2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    14,889名(単体) 49,310名(連結)
  • 平均年齢
    45.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    20.2年(単体)
  • 平均年収
    6,862,654円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

 

2024年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

 ウォーターテクノロジー事業

29,108

(2,495)

 ハウジングテクノロジー事業

19,004

(3,405)

 全社共通部門

1,198

(98)

合計

49,310

(5,998)

 (注)1.従業員数は就業人員であり、パートタイマー、嘱託、臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しています。

2.全社共通部門として記載されている従業員数は、特定の事業に区分できない管理部門に所属しているものです。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

14,889

(2,509)

45.7

20.2

6,862,654

 

セグメントの名称

従業員数(人)

 ウォーターテクノロジー事業

6,045

(841)

 ハウジングテクノロジー事業

7,654

(1,570)

 全社共通部門

1,190

(98)

合計

14,889

(2,509)

 (注)1.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

2.従業員数は就業人員であり、パートタイマー、嘱託、臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しています。

 

(3)労働組合の状況

会社名

組合名

組合員数(人)

株式会社LIXIL

LIXIL労働組合

12,192

労使関係については良好であり、特記すべき事項はありません。

 

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当社グループは、「インパクト戦略」(注)の優先取り組み分野の一つである「多様性の尊重」において、2030年3月期までに当社グループ全体にインクルージョンの文化を定着させ、ジェンダー不均衡を是正する目標を達成することを掲げ、取り組んでいます。また、かねてより全従業員が性別、年齢、人種等に関わらず、いきいきと活躍できる職場環境や制度づくりを優先事項とし、改革を実行してきました。

 (注)「インパクト戦略」の詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。

 

人事制度改革

現在、従業員の誰もが能力を最大限に発揮でき、当社グループがその成長の後押しができるように、さらなるDiversity & Inclusion(D&I)の推進と実力主義の徹底を目指し、国内において新たな人事制度への転換を図っています。

当社において、管理職については、2022年4月より新人事制度へ移行したことに伴い、職務・職責を基本とした等級制度に見直し、短期インセンティブに個人の貢献及び会社の業績を従来以上に反映させる仕組みを導入しています。また、これまで女性従業員の割合が多かった勤務地限定社員制度(地域別賃金)を2022年4月に廃止しました。これにより、将来的な転勤可能性による賃金差をなくし、個々人の職務・職責による実力主義の報酬体系を目指しています。

一般社員については、実力主義の人事制度を支える報酬制度の実現を目的に、属人的な要素を排した諸手当の制度変更を2023年4月に実施しました。引き続き、性別や年齢に関わらず、実力主義の人事制度への転換を図る予定です。

 

女性人材の採用・育成・登用の取組み

2030年3月期までに全世界の女性管理職比率30%を目指し、これまで有望な女性人材を発掘するために、管理職にあたる主要ポジションの後継者の特定と育成計画を検討するPeople & Organizational Development(POD:人材組織レビュー)プロセスにD&Iの観点を取り入れています。2024年3月期からは、PODのフォローアップ施策のひとつとして、PODで特定された女性タレントを対象に、自らのキャリア観を共有しリーダーシップを発揮するための「女性アウトリーチプログラム」を日本にて先行開始しました。本プログラムは、役員と女性タレントの対面セッションを通じて、女性タレントへの理解を深め、組織づくりに寄与することを目的としており、対象となる女性タレントには、ネットワーキング、能力、キャリア開発の機会を提供し、昇進・育成を推進します。今後はさらにメンタリングの機会等も提供すると同時に、グローバル展開も予定しています。また、選抜型の次世代人材育成プログラム「NEXTプログラム」を活用し、有望な女性従業員の育成に取り組んでいます。採用においては、将来の女性管理職プールを拡充するため、当社における新卒女性比率50%の目標を掲げながら、女性の母集団形成を加速させる採用活動を推進しています。

 

仕事と家庭の両立を支援する働きやすい職場づくり

従業員が多様なライフステージの中で高いパフォーマンスを発揮し続けられるよう、性別や年齢に関わらず、柔軟な働き方ができる仕組みづくりとして、テレワーク制度やスーパーフレックス制度を導入しています。また、仕事と家庭の両立を支援するための育児時短制度の拡充、産後パパ育休(出生時育児休業)の導入、当社独自の配偶者出産・育児休暇(ぱぱの子育て休暇)の導入・拡充など、女性従業員が出産や育児に直面してもキャリアを継続しやすい制度づくりはもちろん、育児に参画する男性従業員にも働きやすい職場環境の構築を積極的に進めています。

 

これらの取組みにより、当社における男性従業員の育児休業取得率については87.3%と一般的な水準と比較しても高くなっています。一方で、所属部門や業務内容によっては取得率に差が出ているため、引き続き、取得可能な対象者には個別に周知を行うなど、利用に関する働きかけや周囲の理解促進といった環境づくりを進めていきます。

また、男女の賃金の差異は、全世界では80.3%となっています。当社においては、全体では59.8%となっていますが、5社合併後、人事制度の整った2014年4月以降の新卒採用者における男女の賃金の差異は87.3%となっているなど、男女の賃金の差異は縮小されつつあります。また、職位別平均基本給における男女の差異は90%を超える水準であり、同一の職位において同水準の報酬を実現しています。一方で、2014年以前には転勤のある総合職と転勤のない専門職、専任職という給与水準の異なる3つの等級制度を採用していた影響により、現在でも一部の職種で男女の等級構成差が残り、賃金差に繋がっています。これを課題と捉え、引き続き、解消に向けた取組みを継続していきます。

 

 

当社グループでは、新人事制度の下で、さらなるD&Iの推進と実力主義の徹底を行い、今後も、公正で、性別や年齢、職種などに捉われない多様な人材が活躍できる制度や取り組みを推進しながらジェンダー不均衡の是正に取り組んでいきます。

また、現在、これらの施策は当社を中心に展開が進行していますが、国内関係会社においても、各社のビジネス環境に適した形で、実力主義に基づき多様な社員が最大限の能力を発揮でき、評価される人事制度改革を実行していく予定です。

 

提出会社

当事業年度

管理職に占める

女性労働者の割合(%)

(注)2

男性労働者の

育児休業取得率(%)

(注)3、4

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)2、5

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

6.9

87.3

59.8

66.1

91.6

(注)1.本数値は当社ウェブサイトに掲載する「LIXIL ESGデータブック2024(先行開示データ:環境及び社会データ)」において、2024年6月に第三者保証取得済です。

   2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

   3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

   4.直雇用の従業員のみを対象としています。当社独自の育児目的休暇である「配偶者出産・育児休暇(ぱぱの子育て休暇)」を含んでいます。

   5.賃金には基本給のほか時間外勤務手当等の基準外賃金及び賞与を含んでいます。

 

連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める

女性労働者の割合

(%)

(注)2

男性労働者の

育児休業取得率

(%)

(注)3、4

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)5、6

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

株式会社LIXILトータルサービス

36.7

57.1

65.8

73.0

株式会社LIXILトータル販売

67.6

75.9

67.4

Gテリア株式会社

69.8

72.3

49.6

株式会社LIXILリアルティ

67.8

70.4

70.4

株式会社LIXIL住生活ソリューション

51.1

77.6

65.8

(注)1.本数値は当社ウェブサイトに掲載する「LIXIL ESGデータブック2024(先行開示データ:環境及び社会データ)」において、2024年6月に第三者保証取得済です。

   2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、開示対象となる連結子会社は該当ありません。

   3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

   4.直雇用の従業員のみを対象としています。当社独自の育児目的休暇である「配偶者出産・育児休暇(ぱぱの子育て休暇)」を含んでいます。

   5.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

   6.賃金には基本給のほか時間外勤務手当等の基準外賃金及び賞与を含んでいます。なお、手当等支給内容が異なる賃金は、各子会社毎の基礎にて算出しています。

 

補足データ:株式会社LIXIL

■従業員職種別比率(2024年3月31日現在)

区分

男性

女性

正社員

94.1%

72.2%

契約社員

5.9%

27.8%

(注)正社員数には、当社から社外への出向者を含み、社外から当社への出向者を除いています。

 

■職位別平均基本給における男女の差異(2024年3月31日現在)

職位

男女の基本給の差異

統括・事業部長職クラス

118.8%

部長職クラス

101.5%

課長職クラス

96.5%

係長職クラス

91.7%

一般クラス

97.4%

 

■勤務地限定社員制度の男女別適用比率(2024年3月31日現在)

区分

男性

女性

適用なし

59.7%

20.1%

適用あり

40.3%

79.9%

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

当社グループでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というLIXILのPurpose(存在意義)の達成を目指し、事業に関連した環境・社会の重要課題に取り組んでいます。未来を見据えた活動を通じて、私たちは暮らしと社会にインパクト(良い影響)を生み出しています。
 

私たちが追求するのは、多様なニーズやライフスタイルに寄り添う豊かで快適な住まいの実現です。その実現には、世界中の誰もが安全で衛生的なトイレや手洗いを利用できるようにすること、自社の事業プロセス及びバリューチェーン全体で環境負荷を低減するとともに、革新的な製品やサービスを通じて、次世代が受け継ぐ地球環境の改善に貢献すること、そしてインクルーシブな組織の構築とこれによって生まれるイノベーションを通じて、すべての人びとの健康で快適な暮らしを支えることが必要不可欠です。
 

当社グループは、事業の域を超えて、より広い社会とつながることで、インパクトを拡大していきます。人びとが明るく、健康的な暮らしを送ることができる社会の構築をサポートし、地球環境を守り、次世代へとつなぎます。そして、多様なニーズに応えることで機会を生み出せるインクルーシブな組織づくりに努めます。

 

LIXILのPurposeを原動力とするこうした取り組みを通じて、より広い社会にインパクトを生み出すことにより、当社グループは長期的に持続可能な成長を実現していきます。

 

 

 

重要課題について

当社グループの重要課題は、LIXILのPurposeや資本に基づいてステークホルダーや価値創造プロセス(VCP)、当社グループの事業戦略やインパクト戦略と深く連動しています。インパクト戦略と重要課題の関係性については、下記をご参照ください。

 

当社グループは2016年3月期に特定した重要課題について、2021年3月期に再検証を行い、重要課題を改めて特定しました。当社では、現在、3年に一度を目処に、下記のプロセスに基づいて重要課題の評価と特定を行っています。インパクト戦略に関する施策や実績の評価を確実かつ定期的に行う上で、事業リスクの管理と重要課題の検証プロセスが相互補完的な関係にあるよう考慮しています。また、重要課題、特に関連するインパクト、リスク及び機会については、少なくとも年に1回検証し、必要に応じて見直しを行っています。

 

重要課題の評価プロセス

 

当社グループの欧州地域における事業は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に従い、重要なデータ及び情報を欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づいて提示することが求められます。この包括的な開示要件は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の問題を幅広く取り扱い、当社グループの欧州事業は2026年3月期に終了する会計年度から毎年報告を行うことになります。

 

これらの新しい報告義務に対応するため、当社グループは昨年初めにCSRD導入に向けた重要なプロジェクトを開始しました。現在、CSRDガイドラインに従って、当社グループの欧州事業に求められるダブルマテリアリティ評価と開示要件の検証を行っています。

 

なお、重要課題のうち、当社グループが強みを活かして主体的に取り組むことによりステークホルダー及び社会に大きなインパクトをもたらす可能性や、ステークホルダーのニーズ、またESG評価機関における評価基準を踏まえたリスクと機会に基づき取り組みを強化すべき領域を「優先」に位置付けています。「優先」に位置付けられた重要課題は、インパクト戦略の3つの優先取り組み分野に特に深く関連しており、これらの優先課題を基軸に取り組みを進めています。

 

 

 

重要課題

取組

優先

グローバルな衛生課題の解決

人びと、特に女性や女児が、安全な衛生施設を利用できるようにすると同時に、子どもにとって危険な病気感染を防ぐ。SATOブランドをLIXILの取り組みの中核とし、各市場のインフラ、所得水準、環境的制約などの特性やニーズに合わせた研究開発と事業に取り組む。

気候変動対策を通じた緩和と適応

気候変動への対応が求められる中、事業プロセスと製品・サービスによるCO2の排出量実質ゼロに向けた取り組みを推進し、気候変動への適応に資するソリューションを提供する。

水の持続可能性の追求

安全な飲料水にアクセスできない人びとや水資源の枯渇リスクに対して、水まわり製品のリーディングカンパニーとして人びとが水の恩恵を最大限享受できるようにし、世界規模で水の持続可能な利用が達成されるよう支援する。

資源の循環利用の促進

限りある資源の持続的利用を見据えて、原材料の調達から製造、使用後までを考慮した循環型のものづくりを推進し、廃棄物の排出を最小限に抑える。

製品ライフサイクルを通じた環境への影響

LIXILの製品は人びとの生活に根差し長期にわたって使用されるため、環境に配慮した製品設計を推進することで、製品のライフサイクルを通じた環境負荷や、製品に含まれる化学物質が及ぼす影響を低減するとともに、お客さまや社会の環境改善に貢献する。

環境マネジメント

ガバナンス体制及び環境マネジメントを継続的に改善し、コンプライアンスの徹底や環境パフォーマンスの向上につなげる。

多様性の尊重

ダイバーシティ&インクルージョン文化を定着させる。成長とイノベーションの原動力として多様な従業員が持つ英知や視点を活用し、世界中で様々な人の生活の質の向上に貢献する製品やサービスを開発する。

 

生物多様性の保全

LIXILの事業活動は生物多様性に依存し影響を与えていることから、損失をできる限り少なくし、ネイチャーポジティブに資する事業活動やソリューション提供を推進する。

人材と能力開発

従業員が価値創造の原動力であるという認識のもと、体系的な人材育成に取り組むとともに、従業員一人ひとりの自発的キャリアの開発支援に取り組む。

製品の安全性

お客さまや社会からの信頼の源泉は「品質」であるという考えのもと、製品のライフサイクル全体を通じて品質向上と安全性を実現する。

顧客満足

お客さまに住生活のすべての場面で素晴らしい体験をしていただけるように、プロユーザーと一般のお客さまの両方の目線に立ち、顧客満足を追求する。

従業員の安全と健康

すべての従業員の安全を優先し、企業価値向上を目指す健康経営を推進する。

企業倫理とインテグリティ

すべての従業員及び役員が、高い企業倫理に基づき誇りを持って日々の事業活動に従事するよう、コンプライアンス文化の定着・維持を目指す。

人権

人権の尊重を事業継続の基本要件と捉え、国際的な人権の原則を尊重し、すべてのステークホルダーの人権に配慮した事業活動を推進する。

サプライチェーンマネジメント

調達段階におけるリスクを特定し、サプライヤーとの協働を通じて、責任ある調達と製品の安定供給を推進する。

コーポレート・ガバナンス

コーポレート・ガバナンスの継続的な充実を図る。経営の執行と監督を明確に分離し、執行役による迅速・果断な意思決定を可能にするとともに、経営の透明性を確保する。

リスクマネジメント

事業活動に影響を及ぼすリスクを識別し、特に重点管理するものを重要リスクと定義し、リスクオーナーが対応状況を共有・報告することで全社のリスクを管理する。

ステークホルダーエンゲージメント

LIXILの事業活動は多くのステークホルダーに支えられているという考えのもと、各ステークホルダーとの積極的かつ能動的なエンゲージメントを通じて、生活の質の向上や社会課題の解決に貢献する。

情報セキュリティ

効率的で安定した事業活動の遂行を担保するために、基幹システムの刷新や個人情報の管理の強化、サイバーセキュリティ確保のための体制を構築する。

税の透明性

税の透明性を担保し、適切な納税を実施する。

責任あるマーケティングと広告

製品やサービスに関する適切な情報を提供する。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ関連の課題に戦略的に取り組むため、四半期に一度「インパクト戦略委員会」を開催しています。

当社グループ全体で迅速かつ適切な対応を行うため、インパクト戦略委員会のメンバーには、コーポレート部門及び事業部門を統括する執行役並びに部門長が任命されています。インパクト戦略委員会での討議・審議結果は、Impact戦略担当執行役より四半期ごとに執行役会に報告され、必要なものについては決議がなされます。取締役会はそれらに対する進捗状況について半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。

また、インパクト戦略委員会での決定事項は、推進責任者である各担当執行役及び部門長が担当部門に伝達することで、具体的な取り組みへと展開されます。活動に深く関わる各委員会との間でも、情報の共有・報告が行われています。

 

インパクト戦略委員会では、グローバル衛生審議会、環境戦略審議会、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)審議会(注)より、インパクト戦略における3つの優先取り組み分野の活動の進捗が各回で報告されるほか、その他のESG関連テーマについても討議を行っています。

(注)2024年3月まで、SATOアドバイザリーボード、環境戦略委員会、ダイバーシティ&インクルージョン委員会

 

当連結会計年度の主な議題:

・インパクト戦略に関するガバナンス

・重要課題の見直し計画

・開示フレームワークへの対応(CSRD、ISSBなど)

・人権に関する取り組み

・ESGデータガバナンス構築

 

 

(2)戦略

当社グループのインパクト戦略では、当社グループが専門性を活かして大きなインパクトを生み出すことができる「グローバルな衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」を3つの優先取り組み分野に定めています。現在、そして未来を見据え、インパクト戦略を事業戦略に組み込み、水回りと住宅設備における知識や規模を活かしながら、従業員やパートナー、さらには地域住民など様々なステークホルダーの皆さまと協働して取り組みを進めています。

 

各取り組みにおいては、重要課題に沿って策定されたアクションプランとKPIに基づいて、その進捗や成果を毎年確認しながら、目標達成に向けて尽力しています。

 

■グローバルな衛生課題の解決

革新的で低価格なトイレや衛生ソリューションを提供することにより、2025年までに1億人の人びとの衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献することを目指しています。

当社グループは、目標達成に向け、開発途上国向けの衛生製品を開発・提供するSATO事業を基軸に取り組みを推進しています。地域の特性やニーズに合わせた開発を行い、現在では製品・備品のポートフォリオを拡充し、低価格で耐久性に優れた衛生ソリューションであらゆる地域の人びとの生活の質の向上と明るい未来を支えています。生活の質の向上とともに、市場ニーズが安価なSATOブランド製品から上位製品へ移行することを想定しています。

 

SATOの革新的な衛生ソリューションは、45ヵ国へ約860万台を出荷し、これまでにおよそ6,800万人の衛生環境改善に貢献しています(当連結会計年度末時点)。さらに、製品ソリューションの提供に留まらない取り組みを実施することで、持続可能な衛生市場の創設に貢献しています。SATO事業では、現地における職人や実業家の育成のほか、Make(作る)、Sell(売る)、Use(使う)というサイクルを回す現地の生産・販売体制の構築など、総合的なアプローチを推進しています。また、特に深刻な衛生課題を抱える農村や都市部の住民に対しては、独創的な啓発活動を通じて、世界の衛生課題に関する理解を促進しています。インパクトの最大化に向け、国際連合児童基金(ユニセフ)、米国国際開発庁(USAID)、FINISH Mondialなど、水と衛生分野の専門性を備えた有力な様々な国際機関や現地組織地方自治体機関、専門機関、NGO、ビジネスパートナーとの連携を強化し、現地における人材育成やサプライチェーン構築、事業創出・雇用創出などを含めた衛生市場の確立に向けたインパクトが、自立的・持続的に広がることを目指して、今後も取り組みを推進していきます。

 

水と衛生分野の課題解決に向けては、世界各地で進む行政による投資及び取り組みと、民間企業が持つ専門的な知見や革新的な技術を効果的に組み合わせることで、より大規模なインパクトを実現できます。当社グループ初の公共部門エンゲージメントに特化したプラットフォームであるLIXIL Public Partners(LPP)は、政府などの公共部門をはじめとする主要ステークホルダーとの連携を促進し、シナジーの最大化を図ることを目的に設立されました。SATO事業などの既存の取り組みをベースに、LPPは政府、NGO、学術機関と協働し、衛生分野における革新的な製品やソリューションを提供しています。

 

■水の保全と環境保護

「LIXIL環境ビジョン2050」では、「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、環境に関する重要課題のうち「気候変動対策を通じた緩和と適応」「水の持続可能性の追求」「資源の循環利用の促進」の3つを、ビジョン実現に向けた重点領域に定めています。重点領域を推進するための共通の基盤として、製品ライフサイクルを通じた環境負荷の低減、全社の環境マネジメント強化、及び各領域に深く関連する生物多様性の保全にも取り組んでいます。2050年までに、環境分野のリーディングカンパニーを目指し、事業プロセスと製品・サービスを通じてCO2の排出量を実質ゼロにし、水の恩恵と限りある資源を次世代につなぎます。

 

・「気候変動対策を通じた緩和と適応」

当社グループでは、環境負荷低減に努めると同時に、環境に配慮した製品やサービスの提供を通じて2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指します。さらに、当社グループの事業プロセス及び製品やサービスが直接的に排出するCO2排出量だけにとどまらず、社会全体におけるCO2排出量の削減に貢献することが重要と捉えています。また、気候変動の影響による雨量の増加、大型台風などの自然災害、気温上昇などによる被害の軽減に貢献する製品・サービスを提供し、気候変動への適応策を推進しています。

 

・「水の持続可能性を追求」

当社グループでは、人びとが水の恩恵を最大限に活用できるよう、グローバルな水の持続可能性を追求しています。その実現に向け、事業プロセスにおける水使用効率の向上や水不足拠点における水使用量の削減、節水関連の製品・サービスによる水使用削減への貢献などを通じて、責任ある水の使用を推進します。また、安全で衛生的な水と、水へのアクセス向上に向けて政府や公共部門などと取り組み、水道水へのアクセスがある地域においては、浄水技術の活用により、安全性を高めたおいしい水を提供します。これらの取り組みを通じて、水の環境価値を創造します。

 

・「資源の循環利用を促進」

当社グループで使用する金属、木材、樹脂、セラミックなど様々な原材料の調達から製造、使用、廃棄までの製品ライフサイクル全体において、持続可能な利用や資源循環の取り組みを全社で推進しています。リサイクル素材の活用や再利用に配慮した設計といった循環型のものづくりを推進するほか、「LIXILプラスチック行動宣言」のもと、プラスチックの使用量削減や循環利用、代替素材の開発などを推進しています。原材料を確保し、社会と事業の継続性に貢献するべく、貴重な資源を最大活用に取り組んでいます。

 

 

■多様性の尊重

 当社グループは、お客さまの多様なニーズに合った革新的な製品やサービスの提供に取り組んでいます。顧客志向を徹底し、様々なニーズに対応したイノベーションや持続可能な成長を実現していく上で、多様な従業員の潜在能力を引き出すことができる公平でインクルーシブな環境の構築が重要であると考え、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を推進しています。

 

 2018年3月期に「D&I宣言」を発表し、2020年3月にD&Iをグローバルに推進する部署を設置し、全社共通の施策の展開に取り組んできました。また、2021年3月期には、CEOを議長とし執行役と部門長で構成されるD&I委員会を設立して、D&I戦略や推進施策を更新しました。D&I推進のフェーズが全社的な戦略及び施策の策定から各部門を主体とする活動に移ったことに伴い、2025年3月期からは議長を含むメンバーが執行役から部門長に変更になり、各部門の現状を踏まえた上で活発な議論を行い、取り組みを推進しています。また、体制の変更に伴い、機関の名称も「D&I委員会」から「D&I審議会」に変更になりました。

 

 戦略では、2030年3月期までに当社グループ全体にインクルージョンの文化を定着させ、ジェンダー不均衡を是正することを目標に掲げています。男女間賃金格差や女性管理職比率の低さなど当社が抱える課題を認識した上で、目標達成に向けたアクションプランを策定し、人事制度や人材育成、職場環境づくりにおいてD&Iの観点を組み込んだ施策を段階的に進めています。

 

 従業員は価値創造における最大の原動力です。私たちは、これらの取り組みを通じて従業員がその力を発揮することによって生まれるイノベーションや社内外との様々なコラボレーションを通じて、多様化する顧客ニーズに応え、年齢、性別、障がいの有無を問わずすべての人びとの健康で快適な暮らしを支えることを目指しています。

 その重要な取り組みの一つとして、誰もが利用しやすいユニバーサルデザイン(UD)を組み込んだ水まわり製品・住宅建材やサービスの開発及び提供を行うなど、事業を通じて「インクルーシブな社会の実現」に貢献しています。

 

 また、エンドユーザーのニーズに応えるだけでなく、UDウェブサイトやパブリックトイレの情報に特化した「LIXILパブリックトイレラボ」などを通じた情報発信、障がいのある方への理解を促進する啓発活動や大学との共同研究などにも取り組むことで、社会により良い変化をもたらしています。

 

(3)リスク管理

当社グループは、事業活動を通じて世の中に与えるインパクトを最大化するため、当社グループ共通の基準に基づき定期的に「重要課題」の目標達成を阻害する可能性のあるリスクを、特定・評価し、対応すべきリスクの優先順位を決定しています。また、リスクを戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、当該リスクに応じた対策を立案・実行するとともに、対策の進捗状況をモニタリングして継続的に改善することで、ステークホルダーに対する持続的な価値の創造を実現しています。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

 

(4)指標及び目標

指標

目標

当連結会計年度

実績

グローバルな

衛生課題の解決

衛生環境の改善に関する取り組みを通じた生活の質の向上

2025年までに1億人

約6,800万人

水の保全と

環境保護

Scope 1 & 2によるCO2排出量

2031年3月期までに50.4%削減(2019年3月期比)

△34.7%

(2024年3月期排出量:

740千t‐CO2(注)1)

Scope 3によるCO2排出量

2031年3月期までに30%削減(2019年3月期比)

△15.2%(2023年3月期)

(2023年3月期排出量:

7,786千t‐CO2)

Scope 1 & 2、Scope 3によるCO2排出量

2050年までに実質ゼロ

Scope 1 & 2 △34.7%

 

Scope 3      △15.2%

(2023年3月期)

新築戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本)

2026年3月期までに100%

93%

節湯水栓、節水型トイレの販売構成比(日本)(注)2

2031年3月期までに100%

節湯水栓     94.1%

節水型トイレ 99.4%

水使用効率向上

2031年3月期までに20%向上(2019年3月期比)

+16.0%(2023年3月期)

節水製品による水使用削減貢献量

2025年3月期までに年間20億㎥

15億㎥(2023年3月期)

廃棄物などのリサイクル率

2026年3月期までに90%

88.1%(2023年3月期)

リサイクルアルミの使用比率(注)3

2031年3月期までに100%

78%

多様性の尊重

女性取締役・執行役比率(注)4

2030年3月期までに50%

31.3%(注)5

全世界の女性管理職比率(注)6

2030年3月期までに30%

17.1%(注)1

日本の新卒女性比率(注)7

50%

44.8%

(注)1.2024年3月期の実績値は当社ウェブサイトに掲載している「LIXIL ESGデータブック2024(先行開示データ:環境及び社会データ)」において、2024年6月に第三者保証取得済です。

2.節湯水栓については、湯はり専用や全身浴などの節湯水栓の用途に該当しない商品を除いており、節水型トイレについては、一部の集合住宅向けを除いています。

3.6063材を対象としています。

4.女性取締役・執行役比率は、3月31日時点の人数に基づき算出します。

5.有価証券報告書提出日(2024年6月20日)時点では37.5%です。

6.対象は国内及び海外の直雇用従業員です。ただし、売却された子会社及び従業員数100人以下の国内子会社は除いています。

7.対象は当社の大学卒・大学院卒の新卒入社者です。当連結会計年度の実績は、2024年4月1日付入社の比率を記載しています。

 

 

気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境課題に関する情報開示(TCFD・TNFD提言への対応について)

2019年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、2022年3月期報告からTCFD提言に基づいた情報開示を行っています。2023年12月には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に賛同しTNFDフォーラムへ参画、2024年1月にはTNFD Early Adopter(早期採用者)に登録しました。これを受け、2024年3月期報告からはこれまでの気候変動を含む環境課題に関する情報開示に包含されている自然関連課題の情報を関連づけ、TCFD・TNFD提言に基づく気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境課題に関する情報開示として統合しました。

 

<ガバナンス>

当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略審議会を設置しています。執行役から任命を受けたメンバーで構成された環境戦略審議会を原則年6回開催し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動、自然資本及び生物多様性から生じるリスクや機会を含む環境課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の環境目標管理とモニタリングなど、環境戦略の構築と実行を実施しています。環境戦略審議会で協議・決議された内容は、インパクト戦略委員会を通じて四半期ごとに執行役会に報告されています。執行役会は、環境課題を含めた重要課題に関する目標や実行計画について協議・承認し、取締役会は、それらに対する進捗状況を半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。

 

人権と自然資本及び生物多様性を含めた環境課題との関連性を認識したうえで、人権尊重を事業活動の基本とした「LIXIL人権方針」を定めています。また、従業員やお客さま、調達先などのビジネスパートナー、株主や投資家、事業拠点の地域社会に暮らす方々人びとなどの事業活動に関連する人権課題について、ステークホルダーとの対話に努めています。

 

<戦略>

気候変動を含めた環境課題に関するリスク・機会分析(TCFD)

当社グループでは、気候変動が短期・中期・長期の視点で自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定するためにシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理的リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)の2つの世界観を想定しています。この2つのシナリオにおいて気候変動がもたらすリスク及び機会を特定し、その財務影響を可能な限り定量化し、当社グループの環境戦略に反映させることで、事業の持続的成長や将来リスクの低減につなげ、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めています。

当連結会計年度には、2030年をマイルストーンとして設定し、事業プロセス、自社バリューチェーン、インパクトの拡大の3つのフェーズにおいてCO2排出量を削減する「低炭素社会への移行計画」を策定しました。事業プロセスにおいては、省エネ対策、燃料転換、追加性の高い再生可能エネルギーへの移行・調達などの施策に加えて、製造現場で水素への燃料転換に向けた実証実験を実施するなど、Scope 1, Scope 2排出量の削減に取り組んでいます。自社バリューチェーンにおいては排出量の多くの割合を占める「製品使用」と「調達」に注力しており、製品の省エネ化はもちろんのこと、サプライヤーエンゲージメントを通じた調達や物流における排出量の削減、これらの活動から得られた一次データの活用、循環型のエコシステムやビジネスモデルの構築に努めています。さらに、節湯水栓・節水型トイレや新築戸建向け高性能窓などの販売構成比率を100%とする目標を掲げ、暮らしのエネルギー効率を高める製品を通じて、気候変動緩和に向けたインパクトの拡大と低炭素社会への移行を推進しています。

 

自然資本・生物多様性に関するリスク・機会分析(TNFD)

自然資本及び生物多様性と自社バリューチェーンとの依存、影響の関係、リスクと機会を特定するためにTNFDが提唱するLEAPアプローチに基づく評価を実施しています。アルミと木材を対象原材料としたバリューチェーン上流と直接操業における自然への依存と影響及び優先地域を特定し、自然に関連するリスクと機会の評価を行いました。特定された重要なリスクと機会は、気候変動課題の取り組みと関連づけられたことから、自然関連課題に対する取り組みがすでに戦略に反映されていることが示されました。

 

 

気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境課題への対応戦略

主要なリスクと機会

財務影響の程度

(注)

対応戦略

指標と目標

1.5℃

シナリオ

4℃

シナリオ

移行

TCFD

①炭素税導入による操業コストの増加

約100億円

追加課税なし

・エネルギー使用効率の改善

・再生可能エネルギーの利用拡大

・戦略的な設備投資

・脱炭素技術の実装検証

2031年3月期までに

 

・Scope 1 & 2

50.4%削減

・Scope 3

30%削減

(2019年3月期比)

2050年までに

 

・Scope 1 & 2, Scope 3

実質ゼロ

②市場の変化による原材料・部材調達コストの増加

定量化に必要なパラメータ不足のため財務影響は非算出

・低炭素原材料・部材の調達

・資源配慮設計の推進

・サプライヤーエンゲージメント

・生産拠点における資源の有効・循環利用

2026年3月期までに

 

廃棄物などのリサイクル率 90%

TNFD

③自社グループ工場の環境負荷に関する法規制の導入・厳格化への未対応

・環境方針の遵守

・ISO14001に基づく内部監査

物理

(急性)

TCFD/

TNFD

④気候変動に起因する台風や洪水等による自社グループ工場の被災による売上機会の損失

約15億円

・防災行動計画の推進

・計画的な設備投資・更新

物理

(慢性)

TCFD/

TNFD

⑤渇水・水質汚染等、利用可能な水資源減少に伴う自社グループ工場の操業停止による売上機会の喪失

定量化に必要なパラメータ不足のため財務影響は非算出

・水使用効率の改善、水循環システムの導入

・生産拠点における水リスク管理

2031年3月期までに

水使用効率20%改善

(2019年3月期比)

機会

TCFD

⑥新築住宅のZEH普及や既築住宅の省エネリフォーム拡大に向けた省エネ商品・サービスの需要増加

約200億円

成り行きを維持

・エコ商品の開発と拡販(高性能窓、太陽光発電、高性能住宅工法、節湯水栓・シャワーなど)

・2026年3月期までに新築戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本)100%

・2031年3月期までに節湯水栓・節水トイレの販売構成比(日本)100%

TCFD/

TNFD

⑦低炭素材料を利用した商品、再生材の使用比率を引き上げるなど環境に配慮した取り組みに対する消費者の嗜好変化による需要の増加

定量化に必要なパラメータ不足のため財務影響は非算出

・再生材を利用した低排出商品の開発と拡販(樹脂サッシ、人工木デッキなど)

・⑤と同様

2031年3月期までにリサイクルアルミの使用比率 100%

 

 

 

主要なリスクと機会

財務影響の程度

(注)

対応戦略

指標と目標

1.5℃

シナリオ

4℃

シナリオ

機会

TCFD

⑧災害対策・災害復興商材等の需要増加

定量化に必要なパラメータ不足のため財務影響は非算出

・防災・減災商品の開発と拡販(シャッター、雨戸、シェード、蓄電、レジリエンストイレなど)

TCFD/

TNFD

⑨節水・水質改善などに貢献する商材などの需要増加

・節水・浄水商品の開発と拡販

・安全な水の提供や水の汚染リスク低減への貢献

2025年3月期までに節水製品による水使用削減貢献量 年間20億㎥

(注)TCFDのシナリオ分析に基づくものです。

・Scope 1 & 2のCO2排出量に対して炭素税(国際エネルギー機関(IEA)が公表する1.5℃目標実現のために導入が必要と想定される炭素税価格を使用)が課せられた場合の想定額を算出

・世界資源研究所(WRI)が提供するAqueduct Floods及び日本の各自治体のハザードマップを用いて、全生産拠点の浸水リスクを評価(事業継続計画(BCP)によるリスク低減を加味せず、生産拠点の立地条件のみに基づく)し、国土交通省の治水経済調査マニュアルが提示する浸水高さごとの想定停止日数と、該当拠点の1日当たりの生産高を乗じて損失額の平均値を算出

・日本政府が掲げる2030年目標における家庭部門66%削減の実現に向け、2030年時点で新築住宅及び既築住宅のZEH比率が向上した前提のもと、主な関連商品のシェア・単価・利益率から利益額を算出

・製品使用において間接的に消費される給湯エネルギーなどに由来した排出量は除く

 

■リスクと機会への対応状況

① 炭素税導入による操業コストの増加

事業所(特に製造拠点)のCO2排出量を削減するために、生産効率性の向上、不良率の良化、燃焼効率の改善、トップランナー機器への更新等を進めています。また、太陽光発電システムの設置や経済合理性のある再生可能エネルギーの調達を進めており、事業で使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指す企業イニシアティブ「RE100」に加盟しています。海外事業では、すべての水栓金具関連の工場・物流センター(全10拠点)が100%再生可能エネルギーに切り替えました。また、国内では6工場でオンサイト PPA、海外では9工場でオンサイト PPA、4工場でオフサイト PPAによる再エネ電力に切替え、今後もPPAモデルをはじめとした「追加性」が高い再生可能エネルギー導入を積極的に検討していきます。また、営業拠点、ショールーム、本社などの国内の事業所では、7割以上ですでに再生可能エネルギーへの切り替えが完了しています。さらに、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、水素への燃料転換やCO2を分離・回収し有効活用するCCUなどの新技術を取り入れたイノベーションにも取組み、2030年以降の実用化を目指した検討を継続しています。その取り組みの一つとして、水素への燃料転換を見据えた製造技術検証を継続的に行ってきました。アルミ溶解工程、衛生陶器やタイルの焼成工程で使用する高温炉の検証として水素燃焼実験を行い、従来の天然ガスと同様に問題なく水素が使用可能であることを確認しました。また、アルミ形材の製造工程の高温溶解工程以外の用途でも、水素への燃料転換を見据えた取り組みを進めています。その一つで、生産工場の量産設備で品質への影響が懸念されるアルミエージング処理工程における実証実験では、水素燃焼が品質に影響しないことを確認しました。加えて、高温工程以外でも水素への燃料転換を展開することを見据えて、サッシ生産工場の量産設備で品質への影響が懸念されるアルミエージング処理の実証実験を行い成功しました。今後は、製造の脱炭素化の選択肢の一つとして、水素への燃料転換に必要な設備仕様や投資等を踏まえ、実用化を検討していきます。

 

② 市場の変化による原材料・部材調達コストの増加

原材料・部材の調達によるCO2排出量を削減するために、より低炭素な原材料・部材の使用、リサイクル材の活用、製品の省資源化、製品寿命の長期化や再利用に配慮した設計を進めています。特に、調達におけるCO2排出削減を推進するにはサプライヤーの皆さまとの連携が必要不可欠です。2023年3月期から、調達によるCO2排出の削減に影響の大きいサプライヤーとのエンゲージメント活動を開始し、CO2総排出量の上位80%を占める国内外のサプライヤーに対して、CO2排出量集計や削減目標設定の状況を把握するためのアンケート調査を実施しました。当連結会計年度は、国内主要サプライヤー約400社に対して、当社グループの調達活動や排出量算定に関する説明会を開催し、新たにCO2排出量算定を始める意向のサプライヤーに対して、Scope 1, 2, 3算定ツールの提供や活用方法に関する説明会を行いました。今後は、個別サプライヤーとの協議を通じ、サプライヤーの排出量データの質や量、整合性を図りながら、さらなる削減活動支援を進めるとともに、海外サプライヤーとの連携も推進していく予定です。

 

③ 自社グループ工場の環境負荷に関する法規制の導入・厳格化への未対応

環境に関する規制が厳格化される中にあっても着実に事業活動を継続できるよう、全従業員及び取締役・執行役員を含む全役員に適用される「LIXIL 環境方針」を定めています。これには「環境マネジメントシステムの継続的改善」と「コンプライアンスの徹底」が含まれます。

 

環境方針を事業活動に反映し、実行に移すために、全生産工場、国内の非生産拠点、及びグループ会社を含む内部監査体制が整えられています。生産工場においては、ISO14001の基準に沿った内部監査を通じて環境マネジメントシステムの有効性と法令遵守状況を定期的に評価しています。これには、有害廃棄物や大気汚染物質の管理も含まれ、ISO14001の管理システムを基に運用されています。

 

非生産拠点とグループ会社においても、ISOに準じた独自の環境マネジメントシステムに基づいた内部監査を実施し、対象範囲を段階的に広げています。内部監査で指摘された事項には改善措置を講じ、その実施状況を確認することで、マネジメントシステムの効果的な運用を促進しています。また、2018年3月期からは、本社環境部門が事業部門の環境責任者に対して内部監査を行う体制を導入しています。

 

④ 気候変動に起因する台風や洪水等による自社グループ工場の被災による売上機会の損失

大規模自然災害を想定した際のリスクとして、当社グループの本社、事業所、工場含む全域における被害想定をもとに、各工場における事業継続計画(BCP)活動を実施し、災害リスクの最小化を進めています。また、製品供給における対策として調達先の適正化、適切な在庫確保、バックアップ生産体制の構築などを進めています。他にも、当社及び国内の連結子会社が所有・使用・管理する固定資産が火災や風水災等の不測かつ突発的な事故による被害を補償する保険プログラムに加入しています。

 

 

⑤ 渇水・水質汚染等、利用可能な水資源減少に伴う自社グループ工場の操業停止による売上機会の喪失

世界で水不足が深刻化する中、地域の実情を把握し適切な施策を実行するため、当社グループでは、2017年3月期から製造プロセスで水を使用する生産拠点83拠点における水リスク調査を実施しています。リスク評価のプロセスでは、まず国際的な評価ツール(WWF Water Risk Filter)により地理的なリスク評価を行い、その中で高リスクと認定された拠点を対象とした調査を実施しています。2023年3月期はScience Based Targets Network (SBTN)のコーポレートエンゲージメントプログラムに参画し、SBTNにおける水リスク評価に関する指針策定に貢献しています。当連結会計年度は、自然関連情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に対応した開示に向け、水不足リスクに加えて水質リスクの評価を行いました。このように、定期的に分析を更新しながら、水リスクへの対応を強化し、各拠点における適切な対応を計画・実行しています。

 

⑥ 日本の家庭部門CO2削減目標実現に向け、新築住宅のZEH普及や既築住宅の省エネリフォーム拡大に向けた高断熱・省エネ・創エネ商材などの需要増加

世界の最終エネルギー消費のうち、約3割が建築に起因し、日本での一般的な住宅における消費エネルギーの約6割を冷暖房と給湯が占めています。また、日本の住宅の高性能化は欧州などに比べて遅れており、既存住宅の約9割は現行の省エネ基準を満たしていません。断熱効果の高い「窓」の果たす役割は非常に大きく、気候変動対策に向けた推進力になり得ます。

高い断熱性能や節湯・節水性能、創エネ機能など、CO2排出量の削減に貢献する製品・サービスを提供する当社グループが、住宅・建築物のCO2排出削減に果たす責任は大きいものと認識しています。国内の新築市場は縮小傾向のため、特に重要なのは既築住宅の高性能化リフォームの推進です。住宅1棟をまるごと断熱改修する高性能住宅工法、開口部を簡単に断熱改修できるリフォーム窓・ドア、節湯・節水に貢献する節湯水栓・シャワーや節水型トイレなどの製品を通じてリフォーム活性化に貢献しています。また、新築戸建住宅向けの製品についても、2022年3月期、すべての窓シリーズ製品の刷新を行い、2026年3月期までに高性能窓比率100%を目指しています。

 

⑦ 低炭素材料を利用した商品、再生材の使用比率や水の再利用率を引き上げるなど環境に配慮した取り組みに対する消費者の嗜好変化による需要の増加

樹脂フレームのリサイクル材使用率を従来品よりも約3倍に拡大した樹脂窓、再生樹脂及び再生木粉を利用した人工木デッキ、スパウト(吐水口部分)だけを後から浄水機能付きスパウトに取り替えられるアップグレード可能なキッチン用水栓など、消費者の選択肢を広げサステナブルな暮らしを提案する製品・サービスの開発と提供を進めています。加えて、調達・製造時にCO2を多く排出する原材料・部材の価格高騰、石油由来のプラスチックに関する規制強化、サーキュラー・エコノミーの台頭による消費者の嗜好の変化などの市場変化に対応していくために、製品の原材料として可能な限りリサイクル素材や再生可能素材を使用し、長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を進めています。

GROHEブランドでは、資源の有効活用を促進する「Cradle to Cradle」認証製品を拡充しており、さらに環境製品宣言(EPD)に対応した製品は、18製品群、777品目に達しています。また、日本のハウジング事業では2031年3月期までに使用されるアルミ形材にリサイクルアルミニウムを100%使用するという中期目標を設定しました。この目標の達成は、当社グループが定めるCO2排出量削減の中期目標であるScope 3削減目標30%(2019年3月期比)のうち、約3割の削減に相当します。2022年12月には、原材料にリサイクルアルミニウムを70%使用し、「エコリーフ環境ラベル」を取得した低炭素型アルミ形材「PremiAL(プレミアル)」シリーズの発売を開始しました。新地金を使用した製品から置き換えることで、55%のCO2排出量削減に貢献することができます。

さらに、原材料すべて(100%)にリサイクルアルミを使用する技術開発を進め、75%のCO2排出量削減に貢献するリサイクルアルミ率100%に置き換えた「PremiAL R100」を2023年9月に発売開始しました。当社グループとお客さまのCO2削減計画を支援する製品として採用が進んでいます。

また、これまで再資源化が困難であることから、焼却や埋め立て処分、熱回収されてきた複合プラスチックを含む、ほぼすべての廃プラスチックと廃木材を融合した循環型素材、「レビア」を開発しました。廃プラスチックと廃木材を有効利用することで、82%のCO2排出量削減に貢献します。2023年1月には、「レビア」を使用した第一弾製品として、歩道・広場・公園・建築外構など幅広い用途に使用可能な舗装材「レビアペイブ」の販売を開始しました。原材料の調達から生産、販売、施工、回収に至るエコシステムを構築し、廃プラスチックの循環利用を促す持続可能なビジネスモデルを確立することで、焼却によるCO2排出量の削減、埋め立てによる環境汚染の低減に取り組んでいきます。

これらの「PremiAL」や「レビア」などの環境配慮製品は、インターナルカーボンプライシングの考えを事業戦略に取り入れることで、資源循環の活動を通じたバリューチェーン内外でのCO2削減効果を製品の付加価値とし、機会の獲得につなげています。

 

⑧ 災害対策・災害復興商材等の需要増加

台風や豪雨といった自然災害被害の増加や猛暑による熱中症の増加に伴い、既存の窓に簡単に取り付け可能で台風時の強い風による飛来物から窓を守るシャッター・雨戸、強い日差しを窓の外側でカットする「スタイルシェード」、断水時には洗浄水量を5リットルから1リットルに切り替えられるパブリック向け衛生陶器「レジリエンストイレ」などの気候変動への適応に貢献する製品の開発と提供を進めていきます。

また、熱中症やヒートショックを引き起こす一因である室内温度と冷暖房の効率の重要性についてステークホルダーとともに考える多様な活動「Think Heat」や、災害から家族を守る家をつくるための活動「減災プロジェクト」を推進しています。

 

⑨ 節水・水質改善などに貢献する商材などの需要増加

水の効率的な利用を促進する製品やソリューションの提供を通じて、エンドユーザーの責任ある水利用をサポートし、日常生活における節水につなげています。節水型トイレや水栓、スマートコントローラーなどの製品の提供を通じて、2025年3月期までに、世界で年間20億㎥の水使用量の削減に貢献することを目指しています。また、より良い住まいには、シャワーや手洗い、飲料水など、清潔で安全な水が不可欠です。当社グループは、製品の提供だけにとどまらず、消費者や地域社会と連携することで行動変容を促し、より安全な水の提供と水の汚染リスクの低減にも取り組んでいます。さらにパートナーとの協働を通じて、地域や文化によって異なる課題に対応するソリューションを開発し、より効率的で責任ある水利用を促進するため、水不足への対応、使用効率の改善、安全性の向上、再利用の促進といった様々な水の課題に関する議論に参加し、政策提言を行っていきます。

 

<リスクと影響の管理>

当社グループは、気候変動、自然資本及び生物多様性に関わる依存、影響、リスク及び機会については環境戦略審議会の責任のもとでTCFD・TNFDの提言に基づいたシナリオ分析を行い、重要度を特定し、事業への影響の度合いを評価しています。また、それぞれの移行リスク・物理リスクを事業及びオペレーショナルリスクと紐づけることで、組織全体の総合的リスク管理との整合を図っています。

リスク管理においては、それぞれのリスクの重要性を判断した上で、あらゆる階層の組織で対応策を立案、実行し、進捗状況をモニタリングする体制を敷くことで、リスクを回避するための活動を展開しています。特に、気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境リスク及び機会への対応については、環境戦略に反映させ、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、進捗の管理・監督と振り返りを行うプロセスを構築し、リスク回避に努めています。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

<指標及び目標>

当社グループは、環境ビジョン「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までに事業プロセスと製品・サービスによるCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。2023年3月期には、CO2削減目標について2030年までの中期目標をScience Based Targets initiative(SBTi)が示す2℃水準から1.5℃水準へ上方修正し、SBTiによる目標認定を更新しました。また、水と資源に関わる2030年に向けた中期目標を追加しました。

当連結会計年度には、長期目標(long-term target)である「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ」に対して、日本の建材業界で初めてSBTネットゼロ認定を取得しました。SBTネットゼロの基準に則り、「2050年までにScope 1, 2, 3の温室効果ガス排出量を90%削減し、10%以内の残余排出量を炭素除去によりゼロ」にしていきます。

気候関連を含む環境リスク及び機会を評価する指標

目標

リスクへの対応

Scope 1& 2によるCO2排出量

2031年3月期までに50.4%削減(2019年3月期比)

Scope 3によるCO2排出量

2031年3月期までに30%削減(2019年3月期比)

Scope 1 & 2、Scope 3によるCO2排出量

2050年までに実質ゼロ

水使用効率向上

2031年3月期までに20%向上(2019年3月期比)

廃棄物などのリサイクル率

2026年3月期までに90%

機会への対応

新築戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本)

2026年3月期までに100%

節湯水栓・節水型トイレの販売構成比(日本)

2031年3月期までに100%

節水製品による水使用削減貢献量

2025年3月期までに年間20億㎥

リサイクルアルミの使用比率

2031年3月期までに100%

 

 

TNFD開示指標(依存・影響)-直接操業

測定指標

番号

インパクトドライバー

指標

開示状況

 

気候変動

GHG排出量

CO2排出量(注)

C2.1

汚染/汚染除去

排水量

排水量(注)

C2.2

汚染/汚染除去

廃棄物発生と処理

廃棄物の処理方法別発生量(注)

C2.3

汚染/汚染除去

プラスチック汚染

プラスチック廃棄物の発生量(国内)(ウェブサイト)

C2.4

汚染/汚染除去

GHG以外の大気汚染物質

NOx、SOx、ばいじんの排出量(注)

C3.0

資源の利用と補充

水不足地域からの取水と消費

水不足地域における取水量

(ウェブサイト)

A3.0

資源の利用と補充

水使用量と取水量の合計

消費量および取水量(注)

A3.2

資源の利用と補充

水の削減、再利用、リサイクル

水使用効率向上率および

リサイクル水量(注)

 

TNFD開示指標(依存・影響)-上流バリューチェーン

測定指標

番号

インパクトドライバー

指標

開示状況

C3.1

資源の利用と補充

陸・海・淡水から調達した

リスクの高い天然製品の量

木材およびアルミの調達重量(注)

 

TNFD開示指標(対応)-上流バリューチェーン

測定指標

番号

インパクトドライバー

指標

開示状況

A23.1

自然への変化(依存と影響):

ミティゲーションヒエラルキー

ⅰ)廃棄物または、

ⅱ)製品/原材料の流出に占める再利用・リサイクル率(%)

廃棄物などのリサイクル率(注)

A23.4

自然への変化(依存と影響):

ミティゲーションヒエラルキー

循環的な材料の使用率(%)

リサイクルアルミ使用比率(注)

(注)開示場所は当社ウェブサイトの「LIXIL ESGデータブック2023」です。

 

人的資本・多様性に関する情報開示

<ガバナンス>

当社グループは、執行役や部門長で構成されるD&I審議会を設置しています。D&I審議会では、D&I戦略に基づく様々な施策検討を行い、討議・審議された内容は「インパクト戦略委員会」を通じて四半期ごとに執行役会に報告され、必要なものについては決議がなされます。取締役会はそれらに対する進捗状況について半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。

 

<戦略>

当社グループは、その存在意義の追求に向け、より機動的で起業家精神にあふれ、実力主義に基づいた働き方への転換を推進してきました。併せて私たちの働き方や、企業と従業員の関係は、急速に進化しており、事業の成功のためには、企業にとって最も重要な人的資本である人材への投資とD&Iの実現が必要不可欠です。当社グループの人事部門であるGPO(Global People Organization)は、「従業員の誰もが自信を持ちどこででも活躍できるよう、LIXILを革新的でインクルーシブな組織へ変革」するというミッションを掲げ、2022年3月期~2025年3月期のグローバル人事戦略において、5つの柱を策定しています。そのなかでも人的資本強化の主要な要素として、以下の3つを掲げています。

 

① インクルージョンをLIXILのDNAに組み込む

当社グループでは、インクルージョンが目指す目標であり、ダイバーシティはその結果として生まれるものである、と考えています。当社グループで働くすべての人が、当社グループの将来の競争優位性を確保する上でのD&Iの重要性、及び、D&Iを重視する文化とイノベーションを生む文化は密接な関係にあるということを理解するよう、包括的で戦略的な取り組みを推進しています。2024年3月期からは、アカウンタビリティーを人事部門から各部門へ移すフェーズへ移行しており、この変化を牽引する施策として、管理職向けD&Iワークショップが大きな役割を果たしています。本ワークショップは、2023年10月から日本で先行開始した「GROW:Great Managers at LIXIL」の一環として実施され、部長クラスの管理職がファシリテーターを務めながら、8カ月に渡りグローバル全体で6,000人が参加しました。当社グループにおいて、管理職は、チーム文化を醸成し、女性をはじめ従業員のエンゲージメントに大きな影響を与える存在であり、当社グループの成功における重要な役割を担っていると考えています。GROWプログラムでは、管理職自身が成長することで、チームメンバーが育成するように設計されており、「インクルーシブな職場環境の構築」を含む7つのコアの実践に重点を置いた学習体験を提供しています。

 

② 人材育成への投資

より効果的に変革を推進し、当社グループの将来にとって不可欠なイノベーションを生む文化の担い手となる人材への投資を進めています。また、バイアスを排除した採用に始まり、人材育成の加速に至るまで、基盤となるインフラの構築に取り組み、従業員の能力開発、人事評価やリーダーシップ研修等の各種制度とプロセスを全社的に管理することで、グローバルな人材活用を進めています。当社グループにおいては、POD(People Organizational Development)と呼ばれる総合的な人材と組織のレビューを毎年実施しており、後継者計画や、ハイポテンシャル人材、女性タレントの特定など総合的なアプローチによって、持続可能な人材マネジメントを行っています。また、POD結果を踏まえて得た洞察は、従業員の能力開発の取り組みにも役立っており、当社グループにおいて、新卒社員から経営陣までの全ての従業員が学び、成長できる環境を提供することで、学習文化の促進にも注力しています。

 

③ 従業員エクスペリエンスの向上

従業員を事業活動の中心に据え、従業員の声に耳を傾けて、一人一人のライフステージに寄り添いながら、従業員エクスペリエンスを向上させます。定期的なサーベイを通じて従業員のエンゲージメント、インクルージョン、ウェルビーイング、またそれらに寄与するドライバーとなる社員のエクスペリエンスをデータとして見える化し、部下を持つ管理職が従業員データ、分析ツール、レポートにタイムリーにアクセスできるようにすることで、各々のチームメンバーのキャリア支援や能力開発に活かしています。また、これらの定期的な調査結果や、さらなる深掘り調査・分析の結果を踏まえ、より働きやすい環境への促進にも繋げます。実際に日本で実施した深掘り調査では、ハイブリッドで柔軟な職場環境を推進することで、とりわけ女性従業員の柔軟な働き方やインクルージョンを促進していることがデータからも確認されています。

 

 

Global People Organization(GPO)Strategy

 

 

<リスク管理>

当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要となります。特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、必要な人材を継続的に獲得するために人材獲得や積極的な人材育成に取り組んでいます。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

<指標及び目標>

指標

目標

実績(当連結会計年度)

女性取締役・執行役比率(注)1

2030年3月期までに50%

31.3%(注)2

全世界の女性管理職比率(注)3

2030年3月期までに30%

17.1%(注)4

日本の新卒女性比率(注)5

50%

44.8%

(注)1.女性取締役・執行役比率は、3月31日時点の人数に基づき算出します。

2.有価証券報告書提出日(2024年6月20日)時点では37.5%です。

3.対象は国内及び海外の直雇用従業員です。ただし、売却された子会社及び従業員数100人以下の国内子会社は除いています。

4.当連結会計年度の実績は、当社ウェブサイトに掲載している「LIXIL ESGデータブック2024(先行開示データ:環境及び社会データ)」において、2024年6月に第三者保証取得済です。

5.対象は当社の大学卒・大学院卒の新卒入社者です。当連結会計年度の実績は、2024年4月1日付入社の比率を記載しています。