2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

1 基本的な考え方及びリスクマネジメント体制

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 全般 ③ リスク管理」をご参照ください。

 

2 具体的なリスクの内容

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。また、当該リスクが顕在化する時期につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載していません。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

戦略リスク

①市場変動に関わるリスク

影響度:小~大

(リスクの内容)

当社グループの製品・サービスに関連する主要な用途市場及び需要地における景気の悪化、産業構造の変化及びそれに伴う需要の減少は、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。事業セグメントにおける主な市場及び代表的なリスクは次のとおりです。

〇環境・リサイクル部門

・日本及び東南アジアでの企業の生産活動の停滞等に伴う廃棄物の発生量の減少

・リサイクル原料(有価金属を含む廃電子基板等)のグローバル市場での発生量の減少

・リサイクルの進展による廃棄物処理ニーズの多様化

〇製錬部門

・海外鉱山の稼働状況等による製錬原料の調達条件の悪化

・原料組成の変化に伴う、製錬原料(鉱石やリサイクル原料)中の有価金属や不純物の含有量及び含有率の変化

〇電子材料部門

・情報通信機器や新エネルギー分野の産業構造の変化やそれに伴う需要の減少

・主要な用途市場における代替技術の開発やそれに伴うニーズの変化

〇金属加工部門

・自動車や情報通信機器の産業構造の変化やそれに伴う需要の減少

・主要な用途市場における代替技術の開発やそれに伴うニーズの変化

〇熱処理部門

・自動車の産業構造の変化やそれに伴う需要の減少

〇全社共通

・カントリーリスクに伴うサプライチェーンの分断や再編等

(リスクへの対応)

当社グループは、市場リスクや事業構造変化に関わるリスクが異なる複数の事業で構成される独自の事業ポートフォリオを構築しています。これにより、当社グループ全体としてリスクを分散し業績安定性の確保に努めています。

 

 

②気候変動に関わるリスク

影響度:中~大

(リスクの内容)

気候変動はグローバルな視点で取り組まなければならない重大な社会課題であり、事業環境の変化、気象災害による工場の操業停止や設備管理コストの増加、また事業活動を行う地域におけるカーボンプライシング(炭素税等)の導入や気候変動に関する情報開示の制度化による投資環境の変化等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、2021年8月にDOWAグループの気候変動対応方針及び2050年までにカーボンニュートラルを目指すという長期目標を、2022年2月に2030年度の中間目標として具体的な温室効果ガス削減の数値目標をそれぞれ公表し、気候変動対応の具体的な目標を定めています。今後は、これら方針と目標を達成すべく、当社グループが賛同を表明しているTCFD提言やGXリーグ基本構想に基づく情報開示や対応策の検討を進め、主要な製造工場において省エネ型設備への更新やエネルギー転換を推進することにより、リスクの低減に努めていきます。

また、気候変動問題をはじめとするサステナビリティ課題につきましては、サステナビリティ推進会議において、重要な方針や施策及びその進捗等について審議し、特に重要な事項につきましては取締役会へ報告し、監督を受ける体制としています。

 

 

経済リスク

③相場変動に関わるリスク

影響度:中~大

(リスクの内容)

当社グループが取り扱う製品や原料には、非鉄金属や為替等グローバル市場において価格が決定されるものがあるため、金属価格や為替の相場変動によるリスクを負っており、金属価格の下落や円高の進展等が発生し、更にそれらが長期間継続した場合において、当社グループの経営成績及び財務状況等が悪化する可能性があります。特に製錬部門は、金、銀及びPGM(白金族金属)等の貴金属や、銅及び亜鉛等のベースメタルを外貨建で取り扱っていることから、相場変動の影響を大きく受けます。

(リスクへの対応)

当社グループは、非鉄金属先渡取引や為替予約取引等のデリバティブ取引をヘッジ手段として活用することにより、金属価格変動リスク、為替変動リスクの回避・軽減に取り組んでいます。相場変動の影響を大きく受ける製錬部門においては、主に原料・製品に含まれる金属価格や外貨建による原料・製品の購入・販売等に係る為替をヘッジ対象とし、相場変動リスクの縮小に努めています。

ただし、これらの対応を踏まえても、主要な金属の価格及び為替の変動により、営業利益に以下の影響があるものと想定しています。

2024年度業績予想における感応度(営業利益/年)

 

 

前提条件

変動幅

感応度

為替

150.0円/ドル

±1円/ドル

4.9億円

9,000ドル/トン

±100ドル/トン

0.3億円

亜鉛

2,500ドル/トン

±100ドル/トン

4.7億円

 

なお、感応度につきましては、現時点で合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の影響額は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

 

④株価下落に関わるリスク

影響度:小~中

(リスクの内容)

当社グループは、当連結会計年度末時点で取引先を中心に32,519百万円の市場性のある株式を保有しており、これらの株価変動リスクを負っています。

(リスクへの対応)

市場性のある株式の保有の適否につきまして、個別の銘柄毎に当初の保有目的に合致しているか、保有に伴う便益やリスクは資本コストに見合っているか等を踏まえて継続保有の可否を総合的に判断し、その内容を取締役会において定期的に検証しています。保有を続けても企業価値の向上に資さないと判断した場合は、市場への影響を考慮しつつ順次売却していきます。

 

 

⑤資金調達に関わるリスク

影響度:小~中

(リスクの内容)

当社グループの当連結会計年度末の有利子負債残高は75,911百万円で、総資産の12%を外部調達しており、急激な金利変動は当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループでは、変動金利条件の有利子負債を一定範囲内とすることで金利上昇リスクの低減を図っています。また、調達手法、調達先のバランスを最適化することで、資金調達リスク及び調達コストの低減を図っています。

 

 

 

⑥資産減損等に関わるリスク

影響度:小~中

(リスクの内容)

当社グループの資産は投融資金額に見合う将来キャッシュ・フローが得られないと見積られた場合、減損損失を認識するリスクがあります。減損損失を認識した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

特に鉱山関連の投融資からの将来キャッシュ・フロー総額は、有価金属の品位、将来市場価格及び操業コスト等の各種の前提条件の変化による影響を受けます。

なお、当連結会計年度末におけるロス・ガトス鉱山(メキシコ)への当社グループの出資比率は30%であり、投資残高は連結貸借対照表の投資有価証券に18,114百万円計上されており、当社グループの連結総資産において重要性のある鉱山関連の投資と認識しています。

(リスクへの対応)

当社グループでは、主要な投資案件についてレビューを年1回行い、最新の将来キャッシュ・フローを確認しています。計画に対する乖離が認められた場合には、各課題への対応策を次年度の実行計画に反映しています。

ロス・ガトス鉱山につきましては、上記に加え運営会社に取締役及び従業員を派遣するとともに、DOWAメタルマイン㈱が、共同出資のパートナー及び運営会社と開催するManagement Committee(3か月に一度開催)、Operations Committee(毎月開催)へ参加すること等により、鉱山経営の管理・監督の強化に努めています。

 

 

オペレーションリスク

労働安全衛生に関わるリスク

影響度:中~大

(リスクの内容)

当社グループでは、「安全はすべてに優先する」との基本理念に基づき諸活動を推進していますが、生産活動や輸送・運搬活動に伴う事故・災害等の発生により、従業員の安全・健康が脅かされたり、計画通りの操業が困難になる可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループでは、環境・安全部を中心に、グループ各社の安全環境責任者・担当者が連携し、安全活動の推進・情報共有・相互支援を行っています。特に、リスクアセスメントの強化、新規事業における安全監査、建設工事における標準ルール「DOWA生産技術標準(DTMS)」の運用等、未然防止策を重点的に実施しています。また「健康経営宣言」を策定し、従業員及びその家族の健康維持・増進に取り組んでいます。

 

 

⑧環境保全に関わるリスク

影響度:中~大

(リスクの内容)

当社グループは、環境関連法令や鉱山保安法に基づき、大気、水質、土壌等の汚染防止に万全を期していますが、環境汚染が発生した場合や関連法令の改正等が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、国内外の主要な事業所において、国際規格であるISO14001や環境省が策定したエコアクション21を活用した環境管理システムを構築しています。管理にあたっては、環境関連法令の規制値より更に厳しい社内基準値を設けモニタリングを行うことで大気、水質、土壌等の汚染防止に努めています。

また、当社グループが保有する国内の全ての鉱山は既に事業活動を停止していますが、鉱山保安法に基づき、休廃止鉱山及び関連施設等を巡回点検することにより安定的な状態を維持し、坑廃水等による環境汚染や陥没、山崩れ等の鉱害の防止に努めています。

 

 

 

⑨品質管理に関わるリスク

影響度:中

(リスクの内容)

当社グループは、モノづくりをするうえで「品質」の重要性を認識しており、製品の品質管理には万全を期していますが、重大な品質不良や品質異常が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループでは、品質保証部を中心に、グループ全体での品質リスクマネジメント体制の強化を図り、日本鉱業協会等が制定する品質保証に係るガイドラインの周知運用や事業横断的な品質教育等を実施しています。また、主要製造工場は、品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001の認証を取得しています。更に、調達面では、適切な頻度でサプライヤー調査や監査を実施して調達品の品質確保を図り、品質不良や品質異常の発生の防止に努めています。

 

 

⑩人材確保に関わるリスク

影響度:中

(リスクの内容)

当社グループは、事業の継続及び拡大に必要な人材の確保を適宜行っていますが、今後少子高齢化による国内労働人口の減少、採用競争の激化を背景に、一部の製造拠点において事業継続に必要な人材の確保が困難になる可能性があります。その結果、操業体制の維持に支障が生じる、新たな事業への参入機会を逸する等、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があり、更には成長機会を失う可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは定年延長や働き方改革の実施、多様で柔軟な働き方を可能にする制度の整備・充実化等を通じて、社員が意欲をもって仕事に取り組める環境の整備を進め、多彩な人材、優秀な人材の確保に努めています。また、デジタル技術を積極的に活用し、全社的に事業の効率化・省力化を進めるほか、人材育成制度を更に充実させることで社員一人一人の能力を高め、人材の確保に伴うリスクの低減に努めています。

 

 

⑪法的規制に関わるリスク

影響度:小~中

(リスクの内容)

当社グループは、国内においては環境・リサイクル関連法、独占禁止法、関税・輸出入規制、外国為替管理法をはじめ広範な法的規制の適用を受けています。また、海外においても各国の法的規制の適用を同様に受けており、投資そのものに制限を受ける可能性もあります。

また、将来において、現在予測し得ない法的規制が設けられた場合、当社グループの事業活動が制限される可能性があり、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、国内外における法的手続きによる権利の保全に万全を期すことにより、法的規制の変化へ対応しています。

 

 

 

ハザードリスク

⑫情報セキュリティに関わるリスク

影響度:中

(リスクの内容)

当社グループは、事業活動の中で、顧客、取引先及び当社グループ内の機密情報や個人情報を有しており、サイバーテロ等によるこれらの漏洩、改ざん、破壊等が発生した場合、信用の失墜、損害賠償の請求等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、秘密保持契約の締結や情報関連規則の遵守、マルウェア対策及び多要素認証等の情報セキュリティ対策システムの導入、運用、従業員教育により、データの安全で円滑な活用とともに、情報セキュリティに関するリスクの低減に努めています。

 

 

⑬自然災害に関わるリスク

影響度:小~大

(リスクの内容)

大規模な地震、台風、豪雨、豪雪や流行性の感染症蔓延等により、当社グループの事業拠点が被害を受け、またサプライチェーンが混乱することで事業活動が制限され、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループでは、各拠点の立地リスクを踏まえながら、設備の耐震性強化や排水能力の増強等、防災・減災のための各種対策を行っています。また、可能な限り早期の復旧を図るため、BCP(事業継続計画)の整備や訓練活動を各拠点において進めています。

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定めています。また、毎年3月31日を基準日とする期末配当を年1回行うことを基本方針としていますが、このほかの基準日を定めて剰余金の配当をすることができる旨を、定款で定めています。

当社は、株主の皆様への配当を経営における最重要課題の一つと位置付け、安定した配当の継続を基本に、企業体質強化と将来の事業展開に備えた内部留保の充実を勘案のうえ、業績に応じた配当を行うことを方針としています。中期計画2024の期間(2022年度~2024年度)における配当につきましては、同計画の経常利益が段階的に増加することから、各年度において、「前年度実績から普通配当を減配しないこと」、「段階的に普通配当を増配すること」を基本方針としています。

本方針のもと、当期の年間配当につきましては、前期から減益となったものの、安定配当と株主還元の拡充を前提とする本方針のもと、1株当たり130円となります。

(注) 基準日が当事業年度に属する取締役会決議による剰余金の配当は、次のとおりです。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年5月20日

7,817

130