2024年2月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。また当社のコントロールできない外部要因や必ずしもリスク要因に該当しない事項についても記載しております。当社はこれらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、リスク回避あるいは発生時に迅速に対応する所存ですが、当社の経営状況、将来の事業についての判断及び当社株式に対する投資判断は、本項記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 

(1)市場など自社を取り巻く環境に関するリスク

①業界市場について

 当社が事業を展開する国内DX市場及び国内AIシステム市場は成長を続けております。当社はこの市場成長傾向は継続するものと見込んでおり、その中で一定のシェアを獲得するべく、サービスの提供・拡販を図っております。

 しかしながら、市場の成長ペースが大きく鈍化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、市場の拡大が進んだ場合であっても、当社が同様のペースで順調に成長しない可能性があります。さらに、市場が成熟していないため、今後、大手企業による新規参入等により市場シェアの構成が急激に変化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②競争環境の激化について

 当社は、新規参入や新製品の普及など競争環境の激化を重要な課題として認識しております。DX市場の拡大に伴い、当社の属する市場に新規参入者が増えた場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は独自データの蓄積などを通じて、こうした脅威の軽減を図っています。具体的には、Googleアナリティクスを通じたアクセス解析データ等のビッグデータと、その分析から生まれる改善施策の成否といったノウハウを蓄積しております。

 

③Google LLCの動向について

 当社の「AIアナリスト」等はGoogle LLCが提供するGoogleアナリティクスと連携してサイトデータを取得し、データ解析をするサービスとなっております。当社は、継続的により良好な関係の維持に努めておりますがGoogle LLCの事業戦略の転換並びに動向によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④法的規制について

 現在のところ当社の事業継続に著しく重要な影響を及ぼす法的規制はありませんが、近年インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されてきております。今後、Cookieの使用の制限など、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット広告を含むインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等の規制や既存法令等の解釈変更がなされた場合には、事業運営に制約を受けることで、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社はユーザー企業からGoogleアナリティクス等による統計情報を取得しているにとどまり、個別の利用者端末に紐づくCookie情報等は受領していないため、近時の国内法の改正による当社事業への直接的な影響はないと考えられますが、海外動向も含め引き続き情報収集を継続してまいります。

 

⑤技術革新等について

 当社が事業展開しているインターネット関連市場では、情報技術の進化とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが求められております。当社としても、技術革新に応じたシステムの拡充・改善及び事業戦略の修正などを迅速に行う必要があるものと考えております。そのため、当社はアジャイル開発(*)を行うことで、迅速にシステム開発を行い機能の追加及びユーザビリティを強化する体制を敷いております。

 しかしながら、予期しない技術革新等があった場合、その対応に係る追加のシステム開発費用が発生する可能性がありますが、システム開発等の適切な対応に支障が生じた場合には、各サービスにおける競争力の低下及び顧客の流出等を招く可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(*)アジャイル開発とは、少人数の開発チームが特定機能の開発といった小さく切り分けたゴールの達成のために作業を進める体制をとり、納品を繰り返す開発スタイル。これまでのウォーターフォール型の開発では、最初に仕様を事細かに決めるので、開発を開始したのちの仕様変更には柔軟に対応できなかった。

 

⑥システム障害・不具合について

 当社の事業はインターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセスなどによって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能などのシステム障害が発生する可能性があります。当社は、システム障害の発生防止のために、システムの冗長化、脆弱性検査、不正アクセス防御等の対策を講じておりますが、これらの対策を講じているにも拘らず、障害が発生した場合には、当社に直接的損害が生じるほか、当社のサーバーの作動不能や欠陥等に起因する取引の停止等については、当社のシステム自体への信頼性の低下を招きかねず、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)ビジネスモデル等の自社の事業に起因するリスク

①特定経営者への依存について

 当社の代表取締役社長である大淵亮平は、当社設立以来、当社の事業に深く関与し、デジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有しており、経営戦略の構築やその実行に際して重要な役割を担っております。当社は、特定の人物に依存しない体制を構築すべく組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社における業務執行が困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 同様に当社の代表取締役である垣内勇威は、創業初期から当社の事業に深く関与し、デジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有しており、研究開発及び新規事業の立案やその実行に際して重要な役割を担っております。当社は、特定の人物に依存しない体制を構築すべく組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社における業務執行が困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②新規事業について

 当社では今後、市場のニーズにあったサービスをいち早く投入し、新規事業を立ち上げ続けることが重要な課題と認識しており、特に「ナレッジ」を顧客のニーズに即した形で届けるサービスの開発を継続的に行い、更なるステップアップを視野に入れた事業の収益性向上を目指してまいります。

 しかしながら、各新規事業・サービスは構想段階や市場投入から日が浅いものが多く、結果的に実現しない又は実現したとしても十分な収益が獲得できず撤退する可能性があります。当社といたしましてはテストマーケティングなどを行い、事前に十分な検証を行った上で開発等を開始する方針ではありますが、結果的に新規事業に失敗した場合、コストのみが計上されることから当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③単一事業であることについて

 当社の売上はDX事業の単一事業となっております。当社が属するDX市場の成長傾向は継続するものと見込んでおりますが、当該市場の成長が鈍化するような場合、事業環境の変化等への対応が適切でない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④特定サービスへの依存について

 当社はDX事業の単一事業であり、プロダクト事業を中心に、インキュベーション事業、人材マッチング事業等の事業を拡大させることによって当社の業績が向上する見通しです。

 収益源の多様性を持つことにより、より安定した体制の構築を目指すべく、サービスの拡大や、新たに当社の柱となる新規サービス・事業の開発に向け積極的に取り組んでおりますが、同サービス・事業が顧客のニーズと乖離した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤LTV(顧客生涯価値)について

 当社はDXプラットフォームを提供するため、顧客が当社のプラットフォーム上で当社に対して生み出す収益が、当社がその顧客を獲得するのに費やすコストをどれだけ上回るかが投資リターンを図る上で重要であると認識しております。そのため、顧客1社当たりの累積売上高であるLTV(顧客生涯価値)が重要と認識しております。当社は、新規サービスの投入及び既存サービスの機能強化を通じて、アップセル・クロスセルによる特定期間における売上高の増大及び契約継続率などを見ながら、LTV(顧客生涯価値)の維持・向上を図っていきます。しかしながら、何らかの施策の見誤りやトラブル等で特定期間の売上高または契約継続率が著しく低下した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑥プラットフォームビジネスにおける先行投資について

 当社が展開する「AIアナリスト」を中心としたプラットフォームビジネスは、開発人員及び営業人員の採用、広告宣伝活動等の先行投資を必要とする事業であり、結果として当社は創業以来2020年2月期まで営業損失を継続して計上しておりました。

 今後も、より多くの顧客の獲得を目指し、開発や営業などにおける優秀な人材の採用・育成を計画的に行うとともに、知名度と信頼度の向上のための広報・プロモーション活動、顧客獲得のためのマーケティングコスト投下などを効果的に進め、売上高拡大及び収益性の向上に向けた取り組みを行っていく方針であります。しかしながら、想定どおりの採用・育成が進まない場合、マーケティングPR等活動の効果が得られない場合等には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について

 当社では、役員、従業員、社外協力者等に対するインセンティブ等を目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は660,000株であり、発行済株式総数7,138,840株の9.2%に相当しております。

 

⑧情報管理体制について

 当社では、業務に関連して多数の顧客の情報資産を取り扱っております。そのため当社は、「情報セキュリティ管理規程」を制定し、コーポレート統括部の管掌のもと、情報の秘密区分指定と区分ごとの保管方法等を定めるほか、役職員に対する情報セキュリティに関する定期的な教育研修を実施するなど、情報管理体制の強化に努めております。また、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の国際規格であるISO27001の認証を取得しており、これに沿って、情報セキュリティ基本方針を策定するとともに、情報セキュリティ委員会を定期的に開催しISMSの適切な構築・運用についての審議を行っております。

 しかしながら、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社の社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨システム開発について

 当社は、システムに関わる投資・開発を継続的に行っております。当社の開発したサービスに不具合が生じた場合や、連携しているツールの仕様が大きく変わった場合、開発人員の獲得が進まないために開発が予定どおりに進まない場合など、利用者が損害を被った場合は、損害賠償の支払などにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩知的財産権について

 当社による第三者の知的財産権侵害の可能性については、専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、損害賠償請求や使用差止請求等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪内部管理体制の強化について

 当社は、今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制をさらに強化する必要があると認識しております。今後は人材採用及び育成を行うこと等により内部管理体制の強化を図っていく方針であります。しかしながら、事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫コンプライアンス体制について

 当社は、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのため当社は、「リスク・コンプライアンス管理規程」を制定し、当該規程に基づきリスク・コンプライアンス委員会を定期的に開催して全社的なコンプライアンスに関する事項の審議・検討を行うほか、定期的に社内研修を実施し、コンプライアンスに関する役職員の意識向上を図っております。しかし、これらの取り組みにも関わらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、現在当社は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することにより、更なる事業拡大を目指すことが株主に対する利益還元につながると考えております。

 将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

⑭ベンチャーキャピタル等の株式所有割合に伴うリスク

 当事業年度末現在でのベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下「ベンチャーキャピタル等」という。)の保有当社株式数は442,300株であり、発行済株式総数7,138,840株の6.2%に相当しております。

 このベンチャーキャピタル等が保有する当社株式は、キャピタルゲインを目的に市場で売却される可能性があり、当社株式の株価形成に影響を与える可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、事業の更なる成長と経営基盤の強化のために内部留保の確保及び充実を図りつつ、同時に、株主利益が最大となるよう配当への最適な配分を行うことを基本方針としております。

 現在は事業が成長過程にあると認識しており、調達した資金については財務体質と経営基盤の強化のために内部留保の充実に充てることが重要と考えているため、会社設立以来、配当は実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。将来的には、業績の推移・財務状況、今後の事業・投資計画等を総合的に勘案し、内部留保とのバランスをとりながら検討していく方針でありますが、現時点では実現可能性及びその実施時期等については未定であります。

 内部留保資金については、財務体質の強化と人員の拡充・育成をはじめとした収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に活用する方針であります。

 なお、剰余金の配当を行う場合は、原則として年1回の期末配当のほか、状況に応じて中間配当(その基準日は毎年8月末日として定款に定めております。)を行うことを考えております。また当社は、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨を定款に定めております。