2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。ただし、これらはすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外も存在し、それらのリスクが影響を与える可能性があります。また文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。

 

(リスク管理体制)

当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を責任者とするリスクマネジメント委員会を設置しています。当社グループの経営におけるリスク発生防止と実際にリスクが発生した場合の影響を最小限にとどめることを目的として、リスクマネジメント規程と危機対策規程を定め、平常時と緊急時の両面で対応することとしており、リスクマネジメント委員会では、当社グループのリスクを定期的に洗い出し、評価、防止対策及び発生時の対策を検討・審議し、取締役会に報告します。

 

<リスクマネジメント体制>


 

(1) 経営戦略に関する重要なリスク

① 人材確保のリスク

当社グループは、人材戦略を事業活動における重要課題の一つとして捉えており、今後の事業展開のために適切な人材の確保と育成に注力しています。適切な人材を十分に確保し、育成することができなければ、既存事業の持続的な成長と競争力の維持が困難になるだけでなく、スムーズな事業構造転換の実行が妨げられることになるため、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、従業員のエンゲージメント向上を目的として多様な背景を持つ人材の積極的な採用や育成、そして柔軟な働き方を支える職場環境の整備により、多様な人材が最大限能力を発揮できる組織づくりの推進により人材の確保に努めています。育成においては、「変化にチャレンジする人材づくり」に取り組み、社内副業制度の導入や工場・事業所の幹部候補育成を目的とした選抜型教育などにより、成長事業の収益拡大と基盤事業の競争力強化の源泉となる人材育成を進めています。職場環境においては、育児・介護などのライフイベントと仕事との両立支援制度の充実や一般職における定年年齢を60歳から65歳に延長するなど、より多様な働き方を後押しする社内制度の導入を図っています。

加えて、少子高齢化の進展による労働力人口減少といった課題も顕在化していきます。このため、操業現場の自動化や省人化、物流分野におけるIoT技術の導入についても検討をしています。

これらの取り組みにより、当社グループは適切な人材の確保と育成を推進し、持続的な成長に努めていきます。

 

 

② Opal社収益改善の遅延に関するリスク

当社グループの連結子会社である豪州のOpal社については、メアリーベール工場においてグラフィック用紙事業から撤退し、成長が期待できるパッケージ事業の一貫体制構築を推進しています。Opal社の立て直しは喫緊の経営課題と認識しており、現在、早期の黒字化に向けて同社の再建に取り組んでいます。しかしながら、これらの取り組みが予定通り進捗しない場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

このため当社グループでは、課題であるメアリーベール工場の収益改善を図るべく、パッケージ原紙工場としての生産体制最適化、グループの支援強化による操業安定化、人員合理化を中心とする固定費削減、原紙販売構成の改善等により、同工場の収益改善に向けた取り組みを加速しています。

また、メアリーベール工場以外のパッケージ事業においては、生産拠点の統廃合などの合理化を進める一方で、段ボール新工場の建設や老朽化した加工機の順次更新などの設備投資を行い生産能力増強と生産性向上を図るとともに、営業体制の強化によりシェア拡大を推進するなど、Opal社全体としての収益基盤強化を進めています。

 

③ 気候変動に関するリスク

エネルギー多消費型の紙・パルプを主要事業とする当社グループは、気候変動への包括的な対応を、企業グループ理念の実現における重要な課題と位置づけ、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指し、温室効果ガス(GHG)排出量削減に積極的に取り組んでいます。脱炭素化への世界的な動きが加速する中、当社グループの対応が遅れた場合、カーボンプライシング政策の強化などの規制リスク、クレジット購入費用の発生やGHG削減投資の増大による財務リスク、さらに顧客や投資家からの信頼低下によるレピュテーションリスクに直面し、財務への影響が避けられない可能性があります。

当社グループは、これらのリスクに関わる財務影響を適切に評価し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の推奨する枠組みに基づき、透明性の高い開示を行っています。またリスク低減のため、2030年度までに2013年度比でGHG排出量を54%削減する目標を掲げ、高効率設備の導入や製造プロセスの最適化による省エネルギー対策や再生可能・廃棄物エネルギーへの転換を進めていますが、さらなる削減を図るために、当社は、2028年度中に石巻工場において高効率な黒液回収ボイラー1基を新設し、あわせて既存の石炭ボイラー1基の運転を停止することでGHG排出量の削減の取り組みを一層加速していきます。

当社グループは、物流時の排出についても、同業や異業種企業などステークホルダーとの連携を強化し、ラウンド輸送やモーダルシフト化、輸送距離の短縮等の協働を通じて、バリューチェーン全体での排出量削減に取り組んでいます。また、適切な森林管理による森林吸収やカーボンリサイクルなどの取り組みも積極的に行っており、多面的に脱炭素化を推進し、2050年カーボンニュートラル達成への取り組みを強化しています。

気候変動問題への対応は、単なるリスク管理にとどまらず、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。当社は、幅広いステークホルダーとの連携をより一層強化しながら、サステナビリティを核としたイノベーションを推進し、環境と経済の両立を目指す持続可能な成長を実現していきます。

 

④ グラフィック製品の需要減少に関するリスク

当社グループの事業の1つであるグラフィック用紙事業は、デジタル化の進展や、新型コロナウイルス感染症を契機とした働き方や生活様式の変化を受けて市場縮小の傾向が続いています。

そのため、当社は成長事業である生活関連事業への経営資源のシフトとともに、グラフィック用紙事業については生産体制の再編成を進め、生産能力削減と競争力の強化を図っています。しかしながら、これらの取り組みが予定通り進捗しない場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

当社グループは、グラフィック用紙事業の基盤強化として、操業安定化及び継続的なコストダウン、安定供給のための再生産可能な適正価格を確保し、また、顧客と連携した環境配慮型製品の開発・ラインアップ拡充による販売数量の維持・拡大、食品・工業向け製品における加工分野での協業を進めています。更に、包装分野を中心とした海外市場の調査を行う専門部署を設置し、グローバルな市場動向をリアルタイムに把握しながら、迅速な海外向け製品の開発と販売供給体制を強化することで海外市場を獲得し、輸出を拡大していきます。

グラフィック用紙の生産体制再編成についても、GHG排出量削減と連動して進めることで競争力を高め、人材やパルプ、ユーティリティなどのグラフィック用紙事業の既存リソースは、家庭紙やケミカル、バイオマス素材などの成長分野の拡大に活用します。

このように、リスク低減のために多数の対応手段を持つことで、市場の変化に対するレジリエンスを高め、引き続き安定した収益を確保していきます。

 

⑤ バイオマス素材事業拡大の遅延に関するリスク

当社グループは、木質資源から生み出すバイオマス素材・製品を様々な市場に展開するバイオマス素材事業を拡大し、「総合バイオマス企業」として持続的に成長することを目指しています。しかしながら、バイオマス素材事業の拡大が計画通り進捗しない場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

当社グループは、「2030ビジョン」と「中期経営計画2025」における成長戦略として、「森林価値の最大化」と「バイオマス素材・製品の拡大」を2つの柱とした「グリーン戦略」を策定しています。化石資源の枯渇、海洋プラスチック問題などを背景とした脱・減プラスチックの動きは、脱炭素、サーキュラーエコノミーと併せ、世界において主流化することが予想されます。当社グループは、持続可能な森林経営・管理で木質資源を生み出し、環境配慮性と優れた機能特性を併せ持つバイオマス素材・製品をモビリティ&インダストリアル、フード&アグリ、コンストラクション、パーソナルケア市場等、国内外の様々な製品市場に提供していきます。すでに、化石資源由来の素材の代替や機能性向上を目的とした容器包装用紙製品、セルロースナノファイバー、養牛用飼料等、セルロース製品の用途開発、販売を開始しており、それに加えて、国産材からのバイオエタノール生産に向けて、当社岩沼工場での実証試験にも着手しています。また、木材成分のひとつであるリグニンを原料とした、常温アスファルト混合物用乳剤に使用される「スターリグノ」など、工事施工時のGHG排出量を削減できる製品向けの販売も開始しています。

環境配慮性など市場の要望をタイムリーに実現していくためには、技術力、販売力、ネットワークが必須です。当社は、これらの分野への投資や人材の再配置を積極的に進めることで、既存事業とのシナジーも生み出していますが、同時にオープンイノベーションを推進するための「産・官・学・金」のネットワーク構築にも取り組み、その研究成果を製品・サービスとして市場に提供することで、市場の変化に対応するレジリエンスを高めていきます。

市場の変化に対応し、国内外で優位性を獲得・維持するためには、知的資本の価値を最大化する知財戦略が欠かせません。当社グループでは、研究・開発部門と知的財産部門が密接に連携し、定期的に研究成果を精査し、成長分野や新規事業分野への特許出願や権利化の強化を図ると同時に、海外事業の拡大を念頭においた外国特許出願にも力を入れています。

当社グループは、バイオマス素材を通じて、サプライチェーン全体でのGHG排出量の削減やリサイクルによる資源循環・資源自律、国内森林の活用による林業の活性化などを実現することで、社会の持続可能性と当社の持続可能性を追求していきます。

 

⑥ サプライチェーンマネジメントに関するリスク

当社グループは、原燃料であるチップ、古紙、重油、石炭、薬品などを調達して、製品の製造・販売を行っています。原燃料の価格は、国内外の市況に大きく影響を受け、また脱化石燃料の気運や洋紙生産量減少に伴い、原燃料サプライヤーの事業縮小や事業撤退に起因した調達の不安定性、価格変動が顕在化する可能性があり、その価格変動は当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。港湾労働者・輸送力不足、地政学的緊張の高まりによるグローバルサプライチェーンにおける輸送網での遅延、気候変動対応による脱炭素政策を主要因とした原燃料価格上昇に起因する輸送費の上昇は今後も継続すると予想されます。特に国内の場合、いわゆる「物流2024年問題」が喫緊の課題であり、これらの問題も当社の経営成績及び財政状態等にさらなる影響を与える可能性があります。

主な対策として、原料や燃料の一部について、リスクヘッジのため予約購入のスキームを設定・運用する等の施策を取っている他、特に製紙用木材チップについては、当社グループは国内外に16万haの森林資源を保有するとともに、国内外のチップサプライヤーとの長きにわたる取引実績に基づく信頼関係の強化や近距離での安価な資源の開発・採用により、原材料確保と購入価格の安定化を図っています。荷役時間の削減対策として、一部工場ではトラック受入予約システムを導入し、荷役待ち時間の短縮を図っています。また、安定調達のためサプライヤーや物流会社との良好な関係を強化するとともに、海外を含む複数地域、複数ソースからの調達、代替品への切り替え、グループ横連携強化による融通及び調達網拡大等や在庫水準の見直しなど、適正在庫の管理強化による財務状況の適正化も進めています。

また、「物流2024年問題」に対しては、製品販売及び原燃料調達において社内横断でのプロジェクトチームを発足させ、規制への遵守とコストアップの最小化の両立に取り組んでいます。取引先とも協働し、計画的な納品依頼や輸送体制の変更、積載率の向上や消費地近隣に新たな在庫拠点を設置するなどの対策を実行しています。さらに、他社との海上共同輸送を実現し、トラック輸送と比べてGHG排出量の削減に取り組むとともに、人手不足への対応として物流DXの取り組みを促進していきます。

 

⑦ 自然災害及び感染症等のリスク

当社グループの生産及び販売拠点が位置する地域において、地震や台風、洪水、山火事といった大規模な自然災害が発生した場合、事業の継続性に大きな影響を及ぼす可能性があります。生産活動の停止、設備復旧のための費用増加、製品や原材料の損害などが発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

このため当社グループでは、危機対策規程に基づき、緊急時には危機対策本部を迅速に立ち上げ、従業員及び家族の安否確認、被災状況の把握、供給継続のための対策を実施します。また緊急事態への対応のためBCM(事業継続マネジメント)を強化し、複数工場での供給体制の構築や、災害想定に基づく避難訓練や安否確認訓練を定期的に行っています。なお、自然災害に対する保険を付保していますが、当社が負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分ではない可能性があります。

また新型コロナウイルス感染症の流行によって、感染症が事業活動に与える影響の大きさが改めて認識されました。新型コロナウイルスを含む感染症のリスクは、従業員の健康及び事業の継続性に対する脅威となり得ます。当社グループでは、従業員の感染防止対策、在宅勤務制度の構築、オンライン会議システムの導入拡大など、感染症対策を継続的に強化しています。また、感染者の発生や事業活動への影響が懸念される場合には、迅速な情報共有と対策本部の立ち上げにより、事態の収束と事業の安定を図ります。

これらの取り組みにより、自然災害や感染症といった予期せぬ事態にも柔軟に対応し、事業の継続性と従業員の安全を守る体制を構築・維持しています。今後も、リスク対策の継続的な見直しと強化を通じて、変化する社会情勢に対応していきます。

 

(2) 事業環境及び事業活動に関するリスク

① 生産設備に関するリスク

当社グループは、市場需要と既存設備の能力を考慮した計画生産を基本としています。しかし、設備の故障や火災、自然災害による設備事故などにより生産設備の稼働率が低下すると、製品の供給能力が不足し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対応するため、定期的な設備点検とメンテナンス、脆弱箇所を計画的に更新する老朽化対策工事等の実施、複数工場での供給体制の構築、在庫の適正化などを行っています。

 

② コンプライアンスに関するリスク

当社グループが展開する紙・板紙事業、生活関連事業、エネルギー事業、木材・建材・土木建設関連事業など、幅広い分野において、関連する法令や規制は常に変化しており、新たなコンプライアンスの課題が生じています。特に、デジタル化の進展、グローバル化の加速、環境保護や人権尊重への関心の高まりなど、社会情勢の変化に合わせた、コンプライアンス違反のリスクはさらに複雑化しています。

その対策として、当社グループでは、社会情勢の変化に応じたコンプライアンス研修の実施や、コンプライアンスに関する意識調査を行い、従業員のコンプライアンス意識の向上に努めています。また、法令、社会規範、企業倫理、行動憲章、行動規範及びグループ各社の社内規則等に抵触するおそれのある行為などについて、日常の指示系統を離れて直接通報・相談できる「日本製紙グループヘルプライン」を設置し、コンプライアンス違反の懸念があるものについては事実調査を行っています。事案の重要性に鑑み、社内処分や注意・指導、教育等による従業員への意識啓発などの是正措置・再発防止策を実施しています。

また、当社グループは取引先や、自社だけでは遂行が難しい業務を様々な委託協力会社の協力のもと事業活動を展開しているため、取引先や委託協力会社との関係においても、公正かつ健全な業務実施を重視しています。独占禁止法や下請法の遵守はもちろんのこと、社会的な価値観の変化を反映した公正な取引慣行を目指していますが、違反があった場合には、訴訟リスクや社会的信頼の喪失など、経営上の大きなリスクとなることが予想されます。

これらに対応するため、「パートナーシップ構築宣言」に基づき、親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組んでいます。また、2023年11月に公表された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえ、グループ全体でのリスク評価と対策の実施を進めています。

これらの取り組みにより、社会情勢の変化にも柔軟に対応し、コンプライアンス違反のリスクを最小限に抑えることを目指しています。

 

③ 労働者の安全衛生に関するリスク

当社グループは、全事業所で安全最優先での操業に努めていますが、労働災害の発生は、労働者の健康や人命が失われる重大なリスクです。災害内容によっては企業としての管理責任を問われ、設備停止となる可能性もあります。労働災害を防ぐため独自の労働安全衛生マネジメントシステムを運用し、事業所ごとに具体的、継続的かつ自主的な活動を安全衛生計画として組み込み、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境など安全衛生水準の向上に努めています。

これらの取り組みにより、当社グループは労働災害の防止を推進し、安全な職場環境の確保に努めていきます。

 

④ 製造物責任に基づくリスク

当社グループは、製品について製造物責任に基づく損害賠償を請求される対象であり、現在のところ重大な損害賠償請求を受けていませんが、将来的には直面する可能性があります。製造物責任にかかる保険(生産物賠償責任保険)を付保していますが、当社グループが負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分でない場合があります。当社グループではグループ製品リスク委員会を設置し、グループ各社の製品安全リスクの監督、支援を行っています。また、主要製造会社はそれぞれに製品リスク委員会を設置するとともに、製品リスク管理規程の整備を進め、製品事故の防止に努めています。

 

⑤ 環境法令関連のリスク

当社グループは、事業活動において、環境関連の法規制の適用を受けています。これらの規制の変更や改正により、生産活動が制限される、あるいは新たな対策のための費用が発生する可能性があり、これらは経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

このリスクに対応するため、環境関連の法改正状況について定期的にモニタリングし、また社外から各種情報を収集することで、適切に法令改正に対応する体制を整えています。

 

⑥ 情報システムに関するリスク

当社グループは、情報システムに関するセキュリティを徹底・強化し、また急速に普及した在宅勤務環境においても十分な情報セキュリティ対策を講じています。しかし、今後コンピュータへの不正アクセスによる情報流出や犯罪行為による情報漏えい、業務遂行妨害等の問題が発生した場合には、損害賠償請求や当社グループの社会的信頼喪失、業務停止等により、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。情報セキュリティに関しては時流に合わせた防衛システムの導入や従業員教育を行い、個人情報については「個人情報取扱規則」を定め、全役員、全従業員及び関係取引先への周知を図ったり、セキュリティインシデントが発生した際の連絡ルートを整備したりするなど、管理体制を強化しています。また、定期的なセキュリティ監査や脆弱性評価を実施することにより、システムの脆弱性を発見・修正することで、セキュリティインシデントの予防に努めています。

 

⑦ 知的財産紛争等のリスク

当社グループは、製品や技術に関する知的財産権を保有しており、知的財産紛争や訴訟の発生があり得ます。これにより、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響が生じる可能性があります。

具体的には、当社の製品や技術が他社の知的財産権を侵害していると主張される訴訟が提起される可能性があります。また、当社グループの知的財産権が他社によって無効審判請求の対象になる可能性や、第三者による知的財産権の侵害リスクも考えられます。当社グループは知的財産権の保護や従業員に対する教育に努めており、法的対策やリスク管理策を講じています。

 

⑧ 為替レートの変動リスク

当社グループは、輸出入取引等について為替変動リスクを負っています。輸出入の収支は、チップ、重油、石炭、薬品などの原燃料の輸入が、製品等の輸出を上回っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合には経営成績にマイナスの影響を及ぼします。なお当社グループは、為替変動による経営成績への影響を軽減することを目的として、為替予約等を利用したリスクヘッジを実施しています。

 

(3) 財務・会計リスク

① 株価の変動リスク

当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有しており、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため保有株式の定期的な株価のモニタリングを行うことにより、財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を注視しています。

 

② 金利の変動リスク

当社グループは、有利子負債などについて金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社では、長期借入金の固定金利借入の比率を一定水準以上に保っています。また、返済年限の分散化、調達の多様化に加えて金利スワップなどの金融商品を利用すること等により、金利変動リスクへの対応を行っています。

 

③ 信用リスク

当社グループは、与信管理規程に従い取引先の財務情報等を継続的に評価し、与信限度を設定するなど信用リスクに備えていますが、経営の悪化や破綻等により債権回収に支障をきたすなどの事象が発生した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

④ 固定資産の減損リスク

当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。事業環境等の変化により当該資産から得られる将来キャッシュ・フローが著しく減少した場合、減損損失が発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び債務は、年金資産の運用収益率や割引率等の数理計算上の前提に基づいて算出していますが、数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合や株式市場の低迷等により年金資産が毀損した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため年金資産の運用については、外部コンサルタントの助言をもとに、リスク・リターン特性の異なる複数の資産クラス・運用スタイルへの分散投資を行っており、年金資産全体のリスク・リターンの分析を定期的に実施することで、分散効果の有効性について評価を実施しています。

 

⑥ 繰延税金資産の取崩しリスク

当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を見積った上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しています。しかし、事業環境等の変化による課税所得の減少や税制改正等により回収可能性を見直した結果、繰延税金資産の取崩しが発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

配当につきましては、グループの業績状況や内部留保の充実等を総合的に勘案した上で、株主の皆様へ可能な限り安定した配当を継続して実施することを基本方針としています。また、会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めており、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会です。

これらを踏まえ、当事業年度は、期末配当は1株当たり10円を、2025年6月27日開催予定の定時株主総会で決議して実施する予定です。なお、同中間配当が無配であったため、年間配当金は1株当たり10円となる予定です。

内部留保金につきましては、今後の事業展開並びに経営基盤の強化、拡充に役立てることとし、企業価値向上に努めてまいります。

当事業年度に係る剰余金の配当は次のとおりです。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年6月27日

定時株主総会決議(予定)

1,158

10

 

(注)2025年6月27日定時株主総会で決議予定の配当金の総額には、「株式給付信託(BBT)」の信託財産として信託が保有する当社株式に対する配当金2百万円が含まれます。