2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    112名(単体) 19,754名(連結)
  • 平均年齢
    43.0歳(単体)
  • 平均勤続年数
    16.0年(単体)
  • 平均年収
    10,316,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

日本

5,941

(1,170)

米国

4,597

(8)

欧州

3,369

(191)

アジア・オセアニア

4,360

(205)

サーモス

1,375

(864)

報告セグメント計

19,642

(2,438)

全社(共通)

112

(10)

合計

19,754

(2,448)

 (注)従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は年間の平均人員を( )外数で記載しております。

 

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与(千円)

112

(10)

43才

9ヶ月

16年

5ヶ月

10,316

 

セグメントの名称

従業員数(人)

日本

(-)

米国

(-)

欧州

(-)

アジア・オセアニア

(-)

サーモス

(-)

報告セグメント計

(-)

全社(共通)

112

(10)

合計

112

(10)

 (注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員、季節工を含む。)は年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与(税込)は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

 

(3)労働組合の状況

 当社には労働組合はありませんが、2025年3月31日時点において、当社の子会社である大陽日酸㈱等には、各社籍従業員にて、労働組合が組織されております。

 その他労働組合との関係について特記すべき事項はありません。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 管理職に占める女性労働者の割合

会社名

前事業年度

当事業年度

大陽日酸㈱

2.4%

2.5%

日酸TANAKA㈱

3.5%

5.0%

大陽日酸ガス&ウェルディング㈱

1.2%

1.2%

日本液炭㈱

大陽日酸東関東㈱

4.2%

4.8%

日酸運輸㈱

大陽日酸JFP㈱

2.5%

大陽日酸エンジニアリング㈱

1.8%

2.0%

極陽セミコンダクターズ㈱

日本メガケア㈱

5.4%

5.2%

アイ・エム・アイ㈱

8.1%

8.8%

サーモス㈱

5.7%

5.6%

(注)1.グループ会社のうち、常時雇用する労働者が101名以上の会社を開示対象としております。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

3.出向者については、当社グループからグループ外への出向者を含み、グループ外から当社グループへの出向者を除いております。

 

② 労働者の育児休業取得率

会社名

前事業年度

当事業年度

男性

女性

男性

女性

大陽日酸㈱

52.9%

150.0%

60.0%

100.0%

日酸TANAKA㈱

50.0%

66.7%

大陽日酸ガス&ウェルディング㈱

27.3%

28.6%

100.0%

大陽日酸エンジニアリング㈱

66.7%

100.0%

28.6%

(注)1.グループ会社のうち、常時雇用する労働者が301名以上の会社を開示対象としております。

2.育児休業取得率は、「育児休業開始者 ÷ 出産者(配偶者出産者) × 100」の算式で計算しております。

(育児休業開始者は休業開始日、出産者(配偶者出産者)は出産日を基準として人数を計上

しているため、育児休業取得率が100%を上回ることがあります。)

なお、男性の育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の

福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児

又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71

条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.出向者については、当社グループからグループ外への出向者を含み、グループ外から当社グループへの出向者を除いております。

4.出産者(配偶者出産者)が0名の場合は、「-」と表示しております。

 

③ 労働者の男女の賃金の差異

会社名

前事業年度

当事業年度

正社員

パート・

有期社員

全労働者

正社員

パート・

有期社員

全労働者

大陽日酸㈱

64.5%

50.0%

65.0%

66.0%

81.5%

66.9%

日酸TANAKA㈱

76.5%

52.9%

70.7%

77.1%

59.6%

71.7%

大陽日酸ガス&ウェルディング㈱

67.1%

56.4%

62.4%

68.1%

62.9%

64.4%

日本液炭㈱

64.5%

93.6%

64.6%

60.7%

80.5%

61.3%

大陽日酸東関東㈱

86.5%

68.5%

80.0%

日酸運輸㈱

65.2%

12.3%

40.9%

大陽日酸JFP㈱

81.4%

76.7%

80.6%

大陽日酸エンジニアリング㈱

78.7%

54.0%

67.5%

78.8%

55.0%

69.2%

極陽セミコンダクターズ㈱

65.9%

78.0%

63.9%

日本メガケア㈱

68.2%

54.9%

65.2%

アイ・エム・アイ㈱

81.2%

60.2%

69.9%

サーモス㈱

63.6%

47.7%

61.4%

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、男性の賃金に対する女性の賃金割合を記載しております。

2.平均年間給与(税込)は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

3.出向者については、当社グループからグループ外への出向者を含み、グループ外から当社グループへの出向者を除いております。

4.職位者や管理職、深夜業を伴う職種において男性比率が相対的に高い要員構成となっていることが男女間賃金格差の主な要因であり、女性の登用を促進することで格差の是正を進めてまいります。非正規従業員については、再雇用者や嘱託社員、アルバイト従業員など、職務内容や雇用形態の異なる複数の職群において男性比率が相対的に高いことから、男女間賃金格差が正規従業員に比べて大きい傾向があります。

5.2024年度より、開示対象を常時雇用する労働者が101名以上のグループ会社に拡大しております。開示対象外である年度については、「-」と表示しております。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、「革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。」というビジョンのもと、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを大切にし、サステナブルな成長及び企業価値のさらなる向上をめざしていきます。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

① ガバナンス

 当社グループは、取締役会の決議により、当社グループが社会から信頼され、持続的に発展していけるよう、サステナビリティに関わる各種方針を制定し、開示しています。取締役会の決議にもとづきグローバル戦略検討会議、グローバルリスクマネジメント会議、グローバル・コンプライアンス・コミッティを設置し、これらの会議を通じて、各種方針に基づいたサステナビリティに関わる当社グループの具体的な対応を検討しています。

 

≪グローバル戦略検討会議≫

 グローバル戦略検討会議は原則年1回開催され、代表取締役社長 CEO(Chief Executive Officer)を議長とし、執行役員、室長、監査役及び議長が指名する者で構成されています。当社グループの次年度予算の決議を行う前に、各事業会社の戦略について詳細を確認するとともに、当社グループ全体での最適な資源配分についての審議を行っています。会議内ではGHG排出量目標などの非財務を含めた財務・非財務の定量的・定性的目標進捗状況についても共有・議論を行っております。グローバル戦略検討会議で決定された事項のうち技術リスクに関する事項については、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議などで具体的な対応策が決定され、グローバルに展開しています。

 

≪グローバルリスクマネジメント会議≫

 グローバルリスクマネジメント会議は原則年1回開催され、代表取締役社長 CEOを議長とし、執行役員、室長、監査役、グループCCO(Chief Compliance Officer)、地域リスクマネジメント統括責任者及び議長が指名する者で構成されています。事業環境の変化の認識と企業価値の向上と毀損の両面からリスクの特定・評価を実施し、当社グループの重要リスクの選定、対応に関する事項、全社的なリスクマネジメントの基本方針、規程及び計画に関する事項などについて審議を行います。グローバルリスクマネジメント会議の詳細については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (3)グローバルリスクマネジメント会議」に記載しております。

 

≪グローバル・コンプライアンス・コミッティ≫

グローバル・コンプライアンス・コミッティは原則年1回開催され、グループCCOである議長と日本及び海外全7地域で任命された地域CCOで構成されています。当社グループのコンプライアンス推進と実効性の確保を目的に開催され、コンプライアンス推進方針及び各地域でのコンプライアンス違反事案、訴訟事案、コンプライアンス教育の実施状況報告を行うとともに、必要に応じて個別の課題などに関する審議を行います。審議事項には、当社グループ行動規範、方針の改廃、コンプライアンス推進年度計画、内部通報制度の運用上の課題に関する事項などが含まれます。

 

≪サステナビリティ統括室≫

 当社グループでは、CSO(Chief Sustainability Officer)の統括の下、「サステナビリティ統括室」が戦略の策定やリスクの審議をはじめ、サステナビリティに関わる活動全般について推進しています。

 サステナビリティに関する取組みなどの活動については、取締役会で適宜、報告しております。

 当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制図は、以下のとおりです。当社グループのサステナビリティの推進活動の充実・浸透を目的に、グローバル戦略検討会議を補完する会議体として、サステナビリティ推進委員会を2023年7月より新設いたしました。また、2024年4月より日本及び海外各地域に地域CSOを置き、各事業会社とのサステナビリティに関する議論・取組みを推進しています。

 

 

(図表1)サステナビリティに関する「ガバナンス体制図」

 

 

表:取締役会での主な非財務関連事項 報告・検討議題

2025年3月期

・非財務関連実績報告

・非財務KPI(NS Vision 2026)進捗報告

・各事業会社の非財務プログラム進捗報告

・CDP回答方針の報告

・MOS(Management of Sustainability)指標の次年度目標及び前年度実績報告

・取締役報酬に連動する非財務KPIの達成度報告

・TCFD開示拡充及びTNFD提言への賛同等に関する報告

・グローバル戦略検討会議及びグローバルリスクマネジメント会議報告

・グローバル・コンプライアンス・コミッティ報告

・方針改定の承認

“人権の尊重、社会への貢献および雇用・労働・健康に関するグローバル方針”

“調達方針”

 

② 戦略

 地球規模での環境問題やさまざまな社会課題の解決が求められる中で、企業活動においてもSDGsに代表されるようなサステナビリティへの取組みの重要性が増しています。このような状況の下、当社は2022年4月にスタートした中期経営計画「NS Vision 2026 - Enabling the Future」(以下、「NS Vision 2026」という。)の策定にあたり、企業存立の前提となる人権の尊重、保安安全、企業倫理という3項目を含め、24項目の新たなマテリアリティ(重要課題)を特定しました。当社グループは、行動規範に掲げる「革新的なガスソリューションを通じて、あらゆる産業のお客様の価値創造に貢献するとともに、人と地球の心地よい関係を創り、豊かで持続可能な社会の実現への貢献」に向け、新しいマテリアリティを踏まえた取組みを推進していくことで、サステナブルな成長及び企業価値のさらなる向上をめざしていきます。

 当社グループのマテリアリティの特定プロセス及びマテリアリティは、以下のとおりです。

 

《マテリアリティ特定プロセス》

Step1:課題の抽出

GRIガイドライン、国連グローバル・コンパクト、ISO26000などの国際的ガイドライン、SDGsやESG評価機関の評価項目を参照し、当社の事業活動に関係する環境、社会課題を抽出

Step2:社内アンケートとマテリアリティ候補の特定

グローバルでの従業員アンケートを実施し、各リージョン事業との整合、妥当性の確認及び「ステークホルダー」及び「自社」2軸での重要度を定量評価

Step3:社内議論と確定

絞り込んだ重要課題及びその優先順位付けについて経営会議、グローバル戦略検討会議及び取締役会においてその妥当性の議論、総合的評価を実施し、マテリアリティ・マトリックスを作成

Step4:承認

取締役会での承認を得て、特定

 

(図表2)マテリアリティ

 

③ リスク管理

 当社グループでは、当社グループ全体でリスクの管理体制を構築し、サステナビリティ関連の機会・リスクをマネジメントしています。具体的には、年1回開催するグローバル戦略検討会議及びグローバルリスクマネジメント会議において、サステナビリティ関連リスクの特定・評価を行っています。また、グローバル戦略検討会議では、各事業会社の機会についても議論・共有しています。これらの機会・リスクについては、サステナビリティ統括室が事務局を担当する、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議などで具体的な対応策が決定され、グローバルに展開しています。

 

 

会議体

リスクの特定・評価、マネジメントのプロセス

• グローバル戦略検討会議

• グローバルリスクマネジメント会議

• グローバル・コンプライアンス・コミッティ

• 技術リスク連絡会議

• 長期リスクの早期発見とその顕在化の防止、また顕在化したときに迅速な対応ができるよう、当社グループ各社でリスク管理体制を構築

• リスクの重要度は、発生頻度×財務又は戦略面への影響度により決定

• 年1回開催のグローバル戦略検討会議(議長:CEO)により、事業に関する財務又は戦略面での影響を評価

• 年1回開催のグローバルリスクマネジメント会議(議長:CEO)により、事業環境の変化の認識と企業価値の向上と毀損の両面からリスクの特定・評価を実施し、重要リスクを選定

• グローバル・コンプライアンス・コミッティ(議長:グループCCO)において、コンプライアンスに関する重大なリスクを特定・評価し、各地域の施策に反映

• グローバル戦略検討会議で決定された事項は、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議で具体的な対応策が決定され、グローバルに展開

 

④ 指標及び目標

 当社グループは、特定したマテリアリティに対して、当社グループ全体で取り組む8つの非財務プログラムを策定しました。「NS Vision 2026」において、これら8つのプログラムの推進による取組みの強化、充実を図っていくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。この取組みを進めるにあたり、非財務目標を設定し、各指標について毎年の進捗をモニタリングすることで、マテリアリティへの取組みを着実に推進してまいります。

 2025年3月期実績は、2025年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する「統合報告書2025」をご参照ください。

 

8つの非財務プログラムと非財務目標

プログラム名

取組み内容

非財務目標

NS Vision 2026

最終年度目標

(2026年3月期)

2024年3月期実績

Carbon Neutral Program Ⅰ

当社グループのGHG排出量の削減

GHG総排出量削減(注1)

18%

15.3%

Carbon Neutral Program II

環境貢献製商品による顧客のGHG削減

GHG削減貢献量

当社グループが販売する環境貢献製商品によるGHG削減量>当社グループGHG総排出量

7,454>5,667千t-CO2e

Safety First Program

休業災害度数率の低減

休業度数率(連結)(注2)

≦1.6

2.09

Talent Diversity Program

多様な人財活用の推進

女性従業員比率

≧22%

20.2%

女性管理職比率

≧18%

15.4%

Compliance Penetration Program

コンプライアンス教育の実施と徹底

コンプライアンス

研修受講率

100%

99.4%

Zero Waste Program

廃棄物の排出削減

Sustainable Water Program

水資源の有効活用

Quality Reliability Program

品質・信頼性の向上をめざした取組み

(注)1.欧州事業買収が完了した2019年3月期の実績を補正し基準年度として、該当年度の削減目標を設定します。

2.休業度数率

労働災害の発生頻度を表す指標であり、休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間で算出します。

 

(2)気候変動への対応

 当社グループは、人と社会と地球の心地よい未来の実現に向け、環境負荷低減や省エネルギー活動の推進、GHG排出量削減に貢献する製商品の拡大に取り組んできました。そして、2019年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、情報開示を進めてまいりました。今後も、新しいマテリアリティの一つである「気候変動の緩和と適応」を推進し、TCFDの提言及びSSBJ基準に沿った情報開示を実施していきます。

 

〔TCFDに沿った情報開示〕

① ガバナンス

 気候変動への対応にかかわるガバナンスに関しては、「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループでは、気候変動の事業への影響を把握し、気候変動の機会・リスクに対する当社グループ戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。

 「移行シナリオ(2℃未満シナリオ)」、「物理的気候シナリオ(4℃シナリオ)」による短期(~2025年)・中期(2025~2030年)・長期(2030~2050年)の時間軸を考慮し、機会・リスクの洗い出しを行い、各リージョンでの主にガスビジネスにおけるこれらの機会・リスクに対して〔影響を受ける可能性〕×〔影響の大きさ〕の指標を基に評価を行いました。当社グループにとって財務的に大きなインパクトを与えるマイナスの影響をリスクととらえ、プラスの影響を機会ととらえています。

 「移行シナリオ」では、国際エネルギー機関(IEA)のSustainable Development Scenario(SDS)、「物理的気候シナリオ」では、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)による地球温暖化シナリオ(RCP8.5)を参考にし、インパクト分析を行いました。

 なお、シナリオ分析により特定した事業機会を獲得していくために、代表取締役社長 CEOを議長としたカーボンニュートラルステアリングコミッティを組織し、グローバルメンバーで構成されたカーボンニュートラルエグゼクティブチームのもと、各事業会社がカーボンニュートラル社会の実現に向けた取組みを推進しています。

 当社グループの機会・リスクを整理し、調達、操業、製品・サービスにおいて考えられるインパクトを分析、統合化した結果は「図表3 TCFDシナリオ分析」のとおりです。

 

(図表3)TCFDシナリオ分析

タイプ

気候変動
リスク項目

評価

事業リスク

事業機会

当社の対応

移行

政策規制

カーボンプライシング制導入

〈中長期〉

・税負担の増加による収益減少

〈中長期〉

・早期対応の差別化による事業機会獲得

・PPAやグリーン電力証書による再生可能エネルギーの導入拡大

技術

低炭素な代替製品への置換・省エネの進展

〈中長期〉

・低炭素製品選別による既存商材の売上減少

〈短中期〉

・省エネによる収益幅増大

・低炭素化に資する既存製品の需要拡大

〈中長期〉

・低炭素化に寄与する環境貢献商材の事業機会拡大

・環境貢献商材の開発促進

・DX技術の導入などの生産性改善による省エネルギー化促進(SAITEKI導入(注)、配送最適化)

市場

市場ニーズの変化

顧客の事業活動の変化

〈長期〉

・既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少

・水電解プロセスの需要拡大に伴う副生O2ガスを活用した新規参入による売上減少

〈中長期〉

・ブルー/グリーン水素需要の拡大

・グリーン燃料の需要拡大

・CCUSに向けたCO2回収需要の拡大

・カーボンフリー(H2、 NH3)燃焼技術の導入推進/拡大

・酸素燃焼の利用拡大

・CCUSに対応した中規模CO2回収需要の獲得

・HyCO事業によるH2供給事業の拡大

・環境貢献商材の拡販

評判

業界批判

〈中長期〉

・GHG排出企業への投資家評価低下

〈中長期〉

・GHG削減貢献を示すことで安定した資金調達の継続

・統合報告書などによるGHG削減貢献の定量データの開示

・非財務情報の開示促進

物理

急性

災害の激甚化

台風頻発

豪雨・干ばつ

〈中長期〉

・異常気象に伴う災害による工場の操業停止

・支払保険料の増加

・災害対策の推進

・保険の活用

慢性

海面上昇

平均気温の上昇

〈長期〉

・気温上昇に伴う空気分離装置のランニングコスト増による収益幅縮小

〈中長期〉

・疾病治療に対する医療製品の需要拡大

・老朽化の進んだ空気分離装置のリプレースによるランニングコスト低減

・医療用酸素などの提供

(注)数値解析を用いた空気分離装置の最適操業手法

 

 シナリオ分析評価の結果「大」/「中」と判定された機会・リスクである下記の4項目に関して、自社事業への財務的な影響について新たに定量的試算を実施しました。試算結果は下記のとおりです。

カテゴリ

項目名

シナリオ

試算内容

試算結果

事業リスク

税負担の増加による収益減少

1.5℃

当社グループの2030年時点の炭素価格による財務影響額

594億~925億円

事業リスク

既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少

―鉄鋼分野におけるプロセス変更の見通し―

2℃未満

当社グループ及び関連会社の2050年時点の高炉向け酸素売上高

300億円

(現状の600億円から半減)

事業リスク

異常気象に伴う災害による工場の操業停止

4℃

2050年に100年に一度の洪水が発生した際の当社グループの生産拠点の被害額

360億円

(災害保険の適用を考慮時は180億円)

事業機会

ブルー/グリーン水素需要の拡大

1.5℃

2030年、2050年時点のブルー/グリーン水素の市場規模

13兆~41兆円(2030年)

60兆~218兆円(2050年)

 

上記試算結果の詳細

<リスク>カーボンプライシング導入:税負担の増加による収益減少

 当社グループは、2050年カーボンニュートラルをめざすとともに、GHG排出量を、2019年3月期を基準年度として、2026年3月期18%、2031年3月期32%削減に取り組んでいます。当社グループの2031年3月期のGHG排出量(Scope1+2)は、約455万トンの見通しであり、IEA WEO2023のNZEシナリオを踏まえ、2030年度の炭素価格単価を約1.3万~2万円/t-CO2e(90~140 米ドル/t-CO2e)と想定し、顧客に価格転嫁できない場合、その炭素価格による当社グループの財務影響額は、年間594億~925億円という試算となります。さらなるGHG削減に向けて、空気分離装置のリプレースやグリーン電力証書の購入、再生可能エネルギーの導入などを進めていきます。

<リスク>顧客の事業活動の変化:既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少

 当社グループ及び関連会社の高炉+転炉向け酸素の売上高は、当社グループ連結売上の5%程度(約600億円)と推計されます。IEA ETP2020のSDSシナリオにおける「製造方法別の製鉄量の見通し」を踏まえ、鉄鋼分野における酸素需要量の変動を考慮すると、当社グループ及び関連会社の2050年の高炉+転炉向け酸素の売上高は300億円という試算となります。鉄鋼分野において、今後、需要増が見込まれる電炉及び直接還元製鉄などにおいても酸素は利用されており、これらの需要獲得に取り組んでいきます。

<リスク>災害の激甚化:異常気象に伴う災害による工場の操業停止

 WRI(世界資源研究所)によるAqueduct Floodsのシミュレーションによる、当社グループの主要生産拠点130カ所について「4℃シナリオ・2050年」「100年に一度の洪水影響」の被害見通しを確認し、国内外17カ所について、0.1m以上の浸水被害が予想されました。国土交通省による「治水経済調査マニュアル(案)令和2年4月版」を踏まえ、浸水深に基づく「販売機会ロス(営業停止損失額)」及び「在庫・設備(償却資産)への損害影響」の算定式から拠点別の被害額を算定した結果、全拠点合計で、100年に一度の洪水1回当たり約360億円の被害が想定されました。一方で、すでに加入している災害保険の適用を考慮すると被害は約180億円まで低減できる試算となります。4℃シナリオにおけるリスクとして認識している水害リスクについては、主要な生産拠点の浸水の可能性を重要リスクとして特定しました。災害対策の推進や災害保険の活用などの取組みを引き続き進めていきます。

<機会>市場ニーズの変化:ブルー/グリーン水素需要の拡大

 IEA「Net Zero Emissions by 2050(2023update)」によると、ブルー/グリーン水素など低排出水素の需要は、主に2030年以降に拡大する見通しであり、2030年には70Mt-H2、2050年には420Mt-H2の需要が見込まれています。またIEAのNZEシナリオでは、ブルー/グリーン水素の水素製造コストがレンジで示されており、ブルー/グリーン水素合算で、2030年には13兆~41兆円、2050年には60兆~218兆円の市場が想定されます。脱炭素社会への移行に伴う機会として、HyCO事業によるブルー/グリーン水素供給事業などの拡大を進めていきます。

 

③ リスク管理

 気候変動への対応にかかわるリスク管理に関しては、「(1)サステナビリティ全般 ③ リスク管理」をご参照ください。

 

 

④ 指標及び目標

 当社グループは、カーボンニュートラル社会の実現を目指し、2050年までに当社グループのGHG総排出量の実質ゼロに取り組んでいます。「NS Vision 2026」では、2019年3月期を基準値とした当社グループのGHG総排出量削減目標を設定し、カーボンニュートラル社会への移行を推進しています。

 2025年3月期実績は、2025年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する「統合報告書2025」をご参照ください。

 

 

Scope1+2

単位

2019年3月期

(基準年)

2024年3月期

(実績)

2026年3月期

(目標)

2031年3月期

(目標)

GHG総排出量実績

千t-CO2e

6,688(注)

5,667

GHG量削減率

(基準年対比)

△15.3

△18

△32

Scope1:事業者が所有又は管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出

Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出

(注)基準値である2019年3月期のGHG排出量は、統合報告書での報告済みGHG総排出量実績に、米国HyCO事業、欧州事業、米国輸送、アジア・オセアニア輸送、米国子会社(Continental Carbonic Products, Inc.(2024年1月、Matheson Tri-Gas, Inc.に統合)、Western International Gas & Cylinders, Inc.)のGHG排出量を加算。

 

GHG排出量(千t-CO2e)

 

 また、当社グループでは、2026年3月期までに当社グループが排出するGHG排出量を上回るGHG削減貢献量を計上する目標に取り組んでいます。2024年3月期の時点で、目標水準はすでに上回っており、2026年3月期まで維持継続を目指していきます。

〔目標〕(環境貢献製商品(※)によるGHG削減貢献量)>(当社グループのGHG総排出量実績)

(※)SF6回収サービス、燃焼式排ガス処理装置、SCOPE-JET、エムジーシールド、レーザー加工用窒素ガス供給システム(PSA)、サーモスシャトルシェフ、水素ステーション、新冷媒、高炉/電炉の酸素富化燃焼、Ar溶接

 

 集計範囲:日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの連結子会社。なお、GHG削減貢献量実績には大陽日酸㈱の一部の関連会社を含んでいます。
「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン(経済産業省2018年3月)」等に基づいて算定。

 

単位

2024年3月期

(実績)

GHG総排出量実績

千t-CO2e

5,667

GHG削減貢献量実績

千t-CO2e

7,454

 

 当社グループでは、7つの産業横断的な指標の一つである内部炭素価格について、2024年4月より導入し、投資判断の際の指標の一つとして活用しています。価格については、IEA WEO2023のNZEシナリオを踏まえ、設定しました。

 

指標

内部炭素価格の種類

対象GHG排出量

価格

内部炭素価格

シャドウプライス

Scope1+2

85 米ドル/t-CO2e

 

(3)人的資本に関する開示

 当社グループの事業は、世界各地で活躍する約2万人の社員一人ひとりの能力発揮により営まれています。世界4極で展開する産業ガス事業グループ各社とサーモスグループに企業理念とグループビジョンのさらなる浸透を図り、グローバルで共通の価値観を持った人財を育成していくことで、当社グループのさらなる発展と「NS Vision 2026」の実現を目指しています。

 

① 基本的な価値観

 当社グループは、2021年2月に「人権の尊重と地域社会への貢献並びに雇用・労働・健康に関するグローバル方針」を制定し、すべてのグループ役員・従業員が本方針並びにグループ行動規範の下で、人権の尊重や適切な労働環境の整備などを通じて、企業としての社会的責任を果たすよう、社内研修等の機会を通して意識付けを行っています。

 また、当社グループはグループ理念タグラインとして「The Gas Professionals」を掲げています。グローバルに事業を展開する産業ガスメーカーとして社会的貢献を果たしたいという使命感を持つ人財の育成に取り組んでいます。その育成の際に大切にしている価値観が「体・徳・知」です。これは当社の前身、旧大陽日酸㈱の時代から脈々と受け継がれてきたものでサーモス事業にも共通する価値観です。海外のグループ会社においても、「体・徳・知」のエッセンスを踏まえて各社独自の価値観を加味するなど理解しやすい形で共有されています。

 

 

② 持続的成長のための人財育成戦略

 「NS Vision 2026」では、5つの重点戦略の一つであるサステナビリティ経営の推進における施策の一つとして、持続的成長のための以下3点の人財育成戦略を当社グループ全体で取り組む人財戦略として掲げて推進しています。

 

1. 多様な人財の受入れ及び働きやすさの確保

 変化の激しい事業環境や労働市場等に対応し、「NS Vision 2026」で掲げた5つの重点戦略やセグメント別戦略等を実現するため、性別や国籍を問わず、多様な人財の確保とその能力を十分に発揮できるよう働きやすい環境の整備を進めております。

 多様な人財とは、人種、国籍、民族、性別、年齢、専門性や異なる経験など様々なバックグラウンドを持つ個人を広く含む概念と捉えており、これらの人財の多様性を尊重し、受け入れることで、イノベーションの創出や経営の持続可能性向上につながると考えています。

 非財務KPIとして定めている女性活躍については、主に勤務形態を含む職場・就業環境に起因する要因から日本を含む一部の地域で取組みが遅れていることを踏まえ、「NS Vision 2026」の最終年度(2026年3月期)の当社グループ全体の定量的な目標値を定めて取組み(※)を進めています。

 

2023年3月期

(実績)

2024年3月期

(実績)

2026年3月期

(目標)

当社グループ女性従業員比率

19.9%

20.2%

22%以上

当社グループ女性管理職比率

14.5%

15.4%

18%以上

(※)取組み具体例

 相対的に女性活躍が進んでいる欧州では、将来的に経営幹部の役割を担う意欲のある女性管理職の社内認知度向上や能力開発を支援するメンターシッププログラムや、女性間の社内ネットワーク活動を推奨・支援する取組み等を推進しており、2021年から開始したメンターシッププログラムは総勢31名が参加し、本年夏より第3期が開始予定です。

 一方、日本では、大陽日酸㈱において、「大陽日酸 ダイバーシティ&インクルージョン宣言」の発信と2030年までの「D&I 中期アクションプラン」を策定しました。D&Iが当たり前となる企業風土の醸成をゴールに設定し、2024年度、2025年度は、「D&I推進の理解促進」、「風土醸成・意識改革」、「環境整備」の3つを取組みの柱とし、さまざまな施策を展開しています。D&I推進の理解促進においては、社長からのメッセージ発信の機会を増やすとともに、各地で全社員対象のタウンホールミーティングを開催し、社員同士の座談会の機会を設けるなど、社長や人事部門と社員との対話の機会を作りました。さらに、上級管理職における多様性の実現を目指し、女性リーダー育成強化策として、女性管理職を対象としたスポンサーシッププログラムや管理職候補層女性対象のキャリア・デザイン研修を開始しています。これらの取組みにより、情報発信、イベントの開催、研修を通じ女性活躍推進及び多様性推進を一層加速させています。

 

 また、あらゆる人財が能力を十分に発揮できる働きやすい環境であるか、企業理念やグループビジョンは浸透しているかなど、当社グループ従業員と会社との間のエンゲージメントの強さを測定する手段として、2022年度よりグループエンゲージメント調査を継続して実施しております。グループ各社が調査結果を分析し、エンゲージメント向上の改善アクションに取り組んだ結果として、エンゲージメントレベルは調査開始から順調に推移し、特に、2024年の調査結果では、グループ全体の改善領域として認識している多様性のカテゴリーが顕著な向上を示しました。今後も、調査から聞こえてくる「社員の声」やその変化に定期的に耳を傾け、社員が働きやすい環境を整備し、能力発揮の支援に繋げてまいります。

 

2. 地域を超えた人財交流の促進

 イノベーションを生み、仕事の生産性を向上させるためには、人財交流は非常に有効な手段といえます。消費地立地のビジネスモデルである産業ガス事業では、長い間それぞれの国・地域で続けてきた仕事のやり方をより良い方向に転換していくためには、異なる価値観や経験を持った人が互いに意見を出し合い、新たな気付きを持つことが必要です。当社グループでは、すでに各事業会社の優れた取組みを他の国・地域の事業会社へ共有して生産性向上によるグループ総合力強化に大きな成果を出しています。

 また、当社グループ全体で取り組むべき共通の課題への対応には、事業会社の枠を超えて、それぞれの分野で専門的な知見や経験を持つ世界中の優秀な人財が集まって施策に繋げることができるように、ネットワークや組織を構築することが有効です。当社グループでは、すでにITセキュリティ分野やカーボンニュートラル等のプロジェクトにおいてこのような体制を組んでいます。

 さらに、地域を超えた人財交流はこのような事業面の効果のみならず、当社グループを将来牽引していくべきグローバル人財に必要なコミュニケーション力・主体性・積極性・異文化理解等のスキルやマインドを会得・醸成する機会としても非常に有効であると認識しております。また、多様な人財を受け入れて職場内ダイバーシティを促進するという側面もあり、あらゆる形態で人財交流を積極的に推進してまいります。

 

3. 後継者育成計画の強化

 当社グループのガバナンス体制において、次世代経営者の育成は重要な課題であると認識しています。指名・報酬諮問委員会では次世代経営者の育成計画について議論を重ねており、当社グループに必要となる次世代経営者の資質や育成計画及び人財プールの在り方について検討を続けています。

 当社グループは世界各国で事業を展開している一方で主要事業である産業ガス事業は地産地消のビジネス特性を有しています。グローバルな経験と事業特性・知識に精通した人財を育成すべく、グループ各社の育成計画とも連携させて次世代経営者の育成に取り組んでいきます。

 

③ 人財育成戦略を実現するための体制

 上記グループ全体で取り組む人財戦略を推進するため、グローバル戦略検討会議等においてグループ会社に施策を共有して理解を得ながら一体となって取組みを進めております。

 また、世界各地に展開するグループ会社は、展開する国・地域ごとの労働関係法規や文化・慣習に沿ってそれぞれが直面しているさまざまな人事課題に対応しながら、定期的に開催しているグループ人事責任者会議において各社の人事施策に関する先進事例や取組みを相互に共有しグループ総合力の強化に貢献をしております。