2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループとしては必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する情報開示の観点から積極的に記載しております。当社グループは、これらリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、以下の事業等のリスクを慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 また、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、本有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 なお、当社グループは、当社グループの事業経営に影響を与える重要な事象を認識し、事業の発展成長を阻害するリスクを識別・分析・評価し、リスクの回避、低減、移転等の対応を実施するため、「グループリスクマネジメント規程」を整備しております。また、当社グループとして共通の方針の下に、統合的、効果的に統括、管理する機関として、「グループリスクマネジメント委員会」を設置しており、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを構築している他、持続的な成長を実現するため、当社グループ全体でのリスクマネジメントの推進に取り組んでいます。その他、当社グループ全体のリスクマネジメント方針並びに経営戦略及びM&A等の戦略的な意思決定に係るリスクの評価、対応については、当社取締役会の専決事項とし、これらの経営判断を行う際に適切なリスク評価を行っております。

 

①インターネット広告市場の動向及び競争環境について

 当社グループが主たる事業を展開するインターネット広告業界は、市場規模が過去十数年で急速に拡大いたしました。しかしながら、インターネットに限らず広告事業は一般的に景気動向の影響を受けやすい傾向があります。今後景気が悪化し、広告主が広告費用を削減する等、市場規模が想定したほど拡大しなければ、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 また、依然として激しい競争環境の中で、当社グループは競争優位性を確立し、競争力を高めるべく様々な施策を講じております。しかしながら、必ずしもこのような施策が奏功し競争優位性の確立につながるとは限らず、その場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

②人材の確保・育成について

 当社グループの成長を支えている最大の資産は人材であり、優秀な人材を採用し育成することや、業容拡大及びグローバル展開に応じて人材を継続的に確保することは、当社にとって重要な課題であると認識しております。したがって、より良い労働環境の整備、充実したサポート体制の構築、働き方改革の推進等を通じて、優秀な人材の確保と育成については最大限の努力を払っておりますが、人材獲得競争の激化や人材マーケットの需給バランスその他何らかの要因により、必要な人材の確保や育成ができなかった場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

③新規事業について

 当社グループは、今後も持続的な成長と収益源の多様化を進めるために、新規事業の創出や育成、新たな事業領域への参入に積極的に取り組んでいきたいと考えております。しかしながら、新規事業を開始した際には、その事業固有のリスク要因が加わると共に、新規事業を遂行していく過程では、急激な事業環境の変化をはじめとして様々な予測困難なリスクが発生する可能性があります。その結果、当初の事業計画を達成できない場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

④M&A(企業買収等)による事業拡大について

 当社グループは、事業拡大を加速する手段の一つとして、M&Aを有効に活用してまいる方針です。M&Aにあたっては、対象企業の財務内容や契約関係等についての詳細な事前調査を行い、十分にリスクを検討した上で決定しておりますが、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業の展開等が計画どおりに進まず、のれんの減損処理を行う必要が生じた場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。また、企業買収等により、当社グループが従来行っていない新規事業が加わる際には、その事業固有のリスク要因が加わります。

 

⑤海外事業について

 当社グループは、米国、アジア諸国等の多くの海外の国・地域で積極的に事業展開しており、海外事業の存在感は徐々に高まってきております。しかしながら、海外事業においては、グローバル経済や為替等の動向、投資や競争等に関する法令・各種規制の制定や改正、商習慣の相違、労使関係、紛争・テロ、国際政治等、様々なリスク要因があり、対策について最大限の努力を払っておりますが、これらのリスクが顕在化した場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑥個人情報管理について

 当社グループでは、いくつかの会社がその事業を通じて個人情報を取り扱っております。それらの会社では、「個人情報の保護に関する法律」等に則った個人情報保護方針を策定し管理体制を整備している他、「プライバシーマーク」や「ISMS」といった情報セキュリティに関する認証を積極的に取得する等、個人情報の適切な管理と流出防止については細心の注意を払っております。加えて、EU一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)をはじめとする、各国の個人情報保護の枠組みについても各種検討及び取り組みを進めております。しかしながら、システム上の不具合、社内外の関係者による過失や故意、犯罪行為等によって個人情報が流出する可能性は皆無ではありません。そうした事態が発生した場合、当社グループに対する損害賠償請求や信用の失墜につながる恐れがあり、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑦システムリスクについて

 メディアプラットフォーム事業の大部分及びデジタルマーケティング事業の一部のサービスにおいては、サーバを中心とするコンピュータシステムからインターネットを介して顧客にサービス提供しております。これらのサービスにおいては、システムの増強やバックアップ体制の強化等、安定稼動のために常に対策を講じておりますが、機器の不具合、自然災害、想定を超える急激なアクセス増、コンピュータウィルス等により、コンピュータシステムや通信ネットワークに障害が発生した場合や不正なアクセスによりプログラム等の内容が改ざんされた場合、サービスの停止を余儀なくされる他、状況によっては顧客からの信用が低下し、損害賠償を請求される等、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑧メディアプラットフォーム事業について

 当社グループが展開するメディアプラットフォーム事業にかかる市場は、ユーザーニーズの変化が激しく競合企業も多数存在しております。当社グループは、ユーザー満足度の高いメディア、プロダクト等を提供することに努め収益の増加を目指しておりますが、ユーザーニーズの変化や競争激化に対して適切な対応がとれず魅力的なメディア、プロダクト等を提供できない場合、収益が減少する等、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。また、メディアプラットフォーム事業においては、SNSやアプリマーケット等のプラットフォーム事業者を通じてユーザーにコンテンツを提供しております。そのため、これらの企業の事業方針の変更等により、取引条件が改変された場合やコンテンツの提供が継続できなくなった場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑨知的財産権について

 当社グループは、知的財産権の保護や管理についてその重要性を認識しており、各事業の運営にあたっては、第三者の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っております。しかしながら、手続き上の何らかの不備や役職員の過失等により第三者の知的財産権を侵害した場合、損害賠償や使用差し止めの請求を受け、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 一方で、当社グループが提供するサービスやコンテンツに関する知的財産権が第三者から侵害されないよう、その適切な保護に努めておりますが、何らか事情により当社グループの知的財産権が侵害された場合、競争優位性の低下等により当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑩内部管理体制について

 当社グループは、グループ企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置付け、多様な施策を講じております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じた場合、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑪特定顧客への依存について

 デジタルマーケティング事業においては、広告予算の増加やインターネット広告の費用対効果の向上等を背景に、特定の顧客との取引が大きく拡大し、売上構成比率が高まる可能性があります。このような場合、将来的に当該顧客企業の事業方針の変更や業績動向等、何らかの理由により当社グループとの取引が大きく縮小した場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑫法的規制について

 当社グループの主な事業領域においては、事業を展開する上で著しく制約を受ける法的規制は現時点ではありません。しかしながら、インターネットの利用形態が多様化する中で、今後、関連する法令等が新たに制定された場合、既存の法令等の改正や解釈の変化が生じた場合、あるいは法令等に準ずる位置付けで業界内の自主規制が制定されその遵守を求められるといった状況が生じた場合、その内容によっては当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑬事務リスクについて

 当社グループは、業務の遂行において担当者以外の第三者による二重確認の実施や各種情報システムの活用等、業務の正確性、効率性及びセキュリティレベルを高めるための様々な施策を講じております。しかしながら、人的な対応に委ねられている業務もあり、役職員の誤認識、誤操作等により事務処理のミスが発生する可能性があります。業務の性質によっては、事務処理のミスが、安定的なサービスの供給の妨げ、経済的な損失、個人情報等の流出等に繋がる可能性があり、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは、社内規程や事務処理プロセスの標準化及び文書化に取り組んでおりますが、当社グループの業容拡大に伴う組織の改編、社員の増加等により、業務遂行に必要な知識の共有、継承が不十分になる可能性があり、その結果生じ得る事務処理のミスの増加や生産性の低下が、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑭企業の社会的責任について

 当社グループは、社会の持続可能な発展のために、地球環境への配慮、労働環境の整備、人権の尊重等、企業の社会的責任を重要な経営課題と認識し、その実現に向けた行動を、サプライチェーンも含むあらゆる事業活動の中で取り組んでおります。しかしながら、当社グループの努力にもかかわらず、事業活動において、環境汚染、労働災害の発生等の労働安全衛生に係る問題、又は外国人労働者への差別等の人権に係る問題等が生じた場合、当社グループの社会的な信用が低下し、顧客からの取引停止又は一部事業からの撤退等により、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑮保有有価証券の急激な資産価値変動について

 当社グループは、業務提携先や投資先等の株式、余剰資金の有効活用のための各種金融商品等、個別企業の業績や金融市場の動向によって価格が大きく変動(下落)する可能性がある有価証券を保有することがあります。経済環境の急激な変化等によりこれらの資産価値が大きく下落した場合、評価損や売却損の計上を余儀なくされ利益が減少する等、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑯災害等による影響について

 当社グループが事業展開する国・地域において、自然災害や火災、気候変動に起因する異常気象(集中豪雨、洪水、水不足等)、致死率の高い強毒性の感染症等の世界的な蔓延(パンデミック)、戦争、テロリストによる攻撃等が発生した場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 また、当社グループでは事前の減災対策を行なうとともに緊急時の復旧手順や行動要領等をまとめた事業継続計画(BCP)を策定し、社員安否確認システムの整備等を通じた対策や訓練・教育を実施しておりますが、大規模な災害の発生等により追加の対策コストが必要となった場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 加えて、ウクライナ情勢、イスラエル・パレスチナ情勢等に伴う地政学的リスクや、これによる経済への影響等については、継続的に注視し適切に対応してまいります。当社グループは、直接的な影響は少ないものと認識していますが、軍事的対立が激化・長期化した場合、原燃料価格の高止まりや、世界的なインフレの加速といった間接的なリスクが顕在化し、不確実性が高まることにより、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 また、ESGの浸透を背景として、気候変動対策等の環境意識の高まりや社会意識の急速な変化、それらに伴う世界的な環境規制の強化や災害対策等の政府が推進する各種政策の変更が生じる可能性があります。外部環境の動向や変化を逐次見極めながら、迅速な対応に努めてまいりますが、事業戦略や体制の見直しが必要となった場合、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑰風評リスクについて

 SNS等各種メディアを通じ、当社グループの事業及び役職員に関する様々な内容の情報が流布されることがあります。これらの情報の流布は、正確な情報に基づいていないもの及び憶測に基づいたものが含まれている場合があり、内容の正確性や当社グループへの該当の有無に関わらず、顧客及びユーザー、投資者等の認識又は行動に影響を及ぼす可能性があります。当社の株価に重大な影響を与えかねない内容に関する不明確な情報が発生した場合、これらの不明確な情報に対する当社グループの見解を直ちに開示する等、投資者が正しい情報に則って当社株式の評価ができるよう資本市場に適切な情報を開示します。また同時に、当社グループのコーポレートサイトを通じて適切な情報発信に努めています。しかしながら、かかる情報の流布により結果的に当社グループの社会的信用が毀損され、顧客及びユーザーの離反を招く可能性があり、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑱株式会社電通グループとの資本業務提携について

 当社は、2018年10月30日付で株式会社電通(現商号 株式会社電通グループ)との間で資本業務提携契約を締結し、また、2021年10月28日付で株式会社電通グループとの間で新たな資本業務提携契約を締結しております。現在、当該資本業務提携契約に基づき、上場会社としての当社の独立性・自主性を維持のうえ、株式会社電通グループとの間で密接な事業上の協働関係を構築し、事業シナジーを最大化させるべく様々な施策に取り組んでおりますが、事後的に発生した想定外の事象や環境の変化等によって、当初期待した効果が得られない可能性がある他、将来、何らかの事由により資本業務提携が終了する可能性があります。これらの要因により、株式会社電通グループとの資本業務提携は、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の最重要課題のひとつとして認識しており、下記の方針に基づき機動的かつ適切な配分を実施してまいります。

 剰余金の配当につきましては、各事業年度の連結業績、財務体質の強化、今後のグループ事業戦略等を考慮して、親会社の所有者に帰属する当期利益に対する配当性向25%程度を目安に実施してまいりたいと考えております。さらに、原則として1株当たり年間配当金の下限を3円と設定することで、業績の拡大に応じた適切な利益配分を基本としながら、配当の継続性・安定性にも配慮してまいります。また、内部留保金につきましては、成長性・収益性の高い事業分野への投資とともに、既存事業の効率化・活性化のための投資及び人材育成のための教育投資として活用してまいります。

 当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を定める旨を定款に定めておりますが、当事業年度が決算期の変更に伴い15ヶ月間であることから、当事業年度の期末配当については株主総会を決定機関としております。毎事業年度における配当の回数は、期末配当の年1回を当面の基本方針としてまいりますが、将来的に想定される配当回数増加にも柔軟に対応できるよう、期末配当の他にも基準日を定めて配当を実施することができる旨を定款に定めております。

 

 当事業年度の利益配当金は、上記の基本方針に基づき、以下のとおりとさせていただきました。

決議年月日

配当金総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2024年3月27日

定時株主総会決議

1,086,174

5.2

(注) 上記の配当金総額には、役員報酬BIP信託が保有する当社株式に対する配当金9,175千円が含まれております。