2023年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

1.リスク管理体制

業務運営上の損失の危険を回避するため、経理・財務管理、取引先管理、輸出管理、環境・防災管理、品質管理、情報管理及び投資管理等に関連する規程・規則に則り、日常的なリスク管理を各担当部署が実施するとともに、原則四半期毎に開催されるリスク・コンプライアンス委員会にてリスク及びコンプライアンスに関する重要事項について討議し、その結果を踏まえ、関係室部等に対する助言、取締役会他経営に対する報告・提言を行うことにより、リスクの把握と改善に努めております。また、子会社管理規程に基づき、当社及び当社グループ会社に著しい損害を及ぼす可能性のある事項が当社関係部署及び当社監査役に報告される体制を構築しております。

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

2.個別リスク項目

(1) 金融・経済・社会環境に関するリスク

① 自然災害、感染症、戦争・テロ

大地震、津波、台風、洪水等の自然災害や感染症の流行、戦争・テロ行為等は、当社事業の継続に影響を及ぼしかねない重大なリスクです。当社グループでは、これらの影響を低減するため、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)策定をはじめとする事業継続マネジメントに取り組み、適切な保険を付保するとともに、各国の情勢や安全に関する情報収集等を進めておりますが、こうした取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 気候変動リスク(カーボンニュートラル対応)

2016年開催の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択、各国で批准されたことを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが世界的に進められ、既に、一部の国・地域では、炭素税等の温室効果ガス排出量削減策が導入されております。当社グループは、2022年1月にカーボンニュートラル推進委員会を設立し、当社グループカーボンニュートラル対応の司令塔として、全社方針・戦略を起案するとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、課題や取り組みを可視化し一元的に管理していますが、当社グループの温室効果ガス排出量削減の取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 内外経済環境

当社グループは、日本のみならず、アジア、欧米において事業活動を展開しておりますので、世界経済の動向は当社グループ業績に影響を及ぼします。ウクライナ危機の長期化や中東情勢悪化、中国経済の下振れ、米中の対立、保護主義的通商政策の拡がりとサプライチェーンの混乱、気候変動対応を巡る混乱、米国大統領選等、世界経済を巡る不確実性が顕在化していますが、これらが一層悪化する場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 為替レートの変動

当社グループは、原材料の輸入、製品輸出等、国際的な事業活動を行っており、その取引において外国通貨を用いていることから、為替レートの変動が当社グループ業績に影響を与えます。また、当社の海外における連結子会社・持分法適用関連会社の収益や費用については期中平均相場により円換算されており、為替相場の変動が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいて、特に影響の大きい、米ドル・ユーロに対する円高は、グループ業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響を及ぼす傾向にあります。

なお、為替レートの変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。

 

⑤ 資金調達・金利変動

当社グループは、当社グループとして必要な資金を金融機関からの借入の他、社債、コマーシャル・ペーパーの発行により調達しております。資金調達に際しては金融市場の動向を睨みながら資金繰り管理や安定的な資金確保に努めております。しかしながら、金融環境の急激な悪化により、資金調達の安定性が損なわれたり、著しく不利な資金調達を余儀なくされたりする局面においては、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、市場金利の変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。

⑥ 保有有価証券

当社グループは、事業機会の創出・維持や取引・協業関係の構築・維持・強化等を通じ、中長期的な企業価値向上が図れると判断した場合に、取引先等の株式を取得・保有することがあり、定期的にその効果検証を行うことにより、保有方針を見直すこととしております。しかしながら、かかる有価証券には、市場性のある株式も含まれるため、内外経済及び株式市場の環境悪化や投資先の経営状況悪化により株価が下落した場合には、保有株式に評価損が発生する可能性があります(「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」参照)。

なお、投資有価証券の価格変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。

 

(2) 業界・事業に関連するリスク

① 競合他社との競争(品質・技術・価格競争力低下)

当社グループは、各事業分野において、様々な企業との厳しい競争環境下にあり、この結果、多くの製品は価格低下圧力に晒されております。当社グループとしては、市場ニーズの把握、技術力の追求、品質管理の徹底、原価低減や効率性の向上等の努力を重ねていきますが、十分な成果が上がらない場合には、マーケットシェアの低下、販売価格の引き下げ等による売上高と利益率の低下を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 国際的な事業展開

当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略の一つとしておりますが、国際的な事業展開においては、経済・為替の不確実性や政情不安、法制・規制の想定外の変更、宗教・文化の相違、現地での労使問題等、国内事業と異なる様々なリスクが伴います。当社グループがこのようなリスクに適切に対処できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 原材料調達

当社グループにとって、良質な原材料をタイムリーかつ安定的に入手することが不可欠であることから、当社グループは、信頼のおけるサプライヤーを複数選定するとともに、新規サプライヤーの開拓を継続して行っています。しかし、災害、事故、戦争・テロ、感染症の流行等の不測の事態等により、供給が不足または中断した場合には、当社グループの生産に悪影響が生じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、需給の逼迫や投機目的の売買等により、当社グループが調達している原材料の価格が高騰し、生産性向上等の内部努力や売価への転嫁等により吸収できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 研究開発

当社グループは、持続的な企業価値向上のためには研究開発活動は不可欠との認識の下、富士研究所を中心に、次世代に向けた新製品や新規技術の開発を進めております。また、既存事業の製品については、顧客ニーズに適合する新品種の開発や、さらなる品質の向上、画期的なコストダウン等を各事業部の研究所を中心に推進しております。しかしながら、市場トレンドの変化によるニーズの衰退や脱炭素対応の失敗、同業他社の技術革新に対抗できる技術を速やかに開発できなかった場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 経営戦略(買収・業務提携、戦略的投資)

当社グループは、成長戦略の一環として、企業買収、業務提携、戦略的投資につき、積極的に取り組む方針としております。過去に実施した大型M&Aのシナジー早期現出に向け、生産技術の共有、人材の交流、現地経営陣の監督徹底等に取り組み、経営統合を進めております。しかしながら、経営環境・前提条件の変化等の理由により、当初想定した結果が得られない可能性もあり、予測される将来キャッシュ・フローの低下により、のれんの減損が必要になる等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 特定業界への依存(特定製品の市況変動)

当社グループの売上の多くは、自動車業界、鉄鋼業界、半導体業界に集中しております。こうした特定業界に依存する体質を改善するため、主にアルミニウム市場を対面業界とする炭素黒鉛製品メーカー2社を買収、2020年7月にはスメルティング&ライニング事業部を新たに設置し、ポートフォリオの分散化を図っております。しかしながら、当社グループの対面業界の景況が大幅に悪化し、ポートフォリオの分散化が十分に機能しないような場合には、売上高と利益率の低下等を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 有能・多様な人材の確保

当社グループの競争力と将来性は、マネジメントはもちろん、研究開発、技術、製造、販売、企画、管理等、各部門における専門的知識や技能を持った有能・多様な人材の確保・育成、定着が重要な課題となります。しかしながら、近年は人材の流動化、少子高齢化による労働人口の減少等により人材の確保に係る競争も厳しくなっております。当社グループは多様な人材の積極的な採用、働き方の柔軟性・多様性を前提とした職場環境の整備、人事制度の見直し、新たな研修制度の導入、実施等を通じて有能・多様な人材の確保・育成、定着に取り組んでおりますが、想定どおりに進まない場合や人材の社外流出を防げないような場合には、業務遂行に制約を受けることにより、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) その他のリスク

① 法令・規制への抵触

当社グループは国内外において、各種の法令・規制に則り、事業活動を行っております。グループ全体として法令遵守の徹底を図っておりますが、法規制には、商取引法、独占禁止法、労働法、証券関連法、知的財産権法、環境法、税法、輸出入関連法、刑法等に加えて、事業活動や投資を行うために必要とされる様々な政府の許認可規制等があります。今後、新たな法規制の導入や法規制の想定外の変更により、事業活動に対する制約、コストの増加等を通じ、当社グループ業績に悪影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、法令遵守が事業活動の基盤であることを認識し、国内外の役員・従業員に対し、様々な形で法務・コンプライアンス教育を実施しておりますが、当社グループがこれらの法規制に抵触したと当局が判断した場合には、課徴金等の行政処分、刑事処分、訴訟等の対象となり、当社グループの社会的評価が低下し、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 会計・税制変更

当社グループが事業活動を行う国において、会計制度や税制が大きく変更され、または当社グループに不利な解釈や適用がなされたりした場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 知的財産権

当社グループは、知的財産を重要な経営資源と位置付け、知的財産管理に関する専門部署を設け、第三者からの知的財産権侵害の発見と保有する知的財産権の管理保護に努めております。しかしながら、見解の相違等の理由により、第三者が特許等への抵触を理由とした差止訴訟や損害賠償請求訴訟等を提起した場合や、第三者による知的財産権侵害により当社グループの競争優位性が脅かされた場合には、係争に多額の費用等が必要となる可能性や当社グループの評判、優位性を損ねる可能性があり、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 労働災害・設備事故

当社グループは、製造業の基本である労働安全と設備事故防止に注力し、全拠点で安全最優先での事業活動に努めております。労働災害は、労働者の健康や人命に関わる重大なリスクであり、当社グループは、安全活動をグローバルで推進し、拠点毎に具体的、継続的かつ自主的な活動を安全衛生計画として組み込み、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境の形成等、安全衛生水準の向上に努めております。製造設備の停止や製造設備に起因する事故等の発生は、事業活動に支障をきたす重大なリスクであり、潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検・メンテナンスを行っております。しかしながら、不測の事態や不慮の事故等により、操業の中断・縮小、施設等の損害、多額の復旧費用等により、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 品質・PL

当社グループは、主要な生産拠点において、品質マネジメントシステム(ISO9001)を取得し、品質管理に関する規定、規格及び作業標準等を定め、品質チェック体制を構築し、品質監査を行う等グループをあげて品質向上を継続的に取り組み、製品の品質に万全を期すよう努めております。製造物責任賠償及び一部製品の製品瑕疵に起因して被る損害については保険に加入しておりますが、予測し難い原因により重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起等が発生した場合には、多額のコスト増大や、当社グループの社会的評価の低下とそれによる売上収益の減少が予想されることから、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ DX・情報セキュリティ

当社グループは、デジタル技術活用による製品やサービス、ビジネスプロセスの変革と、新たな価値の創出に取り組んでおります。しかし、取り組みの遅延やIoT、AI等のデジタル技術の進歩に適切に対応できない場合には、当社グループの競争力が低下し、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、事業遂行に当たり様々なシステムを構築、運用するとともに、生産技術・研究開発・調達・販売等の機密情報を保有し、その重要性は非常に高まっております。当社グループでは、IT、情報システム及び情報通信ネットワークを厳格に管理し、漏洩や紛失を未然防止する対策及びセキュリティインシデント発生時に影響を最小限に抑える対策を講じております。しかしながら、災害やサイバー攻撃等外的要因や人為的要因等により、障害等が生じると、重要な業務やサービスの停止、機密情報・データや個人情報の盗取や漏洩等のインシデントを引き起こし、事業活動の継続に支障をきたす等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、中長期的な企業価値の向上を図る上で、株主に対する利益還元も重要な経営課題と考えており、毎期の経営成績と経営成績見通し、投資計画、キャッシュフローの状況等を勘案しつつ、連結配当性向30%を目標として、安定的・継続的に配当を行うことを基本方針としております。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

当事業年度の配当については、上記方針に基づき当期は1株当たり36円の配当(うち中間配当18円)を実施することを決定いたしました。

内部留保資金の使途については、設備更新や環境投資、成長投資、戦略投資等将来価値の源泉となる分野への投資に充当してまいります。

当社は、「取締役会の決議により、毎年6月30日を基準日として中間配当をすることができる。」旨を定款に定めております。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年8月8日

取締役会決議

3,837

18.0

2024年3月28日

定時株主総会決議

3,837

18.0