2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。記載したリスクはいずれも事業及び業績に影響を与えうる「重要なリスク」ですが、中でも全社的に中長期的な成長のための指針として掲げている「ULURU Sustainable Growth」に関連性の高いリスクを「特に重要なリスク」として定義しております。

当社では、コンプライアンスの強化及びリスク管理の検討・審議・対策等を目的として、原則として、年2回以上開催するリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。同委員会では、以下に記載する主要なリスクに加え、さらなる潜在リスクの有無の想定やリスクの影響度の分析、対応策を立案・実行できる体制を整えております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(特に重要なリスク)

(1) 「ULURU Sustainable Growth」における人材採用の進捗停滞のリスク

当社グループが掲げる経営方針「ULURU Sustainable Growth」では、規律ある成長投資やM&Aなどによって、売上高・利益成長と株主還元の両立を目指しております。このうち、人的資本投資を中心的な投資項目と設定しており、特に人材採用の進捗が停滞すると「ULURU Sustainable Growth」の進捗に重大な影響が及ぶことが想定されますので、当社は当該リスクを「特に重要なリスク」と位置づけております。

当該リスクは、採用市場の環境変化などに起因する人材獲得競争の激化によって計画通りに採用が進まない場合に顕在化するものであり、顕在化した場合は、各種施策の停滞による事業成長の鈍化など、重大な業績への影響が発生することが予想されます。

当社では、当該リスクの顕在化を未然に防ぐために、実行可能な人材採用計画を立案し、必要と想定される予算を確保したうえ、採用部門と各部門が連携して効率的な採用活動を行ってまいります。また、2025年5月には組織拡大に伴う増床に際するオフィス環境の整備や柔軟な勤務制度の導入を行いました。求職者に、より訴求しやすい働く環境や制度を今後も検討・整備していくことで当該リスクの低減を図っていく次第です。

一方で、万が一リスクが顕在化した場合は、取締役会や経営執行会議などの意思決定会議体において、最新の採用市場の環境を踏まえた効果的な採用施策について議論を行うなど、適宜対応していく次第です。

 

(2) 人材採用過多に伴う固定費増大のリスク

当社は、「ULURU Sustainable Growth」のもと、優秀な人材獲得を目指してまいりますが、過剰に人材を採用してしまった場合は、計画以上に固定費を抱えるなど、重大な業績への影響が発生することが想定されます。このことから、当社は当該リスクを「特に重要なリスク」と位置付けております。

当社では、当該リスクの顕在化を未然に防ぐために、採用部門と予算管理部門が連携して採用状況の進捗をモニタリングするなど、一定の規律を以って採用活動を行う体制を構築しておりますが、万が一リスクが顕在化した場合は、取締役会や経営執行会議などの意思決定会議体において、最適な組織構成・人員配置を改めて議論することで、過剰採用した人材のパフォーマンスを更に向上させ、増加した固定費以上の業績への貢献を図るなど、適宜対応していく次第です。

 

(3) 人材成長の停滞リスク

当社は、「ULURU Sustainable Growth」のもと、人的資本投資を中心とした成長投資を行うことで成長を図ってまいりますが、人的資本投資の効果を最大化するためには、適切に育成していくことが重要だと考えております。人的資本投資は、ULURU Sustainable Growthの根幹を成す、中心的投資項目であるため、仮に人材の成長が停滞した場合は、当社全体の成長鈍化に繋がり兼ねないことから、当社は当該リスクを「特に重要なリスク」と位置付けております。

当該リスクを顕在化させないために当社では、「人の成長=企業の成長」という考えのもと、組織開発・人材開発に各種投資を行うことで人材の成長支援を図っております。エンゲージメントサーベイや当社が独自に掲げる「シナプス組織※」の定着度を測るためのシナプスサーベイの実施による定期的な組織状態のモニタリングや、これらサーベイの結果に基づく各種改善策の実施、レイヤー別の各種研修の実施や全社的なe-ラーニングシステムの導入による教育機会の提供、社内公募型のジョブリクエスト制度の展開によるキャリアデザイン支援などを行うことで、常に成長を感じられる環境・機会があり、安心して業務に専念できる状態が続く「人材成長定着企業」を目指してまいります。

※「コア」と呼ばれる上長・チームリーダーと、「コアラー」と呼ばれるメンバー間の双方向のコミュニケーションが高純度で行われることにより、組織全体にカルチャー・戦略が浸透していく組織体制

 

(4) 配当政策にかかるリスク

当社は、「ULURU Sustainable Growth」のもと、株主還元を重要な経営課題の一つとして位置付けており、TSR(株主総利回り)の向上に向けて、中長期的なEPS(Earnings Per Share)成長を重視しつつ、2025年3月期以降は、15%以上の配当性向を目安とした累進配当を基本方針としております。しかしながら、重要な事業投資を優先する場合やキャッシュ・フローの状況によっては、配当を実施しない、あるいは予定していた配当を減ずる可能性もあります。

当該リスクを顕在化させないためにも、「ULURU Sustainable Growth」のもと業績を拡大させ、着実に利益還元を行うことができる企業へと成長を図る次第です。

 

(5) 入札情報の様式・データ形式等の統一によるNJSSの独自性・優位性の希薄化のリスク

「NJSS」は、当社の主力SaaSであり、「NJSSを核とした入札マーケットの拡大」をすることを「ULURU Sustainable Growth」実現のための主要な施策と位置づけていることから、NJSSの独自性・優位性が希薄化した場合、「ULURU Sustainable Growth」の進捗に重大な影響が及ぶことが想定されますので、当社は当該リスクを「特に重要なリスク」と位置づけております。

現在、入札情報は入札実施機関ごとに様式・データ形式等が統一されておらず、独力での収集が困難である中、当社では数百名のクラウドワーカーが約8,800もの入札実施機関から人力で入札情報を収集しデータベース化できていることに「NJSS」の独自性・優位性がある状況です。当社としては約8,800もの入札実施機関の様式・データ形式等を統一するために必要となる労力・コスト・時間等を勘案すると当該リスクが顕在化する可能性は現時点では低いものと考えております。

しかしながら、万が一、当該リスクが顕在化した場合は、NJSSが誇る独自性・優位性の希薄化から顧客の他サービスへの流出による有料契約件数の減少並びに売上高や利益成長の鈍化といった重大な業績への影響が発生することが予想されます。

当該リスクへの対応策として、デジタル庁設立の動きなど当該リスクに関係する可能性のある行政機関の動向等を適宜チェックしているほか、NJSSとは価格及び情報の網羅性においてポジショニングを異にする入札情報検索サービス「nSearch(エヌ・サーチ)」、公共機関の事業(予算)情報や公開・統計情報、入札データからみる自治体の傾向・特徴、アプローチに必要な組織情報を一括検索・管理できる情報支援ツール「GoSTEP」、入札関連ノウハウとうるるBPOが保有する案件履行ノウハウを掛け合わせたBPaaS「入札BPO」などをはじめとする周辺サービスの展開、データベースの横展開等を通じて入札マーケット自体を拡大させシェアを獲得することで当該リスクが顕在化した場合でも事業方針をシフトすることができるような体制も整備していく次第です。

 

(6) コンプライアンスに関するリスク

当社はコンプライアンスを重視する風土の醸成とその定着を全社的に推進しております。この姿勢が失われた場合、重大な法令違反や不祥事が発生する懸念が高まり、会社の存続に深刻な影響を及ぼす可能性があることから、当該リスクを「特に重要なリスク」と位置づけております。

万が一当該リスクが顕在化した場合、当社グループ全体の社会的信用やブランド価値が損なわれるほか、損害賠償等による財務的損失を通じて、業績に重大な影響が生じるおそれがあります。一方で、こうしたコンプライアンス上のリスクを完全に排除することは現実的には難しく、継続的な管理と対策が不可欠であると認識しています。

このため当社では、リスク・コンプライアンス委員会を中心に、組織拡大や経営環境の変化に応じて、職務権限や組織構造などに関する各種規程を適宜見直すとともに、これらに準じた意思決定・承認プロセスの仕組み化を進めることで、常に不正が生じにくい仕組みを整備しています。

さらに、全役員・社員への教育啓発活動を実施するとともに、有事に備えた内部通報及びハラスメント相談窓口の整備をすすめることで、企業倫理の向上と法令遵守の強化を図り、強固なコンプライアンス推進体制の構築に努めていく次第です。

 

(重要なリスク)

(1) 大規模自然災害や感染症に関するリスク

大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症をはじめとする各種感染症の拡大により、当社グループの事業活動が停止し、業績への重大な影響を及ぼす可能性があることから、当社は当該リスクを「重要なリスク」と位置付けています。

当該リスクへの対応策として、各種緊急事態を想定した事業継続計画書(BCP)を整備しており、有事の際にはCISOを緊急対応責任者とする対策本部を速やかに設置するなど、事業継続に向けた体制を構築できるよう努めている次第です。

 

(2) 市場環境変動のリスク

市場環境の変動により顧客の購買意欲が減退した場合、当社グループの事業及び業績へ重大な影響を及ぼす可能性があることから、当社は当該リスクを「重要なリスク」と位置付けています。とりわけ、地政学リスクや感染症拡大等に起因するインフレ圧力の高まりによる個人消費の落ち込みは、主に一般消費者を対象とする「えんフォト」や「OurPhoto」などのサービスにおいて、業績への重大な影響が懸念されます。

当該リスクへの対応策として、該当サービスごとの消費動向を適宜把握し、リスク顕在化の兆候を早期に察知できるよう努めるほか、万が一兆候が確認された場合には、速やかに事業部内で対応策を検討し、必要に応じて意思決定会議体等での協議を経て、事業方針の見直しや打開策の実行を行う体制を整備している次第です。

 

(3) 競合他社の台頭のリスク

現在、国内でクラウドソーシング・サービスを展開する競合企業は複数存在しており、他社の成長によって当社の市場における独自性・優位性が希薄化した場合、当社の事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があることから、当社は当該リスクを「重要なリスク」と位置づけております。

しかしながら、当社グループは、クラウドソーシング・サービスに加え、そのワーカーをリソースとするCGS事業、及び企業のアウトソーシング・ニーズの受け皿となるBPO事業を展開しており、これらの相互連携によるシナジーを通じて、市場における独自性と競争優位性を築いていると考えております。BPO事業を通して社会のニーズを把握し、そこから得られた知見をもとにCGS事業を展開することで、各セグメント間で有機的な連携がうまれています。こうした経営体制は、当社が長年培ってきた業務運営力を背景とする唯一無二の強みであり、容易に模倣できるものではないと認識しております。

万が一、当該リスクが顕在化した場合は、当社の市場価値が相対的に低下し、顧客の流出による売上高や利益の減少といった重大な業績への影響が懸念されますが、こうした事態を未然に防ぐため、当社は上記の事業連携スキームのもと、新たなCGS事業を継続的に創出し、独自性と競争優位性の一層の強化に努めていく次第です。

 

 

(4) 法規制強化による既存事業への法的制約の発生や新規分野への事業展開に際する新たな法的制約の発生のリスク

現在、日本国内においてインターネット関連の主要な法規制としては電気通信事業法等があり、また、BPO事業に関連する法規制としてはe-文書法等が適用されます。当社は、これらの法規制を厳格に遵守する体制を整備しておりますが、今後、法規制の強化やCGS事業における新規領域への進出に伴い、多様な法規制や法改正に適切に対応する必要性が生じる可能性があることから、当社は当該リスクを「重要なリスク」と位置づけております。

当該リスクは合理的に顕在化の時期を見積もることは困難ですが、万が一当該リスクが顕在化した場合は、対応に要するコストの発生や、法律違反による信用の低下といった影響が懸念されます。

こうしたリスクの未然防止に向けて、当社は法務体制の整備・強化をすすめるとともに、顧問弁護士をはじめとする外部専門家との連携も深めております。新たな法規制が生じた際には、速やかに対応を行い、引き続き厳格な法令順守体制の構築に努めていく次第です。

 

(5) システム障害のリスク

当社グループの事業は、インターネット接続環境の安定稼働を前提として運営されており、システム障害などによりサービスの提供が滞った場合、事業活動に重大な影響を及ぼす懸念があることから、当社は当該リスクを「重要なリスク」と位置づけております。

当該リスクは、人為的なミスやシステムトラブルのほか、自然災害などさまざまな要因により顕在化しうるものであり、顕在化する時期を合理的に見積もることは困難だと考えておりますが、万が一当該リスクが顕在化した場合は、事業運営全体に重大な影響が生じる可能性があります。

当社では、2025年5月に組織拡大に伴うオフィス増床に際し、併せてネットワーク環境の見直し・強化を行ったところですが、今後も当該リスクの未然防止に向けて、バックアップ体制やセキュリティ強化の継続的な整備に努めていく次第です。

 

(6) クラウド・ソーシングビジネスにかかるリスク(知的財産権侵害、風評被害、個人情報流出等)

当社はクラウド・ソーシングビジネスを展開しており、不特定多数のクライアントとワーカーによる多様な案件の受発注を仲介するプラットフォームを提供しています。

このような性質上、当社のサービスユーザー間で第三者の知的財産権を侵害する行為や、メッセージを通じた風評被害、個人情報の流出、その他違法行為が発生するリスクが存在します。さらに、当社がワーカーの個人情報を大量に保有していることから、当社自身による情報流出のリスクも否定できません。

当該リスクが顕在化した場合は、当社の事業及び業績に重大な影響を及ぼすおそれがあることから、当社は当該リスクを「重要なリスク」と位置づけております。

登録ワーカーの行動を完全に統制することは事実上不可能であり、これらのリスクを完全に排除することは現実的ではありませんが、当社では、禁止事項を定めた利用規約を制定し、その内容に同意したユーザーのみにサービスを提供するなどの予防策を講じています。また、前述のリスク・コンプライアンス委員会を中心に、契約締結プロセスの見直しや、個人情報管理体制の強化といった対策も適宜実施しています。

さらに、当社が保有する個人情報の流出リスクについては、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けるとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得しています。加えて、子会社である株式会社うるるBPOにおいても、ISMS認証及びプライバシーマークを取得するなど、管理体制の強化を図っています。

万が一当該リスクが顕在化した場合は、速やかに状況を整理し、必要に応じて外部専門家の支援を受けながら、取締役会や経営執行会議などで迅速に意思決定を行い、適切な対応策を講じていく次第です。

 

 

(7) 国内BPO市場及び国内クラウド・ソーシング市場の縮小のリスク

当社は、クラウド・ソーシングビジネス及びクラウドワーカーを活用したCGS事業、並びに子会社である株式会社うるるBPOによるBPO事業を展開していることから、国内クラウド・ソーシング市場またはBPO市場が縮小した場合、当社の事業及び業績に重大な影響を及ぼすおそれがあることから、当社は当該リスクを「重要なリスク」と位置づけております。

しかしながら、クラウド・ソーシングは現代の多様な働き方を支える仕組みとして社会的に定着しており、BPO市場についても、矢野経済研究所「2024-2025 BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望」において今後も安定的な成長が見込まれるなど、当該リスクが顕在化する可能性は、現時点においては高くはないと考えております。

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、「ULURU Sustainable Growth」のもと、株主還元を重要な経営課題の一つとして位置付けており、TSR(株主総利回り)の向上に向けて、中長期的なEPS(Earnings Per Share)成長を重視しつつ、配当政策については、配当性向 15%以上を目安とした上で、累進配当を継続して実施することを基本方針といたします。

内部保留資金の使途につきましては、今後の事業展開のための資金として有効投資してまいります。

このような方針のもと、当事業年度末の配当金については、2025年6月26日開催予定の定時株主総会にて、1株当たり10円の普通配当を決議する予定であります。

当社は、剰余金の配当を行う場合は、中間配当と期末配当の年2回行うことを基本的な方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。当社は、「取締役会の決議によって、毎年9月30日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当をすることができる。」旨を定款に定めております。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年6月26日

定時株主総会決議予定

69

10