2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社グループが考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
 当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。

 当社グループはリスクを適切にマネジメントするために、グループ横断でのリスク管理委員会を設置しております。本委員会の説明、コーポレート・ガバナンスの体制図等については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。
 本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

1. 事業環境に由来する事項について

(1) 景気動向、自動車関連市場等による影響
    [発生可能性:高、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、主要取引先が自動車関連メーカーであるため特に国内の自動車関連業界の開発動向に影響を受けやすい状況です。国内自動車関連業界は景気、金利、為替及び消費動向等の経済状況に影響を受ける傾向があり、それらの状況によっては、当社グループの取引先企業の業績が左右され、結果として当社グループの受注状況が影響を受けることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループとしましては、自動車業界以外の顧客に対する事業拡大、M&Aを含めた海外への進出等により、特定の業界や地域等の影響を受けにくい体質を構築する方針ですが、国内自動車業界の状況が想定以上に悪化した場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 これに加えて、世界の自動車関連業界においては、CASEに代表される変革を背景に次世代技術の研究開発が活発化しております。これに伴い、当社グループを取り巻く事業環境も大きく変化するものと予想されます。例えば、自動車の多機能化や自動車部品の電動化等に伴い、自動車関連業界ではまったく新たな分野での研究開発も必要になり、製品開発におけるニーズは多様化してきていると認識しております。

 当社グループでは、このような多様化する顧客ニーズに適応するために、ものづくりのデジタル技術の領域を拡大しながら製品開発を支援して参りました。具体的には、従来の3D技術による設計・解析領域に加えて、MBD・ソフトウエア・XR・デジタルリスク等の技術を活用した事業領域の拡大に取り組んでおります。このほかにも、顧客層の拡大や多様な人材の確保を通じて収益機会の拡大だけでなくノウハウの蓄積も目指して参ります。一方で、これらの施策をもってしても顧客ニーズに適応しきれない場合は、想定どおりの売上高が得られない等の理由により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、短期的には、世界の政治経済の動きに端を発する外国為替相場の急激な変動があります。これは当社グループの主要顧客が海外市場の動向の影響を受けやすい自動車産業に属し、これら為替相場の変動など急激な経済環境の変化が主要顧客の開発や設計に関わる計画に変更を及ぼすことがあるためであります。他方で、中長期的には自動車の開発や設計に関わる技術やツールの変化、自動車そのものの構造に関わる変化が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

(2) 競争環境による影響

    [発生可能性:中、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループの事業はいずれも類似事業を営む企業による事業推進の強化や新規参入等による競合が発生し得る分野であり、競争の激化による受注の減少や受注単価の低下が発生する可能性があります。当社グループとしては、幅広い業務領域への対応能力により顧客ニーズへ素早く対応できる体制や、当社自身が設計から製造まで幅広く実践している中で蓄積してきた独自の技術による付加価値の提供等により、他社の動向に左右されにくい体制の整備を進めておりますが、競合が急速に進行した場合や競合の影響が甚大な場合は当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 技術革新

    [発生可能性:中、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループが事業展開する分野は、グローバル規模で絶えず技術革新が進められており、当社グループに要求される技術水準や生産能力も年々高まっている状況です。当社グループとしても、社員教育を通じた技術水準の向上や生産設備の新設及び更新を通じた生産能力の向上により、技術革新に対応した事業展開ができるよう努めているところです。
 しかしながら、技術革新の水準が想定以上に進んだ場合又は当社グループの対応が技術革新のスピードより遅れた場合、当社グループの役務提供又は製品供給が顧客の要求水準どおりに実施できず、市場における競争力の低下が発生する可能性があり、その場合は想定どおりの売上高が得られない等の理由により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原材料の調達

    [発生可能性:低、影響度:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループで使用している一部の原材料については、その特性から調達先を特定の仕入先に依存せざるを得ないものがあります。当社グループでは、当該原材料について一定量を保有し、調達の多様化を進めることで、主要な仕入先への依存のリスクを低減しておりますが、主要な仕入先の業績の悪化又は政策の変更等によりこれらの調達が困難になる可能性も考えられ、その場合は当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 為替相場の変動による影響

    [発生可能性:高、影響度:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、北米、欧州、インド、中国等の企業と取引を行っており、米ドルやユーロ等の外貨建てで取引されているサービスの価格は為替相場の影響を受けるため、為替相場の変動状況によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、海外関係会社の現地通貨建ての財務諸表は、連結財務諸表作成の際に円換算されるため、円換算する際の為替レートによっては、為替換算調整勘定を通じて連結財務諸表の純資産の部が変動する可能性があります。

 

(6) 海外情勢の変化による影響

    [発生可能性:中、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは海外に子会社を有しており、販売先や仕入先等の取引先も海外に幅広く存在しております。また、今後についても海外での事業展開を積極的に図っていく方針です。このような状況下において、進出国における法令、政治、経済及び文化等の様々なカントリーリスクを有しております。
 当社グループは現地の動向を随時把握し、適時適切に対応していく方針でありますが、不測の事態が発生し事業の推進に障害が発生する場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 減損損失
    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、有形固定資産やのれん等の固定資産を保有しております。これらの資産については減損に係わる会計基準に従い、定期的に固定資産の減損の兆候を判定し、兆候がある場合は保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し、減損損失の認識・測定を行っており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っております。しかし、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 投資有価証券評価損

    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、事業シナジーによる戦略的リターンを重視したコーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)投資を行っております。CVC投資はシードからアーリーステージのベンチャー企業も対象としているため、計画通りに投資先企業の事業の進捗が進まない場合など、投資有価証券評価損により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

2. 事業内容に由来する事項について

(1) 事業運営における重要な契約について

① 3Dプリンターに関する代理店契約

   [発生可能性:小、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 マニュファクチュアリング事業は、米国3D Systems社及び株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン社と3D Systems社製3Dプリンターの日本国内における装置販売及び保守に関する代理店契約を締結、また株式会社日本HPとHP社製3Dプリンターの日本国内における装置販売に関する代理店契約を締結しております。これらの契約は、当社又は相手先から契約解除の申し出がない限り自動的に契約更新がなされることとなっており、今後につきましても現状の良好な取引関係を継続していく方針です。しかしながら、契約の内容の変更又は解消等が発生した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 重要な事業拠点の賃借契約
   [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:2026年]

 当社グループでは、重要な事業拠点として以下の賃借契約を締結しております。

事業所名

セグメント名称

所在地

契約開始時期

契約終了時期

Global Engineering Center-Yamato

(大和工場)

デザイン事業

マニュファクチュアリング事業

全社(共通)

神奈川県

大和市

2021年8月

2026年7月

 現時点においては、賃貸人と当社グループとの関係は良好であり、賃貸人から契約期間中の解約の申し出がなされる可能性は低いものと考えておりますが、賃貸人側の事情等により予期せぬ解約の申し出がなされる可能性があります。その場合、代替となる事業拠点が適時適切に確保できず操業が停止したり事業拠点の移転に伴う費用が発生したりすることにより、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) エンジニアの確保及び育成

    [発生可能性:大、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、デジタル技術を核とする製品開発ノウハウに基づき、グローバルに製品開発サポートを行う企業集団でありますが、エンジニアは重要な経営資源であり、かつ今後の事業拡大の重要な要素であると捉えているため、当社グループの事業の継続及び拡大にあたっては顧客企業の要求水準に応える優秀な人材を確保し、さらには常に最先端の技術に対応できるエンジニアの育成が不可欠であると考えております。

 エンジニアの確保については、国内・海外で積極的に実施しており、国内においては、全国の理工系大学の訪問やホームページ及び求人サイト等のインターネット媒体の活用等だけでなく、国内拠点の近隣に限らず全国主要都市での会社説明会の開催等、新たな採用戦略を進めております。海外においては、グループの海外拠点を活用した採用活動に加えて、優秀なエンジニアを多く輩出している東南アジア諸国からの採用等を展開しております。

 育成についても、継続的に成長を促すための人材育成システム及びスキルアップ支援体制等の施策により、人的資本経営に取り組んでおります。

 しかしながら、当社グループの求める人材の確保が計画どおりに進まない場合や現在在職している人材の予想を上回る流出が発生した場合、売上高の減少や売上原価率の上昇につながる恐れがあり、結果として当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) M&Aについて
    [発生可能性:中、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、デジタル技術を駆使するグローバルエンジニアリング企業として顧客並びに技術獲得の早期化と事業成長のために、M&Aをその有効な手段の1つとして位置付けており、必要に応じてM&Aを実施する可能性があります。
 M&Aに際しては、対象企業のビジネス、財務内容及び法務等について詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスクの低減を図る方針でありますが、これらの調査の段階で確認又は想定されなかった事象がM&Aの実行後に発生又は判明した場合や、M&A実施後の事業展開が計画どおりに進まない可能性があり、その場合は当社グループが当初期待した業績への寄与の効果が得られない可能性があることに加えて、対象企業の投資価値の減損処理が必要になることも考えられ、当社グループの財政状態及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 特定取引先への依存

    [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループの有力販売先の1つに本田技研工業株式会社があります。2023年12月期において、同社に対する売上高は、当社グループの売上高の25.5%を占めており、販売先の中でも比率が高い状況にあります。
 当社グループは、同社に限らず各取引先との良好な取引関係を維持していくよう努めていくと同時に、新規事業の伸長や海外を含めた新規取引先の開拓により、特定の取引先の動向に左右されにくい環境を構築していく方針です。しかしながら、上記環境の構築が進まなかった場合、同社の方針の変更やその他の何らかの事情により、当社グループとの取引の減少や取引条件の変更等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 経営成績の季節等による変動

    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、顧客企業に対し製品開発ノウハウやデジタル技術等を顧客企業オンサイトでのサービス提供も実施しております。オンサイトでのサービス提供の場合、主な契約形態として請負契約・準委任契約・派遣契約があり、特に準委任契約・派遣契約の場合、売上高がエンジニアの稼働時間に応じて変動するため、各月の稼働日や時間外業務時間数の多寡が売上高及び利益に影響を及ぼすこととなります。特に、夏季休暇や年末年始等の顧客企業の大型連休の時期はエンジニアの稼働日数が減少することが多いため、これらの時期の売上高及び利益の水準は、他の時期と比較して落ち込む傾向にあります。また、当社グループの新入社員は、研修期間を経て一般的に毎年7月以降にエンジニアリング等の業務に就きます。よって新入社員の稼働に伴い7月以降の売上高及び利益の水準を6月以前と比較して押し上げる要因となりますが、新入社員の稼働が計画どおりに進まなかった場合に、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 3Dプリンター装置の販売について

    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、3Dプリンター装置の販売を行っております。3Dプリンター装置の販売については検収基準で売上高が認識されますが、特に受注の時期は顧客企業の都合により左右されることがあるため、当社グループが予定した時期に売上高を認識できないことがあります。当社グループとしては、顧客企業に対し3Dプリンターの特長等を訴求することにより、円滑な受注及び検収が実現するよう努めておりますが、売上高の認識の時期が当初の予定と相違した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 新規事業の展開によるリスク

    [発生可能性:中、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、事業規模の拡大と高収益化を目的として、既存事業に留まらず、新規事業の開発に積極的に取り組んでいく方針であります。既存事業よりリスクが高いことを認識しておりますが、企業価値のさらなる拡大を目指すには、市場成長性の高い分野への進出や新規市場の創造が不可欠であると考えております。

 新規事業への取り組みは、綿密な市場調査・分析や、入念な事業計画を策定するなどを行っておりますが、予測と異なる状況が発生し計画通りに進まない場合には、当社グループの事業及び経営計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 法的規制

    [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

① デザイン事業に関する法的規制

 当社グループは、デザイン事業の実施にあたり、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、「労働者派遣法」という。)」に基づく労働者派遣事業の許可を受けております。当社グループでは、規程の整備及び役職員への教育等を通じて関係諸法令を遵守するよう努めており、本書提出日現在において、当社グループが労働者派遣事業の許可取消し等の事由に該当する事実はないと認識しておりますが、仮に労働者派遣法に定める派遣元事業主としての取消し等の事由等に該当した場合には事業の継続に支障を来す恐れがあり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、労働者派遣法を始めとする関係諸法令は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」など社会情勢及び経済環境の変化等に伴い改正されることがあります。今後改正が行われる場合に、改正内容が当社グループの事業にとって不利なものである場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(許可の状況について)

会社名

許可の名称

(許可番号)

監督官庁

有効期限

SOLIZE株式会社

労働者派遣事業

(派13-315070)

厚生労働省

2028年10月31日

 

(許可の取り消し等の事由)

 労働者派遣法において、労働者派遣事業を行おうとする者(法人である場合には、その役員を含む)が、法令違反等の許可の欠格事由(第6条)又は許可の取消事由(第14条)に該当した場合には、事業の全部又は一部の停止を命じることや許可の取消し等ができる旨が規定されております。

 このほか、当社グループが実施している請負についても、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)に準拠する必要があります。これについても労働者派遣法と同様の方法でその遵守に努めており、本書提出日現在において、当該基準に抵触する事実はないと認識しておりますが、仮に当社グループが請負で受託した取引が実質的に労働者派遣とみなされ労働者派遣法に違反するような場合は、業務停止等の行政処分により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② その他の法的規制

 その他にも、当社グループがマニュファクチュアリング事業で使用している各工場において消防法及び関連法令の適用を受けている他、日本国内のみならず、事業活動を行う世界各国において様々な法的規制を受ける場合があります。当社グループでは、「グループコンプライアンス規程」を制定しグループ内へ周知徹底するとともに、グループ内での定期的なコンプライアンス研修の実施、法務担当部門における法的規制の改正の確認及び顧問弁護士との連携等の各種施策を講じることにより、法的規制に抵触するリスクを低減するよう努めております。しかしながら、当社グループが何らかの理由で法的規制を遵守できなかった場合や法的規制に重要な変更が発生した場合等には、当社グループの事業の推進に障害が発生したり、対応のためのコストが発生したりすることが考えられ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 個人情報等の管理

    [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、「個人情報の保護に関する法律」で規定する個人情報取扱事業者として同法の適用を受けており、事業を通じて顧客及び従業員等の個人情報を保有しております。当社グループでは個人情報の管理について、「個人情報保護規程」等による厳格なルールを設けて対応しておりますが、万一個人情報の漏洩等が発生した場合にはその対応のための費用が発生し、さらには当社グループの信用にも影響が出ることが想定されるため、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報セキュリティ

    [発生可能性:中、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループでは、顧客企業の機密情報を大量に取り扱っております。そのため、機密情報の取り扱い等の情報セキュリティに関する規程を整備・運用し、毎年役職員への情報セキュリティの研修も実施しております。さらに、ネットワークセキュリティ等のハード面でのセキュリティ強化や、事務所や施設へのアクセス制限等の管理も行っており、機密情報の漏えいに対する対策を講じております。
 このような対策にも関わらず、機密情報の外部への漏えい等が起こった場合には、顧客企業から当社グループへの損害賠償請求等が発生することが想定され、その場合は当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

3. その他について

(1) 過去の民事再生手続について

    [過去の発生事実のため、発生可能性・影響度・発生する可能性のある時期については省略]

 当社は過去に民事再生法の適用を受けております。その経緯は以下のとおりです。

 

① 民事再生手続開始申立から民事再生手続終結までの経過

 当社における民事再生手続開始の申立てから民事再生手続終結に至るまでの経緯は以下のとおりです。

2009年2月25日

東京地方裁判所へ民事再生法に基づく民事再生手続開始の申立て

2009年3月4日

東京地方裁判所の再生手続開始決定

2009年10月2日

東京地方裁判所へ再生計画案を提出

2009年11月10日

東京地方裁判所の再生計画認可決定確定

2012年11月12日

東京地方裁判所の民事再生手続終結決定を受領

 

② 民事再生手続に至った経過と原因

 当社は1990年の設立以来、3D CADを基軸とした金型の設計・試作・製造や製造工程の効率化を実現するコンサルティングサービスを事業として運営しておりました。しかし、2008年に発生した世界金融危機を契機に、当社の主要顧客が属する自動車業界の景況も悪化したため、2008年12月期の当社の売上高は大幅に落ち込むこととなり、この状況は2009年に入っても改善傾向が見られませんでした。これに加え、将来的な事業規模の拡大を企図して建設した工場にかかる有利子負債の元利金負担及び本社ビルの賃借料負担が大きく、資金繰りが逼迫する事態となりました。当該状況を改善すべく、営業戦略の見直し及び経費削減に着手しようとしましたが、資金繰りが立ち行かなくなったため、やむを得ず2009年2月25日に東京地方裁判所へ民事再生手続開始の申立てを行うに至りました。
 再生手続にあたっては、本社ビルの移転、工場の売却、人件費の削減及びその他の経費の削減を実施したほか、経営責任を問う趣旨で民事再生手続開始申立て前に在籍していた取締役がすべて退任し、株主責任を明確化する趣旨で100%減資も実施しております。

 

(2) 一般財団法人SOLIZE財団との関係

    [発生可能性:小、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 一般財団法人SOLIZE財団(以下、「同財団」という。)は、人の知恵と技術を活かして社会課題を解決することを目的に、社会課題の解決を志向する個人又は団体への活動資金の助成、学術的研究に対する助成等を行う財団として2022年4月に設立され、本書提出日現在、当社株式16,600株を保有しております。今後、同財団は当社株式から得られる配当金、当社からの寄付金及び一般からの寄付金を主な原資として運営する予定となっています。同財団が保有する当社株式数については、助成金の対象範囲を拡大するための原資の確保の趣旨から将来的に増加する可能性がありますが、本書提出日現在において具体的に決定している事項はありません。

同財団の理事は5名選任されていますが、そのうち3名は当社の役職員が兼職により同財団の理事として就任しております。当社としましては、同財団の議決権行使に係る独立性の確保のため、当社株式の議決権行使に係る理事会決議に当社役職員を兼職する理事は参加しない方針としております。また、同財団は公益財団法人への移行も視野に入れており、その移行のための認定の基準を充足する観点から、当社の役職員又はその関係者ではない者を同財団の理事に追加で招聘する可能性があります。

このほか、本書提出日時点で同財団は当社の関連当事者に該当しております。当社は、関連当事者との取引については、取引の必要性を含め一般株主の利益保護の観点から極めて慎重に判断する方針です。この点、同財団の事務局を当社の職員1名が兼職することにより対応しておりますが、これは「知恵と技術をエンジニアリングし、価値創造を革新する」、「『本質的に美しいものづくり』を実現する」という使命を掲げる当社が同財団の活動方針に賛同し、CSR活動の一環として行っているものであり、当面の間継続して実施する方針です。これ以外に、当社と同財団との間で特別な利害関係はありません。

 

(3) 訴訟

    [発生可能性:小、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 本書提出日現在、当社グループの業績に重要な影響を及ぼすような訴訟を提起されている事実はありません。一方で、事業を推進するうえでは訴訟が発生する可能性が日常的に存在します。さらに、当社グループの場合は海外でも事業を展開しているため、海外においても予期しない訴訟が発生する可能性もあります。
 当社グループでは、「グループコンプライアンス規程」及び「グループリスク管理規程」の制定、コンプライアンス委員会及びリスク管理委員会の設置並びに社内教育による法令遵守の周知徹底等、多様な手段を講じ可能な限り訴訟を受ける可能性を排除するための内部管理体制を整備しております。しかしながら、何らかの訴訟を受けた場合、その内容及び結果によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 災害等が発生した場合の影響
    [発生可能性:小、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、国内外で事業を展開しており、大地震、台風等の自然災害や事故、火災等により、生産の停止、設備の損壊や電力供給不足等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業活動に支障が発生する可能性があります。また、当社グループの責に帰すべき事故等が発生した場合には、損害賠償請求等を受ける可能性があります。このような場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 社会保険料率の上昇

    [発生可能性:中、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループのデザイン事業においては、エンジニアが経営資源の中心となるため、売上原価の大半が労務費で構成されております。このため、社会保険料の料率が上昇した場合は売上原価率の増加につながる恐れがあります。
 当社グループとしては、稼働率の適時な見直し、業務の効率化及び単価の改定等により影響を最小限に抑制する方針ではあるものの、料率変更が想定以上に大きくなった場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 大株主について

    [発生可能性:低、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社の株主である古河未由紀氏、古河摩耶氏、古河慶純氏、古河陽純氏及び古河真季氏は、当社の元取締役である古河建規氏の親族であり、古河建規氏の逝去に伴いその所有していた当社株式を相続により取得しており、本書提出日現在の議決権比率は合計で30.1%となっております。これらの株主と当社との間には特記すべき利害関係がない状況ですが、これらの株主が所有する当社株式について、少なくとも当社が知り得る限りにおいて短期的にはその数が増減するような事象は識別されておらず、またその議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求する方針であると聞き及んでおります。しかしながら、将来的に何らかの事情によりこれらの株主の所有株式数が増減した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響が及ぶ可能性があります。

 

(7) 資本政策について

    [発生可能性:低、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社は、本書提出日現在、自己株式を805,600株(発行済株式総数に対して13.4%)保有しております。自己株式については、主に現在発行済みの新株予約権(目的となる株式の数は合計555,600株であり、本書提出日現在の発行済株式総数の9.3%に相当)の行使がなされた場合に、新株の発行に代えて交付することを予定しております。ただし、今後何らかの事情により資本政策を変更する可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

(1) 配当の基本的な方針

 当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の最重要課題の一つと位置付けており、将来の事業展開のための内部留保を確保しつつ、安定的に配当を行うことを基本方針としております。このような基本方針のもと、年間の配当額は前事業年度末の連結純資産の2.5%程度を目安とする考えです。

 

(2) 毎事業年度における配当の回数についての基本的な方針

 剰余金の配当を行う場合には、中間配当及び期末配当による年2回の配当を行う方針です。中間配当の実施については、業績や将来的な成長戦略等を総合的に勘案して決定していく方針です。

 

(3) 配当の決定機関

 当社は、取締役会決議によって剰余金の配当等を行うことができる旨を定款に定めております。

 

(4) 内部留保資金の使途

 内部留保資金については、デザイン事業におけるエンジニアの育成やマニュファクチュアリング事業で必要となる設備投資等、当社グループとして必要な成長投資に利用することにより、企業価値の向上に努める方針です。

 

(5) 中間配当について

 当社は、基準日を毎年6月30日とする中間配当を取締役会決議によって行うことができる旨を定款に定めております。

 

(6) 当期の配当決定に当たっての考え方

 当期の配当金については、当期の業績を総合的に勘案し中間配当は無配、期末配当は1株につき44.00円とし、年間の配当金としては1株につき44.00円といたしました。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年3月1日

取締役会

普通株式

178

44.00