リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、また以下の記載は、当社グループのすべてのリスクを網羅するものではありません。
[リスク管理体制]
当社グループは、事業環境の変化に的確に対応し、企業価値の毀損を防止するとともに持続的成長を実現するため、全社的リスクマネジメント(ERM:Enterprise Risk Management)の強化に取り組んでおります。2025年4月にはリスク管理室を再編し、リスク統括部を設置いたしました。これにより、従来分散的に管理していたコーポレートリスクと事業リスクについて、ERMの視点に基づき統合的に把握・評価・対応する体制へ移行を進めております。
当社グループのリスク管理は、最高リスク管理責任者(CRO)の統括のもと、各部門・各事業所が日常的なリスク管理を実施し、独立組織であるリスク統括部が全社横断的な把握とモニタリングを行い、リスク管理委員会において重大リスクの選定、対応方針及び対策の立案・進捗確認を行う体制としております。さらに、監査部が独立した立場からこれらの運用状況を監査することで、いわゆる3ラインモデルに基づく実効的なリスク管理の確保に努めております。また、投融資案件に関するリスクについては、事業部門から独立した投融資委員会において事業性及びリスクを中立的に評価し、経営判断に資する体制としております。加えて、重大インシデント発生時には、必要に応じて危機対応を目的としたリスク管理委員会を速やかに開催し、被害の最小化と早期復旧を図っております。
当社グループは、リスクの抽出・評価を定期的に実施し、対応策の有効性を踏まえた残存リスクを把握したうえで、未然防止策及び発生時対応策の継続的な見直しを進めております。今後もリスク管理体制の高度化を通じて、当社グループの経営基盤の強化を図ってまいります。
[リスク管理体制図]
※リスク管理委員会は、CRO、執行役員、管理部門(コーポレートセンター)の責任者で構成されています。
(第1線)
本社及び各事業所、各部門が現場で各種施策を立案する際にリスク対応を含めて検討するとともに、自部門でリスク管理を実行しています。
(第2線)
事業部門から独立した組織であるリスク統括部が、俯瞰してリスクの把握と対策状況を確認しリスク管理委員会に報告しています。重大リスクの選定・対策立案・推進はリスク管理委員会で行っており、その判断は経営会議で決定され、取締役会で報告されます。
(第3線)
監査部が第1、2線から独立した立場で、これらのリスク管理状況を監査し、監査結果を取締役会に報告しております。
[主要なリスクと対応策の一覧]
(注)顕在化の時期について
短中期:数か月から数年以内にリスクが顕在化し、比較的速やかな対応が必要となる時期。
中長期:数年先や将来的にリスクが顕在化すると予測され、計画的かつ継続的な対策が求められる。
突 発:発生時期が予測困難で突然顕在化し、即時の対応が必要となるリスク。
継 続:常に潜在しており、継続的に管理・監視が必要なリスク。
[事業環境に関するリスク(外的要因)]
(1)市場・需要動向に関するリスク
当社グループの主要製品は、自動車、建設機械等の産業分野に広く使用されており、これらの需要動向は当社グループの受注、販売数量、操業度及び収益性に影響を及ぼします。特に、国内鋼材事業においては、主要需要先の一つである建設機械分野の需要は景気変動や設備投資動向の影響を受けやすく、短中期的にも変動が生じ得るほか、国内市場全体については中長期的な縮小の可能性があります。
こうした需要変動が顕在化した場合、売上高の減少、稼働率の低下、棚卸資産水準の上昇等を通じて、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。また、市場成長を見込んで育成を進めている戦略事業において、想定した需要の取り込みが進まない場合には、中期経営計画における成長シナリオに影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループは市場動向の継続的なモニタリングを行うとともに、ROICを用いた事業分析等を通じて事業ポートフォリオの最適化を進め、需要変動の影響低減と持続的成長の実現に努めております。
(2)市場競争に係るリスク
当社グループが展開する国内鋼材事業、自動車ばね事業、その他の各事業領域においては、国内外に競合企業が存在しており、価格競争の激化、技術革新への対応の遅れ、顧客ニーズの変化等により、当社グループの競争優位性が低下する可能性があります。こうしたリスクは、既存事業では継続的に存在し、戦略事業の拡大局面においては受注獲得競争の激化という形で顕在化する可能性があります。
競争環境の変化が顕在化した場合、販売価格の下落、シェア低下、新規案件の失注、利益率の悪化等を通じて、当社グループの収益性及び成長性に影響を及ぼす可能性があります。とりわけ、成長投資を行っている分野で想定どおりの拡販が進まない場合には、投資回収計画や中長期的な収益計画に影響を与える可能性があります。
このため当社グループは、操業で培ってきた高度なノウハウ、品質対応力、顧客基盤等の強みを生かした差別化を進めるとともに、研究開発、設備投資及び人的資本投資を重点領域に適切に配分し、競争優位性の維持・向上に努めております。
(3)原材料・副資材・エネルギー価格等の変動に関するリスク
当社グループの事業活動においては、鋼材原料、各種副資材、電力・燃料等のエネルギーを使用しており、これらの価格変動は製造コストに直接影響を及ぼします。これらの価格は、国際市況、需給バランス、地政学的要因、為替動向等により短期的にも大きく変動する可能性があります。
原材料・エネルギー価格の上昇が急激に進行し、販売価格への転嫁が適時・十分に行えない場合には、利益率の低下や収益悪化を招き、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。また、調達制約を伴う場合には、生産計画や納入にも影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループは一部お客様とは売価連動のフォーミュラを構築しているほか、市場動向の継続的な把握、複数購買先の確保、調達条件の見直し、原価低減活動、顧客との価格改定協議等を通じて、価格変動影響の低減に努めております。
(4)地政学及び為替変動リスク
当社グループは、北米・中国・インド・東南アジア等に生産・販売拠点を有しており、各国・地域における政治・経済情勢、法規制、通商政策、社会情勢の変化、地政学上の緊張等の影響を受ける可能性があります。また、外貨建取引や在外子会社の財務諸表換算に伴い、為替相場の変動も業績に影響を及ぼします。これらのリスクは突発的に顕在化する場合があり、特定地域における情勢悪化や急激な為替変動は短期間で事業環境を変化させる可能性があります。さらに、近年の中東情勢を含む地域の緊張の高まりに加え、世界各地における地政学上の不確実性の増大により資源価格や物流、通商政策等を通じた間接的な影響が顕在化することにより、当社グループの事業運営にも影響が及ぶおそれがあります。
こうした事象が発生した場合には、生産・物流の停滞、調達網の混乱、追加コストの発生、資産価値の下落、換算差損益の発生等を通じて、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、各海外拠点における情勢の把握、ヘッジ契約や親子ローンを実施している海外拠点への増資等の対応を行うなど、為替変動リスクの低減等を通じて、影響の最小化に努めております。さらに、政治・経済・法令・安全保障に関する情報収集と社内共有を継続するとともに、緊急時の連絡体制整備、供給網の多元化や代替調達先の確保等を進め、情勢変化に機動的に対応してまいります。
(5)金融市場の変動や資金調達環境の変化に関するリスク
当社グループは、事業活動に必要な資金を金融機関借入等により調達しており、金利水準、金融市場の変動、信用収縮等により資金調達環境が変化する可能性があります。特に、金融引締め局面や市場の不安定化局面においては、短中期的に調達コストの上昇や資金調達手段の制約が生じる可能性があります。これらの変化が顕在化した場合には、支払利息の増加、投資計画の見直し、手元流動性確保のための追加対応等を要し、当社グループの財政状態、キャッシュ・フロー及び成長投資の実行に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループは、運転資金圧縮等により営業キャッシュ・フローを創出し、借入金返済を進めることで、有利子負債の圧縮を図ってまいります。
(6)自然災害・感染症等の発生リスク
当社グループの国内外の事業拠点において、地震、風水害等の自然災害、大規模火災、感染症の流行その他の不測の事態が発生した場合、従業員の安全確保、生産活動、物流、調達及び販売活動に支障が生じる可能性があります。これらの事象は発生時期の予測が困難である一方、一度顕在化すると短期的に大きな影響を及ぼす可能性があります。重大な災害や感染症拡大が発生した場合には、操業停止・減産、納期遅延、復旧費用の発生等により、当 社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、BCPの整備・見直し、設備保全、防災訓練、感染症対策等を進め、被害の最小化と早期復旧に努めております。
(7)環境規制や気候変動に関するリスク
当社グループでは、事業活動において廃棄物、副産物等が発生することから、環境マネジメントシステムを構築・運用し、国内外の法規制を遵守するとともに、環境保全活動を行っております。しかしながら、過去、現在及び将来の事業活動に関し、環境に関する責任リスクを有しており、関連法規制の強化等によっては、これに対応するための費用が発生し、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
また、気候変動が進行した場合には、炭素税等の規制強化や脱炭素化の進展により、調達・製造コストが増加し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。さらに、環境関連需要の高まりに対し当社グループの対応が遅れた場合には、市場シェアの低下や受注機会の減少につながる可能性があります。加えて、異常気象の増加による自然災害の激甚化は、工場設備や仕掛品・製品の破損、サプライチェーンの寸断等を通じて、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社グループは、2050年カーボンニュートラルを掲げ、GHG削減の取り組みを進めるとともに、環境関連製品の開発・販売を進めることで需要構造の変化に対応しております。また、ISO14001環境マネジメントシステムの構築・運用や、省エネ設備の導入等を通じて、環境管理の継続的な改善を図っております。
気候変動に関するリスクの詳細につきましては、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組-(2)気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)」をご覧ください。
[事業運営に関するリスク(内的要因)]
(8)製品の瑕疵・欠陥に係るリスク
当社グループは、品質マネジメントのもと製品の品質確保に努めておりますが、設計、製造、検査等の各工程において予期せぬ不具合が発生し、製品の瑕疵・欠陥が顕在化する可能性があります。とりわけ、自動車、建設機械その他の安全性・信頼性が重視される用途向け製品においては、品質問題の影響が大きくなる可能性があります。また重大な品質不具合が発生した場合には、製品回収、補償、代替対応、訴訟、信用低下等が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このため当社グループは、品質管理体制の強化、工程管理の徹底はもちろん、品質不正(改ざん・偽装)を未然に防止することを目的とした品質点検を各拠点に実施することで、品質不正の抑止と是正体制の実効性向上に努めています。
(9)設備事故・労働災害のリスク
当社グループの生産設備の中には、高温、高圧での操業を行っている設備があり、高熱の生産物等を取り扱っている事業所もあります。 このため、対人・対物を問わず事故の防止対策には万全を期しておりますが、火災・爆発等の設備事故や重大な労働災害の発生により、人身被害、生産停止、復旧費用の発生、納入遅延、行政処分等を通じて、当社グループの業績及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループでは、各事業所における安全パトロールや各種コンクールの開催による安全意識・技量の向上に取り組むとともに、各拠点の安全担当者による「安全担当者会議」を継続的に開催し、管理レベルの向上や情報・問題認識の共有を図っております。また、災害発生時には「安全協議会」を開催し、原因・対策について部署間を超えて協議を行うことで、設備事故・労働災害の撲滅に努めております。
(10)人材確保と育成に係るリスク
当社グループが持続的な成長を実現するためには、製造、技術開発、品質保証、営業、デジタル、管理等の各分野で必要な人材を確保・育成することが重要であります。しかしながら、国内生産年齢人口の減少や労働市場の競争激化等により、必要な人材の確保・育成が計画どおり進まない、又は中核人材の離職が生じる可能性があります。この傾向は中長期的に継続する可能性があります。また、人材の確保・育成が十分に進まない場合には、技術・技能の承継遅延、生産性低下、新規事業やDX推進の遅れ等を通じて、当社グループの競争力及び中長期的な成長戦略の遂行に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、採用強化、教育研修、技能伝承、エンゲージメント向上、多様な人材の活躍推進等を通じて、人材基盤の強化に努めており、今後も継続的工夫を重ねながら取り組んでまいります。
人的資本の取り組みの詳細は、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組-(3)人的資本」をご覧ください。
(11)情報システムの障害・情報漏洩等のリスク
当社グループは、事業運営において各種情報システム及びネットワークを利用しており、サイバー攻撃、不正アクセス、システム障害、人的ミス等により、システム停止や情報漏洩が発生する可能性があります。近年はサイバー攻撃が高度化しており、当該リスクは継続的かつ高い緊張感をもって対応すべきリスクと認識しております。
重大な障害や情報漏洩が発生した場合には、生産・出荷・会計処理等の停滞、機密情報の流出、復旧費用の発生、取引先等からの信用低下等により、当社グループの経営成績及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループは、情報セキュリティ対策の強化、アクセス管理、バックアップ、教育啓発、インシデント対応体制の整備、サイバーセキュリティ保険加入等を進め、被害の予防及び最小化に努めております。
(12)人権侵害のリスク
当社グループは、事業活動において従業員、取引先、地域社会等の多様なステークホルダーに関わっており、ハラスメント、差別、不当労働、サプライチェーン上の人権侵害等が発生した場合には、企業としての責任が問われる可能性があります。また、人権に関する社会的要請は高まっており、このリスクは中長期的に重要性を増していくものと認識しております。
重大な人権侵害事案が発生した場合には、是正対応費用、事業機会の逸失、社会的信用の低下等を通じて、当社グループの企業価値に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、人権方針の整備、教育・啓発、相談・通報制度の運用、人権デュー・ディリジェンスの推進等を通じて、人権尊重の徹底に努めております。
(13)その他の法令・公的規制に関するリスク
当社グループは、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、取適法、環境関連法令、労働関係法令、輸出入関連法令等、国内外のさまざまな法令・公的規制の適用を受けております。法令改正、規制強化、解釈変更等は継続的に生じ得るほか、当社グループの対応が不十分であった場合には、法令違反が顕在化する可能性があります。これらが発生した場合には、行政処分、課徴金、損害賠償、訴訟対応、信用失墜等により、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社グループは、リスク統括部内に法務機能を集約し、法令遵守体制の強化、教育研修、内部通報制度の運用、モニタリング等を通じて、コンプライアンスの徹底に努めております。
配当政策
3 【配当政策】
配当につきましては、業績及び財務・財政状況などを総合的に勘案して決めております。
当社グループでは株主還元を重要施策の一つと位置付けており、2025年5月に配当方針を見直し、2026年3月期の配当は、配当性向40%目安とするとともに、1株当たりの下限値を80円といたしました。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、上記方針に基づき、中間配当は1株当たり40円としており、期末配当については1株当たり41円とすることを、2026年6月19日開催の定時株主総会で決議する予定です。従いまして、議案が原案どおり可決された場合、年間の配当金は1株当たり81円となる予定です。
毎期における配当の回数につきましては、中間期と期末の2回を基本とし、取締役会の決議で中間配当を、株主総会の決議で期末配当を行っております。
内部留保資金については、将来に向けた事業展開、財務体質の強化に充てる考えです。
また、当社は会社法第454条第5項の規定により中間配当をすることができる旨を定款に定めております。
なお、当社グループではさらなる株主価値向上に向けて、2026年5月に公表の「2026中期経営計画」では、安定的な株主還元を実施するため、「2026中期経営計画」期間中は、DOE3.5%を基準とし、利益変動に左右されにくい安定配当へと移行いたしました。この方針に基づき、2027年3月期の配当は、1株当たり配当金年間104円を予定しております。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。