当を支給しています。
賞与については、当該年度の会社業績を踏まえて検討し、労使交渉を経て支給額を決定しています。支給は年2回(夏季・冬季)で、賞与の一部は、各人の業績への貢献度に応じて増減したうえで支給しています。
当社は、こうした賃金制度の運用を通じて、社員の挑戦を後押しし、企業価値の向上に取り組んでいきます。
(2) 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
2026年3月31日現在
(注) 従業員数は就業人員であり、また臨時従業員の総数については従業員数の100分の10未満のため記載を省略しています。
(2) 提出会社の状況
2026年3月31日現在
(注)1.従業員数は就業人員です。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
(3) 労働組合の状況
当社グループは、当社をはじめ大半の連結子会社において労働組合が結成されています。また、労働組合の有無にかかわらず労使関係は円満で、特記するような事項はありません。
なお、当社の主な労働組合は、「日本製紙労働組合」と称し、日本紙パルプ紙加工産業労働組合連合会に加盟しています。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)による公表を行っている会社のみ記載しています。
2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。なお、「-」は対象となる男性労働者がいないため算出できないことを示しています。
4.労働者の男女の賃金の差異は、主に男性労働者が従事する交替勤務に対する手当支給の有無によるものです。
5.非正規労働者で男女の賃金の差異が特に大きいのは、男性労働者はフルタイム勤務の再雇用者の割合が高いのに対し、女性労働者はパートタイマーの割合が高いことによるものです。
6.労働者の男女の賃金の差異は、管理職に占める男女の割合によるものです。
7.労働者の男女の賃金の差異は、女性労働者が少ないこと、管理職に占める男女の割合及び主に男性労働者が従事する営業職勤務に対する手当支給の有無によるものです。
8.管理職に占める女性労働者の割合の向上のため、総合職の女性労働者の採用強化に取り組んでいます。また、労働者の男女の賃金の差異は、管理職及び総合職の非管理職に占める男女の割合によるものです。
9.労働者の男女の賃金の差異は、管理職に占める男女の割合及び主に男性労働者が従事する交替勤務・乗務員に対する手当の有無によるものです。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
(1) 全般情報
当社グループは、財務報告書の主要な利用者が、中長期的な企業価値を評価するうえで有用な情報を提供することを目的として、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示しています。但し、将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが入手可能な情報に基づき判断したものであり、将来の実績、施策の実現又は目標の達成を保証するものではありません。
(2) 当社グループのサステナビリティ経営
当社グループは、2004年に「国連グローバル・コンパクト」に署名・参加し、「人権・労働・環境・腐敗防止」の4分野に関わる10原則に基づき、企業グループ理念「日本製紙グループは世界の人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献します」と、これを実現するための行動指針としてVision(目指す企業像)を掲げています。2021年には、Vision(目指す企業像)の4要件を満たすためのマテリアリティを定め、「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」として、森林資源の力を引き出し、企業価値向上と持続可能な社会の構築をともに追求するサステナビリティ経営を推進しています。
(3) ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ関連のリスク及び機会を経営戦略及び全社的なリスク管理と一体で捉えています。ガバナンスの概略は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
① ガバナンス機関又は個人
(イ) 監督に責任を負うガバナンス機関の名称又は個人の役職名
当社グループでは、取締役会が、サステナビリティ経営の監督に責任を負っています。取締役会は、経営の公正性及び透明性の確保のもと、サステナビリティに関する基本方針、重要な目標、重要な投資、資本配分、リスク・機会の管理の方向性その他の重要事項について報告を受け、審議することにより、業務執行側の取組状況を監督しています。
(ロ) 役割、権限及び義務等並びに関連方針への反映
当社グループは、取締役会の監督のもと、代表取締役社長をサステナビリティ関連事項に関する業務執行上の最終責任者としています。代表取締役社長は、経営執行会議及びグループ経営戦略会議を通じて、サステナビリティ関連のリスク及び機会を、事業戦略、投資判断、構造改革、原燃料調達、研究開発、人材戦略その他の重要な経営課題と統合して審議し、業務執行部門及びグループ各社を所管する部門と協議、必要な指示を行っています。
また、代表取締役社長の下にSX推進本部を設置し、サステナビリティに関する全社横断的な企画、統括及び推進を担わせています。SX推進本部は、ESG関連情報の集約、サステナビリティ関連のリスク及び機会の整理、主要KPIの進捗管理、情報開示対応の統括並びにステークホルダーとの対話の推進等を所管しています。
リスク管理については、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、全社的なリスク統括機能として代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、サステナビリティ関連リスクを含む重要リスクの識別、評価、優先順位付け、対応方針の検討及びモニタリングを行っています。同委員会の下には、専門委員会として製品リスク委員会、原材料委員会、環境委員会、安全防災委員会を配置し、各分野におけるリスク評価、管理状況のモニタリング及び重大事案の上申を行っています。
サステナビリティ関連の機会については、SX推進本部並びに業務部門が連携し、環境配慮製品、脱炭素、資源循環、自然資本、木質資源の多面的活用、サプライチェーン強靭化等に関する事業機会を整理し、経営執行会議、グループ経営戦略会議及び取締役会に報告しています。
リスクや機会の管理の状況、各課題についての検討結果は、取締役会に報告され、業務執行側に対する監督のもと継続的な改善が行われています。
サステナビリティ経営の実行体制
(ハ) 取締役会のサステナビリティスキル
取締役会の構成においては、各担当業務における業績とマネジメント能力に秀でた社内取締役と専門的な知識や経験を有する社外取締役で構成することにより、取締役会全体として知識、経験、能力のバランス及び多様性を確保するとともに、企業グループ理念、2030ビジョン、マテリアリティを踏まえて、取締役会が備えるべきスキルを特定し、スキル・マトリックスとして可視化しています。
当社グループは、サステナビリティ関連の規制、気候変動、自然資本、資源循環、人的資本、サプライチェーン管理等を含むサステナビリティに関連する経営環境の変化に対応するため、社内外の研修、有識者との対話、外部専門家からの助言、投資家との対話等を通じて、スキルの継続的な向上を図っています。
取締役のスキル・マトリックス
(ニ) 情報の入手方法・頻度
SX推進本部、リスクマネジメント委員会、各専門委員会及び業務部門は、サステナビリティ関連のリスク及び機会、主要KPIの進捗、重要な制度変更、外部評価、重大事案、ステークホルダーからの要請、その他の重要情報等を収集し、代表取締役社長、経営執行会議、グループ経営戦略会議及び取締役会に報告しています。
取締役会への報告は、四半期毎の定期報告に加え、重大なリスク、重要な投資、重要な規制対応、重大な事故・不祥事等については適時に報告しています。2025年度は、13回開催された取締役会のうち、気候変動関連、人権リスク等のサステナビリティに関する報告を5回実施しました。
(ホ) 戦略等の意思決定・リスク管理の監督における考慮
取締役会は、中期経営計画、事業ポートフォリオ、重要な投資、新規事業、設備更新、原燃料調達、供給体制など、その他の主要な経営判断にあたり、サステナビリティに関連する事項を考慮しています。具体的には、2030ビジョン及びマテリアリティとの整合性、規制対応、環境負荷低減、自然資本への依存及びインパクト、人的資本の強化等が考慮事項に該当します。
重大な不確実性を伴う事項については、必要に応じてシナリオ分析、感応度分析、代替案の比較、リスク低減策の検討等を活用し、前提条件、制約及びトレードオフを踏まえて判断しています。取締役会は、リスクへの対応又は機会の収益化に向けた方針が不十分であると判断した場合には、主管部門に対し、追加的な分析、対応策の見直し、実行計画の再検討又は再審議を求めています。
(ヘ) 目標設定の監督と進捗モニタリング(報酬との関係を含む)
取締役会は、サステナビリティ関連の目標及び主要KPIの設定並びにその進捗状況について、代表取締役社長、経営執行会議、グループ経営戦略会議、リスクマネジメント委員会並びにSX推進本部から報告・上申を受け、監督しています。サステナビリティ経営において対象となる主な目標及びKPIには、気候変動、資源循環、生物多様性、環境負荷、人的資本、労働安全衛生、製品安全その他の重要課題に関するものが含まれます。
モニタリングの結果、進捗の遅れ、前提条件の変化、新たな重要課題又はリスクの顕在化が認められた場合には、取締役会は、代表取締役社長、各会議体及びSX推進本部に要因分析、対策の策定、資源配分、投資方針、実施時期、KPI又は目標水準の見直し等について必要な検討を指示しています。
当社グループにおける社内取締役の報酬制度は、固定報酬、業績連動報酬及び株式報酬で構成されています。社内取締役がより中長期的な視点でサステナビリティ経営を推進するよう、非財務指標として2030ビジョンにおける温室効果ガス排出量削減目標の達成度及び従業員エンゲージメントに関する目標の達成度を組み入れています。
社内取締役の報酬制度
② 経営者の役割
(イ) 経営者等又は委員会その他の機関への役割の委任
当社グループでは、サステナビリティ関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するための業務執行上の役割を、代表取締役社長、SX推進本部、経営執行会議、グループ経営戦略会議、リスクマネジメント委員会及び各専門委員会に委任しています。
代表取締役社長は、サステナビリティ関連事項に関する業務執行上の最終責任者として、SX推進本部、経営執行会議、グループ経営戦略会議及びリスクマネジメント委員会等から報告を受け、重要事項について審議し、必要に応じて追加の分析、対応方針の見直し、個別案件の付議又は取締役会への報告を指示しています。
SX推進本部は、サステナビリティに関する取組の企画、統括及び推進を担い、サステナビリティ関連のリスク及び機会の整理、主要KPIの進捗管理、関係する業務部門との調整、情報開示対応、ステークホルダーとの対話等を行っています。
リスクマネジメント委員会は、全社的なリスク管理プロセスの中で、サステナビリティ関連リスクを含む重要リスクの識別、評価、優先順位付け及び対応方針の検討を行っています。各専門委員会は、製品安全、原材料、環境、安全防災その他の専門領域におけるリスクの兆候の把握、対応状況のモニタリング及び重大事案の報告・上申を担っています。
(4) 戦略
① 戦略の概要と意義
当社グループは、企業価値向上と持続可能な社会の構築をともに追求するサステナビリティ経営の基本として、ネイチャーポジティブ、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの3つを挙げています。
これに基づき、当社グループは、再生可能な森林資源を事業基盤とし、「持続可能な森林資源の循環」「製品とエネルギーの循環」「積極的なリサイクル」の3つの循環を基本とする循環型事業を拡大しています。
紙・板紙の製造・販売に加え、森林、木材事業の拡大・強化、家庭紙、ケミカル製品など生活関連事業の高収益化、新たなバイオマス素材事業の拡大、リサイクル技術の高度化を進めることで、森林資源の力を引き出し、企業価値向上と持続可能な社会の構築をともに追求していきます。
当社グループは、戦略に影響が生じると合理的に見込み得る時間軸を、短期、中期、長期に区分しています。これらの時間軸は、当社グループの中期経営計画並びに2030ビジョンでの意思決定に用いる計画期間と整合しています。
企業価値向上と持続可能な社会の構築を追求する循環型事業モデル「3つの循環」
② 目指す姿とマテリアリティ
2004年に「国連グローバル・コンパクト」に署名・参加以来、当社グループは「人権・労働・環境・腐敗防止」の4分野に関わる10原則に基づき、企業グループ理念「日本製紙グループは世界の人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献します」の実現に向けてサステナビリティ経営を推進しています。
当社グループは、この理念を経営戦略へと具現化するため、2021年には、10年後の目指す姿を定義した「2030ビジョン」を策定し、その実現に向けたマテリアリティ(重要課題)を特定しています。特定したマテリアリティに2030ビジョンの基本方針及び具体的なKPI・目標を紐づけることで、マテリアリティへの取り組みを日常の事業運営と一致させています。
目指す企業像・マテリアリティ・2030ビジョンの関係
③ サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別
(イ) 全社横断的なリスク調査による識別
サステナビリティ関連のリスクの識別については、当社グループ全体のリスク管理プロセスに統合されています。「3 事業等のリスク」をご参照ください。一方、機会の識別については、事業戦略、投資判断、商品・技術開発、研究開発、調達、生産、物流、販売及び情報開示の各プロセスと連携しています。これにより、サステナビリティ関連のリスク及び機会は、個別の環境・社会施策としてではなく、当社グループの中長期的な企業価値向上に関わる経営の管理事項として扱われています。
(ロ) 事業部門ごとの識別
各事業部門では、全社横断的に識別したリスク及び機会を、各事業の市場構造、競争環境、顧客ニーズ、原材料調達、物流、技術・商品開発の状況に照らして具体化しています。事業部門ごとの検討では、リスクを回避するだけでなく、需要構造の変化や環境配慮ニーズを収益機会として取り込む観点から、設備投資、研究開発、調達戦略、販売戦略への反映を進めています。
事業部門別のリスク及び機会(2025年3月末時点の評価)
④ サステナビリティ関連のリスク及び機会が集中している部分
当社グループでは、識別したリスク及び機会をバリューチェーン上の段階ごとに次のとおり整理しています。
バリューチェーンにおけるサステナビリティ関連リスク及び機会
⑤ サステナビリティ関連のリスク及び機会が現在与えている影響
「3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑥ サステナビリティ関連のリスク及び機会が将来与えると予想される影響
「3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑦ レジリエンス
当社グループの戦略は、現時点で一定のレジリエンスを有していると評価しています。各事業リスクに対するレジリエンスは、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
(5) リスク管理
当社グループは、リスクを物理的、経済的又は信用上の損失若しくは不利益を生じさせる可能性として捉え、「人命・安全を最優先すること」及び「事業を継続すること」を基本方針としてリスクを管理しています。サステナビリティ関連のリスク及び機会についても、当社グループの見通しに影響を与える可能性のある重要な経営課題として捉え、全社的なリスク管理、事業戦略、投資判断、研究開発、商品開発及び情報開示の各プロセスと連携して、識別、評価、優先順位付け及びモニタリングを行っています。
① サステナビリティ関連のリスクの識別等及びモニタリングを行うためのプロセス及び関連する方針
(イ) 基本方針及び対象範囲
当社グループでは、サステナビリティ関連のリスクを、全社的なリスク管理の枠組みの中で識別し、評価し、モニタリングしています。サステナビリティ関連のリスクについては、当社及び連結子会社を含む当社グループ全体を対象としています。
(ロ) リスクを識別するために用いるインプット及び識別プロセス
「3 事業等のリスク」をご参照ください。識別に用いる主なインプットは、各事業部門及びグループ各社からのリスク情報、各専門委員会の検討結果、事故・トラブル・ヒヤリハット情報、内部監査及び内部統制に関する情報、政策・規制動向、市場環境、顧客ニーズ、地政学情勢、供給制約、原燃料価格、為替、物流環境、技術動向、外部評価、ステークホルダーからの要請等です。
(ハ) 評価及び優先順位付けのプロセス
「3 事業等のリスク」をご参照ください。
(ニ) モニタリング及び対応策の見直し
「3 事業等のリスク」をご参照ください。
(ホ) プロセスの変更
当報告期間において、サステナビリティ関連リスクを識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセスについて、前報告期間から重要な変更はありません。
② サステナビリティ関連の機会の識別等及びモニタリングを行うためのプロセス
当社グループは、サステナビリティ関連の機会について、事業戦略の策定、商品・技術開発、営業活動、調達戦略、研究開発、設備投資及び資源配分に関する検討を通じて、識別、評価、優先順位付け及びモニタリングを行っています。
③ 上記プロセスと全体的なリスク管理プロセスとの関連性等
(イ) 全体的なリスク管理プロセスへの統合
当社グループにおけるサステナビリティ関連のリスク及び機会の管理プロセスは、全体的なリスク管理、事業戦略、投資判断、商品・技術開発、研究開発、調達、生産、物流、販売及び情報開示の各プロセスと連携しています。これにより、サステナビリティ関連のリスク及び機会は、個別の環境・社会施策としてではなく、企業価値向上に関わる経営管理事項として扱われています。
(ロ) 推進体制
サステナビリティ関連リスクについては、全社的なリスク管理の枠組みの中で対応を推進しています。「3 事業等のリスク」をご参照ください。
サステナビリティ関連の機会については、事業部門、研究開発部門、営業部門、調達部門及びSX推進本部が連携し、管理しています。重要な機会については、経営執行会議、グループ経営戦略会議又は取締役会において審議し、成長投資及び事業ポートフォリオの見直しに反映しています。
(6) 指標と目標
① 社内における管理
当社グループは、サステナビリティ経営の推進を目的として、サステナビリティ関連のリスク及び機会を管理するための指標及び達成するべき目標を設定しています。
これらの指標及び目標は、2030ビジョン、マテリアリティ及び中期経営計画2025への対応、達成状況をモニタリングするために用いており、取締役会による監督、各会議体による進捗管理、事業戦略への反映及び一部の業績連動報酬の評価にも活用しています。なお、当連結会計年度に係る指標及び目標の実績値については、グループ各社からのデータ収集、算定及び内部確認を経て、統合報告書及びESGデータブックにおいて開示する予定です。
サステナビリティ関連の指標・目標及び2024年度実績
② 社外からの評価
当社グループは、サステナビリティ経営推進の指標として、社外の評価結果も取り入れています。
サステナビリティ関連の社外評価結果(2026年6月15日時点)
(注)1.SDGs経営編
2.ブロンズ:評価企業中、上位35%の企業(https://recognition.ecovadis.com/-UUWlHKITkW9VzLyYeYDLg)
(7) 気候変動問題への対応
① ガバナンス
当社グループにおける気候関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するためのガバナンス体制は、「(3)ガバナンス」をご参照ください。本項では、気候変動対応に固有の体制、役割及び監督プロセスを補足します。
(イ) ガバナンス機関又は個人
当社グループでは、取締役会が、気候関連のリスク及び機会の監督に責任を負っています。取締役会は、2030ビジョンの基本方針の下、温室効果ガス(GHG)排出量削減目標、非化石エネルギー比率の目標等の達成に向けたリスク管理の状況について報告を受け、審議することにより、業務執行側の取組状況を監督しています。
当社グループは、気候関連の業務執行を推進するため、代表取締役社長の下に、GHG排出削減担当役員及び環境経営推進担当役員を配置しています。これらの担当役員は、関連政策・規制への対応、GHG削減施策の実施、GHG排出量および削減目標の進捗管理、環境経営の推進に関する業務執行上の責任を担い、各事業・工場・関係部門における取組の進捗及び課題を集約し、各会議体及び取締役会に報告しています。
取締役会は、GHG排出削減担当役員及び環境経営推進担当役員から、関連政策・規制への対応、GHG削減施策の実施状況、GHG排出量及び削減目標の進捗、非化石エネルギー比率の状況、気候関連のリスク及び機会の評価結果、並びに必要な対応方針について、年4回以上報告を受け、業務執行の状況を監督しています。
(ロ)気候関連の目標及び指標の進捗管理、並びに報酬との関係
「(3)ガバナンス (ヘ)目標設定の監督と進捗モニタリング」をご参照ください。
(ハ)経営者の役割
代表取締役社長は、気候関連リスク及び機会の管理を統括しています。
環境経営推進担当役員は、GHG排出量実績の算定・管理、気候関連のリスク及び機会の識別、シナリオ分析、移行計画及び関連する指標・目標の整理、気候関連情報開示への対応を所管しています。
GHG排出削減担当役員は、燃料転換、省エネルギー、再生可能エネルギー導入等のGHG排出削減施策の実行を所管し、各事業・工場における進捗、課題及び追加対応を所管しています。
② 戦略
(イ) 概要
当社グループは、気候変動問題への対応を経営の重要課題の一つと位置付けています。2023年5月には、2030年度におけるGHG排出量削減目標(エネルギー事業分野を除く製品製造に関わるScope1及びScope2)を、2013年度比45%から54%削減に引き上げました。また、2050年度カーボンニュートラルを宣言し、省エネルギー、燃料転換、非化石エネルギーの利用拡大、森林によるCO₂吸収・固定、並びに木質資源を活用し、かつ低炭素な製品を提供する事業の拡大に取り組んでいます。
当社グループのGHG排出量削減は、「燃料転換」「生産・物流工程での省エネルギー」「生産効率の向上」「自社林の適切な管理によるCO₂吸収・固定」を柱としています。具体的には、黒液(紙の原料となるパルプ製造時に副生)、建築廃材、未利用材などのバイオマス燃料及びRPF等の廃棄物由来燃料の活用、省エネルギー設備の導入、モーダルシフトを含む物流効率化、国内森林の管理による森林吸収J-クレジットの創出等を進めています。これらの主要な背景には、炭素価格の上昇、非化石燃料及び再生可能エネルギーの調達可能性、持続可能な木質バイオマスの確保、生産設備更新の実行可能性、将来技術の利用可能性、並びに政策・制度の継続性があり、これらへの対応として前述の取組を進めています。
一方で、リスクとなり得るこれらの背景を投資の増大や費用の増加としてのみ捉えるのではなく、社会が脱化石燃料に移行する、バイオマス素材やリサイクル素材の利用が推進される環境配慮型製品市場が拡大するなどの動きを機会と捉え、森林資源を起点とした循環型事業の拡大を進めています。
気候変動対応に関する移行計画の概要
移行計画における主要施策と時間軸
(ロ) 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会の識別
当社グループは、ESG課題に関する意識の高まりを背景とした社会像を描き、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを用いて、2030年及び2050年時点での気候変動リスク・機会が財務計画に与える影響について、定性・定量評価を実施しています。
<リスク>
1.5℃シナリオでは、炭素賦課金、排出量取引制度、石炭火力発電の使用禁止などの政策導入が想定され、炭素価格、エネルギー調達コスト、燃料転換・省エネ設備投資費用、原材料調達コストの増加が財務に影響を与えます。これに対し当社グループは、省エネルギーの継続・強化、バイオマス・廃棄物燃料等への転換、生産体制再編成による生産効率の向上、国産材の活用等により財務影響の低減を図ります。なお、2026年3月末時点での評価では、炭素価格、エネルギー調達コストの増加が与える影響については「中」となる見込みです。
4℃シナリオでは、政策導入が限定的である一方、気温上昇、降水パターンの変化、台風・豪雨等の激甚災害の増加、森林火災、原材料供給不安、物流寸断等の物理的要因が主要なリスクとなります。当社グループは、国内に生産拠点が分散していること、複数の木質資源調達国及び調達先を有していること、国産材や古紙を活用できる事業基盤を有していること等を踏まえ、供給継続性の維持・強化に取り組んでいます。
<機会>
両シナリオを通じて、バイオマス燃料の需要増、環境配慮型製品市場の拡大、新たなバイオマス素材の上市、森林吸収クレジットの創出、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、気候変動対応製品・災害対応製品の需要増等を主要な機会として認識しています。
2030年度時点の主要な気候関連リスク(2025年3月末時点の評価)
影響額 大:500億円以上、中:100億円以上500億円未満、小:100億円未満
2030年度時点の主要な気候関連の機会(2025年3月末時点の評価)
(ハ) 気候関連のリスク及び機会が集中している部分
当社グループでは、気候関連のリスク及び機会をバリューチェーン上の段階ごとに次のとおり整理しています。
バリューチェーンにおける気候関連リスク及び機会
(ニ) 気候関連のリスク及び機会が現在与えている影響
当報告期間においては、原燃料価格の上昇、物流費の上昇等が、当社グループの操業及び収益に影響を及ぼしています。
これに対し、当社グループは、省エネルギー対策の継続・強化、黒液を含むバイオマス燃料及び廃棄物燃料等への転換の加速、生産体制再編成による生産効率の向上に取り組んでいます。当社グループのGHG削減目標は、2030年まで、2013年度比で54%削減であり、2024年度は41%、2025年度は暫定値で43%まで削減が進んでいます。物流面では、鉄道や船舶を活用したモーダルシフト、共同輸送等により、物流工程におけるGHG排出量削減と供給体制の効率化に取り組んでいます。さらに、国内外の森林管理を通じて、自社林の適切な管理によるCO₂吸収・固定の取組を進めています。
一方、GHG排出削減の取組を通じて、製造時のGHG排出量が少ない低炭素なバイオマス素材・製品の販売拡大を進め、気候関連の機会を確実に獲得しています。
(ホ) 気候関連のリスク及び機会が将来与えると予想される影響
将来において、1.5℃シナリオでは、炭素価格及びエネルギー調達コストの増加、燃料転換・省エネ設備投資費用の増加、原材料調達コストの増加、認証材チップの調達コスト増加等が財務に影響を与える可能性があります。一方、バイオマス燃料を含む再生可能エネルギー、RPF・廃タイヤ等の廃棄物燃料、CNF・CMC等の新素材、森林吸収クレジット、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、持続可能な航空燃料、環境配慮型製品等の需要拡大は、事業拡大の機会になると見込んでいます。
4℃シナリオでは、激甚災害の増加、気温上昇・降水パターンの変化、森林火災、原材料供給不安、取水する河川等の濁度上昇、品質維持の困難化及び物流寸断等が、調達、生産、物流及び供給継続性に影響を及ぼす可能性があります。一方、防災・災害対応製品、長期保存可能なアセプティック紙パック等の需要拡大は、事業機会になると見込んでいます。
(ヘ) 気候レジリエンス
当社グループは、2024年に実施した気候関連シナリオ分析を基礎として、2030年及び2050年の時間軸で気候レジリエンスを1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを用いて評価しています。当該評価において考慮した重大な不確実性の領域は、炭素価格の水準、非化石燃料及び再生可能エネルギーの調達可能性、木質バイオマスの安定確保、将来技術の実装可能性、激甚災害の発生頻度・規模、水資源への影響、物流網への影響、並びに環境配慮型製品及び新素材の市場成長速度です。
1.5℃シナリオでは、炭素価格及びエネルギー調達コストの増加、燃料転換・省エネ設備投資費用の増加、原材料調達コストの増加等の移行要因が主要なリスクとなりますが、これらの影響を踏まえ、省エネルギーの継続・強化、非化石燃料への転換、国産材の活用、サプライヤーとの協働、生産効率の向上、BCP強化、持続可能な森林経営及び育種・増殖技術の活用により、移行リスク及び物理的リスクへの対応力を高めます。
当社グループは、移行リスクへの対応とGHG排出量削減の実効性を高めるため、省エネルギー設備の導入・更新やバイオマス燃料及び廃棄物燃料への転換を進めています。具体的には、日本製紙株式会社石巻工場において、高効率黒液回収ボイラー及び蒸気タービン・発電機を導入する設備投資を決定しており、既存の石炭ボイラーの停機を含め、約50万t-CO₂(製造に関わるGHG排出量)の削減を図る計画です。新設するボイラーは2028年度第4四半期より稼働を予定しています。
当社グループは移行リスクを認識していますが、バイオマス燃料や廃棄物燃料の需要増加、CNF・CMC等の新しいバイオマス素材や森林吸収クレジットの拡大、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、環境配慮型製品等の機会が拡大すると捉えており、前述のリスク低減対策とともに実行することで、財務影響を抑制する能力を有していると評価しています。
4℃シナリオでは、激甚災害、原材料供給不安、物流寸断、森林火災、気温上昇・降水パターンの変化、取水水質の悪化等の物理的要因が主要なリスクとなる一方、防災・災害対応製品、長期保存可能なアセプティック紙パック、柔軟なBCP体制が確立したサプライヤーからの購入ニーズ等の需要拡大が機会になると評価しています。当社グループは、調達先の多様化、BCP強化等により事業継続への影響を低減し、一定のレジリエンスを有していると評価しています。
③ リスク及び機会の管理
当社グループにおける気候関連のリスク及び機会の管理プロセスは、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を中核とした全社的なリスク管理プロセスの中に統合されています。全社的なリスク管理体制及び基本的なプロセスについては、「(5)リスク管理」をご参照ください。
本項では、気候関連のリスク及び機会に固有の識別、評価、モニタリングのプロセスについて補足します。なお、当報告期間において、気候関連のリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセスについて、前報告期間から重要な変更はありません。
(イ) 気候関連のリスクを識別し、評価し、モニタリングするためのプロセス
当社グループは、気候関連のリスクを、全社的なリスクマネジメント体制の中で識別し、評価し、モニタリングしています。具体的には、リスクマネジメント委員会のもとに設置した日本製紙グループ環境委員会において、気候変動に関連する政策・規制動向、炭素価格、エネルギー需給、燃料価格、原材料調達、自然災害、物流、顧客ニーズ及び市場動向等に関する情報を収集・分析し、気候関連リスクの抽出及び対応策の検討を行っています。
気候関連リスクの評価にあたっては、影響の性質、発生可能性、影響規模、発生時期、影響が及ぶ範囲、対応状況及び管理可能性を踏まえています。特に、炭素価格及びエネルギー調達コストの増加、燃料転換・省エネ設備投資費用の増加、原材料調達コストの増加、激甚災害の増加、取水水質の悪化、物流寸断等については、財務影響、操業継続、供給責任及び中長期的な競争力への影響を踏まえて評価しています。評価結果は、日本製紙グループ環境委員会及びSX推進本部での検討を経て、リスクマネジメント委員会並びに取締役会に報告しています。
(ロ) 気候関連の機会を識別し、評価し、モニタリングするためのプロセス
気候関連の機会については、日本製紙グループ環境委員会及びSX推進本部における情報収集・分析に加え、事業部門、研究開発部門、営業部門、調達部門及びSX推進本部が事業戦略、商品開発、研究開発、調達戦略及び投資計画の検討を通じて識別しています。
識別にあたっては、脱炭素、脱プラスチック、再生可能エネルギーの導入拡大、バイオマス燃料需要、環境配慮型製品の需要、CNF・CMC等の新しいバイオマス素材の需要、森林吸収クレジット市場、国産材・古紙需要、木質由来CO₂の利活用、気候変動対応製品・災害対応製品の需要等を主なインプットとしています。
識別した機会は、市場性、実現可能性、当社グループの技術・設備・原材料調達基盤との適合性、収益性、環境価値及び中長期的な企業価値向上への寄与度を踏まえて評価しています。重要な機会については、事業計画、研究開発計画、商品開発、設備投資及び資源配分に反映し、関係部門及び各会議体において進捗をモニタリングしています。
(ハ) 上記プロセスと全体的な管理プロセスとの関連性等
当社グループにおける気候関連のリスク及び機会の識別、評価、優先順位付け及びモニタリングのプロセスは、全社的なリスク管理プロセスに統合されています。
気候関連リスクについては、日本製紙グループ環境委員会及びSX推進本部が情報収集、分析、リスク抽出、リスク予測及び対応策の検討を行い、その結果をリスクマネジメント委員会に報告しています。リスクマネジメント委員会では、気候関連リスクを、自然災害、原材料調達、設備、生産、物流、法令対応、財務影響等の他の全社的リスクと関連付けて評価し、必要な対応方針を確認しています。
気候関連の機会については、日本製紙グループ環境委員会が把握した外部環境や市場変化に関する情報を、事業部門、研究開発部門、営業部門、調達部門及びSX推進本部に共有し、事業戦略、商品開発、研究開発、投資判断及び資源配分の検討に反映しています。
また、GHG排出量削減目標の達成に向けた省エネルギー対策、バイオマス燃料、廃棄物燃料への転換、物流時の排出削減、適切な森林管理によるCO₂吸収・固定、カーボンリサイクル等の取組については、気候関連リスクの低減策であると同時に、当社グループの事業機会の創出にもつながるものとして、戦略、指標及び目標、並びに設備投資・事業計画と連動して管理しています。
このように、当社グループは、気候関連のリスク及び機会を全社的なリスクマネジメント、事業戦略、投資判断、研究開発、商品開発及び情報開示の各プロセスと連携させています。
④ 指標と目標
当社グループは、気候関連のリスク及び機会に関するパフォーマンス並びに目標達成に向けた進捗をモニタリングするため、GHG排出量、GHG排出量削減率、非化石エネルギー使用比率等関連する非財務指標等を用いています。
気候関連における指標と実績
(注)1.暫定値
2.日本製紙㈱、日本製紙クレシア㈱、日本製紙パピリア㈱、Opal社、日本ダイナウェーブパッケージング社
気候関連の目標と実績
(注)1.製品製造に関わるScope1及び2排出量
2.2025年度 暫定値
3.2024年度 実績値
GHG排出量と削減目標に対する実績の推移
(8) 自然関連開示(生物多様性保全への取組)
① 戦略
(イ) 概要
当社グループは、森林、水、土地その他の自然資本を基盤として事業活動を行っており、生物多様性の保全及び自然資本の持続可能な利用を、中長期的な企業価値の維持・向上に関わる重要課題と認識しています。
当社グループは、「生物多様性に配慮した企業活動」の理念のもと、森林資源を活用し、持続可能な社会づくりに貢献するバイオマス製品を社会に提供しています。また、水資源、木質資源、土壌の健全性等の自然の恵みに依存していることを踏まえ、自然への依存及び影響を把握し、持続可能な森林経営、生物多様性に配慮した森林管理、水資源管理、木質資源の有効活用及び環境負荷低減を通じて、自然資本の維持・回復・向上と事業の持続的な発展の両立を図っています。
自然関連のリスク及び機会に関するガバナンス及びリスク管理の基本的な考え方は、前節「(3)ガバナンス」及び「(5)リスク管理」に記載のとおりです。本節では、当社グループの見通しに重要な影響を与える自然関連の戦略事項を中心に記載します。
(ロ) 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る自然関連のリスク及び機会の識別
当社グループは、TNFD最終提言v1.0を参照し、LEAPアプローチを用いて自然関連のリスク及び機会の評価に取り組んでいます。2024年度は、直接操業である紙製品の製造、並びに上流サプライチェーンである石炭、植林及びチップ生産を対象に、自然への依存及び影響を分析しました。
分析の結果、当社グループの事業活動においては、水資源及び木質資源への依存が相対的に大きいことを確認しました。これを踏まえ、水資源及び木質資源に係る自然関連のリスク及び機会について、地域特性やサプライチェーン上の影響を含めて調査を行っています。この調査を通じて、一部の海外チップサプライヤー及び海外植林会社が、自然への依存及び影響が相対的に大きい地域に所在しており、自然関連のリスク管理上重要な対象であることを確認しました。
当社グループが認識する主な自然関連リスクは、異常気象及び森林火災による木材生産性の低下、水質汚染又は水不足による木材生産性の低下、生態系劣化による樹木の生長低下、保護地域の拡大による植林可能地の制約等です。これらは、木質資源の安定確保、原材料調達コスト、植林資産の価値、操業継続性及び将来の資源確保に影響を与える可能性があります。
一方、主な機会としては、森林の多面的機能に対する経済的価値の向上、持続可能な木質資源への引き合い増加、森林の生産性向上技術によるビジネス展開、木質資源を原料とした環境配慮型製品の需要増加、森林認証制度等を活用した持続可能な原材料調達、国産木材及び由来製品への需要増加等を認識しています。
優先地域における自然関連リスクと当社グループの取組
自然関連の機会と当社グループの取組
(ハ) 自然関連のリスク及び機会が集中している部分
自然関連のリスク及び機会は、当社グループのバリューチェーンのうち、特に、上流の原材料調達、森林・植林地の管理、生産拠点における水利用及び排水、並びに下流の持続可能な製品供給に集中しています。
上流では、森林火災、異常気象、水不足、水質汚染、生態系劣化、保護地域の拡大等が、木質資源の安定確保及び調達コストに影響を及ぼす可能性があります。これに対し、当社グループは、国内外の社有林及び植林地の管理、樹齢構成の平準化、育種・増殖技術の活用、国産材流通網の強化、サプライヤーとの協働等により、原材料調達基盤の強化に取り組んでいます。
生産段階では、紙・パルプ製造が水資源に依存する事業であることから、水資源の利用可能性及び水質への影響が重要です。当社グループは、国内42拠点、海外47拠点、合計89拠点を対象に水リスク評価を実施しており、国内拠点ではHigh又はExtremely Highに該当する極端な水リスクは確認されていません。海外では一部地域に高い水リスクが見られるものの、地域特性に応じた水資源管理を進めています。
下流では、持続可能な木質資源を原料とした環境配慮型製品への需要増加や、森林認証を活用した原材料調達及びサプライチェーンマネジメントを通じた環境価値向上が、製品差別化及び顧客への価値提案につながると認識しています。
(ニ) レジリエンス及び今後の対応
当社グループは、森林、水及び木質資源を基盤とする事業構造を踏まえ、自然関連リスクに対するレジリエンスの向上を図っています。
当社グループが一定のレジリエンスを有していると評価する主な根拠は、国内外の社有林及び植林事業を含む森林資源基盤、国内最大級の国産材流通網、持続可能な森林経営及び森林認証の活用、育種・増殖技術、複数の調達先及び地域に分散したサプライチェーン、並びに水リスク評価に基づく拠点管理にあります。
今後は、優先地域以外の調達地についても順次分析を拡大するとともに、水リスク評価、森林認証、合法性確認、サプライヤーへのアンケート及び現地確認を含むDDSの高度化を進めます。また、自然関連リスク及び機会に関するデータ整備を進め、自然関連の財務影響、自然資本価値、森林由来クレジット及び製品機会との関係について、より定量的な把握を進めていきます。
② 指標及び目標
当社グループは、自然関連のリスク及び機会に関する取組の進捗を管理するため、前節「(6)指標及び目標」に記載した指標に加え、自然への依存及び影響に係る主要な指標及び目標を以下のとおり整理しています。
なお、当連結会計年度の実績については、グループ各社からのデータ収集、算定及び確認を経て、統合報告書及びESGデータブックにおいて開示する予定です。
グローバル中核指標
当社グループは、今後、優先地域以外の調達地への分析範囲の拡大、サプライチェーンにおける自然への依存及び影響の把握、総空間フットプリントの精緻化、水リスク評価の継続、森林認証及び合法性確認の維持、DDSの高度化等を通じて、自然関連指標の管理精度を高めていきます。
(9) 人的資本戦略
① 基本方針
当社グループの人的資本戦略の基本方針は、社員一人ひとりが持つ「高度な操業技術・木質資源に関する専門性」「誠実さ」「連携力」といった強みをもとに、社員の成長を当社グループの成長につなげる人材マネジメントを推進することです。これを通じて、多様な人材の確保、スキル・知識・技術の向上及びエンゲージメント向上を図ります。目指す企業像である「社員が誇りを持って明るく仕事に取り組む」姿を実現し、当社グループの持続的な成長につなげていきます。
社員の成長を日本製紙グループの成長につなげる人材マネジメント
② これまでの人材マネジメントの取り組み
当社の人材マネジメントは、「採用」「育成」「定着」「配置」の4つの視点から構成されています。これらの取り組みはそれぞれが独立したものではなく、有機的に連携しながら、個々の社員の成長・キャリア形成に一貫して寄り添うものです。こうした取り組みを通じて、人材が持つ潜在能力を最大限に引き出し、中期経営計画の目標達成に資する行動変容を促します。構造改革の断行において求められるスキル・マインドのアップデートや、収益性の拡大に必要な知見の獲得といった、成果創出につながる人材マネジメントを展開しています。
人材マネジメント施策
(注)1.ビジネスリーダー:キャリアパスを通じて多様な分野で幅広い業務を担いながら、会社全体を牽引する 役割を期待する、いわゆる総合職としてのキャリアコース
2.エキスパート:本社・営業支社・工場・事業所が立地している各地域での採用者を中心とした、当社の事業運営において不可欠な各種業務(三交替オペレーター、設備メンテナンス、他)に専門家として従事する、いわゆる一般職としてのキャリアコース
③ 中期経営計画2030に対応した人的資本戦略テーマ
これまでの人材マネジメント施策に加えて、中期経営計画2030の基本戦略に連動した形で、3つの人的資本戦略テーマを設定しました。「構造改革の断行」に対しては「最適人材配置の実行」、「収益性の向上」に対しては「イノベーション人材の創出」、その両方を支える取り組みとして「人材基盤の強化」を掲げています。
人的資本戦略テーマと主要な取り組み内容
「人材基盤の強化」として、人材要件の明確化、採用ブランドの向上、重要ポストのサクセッションプラン構築、職場環境改善、交替勤務の見直し実現及び更なるエンゲージメント向上などを進めていきます。特に人材要件の明確化については、人材の流動化が一層進む中でも工場・事業所の安定操業を維持するために不可欠です。単なる要員数確保にとどまらず「誰がどのようなスキルを有しているか」・「そのスキルを最も効果的に活用できる職場はどこか」を重視した人材マネジメントを行ううえで重要な取り組みと考えています。
それらを土台として、「最適人材配置の実行」については、工場地元人材の更なる積極登用、転勤制度の見直しによる総合職の定着強化及び協力会社とのパートナーシップ強化などを通じて、構造改革後の事業運営を支える人材の安定確保を図ります。「イノベーション人材の創出」については、専門人材の採用と育成を進めていくほか、主要グループ会社間での労働条件を出来る限り標準化していくことで、グループ間の人材交流を活性化し、収益性の高い事業を担う人材の確保を進めます。
また、採用力強化と併せて省人化投資にも取り組むことで、生産年齢人口の減少による人材獲得リスクの増加に耐えうる体制を構築します。
④ 事業拠点別の基本戦略
中期経営計画2025では、事業構造転換の加速と既存事業の基盤強化を実現するため、国内グラフィック用紙の生産能力を削減して稼働率を維持しつつ、生活関連事業へ人材をシフトするなど、事業構造転換に対応した人材の適正配置を進めてきました。
中期経営計画2030では、グラフィック用紙事業の拠点を石巻工場、岩沼工場、岩国工場へ集約する一方、他の工場・事業所ではリソースを最大限に活用して事業構造転換を推進していく方針です。今後は、それぞれの事業の方向性に応じた基本的な人的資本戦略を整理したうえで、各工場・事業所の将来構想に基づいた人材確保を進めていきます。
⑤ エンゲージメント向上の取り組み
当社はエンゲージメント調査を2019年度から定期的に実施しています。当社は本調査を「“社員と企業の双方が成長していける関係”をより強固にするための重要な調査」と位置付けています。調査結果を経営層・役職者に報告するとともに、外部コンサルタントのアドバイスも踏まえながら、職場内コミュニケーションの増進、教育・研修の充実及び労働環境の改善を継続的に図っています。エンゲージメント向上に取り組むことで人材基盤を強化し、人的資本戦略の実効性を高めていきます。
⑥ 人材育成及び人材定着(社内環境整備)に関する指標と目標
当社は、人材育成や人材定着(社内環境整備)の進捗状況をモニタリングするため、中期経営計画2025において以下のとおり指標と目標を設定し、取り組みを進めてきました。今回の実績を検証したうえで、中期経営計画2030の達成及び新しいマテリアリティの実現に向けて、より相応しい新たな指標と目標を検討していきます。
人材育成及び人材定着(社内環境整備)に係る指標と目標(注)1
(注)1.指標に関する目標及び実績は、制度の異なる連結会社の状況等を一体的に進捗管理することが困難なため、提出会社のものを記載しています。
2.ダイバーシティを推進する制度(フレックスタイム制度、時間単位年休制度及び在宅勤務制度)を当年度中に利用したことがある本社部門従業員の比率です。
(5か年平均値が未達となった目標に関する分析)
・入社10年後在籍率:当該指標を設定した2021年当時に比べて、社会全体の人材の流動性が高まっていることが影響
していると考えています。社内コミュニケーション機会の創出・充実と、各種制度整備を進めていくことでエン
ゲージメントを向上し、人材の定着を図っていきます。
・年間総労働時間:毎年、着実に削減を進めてきており、特に日勤部門では目標を達成していますが、さらなる業務
効率化・削減に取り組んでいきます。一方で交替部門では目標に対して未達となっており、採用活動を強化し人員
を充足することで総労働時間の削減を図っていきます。