2025年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)リスクと危機の管理体制

花王グループ中期経営計画「K27」では、基本方針として、1.持続可能な社会に欠かせない企業になる、2.投資して強くなる事業への変革、3.社員活力の最大化を掲げて取り組んでいます。詳細については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を参照ください。

気候変動や国際情勢の変化等を背景に、社会・経済環境の不確実性は一層増しています。また、グローバルでの事業展開の進展や事業ポートフォリオの見直しが進む中で、事業を取り巻くリスクは多様化・複雑化しています。こうしたリスクの変化に対して迅速かつ適切に対応することが求められています。このような事業環境に対して、当社グループは、次のようなリスクと危機の管理を進めています。

リスクとは経営目標の達成や事業活動の遂行に対し、不確かさがもたらす影響のことです。内部統制委員会の下の関連委員会の一つであるリスク・危機管理委員会が、「リスク及び危機管理に関する基本方針」に基づいて、脅威をもたらす「リスク」並びにリスクが顕在化した状態である「危機」の管理体制と活動方針を定めています。そして、部門、子会社、関連会社は、この活動方針に基づいて、リスクを把握、評価し、対応策を策定、実行することでリスクを管理しています。また、危機発生時には、緊急事態のレベルに応じた対策組織を立ち上げ、迅速かつ適切に対応することで、被害、損害の最小化を図ります。リスクと危機の管理活動は、経営会議が定期的(年1回)及び必要に応じて適時確認し、取締役会が承認しています。内部統制委員会はリスクと危機の管理状況をモニタリングし、管理の有効性を確認しています。詳細については「第4 提出会社の状況4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

持続的な利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献に悪影響を与えるリスクのうち、特に重要な14の主要リスクを、リスク・危機管理委員会、経営会議の審議の下で選定しています。また、少なくとも半期に一度、その時の事業環境の変化を踏まえた主要リスクの見直し(追加等の検討)を行っています。なお、「主要リスク」については、主管部門が対策方針を策定し、進捗管理を行っています。そして、これら主要リスクの中で、経営への影響が特に大きく、対応の強化が必要なリスクを「コーポレートリスク」としてテーマを決めて取り組んでいます。コーポレートリスクのテーマは、年1回、社内リスク調査の結果分析、外部環境の分析、経営幹部ヒアリングをもとに、リスク・危機管理委員会で検討を行い、経営会議でリスクテーマとリスクオーナー(各リスクテーマの責任者:執行役員)を決定しています。リスクオーナーは対策チームを立ち上げて、対応計画の策定、リスクのモニタリング、並びにリスク顕在化時の対応を実施し、年4回開催するリスク・危機管理委員会が進捗管理を行っています。

リスクと危機の管理活動のプロセス


これら主要リスクは、5年以内に顕在化する可能性があるリスクです。なお、主要リスクの記載順は重要性を反映しており、当連結会計年度末における認識です。記載されたリスク以外のリスクも存在し、それらが投資家の判断に影響を与える可能性があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)主要リスク

14の主要リスクのうち、「コーポレートリスク」として取り組んでいるものについては○を表示しています。また、主要リスクのリスク評価(影響・蓋然性の認識)の変化を対前期で三段階(上昇、状態が変わらない、低下)で示しています。

主要リスクの名称

コーポレートリスク
 としての取り組み

リスク評価の変化

大地震・自然災害・事故


デジタルトラスト

 


地政学


原材料調達

 

 


市場・競争環境の変化

 


製品等の品質


コンプライアンス

 


人財確保


パンデミック

 


社会課題への対応

 

 


レピュテーション


為替変動

 


事業投資

 


訴訟

 


 

 

リスク評価(影響、蓋然性の認識)の変化


:上昇


:状態が変わらない


:低下

 

 

 大地震・自然災害・事故

 

(背景)

化学プラントでの事故や、自然災害が多く発生している昨今、大規模化学プラントを有する企業への安全操業に対する要求はますます高まってきています。

 

(リスクと影響)

  ・大地震や気候変動に伴う大型台風、洪水等の自然災害により、従業員、設備、サプライチェーン等の被害で、市

    場への製品供給に大きな支障をきたした場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

  ・当社グループの工場で、火災・爆発事故等により従業員や周辺地域に大きな被害が発生した場合、経営成績に重

    大な影響を及ぼすとともに、社会の信用を失う可能性があります。

 

(対応)

火災、爆発及び化学物質漏えいを防止し、安全で安定な操業を維持するために社内監査に加えて外部機関による定期的な評価を通じて保安力の強化に努めています。大地震、大型台風、洪水等をはじめとする自然災害の発生を想定した対応体制の整備、設備対応並びに社員の教育・啓発、定期訓練を行い、緊急事態に備えています。

コーポレートリスクテーマ「大地震・自然災害・BCP対応」として、日本の長期操業停止を想定した首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火等に対する影響分析と対応検討を進めています。また、海外拠点のBCP強化に取り組んでいます。

 

 

 

 

デジタルトラスト

 

(背景)

当社グループは、ITやAIを活用した事業運営や業務の効率化を進めるとともに、SNSや様々なデータを活かしたビジネスを展開しています。こうしたデジタル技術の普及に伴い、生活者/顧客/従業員が安心してデジタル環境を利用できる“デジタルトラスト”の確立が重要です。デジタル化の進展に伴い、様々な情報資産を扱う中で、その適切な保護は不可欠です。当社では、研究開発・生産・マーケティング・販売等に関する機密情報や多くのお客様の個人情報等を取り扱っており、情報セキュリティポリシーに基づき、情報資産の保護を徹底しています。加えて、主要システムの安定稼働及び事業継続の観点から、サイバー攻撃等への対策強化に取り組んでいます。

 

(リスクと影響)

  ・ランサムウェアや標的型メール等によるサイバー攻撃は多様化・巧妙化しています。これらのサイバー攻撃によ

    り、当社グループの社内システムが影響を受け、事業活動が一時的に停止又は遅延する可能性があります。ま

    た、当社グループが保有する機密情報や個人情報等が不正に取得される・漏えいするリスクがあります。

  ・取引先や委託先等がサイバー攻撃を受けた場合にも、その影響が当社グループに及ぶおそれがあります。

 これらの事象が発生した場合、システム停止等による事業活動の中断、復旧対応や損害賠償等の費用の発生、並

 びに社会的信用の低下が生じる可能性があります。その結果、目標とする売上高及び利益を確保できず、当社グ

 ループの経営成績、財政状態及び企業価値に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

当社グループは、人的・組織的対策及び技術的対策を組み合わせ、サイバーセキュリティの継続的な強化に取り組んでいます。

人的・組織的対策として、日本及び海外の情報セキュリティ委員会を通じ、当社グループ全体で規程・ルール及び推進体制を整備し、啓発活動や教育等を進めています。

技術的対策として、セキュリティ強化に関するロードマップに基づき、アクセス制御・認証(多要素認証等)、監視・検知、脆弱性管理等の対策を強化しています。加えて、ランサムウェア等に備え、隔離(オフライン)環境へのバックアップ取得及び復旧計画を整備し、事業継続性の確保に努めています。

サプライチェーンのセキュリティリスクを把握し低減するため、サプライヤー・製造委託先等を対象にセキュリティ対策状況の確認を実施しています。その結果を踏まえ、必要に応じて改善に向けた働きかけを行うなど、サプライチェーン全体としてのセキュリティの強化に取り組んでいます。

また、インシデント対応に関する手順を整備し、発生時に迅速かつ適切に対応できる体制の強化に取り組んでいます。重大なインシデントに備え、サイバー保険にも加入しています。重要なリスクや対応状況については、経営層に定期的に報告しています。

なお「サイバー攻撃対応」は、コーポレートリスクテーマとして取り組んでいます。

機密情報/個人情報保護ならびにAIやSNS活用に伴うリスク対策の強化を加えたデジタルトラスト全般を確立することを目指しています。

 

 

地政学

 

(背景)

当社グループが事業展開している複数の国・地域において地政学リスクが高い状態にあります。また、原材料調達を実施している国・地域においても、地政学リスクが高まる可能性があります。

 

(リスクと影響)

 ・地政学リスクが高まっている国・地域において、政治的・社会的情勢の不安定化、外交関係の緊迫化、そして、

    紛争等により、事業を取り巻く環境が悪化し、人的被害の発生、サプライチェーンの寸断による操業の一時停

   止、生活者の購買行動の変化が発生した場合、目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。

 

(対応)

地政学リスクが高まっている国・地域においてリスクシナリオを作成し、特に注意すべき国・地域に対しては、対応体制を整備し、政治的・社会的状況をモニタリングしています。社員の安全確保に関するガイドラインを策定し、また、原材料調達等のサプライチェーン寸断に伴う事業への影響を確認してサプライチェーンネットワークの強化を進めています。

なお、「地政学リスク対応」は、コーポレートリスクテーマとして取り組んでいます。

 

 

原材料調達

 

(背景)

 当社グループで使用している天然油脂や石油関連の原料の市場価格は、世界景気、地政学的リスク、需給バラン

ス、異常気象、為替の変動等の影響を受けます。

   また、原材料はパーム油や紙・パルプ等の自然資本に大きく依存しており、省資源、地球温暖化防止、生物多様性

 保全等の環境側面、安全・衛生、労働環境、人権等の社会側面に十分配慮し、持続可能な調達を実現することで、

 業としての社会的責任を果たしていく必要があります。

 

(リスクと影響)

 ・原材料の市場価格に急激な変動が生じた場合、目標とする利益が得られない可能性があります。

 ・原材料には、調達上希少な原材料も一部含まれており、安定調達に関わるリスクがあります。需給の変動等によ

   る市況の急激な変化や、サプライヤーのトラブル発生により製品の市場への供給に支障をきたした場合、目標と

   する売上高、利益が得られないだけでなく、当社グループの信用の低下につながる可能性があります。

 ・サプライチェーン上の何らかの理由で、持続可能で責任ある調達への取り組みが不十分と見なされた場合、当社

   グループのブランドイメージ、信用の低下につながる可能性があります。

 

 (対応)

    当社グループは、原材料価格の上昇に対して、原価低減や売価への転嫁等の施策を行い、その影響の軽減を図っ

  ています。安定調達に関わるリスクに対しては、主力サプライヤーでの設備増強と、リスク分散のためのセカンド

  サプライヤーの確保を進めています。また、サプライヤーとの契約見直しや協働を積極的に行い、リスクの低減を

 進めています。

    一方、持続可能で責任ある調達の実践に向けて、“お取引先とのESG推進活動”ガイドラインを公表し、サプライ

  チェーン上での人権保護や環境保全の確認を進めています。特にリスクの高いサプライチェーンをハイリスクサプ

  ライチェーンと定義し、本質的な課題解決に向けて、サプライヤー並びにNGOとの連携の下、取り組んでいます。ま

  た、原材料の使用量削減や、非可食バイオマス由来の原材料等への転換にも取り組んでいます。

   Sedexによるサプライヤーのモニタリング、サプライヤーのコンプライアンス違反ゼロに向けた監査体制の整備、

  CDPサプライチェーンプログラムの取り組み、また、"お取引先に求めるパートナーシップ要件”ガイドラインを定

  め、サプライヤーとの連携を強化しています。

    ハイリスクサプライチェーンとして位置づけているパーム油の持続可能な調達を目指し、インドネシアの小規模

  農園に対し、「生産性向上と持続可能なパーム油に対する認証取得を支援するプログラム」を現地のパートナーと

  協働で実施しています。

    これらの取り組みを積極的かつ透明性をもってステークホルダーに公開しています。

 

 

市場・競争環境の変化

 

(背景)

   「日本を起点としたビジネスモデル」から、「グローバルを軸とするビジネスモデル」への転換を進めています。

 ヘルスビューティケア・化粧品事業を中心に、注力ブランドへ経営資源を重点的に配分することで、グローバルに

  おける競争力の強化を図っています。一方、グローバル市場では、グローバル大手企業による積極的なブランド投

  資や新興・地場メーカーの台頭により、競争環境は一層激化しています。

 また、顧客のブランドや商品に対する認知・購買・推奨に至るまでのカスタマージャーニーにおける接点は、デ

 ジタルを中心としたものへと大きく変化し、広告宣伝をしっかりとターゲットにリーチできるメディア戦略がより

 重要になってきています。さらに、各国・地域ごとに市場構造や競争環境は異なり、中国市場における需要変動や

 ASEAN市場での中間層拡大等、事業環境は引き続き変化しています。こうした状況の下、事業ポートフォリオやブラ

 ンド戦略に加え、取引先との共創を通じた販売・流通のあり方についても、各地域の特性を踏まえた柔軟かつ迅速

 な対応が求められています。

 

(リスクと影響)

  ・デジタルを起点とした顧客接点の変化によりカスタマージャーニーは大きく変化・多様化し、従来のマスメディ

    アではリーチできない生活者が増えてきています。更には、プライバシー規制の強化やデジタルプラットフォー

    ム(EC・SNS等)による顧客データへのアクセス制約、並びにEC/D2C等を中心としたチャネル構造の急速な変化

    により、顧客ニーズや購買行動の変化を十分かつタイムリーに把握することが困難となり、その結果、それらを

    商品開発、マーケティング等に的確に反映できず、ブランド競争力の低下につながる可能性があります。

  ・各国・地域ごとに異なる市場特性、競争環境が急激に変化し、事業ポートフォリオやブランド戦略、販売・流通

    の見直しが適切かつタイムリーに行えない場合、事業計画を達成できない可能性があります。

 

(対応)

こうした激化する市場・競争環境の変化に対応するため、注力すべき事業・ブランドを明確化し、経営資源を重点的に配分しています。注力ブランドを軸として、グローバル全体でのブランド一体運営体制の整備を進めることで、ブランド価値の一貫性を確保しつつ、各市場における競争力の向上に取り組んでいます。

顧客起点の考え方に基づき、多様化したカスタマージャーニーに対して効果的かつ効率的なコミュニケーション戦略を立案するとともに、社内ナレッジの蓄積を推進しています。さらに、顧客データや市場情報を活用した顧客理解の高度化を進め、顧客ニーズや購買行動の変化を的確かつ迅速に把握し、その知見をマーケティング・販売活動や製品・サービスの改善へ反映することで、ブランド価値の向上を図っています。

事業戦略や販売・流通のあり方について、事業とエリアの視点を組み合わせた意思決定により、地域特性に応じた見直しと経営資源配分の最適化を柔軟かつ迅速に進めて行くことを目指しています。

 

 

 

製品等の品質

 

(背景)

当社グループの品質保証活動の基本は、「花王ウェイ」で示された生活者・顧客起点の心を込めた“よきモノづくり”です。原材料から研究開発、生産、輸送、販売までのすべての段階において、徹底した生活者・顧客視点で、高いレベルで製品の安全性を追求し、絶えざる品質向上に努めています。社会においては、生活者の品質価値の多様化、化学物質の安全性への懸念や環境問題への意識の高まり、さらには、企業の透明性を促す情報開示要求等の変化が起こっており、また、クロスボーダーのモノづくりや商流がグローバルに進展しています。一方、各国・地域は、持続可能な社会や生活者保護の強化を目指して、新たな法規制の枠組み作りに動き出しています。

そのような中、当社グループは、市場の多様化と価値観の変化を機会と捉え、新規技術開発に挑戦し、新規分野への事業展開も計画しています。

 

(リスクと影響)

  ・重大な品質問題の発生はブランドの問題だけではなく当社グループ全体の信用低下につながる可能性がありま

    す。また、新たな安全性や環境問題の発生や各国・地域の急激な法規制の変更に対して適切かつ迅速に対応でき

    ない場合には、タイムリーな商品提供機会を失う可能性があります。

 

(対応)

当社グループでは、製品関連法規の遵守並びに自主的に設定した厳しい基準に従って、設計、製造を行っています。発売前の開発段階では、徹底的に試験、調査研究を行い、品質と安全性を確認しています。発売後には、生活者相談窓口を通じて、商品への意見、要望等をくみ上げ、さらなる品質向上に努めています。

化学物質の安全性懸念や環境問題に対する要求に先回りした商品開発の推進、積極的な情報開示による品質保証活動の見える化とステークホルダーとのコミュニケーション強化に取り組んでいます。さらには、各国・地域の新たな法規制に対する影響分析、法規制への適合性を迅速に確認できるシステムの構築に取り組んでいます。

また、コーポレートリスクテーマ「重大品質問題対応」として、品質問題により重篤な被害が生じた場合に被害を最小化するための全社対応の強化と、重大品質問題発生防止に向けた社内啓発の強化を進めています。

 

 

コンプライアンス

 

(背景)

事業活動を行う上で、製品の品質・安全性、知的財産、環境保全、保安防災、労働安全、化学物質管理、取引管理、情報開示等の法規制等に対する企業の取り組みの強化が求められています。

 

(リスクと影響)

  ・世界的競争が激化する中で、差別化、販売スケジュールや製品納期の順守、業績目標達成等の圧力により不正リ

    スクが高まることが懸念されます。

  ・在宅勤務と出社を組み合わせたハイブリッドワークが普及し、働き方の多様化が進む中で、職場での接点が減少

    しています。加えて、コンプライアンスに対する過剰な警戒が職場のコミュニケーションを希薄化させ、人間関

    係や職場環境に悪影響を及ぼすことがあり、ハラスメントや労務管理上のコンプライアンスリスクが増加する可

    能性があります。

  ・当社グループ及び委託先等が重篤なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの信用、財政状態及

    び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

  当社グループは、「正道を歩む」(法と倫理に則って行動し、誠実で清廉な事業活動を行う)をコンプライアンスの原点と位置づけ、すべてのステークホルダーの支持と信頼にこたえていくための指針とし、行動規範である「花王ビジネスコンダクトガイドライン」の継続的な教育やコンプライアンス通報・相談への適切な対応等の活動を進めています。ハラスメントや労務管理上のコンプライアンスリスクについては、トップメッセージやケーススタディ等を通じて気づきを与えています。さらに、職場での相互理解を深めるための取り組みとして、対話促進活動「対話フェス」も行っています。また、重篤なコンプライアンスリスクの低減にフォーカスした活動として、事業に適用される法令遵守推進を計画的に実施し、特に重要な法令についてはその実施状況をコンプライアンス委員会がモニタリングしています。重篤なコンプライアンス違反を発見した場合、すぐに経営陣に報告され適切な対応を行えるよう、風通しの良い職場の実現を目指した活動を推進しています。

 

 

人財確保

 

(背景)

当社グループの「グローバル・シャープトップ」戦略を支える重要テーマは、最大の強みであり資産でもある「人財」の活力最大化です。しかし、グローバルでの人財の獲得競争は激化しており、また、個人のキャリアや働き方に対する価値観がこれまで以上に多様化しています。

 

(リスクと影響)

  ・大きな環境の変化を先取りし、各分野で必要とする高度な専門性を持つ人財や、変化を先導するリーダーとなる

    人財の獲得と育成が推進できない場合には、中期経営計画「K27」の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

社員活力の最大化に向けて、多様なバックグラウンドや専門性を持つ人財が、大きな挑戦と国や地域、組織を超えた共創により、能力と個性を最大限に発揮するための取り組みを推進しています。

多様な人財が集い、活躍できる場を整備(フレキシブルな働き方の推進、DE&I推進、社内公募制度等)することで、人財獲得においての優位性を維持できると考えています。また、自学共生の機会の提供(業務を通した経験の拡大、DX等の先端教育を自律的に学べるプログラムの導入等)や自律的なキャリア形成を促進することで社員のさらなる成長が期待できます。

これらの取り組みに加えて、持続的な成長を支える人財の配置・育成や効果的な組織運営については、コーポレートリスクテーマとしても認識し、経営トップをメンバーとする人財企画委員会で毎月議論し、推進しています。

 

 

パンデミック

 

(背景)

感染症を取り巻く環境は常に変化しており、耐性菌による治療困難な感染症の再拡大を含む新興・再興感染症の出現により、パンデミックの発生が引き続き懸念されています。こうした感染症は拡大の時期や規模を予測しにくいことから、平時から有事を想定した準備や対応策を整えておくことが重要です。

 

(リスクと影響)

  ・パンデミックが発生すると、当社グループの拠点やサプライチェーン上での集団感染の発生やロックダウン等に

    より、製品やサービス提供に支障が生じる可能性があります。

  ・パンデミックにより外出等の日常生活ができなくなると購買行動にも変化をもたらし、化粧品市場等が縮小する

    可能性があります。このような事態が発生した場合、目標とする売上高、利益から大きな乖離が生じる可能性が

    あります。

  ・パンデミックにより社員の日常生活が制限され、出社制限や感染予防策の必要、医療へのアクセス制限等が生じ

    る可能性があります。これにより、社員の健康管理や就労継続に影響が生じ、当社グループの事業活動の安定的

    な運営が困難となる可能性があります。

 

(対応)

コーポレートリスクテーマ「パンデミック対応」として、新型コロナウイルス感染症時の経験もふまえ、ガイドラインの改訂や各国行動計画の策定・更新、備蓄品の見直し等を通じて、社員の安全確保と事業継続の両立を図る体制整備を進めています。

 

 

社会課題への対応

 

(背景)

   気候変動、プラスチックごみ問題、水資源の枯渇、生物多様性の損失、有害化学物質による汚染、原材料調達を含

 むバリューチェーン全体における環境や人権問題、そして、高齢化社会の進行や衛生問題等の社会課題の増大は、健

 康、安全、環境等に対する生活者の意識を高め、エシカル消費の潮流やサステナビリティに対する顧客ニーズの高ま

 りをもたらしています。

   これら社会課題の解決に向けて、中期経営計画「K27」とESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(KLP)を統合的に推

 進しています。原材料の調達から生産、製品の使用、廃棄に至るあらゆる段階でのイノベーションを目指すととも

 に、社会・環境の両視点から花王が優先的に取り組むべき19の重点取り組みテーマについて目標(KPI)を設定し、

 全社全部門が取り組み、社会のサステナビリティへの貢献を目指すと同時に、活動内容を積極的にステークホルダー

 に開示し透明性の高いエンゲージメントに努めています。

 

(リスクと影響)

  ・社会課題の解決に向けた取り組みが目標に対して不十分である、あるいは不十分と見なされた場合、製品やサー

    ビスを生活者や顧客に受け入れていただけず、目標とする売上高、市場シェアが得られない可能性があります。

  ・KLPでコミットメントしたKPIの進捗状況を十分に示せないと、「グリーンウォッシュ」※1 と捉えられる等企業

    価値の低下につながる可能性があります。一方、グリーンウォッシュを恐れ、積極的なESGに関する情報開示や発

    信を控えると、「グリーンハッシング」※2 として、社会、顧客からの信頼低下のリスクにもつながります。

  ・気候変動については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言へ

    の取組)」で示した「主な事業リスクと機会」に記載している移行リスク(炭素税の導入・引上げ、プラスチッ

    ク規制の導入、エネルギー価格の上昇、原材料価格の上昇)と物理リスク(異常気象の激甚化)があります。

  ・バリューチェーン全体での人権侵害や人権への配慮不足と見なされた場合、社会、顧客からの信頼低下を招き、

    事業活動に支障をきたす可能性があります。

  ・化学物質に関する規制変更に対して適切かつ迅速に対応できない場合、事業活動への影響だけでなく、社会、顧

    客からの信頼低下を招くリスクがあります。

  ・サステナビリティに関する情報開示は、日本をはじめグローバル各国・地域で法令や規制等に基づく開示の義務

    化が進んでおり、これら法規制を遵守できないと取引機会の損失、企業価値の低下につながる可能性がありま

    す。

 

(対応)

  事業の成長と社会への貢献の両輪の実現を目指して、ESGコミッティのもとに、重点的に取り組むべきテーマを推

 進する4つのESGステアリングコミッティを発足させ、ガバナンス体制を強化しています。ESGステアリングコミッテ

 ィは「脱炭素」「プラスチック包装容器」「人権・DE&I」「化学物質管理」からなり、テーマごとに執行役員クラス

 の責任者を置いています。テーマに関する機会とリスクを社会・環境・事業インパクトの面から分析・把握し、対応

 計画を立案・推進することで、“ESGよきモノづくり”の実施を確実に進めています。

   気候変動に関する対応は、上記ガバナンス体制の下で実施しており、各リスクへの対応策は、「2 サステナビリ

 ティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)」で示した「主な事業リスクと機会」

 の「花王の対応状況」に記載しています。

人権を尊重するため、バリューチェーン上のリスクアセスメントを実施し、人権リスクと悪影響を特定・優先順位付け・予防・軽減するとともに、従業員の意識向上と対応プロセスの強化を図っています。

 サステナビリティに関する情報開示については、必要な情報を正確に迅速に収集できる体制づくりを進め、事業展

 開国の法規制を遵守しています。

 

 

※1 グリーンウォッシュ

企業が、製品やサービスについて、環境及びサステナビリティに関する特徴を誇張もしくは大げさに主張したり、それらに関する活動について十分な根拠なく訴求すること。

※2 グリーンハッシング

企業が、グリーンウォッシュを恐れ、自社の環境に関する取り組みや気候変動対策についての開示や発信を控えること。

 

 

レピュテーション

 

(背景)

ソーシャルメディアの発展により、企業と生活者のコミュニケーションは多様化し、情報が迅速かつ広範囲に伝わる環境が一般化しています。当社グループにおいても、ソーシャルメディアを活用した多様なマーケティング活動を通じて、生活者とのエンゲージメントの向上を図っています。企業は、エンゲージメント機会を拡大できる一方で、レピュテーション(評判・信用)の形成に関わるリスクが顕在化しやすい状況にあります。

 

(リスクと影響)

  ・当社グループは、様々な情報発信やマーケティング活動を行っていますが、これらの活動において不適切又は不

    用意な表現が使用された場合、ソーシャルメディア等を通じてネガティブな評判や誤解が拡散され、ブランド価

    値や企業の信用を損なう可能性があります。

  ・また、事業活動には様々なリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合には、当該リスクそのもの

    への対応に加え、当該リスクに起因して生じるレピュテーションリスクへの対応も必要となります。顕在化した

    リスクへの対応や、レピュテーションリスクへの対応が不十分である場合には、ソーシャルメディア等を通じて

    企業の対応や姿勢が厳しく評価され、ブランド価値や企業の信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

  当社グループでは、広告等における不適切な表現を防止するため、ESG等の観点を踏まえた事前チェック体制を整

 備するとともに、社内教育を実施しています。また、ソーシャルメディアのモニタリングを通じて、リスクの早期発

 見に努めています。さらに、リスクが顕在化した場合には、正確な情報や当社グループの考え方・姿勢を適時適切に

 公表することで、レピュテーションの維持に努めています。なお、「レピュテーションリスク対応」は、コーポレー

 トリスクテーマとして取り組んでいます。

 

 

為替変動

 

(背景)

為替相場の変動は、外国通貨建ての売上高や原材料の調達コストに影響を及ぼします。また、連結決算における在外子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。

 

(リスクと影響)

  ・当社グループの機能通貨である円に対して外貨の為替変動が想定以上となった場合、財政状態及び経営成績に影

    響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

外国通貨建て取引については、外貨預金口座を通じての決済、為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引により為替変動リスクをヘッジすることで、経営成績に与える影響を軽減しています。なお、投機的なデリバティブ取引は行っていません。また、主要通貨の変動と事業への影響をモニタリングし、適時、経営会議に報告しています。そして、必要に応じて経営陣指示のもと、関係部門は事業への影響を軽減する対策を検討しています。

 

 

事業投資

 

(背景)

当社グループは、企業価値と相関関係の高いEVAによる投資判断のもと、事業成長やサステナビリティのために積極的な設備投資、M&A等を進めています。これら投資を今後も進めるとともに、継続的なEVA改善を通して企業価値の向上に努めていきます。

 

(リスクと影響)

  ・投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、計画との乖離等により期待される効果

    が生み出せない場合、設備投資により計上した有形固定資産や、M&Aにより計上したのれんや無形資産の減損処理

    により、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

当社グループは、重要な投資に対して、期待される効果が計画から大きく乖離していないかを四半期決算毎に確認し、経営会議で報告しています。乖離した場合には、関係部門が必要に応じて今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。

 

 

訴訟

 

(背景)

当社グループは、グローバルで多岐にわたる事業展開をしており、様々な訴訟等を受ける可能性があります。

 

(リスクと影響)

  ・当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されていません。しかしながら、訴

    訟等が提起された場合、その動向によっては、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能

    性があります。

 

(対応)

当社グループは、事業に関わる各種法令を遵守するとともに、安全・安心な製品の提供、知的財産権の適正な取得・使用、契約条件の明確化、相手方との協議の実施等により紛争の発生を未然に防ぐよう努めています。また、グローバルで、重要な訴訟の提起や状況に関する報告が迅速かつ確実になされる仕組みを構築するとともに、当社グループ各国の担当者及び弁護士事務所等と連携し、訴訟等に対応する体制を整備しています。

 

 

(3)主要リスクの中期経営計画「K27」との関連性

 14の主要リスクのうち、「原材料調達」、「市場・競争環境の変化」、「製品等の品質」、「人財確保」、「社

会課題への対応」、「事業投資」を中期経営計画「K27」との関連性が特に大きいリスクと認識して対応しています。

配当政策

 

3【配当政策】

当社グループは、EVA(経済的付加価値)及びROIC(投下資本利益率)を経営の主指標としており、その視点で安定的に創出されるキャッシュ・フローの使途を下記のとおり明確に定めております。株主還元はその一部で、将来の資金需要や金融市場の情勢を考慮して実行しております。

 キャッシュ・フローの使途

・将来の発展に向けた設備投資※1

・M&Aを含む戦略投資※2(自己株式の取得を含む)

・安定的・継続的な増配

※1 更新投資のほか、事業基盤の維持・強化、能力増強、DX等、将来の競争力向上に資する投資。リース負債の返済による支出を含む。
※2 事業ポートフォリオ強化・変革や非連続な成長機会獲得を目的とする施策

 

この方針のもと、当事業年度の期末配当金は、前事業年度に比べ1円増配の1株当たり77円を予定しております。

この結果、年間配当金は前事業年度に比べ2円増配の1株当たり154円、連結での配当性向は59.2%となりました。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。中間配当については、定款に「取締役会の決議により、毎年6月30日を基準日として、中間配当を行うことができる」旨を定めております。

 

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2025年8月6日

取締役会決議

35,867

77

2026年3月26日

第120期定時株主総会決議

(予定)

34,927

77